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タイトル:公開特許公報(A)_イヌ糸状虫22kDaタンパク質を利用したイヌ糸状虫感染の検出
出願番号:2012077977
年次:2013
IPC分類:C07K 16/20,G01N 33/569,G01N 33/53,C12Q 1/02


特許情報キャッシュ

今西 重雄 吉田 芳哉 馬嶋 景 小林 淳 中垣 和英 野上 貞雄 JP 2013203733 公開特許公報(A) 20131007 2012077977 20120329 イヌ糸状虫22kDaタンパク質を利用したイヌ糸状虫感染の検出 独立行政法人農業生物資源研究所 501167644 株式会社シマ研究所 391025811 株式会社バキュロテクノロジーズ 308025750 学校法人日本医科大学 500557048 学校法人日本大学 899000057 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 今西 重雄 吉田 芳哉 馬嶋 景 小林 淳 中垣 和英 野上 貞雄 C07K 16/20 20060101AFI20130910BHJP G01N 33/569 20060101ALI20130910BHJP G01N 33/53 20060101ALI20130910BHJP C12Q 1/02 20060101ALN20130910BHJP JPC07K16/20G01N33/569 AG01N33/53 DG01N33/53 NC12Q1/02 8 OL 15 1.テフロン (出願人による申告)平成19年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター、異分野融合研究支援事業「カイコバキュロウイルスによる犬フィラリア診断薬の開発及び感染防御抗体の解析」の成果、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4B063 4H045 4B063QA19 4B063QQ02 4B063QQ79 4B063QQ96 4B063QR48 4B063QS15 4B063QS33 4B063QX02 4H045AA11 4H045BA10 4H045CA20 4H045DA76 4H045EA52 4H045FA72 4H045FA74 本発明は、イヌ糸状虫感染犬血液中に存在するイヌ糸状虫(犬糸状虫:イヌシジョウチュウ、Dirofilaria immitis)由来ヒトフィラリア(Brugia malayi)small heat shock protein類似タンパク質(22kDaタンパク質)を検出することを特徴とするイヌ糸状虫感染検査法に係わる。さらに、本発明は、前記22 kDaタンパク質に対する抗体を用いて血液中の該タンパク質を検出することを特徴とする。 イヌ糸状虫(犬糸状虫:イヌシジョウチュウ、Dirofilaria immitis)はイヌ科やネコ科動物の心臓の右心房と肺動脈に寄生し、寄生された動物は、心臓や肺のみでなく肝臓、腎臓等に種々の異常をきたすイヌ糸状虫症を発症する。糸状虫は感染宿主動物の血液中にミクロフィラリアと呼ばれる子虫を産み、ミクロフィラリアは2ヶ月ほどで2cm前後の体長の幼虫となり、血液から心臓や肺動脈に移動する。従来はイヌ糸状虫感染を診断するためには、血液中にミクロフィラリアが存在するかを顕微鏡を用いて検査していた。しかし、この方法では、成虫がミクロフィラリアを産み出していないときには診断ができなかった。また、血液中のイヌ糸状虫に対する抗体を検出することにより感染を診断する方法もあったが、糸状虫が感染していても陽性にならないことがあった。 さらに、血液中に抗原が放出している抗原を検出することにより感染を診断する方法もあった。例えば、DiT33タンパク質を検出する方法(特許文献1を参照)やDi33タンパク質を検出する方法(特許文献2を参照)等が報告されていた。特表平11-503609号公報特表平2001-502896号公報 本発明は、イヌ糸状虫22kDaタンパク質をマーカーとして用いるイヌ糸状虫感染の検出法、および該検出に用いるイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体の提供を目的とする。 上記のように、イヌ糸状虫(犬糸状虫:イヌシジョウチュウ、Dirofilaria immitis)感染犬の血清中にはイヌ糸状虫由来タンパク質が存在すると考えられ、従って当該タンパク質のいずれかを検出することによりイヌ糸状虫感染の有無を調べることができる可能性がある。しかし、数万種あるイヌ糸状虫由来タンパク質のうちのどのタンパク質を検出することによって実用的な感染検査法が開発できるかをあらかじめ予測することはできない。あるいは、それを知るためには本発明の開発過程と同程度の多大な試行錯誤が必要である。 本発明者らは、イヌの寄生虫であるイヌ糸状虫の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟雌成虫(female adult worms)からcDNAライブラリーを作製し、そこから昆虫細胞内で発現可能な配列を有する(開始コドンを有する)約400クローンを選抜した。それらをそれぞれ一過性発現ベクター(pA3hr5GW)とカイコ培養細胞株NIAS-Bm-Ke17の系で発現し、発現されたタンパク質についてイヌ糸状虫感染犬血清を用いたウエスタンブロット解析を行い、ウサギ抗イヌ糸状虫特異ポリクローナル抗体と特異的に反応するタンパク質を発現するクローンを4クローン選抜した。このうちでもっとも反応性の高かった、22kDaのタンパク質をコードするcDNAクローン(BmGWNo.122)を選び、感染検査のための陽性抗原候補とした。ついで、該タンパク質の大量発現のため、発現用バキュロウイルスベクター(pBmGW)およびNIAS-Bm-Ke17細胞の系により、22 kDaタンパク質を発現させ、ウサギおよびマウスに免疫して、ウサギポリクローナル抗体およびマウスモノクローナル抗体を作製した。 本発明者らは、前記ウサギポリクローナル抗体およびマウスモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA検査系を作製した。この検査系および市販のイヌ糸状虫感染検出キット(IDEXX)を用いて、イヌ糸状虫を人工的に実験感染したビーグル犬の血清を検査したところ、本発明の検査系によれば5頭中5頭が陽性と判定されたが、市販の検出キットでは5頭中4頭のみが陽性と判定されるに過ぎなかった。また、市販キットで陽性および陰性と判定された血清(それぞれ31検体)について本発明の検査系で調べたところ、両検査法による判定結果は一致した。以上の結果から、イヌ糸状虫の22kDaタンパク質をマーカーとして利用する本発明の検査系が、市販の検出キットと比較して同等以上の性能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下の通りである。[1] 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体。[2] モノクローナル抗体である、[1]のイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体。[3] [1]または[2]のイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体を用いて、イヌ血液中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質またはその断片を測定することにより、イヌ糸状虫感染を検出する方法。[4] イヌ糸状虫22kDaタンパク質またはその断片を用いて、イヌ血液中の抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を測定することにより、イヌ糸状虫感染を検出する方法。[5] [1]または[2]のイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体を含む、イヌ糸状虫感染を検出するためのキット。[6] イヌ糸状虫22kDaタンパク質またはその断片を含む、イヌ糸状虫感染を検出するためのキット。[7] イヌ糸状虫22kDaタンパク質からなる、イヌ糸状虫感染を検出するための診断用マーカー。[8] イヌ糸状虫22kDaタンパク質の、イヌ糸状虫感染を検出するための、検出用マーカーとしての使用。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質は、イヌ糸状虫に感染したイヌにおいて、感染から比較的早期の段階で、イヌ糸状虫で発現される。その結果、比較的早期の段階で、イヌ糸状虫22kDaタンパク質はイヌ血液内に存在する。また、イヌ糸状虫22kDaタンパク質は、イヌ血液中で抗体が結合していないフリーの抗原として存在する。そのため、in vitroで抗原抗体反応を利用して測定する場合、測定用抗体が結合する抗原決定基がイヌ抗体でブロックされることがないので、測定用抗体を利用して確実に正確に高感度で測定することができる。このように、イヌ糸状虫22kDaタンパク質をマーカーとして利用した場合、感染から比較的早期の段階で高感度でイヌ糸状虫の感染を検出することができる。経時的感染血清のイヌ糸状虫抗原に対する抗体価の推移を示す図である。イヌ糸状虫抗原(22kDaタンパク質)のウエスタンブロット分析の結果を示す図である。抗イヌ糸状虫抗原(22kDaタンパク質)モノクローナル抗体の検定の結果を示す図である。ELISAキットによる人工感染犬経時血清中のイヌ糸状虫関連抗原検出の結果を示す図である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明はイヌ糸状虫(犬糸状虫:イヌシジョウチュウ、Dirofilaria immitis)に存在する22kDaタンパク質に対する抗体である。該22kDaタンパク質はイヌ糸状虫の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟雌成虫(female adult worms)が有しており、該タンパク質をコードするDNAの塩基配列を配列番号1に示し、該タンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。該22kDaタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトフィラリア(Brugia malayi)のsmall heat shock protein Ov25-1 Bm1_14535とDNAレベルで82.68%、アミノ酸レベルで87.15%の相同性を有する。従って、イヌ糸状虫の22kDaタンパク質を、イヌ糸状虫由来ヒトフィラリアsmall heat shock protein類似タンパク質(22kDa)ともいう。以下においては、該タンパク質をイヌ糸状虫22kDaタンパク質と呼ぶ。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質をコードするDNAは、配列番号1に示される各塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、あるいは、配列番号1に示される塩基配列と、BLAST、FASTAなどの相同性検索のための公知のアルゴリズム(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを使用する。)を用いて計算したときに、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するDNA、あるいは、これらのDNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1もしくは複数、好ましくは1もしくは数個、例えば、1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNAも含む。また、イヌ糸状虫22kDaタンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において1もしくは複数、好ましくは1もしくは数個、例えば、1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1個もしくは2個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と、BLAST、FASTAなどの相同性検索のための公知のアルゴリズム(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータを使用する。)を用いて計算したときに、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも97%、98%もしくは99%の配列同一性を有しているアミノ酸配列を有するものも含む。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質はイヌにおけるイヌ糸状虫の感染を検出するためのマーカーとなり、イヌ生体試料中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質を測定してもよいし、イヌ生体試料中の抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を測定してもよい。 イヌ糸状虫は、蚊を媒介として感染し、感染イヌ宿主の血液中にミクロフィラリア(第1期幼虫(L1))と呼ばれる子虫を産み、ミクロフィラリアはイヌ血液中に潜んでいる。イヌが蚊に吸血されるとミクロフィラリアは蚊の体内に移動し、蚊の体内で2回脱皮し、感染幼虫である体長約1mmの第3期幼虫(L3)へと成長する。第3期幼虫を持つ蚊がイヌを吸血するときに第3期幼虫は蚊の刺した傷からイヌの体内へ移動する。イヌの体内に入った第3期幼虫はイヌの皮下組織等に潜み、そこで2回脱皮し、感染後約2ヶ月で第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)となる。第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)はさらに約1〜2ヶ月で静脈を通ってイヌの心臓に移動し、肺動脈に定着し、感染から約6〜7ヶ月で成熟し成虫となり、雌雄が揃えば、ミクロフィラリアを産む。 本発明でイヌ糸状虫感染のマーカーとして用いるイヌ糸状虫の22kDaタンパク質は、cDNAライブラリーの解析から、感染後150日程度の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟雌成虫(female adult worms)において発現していた。従来のイヌ糸状虫の感染の検出において、マーカーとして用いられていた抗原は感染後190〜200日程度の成虫でのみ発現しているので、感染後190〜200日程度経過しないと測定することはできなかった。イヌ糸状虫22kDaタンパク質は上記のように感染後150日程度の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟成虫(adult worms)において発現し、発現した糸状虫22kDaタンパク質は第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟成虫(adult worms)から放出され、イヌ血液中に存在する。そのため、糸状虫22kDaタンパク質をマーカーとして用いた場合、成熟以前の比較的早期にイヌ糸状虫の感染を検出することができる。 また、イヌ糸状虫の22kDaタンパク質は、イヌ血液中において抗体と結合せず遊離の状態で存在し得る。イヌ血液中の抗原を抗原抗体反応を利用してin vitroで測定しようとする場合、測定試薬として作製した該抗原に対する抗体がin vitroで抗原と結合する必要がある。しかしながら、測定しようとする抗原にイヌ血液中でイヌ抗体が結合すると、抗原と抗体の複合体を形成し、該抗原の抗原決定基(エピトープ)がブロックされるので、in vitroで測定に用いようとする抗体が測定しようとする抗原に結合することができない。この結果、抗原に対する抗体を用いて抗原抗体反応を利用した測定が困難になる。特に、抗原上の複数の抗原決定基を利用して測定を行うサンドイッチアッセイの実施が困難になる。 本発明でマーカーとして用いるイヌ糸状虫22kDaタンパク質はイヌ血液中で抗原決定基をブロックされることなく、フリーの状態で存在する。その結果、22kDaタンパク質に測定用抗体が結合し、正確に高感度で測定することができる。 イヌ糸状虫の22kDaタンパク質は、上記の塩基配列情報に基づいて、遺伝子工学的手法によりリコンビナントタンパク質として作製することができ、抗体の作製のための免疫原として用いることができる。また、上記のアミノ酸配列情報に基づいて、全長タンパク質または全長タンパク質の部分断片を合成し、免疫原として用いることもできる。また、イヌ糸状虫から抽出することもできる。 イヌ糸状虫の22kDaタンパク質を測定するための抗体はポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体は、22kDaタンパク質をマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヌートリア、モルモット、ヒツジ、ブタ、ウマ等の動物に投与することにより作製することができる。モノクローナル抗体も例えば、ケーラーとミルステインの方法(Kohler, G. and Milstein, C., Nature, 256, 495-497, 1975)等の公知の方法により作製し得る。例えば、イヌ糸状虫22kDaタンパク質で免疫したマウスの脾細胞またはリンパ節細胞とマウスのミエローマ細胞との細胞融合により得られるハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマの培養上清または該ハイブリドーマを腹腔内に投与したマウスの腹水から調製することができる。被免疫動物は、マウスに限定されずラット、モルモット等も利用可能である。ミエローマ細胞は、一般に被免疫動物と同種の動物より得られたものを用いるが、異種間でも可能な場合がある。また、免疫されていない動物の脾細胞またはリンパ節をin vitroで免疫して、感作細胞を得ることもできる。ハイブリドーマのスクリーニングは、種々の免疫化学的方法で実施することができ、例えばELISA法、ウエスタンブロット法等が利用できる。ハイブリドーマ上清またはマウス腹水からのモノクローナル抗体の調製は、当業者に知られた免疫グロブリン精製法を用いればよく、例えば、硫安分画法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲルろ過等により行うことができる。 本発明で用いる抗体は、完全抗体であっても、Fab、Fab’、F(ab‘)2、Fv等の抗原結合部位を有するフラグメントであってもよい。あるいは、組換え体として発現されたscFv、dsFv、diabody、minibody等の組換え抗体であってもよい。本発明において、「抗体」という語は、イヌ糸状虫の22kDaタンパク質に特異的なこれらの断片をも包含する。これらの断片の調製方法はこの分野において周知である。このようにして得られた抗体を用いて、イヌ生体試料中のイヌ糸状虫の22kDaタンパク質の濃度を測定(定量)することができる。イヌ生体試料としては、血漿、血清、全血等を用いることができる。 測定は、ELISAなどの酵素免疫測定法(EIA)、放射線免疫測定法(RIA)、蛍光抗体法、凝集反応を利用した方法、イムノクロマトグラフィー法等の当業者に知られた方法により行うことができる。これらの方法は抗原抗体反応を利用した測定法の一例であり、これらの方法には限定されず、抗原抗体反応を利用したあらゆる測定法を適用することができる。 例えば、ELISAにおいては、抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体をマイクロタイタープレート等の担体に物理吸着や化学結合により固相化する。固相化量は、特に限定されないが、担体がマイクロタイタープレートの場合、1ウェル当たり数ngから数十μgが望ましい。固相化は固相化すべき抗体を適切なバッファーに溶解し、担体と接触させ行うことができる。例えば、マイクロタイターウェルを用いる場合、抗体溶液をマイクロタイタープレートのウェルに分注し一定時間置くことにより固相化することができる。基質を固相化した後は、アッセイ中の非特異的結合を防ぐためにウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、卵白アルブミン等を含んだブロッキング溶液を用いてブロッキングを行うのが好ましい。次いで、固相化担体とサンプルを反応させ、洗浄後、標識した抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を反応させる。標識は、β-D-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼやグルコースオキシダーゼ等の酵素を用いて行うことができる。また、この際、抗体をビオチンで標識し、さらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させることもできる。次いで、酵素に対応した基質を反応させ、発色を測定することによりサンプル中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質を定量することができる。ELISAにおいては、多数のウェル(例えば、96穴)を有するマイクロタイタープレートに基質を固相化させ、ウェル中で抗原抗体反応を行わせることにより一度に大量測定が可能になる。また、全自動EIA測定装置などの自動測定機器を用いることも可能になる。 凝集反応を利用した方法は、粒子に結合した抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体と検体試料とを反応させ、凝集反応を生起させた後、得られた凝集の程度に基づいてイヌ糸状虫22kDaタンパクを測定する。該方法において用いられる粒子としては、直径0.05〜10μmの、好ましくは直径0.1〜0.4μmのラテックス、直径0.5〜10μmのゼラチン粒子および動物赤血球を挙げることができる。粒子への抗体の結合方法は、この分野において周知であり、物理吸着あるいは共有結合のどちらの結合様式も適応可能である。 該方法において、粒子上に抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体が結合されている粒子と検体試料とを、例えば、黒色のスライドグラス上で混合し、凝集して沈殿する粒子の有無を観察することにより検体試料中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質を検出することができる。また、この凝集の吸光度測定によりイヌ糸状虫22kDaタンパク質を定量することもできる。更にまた、Pulse Immunoassayにより検出することも可能である。 凝集反応は、スライドグラス、96ウェル平底プレート、96ウェルU底プレート、96ウェルV底プレート等を用いて行わせることができる。また、凝集反応を行わせる際に、非特異的な反応を抑制するために、TritonX-100、Tween20、Tween80等の適当な界面活性剤を添加してもよい。 凝集の有無は、肉眼で判定することができる。また、光学的機器を用いれば、大量にかつ正確に判定することができる。光学的機器を用いる場合、最終的な凝集像を得る必要は必ずしもなく、凝集反応に伴う反応液系の濁度の変化を測定すればよい。光学的機器による測定は、散乱光、吸光度または透過光強度を検出することにより行うことができる。 イムノクロマトグラフィーにおいては、ニトロセルロース膜等の適当な固相支持体上に抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を固定化し、該固相支持体に毛管現象を利用して、金コロイド等の適当な標識物質で標識した抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体とイヌ糸状虫22kDaタンパク質の複合体を展開移動させる。この結果、固定化した抗体-タンパク質-標識抗体の複合体が固相支持体上に形成され、該複合体から発する標識試薬のシグナル(金コロイドの場合は、抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を固定化した固相支持体部分が赤くなる)を検出することにより、イヌ糸状虫22kDaタンパク質を検出することができる。イムノクロマトグラフィー装置の製造およびイムノクロマトグラフィーによる検出は公知の方法で行うことができる。イムノクロマトグラフィーによれば、イヌ検体試料中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質を30分以内、好ましくは15分以内、さらに好ましくは10分以内で検出することが可能である。 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例1 cDNA抽出用のイヌ糸状虫体の作出 血液検査により、イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)のミクロフィラリアが陽性であることを確認したビーグル犬をネンブタールで麻酔し、吸血部分の毛をバリカンで刈り、麻酔処置したイヌの上にトウゴウヤブカ飼育ケージを載せトウゴウヤブカに吸血させた。トウゴウヤブカをその後25℃で飼育し、吸血後2週間後に吸血したトウゴウヤブカから感染幼虫(第3期幼虫:L3)を採取した。該感染幼虫を5頭の5歳の雄ビーグル犬に100虫ずつ皮下に注入することによりイヌ糸状虫のイヌへの人工感染を行った。 イヌへの感染後剖検により雌88虫体、雄94雄虫体を回収し、抗体産生およびイヌ糸状虫抗原の遺伝子ライブラリー作製のために用いた。 上記のイヌ糸状虫を感染させた5頭のビーグル犬から、感染0、2、4、6、8、10、12、14、18、22、26および29週後に、経時的感染血清採取して血清ライブラリーを構築した。感染0週および29週間後の血清を以下の検討に用いた。また、自然感染犬から標準陽性血清を作製した。以下の実施例において、経時的感染血清をパネル血清ということがある。 表1に、用いた5頭の人工感染ビーグル犬における虫体回収数および抗原保有状況を示す。血中抗原は、スナップ・ハートワームRT(米国IDEXX Laboratories, Inc.社製、IDEXX日本販売)を用いて検出した。試験方法は、キット添付の説明書に従い、供試血清と添付の試薬を反応させたものをディバイスに反応させ、青色の陽性反応スポットが出現したものを陽性とした。実施例2 イヌ糸状虫感染犬の抗体の分析 実施例1で作製した経時的感染血清のイヌ糸状虫抗原に対する抗体価の推移を、IgG1、IgG2、IgA、IgE、IgMの各抗体クラスまたはサブクラスについてELISAで測定した)。結果を図1に示す。IgG1、IgG2およびIgM抗体は感染4週間後までに陽転した。本実施例の結果から、イヌ糸状虫成虫に含まれるタンパク質抗原であって特異性の高いタンパク質抗原が得られればイヌの糸状虫の感染を早期に診断できることが判明した。実施例3 イヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)cDNAライブラリー作製とクローン選択 凍結保存(-80℃)されたイヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟雌成虫(female adult worms)それぞれにTRIzol(登録商標)試薬(15596;Invitrogen)を加え、液体窒素内で、ポリトロン ホモジナイザー(PT 10-35;Kinematica)にかけて粉砕した。このホモジネートに添加TRIzol量の1/5量のクロロフォルム(和光純薬)を加えボルテックスで攪拌後、冷却高速遠心機(Allegra X-15R;Beckman-Coulter)で遠心分離した。水層を新しいマイクロ遠心管に回収し、等量のイソプロパノール(和光純薬)を加えて、総RNAを沈殿分離した。さらに、この総RNAからキット(polyAtract mRNA キットz5200;Promega)を用いてmRNAを精製し、oligo-d(T)20-attB2-Biotin primerを用いて、Transcriptor High Fidelity cDNA Synthesis Kit (5081955;Roche Applied Science)の手順に従ってcDNAへの逆転写を行った。相補鎖を合成後cDNA分画カラム(18092015;Invitrogen)で高分子cDNAを回収した。以下、クロンマイナーキット(A11180 ;Invitrogen)の操作手順に従って、エントリークローン作製のため、pDONR221ベクターへイヌ糸状虫遺伝子の挿入を行い、Gateway cDNAライブラリーを作製した。このGateway成虫cDNAライブラリーからクローニングを行い、挿入遺伝子の長さをcolony direct PCRで調べ、挿入部分のシークエンス解析を行った。実施例4 イヌ糸状虫遺伝子の解析および発現1.イヌ糸状虫遺伝子の解析イヌ糸状虫cDNAライブラリーの解析 実施例3の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟雌成虫(female adult worms)より作製したcDNA(エントリークローン)ライブラリーから、約2,000個のクローンの末端の塩基配列を決定し、データベースを利用した遺伝子ホモログ検索を行った。その結果、イヌ糸状虫の遺伝子(推定)の開始コドンを含むものが約400個見つかった。2.イヌ糸状虫遺伝子の一過性発現 上記1.で配列解析したエントリークローンのうち、開始コドンを有する上記の全長クローン(約400個)を選別して、Gatewayクローニングシステム(Invitrogen社)を利用して、遺伝子をクローニングし、一過性発現させた。すなわち、すべての遺伝子を培養細胞に導入後2日で発現が確認できる新規に開発したGateway対応一過性発現ベクター(pA3 hr5 GW)に挿入し、カイコ培養細胞(NIAS-Bm-Ke17;特願2009-200187、特願2010-193674) で遺伝子発現を行った。Gateway対応一過性発現ベクター(pA3 hr5 GW)は、pA3 hr5発現ベクターattR1 attR2配列を持つGatewayリーディングフレームカセットを組み込むことによりGateway対応発現ベクターとした。 上記のカイコ胚子組織由来培養細胞株NIAS-Bm-Ke17細胞は、無血清培養液SH-Ke117(シマ研究所製:東京都板橋区)を用いて、5×100,000細胞数/(ml培養液)の初期密度で25℃設定の恒温器内で培養を開始し、培養開始後4日目の対数的増殖期の細胞を組換えウイルスの接種用に準備した。cDNAクローンのBmGWNo.122をGatewayベクターに導入した組換えBmNPVウイルスの接種の前に、上記の細胞を、2.5℃の冷蔵庫内に48時間保存した。これは導入遺伝子の転写を促すという新たに開発したアイデアを利活用するためである(Imanishi et al. (2012) In Vitro Cellular & Developmental Biology-Animal. Vol.48,No.3,p137-142)。次に、これらの低温処理細胞を細胞培養用フラスコ(住友ベークライト製:MS-21050)に、4×1,000,000細胞数/(4ml培養液)を加え、そして細胞培養液の2.5%量のカイコ熱処理体液を加えた。ウイルス感染と細胞培養は、27℃に設定した恒温室内で96時間保持することによってウイルスの感染を促し、所定の時間経過後、細胞液をパスツールピペット等を用いて、培養フラスコからプラスティック製無菌遠心管(住友ベークライト製:MS-56500)に回収し、遠心分離(1,000rpm、5分間)により、感染細胞を沈殿させ、上清を除去して、発現タンパク質の精製用とした。 組換えウイルスの細胞への接種に当たっては、NIAS-Bm-Ke17細胞は無血清培地で培養のため、ウイルス等の感受性は著しく劣る。そのため、感受性の増強のため、先に記述した細胞の低温処理に加えて、増強剤としてカイコの熱処理体液を培養液に添加する必要がある。カイコ体液は普通育蚕品種(ここでは、日137号×支147号を用いた)を桑葉により、稚蚕期は28℃で飼育し、壮蚕期は25℃で飼育し、壮蚕期の5齢の3日目〜4日目の最大肥大蚕の脚部をはさみで切断することにより、カイコの体液をプラスティック製無菌遠心管(住友ベークライト製:MS-56500)に氷冷下で採取した。遠心管の総容量の8割位採取した時点で、60℃に温めたウオーターバス内に30分間浸漬した。その後、再度氷中にて冷却後、遠心分離(3,000rpm、30分間)し、熱凝固タンパクを沈殿させ、上澄みの体液を別の無菌遠心管に移して-80℃の冷凍庫内で使用まで保存した。培養液への添加に先立って、カイコ熱処理体液は、0.45μm孔径サイズのディスポーザブルフィルター(ザルトリウスメカトロニクスジャパン:ミニザルト0.45μm孔径)を用いて除菌した。実施例5 イヌ糸状虫抗原(22kDaタンパク質)の検定一過性発現細胞試料の作製 実施例3の方法によりイヌ糸状虫の第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)と成熟雌成虫(female adult worms)から作製したcDNAライブラリーを一過性発現ベクター(pA3hr5GW)に組込み、カイコ培養細胞株NIAS-Bm-Ke17の系にて発現した、約400個cDNA発現細胞をそれぞれ1mlずつマイクロチューブにとり3000rpmで遠心して沈殿物をPBS 1mlで遠心洗浄を3回行った。この沈殿物を氷中浴槽にて冷却しながらマイクロチューブホモジナイザーで1分破砕を5回行いSDS-PAGEの試料とした。SDS-PAGEに供した試料は、イヌ糸状虫由来のcDNAのうち、遺伝子情報が判明している一過性発現細胞が発現する試料であった(No.52、66、73、113、122、135、142、143、151、166、167、170、171および177)。SDS-PAGEおよびウエスタンブロット解析サンプルの調整: トリス塩酸バッファー(pH6.8)中にSDSと2−メルカプトエタノールを含む×2のサンプルバッファーと1:1に混合した一過性発現細胞抽出タンパク質は100℃5分の加熱処理を行った。SDS-PAGE: 17ウエルの既製12.5%Poly-Acrylamide Gel (マルチゲルIIミニ 12.5%:コスモバイオ)に10μlずつ各ウエルに流し込みLaemmliの泳動バッファーで20 mA約90分間 電気泳動を行った。ウエスタンブロット: 泳動終了後ゲルは5分間精製水中にて振とうした後にメタノールを含まないTowbinの不連続バッファーにて5分間振とうした。このとき、ブロットするPVDF膜は、メタノール中にて5分間振とう後、Towbinの不連続バッファー中にて10分以上振とうした。またブロットに用いるろ紙は、メタノールを含まないTowbinの不連続バッファーに浸漬し、ガラス棒などを用いてろ紙に含まれる空気を除いた。これらを用いてセミドライ式ブロッティング装置にて陰極側からろ紙、アクリルアミドゲル、PVDF膜、ろ紙の順に重ね、PVDF膜1cm2あたり2mAの電流を60分間流すことでブロットした。ブロットされたPVDF膜はpH7.2のPBSで調製した0.1%(w/v)ブロックエース(雪印乳業)に60分間浸漬し、0.1%Tween含有PBSにて洗浄後、PBSにて希釈したHRP標識抗糸状虫ポリクローナルウサギ抗体(後記の実施例5で作製)と60分間反応させた。この後にPVDF膜を0.1%Tween含有PBSにて洗浄し、TMB Membrane Peroxidase Substrate(KPL)を用いて発色させた。ウエスタンブロットにおいて、後記の実施例5で作製した抗イヌ糸状虫特異ポリクローナル抗体を用いた。 結果を図2に示す。図2中、数字はcDNAの番号を示し、Mは分子量マーカー、nは陰性コントロールを示す。図2に示すように、分子量20kDa付近の位置に一過性発現No.122で陽性のラインが確認できた。この発現cDNA No.122のホモロジーを確認したところ、該22kDaタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトフィラリアsmall heat shock proteinの22kDaタンパク質をコードする遺伝子を配列相同性が高かったので、イヌ糸状虫由来ヒトフィラリアsmall heat shock protein類似タンパク質(22kDa)と名付けた。該22kDaタンパク質をコードするcDNAクローンをBmGWNo.122とした。 なお、cDNA No.122は第5期幼虫(未成熟虫:immature adult)由来であった。実施例6 抗イヌ糸状虫抗体の作製(1)イヌ糸状虫破砕液を抗原として用いたポリクローナル抗体の作製 イヌ糸状虫5gを-80℃に凍結して乳鉢にて良く磨りつぶし生理食塩水2mlにて乳鉢からガラス-テフロンホモジナイザーに洗い込み氷中浴槽にて冷却しながら10分間破砕を行った。この破砕液を遠心管にとり、2000rpmで5分間遠心をして上清をOD280にて吸光度を測定し、吸光度よりタンパク濃度を換算して1mg/mlの濃度で1週間おきに4回フロイント完全アジュバントと混合してウサギ皮下に免疫をして1ヶ月後に採血を行った。採血した血清はイヌ血清タンパク質を結合したアフィニティークロマトカラムにて非特異抗体を除去後にプロテインGカラムにてIgGに精製して抗イヌ糸状虫特異ポリクローナル抗体とした。(2)マウスモノクローナル抗体の作製免疫抗原の調整: 実施例4に記載の一過性発現で陽性と判定できたクローンBmGWNo.122をバキュロウイルス発現ベクター(pBmGate)に挿入し、BmNPVウイルスに導入し組み換えウイルスを作製した。該組換えウイルスをカイコ培養細胞株(NIAS-Bm−Ke17)に感染させて、以下のように、22kDaタンパク質の大量発現を行った。 NIAS-Bm-Ke17細胞を細胞培養フラスコ(住友ベークライト株式会社製:MS−21050)で数多く培養し、培養開始7日目において、全フラスコの細胞数を計測した。次に先の細胞培養フラスコより、大型の細胞培養フラスコ(住友ベークライト製:MS-21250)に1個当たり、5×1000,000細胞数になるように調整して、細胞を含む15mlの培養液を加えた。1回の実験につき、20個のフラスコ、すなわち1×100,000,000細胞数を用いた。これらの20個の細胞培養フラスコを2.5℃の冷蔵庫に48時間保存した。次にNo.122の組換えウイルスをこれらの細胞にMOI1になるウイルス濃度で接種し、細胞培養フラスコを27℃に96時間おいてウイルスの感染と組換え遺伝子の大量発現を行った。 大量発現培養を行った1Lの細胞と培養混液をアセトンドライアイスにより凍結融解を5回繰り返し、培養液を3000 rpmで10分間遠心分離を行い、限外ろ過法にて5mlまで濃縮を行った。この濃縮培養上清液の2mlを0.2%アジ化ナトリウム加PBSで平衡化したセファアクリルS-200にてゲルろ過を行った。フラクションコレクターで分収した各フラクションをSDS-PAGE電気泳動にて確認を行い、目的のフラクションを分取して限外濃縮で1mlに濃縮した後に1000mlのPBSにて透析を行った。細胞融合: 透析後のタンパク質濃度は波長270ナノメートルの紫外線吸光度から、タンパク質濃度を決定後、タンパク質濃度を1mg/mlとなるように調整して完全フロイントアジュバントと1:1でよく混和しての5週齢♀のBALB/Cマウスに0.5ml/匹で3匹の腹腔内に免疫を行った。 4週間後に同濃度のタンパク質を0.2ml皮下に接種したのち72時間目に脾臓を無菌的に摘出してあらかじめ継代培養を進めていたP3U1マウスミエローマ細胞と脾臓細胞の比率を1:10でPEG1500を使って融合を行った。融合を行った細胞は、96穴マイクロプレートの各穴に脾臓細胞が10万個になるように調整して各穴に分注を行った。播種して24時間後に2倍のHAT培地を同量加えて融合細胞の選択を行った。陽性抗体の確認: HAT培地により選択された融合細胞より分泌する陽性抗体の選択には虫体抽出抗原を用いた。抽出抗原を5μl/mlとなるように希釈をして96穴マイクロプレートに50μlずつ分注後にマイクロプレートを4℃にて24時間以上静置した。静置後のマイクロプレートはPBSにてよく洗浄後PBSに1%になるようにBSAを溶解した液を100μlずつ分注してさらに24時間4℃に静置してブロッキングを行った。このプレートをPBSで3回洗浄後に細胞融合マイクロプレートの上清を50μl滴下して37℃で1時間反応後にPBSで3回洗浄して抗マウスイムノグロブリンHRP標識ウサギ抗体で結合した融合抗体を検出した。結果を図3に示す。図3左の欄は、検定を行ったモノクローナル抗体のクローン番号を示す。虫体抽出抗原と強く反応するモノクローナル抗体(クローン名、3H2;サブクラス、IgM)が得られた。(3)イヌ糸状虫陽性血清との反応確認 上記(1)で作製した抗糸状虫体ポリクローナル抗体を20μg/mlとなるようにPBSで調整して50μlずつマイクロプレートの各穴に滴下後同様に感作、ブロッキング後にイヌ糸状虫感染パネル血清を50μl滴下して37℃で1時間反応した。このプレートをよく洗浄後に融合細胞で陽性となったマウスモノクローナル抗体(3H2)を50μl滴下して37℃で1時間反応後によく洗浄して抗マウスガンマーグロブリンHRP標識ウサギ抗体で反応後によく洗浄して定法により発色を行った。(4)イヌ糸状虫感染イヌ検出用ELISA測定系の確立 感染犬パネル血清と反応するモノクローナル抗体(3H2)を産生するハイブリドーマを無血清培地にて培養し、モノクローナル抗体を製造し、定法に従い抗体に直接HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を標識した。 96穴マイクロプレートは虫体免疫で得られた抗イヌ糸状虫体ウサギポリクローナル抗体を20μg/mlで感作し固相した後に1%BSAでブロッキングして減圧乾燥後に密封して保管した。 前記の抗イヌ糸状虫体ウサギポリクローナル抗体固相化プレートおよびHRP標識抗22kDaタンパク質を用いたELISA系を確立した。 確立したELISA系を用いて抗22kDa抗体を使用したイヌ糸状虫感染の検出系の性能を評価した。 上記ELISAプレートに、一次抗体として実施例1の5頭のイヌ糸状虫人工感染イヌ血清の経時血清(感染前から感染29週間後)、4頭の陽性イヌ標準血清(自然感染イヌ)、4頭の陰性犬標準血清(ビーグル犬)、二次抗体として上記(4)で製造したHRP標識モノクローナル抗体(3H2)を反応させ、この際、対照として標準陽性犬4頭(陽性対照:Positive control)と陰性犬4頭の血清(陰性対照:Negative control)を用いた。ELISAを行った。モノクローナル抗体(3H2)を用いた場合に、感染前血清の吸光度(0.118〜0.124)と標準陰性血清の吸光度(0.102〜0.122)と比較して、陽性標準血清の吸光度は0.302〜0.806であった。人工感染イヌ血清においては、4頭とも26〜29週で陰性対照よりも抗体価が高くなり、また、No.3およびNo.5のイヌ個体では人工感染29週間後血清における吸光度は高い反応順から0.339、0.219、0.180、1.78、0.141であり、吸光度0.180以上の検体は市販キットの陽性成績と一致した。モノクローナル抗体(3H2)を用いた測定の結果を図4に示す。(5)イヌ糸状虫感染犬検出用ラテックス凝集試薬の開発 結合基処理を行ったラテックス粒子(JSR社製)を1%(v/v)にPBSで調整して抗糸状虫マウスモノクローナル抗体(3H2)を等量混合し、50℃で1時間振盪監査を行った。感作したラテックス粒子は洗浄後1%BSAを含むPBSにて4℃一昼夜ブロッキングを行った。抗イヌ糸状虫コートラテックス凝集法によるイヌ糸状虫陽性血清の測定 市販イヌ糸状虫診断キットで陽性と判断したイヌ血清と陰性の血清をそれぞれ50検体ずつ作製したラテックス凝集試薬で測定を行った。 各血清を5倍、10倍に0.5%BSA加PBSにて希釈して混合し、ラテックス凝集自動分析機(日立7180)にて測定を行った。 本発明の方法により、イヌのイヌ糸状虫による感染を早期に正確に診断することができる。 配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体。 モノクローナル抗体である、請求項1記載のイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体。 請求項1または2に記載のイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体を用いて、イヌ血液中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質またはその断片を測定することにより、イヌ糸状虫感染を検出する方法。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質またはその断片を用いて、イヌ血液中の抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を測定することにより、イヌ糸状虫感染を検出する方法。 請求項1または2に記載のイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体を含む、イヌ糸状虫感染を検出するためのキット。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質またはその断片を含む、イヌ糸状虫感染を検出するためのキット。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質からなる、イヌ糸状虫感染を検出するための診断用マーカー。 イヌ糸状虫22kDaタンパク質の、イヌ糸状虫感染を検出するための、検出用マーカーとしての使用。 【課題】イヌ糸状虫22kDaタンパク質をマーカーとして用いるイヌ糸状虫感染の検出法、および該検出に用いるイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体の提供。【解決手段】配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するイヌ糸状虫22kDaタンパク質に対する抗体、およびイヌ血液中のイヌ糸状虫22kDaタンパク質または抗イヌ糸状虫22kDaタンパク質抗体を測定することを含むイヌ糸状虫感染の検出方法。【選択図】なし配列表


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