タイトル: | 公開特許公報(A)_アビジン−ビオチン連結標識試薬を用いたイムノクロマトグラフ用試験具及びその利用 |
出願番号: | 2012076748 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 33/543,G01N 33/53 |
杉山 和之 吉田 真理 JP 2013205335 公開特許公報(A) 20131007 2012076748 20120329 アビジン−ビオチン連結標識試薬を用いたイムノクロマトグラフ用試験具及びその利用 三菱化学メディエンス株式会社 591122956 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 杉山 和之 吉田 真理 G01N 33/543 20060101AFI20130910BHJP G01N 33/53 20060101ALI20130910BHJP JPG01N33/543 521G01N33/53 UG01N33/543 501JG01N33/543 501M 8 OL 11 本発明は、イムノクロマトグラフ用試験具に関する。 毛管現象を利用するクロマトグラフの手法と免疫学的手法とを組み合わせたイムノクロマトグラフ法は、簡便、且つ短時間で、試料中の被検物質を分析できる方法として、広く利用されている。 図1に、従来の一般的なイムノクロマトグラフ用試験具を示す。展開方向の上流(同図において左側端部)から下流(同図において右側端部)に向かって、試料添加パッド8、展開パッド3、コンジュゲートパッド2、反応膜1、および吸収パッド4の順に、バックシート5上に配置されている。コンジュゲートパッドには、金コロイド粒子等の標識物質で標識された、被検物質と特異的に結合する第一親和性物質(標識試薬)が含浸されている。反応膜は、第一親和性物質とは異なる部位で被検物質と特異的に結合する第二親和性物質(捕捉試薬)が固定化されたテストライン6を有している。 つぎに、このイムノクロマトグラフ用試験具を用いた被検物質の分析について説明する。試験溶液を試料添加パッド8に供給すると、毛管現象により、展開パッド3を経由してコンジュゲートパッド2に移動する。すると、コンジュゲートパッドに含浸された標識試薬が、試験溶液中に溶出する。標識試薬を溶解した試験溶液は順次、毛管現象により反応膜1上のテストライン6へと展開する。ここで、試料中に被検物質が含まれていれば、展開中に形成された標識試薬と被検物質との複合体が、テストラインに固定化されている捕捉試薬に捕捉される。その結果、捕捉された標識物質により生じるシグナルの有無または程度を判定することにより、試料中の被検物質を分析することができる。 また多くの場合、テストラインより展開方向の下流側の反応膜上に、標識試薬に特異的に結合するが被検物質には結合しない物質(対照試薬)を固定化したコントロールライン7が設けられ、試験成立の可否を判定する指標として使用されている。コントロールラインでシグナルが検出された場合、測定に必要な量の試験溶液及び標識試薬がテストライン及びコントロールライン上を問題なく展開したことを意味するが、コントロールラインが検出されない場合には、測定に必要な量の試験溶液及び標識試薬が展開していない可能性があるため、その試験は不成立であるとみなされる。 コントロールラインに固定化される対照試薬としては、標識試薬に対する抗体が一般的に用いられてきた。例えば、標識試薬として被検物質特異的な標識マウスモノクローナル抗体が使用される場合、対照試薬には抗マウス抗体が用いられる。 ところが、血液等の生体試料を用いる試験では、ヒト抗マウス抗体(HAMA)等、種々の動物に対する異好性抗体を有する検体が存在するため、干渉除去抗体がしばしば使用される。干渉除去抗体は通常、被検物質特異的な標識抗体と同一種の非標識抗体が用いられ、標識抗体に比べて過剰に使用される。そのため、前記のような対照機構を有する試験具で干渉除去抗体を使用する場合、対照試薬に干渉除去抗体が捕捉されることにより、コントロールラインのシグナル強度は著しく減少するという問題があり、対照試薬の固定化量の増量や干渉除去抗体の使用量を控える等の対策が必要とされていた。 一方、特許文献1、2では、干渉物質の影響を受けない、独立した対照用標識物質を用意するイムノクロマトグラフ用試験具が提供されている。例えば、特許文献1では、標識試薬として被検物質特異的な標識抗体と標識ビオチンを混合したものを用意し、対照試薬としてアビジンを固定化したイムノクロマトグラフ用試験具が記載されている。 また、これまでに、測定感度の上昇あるいは製造上の有利性を目的として、アビジン−ビオチン反応を利用して第一親和性物質と標識物質とを結合させるイムノクロマトグラフ用試験具が報告されている(特許文献3、4)。しかし、いずれもアビジン−ビオチンを測定過程で反応させており、特許文献4の実施例では、対照用標識試薬を別途用意したイムノクロマトグラフ用試験具が用いられている。また、特許文献3には、アビジン(又はビオチン)結合抗体とマーカー標識ビオチン(又はアビジン)とを予め反応させておき、これを測定対象物質と反応させると、測定感度が低下するため好ましくない旨の記載がある(段落0011)。特開2001−033454号公報特開2009−085751号公報特開平10−68730号公報特表2010−512537号公報 しかしながら、対照試薬の固定化量の増量は物理的に限界があり、コストアップにも繋がる。また、干渉除去抗体の使用量を抑えることにより、測定結果が異好性抗体の影響を受けることがある。一方、特許文献1、2の試験具では、対照試薬用として別途に標識試薬を用意しなければならず、試薬調製の煩雑化とコストアップが問題となる。また、被検物質との反応には関与しない対照用標識試薬が展開することにより、テストライン上で非特異反応が生じる場合がある。 そこで本発明は、検体中に含まれる内在性成分(異好性抗体など)または試験試薬の成分(干渉除去抗体など)に影響を受けることがなく、かつ、対照用標識試薬を別途用意する必要の無い、改良された対照機構を備えるイムノクロマトグラフ用試験具を提供することを課題としている。 本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、標識試薬として、被検物質に特異的な第一親和性物質と標識物質とをアビジン−ビオチン反応を利用して連結したものを用い、対照試薬として、ビオチンを含むもの(ビオチン又はビオチン化物)を用いることにより、上述の欠点を全て解消できることを見出した。 アビジン−ビオチン反応は、イムノクロマトグラフ法などの試験法に一般的に利用されているが、アビジン−ビオチン間の相互作用は迅速に形成され、一度形成されると、相互作用は極めて幅広い範囲のpH、温度、有機溶媒およびその他の変性剤に影響されないことが知られているため、充分量の標識物質と第一親和性物質とを、アビジン−ビオチン反応を利用して連結させた標識試薬において、なおビオチン化物と結合可能なアビジンが残存しているとは考えられてこなかった。しかしながら本発明者らは、アビジン−ビオチン反応で連結した標識試薬において、意外にもビオチン化物と結合可能なアビジンが残存しており、対照試薬としてビオチン化物を用いることが可能であることに気がついた。さらに、アビジン−ビオチン反応で連結した標識試薬を用いることにより、良好なS/N比を呈するだけではなく、製造ロット毎の標識試薬性能を一定に保つという更なる利点を有するイムノクロマトグラフ用試験具を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、[1]被検物質と特異的に反応する捕捉試薬が固定化されているテストラインと、標識試薬と特異的に結合する対照試薬が固定化されているコントロールラインと、を備えるイムノクロマトグラフ用試験具であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、イムノクロマトグラフ用試験具、[2]対照試薬がビオチン化タンパク質である、[1]のイムノクロマトグラフ用試験具、[3]捕捉試薬が、第二親和性物質、又は、被検物質又はその類似体の競合物質である、[1]又は[2]のイムノクロマトグラフ用試験具、[4]第一親和性物質及び/又は第二親和性物質が抗体である、[1]〜[3]のいずれかのイムノクロマトグラフ用試験具、[5]干渉除去抗体を含む、[1]〜[4]のいずれかのイムノクロマトグラフ用試験具、[6]被検物質と標識試薬とを接触させる工程、被検物質と標識試薬との複合体を、被検物質に特異的に結合する捕捉試薬で捕捉する工程、被検物質と未反応の標識試薬を、標識試薬に特異的に結合する対照試薬で捕捉する工程、捕捉試薬および対照試薬で捕捉した標識試薬を検出する工程、を含む被検物質の分析方法であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、被検物質の分析方法、[7]被検物質を、被検物質と特異的に反応する捕捉試薬で捕捉する工程被検物質と捕捉試薬との複合体に、標識試薬を接触させる工程被検物質と未反応の標識試薬を、標識試薬に特異的に結合する対照試薬で捕捉する工程、捕捉試薬および対照試薬で捕捉した標識試薬を検出する工程、を含む被検物質の分析方法であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、被検物質の分析方法、[8]被検物質と標識試薬とを接触させる工程、被検物質と未反応の標識試薬を、被検物質又はその類似体の競合物質である捕捉試薬で捕捉する工程、被検物質と未反応の標識試薬を、標識試薬に特異的に結合する対照試薬で捕捉する工程、捕捉試薬および対照試薬で捕捉した標識試薬を検出する工程、を含む被検物質の分析方法であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、被検物質の分析方法、に関する。 本発明によれば、対照試薬が試験試薬の成分(干渉除去抗体等)の影響を受けないため、適切量の干渉除去抗体を使用することができるようになる。そのため、検体中に含まれる内在性成分(異好性抗体等)の影響も回避することが可能となる。これにより、テストライン及びコントロールラインにおける判定の確実性を高めることができる。また、対照用標識試薬を別途用意する必要が無いため、テストラインにおける対照用標識物質による非特異反応も生じることなく、簡便かつ低コストでイムノクロマトグラフ用試験具を製造することが可能となる。一般的なイムノクロマトグラフ用試験具の模式的断面図である。 本発明は、検体中の被検物質を分析するイムノクロマトグラフ用試験具及びその利用である。なお、本明細書における「分析」には、被検物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、被検物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。 以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の試験具は、標識試薬と対象試薬の構成を除いて、従来公知のイムノクロマトグラフ用試験具と同様の構成からなることができ、以下の実施形態に限定されるものではない。 イムノクロマトグラフ用試験具を用いた分析としては、競合法と非競合法があり、さらに抗原検出系と抗体検出系があるが、当業者であれば被検物質に応じて適宜試験法を選択し、本発明を利用することができる。一例として後述する実施例に詳細に説明するが、非競合法の抗原検出系の場合は、捕捉試薬に被検物質特異的抗体(第二親和性物質)、対照試薬にビオチン化BSA(ビオチン化物)を使用し、標識試薬として被検物質特異的抗体(第一親和性物質)と金コロイド(標識物質)とをストレプトアビジン−ビオチン反応で連結したものを使用することにより、一つの標識試薬でテストライン及びコントロールラインを判定することができる。 また、非競合法の抗体検出系の場合、例えば、被検物質がアレルゲン特異的IgE抗体の場合は、捕捉試薬にアレルゲン(第二親和性物質)、対照試薬にビオチン化BSA(ビオチン化物)を使用し、標識試薬としてヒトIgE抗体特異的抗体(第一親和性物質)と金コロイド(標識物質)とをストレプトアビジン−ビオチン反応で連結したものを使用することにより、一つの標識試薬でテストライン及びコントロールラインを判定することができる。 競合法の場合、例えば、被検物質がハプテンの場合は、捕捉試薬に競合用ハプテン、対照試薬にビオチン化BSA(ビオチン化物)を使用し、標識試薬としてハプテン特異的抗体(第一親和性物質)と金コロイド(標識物質)とをストレプトアビジン−ビオチン反応で連結したものを使用することにより、一つの標識試薬でテストライン及びコントロールラインを判定することができる。 本発明の試験具は、反応膜上に、被検物質と特異的に反応する捕捉試薬が固定化されているテストラインと、標識試薬と特異的に結合する第一親和性物質を含む対照試薬が固定化されているコントロールラインと、を少なくとも備え、被検物質を含むと推定される試験溶液が毛細管現象により、テストライン、コントロールラインの順序で通過するよう構成されている。テストラインは、必要に応じて2つ以上備えることも可能である。なお、テストラインおよびコントロールラインはライン状に制限されず、円形、多角形などの形状であってもよい。 本発明の試験具では、さらに反応膜の展開方向の上流側に試験溶液を導入する試料添加パッド、および、反応膜の下流側には上記試験溶液を吸い上げる吸収パッドを備えることが好ましい。被検物質と標識試薬との結合を試験具上で行う場合は、試料添加パッドと反応膜との間に、標識試薬を展開可能に保持したコンジュゲートパッドを備えることが好ましい。例えば、標識試薬が乾燥してコンジュゲートパッド上に保持されていることにより試験溶液が希釈されないので、高い濃度で被検物質と第一親和性物質や第二親和性物質を反応させて検出感度を上げることができる。また、必要に応じて、試料添加パッドとコンジュゲートパッドの間に展開パッドを備えてもよく、これらの部材が粘着性のバックシート上に配置されることが好ましい。 本発明の試験具に供される試験溶液には、被検物質を含む可能性のある検体又はその処理物(例えば、溶解物、希釈物など)だけでなく、前記検体又はその処理物に各種試薬類(例えば、標識試薬、干渉除去抗体など)を添加した混合物も含まれる。また、前記検体としては、被検物質を含む可能性のある限り特に限定されるものではなく、動物(特にヒト)から採取された血液、血清、血漿、尿、膿、涙液、汗、唾液、喀痰、鼻水などの体液、あるいは、糞便、臓器、組織、粘膜や皮膚、それらを含むと考えられる搾過物(スワブ)などの生体試料の他、菌やウイルス等の培養液、浮遊液、抽出物などを挙げることができる。 本発明に用いる標識試薬は、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが、アビジン及びビオチンを介して連結されたものを含む。前記標識物質は、当業者であれば、公知の物質から適宜選択して使用することができるが、例えば、金、銀、白金、パラジウム等の金属コロイド、高分子ポリマー微粒子であるラテックス着色粒子等の天然又は合成の樹脂及びその誘導体、色素を含有したリポソームやマイクロカプセルなどを挙げることができる。取扱い易さや感度の点を考慮すると、中でも金コロイドが好ましい。金属コロイドの粒径は特に限定されないが、約1〜500nmが好ましく、特に強い色調が得られる5〜100nmがさらに好ましい。また、前記第一親和性物質としては、被検物質と特異的に結合し、アビジン又はビオチンと結合できる物質であれば特に制限されないが、抗体、抗原、アプタマーなどが挙げられる。当業者であれば、被検物質に応じて適宜決定することができる。なお、抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、酵素処理あるいは化学処理により、F(ab’)2、Fab’或いはFab断片として使用してもよい。 本発明に用いる標識試薬は、アビジン(またはビオチン)固定化標識物質、及び、ビオチン(またはアビジン)結合第一親和性物質をそれぞれ調製した後、両者のアビジンとビオチンとを反応させることにより調製することができる。 アビジンは、標識物質と第一親和性物質のどちらに結合させても構わないが、標識物質に結合させる場合には、アビジン固定化標識物質およびビオチン化第一親和性物質をそれぞれ調製した後、両者を連結することが好ましい。なお、本発明に用いるアビジンとしては、卵白アビジン、ストレプトアビジンの他、ニュートラアビジン等の類似体を挙げることができる。非特異的結合が少ないため、ストレプトアビジンが特に好ましい。ビオチンとの結合能力を持ったものであれば特に限定されず、アミノ酸の変異、付加、欠失等を適宜行うことができる。 前記アビジン固定化標識物質は、物理的吸着法など、公知の方法により調製することができ、アビジンのビオチン結合能を失活させない方法であれば、何れの方法を利用してもよい。標識物質へのアビジン固定量により、テストライン及びコントロールラインの染色度合いはそれぞれ変動するため、使用する標識物質やアビジンの種類、または被検物質の感度や測定レンジに応じて、標識物質へのアビジン反応濃度は適宜設定することができる。 前記ビオチン化第一親和性物質は、公知の方法により調製することができ、第一親和性物質の結合能を失活させない方法であれば、何れの方法を利用してもよい。タンパク質のSH基、アミノ基、カルボキシル基、あるいは糖鎖にビオチンを結合できるものなど、多くのビオチン化試薬が市販されている。第一親和性物質として抗体を用いる場合、ビオチン化可能な抗体種は特に制限されず、全長としての(Whole)免疫グロブリン(Ig)、その酵素消化物であるF(ab’)2、Fab’或いはFab断片などを用いることができる。また、組み換え遺伝子操作により、ビオチンが導入されたタンパク質が抗体とキメラ化されて得られるキメラ抗体も、ビオチン化抗体として利用することが可能である。 本発明に用いる標識試薬では、標識物質と第一親和性物質とを直接結合させた標識試薬に比べて、製造ロット毎に生じる試薬性能のばらつきを一定に保ち、保存安定性を向上させることが可能となる。 本発明において、テストラインに固定化される捕捉試薬は、被検物質と特異的に結合する第二親和性物質、あるいは被検物質(又はその類似体)の競合物質を含む。例えば、一般的な非競合法の場合は、被検物質と特異的に結合する第二親和性物質を含み、競合法の場合は、被検物質(又はその類似体)の競合物質を含む。競合法は、低分子化合物あるいはハプテンなど、単独では抗原性が低いものが分析できるので好ましい。 前記第二親和性物質としては、被検物質と特異的に結合する限り特に限定されないが、抗体、抗原、アプタマー等が挙げられる。抗体は、酵素処理あるいは化学処理により、F(ab’)2、Fab’或いはFab断片として使用してもよい。第二親和性物質は、第一親和性物質と同じ部位に結合してもよいが、異なる部位で被検物質と特異的に結合することが好ましい。前記被検物質(又はその類似体)の競合物質は、第一親和性物質と特異的に結合する限り特に限定されないが、検体中の被検物質と同じ又は類似の構造を有するものが挙げられる。 本発明に用いる対照試薬は、ビオチンを含むものである限り特に限定されない。反応膜に直接ビオチンを固定化させてもよいが、支持体物質にビオチンを結合させて用いることが望ましい。支持体物質としてはタンパク質が好ましく、該タンパク質としては、ビオチン化試薬が反応できるタンパク質である限り特に限定されない。使用可能な該タンパク質としては、測定中に他の物質との非特異的な反応が無いものが好ましく、血清アルブミンが挙げられ、ウシ血清アルブミン(BSA)が特に好ましく挙げられる。組み換え遺伝子操作により調製した、あるいは、天然に存在する、ビオチンが導入されたタンパク質の利用も可能である。前記ビオチン化試薬には、ビオチン化第一親和性物質の調製と同様のものが挙げられるが、対照試薬の調製に用いるビオチン化試薬では、ビオチンに導入されたスペーサー長が、ビオチン結合第一親和性物質で用いたビオチンに導入されたスペーサー長に比べて、同等あるいは長いものを使用することが好ましい。 本発明の試験具は、被検物質特異的な第一親和性物質や第二親和性物質と反応することで誤判定の原因となりうる異好性抗体の影響を回避するため、干渉除去抗体を含む場合に特に有効である。前記干渉除去抗体としては、異好性抗体と反応可能な物質である限り特に限定されないが、第一親和性物質及び/又は第二親和性物質として用いる抗体と同一種の抗体であることが好ましい。例えば、第一親和性物質及び/又は第二親和性物質がマウスモノクローナル抗体である場合、干渉除去抗体にはマウス抗体が好ましく用いられる。また、干渉除去抗体は、被検物質が捕捉試薬及び/又は標識抗体と接触する前に含有されていることが好ましい。例えば、試験溶液(標識試薬、検体処理用試薬など)、あるいは部材(試料添加パッド、展開パッド、コンジュゲートパッドなど)のいずれか一つ以上に含まれていることが好ましい。当業者であれば、試験工程の違いに併せて、適宜、決定することができる。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。《実施例1:イムノクロマトグラフ用試験具の作製と評価》(1)標識試薬の作製(1−1)ストレプトアビジン固定化金コロイドの調製 520nmの吸光度が10となるように5mmol/Lリン酸緩衝液pH7.5で調製した10mLの金コロイド溶液(粒径40nm、田中貴金属)に、ストレプトアビジン(和光純薬)を混合時終濃度が0.1mg/mLとなるように混合した。 混合液を1時間撹拌した後、ポリエチレングリコール(Mw.20000、和光純薬社)溶液を終濃度0.5%となるように加え、さらに1時間撹拌した。続いてBSA(SIGMA社)溶液を終濃度1%となるよう加え、1時間撹拌しブロッキングを行った。この溶液を4℃、10000×g、10分間遠心分離して上清を取り除き、分散用緩衝液(1%BSA、0.05%ポリエチレングリコールを含む5mmol/Lリン酸緩衝液pH7.5)を加えて再分散した。再び4℃、10000×g、10分間遠心分離して上清を取り除き、分散用緩衝液に再分散させ、ストレプトアビジン固定化金コロイド溶液を調製した。(1−2)ビオチン化抗体(捕捉試薬)の調製 抗マイコプラズマ・ニューモニエ マウスモノクローナル抗体(MCM12)由来の2mg/mL F(ab’)2を、SH基還元剤(TCEP:PIERCE)を終濃度0.4mmol/Lになる様に添加しFab’化した後、マレイミド化ビオチン試薬であるEZ−Link Maleimide−PEG2−Biotin(スペーサー長29.1Å、PIERCE)を終濃度0.4mmol/Lになる様に添加し、結合させた。この反応物を分画分子量1万の限外ろ過膜を用いて、50mmol/Lリン酸緩衝液pH7.5にバッファー交換し、ビオチン化抗体を調製した。(1−3)標識試薬の調製 (1−1)で得られたストレプトアビジン固定化金コロイド溶液(OD520nm=9)10mLに、(1−2)で得られたビオチン化抗体を混合時終濃度が0.14mg/mLとなるように加え、25℃、1時間撹拌した後、4℃、20時間静置し、4℃、10000×g、10分間遠心分離して上清を取り除き、分散用緩衝液を加えて再分散した。再び4℃、10000×g、10分間遠心分離して上清を取り除き、分散用緩衝液に再分散させ、標識試薬とした。(2)対照試薬の作製 12mg/mL BSA(SIGMA)に、アミノ基に反応するビオチン化試薬EZ−Link NHS−PEG12−Biotin(スペーサー長56Å、PIERCE)を終濃度3.2mmol/Lになる様に添加し、結合させた後、分画分子量5万の限外ろ過膜を用いて、50mmol/Lリン酸緩衝液pH7.5にバッファー交換し、対照試薬とした。(3)イムノクロマトグラフ用試験具の作製(3−1)コンジュゲートパッドの作製 (1)で調製した標識試薬を、分散用緩衝液でOD520nm=4.5となるように調製した。これを、5mm×6mmのガラスファイバーパッド(ミリポア)に10μL染み込ませ、一晩室温で乾燥させて、コンジュゲートパッドを作製した。(3−2)反応膜の作製 30mm×6mmのニトロセルロースメンブレン(ミリポア)に、テストラインとして2mg/mLとなるように調製した抗マイコプラズマ・ニューモニエ マウスモノクローナル抗体(MCM19)溶液、コントロールラインとして2mg/mLとなるように調製した(2)の対照試薬を、塗布機(BioDot)を用いて幅1mm程度のライン状に塗布し、乾燥させて、反応膜を作製した。コントロールラインは、ニトロセルロースメンブレン下流端から9mmの位置に、テストラインは、ニトロセルロースメンブレン下流端から14mmの位置に設けた。(3−3)イムノクロマトグラフ用試験具の組み立て 69mm×6mmのバックシート(日栄化工)上に図1のように各部材を貼り付けた。まず、(3−2)で作製した反応膜を貼り付けた。さらに、(3−1)で作製したコンジュゲートパッド、17mm×6mmのガラスファイバーパッド(ミリポア)からなる展開パッド、10mm×6mmの試料添加パッド(日本ポール)、26.7mm×6mmの吸収パッド(日本ポール)を重ねて貼り付けて、イムノクロマトグラフ用試験具を作製した。(4)イムノクロマトグラフ用試験具の評価 評価用検体として、マイコプラズマ・ニューモニエ菌液を用意した。培養したマイコプラズマ・ニューモニエを、抽出液に104〜107CFU/mLになるように浮遊させ、陽性検体とした。また、評価用陰性検体として、マイコプラズマ・ニューモニエ菌を含まないものを用意した。なお、抽出液の組成は、0.1mmol/L リン酸緩衝液pH7.5、0.15mmol/L NaCl、1% TritonX−100、1% BSAである。 (3)で作製した各イムノクロマトグラフ用試験具に、各検体を120μL滴下し、15分後のテストラインおよびコントロールラインの染色を判定した。結果を表1に示す。染色度は、染色の強さが弱いものから強いものまでを「+」から「++++++(6+)」として、判定用色見本と比較することにより半定量的に評価した。「−」は陰性の反応を示す。 本発明の試験具によって、104〜107CFU/mLの濃度域に渡って、一つの標識試薬でテストライン及びコントロールラインを判定することが確認できた。通常、検出可能なレンジとして求められている104〜107CFU/mLの濃度範囲で使用できるので有用であることがわかった。《実施例2:干渉除去抗体を用いた場合の効果の確認》 サンプル処理パッド(日本ポール)に、0〜10mg/mLのノーマルマウス抗体(MaK33 IgG1:ロシュ)を染み込ませたのち乾燥させ、干渉除去抗体を含む試料添加パッドを作製した。評価用検体として、105CFU/mLのマイコプラズマ・ニューモニエ菌液を使用した。それ以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマトグラフ用試験具を作製し、判定時のテストライン及びコントロールラインの視認性について評価した。 その結果を表2に示す。染色度は、染色の強さが弱いものから強いものまでを「+」から「++++++(6+)」として、判定用色見本と比較することにより半定量的に評価した。 干渉除去抗体と捕捉抗体及び標識抗体が同じサブクラスのマウス抗体であっても、コントロールラインの低下が認められなかった。本発明の試験具では、異好性抗体および干渉除去抗体の影響を回避可能であることが確認できた。 本発明の試験具によって、一つの標識試薬でテストライン及びコントロールラインを確実性高く判定できる。また、対照用標識試薬を別途用意する必要が無いため、テストラインにおける対照用標識物質による非特異反応も生じることなく、簡便かつ低コストでイムノクロマトグラフ用試験具を製造することが可能となり、産業上有用である。 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。1・・・反応膜;2・・・コンジュゲートパッド;3・・・展開パッド;4・・・吸収パッド;5・・・バックシート;6・・・テストライン;7・・・コントロールライン;8・・・試料添加パッド。 被検物質と特異的に反応する捕捉試薬が固定化されているテストラインと、標識試薬と特異的に結合する対照試薬が固定化されているコントロールラインと、を備えるイムノクロマトグラフ用試験具であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、イムノクロマトグラフ用試験具。 対照試薬がビオチン化タンパク質である、請求項1に記載のイムノクロマトグラフ用試験具。 捕捉試薬が、第二親和性物質、又は、被検物質又はその類似体の競合物質である、請求項1又は2に記載のイムノクロマトグラフ用試験具。 第一親和性物質及び/又は第二親和性物質が抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイムノクロマトグラフ用試験具。 干渉除去抗体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイムノクロマトグラフ用試験具。 被検物質と標識試薬とを接触させる工程、被検物質と標識試薬との複合体を、被検物質に特異的に結合する捕捉試薬で捕捉する工程、被検物質と未反応の標識試薬を、標識試薬に特異的に結合する対照試薬で捕捉する工程、捕捉試薬および対照試薬で捕捉した標識試薬を検出する工程、を含む被検物質の分析方法であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、被検物質の分析方法。 被検物質を、被検物質と特異的に反応する捕捉試薬で捕捉する工程被検物質と捕捉試薬との複合体に、標識試薬を接触させる工程被検物質と未反応の標識試薬を、標識試薬に特異的に結合する対照試薬で捕捉する工程、捕捉試薬および対照試薬で捕捉した標識試薬を検出する工程、を含む被検物質の分析方法であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、被検物質の分析方法。 被検物質と標識試薬とを接触させる工程、被検物質と未反応の標識試薬を、被検物質又はその類似体の競合物質である捕捉試薬で捕捉する工程、被検物質と未反応の標識試薬を、標識試薬に特異的に結合する対照試薬で捕捉する工程、捕捉試薬および対照試薬で捕捉した標識試薬を検出する工程、を含む被検物質の分析方法であって、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである、被検物質の分析方法。 【課題】検体中に含まれる内在性成分(異好性抗体など)または試験試薬の成分(干渉除去抗体など)に影響を受けることがなく、かつ、対照用標識試薬を別途用意する必要の無い、改良された対照機構を備えるイムノクロマトグラフ用試験具を提供する。【解決手段】前記イムノクロマトグラフ用試験具は、被検物質と特異的に反応する捕捉試薬が固定化されているテストラインと、標識試薬と特異的に結合する対照試薬が固定化されているコントロールラインとを備え、前記標識試薬が、アビジン及びビオチンを介して、被検物質に特異的に結合する第一親和性物質と標識物質とが連結されたものであり、前記対照試薬がビオチンを含むものである。【選択図】なし