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タイトル:公開特許公報(A)_膠原病の病態モデル動物、当該病態モデル動物の作製方法、及び当該病態モデル動物のスクリーニング方法
出願番号:2012074752
年次:2013
IPC分類:A01K 67/027,G01N 33/15,G01N 33/50,G01N 33/564


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佐野 栄紀 横川 真紀 高石 樹朗 JP 2013201978 公開特許公報(A) 20131007 2012074752 20120328 膠原病の病態モデル動物、当該病態モデル動物の作製方法、及び当該病態モデル動物のスクリーニング方法 国立大学法人高知大学 504174180 北村 修一郎 100107308 太田 隆司 100126930 ▲崎▼山 尚子 100114096 佐野 栄紀 横川 真紀 高石 樹朗 A01K 67/027 20060101AFI20130910BHJP G01N 33/15 20060101ALI20130910BHJP G01N 33/50 20060101ALI20130910BHJP G01N 33/564 20060101ALI20130910BHJP JPA01K67/027G01N33/15 ZG01N33/50 ZG01N33/564 A 9 OL 19 特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 特定非営利活動法人 日本免疫学会 刊行物名 日本免疫学会総会・学術集会記録 第40巻 発行年月日 2011年11月7日(刊行物等)研究集会名 第40回日本免疫学会学術集会 主催者名 特定非営利活動法人日本免疫学会 開催日 2011年11月27日〜29日(刊行物等)発行者名 日本研究皮膚科学会 刊行物名 日本研究皮膚科学会 第36回年次学術大会・総会プログラム 発行年月日 2011年11月11日(刊行物等)研究集会名 日本研究皮膚科学会 第36回年次学術大会・総会 主催者名 日本研究皮膚科学会 開催日 2011年12月9日〜11日 2G045 2G045AA29 本発明は、膠原病の病態モデル動物、当該病態モデル動物の作製方法、及び当該病態モデル動物のスクリーニング方法に関する。詳細には、ヒトを除く非トランスジェニック動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与することにより構築される膠原病の病態モデル動物、当該病態モデル動物の作製方法、及び当該病態モデル動物のスクリーニング方法に関する。 膠原病は、結合組織である膠原線維に病変が生じた一連の疾患群である。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、ベーチェット病、全身性硬化症(強皮症)、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎などが含まれ、膠原線維のフィブリノイド変性が共通病変として認められる。また、膠原病には、共通して多臓器障害がみられ、抗核抗体等の自己抗体が認められる。膠原病の代表的疾患である全身性エリテマトーデス(以下、「SLE」と称する場合がある。)は、紅斑性狼瘡、汎発性紅斑性狼瘡とも呼ばれ、全身のほとんど全ての臓器を侵す系統的な全身疾患である。SLEには様々な自己抗体が認められるが、特に抗核抗体である抗DNA抗体と抗Sm抗体が特異的に高く検出される。そして、高頻度でループス腎炎を伴い、最悪の場合には腎不全に至る。ループス腎炎は糸球体腎炎であり、血尿、蛋白尿、浮腫をきたし生命予後を悪化させる重篤な症状である。これは、腎臓の糸球体への免疫複合体の沈着により炎症が誘発されることに起因する。そして、かかる免疫複合体の形成には、抗体と対応抗原であるDNA、ヒストン、ヌクレオソ−ム等との結合が関与していると考えられている。 これら膠原病は難治性の疾患群であり死亡や臓器障害をはじめとする重い障害を残すような病態が認められる。近年の治療及び診断技術の進歩に伴って生存率は向上しつつある。しかしながら、膠原病は多くの疾患感受性遺伝子が関与し極めて複雑な遺伝様式をもつ多遺伝子疾患であり、また、その発症及び病態形成には複雑な生体内環境が関与していることから、その発症及び病態形成機序は解明されていない点が多い。そのため、依然として長期予後は必ずしも満足すべきものではなく、また確固たる治療・予防方法および治療・予防剤も確立されていないのが実情である。したがって、膠原病の発症及び病態形成機序を解明し、臓器障害を抑え患者のQOL を高め得る有効な治療・予防方法および治療・予防剤の開発が求められていた。 疾患の発症及び病態形成機序の解明や、治療・予防方法及び治療・予防剤の研究開発のために、ヒト疾患に特徴的な性質を示す病態モデル動物が用いられている。病態モデル動物は、人為的若しくは自然発生的な遺伝的な要因、又は非生体物質等の物質を投与することにより特定の症状を誘起させることにより構築することができる。病態モデル動物は、疾患の発症及び病態形成に関連する遺伝子要因や環境因子等の病的因子を解析するための研究材料としてきわめて重要であり、これを活用し、疾患の発症及び病態形成機序の解明や、治療及び予防につながる病的因子を探索する研究が進められている。また、医薬品開発において、候補物質を病態モデル動物に適用し、その有効性および毒性を検証していくことが行われている。膠原病の発症及び病態形成には、多数の遺伝因子及び環境因子が複雑に関連していると考えられており、未だに不明な点も多いことから病態モデル動物のニーズは高い。 従来の膠原病の病態モデル動物として、New ZeaLandマウス、BXSBマウス、MRL/lprマウス、CH3/gldマウス、(SWR×SJL)F1マウス、BXD2マウス等が自然発症SLEモデルマウスとして報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、自然発症系モデルマウスの種類は限られており、膠原病の発症及び病態形成機序を把握するには至っていない。また、Cd72、Fcgr2b、C1q等のSLE自然発症系の感受性遺伝子解析でSLEとの関与が示唆されている遺伝子を人為的に欠損させたノックアウトマウス等の遺伝子改変SLEモデルマウスが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、SLEの発症及び病態形成には複数の遺伝因子および環境因子等が関与していること、そして、遺伝的要因に基づくモデルマウスの利用に際しては遺伝的背景を維持する必要がある等の理由により、その有用性は限定的であった。そのため、野生型マウスからSLE様症状を誘導できる系の確立が望まれていた。そのような野生型マウスからSLE様症状を誘導できる系として、野生型のBALB/cマウスにプリスタンを腹腔内投与した例が報告されている(非特許文献1)。これによると、プリスタンの投与によりSLEに特徴的なSm、RNP、二本鎖DNA(以下「dsDNA」と称する場合がある。)、クロマチンに対する自己抗体の出現が確認され、また、SLEに高頻度で発生するループス腎炎の発症が確認されたことが報告されている。 しかしながら、野生型動物を基にして構築された膠原病モデル動物の報告はほとんどない。このように従来の膠原病モデル動物には種々の問題点があった。このことが、膠原病の発症及び病態形成機序の解明を困難し、確固たる治療・予防方法、及び治療・予防薬が未だに確立されていない要因の1つと考えられる。岩倉洋一郎企画・編集「シリーズ モデル動物利用マニュアル<疾患モデルの作製と利用 免疫疾患>第一章 自己免疫疾患、第2節 全身エリテマトーデスモデル(広瀬幸子)」、株式会社エル・アイ・シー、2011年6月30日発行、p.52−61科学技術振興機構報 第229号、“世界で初めて膜性腎炎を自然発症するモデルマウスを作製”、[online]、平成17年11月18日、科学技術振興機構(JST)、[平成23年10月24日検索]、インターネット<URL:http://www.jst.go.jp/pr/info/info229/index.html> 本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、野生型の正常動物を基にして構築された新規な膠原病モデル動物、及びその作製方法を提供する。更には、その動物を用いた膠原病の症状の治療・予防方法、及び治療・予防薬の評価及びスクリーニング方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、野生型動物にトール様レセプター7(以下「TLR7」と称する場合がある)アゴニストのイミキモドを経皮的に投与することにより、ループス腎炎を誘発できること、及び自己抗体の産生を誘導できることを見出した。そして、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。 即ち、上記目的を達成するため、以下の[1]〜[9]に示す発明を提供する。[1]膠原病の病態モデル動物の作製方法であって、ヒトを除く非トランスジェニック動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与する工程を含む作製方法。[2]前記TLR7アゴニストが、イミキモドである。[3]上記方法により得られる膠原病の病態モデル動物。[4]前記膠原病が、全身性エリテマトーデス様症状を発症する病態である。[5]前記膠原病が、ループス腎炎を発症する病態である。[6]前記動物が、マウスである。[7]膠原病の治療剤又は予防剤のスクリーニング方法であって、以下の工程、(a)本発明の膠原病の病態モデル動物に試験物質を投与する工程;、(b)(a)で試験物質を投与した前記膠原病の病態モデル動物における自己抗体の量を、前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物と比較する工程;および、(c)前記試験物質を投与した膠原病の病態モデル動物における自己抗体の量が前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物よりも低減している場合に、前記試験物質を膠原病の治療剤又は予防剤として同定する工程、を含むスクリーニング方法。[8]前記自己抗体が抗二本鎖DNA抗体である。[9]膠原病の治療剤又は予防剤のスクリーニング方法であって、以下の工程、(a)本発明の膠原病の病態モデル動物に試験物質を投与する工程;(b)(a)で試験物質を投与した前記膠原病の病態モデル動物におけるループス腎炎の症状を、前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物と比較する工程;および(c)前記試験物質を投与した膠原病の病態モデル動物におけるループス腎炎の症状が、前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物よりも軽減されている場合に、前記試験物質を膠原病の治療剤又は予防剤として同定する工程、を含むスクリーニング方法。 上記[1]〜[2]の構成によれば、新規な膠原病の病態モデル動物の作製方法が提供される。本発明によって提供される膠原病の病態モデル動物の作製方法は、実験動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与することにより作製するものであり、自己抗体の産生及びループス腎炎の発症等の膠原病に特有の症状を誘導することができる。ここで、経皮投与は腎炎等の内科疾患を誘導するにあたり当業者が想定し得ない投与経路である。これによりループス腎炎等の全身性の重篤な症状を誘導し得たことは本発明によって初めて見出された知見であり注目に値する。また、本発明によって提供される膠原病の病態モデル動物の作製方法は、非トランスジェニック動物、つまり野生型動物を基に作製される。膠原病の病態モデル動物において野生型の動物を基に誘導された例はほとんど無い。野生型動物は、遺伝子疾患マウス等の疾患モデル動物よりも廉価であり、また誰でも入手可能であるとの利点を有する。また、遺伝子改変に基づく疾患モデル動物では、改変した遺伝子によってループス腎炎とは関係のない予想外の症状を呈する場合がある。本発明により、野生型動物での膠原病特有の症状を誘導できる系が確立できたことは、利用性及び信頼性の高い技術を提供するものである。また短期間で実験動物に膠原病に特有の症状を誘導することができるとの利点も有する。 上記[3]〜[6]の構成によれば、新規な膠原病の病態モデル動物が提供される。本発明によって提供される膠原病の病態モデル動物は、非トランスジェニック動物、つまり野生型動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与することにより作製されたものであり、自己抗体の産生及びループス腎炎の発症等の膠原病に特有の症状を現す。したがって、本発明によって提供される膠原病の病態モデル動物は、膠原病、特にSLE、及びSLEに高頻度で発症するループス腎炎の発症及び病態形成機序の解析や、これらの治療・予防方法、及び治療・予防剤の評価及びスクリーニングに利用できる。つまり、医療、免疫学や分子生物学等の様々な技術分野における膠原病に関する研究の発展に貢献することができる。 上記[7]〜[9]の構成によれば、膠原病の治療・予防剤のスクリーニング方法が提供される。本発明によって提供されるスクリーニング方法は、膠原病の新しい治療・予防剤の研究開発に貢献することができる。また、本発明の膠原病の病態モデル動物が産生する抗dsDNA抗体量は力価によって定量することができることから、疾患誘導の程度を定量性に基づいて判断できる。したがって、正確かつ客観的に治療・予防剤の候補物質の評価及びスクリーニングを行うことができる。イミキモドの経皮投与後のマウスにおいて浮腫が認められたことを示す写真である。イミキモドの経皮投与後のマウスの腎臓の糸球体の病理組織像を示す写真である。イミキモドの経皮投与後のマウスの自己抗体の産生について核材としてHEp2細胞を用いて検討した結果を示す写真である。レジキモドの経皮投与及びイミキモドの腹腔内投与によるマウスでのループス腎炎の誘発を検討した結果を示す図である。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の一の実施形態の膠原病の病態モデル動物の作製方法は、ヒトを除く非トランスジェニック動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与する工程を含んで構成される。このように構成することにより、実験動物に自己抗体の産生及びループス腎炎の発症等の膠原病に特有の症状を誘導することができる。 本発明の病態モデル動物が発症する膠原病は、結合組織である膠原線維に病変が生じた一連の疾患群である。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、ベーチェット病、全身性硬化症(強皮症)、皮膚筋炎、結節性動脈周囲炎などが含まれ、膠原線維のフィブリノイド変性が共通病変として認められる。また、膠原病には、共通して多臓器障害がみられ、抗核抗体などの自己抗体の産生が認められる。 特に、SLEは膠原病の代表的疾患であり、紅斑性狼瘡、汎発性紅斑性狼瘡とも呼ばれ、全身のほとんど全ての臓器を侵す系統的な全身疾患である。SLEは自己抗体の産生とBリンパ球の多クローン性活性化を特徴とし、かかる自己抗体によって臓器障害を生ずる。様々な自己抗体が認められるが、特に抗核抗体である抗DNA抗体と抗Sm抗体が特異的に高く検出される。そして、高頻度でループス腎炎を伴い、最悪の場合には腎不全に至る。ループス腎炎は糸球体腎炎であり、血尿、蛋白尿、浮腫をきたし生命予後を悪化させる重篤な症状である。これは、腎臓の糸球体への免疫複合体の沈着により炎症が誘発されることに起因する。そして、かかる免疫複合体の形成には、抗体と対応抗原であるDNA、ヒストン、ヌクレオソ−ム等との結合が関与していると考えられている。 本発明で用いられる非トランスジェニック動物は、トランスジェニック動物ではない、いわゆる野生型動物を指す。ここで、トランスジェニック動物とは、外来性DNAをゲノム内に導入した動物であり、人為的に操作した遺伝子を導入することで特定の遺伝子の機能が発現しないノックアウト動物等をも含む。また、トランスジェニック動物は、遺伝可能な生殖細胞系DNA変化を伴う動物、および遺伝可能でない体細胞系DNA変化を伴う動物のいずれもが含まれる。つまり、本発明の膠原病の病態モデル動物は、野生型動物を基に作製される。従来において膠原病の病態モデル動物において野生型の動物を基に誘導された例はほとんど無い。具体的な動物としては、ヒトを除く任意の哺乳動物を使うことができる。そのような動物としては、マウス、ラット、ハムスター等のモルモット等のげっ歯類の他、サル、チンパンジー、オランウータン等の非ヒト霊長類、ウサギ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくはげっ歯類であり、特に好ましくはマウスである。 TLR7アゴニストとは、トール様レセプター(Toll-like receptor、以下、「TLR」と称する場合がある。)にアゴニスト作用を有する物質である。アゴニストは、作動薬及び作用薬とも称され、生体内のレセプター分子に結合することによりレセプター分子の構造変化をもたらし、次いで種々の生理作用を示す物質を指す。つまり、アゴニストがレセプターと結合するとレセプターの立体配座の変化が起こり、神経伝達物質やホルモン等の生体内物質と同様の細胞内情報伝達系を作動し生体応答反応が誘起される。本発明に用いられるアゴニストは、生体内物質と同様に完全な活性を発揮するフルアゴニストであると、部分的な活性しか示さない部分アゴニストの別を問わず、何れであってもよい。 TLRは、病原体を認識し自然免疫反応において不可欠な役割を果たす細胞表面レセプターである。様々な病原体においてよく保存された特異的な分子パターン(Pathogen-associated molecular pattern、以下「PAMP」と略する場合がある。)を認識してTLRシグナル伝達系が刺激されると、炎症性サイトカインやメディエーター等の産生が誘導される。TLRとして、ヒトではTLR1〜TLR10と称される10種類のTLRが確認されている。TLR7は、このTLRファミリーに属し、エンドソーム/リソソーム画分などの細胞内小胞体に存在し、単球や樹状細胞で発現するが、特にリンパ球系の樹状細胞である形質細胞様樹状細胞(以下、「pDC」と称する場合がある。)で強く発現する。そして、TLR7はウイルスの一本鎖RNA(以下、「ssRNA」と称する場合がある。)によって活性化され、また、合成核酸poly(U)やある種のsiRNAをも認識する。また、イミダゾキノリン誘導体によっても活性されることが知られている。TLR7が活性化されると、MyD88依存的にNF-κBの活性を介してINFα、INFβ及びIL-12等の各種サイトカイン遺伝子の発現が誘導され、病原体に対する免疫応答が賦活化される。 本発明で使用されるTLR7アゴニストとしては、TLR7に対してアゴニスト作用を有する物質であれば特に制限なく使用できる。具体的には、イミダゾキノリン誘導体やグアニン誘導体等を例示することできる。 イミダゾキノリン誘導体としては、イミキモド(Imiquimod)及びレジキモド(resiquimod)等が特に好ましく使用できるがこれらに限定されるものではない。イミキモドは、化学名1-(2-メチルプロピル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン(1-(2-Methylpropyl)-1H-imidazo[4,5-c]quinolin-4-amine))の下記化1の構造を有する化合物である。これは、ヒトパピローマウイルスの感染によって発症する尖圭コンジロームの治療薬として臨床応用され、商品名Aldala、ベセルナ(登録商標)として流通している。わが国ではベセルナクリームとして持田製薬から購入することができる。これは、INF−αの産生促進を介したウイルスの増殖抑制及び細胞性免疫応答の賦活化によるウイルス感染細胞の障害により、ウイルス感染に伴う疾患に対する治療効果を奏する。 また、レジキモドは、化学名4-アミノ-2-(エトキシメチル)-α,α-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール、α,α-ジメチル-4-アミノ-2-(エトキシメチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール(4-Amino-2-(ethoxymethyl)-α,α-dimethyl-1H-imidazo[4,5-c]quinoline-1-ethanol、α,α-Dimethyl-4-amino-2-(ethoxymethyl)-1H-imidazo[4,5-c]quinoline-1-ethanol)の下記化2の構造を有する。Enzo Life Science社より購入することができる。 グアニン誘導体としては、ロキソリビン(Loxoribine)等が特に好ましく使用できるがこれらに限定されるものではない。ロキソリビンは、化学名7-アリル-7,8-ジヒドロ-8-オキソグアノシン(7-Allyl-7,8-dihydro-8-oxoguanosine)の下記化3の構造を有する化合物である。 また、これらの物質の分子構造内の一部分が原子や官能基で置換した誘導体であっても、TLR7アゴニスト活性を有する限り使用することができる。原子及び官能基としては、例えば、水素原子、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、アルキル基、カルボキシル基、アミノ基、アシル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、スルホ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルフォニル基、スルフィニル基アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、アルキルスルフェニル基、アルキルスルフィニル基等を挙げることができ、これらの置換基の2以上の組み合わせであってよい。しかしながら、これらに限定するものではない。また、シス−トランス異性体、光学異性体、配座異性体等の立体異性体が存在する場合には、そのいずれをも包含する。 更に、これらの物質、或いはこれらの物質の誘導体の薬学的に許容される塩であっても、TLR7アゴニスト活性を有する限り使用することができる。薬学的に許容される塩としては、例えば、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、プロピオン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩を挙げることができる。更に、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸等のアミノ酸塩等が挙げられる。また、本発明の方法に使用されるTLR7アゴニストが、金属と錯体を形成する場合には、そのような金属錯体であってもよく、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト等との金属錯体を挙げることができる。 TLR7アゴニスト活性を有するか否かの評価は公知の方法を用いて行うことができる。例えば、これに限定するものではないが、TLR7ノックアウト動物を用いることができる。具体的には、TLR7ノックアウト動物由来のマクロファージ、単核細胞、樹状細胞等の免疫細胞に候補物質をin vitro若しくはin vivoで接触させ、かかる細胞におけるNF-κB等のTLR7シグナル伝達経路上の分子の活性化を測定することにより確認することができる(例えば、Hemmi H. et al., Nat Immunol. 2002: 3(2):196-200を参照のこと。)。また、TLR7遺伝子を導入した細胞を用いることによっても評価することができ、細胞としてはTLR7遺伝子を一過性に導入したHEK293細胞等を用いることができる(例えば、Gibson,S.J.et al., Cell.Immunol., 218(1-2), 74-86, (2002)を参照のこと。)。 経皮投与は、薬剤等を皮膚表面に直接適用する投与方法であると理解され、塗布、散布、噴霧、及び貼付等によって皮膚表面に置かれる。経皮投与された薬剤等は、皮膚表面上を浸潤拡散し、皮膚の内部へ、或いは皮膚を介して体内の他の組織へと移行する。他の組織に移行に際しては、皮膚の真皮以下の組織に存在する末梢血管に吸収される。真皮以下の組織への移行は、角質層を経由する経皮膚ルートであっても、毛嚢、皮脂腺、汗腺等の付属器官を経由する経付属器官ルートであってもよい。薬剤の適用箇所についても特に制限はなく、頭部、頚部、腹部、背部、四肢部、尾部等の何れであってもよい。好ましくは耳介である。しかしながら、これに限定されるものではない。経皮投与という腎炎などの内科疾患を誘導するにあたり当業者が想定しえない方法により、本発明の膠原病の病態モデル動物は構築できる。つまり、経皮投与によりループス腎炎等の全身性の重篤な症状を誘導し得たことは本発明によって初めて見出された知見である。 TLR7アゴニストは単独で経皮投与してもよいが、TLR7アゴニストの効果を損なわない範囲で適当な薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせて投与してもよい。したがって、医薬品や化粧品に用いられる各種成分を含んで構成してもよく、軟膏剤、クリーム剤、リニメント剤、ローション剤、乳剤、懸濁剤、パスタ剤、エアゾール剤、ゲル剤、及び外用散剤等の製剤に調製して用いることができる。また、テープ剤やハップ剤等の貼付剤として調製してもよいし、ガーゼ等に薬剤を塗布又は含浸等させたものを貼付してもよい。これらは常法に従って調製できる。 薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤としては、TLR7アゴニストの効果を損なわないものであれば何れを使用することができる。例えば、リニメント剤やローション剤等の液剤として調製する場合、精製水、生理食塩水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン等の有機溶媒、ジメチルスルフォキシド(以下、「DMSO」と称する場合がある。)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ヒマシ油等を溶剤として使用でき、更に必要に応じて溶解補助剤、界面活性剤、等張化剤、緩衝剤、粘稠化剤等の適当な添加剤を添加することができる。 軟膏剤やクリーム剤等の半固形製剤として調製する場合には、ワセリン(白色ワセリン、黄色ワセリン、親水ワセリン等)、精製ラノリン、流動パラフィン、プラスチベース、ろう(サラシミツロウ、カルナバロウ等)、天然ワックス(モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、動植物油(ヒマシ油、オリーブ、ゴマ油等)、ステアリン酸、グリセリン、マクロゴール等を基剤とし、必要に応じて、水、乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート80等の界面活性剤等)、懸濁化剤、保湿剤(グリセリンやソルビトール等)等の添加物を添加することができる。 更に必要に応じて、例えば、経皮吸収促進剤、防腐剤、保存料、酸化防止剤、香料、色剤等を適宜含有させてもよい。 TLR7アゴニストの投与量、投与回数、及び投与期間は、動物の種類、系統、週齢、性差等、及びTLR7アゴニストの種類等に応じて適宜設定することができる。好ましくは、マウスでは、イミキモドを20mg/kg〜100 mg/kgで、1日に1回の週3回外用、4〜6週間である。より好ましくは、イミキモドを50mg/kgで、1日に1回の週3回外用、6週間、又は、75 mg/kgで、1日に1回の週3回外用、4週間であるが、これに限定されるものではない。また、上述の通りTLR7アゴニストの種類等に応じて適宜設定されるものである。マウスとしては実験動物として汎用されるFVB/ N、Balb/c、C57BL/6が好ましいが、これに限定するものはない。このとき、所望の症状が1回で発症する場合には1回の投与でよく、所望の発症するまで投与を続けてもよい。 作製した病態モデル動物が、膠原病を発症しているか否かの確認方法は公知の方法に基づいて行うことができる。例えば、動物から採取した血液中の自己抗体の検出または測定により確認することができる。自己抗体としては、細胞の核や細胞質の構成成分に対する自己抗体である抗核抗体、抗細胞質抗体等を例示することができる。特に、抗核抗体は対応する特異抗原によって種々のものが同定されているが、疾患及び症状に密接な関連性を有する抗体も多い。そのため、特異的な抗核抗体の存在により特定の膠原病の存在を確認することができる。また、リウマトイド因子、抗リン脂質抗体等の検出及び測定も有用である。 抗核抗体の検出及び測定は、動物から採取した血清中に含まれる抗核抗体を蛍光抗体法、ゲル内沈降反応、ELISA法、RIA法、及びPHA法等により検出および測定することにより行うことができる。特には、蛍光抗体法が好ましく、核材としてヒト末梢血白血球、ラット肝細胞、HEp2細胞、Wil2細胞等を用いることができる。具体的には、例えば、核材をスライドグラス上に固定した後、血清を反応させることにより行うことができる。続いて、蛍光色素で標識した二次抗体と反応させる。核成分に結合した抗核抗体は、二次抗体と結合して蛍光顕微鏡下で蛍光を発する。これにより血清中の抗核抗体の存在を検出できる。また抗核抗体には対応抗原によって様々な種類のものが知られているが、蛍光染色のパターンによって対応抗原を推定できる。また、抗核抗体は疾患特異性の高い抗体も多いため、蛍光染色のパターンにより疾患をも推定できる。例えば、辺縁型及び均一型の場合にはSLEであることが推定できる。また、ゲル内沈降法の場合、例えば、核から抽出した抗原と血清をオクタロニー法によってアガロースゲル内で反応させると、両者の濃度比が最適な位置に沈降線を形成する。これにより、血清中に含まれる抗核抗体の種類及び濃度を同定することが可能である。 特に、SLEの場合、動物から血液中の抗核抗体、特には抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、LE因子の存在を検出及び測定することにより確認することができる。つまり、血液中にこれらの特異的な抗核抗体が検出さればSLEを発症していると判断することができる。また、ループス抗凝血素、抗カルジオリピン抗体等の抗リン脂質抗体等の検出及び測定によっても確認することができる。また、SLEにおいて高い頻度で発症するループス腎炎の存在を腎臓生検の病理組織像及び臨床像等により確認することによってもSLEの発症を確認することができる。簡便には目視により動物の外観を観察し浮腫の有無により発症を確認することができる。また、病理組織像は光学顕微鏡、蛍光抗体法や電子顕微鏡等を利用して確認することができる。例えば、光学顕微鏡下、メサンギウム細胞や基質の増殖と免疫沈着物による糸球体基底膜の不規則な肥厚等の所見等、一般的な組織型の確認することができる。光学顕微鏡での観察に先立ち、ヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin and eosin (以下、「HE」と称する場合がある。))染色、過ヨウ素酸シッフ(Periodic acid shiff(以下、「PAS」と称する場合がある。))染色、過ヨウ素酸メセナミン銀(Periodic acid-methenamine-silver(以下、「PAM」と称する場合がある。))染色法等で染色することができる。蛍光抗体法下で、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)と補体(C1q、C3)の沈着の有無及びそのパターン等に関する所見を確認することができる。そして、電子顕微鏡下では、高電子密度沈着物の有無およびその分布に関する所見を確認することもできる。また、蛋白尿、尿沈渣所見等の尿検査、血清クレアチニン値の上昇等の血清検査等の臨床検査に関する所見によっても確認することができる。更に、腎臓のみならず、心臓や肺臓、皮膚などの他の臓器にも症状が起こりうる場合があり、これを検出することによって確認することができる。 そして、本発明の他の実施の形態として、上記本発明の膠原病の病態モデル動物の作製方法により作製された膠原病の病態モデル動物をも含む。本発明によって提供される膠原病の病態モデル動物は、非トランスジェニック動物、つまり野生型動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与することにより作製されたものであり、自己抗体の産生及びループス腎炎の発症等の膠原病に特有の症状を現す。したがって、本発明によって提供される膠原病の病態モデル動物は、膠原病、特にSLE、及びSLEに高頻度で発症するループス腎炎の発症及び病態形成機序の解析や、これらの治療・予防方法、及び治療・予防剤の評価及びスクリーニングに利用できる。つまり、医療、免疫学や分子生物学等の様々な技術分野における膠原病に関する研究の発展に貢献することができる。 また、本発明の他の実施形態として、膠原病の治療及び予防剤のスクリーニング方法をも提供する。例えば、本発明の膠原病の病態モデル動物に、膠原病の治療及び予防剤の候補物質である試験物質を投与して症状の改善及び消失を評価することができる。ここで、試験物質としては、膠原病の治療及び予防剤の候補物質であればなんでもよく、生体内物質、遺伝子組換え物質、化学合成化合物等の別を問わず、また、これらに限定されるものでもない。また、単独で投与してもよいが、適当な薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせて製剤化して投与してもよい。試験物質の投与は、公知のいずれの投与経路に従って行ってもよく、経口、非経口投与の別を問わない。したがって、経口、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮内、吸入、胃内、腸内、経皮等を例示できるが、これらに限定するものではない。試験物質の性質、特に薬物動態的性質や溶解性等を考慮して設定すればよい。また、試験物質の投与量、投与回数、及び投与期間は、動物の種類、系統、週齢、性差等、及び試験物質の種類等に応じて適宜設定することができる。 本発明の膠原病の治療及び予防剤のスクリーニング方法における症状の改善及び消失の評価は、例えば、試験物質を投与した本発明の膠原病の病態モデル動物における自己抗体を検出、若しくは自己抗体量を測定することにより行うことができる。自己抗体の検出及び測定は上記した通りに行うことができる。そして試験物質の投与により自己抗体量が低減、又は消失した場合には、その試験物質を膠原病の治療・予防剤であると評価することができる。また、ネガティブコントロールとして、何も投与しない、若しくは試験物質を含まないことは除いては同じ組成の製剤を投与した膠原病の病態モデル動物を利用することができる。このネガティブコントロール動物と、試験物質を投与した動物とを症状の改善及び消失について比較することができる。そして、例えば、試験物質が投与された動物の自己抗体量が、試験物質の非投与のネガティブコントロール動物の自己抗体量より低減した場合は、その試験物質を膠原病の治療、予防剤であると評価することができる。このように、本発明の膠原病の治療及び予防剤のスクリーニング方法は、膠原病の新しい治療・予防剤の確立に貢献することができる。また、本発明の膠原病の病態モデル動物が産生する抗dsDNA抗体量は力価によって定量することができることから、疾患誘導の程度を定量性に基づいて判断できる。したがって、正確かつ客観的に治療・予防剤の候補物質の評価及びスクリーニングを行うことができる。 また、症状の改善及び消失の評価は、SLEに特徴的なループス腎炎の症状の緩和及び消失によっても行うことができる。ループス腎炎の緩和及び消失の判定は上記した通りに行うことができる。そして試験物質の投与によりループス腎炎の症状が緩和及び消失した場合には、その試験物質を膠原病、特にはSLE及びループス腎炎の治療・予防剤であると評価することができる。また、ネガティブコントロールとして、何も投与しない、若しくは試験物質を含まないことは除いては同じ組成の製剤を投与した膠原病の病態モデル動物を利用することができる。このネガティブコントロール動物と、試験物質を投与した動物とを症状の緩和及び消失について比較することができる。 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に、動物に膠原病様症状を誘発させるTLR7アゴニストとしてイミキモドを用いて検討を行ったが、TLR7アゴニスト活性を有する限り何れの化合物も同様に使用することができる。[実施例1]ループス腎炎の発症 本実施例においては、野生型マウスへのイミキモドの経皮投与による膠原病モデルマウスの構築を検討し、膠原病の代表的疾患であるSLEにおいて高頻度で発生するループス腎炎の発症を観察した。(実験材料) 膠原病の病態モデル動物作製のための動物としては、7週齢のメスの野生型FVB/Nマウスを用いた。これらは、(日本クレア)より購入した。実験は1群3匹として行った。 イミキモド(商品名:ベセルナクリーム(登録商標))は、持田製薬より供与されたものを使用した。ベセルナクリームは、1包(250mg)中にイミキモド 12.5mgを有効成分として含み、添加物として、イソステアリン酸、ベンジルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、白色ワセリン、ポリソルベート60、モノステアリン酸ソルビタン、濃グリセリン、キサンタンガム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピルを含む。(実験方法) 動物の片側耳介に、イミキモドを1.25mg(イミキモド)/匹/回で、週3回、10週間にわたって経皮投与した。投与後、マウスの病理組織像及び臨床像を観察した。病理組織像は、投与後6週間目のマウスから腎臓組織を採取し腎臓凍結標本を作製した。採取した腎臓を、20%の中性ホルマリンで固定後、1μmの切片を作成し、HE染色を行い観察した。さらに、同様にして作成した切片をPAS染色により観察した。また、Alexa Fluor 488 goat anti-IgG(H+L)、Alexa Fluor 488 goat anti-IgM(H+L)(いずれもInvitrogen社)を用いて、製造業者の指示に従い腎臓凍結標本の蛍光染色を行い。蛍光顕微鏡で観察した。なお、本実験は一群5〜10匹で実験を行った。(結果) 図1はイミキモドの経皮投与後のマウスの外観写真であり、3匹のマウス全てにおいて投与後8週より糸球体腎炎による浮腫が認められた。そして、浮腫の存在は10週目には顕著になり、11週までにすべてのマウスは死亡した。図2(A)〜(C)に腎臓の糸球体の病理組織像を示す。図2(A)は、HE染色の病理組織像であり、これにより、リンパ球の浸潤を伴ったメサンギウム領域の細胞増殖を認めた。図2(B)は糸球体のPAS染色の結果を示し、これによりメサンギウム細胞及び基質の増殖が確認できた。図2(C)は腎臓の糸球体の蛍光染色像を示し、これにより糸球体にIgG及びIgMが沈着していることが確認できた。これらの結果に基づいて、イモキモドを経皮投与された3匹のマウス全てが典型的なループス腎炎を発症したと診断した。[実施例2及び比較例1]抗核抗体及び抗細胞質抗体の産生 本実施例においては、野生型マウスにイミキモドを経皮的に投与することにより膠原病モデルマウスを構築し、膠原病に特徴的な抗核抗体及び抗細胞質抗体の出現を観察した。(実験材料) 膠原病の病態モデル動物作製のための動物としては、7週齢のメスのC57BL/6、 Balb/cマウスを用いた。これらは、日本SLCより購入し、一群5〜10匹で実験を行った。 イミキモドは、実施例1のものを使用した。(実験方法) 動物の片側耳介にイミキモドを1.25mg(イミキモド)/匹/回で、週3回、6週間にわたって経皮投与した(実施例2)。投与後、マウスから血清を採取し、生理食塩水を用いて40倍に希釈した。核材としてはHEp2細胞を用いた。希釈血清をフルオロHEPANAテスト(MBL社)に供し、製造業者の指示に従って反応を行った。反応後、蛍光顕微鏡下で観察した。コントロールとして、何も投与していないマウスについても上記と同様に自己抗体の産生について検討を行った(比較例1)。(結果) 結果を図3に示す。図3は、イミキモドを経皮的に投与した後のマウスの自己抗体の産生について核材としてHEp2細胞とを用いて検討した結果を示す写真であり、核及び細胞質に結合する自己抗体が染色されていることが確認できた。つまり、移動物へのイミキモドの経皮投与により自己抗体である抗核抗体及び抗細胞質抗体の産生が確認できた。一方、コントロールにおいては、ここでは図示しないが細胞質及び核の染色は確認されず、自己抗体が産生されなかったことが確認できた。かかる結果より、イミキモドの経皮投与により自己抗体の産生が誘導され、膠原病が誘発されたことが理解できた。[実施例3及び比較例2]抗dsDNA抗体の測定 本実施例においては、野生型マウスにイミキモドを経皮的に投与することにより膠原病モデルマウスの構築を検討し、膠原病に特徴的な抗dsDNA抗体を測定した。(実験材料) 膠原病の病態モデル動物作製のための動物としては、7週齢のメスのC57BL/6、 Balb/cマウスを用いた。これらは、日本SLCより購入し、一群5〜10匹で実験を行った。 イミキモドは、実施例1のものを使用した。(実験方法) 動物の片側耳介にイミキモドを1.25mg(イミキモド)/匹/回で、週3回経皮投与した(実施例3)。そして、経皮投与0、6、4、10、12週後に、マウスから血清を採取し、血清中に含まれる抗dsDNA抗体量を測定した。抗dsDNA抗体の定量は、レビス抗dsDNA-マウスELISA KIT(シバヤギ社)を用いて、製造業者の指示に従い行った。何も投与していないマウス(無処理対照)についても上記と同様に自己抗体量の定量を行った(比較例2)。(結果) 結果を表1に記載する。 表1より、イミキモドの経皮投与により野生型マウスでSLEに特徴的な自己抗体である抗dsDNA抗体が出現することが確認できた。一方、無処理対照(比較例2)においては抗dsDNA抗体の産生はほとんど誘導されなかった。かかる結果より、イミキモドの経皮投与により自己抗体の産生が誘導され、膠原病が誘発されたことが理解できた。また、イミキモドの経皮投与から4週間目には自己抗体量は非常に高くなり、極めて短期間のうちに自己抗体の産生が誘導されることが理解できた。そして、抗dsDNA抗体力価をもって疾患誘導の定量性が確保できることも同時に理解できた。[実施例4、5及び比較例3、4]レジキモドの経皮投与、及びイミキモドの腹腔内投与によるループス腎炎発症の検討 本実施例においては、野生型マウスにイミキモド及びレジキモドを経皮的に投与することにより膠原病モデルマウスの構築を検討し、膠原病に特徴的な抗dsDNA抗体を測定し、更に腎臓の病理組織を解析した。さらに、イミキモドを経皮的又は腹腔的に投与することにより投与形態による症状の誘導についても検討を行った。(実験材料) 膠原病の病態モデル動物作製のための動物としては、8週齢のメスのBalb/cマウスを用いた。これらは、日本SLCより購入し、一群5〜10匹で実験を行った。(実験方法) 動物の片側耳介に実施例1で使用したイミキモドを1.25mg(イミキモド)/匹/回で、週3回経皮投与した(実施例4)。そして、経皮投与4〜6後に、マウスから血清を採取し、血清中に含まれる抗dsDNA抗体量を測定した。同様にして、レジキモドを経皮投与した場合の血清中に含まれる抗dsDNA抗体量を測定した(実施例5)。なお、レジキモド(Enzo life Science社)は、アセトンに溶解し最終濃度5%になるように調製し、0.1mg(レジキモド)/匹/回で投与した。 比較として、イミキモドを経皮投与ではなく腹腔内投与した場合の血清中に含まれる抗dsDNA抗体量を測定した(比較例3)。このとき、イミキモドはDMSOに溶解し一匹当たり25μgずつ投与した。さらに、何も投与していないマウス(無処理対照)についても上記と同様に抗dsDNA抗体量の定量を行った(比較例4)。ここで、抗dsDNA抗体の定量は、実施例3と同様にして行い、いずれも投与0、4、8週で評価した。(結果) 結果を表2に記載する。 表2より、レジキモドの経皮投与により、イミキモドの経皮投与と同様に野生型マウスでSLEに特徴的な自己抗体である抗dsDNA抗体が出現することが確認できた(実施例5)。これに対して、無処置対照においては抗dsDNA抗体の産生はほとんど誘導されなかった(比較例4)。かかる結果より、レジキモドの経皮投与によっても自己抗体の産生が誘導され、膠原病が誘発されたことが理解できた。 一方、イミキモドの腹腔内投与によっては、抗dsDNA抗体の産生は無処置対照(実施例4)と同様に、抗dsDNA抗体の産生はほとんど誘導されなかった(比較例3)。(方法) さらに、これらのマウスから腎臓組織を採取し、実施例1に記載の方法と同様にPAS染色により腎臓組織を観察した。(結果) 結果を図4の(A)及び(B)に示す。図4の(A)は、イミキモドを腹腔内投与した場合(比較例3)の結果を示す。これにより、イミキモドの腹腔内投与群においても軽度ではあるがメサンギウム細胞にPAS陽性物質の沈着が認められ、軽度の糸球体腎炎が発症していると判断した。この結果、及び上で確認した腹腔内投与ではdsDNA抗体の産生を誘導できないとの結果より、経皮投与によってのみ当該技術分野で要求される症状を呈する膠原病の病態モデルの構築が可能であることが理解できる。 図4の(B)はレジキモドを経皮投与した場合(実施例4)の結果を示す。これにより、レジキモドの経皮投与群ではPAS陽性物質の沈着と共に、尿細管に蛋白尿が認められ、強い糸球体腎炎の発症が確認された。したがって、イミキモドに限定されずTLR7アゴニスト活性を有する物質の経皮投与によって膠原病の病態モデルを構築できることが理解できる。 本発明は、新規な膠原病の病態モデル動物、当該病態モデル動物の作製方法、及び当該病態モデル動物の利用に関する。本発明は、膠原病病態モデルマウスの利用が要求される全ての分野で利用可能であり、特に、医療、免疫学及び分子生物学等、種々の産業分野において利用可能であり、膠原病研究の進歩に貢献することができる。 膠原病の病態モデル動物の作製方法であって、ヒトを除く非トランスジェニック動物にトール様レセプター7(TLR7)アゴニストを経皮的に投与する工程を含む作製方法。 前記TLR7アゴニストが、イミキモドである請求項1に記載の作製方法。 請求項1又は2に記載の作製方法により得られる膠原病の病態モデル動物。 前記膠原病が、全身性エリテマトーデス様症状を発症する病態である請求項3に記載の膠原病の病態モデル動物。 前記膠原病が、ループス腎炎を発症する病態である請求項3に記載の膠原病の病態モデル動物。 前記動物が、マウスである請求項3〜5の何れか一項に記載の膠原病の病態モデル動物。 膠原病の治療剤又は予防剤のスクリーニング方法であって、以下の工程、(a)請求項3〜6の何れか一項に記載の膠原病の病態モデル動物に試験物質を投与する工程;(b)(a)で試験物質を投与した前記膠原病の病態モデル動物における自己抗体の量を、前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物と比較する工程;および、(c)前記試験物質を投与した膠原病の病態モデル動物における自己抗体の量が前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物よりも低減している場合に、前記試験物質を膠原病の治療剤又は予防剤として同定する工程、を含むスクリーニング方法。 前記自己抗体が、抗二本鎖DNA抗体である請求項7に記載のスクリーニング方法。 膠原病の治療剤又は予防剤のスクリーニング方法であって、以下の工程、(a)請求項3〜6の何れか一項に記載の膠原病の病態モデル動物に試験物質を投与する工程;(b)(a)で試験物質を投与した前記膠原病の病態モデル動物におけるループス腎炎の症状を、前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物と比較する工程;および(c)前記試験物質を投与した膠原病の病態モデル動物におけるループス腎炎の症状が、前記試験物質を投与しなかった膠原病の病態モデル動物よりも軽減されている場合に、前記試験物質を膠原病の治療剤又は予防剤として同定する工程、を含むスクリーニング方法。 【課題】野生型動物を基にして構築された新規な膠原病モデル動物、及びその作製方法、その動物を用いた膠原病の症状の治療・予防方法、及び治療・予防薬の評価及びスクリーニング方法を提供する。【解決手段】膠原病の病態モデル動物の作製方法であって、ヒトを除く非トランスジェニック動物にTLR7アゴニストを経皮的に投与する工程を含む作製方法、膠原病の病態モデル動物の作製方法により作製した膠原病の病態モデル動物、及び膠原病の病態モデル動物のスクリーニング方法。【選択図】なし


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