タイトル: | 再公表特許(A1)_Chabocheモデルを用いた応力−ひずみ関係シミュレーション方法、応力−ひずみ関係シミュレーションシステム、応力−ひずみ関係シミュレーションプログラム |
出願番号: | 2012073392 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 3/00 |
石橋 正博 JP WO2013042600 20130328 JP2012073392 20120906 Chabocheモデルを用いた応力−ひずみ関係シミュレーション方法、応力−ひずみ関係シミュレーションシステム、応力−ひずみ関係シミュレーションプログラム 日本電気株式会社 000004237 机 昌彦 100109313 下坂 直樹 100124154 石橋 正博 JP 2011203948 20110919 G01N 3/00 20060101AFI20150227BHJP JPG01N3/00 K AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN 再公表特許(A1) 20150326 2013534677 17 2G061 2G061AA02 2G061AB01 2G061BA19 2G061CA10 2G061DA11 2G061EA03 2G061EA04本発明は、Chabocheモデルを用いて、材料の応力−ひずみ関係をシミュレーションする方法、そのシステムおよびプログラムに関する。 樹脂材料は、剛性、強度、温度特性が金属材料に比べて大きく劣り、変形挙動が複雑で予測し難いことから、比較的強度要求の少ない部品領域に限定されて使用することが多かった。しかしながら近年、自動車や家電製品の軽量化のために繊維強化樹脂が車体や筐体材料として用いられる等、その需要が高まり、強度特性や変形特性を予測することが重要になってきた。 樹脂材料に対しては、これまで線形粘弾性解析が一般に行われてきた。しかし、線形粘弾性解析では塑性ひずみを計算できない。そのため、用途によっては降伏したり、くびれて破壊したりする樹脂材料の現象をシミュレーションできないという欠点があった。 一方、金属材料に対しては、塑性ひずみを考慮した様々な力学構成式を用いた有限要素法による応力−ひずみ関係シミュレーションが一般に行われ、構造物の設計に利用されてきた。有限要素法解析とは、力、熱、磁場等が均一である微小で有限な領域(要素)に物体を分割し、力の釣合いを計算することにより、物体の各位置の応力やひずみを算出する手法である。主な汎用ソフトとしては、ABAQUS(登録商標)、LS−DYNA(登録商標)、ANSYS(登録商標)等を挙げられる。 応力−ひずみ関係をシミュレーションするための力学構成式としては、非特許文献1(J.L.Chaboche、G.Rousselier、Journal of Pressure Vessel Technology、Vol.105、p.153−158 1983)にあるような、J.L.ChabocheとG.Rousselierによる塑性構成式(以下Chabocheモデルと呼ぶ)が知られている。Chabocheモデルによる塑性構成式を計算可能な汎用有限要素法解析ソフトとしては、ABAQUS、LS−DYNA、ANSYS等を挙げられる。Chabocheモデルは、Armstrong−Frederick型の非線形移動硬化理論であり、負荷反転時のバウシンガ効果を計算可能である。また、降伏関数に等方硬化則を組み合わせて複合硬化モデルに発展させる等の応用も可能である。 ここで、等方硬化とは、材料が塑性変形を開始する降伏条件を曲面で表した、応力0を中心とする降伏曲面において、中心は移動せずに、応力が増加した分だけ半径が広がる硬化であり、塑性変形により生じる材料の加工硬化を表している。 また、移動硬化とは、前述の降伏曲面において、降伏後に応力が増加した分、または背応力が増加した分だけ、半径は変わらずにその方向に中心が移動する硬化であり、負荷反転後の降伏応力の低下、すなわちバウシンガ効果を表すことができる。 特許文献1(特許3897477号公報)では、20%ひずみのような金属の大ひずみに対して、図10Aのように、第1背応力成分α1の特性を、極低ひずみ領域aと非極低ひずみ領域bに分けて解析するとともに、第2背応力成分α2の特性を、低ひずみ領域cと中ひずみ領域dと高ひずみ領域eに分けて解析する手段が開示されている。また、応力−ひずみ関係を正確にシミュレーションする際に、図10Bのように、等方硬化の定数、引張時の移動硬化定数、圧縮時の移動硬化定数を順次決定する手段が開示されている。 特許文献2(特開2008−142774号公報)では、図11のように、一部の材料定数を先に決定し、その結果を入力した塑性構成式を用いた計算結果から残りの材料定数を決定することにより、材料定数決定の計算の収束性を向上させる方法が開示されている。 また、特許文献1および特許文献2では、バウシンガ効果を考慮し、金属材料が塑性変形後に弾性回復により変形が戻るスプリングバック変形量を予測できる。 金属材料とは異なり、樹脂材料は粘性特性を持つため、負荷によって生じる応力がひずみ速度によって変化することが知られている。また、樹脂材料の種類や負荷条件によって、様々な塑性特性を示すことが知られている。すなわち、樹脂材料では、金属材料では考慮する必要がなかった、応力のひずみ速度依存性を考慮する必要が生じる。 このため、有限要素法により応力−ひずみ関係をシミュレーションする場合には、ひずみ速度による応力変化を精度よく表現する必要がある。しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されているような一般的な方法では、金属材料に関しては精度よくシミュレーションできるものの、ゴムから硬質プラスチックまで様々な種類がある樹脂材料の変形や応力−ひずみ関係を、正確にしかも手軽にシミュレーションすることは難しいという課題がある。 また、応力−ひずみ関係をシミュレーションする場合、力学構成式としてChabocheモデルを用いることによってバウシンガ効果を表現できる。しかしながら、Chabocheモデルを樹脂材料に応用するための具体的な方法や、材料定数の効率的な決定法がないという課題がある。 本発明の目的は、Chabocheモデルを応用して、材料に生じる応力のひずみ速度依存性を計算する方法、およびそのための材料定数を効率よく決定する方法を開示し、材料の応力−ひずみ関係のシミュレーション方法、シミュレーションシステムおよびプログラムを提供することにある。 本発明における応力−ひずみ関係シミュレーション方法は、Chabocheモデルの降伏応力に粘性関数及び等方硬化モデルを導入した力学構成式を設定し、大域的非線形数値最適化法によって材料定数が決定した力学構成式を用いる。 本発明における応力−ひずみ関係シミュレーションシステムは、Chabocheモデルの降伏応力算出部分に粘性関数と等方硬化モデルを導入する改良Chabocheモデル設定手段と、大域的非線形数値最適化法によって改良Chabocheモデルの力学構成式の材料定数を決定する大域的非線形数値最適化近似手段と、力学構成式を用いて応力及びひずみを算出する応力−ひずみ算出手段を有する。 本発明における応力−ひずみ関係シミュレーションプログラムは、Chabocheモデルの降伏応力に粘性関数と等方硬化モデルを導入した力学構成式を設定する処理と、大域的数値非線形最適化法によって材料定数を決定した力学構成式の処理と、力学構成式を用いて応力及びひずみを算出する処理を有する。本発明の実施形態の応力−ひずみ関係シミュレーションの構成を示すブロック図である。本発明の実施形態の応力−ひずみ関係シミュレーションのフローチャートである。本発明の実施形態のChabocheモデルの機能を示す概念図である。本発明の実施形態の材料定数決定の処理の流れを示すフローチャートである。本発明の実施形態の等方硬化モデルを示す図である。本発明の実施例1の材料定数決定の一例を示す図である。本発明の実施例1の応力−ひずみ曲線表示の一例を示す図である。本発明の実施例2の材料定数決定の一例を示す図である。本発明の実施例2のる応力−ひずみ曲線表示の一例を示す図である。特許文献1のひずみ領域を分割することを示した図である。塑性構成式同定プログラムを示すフローチャートである。特許文献2のパラメータ同定処理の流れを示すフローチャートである。 〔実施形態〕以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。 図1は、本実施形態の応力−ひずみ関係シミュレーションの構成を示すブロック図である。まず、対象とする材料について、引張、圧縮、応力緩和、クリープ等の単軸や2軸試験等、種々の材料試験を行って測定データを取得する。 塑性ひずみ算出手段1では、測定データから塑性ひずみを算出する処理を行う。塑性ひずみを直接求めることができない場合は、測定データから弾性率を算出し、塑性ひずみを算出する手段を含む。塑性ひずみ速度算出手段2では、塑性ひずみの時間変化から、塑性ひずみ速度を算出する処理を行う。 粘性関数設定手段3では、塑性ひずみ速度をパラメータとする粘性関数を設定する。設定した粘性関数は、応力のひずみ速度依存性を表現している。等方硬化モデル設定手段4では、塑性ひずみをパラメータとする等方硬化モデルの応力関数を設定する。改良Chabocheモデル設定手段5では、Chabocheモデルの力学構成式の降伏応力項に、粘性関数および等方硬化モデルの応力関数を導入する。一般に、背応力は塑性ひずみをパラメータとする関数で表される。なお、本発明の実施形態において、改良Chabocheモデルとは、Chabocheモデルの降伏応力項に粘性関数と等方硬化モデルを導入したモデルを意味する。 材料定数決定手段6では、大域的非線形数値最適化法を用いて、力学構成式の材料定数の決定を行う。大域的非線形数値最適化法(以下、大域最適化近似と呼ぶ)とは、局所的な最小点にとらわれずに広範囲にわたってデータと近似値の差を最小にできる非線形最小二乗法の一種である。応力−ひずみ算出手段7では、測定データを得る際の負荷条件を設定し、材料定数を当てはめた力学構成式を用い、有限要素法応力解析手法を用いて、応力及びひずみを算出する。表示手段8では、測定データをデータ点としてプロットし、また、シミュレーションで得られた応力−ひずみ曲線を重ね合わせて表示する。 図2は、本実施形態の応力−ひずみ関係シミュレーションのフローチャートである。 まず、測定データを取得する(ステップ10)。測定データは、材料定数を決定するためにデータ変換し(ステップ20)、材料定数が決定していない力学構成式に当てはめ、大域最適化近似によって材料定数を決定する(ステップ30)。決定した材料定数を力学構成式に当てはめ、力学構成式を決定する(ステップ40)。決定した力学構成式を用いて有限要素法による応力解析を行い(ステップ50)、その結果を応力−ひずみ曲線として表示する(ステップ60)。 図3は、Chabocheモデルの降伏応力52に、粘性関数55と等方硬化モデル56からなる追加拡張機能54を追加することを示した改良Chabocheモデル50の概念図である。本実施形態では、力学構成式のベースにChabocheモデル51を採用し、これに追加拡張機能54を与える構成とした。ここで用いる力学構成式は自作プログラムとしてもよく、追加拡張機能54をユーザサブルーチンで汎用有限要素法解析ソフトに組み込んで用いてもよい。 一般にChabocheモデル51では、応力を降伏応力52と背応力53の和として算出する。ここで背応力53は、移動硬化モデルでバウシンガ効果の計算に使われる。通常、降伏応力52は定数であるが、これに種々の関数を追加拡張できる。本実施形態では、降伏応力52の算出部分に、種々の等方硬化モデル56と、ひずみ速度を変数とする粘性関数55を追加するモデルを用いる。 図4は、本実施形態に係る材料定数決定の処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、測定によって得られた(応力、ひずみ)測定データ群を、塑性ひずみ算出手段1において(応力、塑性ひずみ)データ群に変換し、さらに塑性ひずみ速度算出手段2において(応力、塑性ひずみ、塑性ひずみ速度)データ群に変換し、塑性ひずみ材料定数が決定していない力学構成式にデータを取り込む(ステップ31)。取り込んだデータをもとに、大域最適化近似によって材料定数を見積もる(ステップ32)。大域最適化近似を用いると、測定データと近似値との誤差が最小となるような材料定数を同時に複数決定することができる(ステップ33)。 そのため、材料定数を一度に決定することができ、計算ステップの削減と計算時間の短縮が実現できる。この近似部分は自作プログラムを用いても、Maple(登録商標)やMathematica(登録商標)等の市販の数式処理ソフトを用いてもよい。このフローによって、力学構成式が決定する(ステップ34)。 図5は、本実施形態の等方硬化モデルの例を示す図である。塑性ひずみに対して応力が収束する応力関数を収束型、発散する応力関数を発散型とし、この二つの応力関数の和として等方硬化モデルを定義した例である。例えば、ゴム材料のように、大ひずみでは応力勾配がほぼ一定になるような場合には、収束型の応力関数が適している。また、ある種の硬質プラスチックのように、ひずみに対する応力勾配が減少しない場合には、発散型の応力関数が適している。収束型応力関数と発散型応力関数のそれぞれに係数をかけて線形結合させておけば、係数を材料定数として決定することができる。その結果、最適な等方硬化モデルが選択され、応力−ひずみ関係のシミュレーションに使用される。 さらに、降伏応力の算出部分には、塑性ひずみ速度の関数で表した応力を粘性関数として追加している。粘性関数においては、ひずみ速度に対して変化する応力の割合が材料定数に相当する。これらの機能が追加拡張された力学構成式を用いることによって、多様な樹脂材料の変形や応力−ひずみ関係を正確にシミュレーションすることが可能となる。本発明に係る実施例1について詳細に説明する。実施例1では、熱可塑性樹脂材料であるABS樹脂材料に強化繊維としてガラス繊維を30%含有させた樹脂材料を用いて材料試験を行った。ここでは、ひずみ速度が1[1/s]の条件で単軸引張試験を行った。ただし、ひずみ速度が1[1/s]とは、ある長さの試験片が1秒間で2倍の長さになる引張試験速度を意味する。 樹脂材料試験の結果、時間ごとの応力σとひずみεの測定データが対になって得られた。すなわち、(時間、ひずみ、応力)測定データ群が得られた。 次に、(時間、ひずみ、応力)測定データ群から、塑性ひずみεpを算出した。塑性ひずみεpは式1を使って計算した。 εp=ε−εe=ε−σ/E(1) 式1において、Eは弾性率、εeは弾性ひずみである。 ここで、弾性率Eは、応力σと弾性ひずみεeの比であり、微小なひずみの範囲においては、弾性ひずみεeはひずみεと等しいとみなすことができる。そのため、(時間、ひずみ、応力)測定データ群から、微小ひずみ範囲δεにおける応力変化量δσを求めることによって、弾性率Eを式2から算出することができる。 E=δσ/δε(2) (時間、ひずみ、応力)測定データ群と弾性率Eがあれば、式1を使って塑性ひずみεpが計算される。 また、塑性ひずみεpの時間変化から、塑性ひずみ速度(式3)が計算される。塑性ひずみ速度とは、単位時間当たりの塑性ひずみの変化量を意味する。 すなわち、(時間、ひずみ、塑性ひずみ、塑性ひずみ速度、応力)データ群が得られた。得られた(時間、ひずみ、塑性ひずみ、塑性ひずみ速度、応力)データ群から、(塑性ひずみ、応力)データ群を抜き出して図6に○で示した。 また、材料試験から得られた(時間、ひずみ、応力)データ群を、(塑性ひずみ、応力)データ群に変換し、これらをデータ点として、大域最適化近似によって材料定数を決定した。なお、近似で求めたデータ点は、図6には実線で示した。 実施例1における力学構成式は、Chabocheモデルをベースにしており、式4のように、応力σは降伏応力σyと背応力αの和として算出される。 σ=σy+α(4) 追加拡張機能の粘性関数は、応力のひずみ速度依存性を表現するための関数であり、実施例1では式5とした。 A、Bは材料ごとに異なる応力のひずみ速度依存性を表現するための材料定数である。 実施例1では、拡張機能の等方硬化モデルとして式6を用いた。 C[1−exp(−Dεp)]+Fεp(6) C、D、Fは材料定数であり、塑性ひずみεpによって応力が変化することを表現する。 式6の第一項である式7は収束型の応力関数であり、塑性ひずみεpの増加に対して、Dで決まる速さで応力Cに収束する。 C[1−exp(−Dεp)](7) 式6の第二項のFεpは発散型の応力関数である。比例係数をFとするため、塑性ひずみεpに比例して応力が増加する。このように、収束型の応力関数と発散型の応力関数の線形結合の形にしておけば、試験データと一致するように材料定数を決定することによって、最適な等方硬化モデルを得ることができる。 Chabocheモデルの初期降伏応力をkとすれば、実施例1の力学構成式の降伏応力σyは式8で表される。 実施例1では、背応力αを式9で定義した。 α=a(1−exp(−bεp))+c(1−exp(−dεp))(9) a、b、c、dが材料定数である。 実施例1では、(時間、ひずみ、応力)測定データ群を変換した(塑性ひずみ、塑性ひずみ速度、応力)データ群をデータ点として、上記力学構成式の材料定数を大域最適化近似によって一度に決定した。実施例1では、大域最適化近似は数式処理ソフトMapleのプログラミング機能を利用して行った。こうして得られた材料定数は、力学構成式に代入され、有限要素法応力解析に用いられる。 ここでは、確認のために、測定データを得た際の材料試験の試験条件と拘束条件を負荷条件として与え、樹脂材料試験片形状の解析モデルを作成した。応力解析には汎用有限要素法解析ソフトANSYSを用い、(応力、ひずみ)データ群の算出を行った。その計算結果をANSYSからMapleに引き渡し、Maple上で応力−ひずみ曲線表示を行った。 材料試験結果データとシミュレーション結果を重ねて示したものが図7である。Chabocheモデルをベースにした実施例1の方法でシミュレーションした樹脂材料の応力−ひずみ曲線は、元の材料試験結果とよく一致した。本発明に係る実施例2について詳細に説明する。実施例1と同様に、熱可塑性樹脂材料であるABS樹脂材料に強化繊維としてガラス繊維を30%含有させた樹脂材料を用いて材料試験を行った。ここでは、ひずみ速度を1、0.1、0.01、0.001[1/s]の4通りに変化させて単軸引張試験を行った。ここで、ひずみ速度が0.001[1/s]とは、ある長さの試験片が1秒後に1.001倍の長さになる引張試験速度を意味する。同様に、0.01[1/s]、0.1[1/s]、1[1/s]とは、それぞれある長さの試験片が1秒後に1.01倍、1.1倍、2倍の長さになる引張試験速度を意味する。 樹脂材料試験の結果、測定データとして、試験速度ごとに(時間、ひずみ、応力)データ群が得られた。4通りの試験速度の測定データにおいて、それぞれの時間ごとに、式1を使って塑性ひずみεpを計算した。さらに、時間による塑性ひずみεpの変化から塑性ひずみ速度(式(3))を計算し、(時間、ひずみ、塑性ひずみ、塑性ひずみ速度、応力)データ群が得られた。得られたデータのうち、試験速度ごとの(塑性ひずみ、応力)データ群を、図8に○で示した。 実施例2では、追加拡張機能の粘性関数は式10とした。 A、Bは材料定数である。 実施例2では、拡張機能の等方硬化モデルとして式11を用いた。 C×In(Dεp−F)(11) C、D、Fは材料定数である。 実施例2では、式12で背応力αを定義した。 α=a(1−exp(−bεp))(12) a、bが材料定数である。 実施例2では、材料試験データを変換した、4通りの試験速度の(塑性ひずみ、塑性ひずみ速度、応力)データ群をデータ点として、上記力学構成式の材料定数を大域最適化近似によって決定した。実施例2では、大域最適化近似による近似に数式処理ソフトMapleを使用した。こうして得られた材料定数は、先の力学構成式に代入され、有限要素法応力解析に用いられる。 ここでは、確認のために、樹脂材料試験の試験条件と拘束条件を負荷条件として与え、樹脂材料試験片形状の解析モデルを作成した。応力解析には汎用有限要素法解析ソフトANSYSを用い、(応力、ひずみ)データ群の算出を行った。その計算結果をANSYSからファイルに書出し、Mapleで読み込んで応力−ひずみ曲線を表示した。 各試験速度の材料試験データと重ねて図9に示した。図9の通り、測定データとシミュレーション結果の両者はよく一致した。すなわち、実施例2の方法によれば、繊維強化された樹脂材料の応力−ひずみ曲線を精度良く、しかも簡便に算出することができた。 本発明の実施形態においては、ABS樹脂をガラス繊維で強化した樹脂材料の具体例を挙げている。しかし、本発明の実施形態に係わるシミュレーションは、樹脂材料に限定されない。樹脂材料以外では、例えば金属材料などにも本発明の実施形態に係わるシミュレーションを用いることができる。 本発明によれば、ひずみ速度が大きいほど応力が大きくなる材料の応力−ひずみ関係を効率的にシミュレーションすることが可能になる。また、多様な材料に関して、応力−ひずみ関係を正確にシミュレーションすることが可能になる。 以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。 この出願は、2011年9月19日に出願された日本出願特願2011−203948を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。 本発明によれば、多様な樹脂材料の応力−ひずみ関係を効率的かつ正確に求めることができる。そのため、樹脂材料の特性上、使用実績がなかった製品においても、実使用条件に近いシミュレーション結果を得ることができ、適用できるか否かを見積もることが可能となる。また、これまで樹脂材料の使用実績がある製品においても、シミュレーションを通じて、別の樹脂材料を置き換えることによる材料特性の違いを正確に見積もることが可能となる。そのため、簡便かつ低コストで製品の品質を向上することができる。1 塑性ひずみ算出手段2 塑性ひずみ速度算出手段3 粘性関数設定手段4 等方硬化モデル設定手段5 改良Chabocheモデル設定手段6 材料定数決定手段7 応力−ひずみ算出手段8 表示手段50 改良Chabocheモデル51 Chabocheモデル52 降伏応力53 背応力(移動硬化モデル)54 追加拡張機能55 粘性関数56 等方硬化モデルChabocheモデルの降伏応力に粘性関数及び等方硬化モデルを導入した力学構成式を設定し、大域的非線形数値最適化法によって材料定数が決定した前記力学構成式を用いることを特徴とする応力−ひずみ関係シミュレーション方法。応力データ及びひずみデータから塑性ひずみを算出し、前記等方硬化モデルに前記塑性ひずみを設定することを特徴とする請求項1の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。応力データ及びひずみデータから塑性ひずみを算出し、前記塑性ひずみの時間変化から塑性ひずみ速度を算出し、前記粘性関数に前記塑性ひずみ速度を設定することを特徴とする請求項1または2の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。応力データ及びひずみデータから弾性率を算出し、前記弾性率から塑性ひずみを算出することを特徴とする請求項1乃至3の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。前記等方硬化モデルとして、収束型応力関数と発散型応力関数の線形結合を用いることを特徴とする請求項1乃至4の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。前記等方硬化モデルが、 C[1−exp(−Dεp)]+Fεpただし、C、D、F:定数εp:塑性ひずみなる式で表されることを特徴とする請求項1乃至5の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。前記等方硬化モデルが、 C×In(Dεp−F)ただし、C、D、F:定数εp:塑性ひずみなる式で表されることを特徴とする請求項1乃至4の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。試験速度の異なる複数の樹脂材料試験から得られた応力データ及びひずみデータを用いて前記粘性関数を設定することを特徴とする請求項1乃至7の応力−ひずみ関係シミュレーション方法。Chabocheモデルの降伏応力算出部分に粘性関数と等方硬化モデルを導入する改良Chabocheモデル設定手段と、大域的非線形数値最適化法によって前記改良Chabocheモデルの力学構成式の材料定数を決定する大域的非線形数値最適化近似手段と、前記力学構成式を用いて応力及びひずみを算出する応力−ひずみ算出手段を有することを特徴とする応力−ひずみ関係シミュレーションシステム。Chabocheモデルの降伏応力に粘性関数と等方硬化モデルを導入した力学構成式を設定する処理と、大域的数値非線形最適化法によって材料定数を決定した前記力学構成式の処理と、前記力学構成式を用いて応力及びひずみを算出する処理を有することを特徴とする応力−ひずみ関係シミュレーションプログラム。 本発明のシミュレーション方法は、応力データ及びひずみデータから塑性ひずみを算出し、塑性ひずみの時間変化から塑性ひずみ速度を算出する。塑性ひずみ速度をパラメータとする粘性関数を設定し、塑性ひずみをパラメータとする等方硬化モデルを設定する。また、本発明のシミュレーション方法は、Chabocheモデルの力学構成式の降伏応力に粘性関数及び等方硬化モデルを導入し、力学構成式の材料定数を大域的非線形数値最適化法によって決定する。さらに、本発明のシミュレーション方法は、決定した力学構成式を用いて、応力及びひずみを算出する。