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タイトル:公開特許公報(A)_誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法
出願番号:2012072908
年次:2013
IPC分類:G01N 21/73


特許情報キャッシュ

箸本 弘一 松本 宏志 藤崎 浩二 JP 2013205142 公開特許公報(A) 20131007 2012072908 20120328 誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法 森永乳業株式会社 000006127 渡邊 薫 100112874 井上 美和子 100147865 梅田 慎介 100149076 松田 政広 100130683 箸本 弘一 松本 宏志 藤崎 浩二 G01N 21/73 20060101AFI20130910BHJP JPG01N21/73 7 OL 13 2G043 2G043AA01 2G043BA04 2G043BA14 2G043CA04 2G043EA08 2G043GA07 2G043GB28 2G043MA01 本発明は、誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法、誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素のメモリー効果低減方法等に関する。 一般的に、各種元素を高感度、高精度かつ簡易に分析する方法が求められており、このような分析方法として、例えば、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)を利用した分析方法(以下、「ICP分析」という)が知られている。 このICP分析方法として、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-Atomic Emission Spectrometry又はICP-OES Optical Emission Spectrometry:以下、「ICP−AES分析」ともいう)と、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-Mass Spectrometry;以下、「ICP−MS分析」ともいう)とが知られている。 しかしながら、ICP分析方法は、高感度、高精度かつ、多種類元素の同時測定が可能であるという反面、分析対象元素の種類によっては、見かけ上の発光強度やイオン強度を高くしてしまうメモリー効果が存在し、分析の精度上、障害となり得る問題が知られている。 特に、ヨウ素は、水銀などと共にメモリー効果の高い(装置の導入経路に残留しやすい)元素として知られている。このため、ヨウ素測定後、洗浄時間を5〜10分行い、さらに次の試料を測定する前にブランク溶液にて残留濃度が検出下限値(0.1ng/ml)以下であることを確認することが、残留を低減し、良好な検出精度を得るため望ましいとされている(例えば非特許文献1参照)。 ICP−MS分析にてヨウ素を測定する場合は、検体の前処理として硝酸処理を行うが、I2の揮散により装置のラインにヨウ素が残り、次の測定に影響を及ぼす。この影響を低減するため、洗浄時間を15分も行っているが、洗浄が十分とは言えず測定時にもメモリーが残り、高精度な分析が行えないのが実状である。これは操作の煩雑性もさることながら、高価な分析機器の効率的な運用という面においても大きな障害といえる。 このため、ICP分析方法において、簡易にヨウ素のメモリー効果を低減できる方法及び簡易なヨウ素分析方法が求められている。環境試料中ヨウ素129迅速分析方法、p1,p21−24,p35,平成16年 文部科学省 科学技術・学術政策局 原子力安全課防災環境対策室 本発明は、ICP分析方法において、簡易にヨウ素のメモリー効果を低減できる方法及び簡易なヨウ素分析方法を提供するものである。 本発明者らは、鋭意検討した結果、誘導結合プラズマ分析(以下、「ICP分析」ともいう)方法において、銀及び/又は水銀を用いることで、簡易にメモリー効果を低減できることを見出し、本発明を完成させた。さらに、炭素化合物を併用することで、簡易で高精度なヨウ素定量分析が可能となり、またヨウ素及びその他の元素を一斉分析できることを見出した。 すなわち、本発明は、酸処理検体と、(a)銀及び/又は水銀、並びに(b)炭素化合物とを含むサンプル検液を測定することを特徴とする誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法を提供するものである。 また、ヨウ素及びその他の元素を一斉に分析するのが好適である。 また、本発明は、銀及び/又は水銀を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素のメモリー効果低減方法を提供するものである。 さらに酸条件下であるのが好適であり、また炭素化合物を用いるのが好適である。 また、本発明は、酸処理検体に、銀及び/又は水銀並びに炭素化合物を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法を提供するものである。 上述のICP分析における、ヨウ素分析方法、ヨウ素のメモリー効果低減方法並びにヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法は、以下の構成をとることが好適である。 前記酸処理が、無機酸処理であるのが好適である。 前記銀及び/又は水銀を、サンプル検液中0.1ppm以上とするのが好適である。 前記検体が、食品であるのが好適である。 本発明によれば、ICP分析において、簡易にヨウ素のメモリー効果を低減できる方法が提供できる。また、ICP分析において、簡易なヨウ素分析方法を提供できる。 本開示は、誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法であり、酸処理検体と、(a)銀及び/又は水銀、並びに(b)炭素化合物とを含むサンプル検液を測定することを特徴とする。 ICP分析において、検体を酸処理した場合、メモリー効果が存在し、分析の精度が低下することが知られている。ところが、本開示の方法は、ヨウ素を対象としたICP分析において、酸処理検体に「銀及び/又は水銀」を用いることで、メモリー効果を低減できる。このことにより、本開示は、検体前処理や操作等が簡易な点、また分析機器の効率的な運用の点でも優れている。 また、本開示の方法は、「炭素化合物」を用いることで、簡易に分析の精度が向上する点で優れている。 金属元素は一般にアルゴンプラズマ中でのイオン化率が90%以上とされるが、非金属元素などでは一般に第一イオン化電位が高くアルゴンプラズマ中でのイオン化率が比較的低い。こうした場合、エネルギー準位の類似する他元素イオンが共存すると、電荷移動が惹起される結果、イオン化率に変動を来たし、見た目にイオン強度が増強される、増感現象の見られる場合のあることが知られている(チャージトランスファー効果)。 実際に砒素やセレンなどで炭素イオンが共存する系でそうした例が知られている。砒素、セレンの第一イオン化電位はそれぞれ、941.0kJ/mol、947.0kJ/mol、これに対して、炭素のそれは1086.5kJ/molとされている。 炭素イオンが存在しないか、その量が無視可能な系では上記現象は特に問題無いが、食品のような無機元素以外に多種多様な有機物を含む試料から調製した検体においては残存炭素量を無視可能なまでに除去するには手間と細心の注意が必要であり、多大な労力と時間とが必要となる。一般には検体中の残留炭素量に大きなバラつきが生じるため、“増感”効果もまちまちとなり、定量上大きな障害となる。 ヨウ素の場合、そうした“増感”現象の有無については、これまでのところ報告されていないが、ヨウ素は第一イオン化電位が通常の金属元素に比べて高く(1008.4kJ/mol)、炭素のそれに比べて近く、しかも若干低い値であることから、炭素イオンが共存する系では同様の増感現象を呈することが予想される。 本発明者らは先に述べた通り、銀及び/又は水銀源の添加により、ヨウ素特有のメモリー効果の除去に成功したのであるが、その上で、炭素源が共存する系においては定量性に難点が見られること、そしてその原因が上記したように残留炭素源による“増感”現象に基づくものとの感を強くした。 こうした“増感”現象への対処方法として、残存炭素の完璧な除去に意をつくすよりも、逆に一定過剰量の炭素源を加える手法が考えられる。つまりこの操作によって、炭素の残留量によってまちまちであった“増感”効果を、一定とし、同時にその“増感”効果をも享受しよう、というものである。 “炭素源”としては、検体の前処理後、検体中に一定量の炭素が残存するものであれば、その原理的な面からは何でもよいのであるが、酸性条件下での前処理との適合性、気散性の有無、機器へのダメージの有無、安全性等々の考慮によっておのずと限定されるであろう。 本発明者らは、実際上記の問題を鋭意検討した結果、特に食品由来のようなあるバラつきをもって炭素源を含みうる検体において、先に示した銀及び/又は水銀源の添加と本炭素源の添加とを組み合わせることにより、ヨウ素特有のメモリー効果を除去しうると共に、チャージトランスファーによる“増感”現象の問題を一挙解決するに至った。 また、本開示の方法であれば、ICP分析装置の導入経路中のメモリー効果を抑制できるので、1測定後の洗浄工程を短くすることが可能である。このため、測定サイクルを短くすることができるので、ヨウ素又は多種類元素の迅速な分析が可能となり、検体数が多くなるほど、分析機器の効率的な運用の点で、本開示は優れている。 また、本開示の方法を用いて装置の導入経路等を洗浄する場合には、酸性条件下で「銀及び/又は水銀」を用いること、また酸性条件下で「銀及び/又は水銀」並びに「炭素化合物」を用いるのが好適である。これにより、長時間の洗浄を必要とせずに分析の精度も向上する。 さらに、従来、ICP分析方法において、ヨウ素によるメモリー効果を低減するために、硝酸分解に代えて有機アルカリでの溶解が知られている(例えば非特許文献1「4 分析マニュアル(ヨウ素等5成分・ポリフェノール) 1)ヨウ素」参照)。ICP−MS分析での有機アルカリとして、特に水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide;以下、「TMAH」)という等)が有名である。 しかしながら、有機アルカリを用いた場合、検体を溶解できないと測定できないという問題がある。特に、試料が食品のように脂肪やたんぱく質等、多くの夾雑物が含まれる場合、これらは分析上の障害となる為、予め灰化あるいは硝酸加熱処理等による前処理を施した後、ICP−MSに導入する手法がとられるのが一般的である。しかし、TMAH溶解を採用する場合においては、これらの手法を併用する際に多くの制限が生じる。 これに対し、本開示の方法では、検体を酸処理するので検体中の元素を容易に溶解でき、かつ酸処理した検体であっても、ヨウ素のメモリー効果を低減できることに優れた利点がある。 また、金属元素は一般的に塩基性条件下では、水酸化物などの水に難溶性の塩を生じる傾向が高く、多元素一斉分析を考えた場合、TMAH溶解法は不向きである。 これに対し、本開示の方法では、酸条件下で検体を処理し、酸条件下でICP分析を行うことが可能であるので、多種類元素を一斉分析できることに優れた利点がある。 また、有機アルカリを用いる場合には、サンプル検体はアルカリ溶液となっているために、ヨウ素分析の際には、酸からアルカリの切り替え作業が必要となるので、ヨウ素分析専用のICP分析装置を設けるかヨウ素分析ごとに設定し直す必要がある。これは切り替えと機器の安定化には通常かなりの時間を要し、前述したのと同様に高価な分析機器の効率的な運用という面でのデメリットが大きい。 これに対し、本開示の方法では、サンプル検液に上述の所望の試薬の混合という簡易な処理で、ヨウ素のメモリー効果を低減でき、分析精度も良好である。さらにヨウ素と他の元素を一斉に分析することも可能である。このため、ヨウ素分析専用ICP分析装置を設置しなくともよく、また切り替えと安定化の時間も短時間にできるため、分析機器の効率的な運用という面で優れた利点がある。 このように本開示の方法は、産業上利用の観点からも優れた利点が多いものといえる。 本開示で測定対象となる「検体」は、特に限定されず、その形態は液状、固体状、半固体状等の何れでもよく、また多くの夾雑物が含まれるようなものであってもよい。 本開示の方法によって酸処理後のヨウ素メモリー効果の低減化を可能としたため、様々な検体、特に食品のような種々の夾雑物を含むものに、対応できるようになったことに、本開示の利点がある。 「検体」として、具体的には、食品、環境由来試料(例えば、河川・湖沼の水、海水、雨水、汚泥、焼却炉の煤塵等)、生体由来試料(例えば、ヒト血清、尿、体液等)等が挙げられる。 前記食品として、例えば、野菜、乳、水、畜肉、卵、魚介類等及びこれらの加工品等が挙げられる。また、「日本食品基準成分表2010」に列挙されている食品でもよく、例えば、穀類;いも及びでん粉類;砂糖及び甘味類;豆類;種実類;野菜類;きのこ類;藻類;魚介類;肉類;卵類;乳類;油脂類;菓子類;し好飲料類;調味料及び香辛料類;調理加工食品類等が挙げられる。 乳類として、乳(例えば、生乳、普通牛乳、加工乳、脱脂乳等)及びこの粉乳、クリーム類(例えば、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー等)、発酵乳・乳酸菌飲料(例えば、ヨーグルトやこのドリンクタイプ等)、チーズ類(例えば、カテージ、ナチュラルチーズ(例えばゴーダ、チェダー等)、プロセスチーズ)、アイスクリーム類等が挙げられる。 本開示における「酸処理検体」とは、前記検体を酸処理したものである。 従来の手法であれば、ICP分析におけるヨウ素分析を行うために、酸で検体を処理すると、見掛け上の発光強度やイオン化強度を高くしてしまうメモリー効果が生じる。このため、酸処理検体を用いる場合の有効なICP分析におけるヨウ素分析方法がなかったのが実状である。これに対し、本開示の方法を用いれば、このような実状を解決することが可能であり、しかも酸処理の利点を有効活用できることとなったことは本開示の優れた利点である。酸処理は、検体を良好に分解でき、元素を効率良く回収できる利点があり、この利点は、従来の有機アルカリ処理と比較して、優れている。 さらに、前記「酸処理」は、無機酸で処理することが、精度よく元素を回収しやすいため、好適である。この無機酸として、硝酸、塩酸及び硫酸等が挙げられ、これらを単独で又は複数組み合わせて使用することができる。このうち、硝酸が好適である。 さらに、酸の濃度は、特に限定されず、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。 また、酸処理の温度は、特に限定されず、60〜100℃程度で行えばよく、このときの処理時間は、60〜120分程度で行うのが望ましい。これによって、検体からヨウ素等の元素を効率よく溶離できる。さらに、処理温度をステップワイズ及びグラジエントしてもよい。好適な一例として、60〜70℃にて20〜40分間行い、さらに90〜110℃にて60〜80分間行う2段階ステップワイズ方式が挙げられる。 本開示の方法には、「銀及び/水銀」が用いられる。 「銀及び/又は水銀」は、水溶性のものであり、水溶性塩を用いるのが好ましい。水溶性塩の好適な例示として、例えば、硝酸銀や塩化水銀(II)等が挙げられる。この「銀及び/又は水銀」を酸処理検体に混合させることで、ヨウ素のメモリー効果を低減できる。このうち、銀の方が、安全性が高く取り扱いが容易であるので、好ましい。 ところで、ICP分析におけるヨウ素のメモリー効果を低減する際に、金属元素含有の水溶液を用いるという本発明者らの独自の着想に基づき、幅広い金属(例えば、Sn、Cu、Ge、Pb、Pt、Au等)について検討を行った。しかし、これらにはヨウ素のメモリー効果の低減は認められず、銀含有又は水銀含有の水溶液を用いることによってメモリー効果の低減が達成できたことは本発明者らにとって全くの意外であった。 さらに、前記「銀及び/又は水銀」の使用量は、サンプル検液中、好ましくは0.1ppm以上とする。また、好ましくは50ppm以下とし、より好ましくは0.1〜10ppmとし、さらに1〜3ppmとするのが好適である。 本開示の方法には、「炭素化合物」が用いられることが望ましい。炭素化合物を用いることにより、ヨウ素等の多種類元素の測定の精度が向上する。 前記炭素化合物として、特に限定されず、例えば、カルボン酸、アルコール、界面活性剤、脂肪酸及びそれらの誘導体等が挙げられ、適宜これらから1種又は2種以上選択して使用することが可能である。 カルボン酸及びその誘導体としては、特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などが挙げられる。 アルコール及びその誘導体としては、特に限定されず。例えば、メタノール、エタノール等の一価アルコール;1.3−プロパンジオール、グリセロール等の二価又はそれ以上の多価アルコールなどが挙げられる。 界面活性剤としては、特に限定されず、陽イオン、陰イオン、両性、非極性のものが挙げられ、具体的には、脂肪酸ソルビタンエステルなどが挙げられる。 また、脂肪酸としては、特に限定されず、ブタン酸などが挙げられる。 前記炭素化合物の炭素数は、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜10、さらに炭素数1〜5が好ましい。 前記炭素化合物のうち、酢酸、メタノール、エタノールから選ばれる1種又は2種以上のものが好適である。 さらに、前記「炭素化合物」の使用量は、サンプル検液中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに2質量%以上とするのが、より増感現象を補正でき、検出精度が良好となるので、好適である。また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下とするのが、検出精度及びコストの点で、好適である。 本開示の測定に使用する「サンプル検液」は、前記「酸処理検体」と、前記「銀及び/又は水銀」、並びに前記「炭素化合物」と、を含むように調製することで得ることが可能である。 このサンプル検液は、ICP分析装置の試料経路内でイオン化される前に(例えば、トーチに到達するまでに)、これら「酸処理検体」、「銀及び/又は水銀」及び「炭素化合物」の各成分を同時期に又は別々に混合させることで調製されていればよい。このとき各成分は水溶液の状態であることが、混ざりやすいので、好適である。一例として、予めこれらの各溶液を混合させたサンプル検液をICP分析装置の導入経路にポンプ等にて導入してもよいし、これらの各溶液を別々の導入経路に流し、トーチに到達するまでに合流させてサンプル検液に調製してもよい。 少なくとも「酸処理検体」及び「炭素化合物」をイオン化前に混合させておくのが、分析精度を向上させるため望ましい。また、「銀及び/又は水銀」は、ICP測定の前中後で、メモリー効果を低減させるためにICP分析装置の導入経路に流してもよい。 サンプル検液は、酸性領域に調整されているのが好適であり、好ましくは、pH2以下に調整されているのが好適である。 サンプル検液中の各元素を定量分析する際に、絶対検量線法や内部標準検量線法を用いてもよい。このとき、酸処理前の検体1gに、各元素標準液を0.001〜10μgになるように添加して、各元素の測定及び定量を行なってもよい。また、測定によって得られた定性スペクトルにて各元素の定性を行い、各元素の信号強度と検量線にて、酸処理前検体中の各元素の濃度を求め、各元素の定量を行なってもよい。 本開示で使用するICP分析装置(具体的にはICP−MS分析装置及びICP−AES分析装置等)は、特に限定されず、市販の装置を使用すればよい。例えば、ICP−MS7500ce(Agilent Technologies社製)、ICPM−8500(SHIMADZU社製)などが挙げられる。そして、装置の起動、測定条件の最適化、装置の調整等については、ICP分析装置のマニュアルに従って、又は、非特許文献1の記載内容に従って、測定を行えばよい。 なお、本開示の方法及び手順を、ICP分析装置の導入経路等を適宜設計変更し、ICP分析装置のCPU等を含む制御部及び記憶媒体(USB、HDD、CD等)等を備えるハードウエア資源にプログラムとして格納し、制御部によって実現させることも可能である。 本開示によって、ヨウ素を精度よく分析することが可能である。さらに、放射性ヨウ素(例えばヨウ素129等)という微量元素でも精度よく分析することが可能である。従来、ヨウ素のメモリー効果によって特に放射性ヨウ素を精度よく分析することは難しかったが、本開示によって、簡易に精度よく分析することが可能である。 また、本開示のヨウ素及びその他元素の多種類元素を一斉に分析する方法は、前記「銀及び/又は水銀」を用いることを特徴とする。上述のICP分析におけるヨウ素分析方法で説明した構成の説明については省略する。 本開示の多種類元素の一斉分析方法について、好適には、前記検体を上述のように酸処理した後に、前記「銀及び/又は水銀」を用いるのが好適である。さらに、前記検体の酸処理後に、前記「炭素化合物」も含ませることが好適である。 従来、ヨウ素分析は他の元素分析とは別に行う必要があったが、本開示の方法を用いることによって、検体中のヨウ素及びその他の元素を一斉に測定することが可能である。 その他の元素として、ICP分析装置で測定可能な元素であれば特に限定されず、例えば、Na,Mg,Al,P,K,Ca,Cr,Mn,Fe,Cu,Zn,As,Se,Mo,Cd,Sn,Hg,Pb等が挙げられる。 なお、検体中の銀又は水銀を測定するときには、成分(a)として用いた「銀及び/又は水銀」をノイズとして除去する又は成分(a)として用いた「銀及び/又は水銀」を分析対象の元素から外す等にて行うのが望ましい。 また、本開示のICP分析におけるヨウ素のメモリー効果低減方法は、「銀及び/又は水銀」を用いることを特徴とする。上述のICP分析におけるヨウ素分析方法及び多種類元素一斉分析方法で説明した構成の説明については省略する。 前記「銀及び/又は水銀」を用いる時期は、特に限定されず、サンプル検液を測定する前中後の何れでもよい。本開示の方法において、サンプル検液に含ませる場合の他に、サンプル検体を測定する前後に連続的に又は不連続的に「銀及び/又は水銀」を用いてもよい。「連続的に」の一例として、「銀及び/又は水銀」を含む溶液を導入経路に一定時間流し続けること等が挙げられ、「不連続的に」の一例として、「銀及び/又は水銀」を含む溶液を導入経路に一定間隔で流すこと;「銀及び/又は水銀」を含む溶液と他の溶液(例えばサンプル検液、他の洗浄液等)のそれぞれを導入経路に流すこと等が挙げられ、これらの溶液の流す順序は特に限定されず、またこれらの溶液を交互に流してもよい。 本開示の方法は、ICP分析装置の導入経路の洗浄方法として用いることも可能である。測定の前後でも「銀及び/又は水銀」を用いることによって、ICP分析装置の導入経路中の残存ヨウ素を低減できる。さらにヨウ素のメモリー効果をより低減できることから、より検出精度を向上させることが可能である。特に、非常に微量な放射性ヨウ素を検出する際には効果的である。 本開示のヨウ素のメモリー効果低減方法における「銀及び/又は水銀」の使用量は、サンプル検液中、好ましくは0.1ppm以上とする。また、好ましくは50ppm以下とし、より好ましくは0.1〜10ppmとするのが好適である。このサンプル検液中の使用量と同様の濃度の「銀及び/又は水銀」の酸性水溶液を、ヨウ素低減の目的で、ICP分析装置の導入経路に流すのが好適である。 また、測定する検体を酸処理することが好適である。また、前記酸処理検体に、前記「銀及び/又は水銀、並びに前記「炭素化合物」を含ませることが好適である。 以下に、具体的な実施例等を説明するが、本発明(本開示)はこれに限定されるものではない。試験例1〜4:ICP分析によるヨウ素分析<前処理1:硝酸分解検体のサンプル検液> 試料(調製粉乳)を薬さじにて65mLポリプロピレン容器(チューブ)へ採取した。サンプリング量は0.2g以下とした。この容器内に、69% 硝酸 5mLを添加後、軽く振り混ぜた。その後、チューブを昇温機器に設置し、65℃で30min、100℃で70minの設定を行って試料の分解を行った。100℃で50min経過後、チューブを機器から取り出し、30sec以上放置後、過酸化水素を各チューブに1mLずつ添加した。分解終了後、超純水(ミリQ水)を添加し、50mLへメスアップをした。この溶液を試験例1のサンプル検液とした。<前処理2:硝酸分解後の検体、Ag含有サンプル検液> 前処理1と同様にして検体を分解し、分解終了後、Ag濃度1000ppmの硝酸銀を100μL(終濃度2ppm)を添加した。そこに、超純水(ミリQ水)を添加し、50mLへメスアップをした。この溶液を試験例2のサンプル検液とした。<前処理3:硝酸分解後の検体、Ag、酢酸含有サンプル検液> 前処理1と同様にして検体を分解し、分解終了後、Ag濃度1000ppmの硝酸銀を100μL(終濃度2ppm)、100%酢酸1.5mL(終濃度3%)を添加した。そこに、超純水(ミリQ水)を添加し、50mLへメスアップをした。この溶液を試験例3のサンプル検液とした。<前処理4:硝酸分解後の検体、Hg、酢酸含有サンプル検液> 前処理1と同様にして検体を分解し、分解終了後、Hg濃度1000ppmの塩化水銀(II)硝酸溶液を100μL(終濃度2ppm)、100%酢酸1.5mL(終濃度3%)を添加した。そこに、超純水(ミリQ水)を添加し、50mLへメスアップをした。この溶液を試験例4のサンプル検液とした。<前処理5:TMAH分解後の検体> 非特許文献1に準じて行った。試料(検体)を薬さじにて65mLポリプロピレン容器(チューブ)へ採取した。サンプリング量は0.2g以下とした。この容器内に、0.5% テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)溶液 5mLを添加後、軽く振り混ぜた。その後、チューブを昇温機器に設置し、60℃で一夜放置した。放冷後、10分間遠心分離した後、上澄み液を1mLとり、2μg/mlテルル溶液を10μl加え、超純水(ミリQ水)を添加し、50mLへメスアップをした。この溶液を試験例1のサンプル検液とした。 また、「Ag」を、「Sn、Cu、Ge、Pb、Pt、Au」の各成分に代えた以外は、試験例3と同様にして、ヨウ素分析を行った。 上述の前処理1〜4にて得られた試験例1〜4のサンプル検液を、後述のICP−MS分析機器にてヨウ素分析を行い、その結果を表1に示す。 試験例2のように、硝酸条件下で、「Ag」及び「Hg」を用いることで、硝酸条件によって蓄積されやすいヨウ素のメモリー効果が、試験例1の用いなかった場合と比較して、はるかに低減することが認められた。 また、「Sn、Cu、Ge、Pb、Pt、Au」の各成分を用いてもヨウ素のメモリー効果の低減は認められなかった。よって、酸性条件下では、「Ag」及び「Hg」以外の金属では、ヨウ素メモリー低減効果を得ることができなかった。 さらに、試験例3及び4のように、「Ag」及び「Hg」と、酢酸の炭素化合物とを組み合わせて用いることによって、分析の精度が、試験例2の「Ag」を用いた場合よりも、認証値に近くなり、分析精度が向上している。また、酢酸に代えてメタノールを用いても、同様に分析の精度は向上した。 試験例3及び4におけるヨウ素の回収率は、111〜113%と大変良好な回収率であった。なお、回収率とは、あらかじめ量のわかった標準品を一定量試料に添加し、その前後で目的とする元素の量を定量することによって算出されたものであり、これによって、本開示の方法が、精度・真度の点で優れていることが明らかとなった。 また、TMAHと比べて、前処理にかかった時間も、本開示の方が、3分の1以下であるため、本開示の方が前処理や操作などが簡易であり、効率的に分析を行うことができる。 よって、ヨウ素のメモリー効果低減において、「Ag」及び「Hg」を用いるのがよく、ICP分析にて定量を行う場合には、酢酸等のような炭素化合物を用いるのがよい。<Ag検量線検液作成> 65mLポリプロピレン容器(チューブ)へ、試料検液と同様条件になるよう69% 硝酸 5mL、Ag濃度1000ppmの硝酸銀を100μL(終濃度2ppm)、100%酢酸1.5mL(終濃度3%)を添加した。 その後、ヨウ化カリウムを超純水(ミリQ水)にて溶解した溶液を、所望の濃度(通常は20ppb)になるよう上記の溶液へと添加した。添加終了後、超純水(ミリQ水)にて50mLにメスアップし、検量線母液とした。 検量線母液にヨウ化カリウム溶液を加えていないものも同時に作製し、これをブランク溶液とした。 検量線溶液をブランク溶液で2倍、10倍に希釈したものを、それぞれ検量線の中間点溶液とする。<Hg検量線液作成> 「Ag濃度1000ppmの硝酸銀を100μL(終濃度2ppm)」を「Hg濃度1000ppmの塩化水銀硝酸溶液を100μL(終濃度2ppm)」に変えた以外は、上述の<Ag検量線検液作成>と同様にして、各検量線溶液を作成した。<ICP−MSでの測定> 検量線溶液をブランク、10倍希釈、2倍希釈、母液の順でICP−MSに導入し、検量線の作成を行った。 検量線作成後、前処理の終わったサンプル検液をICP−MSに導入し、ヨウ素の測定を行った。 サンプル間の分析ライン洗浄液は、ブランク溶液と同様のものと超純水を使用した(ライン洗浄時間は各20sec)。 解析にて試料中のヨウ素濃度の計算を行った。<ICP−MS 分析条件> 機器:Agilent Technologies社製 ICP-MS 7500ce 内標準元素:In(質量数115) 干渉除去ガスモード:He 本開示の方法は、食品及び医薬品等の幅広い分野にて利用することが可能である。 また、本技術は、以下の構成をとることも可能である。 〔1〕 酸処理検体と、(a)銀及び/又は水銀、並びに(b)炭素化合物とを含むサンプル検液を測定することを特徴とする誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法。 〔2〕 前記酸処理が、無機酸処理である前記〔1〕記載のヨウ素分析方法。 〔3〕 前記銀及び/又は水銀が、水溶性塩である前記〔1〕又は〔2〕記載のヨウ素分析方法。 〔4〕 前記銀及び/又は水銀を、サンプル検液中0.1ppm以上とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項記載のヨウ素分析方法。 〔5〕 前記検体が、食品である前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載のヨウ素分析方法。 〔6〕 ヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する前記〔1〕〜〔5〕の何れか1項記載のヨウ素分析方法。 〔7〕 銀及び/又は水銀を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔8〕 さらに、測定の前後で銀及び/又は水銀を連続的に又は不連続的に用いる前記〔7〕記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔9〕 酸処理検体に用いる、前記〔7〕又は〔8〕記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔10〕さらに、炭素化合物を用いる、前記〔7〕〜〔9〕の何れか1項記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔11〕前記酸処理が、無機酸処理である、前記〔7〕〜〔10〕の何れか1項記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔12〕前記銀及び/又は水銀が、水溶性塩である、前記〔7〕〜〔11〕の何れか1項記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔13〕前記銀及び/又は水銀を、試料経路中0.1ppm以上とする、前記〔7〕〜〔12〕の何れか1項記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔14〕前記検体が、食品である、前記〔9〕〜〔13〕の何れか1項記載のヨウ素のメモリー効果低減方法。 〔15〕酸処理検体に、銀及び/又は水銀を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 〔16〕さらに炭素化合物を用いる前記〔15〕記載のヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 〔17〕前記酸処理が、無機酸処理である、前記〔15〕又は〔16〕項記載のICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 〔18〕前記銀及び/又は水銀が、水溶性塩である、前記〔15〕〜〔17〕の何れか1項記載のICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 〔19〕前記銀及び/又は水銀を、試料経路中0.1ppm以上とする、前記〔15〕〜〔18〕の何れか1項記載のICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 〔20〕 前記検体が、食品である、前記〔15〕〜〔19〕の何れか1項記載のICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 酸処理検体と、(a)銀及び/又は水銀、並びに(b)炭素化合物とを含むサンプル検液を測定することを特徴とする誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法。 前記酸処理が、無機酸処理である請求項1記載のヨウ素分析方法。 前記銀及び/又は水銀を、サンプル検液中0.1ppm以上とする請求項1又は2記載のヨウ素分析方法。 前記検体が、食品である請求項1〜3の何れか1項記載のヨウ素分析方法。 ヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する請求項1〜4の何れか1項記載のヨウ素分析方法。 銀及び/又は水銀を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素のメモリー効果低減方法。 酸処理検体に、銀及び/又は水銀並びに炭素化合物を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。 【課題】 ICP分析方法において、簡易にヨウ素のメモリー効果を低減できる方法及び簡易なヨウ素分析方法を提供すること。【解決手段】 酸処理検体と、(a)銀及び/又は水銀、並びに(b)炭素化合物とを含むサンプル検液を測定することを特徴とする誘導結合プラズマ分析におけるヨウ素分析方法;銀及び/又は水銀を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素のメモリー効果低減方法;酸処理検体に銀及び/又は水銀を用いることを特徴とする、ICP分析方法におけるヨウ素及びその他の元素を一斉に分析する方法。【選択図】なし


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