タイトル: | 公開特許公報(A)_カプセル製剤 |
出願番号: | 2012070336 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/192,A61K 9/48,A61K 47/14,A61P 35/00,A61P 35/02 |
秋山 英郎 JP 2013199458 公開特許公報(A) 20131003 2012070336 20120326 カプセル製剤 テムリック株式会社 504140897 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 福田 浩志 100099025 秋山 英郎 A61K 31/192 20060101AFI20130906BHJP A61K 9/48 20060101ALI20130906BHJP A61K 47/14 20060101ALI20130906BHJP A61P 35/00 20060101ALI20130906BHJP A61P 35/02 20060101ALI20130906BHJP JPA61K31/192A61K9/48A61K47/14A61P35/00A61P35/02 5 OL 9 4C076 4C206 4C076AA53 4C076BB01 4C076CC27 4C076DD46 4C076FF63 4C206AA01 4C206GA31 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA57 4C206NA03 4C206ZB26 4C206ZB27 本発明は、タミバロテンを含有するカプセル製剤に関する。 レチノイン酸(ビタミンA酸)は、発生途上にある未熟な細胞を特有な機能を有する成熟細胞へと分化させ、又は細胞の増殖を促進する等、生命維持作用に極めて重要な生理作用を有する物質である。臨床的には、レチノイン酸は、ビタミンA欠乏症、上皮組織の角化症、白血病やある種の癌の治療に有用であることが見出されている。 このようなレチノイドの生理作用を利用した医薬品が開発されている。そのひとつとしてタミバロテンが挙げられ、これは、白血病等のがんの治療剤として知られている(例えば、特許文献1)。 一方、薬物の体内吸収性やバイオアベイラビリティーの改善、保存安定性等を考慮して、薬物の剤型をカプセル製剤とすることがある。カプセル製剤では、水に難溶性の薬物を溶解させてカプセル内部に充填するために、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステルなどを充填液の基剤に用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。 タミバロテンについても、カプセル製剤化することによって安定性に優れ、服用が容易になることが知られており、例えば、特許文献3には、プロピレングリコールモノオレイン酸エステル等を充填液の基剤とするカプセル製剤が開示されている。特開平7−17584号公報特開平5−25037号公報国際公開第2008/056073号パンフレット しかしながら、タミバロテンのカプセル製剤用の充填液の基剤として、汎用性が高いプロピレングリコールモノオレイン酸エステルを用いた場合に、カプセル製剤の経時安定性が十分でないことがある。 従って、本発明は、タミバロテンを含有し、経時安定性に優れたカプセル製剤を提供することを目的とする。 本発明は以下のとおりである。 [1] タミバロテン及びプロピレングリコールモノカプリル酸エステルを含有する充填液を被膜成分で被覆したカプセル製剤。 [2] 前記充填液がタミバロテンを0.1質量%〜10.0質量%含有する[1]に記載のカプセル製剤。 [3] 前記充填液がタミバロテンを0.1質量%〜8.0質量%含有する[1]に記載のカプセル製剤。 [4] タミバロテンを0.1mg〜10mg含有する[1]〜[3]のいずれかに記載のカプセル製剤。 [5] 血液癌又は固形癌の治療のための[1]〜[4]のいずれかに記載のカプセル製剤。 本発明によれば、タミバロテンを含有し、経時安定性に優れたカプセル製剤を提供することができる。 本発明のカプセル製剤は、タミバロテン及びプロピレングリコールモノカプリル酸エステルを含有する充填液を被膜成分で被覆したカプセル製剤である。 本発明の発明者の知見によれば、水に難溶性薬剤のカプセル製剤における基剤として汎用されているプロピレングリコールモノオレイン酸エステルに対して、タミバロテンを組み合わせると、カプセル製剤の経時安定性が損なわれる場合があることが見いだされた。 本発明では、タミバロテンのカプセル製剤の基剤としてプロピレングリコールモノカプリル酸エステルを用いることにより、カプセル製剤としての経時安定性を高めることができる。 本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。 また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。 さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。 以下、本発明について説明する。[充填液] 本発明の有効成分であるタミバロテンは、4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸である。タミバロテンとしては、通常の製造で得られた結晶、又は結晶性の粉末のいずれを用いることができる。タミバロテンの製造方法としては、例えば、特許第3001632号、特開昭61−76440号、WO2002/018322に記載された方法を挙げることができる。 前記充填液は、タミバロテンを0.1質量%〜10.0質量%の含有率(質量比)で含むことが好ましい。0.1質量%以上であれば所望量のタミバロテンを服用するためのカプセル製剤の数を必要以上に多くし過ぎることがなく、10.0質量%以下であれば、タミバロテンの溶解性を良好に維持できる傾向がある。充填液中のタミバロテンの含有率は、カプセル製剤の経時安定性の観点から、0.1質量%〜8.0質量%であることがより好ましい。 また、タミバロテンの充填液の体積あたりの含有率は、1mg/mL〜100mg/mL、好ましくは1mg/mL〜80mg/mLとすることができる。タミバロテンが1mg/mL以上であればタミバロテンの効果が十分に得られる傾向があり、100mg/mL以下であれば、良好な溶解性が得られる傾向がある。 前記充填液は、基剤としてプロピレングリコールモノカプリル酸エステル(プロピレングリコールモノオクタン酸エステル)を含む。これにより、タミバロテンを含むカプセル製剤の経時安定性が良好となる。また、通常の条件下でより高濃度のタミバロテンを含むカプセル製剤を提供できる。 前記基剤として用いられるプロピレングリコールモノカプリル酸エステルとしては、医薬品添加剤として使用を認められているグレードであることが好ましい。 前記充填液には、カプセル製剤に所望の特性、例えば水に難溶性薬物の溶解を付与するなどの観点から、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル以外の他の油性基剤を含むことができる。 前記他の油性基剤としては、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル以外のプロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド、ポリエチレングリコール類、動植物油、又は界面活性剤等を挙げることができ、これらを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。 前記プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノオレイン酸エステル、ジ(カプリル、カプリン酸)エステル等を挙げることができる。具体的には、リケマールPO−100V(プロピレングリコールモノオレート、理研ビタミン株式会社製)、サンソフトNo.25−ODV(太陽化学株式会社製)、NIKKOL Sefsol−228(日光ケミカルズ株式会社)、NIKKOL Sefsol PDD(日光ケミカルズ株式会社)等が挙げられる。 前記脂肪酸トリグリセリドとしては、C8−C12の中鎖脂肪酸トリグリセリドを挙げることができる。具体的には、1−カプリロイル−2,3−ジラウロイルグリセリド、トリノナノイルグリセリド、トリカプロイルグリセリド、1−ラウロイル−2,3−ジカプロイルグリセリド、2−ラウロイル−1,3−ジカプロイルグリセリド、1−カプロイル−2,3−ジラウロイルグリセリド、2−カプロイル−1,3−ジラウロイルグリセリド、トリラウロイルグリセリド等を挙げることができる。 前記ポリエチレングリコール(PEG)類としては、ポリエチレングリコール及びメトキシポリエチレングリコールなどを挙げることができる。ポリエチレングリコール類の平均分子量は、200〜1540であることが好ましい。ポリエチレングリコール類としては、具体的には、日本薬局方および日本薬局方外医薬品成分規格に記載されたポリエチレングリコール(マクロゴール)200、300、400、600、1000、1500、1540を挙げることができる。 中でも、経口投与後の吸収性の観点から、PEG−200(凝固点−50℃)、PEG−300(凝固点−13℃)、PEG−400(凝固点7℃)、PEG−600(凝固点20℃)およびPEG−1000(凝固点37℃)の5種類が好ましく、更には室温で溶液状の平均分子量300のPEG−300、400のPEG−400、600のPEG−600のものが好ましい。 前記ショ糖脂肪酸エステルとしては、炭素数12〜20の脂肪酸とショ糖とのエステルを挙げることができる。 前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、炭素数12〜20の脂肪酸とソルビタンとのエステルを挙げることができる。 前記動植物油としては、オリーブ油、ヒマワリ種子油、ダイズ油、トウモロコシ油、ウイキョウ油、ゴマ油、サフラワー油、小麦胚芽油、シソ油、ツバキ油、鯨油等が挙げられる。 前記界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベートなどを挙げることができる。また、そのほか、分子量の低い基剤も使用してもよい。 前記充填液は、油性基剤粘度の調整及び薬剤の分散性の観点から、高融点の基剤を含んでもよい。前記高融点の基剤としては、ロウ、例えば、ミツロウ、木ロウ、鯨ロウ、水素添加植物ロウ等を挙げることができる。[被膜成分] 前記カプセル製剤の被膜成分としては、通常、カプセル製剤に用いられている成分であれば特に制限はない。前記被膜成分の基剤としては、ゼラチン、寒天、プルラン、セルロース、カラギーナン等を単独で又は混合して使用することができる。 前記被膜成分には、被膜の強度や、崩壊性又は放出特性等を調整する観点から、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン等の添加剤が含まれていてもよい。また必要に応じて、カラメル、β−カロテン、タール形色素等の着色剤;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等の防腐剤;BHT、BHA、トコフェロール、没食子酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸ステアリンエステル等の抗酸化剤又は安定化剤;脂肪酸モノグリセリド、ミツロウ等の増粘剤又は分散剤;エタノール、酢酸エチル、界面活性剤等の溶解剤や溶解補助剤;香料;などを、1種以上添加することができる。 前記被膜成分としては、経時安定性の観点からゼラチンであることが好ましい。被膜成分としてゼラチンを含む場合のゼラチンの含有率は、一般に、被膜成分全質量の30質量%〜90質量%とすることができ、55質量%〜85質量%であることが好ましい。 また、前記被膜成分は、ゼラチンに弾力性を持たせるためにグリセリンやソルビトールなどを含んでもよい。 ゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンであってもよく、化学修飾されたゼラチンであってもよい。化学修飾ゼラチンとしては、コハク化ゼラチン等を挙げることができる。ゼラチンとしては、易溶性で且つ、崩壊遅延を起こしにくいなどの点からコハク化ゼラチンが好ましい。 前記被膜成分の含水率は、1質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%であることがより好ましく、7質量%〜13質量%であることが更に好ましい。[カプセル製剤の形状] 本発明のカプセル製剤の形状は、特に制約されるものではなく、オーバル型(フットボール型)、オブロング型(長だ円型)、ラウンド型(球型)、ドングリ型、長ナス型、三角型、ひし型、チューブ型などが挙げられる。つまみやすく、かつ、嚥下しやすさの観点から、オーバル型、オブロング型、または、ラウンド型とすることが好ましい。 前記カプセル製剤としては、ソフトカプセルであってもよく、ハードカプセルであってもよいが、油性基剤に溶解する水に難溶性薬物を封入するためにはソフトカプセルであることが好ましい。 臨床適用では、例えば、ソフトカプセルとして、長径約5mm〜約12mmのカプセルサイズが好ましく、ハードカプセルとしては日局規格の1号〜4号カプセルが好ましい。 また、カプセル製剤に含まれるタミバロテンの量については特に制限はない。カプセル製剤の服用の便宜等の点で、1カプセル中に、タミバロテンを0.1mg〜10mg含有することが好ましく、0.1mg〜8mgであることがより好ましい。[製造方法] 前記カプセル製剤は、通常の方法で上記の各成分を配合して製造することができる。例えば、以下のようにして得ることができる。 室温下で、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル、又は必要に応じて他の成分との混合液に対して、タミバロテン原薬を加えて、撹拌し溶解し、充填液を調製する。 一方、被膜は、ゼラチン等の基剤と、必要に応じて添加成分とを、必要に応じて加温・溶解し、所望の形状に成形する。また、成形後には、必要に応じて乾燥を行う。 充填は、カプセルの種類に応じて一般的に用いられる充填機を用いて行うことができる。充填の際には、前記充填液を、充填機により前記所望の形状に成形された被膜に充填する。 前記カプセル製剤がソフトカプセルの場合には、例えば被膜を所望の厚みのシート状に成形した後に、充填機を用いて、一定量の上記の充填液をカプセル内部となるように充填し、乾燥させて目的のソフトカプセルを得る。 前記カプセル製剤がハードカプセルの場合には、充填液をカプセル内に充填した後に、ゼラチンを主成分とした溶液を用いて、カプセル頭部と胴部の接合部をバンド状にシールして、目的のハードカプセルを得る。 これにより、タミバロテンを含有する充填液を被膜成分で被覆したカプセル製剤が得られる。[用途] 本発明のカプセル製剤は、タミバロテンの適用用途に応じた用途に用いられることが好ましく、例えば、血液癌又は固形癌の治療のために用いられる。血液癌および固形癌としては特に限定はされないが、具体的には、急性前骨髄球性白血病(APL)、成人T細胞白血病(ATL)、多発性骨髄腫(MM)などの血液癌;肝臓癌、胃癌、乳癌、食道癌、前立腺癌、婦人科癌、膵臓癌、肺癌、大腸癌などの固形癌を挙げることができる。 また、本発明は、血液癌又は固形癌の治療方法も包含する。前記治療方法は、タミバロテンを含有する前記カプセル製剤を、血液癌又は固形癌の治療を必要とする対象へ投与(具体的には経口投与)することを含む。前記カプセル製剤の投与は、1回又は複数回としてもよい。1回あたりに投与される前記カプセル製剤は、1個又は複数としてもよい。 血液癌又は固形癌の治療剤としての前記カプセル製剤を使用する場合には、タミバロテンの成人一日あたりの投与量は、1mg〜16mgとすることが好ましい。 本発明においてカプセル製剤を上述した用途に用いる場合には、一日あたりの治療に必要な量のタミバロテンを1のカプセル製剤に含めてもよく、1回に複数個の投与又は複数回の投与が可能となるように、前記治療に必要な量を減じた量のタミバロテンを1のカプセル製剤に含めてもよい。 以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。[実施例1](1)不溶化評価 カプセル製剤の充填液用基剤と被膜との組み合わせによるカプセル製剤の不溶化について検討した。 プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル(NIKKOL Sefsol-218、日光ケミカルズ社)、プロピレングリコールモノオレイン酸エステル(リケマールPO-100V、理研ビタミン社)、プロピレングリコールジカプリン酸エステル(NIKKOL Sefsol PDD、日光ケミカルズ社、及びプロピレングリコールジカプリル酸エステル(NIKKOL Sefsol-228、日光ケミカルズ社)を用いた。これらのポリプロピレングリコール脂肪酸エステルに最終濃度2質量%となるようにタミバロテンを添加して得られた充填液と、タミバロテンを含有しないポリプロピレングリコール脂肪酸エステルのみで構成した充填液とをそれぞれ用意し、充填液サンプルとした。 被膜としては、ゼラチン100部、濃グリセリン28部及び精製水200部を室温(25℃)で撹拌・溶解させ、カプセル被膜溶液を調製した。 前記カプセル被膜溶液25gを、ステンレス製バット(約15cm×約11cm)に均一になるよう広げ、室温にて放置し、カプセル剤皮シートとした。得られたシートから、直径1cmの円形状のサンプルを打抜き、乾燥室でソフトカプセルの含水量(9質量%以下)となるまで乾燥させ、試験用の被膜サンプルとした。 得られた被膜サンプルを、ガラス製規格ビン(10mL)中、5gの各充填液サンプルに被膜サンプルを漬込み、密栓して50℃の恒温槽で4週間保存した。保存開始後、2週間及び4週間にカプセル被膜サンプルを取り出し、内容成分を拭取り、補助盤なしで崩壊試験を実施した(n=6)。 崩壊試験は、各充填液サンプルから取り出したカプセル被膜サンプルを、37±2℃にて崩壊試験器(NT-4H、富山産業社)を用いて崩壊試験を行い、被膜が完全に溶解したときを崩壊時として、試験開始から崩壊時までの時間を測定した。 結果を表1に示す。 表1に示されるように、タミバロテンを含有しない充填液サンプルでは、すべての充填サンプルで崩壊時間の延長が認められ、2質量%のタミバロテンを含有する充填液サンプルではプロピレングリコールモノカプリル酸エステル以外を含む充填サンプルでは、すべての充填サンプルで崩壊時間の延長が認められた。 一方、プロピレングリコール脂肪酸エステルとしてプロピレングリコールモノカプリル酸エステルを含む充填液サンプルを用いた場合には、タミバロテンの添加による崩壊時間の延長が、特異的に認められなかった。 また、プロピレングリコールモノオレイン酸エステルを含む充填液サンプルでは、試験開始後2週間の時点で被膜の不溶化が生じ、2週間目及び4週間目のすべてにおいて、被膜に不溶化部分が認められた。 一方、プロピレングリコールモノカプリル酸エステルを含む充填液サンプルでは、試験開始後4週間目においても、被膜の不溶化は認められなかった。 これらのことから、充填液の基剤として医薬品に汎用されているプロピレングリコールモノオレイン酸エステルは、タミバロテンと組み合わせた場合、ゼラチンを基剤とする被膜の不溶化を引き起こすことが示唆された。これに対して、プロピレングリコールモノカプリル酸エステルはタミバロテンと組み合わせた場合、ゼラチンを基剤とする被膜の不溶化を特異的に生じることがなく、カプセル製剤の良好な崩壊性を示すことがわかった。(2)溶解度評価 次に、プロピレングリコールモノカプリル酸エステル、プロピレングリコールジカプリル酸エステル、及びプロピレングリコールジカプリン酸エステルに対するタミバロテンの溶解度を確認した。 それぞれのプロピレングリコール脂肪酸エステルにタミバロテンを所定濃度添加し、20℃±5℃の温度にて、振盪しながら、4時間放置して、タミバロテン溶解液を調製した。各タミバロテン溶解液を、遠心分離後に上澄み液を分取し高速液体クロマトグラフ分析装置を用いて分析し、各プロピレングリコール脂肪酸エステル中のタミバロテンを定量した。 その結果、タミバロテンの20℃±5℃における溶解濃度は、プロピレングリコールモノカプリル酸エステルに対しては6.3質量%、プロピレングリコールジカプリル酸エステルに対しては0.8質量%、及びプロピレングリコールジカプリン酸エステルに対しては0.5質量%であった。 従って、プロピレングリコールモノカプリル酸エステルに対するタミバロテンの上記特定温度における溶解度は、プロピレングリコールジカプリル酸エステル及びプロピレングリコールジカプリン酸エステルに対する溶解度と比較して顕著に高いことがわかった。 不溶化評価及び溶解度評価の結果から、タミバロテンを有効成分とするカプセル製剤を調製する際には、経時安定性の点で、また高濃度にタミバロテンを処方可能な点で、プロピレングリコールモノカプリル酸エステルを充填液の基剤とすることが最も良好であることがわかった。(3)カプセル製剤の製造 98gのプロピレングリコールモノカプリル酸エステルにタミバロテン原薬2gを加え、撹拌しながら、均一に溶解して、充填液を調製した。 ゼラチン80g、濃グリセリン20g、及び精製水適量を、70℃で撹拌しながら溶解させて被膜液を調製し、シート状に成形して水分率9質量%まで乾燥させ、被膜を得た。 被膜を、ロータリー式カプセル自動充填機(東洋カプセル社製)に装填し、充填液を、ソフトカプセル1個あたり100mg相当となるように充填し、タミバロテン2mgを含有するタミバロテンカプセル剤を得た。その後、PTP包装し製品とした。 本発明によれば、経時安定性に優れたタミバロテン含有カプセル製剤を提供することができる。 タミバロテン及びプロピレングリコールモノカプリル酸エステルを含有する充填液を被膜成分で被覆したカプセル製剤。 前記充填液がタミバロテンを0.1質量%〜10.0質量%含有する請求項1記載のカプセル製剤。 前記充填液がタミバロテンを0.1質量%〜8.0質量%含有する請求項1記載のカプセル製剤。 タミバロテンを0.1mg〜10mg含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のカプセル製剤。 血液癌又は固形癌の治療のための請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のカプセル製剤。 【課題】タミバロテンを含有し、経時安定性に優れたカプセル製剤を提供する。【解決手段】タミバロテン及びプロピレングリコールモノカプリル酸エステルを含有する充填液を被膜成分で被覆したカプセル製剤。【選択図】なし