タイトル: | 公開特許公報(A)_スクアリリウム化合物、それを含む薄膜および有機薄膜太陽電池 |
出願番号: | 2012067512 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C08G 61/12,H01L 51/42,C09B 23/00,C09B 69/10,C07D 209/14 |
中澄 博行 前田 壮志 中尾 英和 柴田 勝則 JP 2013199541 公開特許公報(A) 20131003 2012067512 20120323 スクアリリウム化合物、それを含む薄膜および有機薄膜太陽電池 公立大学法人大阪府立大学 505127721 株式会社ナード研究所 000134637 河崎 眞一 100117972 石井 和郎 100072431 中澄 博行 前田 壮志 中尾 英和 柴田 勝則 C08G 61/12 20060101AFI20130906BHJP H01L 51/42 20060101ALI20130906BHJP C09B 23/00 20060101ALI20130906BHJP C09B 69/10 20060101ALI20130906BHJP C07D 209/14 20060101ALN20130906BHJP JPC08G61/12H01L31/04 DC09B23/00 LC09B69/10 BC07D209/14 12 OL 28 (出願人による申告)平成23年度近畿経済産業局の委託による戦略的基盤技術高度化支援事業「高効率な有機太陽電池用機能性材料の開発」委託研究で、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4C204 4J032 5F151 4C204BB04 4C204BB05 4C204BB09 4C204CB04 4C204DB03 4C204DB13 4C204EB10 4C204FB03 4C204GB24 4J032BA02 4J032BA12 4J032BB03 4J032CD02 4J032CE03 4J032CG01 5F151AA11 5F151FA04 5F151FA06 5F151FA13 5F151FA15 5F151FA18 5F151GA03 本発明は、電子ドナーまたはその中間体、有機色素などとして有用なスクアリリウム化合物、それを含む薄膜および有機薄膜太陽電池に関する。 有機色素は、その種類によって、可視から近赤外領域の特定波長の光を吸収し、これにより得られたエネルギーに基づいて、電気的および/または化学的な機能を発揮する。そのため、近年では、有機色素は、機能性色素として、調光材料、光記録材料、光電変換材料などの様々な分野で利用されている。 例えば、スクアリリウム色素は、合成が比較的容易であるため、機能を制御するための様々な検討が行われている色素の1つである。スクアリリウム色素は、主に可視光領域に吸収を有し、モル吸光係数が高く、また、耐光性に優れるとともに、強い蛍光発光を示す。そのため、光記録材料、有機電界発光素子、分子センサー、色素増感太陽電池および有機薄膜太陽電池などの幅広い分野で応用が検討されている。 また、地球温暖化やエネルギー問題の観点から、太陽エネルギーの利用が着目され、太陽電池の開発が行われている。結晶性シリコンやアモルファスシリコンなどを、無機系光電変換素子として利用した太陽電池などが実用化されているが、未だ生産コストが高く、高価である。また、変換効率や寿命などに課題があるものの、生産コストを低くできる観点から、有機系光電変換素子を利用した太陽電池の開発も行われている。中でも、有機薄膜太陽電池は、色素増感型太陽電池とは異なり、電解液を用いないため、漏液による劣化の心配がなく、長寿命化できるとともに、フレキシブル化および軽量化が可能であるため、注目されている。 有機薄膜太陽電池は、電子ドナーとして機能する導電性ポリマーと、電子アクセプターとして機能するフラーレンなどとを組み合わせた有機薄膜半導体を光電変換層(光活性層)として用いる。このような有機薄膜太陽電池は、大量生産が可能で、機能の制御や付加が比較的容易であるなどの利点を有するものの、エネルギー変換効率(η:power conversion efficiency)が低いことが実用化への課題となっている。 エネルギー変換効率を高めるためには、有機薄膜半導体による光電変換の各工程の効率を高めることが重要となる。電子アクセプターとしては、逆電子移動速度が小さい[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PC61BM)などのフラーレン化合物が優れていることが既に知られている。そのため、エネルギー変換効率を高める観点から、電子ドナーを改良する様々な試みがなされている。電子ドナーは、光を吸収して、電荷を発生させる機能を有する必要があるため、有機色素と共通する骨格を有する場合が多い。 代表的な、電子ドナーと電子アクセプターとの組み合わせとしては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)と、PC61BMとの組み合わせが挙げられる。P3HTは、比較的幅広い波長の吸収スペクトルを示すものの、P3HTとPC61BMを含む光電変換層を用いた有機薄膜太陽電池の光電変換能が発揮されるのは、可視光領域の光線に限られ、太陽光の有効吸収率が低い。トータルの光電変換効率を高めるには、近赤外光の有効利用が重要である。 また、エネルギー変換効率ηは、開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)およびフィルファクター(FF)の3因子の積に比例する。具体的には、有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率ηは、下記式により算出される。 η=Pout/Pin=[FF×Jsc×Voc]/Pin ここで、PoutおよびPinは、それぞれ、出力および入力を示し、FFは、下記式で表すことができる。 FF=[Jm×Vm]/[Jsc×Voc] ここで、Jmは極大出力点での電流を示し、Vmは極大出力点での電圧を示す。 上記式から、エネルギー変換効率を高めるには、Vocを高めることが有効である。Vocは、電子ドナーの最高被占軌道(HOMO)と、電子アクセプターの最低空軌道(LUMO)との差に比例すると言われている。そのため、高いVocを得る観点からは、HOMOのエネルギー準位がより低い電子ドナーを用いるのが有効であると考えられる。 このように、高いエネルギー変換効率を達成するためには、近赤外光領域に大きな吸収を有するとともに、HOMOのエネルギー準位が低い、電子ドナーを用いるのが有利であると考えられる。 非特許文献1には、電子アクセプターであるPC61BMと組み合わせる電子ドナーとして、アクセプター骨格としてのチエノ[3,4−b]チオフェン骨格と、ドナー骨格としてのベンゾチオフェン骨格とを交互に主鎖中に有するポリマーが開示されている。非特許文献1には、ドナー骨格とアクセプター骨格における置換基が特定の場合に、高いエネルギー変換効率が得られることも開示されている。上記のポリマーは、狭いHOMO−LUMOギャップを与えるため、分子内の電荷移動吸収に基づいて、より長波長側の光線を吸収できる。また、非特許文献2には、上記のチエノ[3,4−b]チオフェン骨格の2位の置換基を2−エチルヘキシルカルボニル基に変更した材料を用いることにより、さらに高いエネルギー変換効率が得られることが開示されている。これらの文献から、幅広い波長領域の光線を吸収できれば、電池特性を向上できることが示唆される。 また、スクアリリウム骨格を含む化合物やポリマーも検討されている。例えば、非特許文献3には、スクアリリウム骨格と、スチルベン型のジピリルモノマー骨格とを有するπ共役ポリマーが、可視光から近赤外光の領域に幅広い吸収を示し、低いバンド幅を有することが開示されている。 また、特許文献1は、スクアリリウム骨格と、インドール骨格とを有する化合物が、600nm以上の長波長領域において高い光電変換効率を有することを開示している。 特許文献2は、スクアリリウム骨格と、ベンゾチオフェン骨格とを有するオリゴマーが、狭いバンド幅および広い吸収波長領域を示すことを開示している。特開2009−242379号公報特開2011−165963号公報J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 7792-7799J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 15586-15587Heterocyclic Polymethine Dyes: Synthesis, Properties and Applications, Springer;1版(2008年8月27日), p.167 太陽光の光束の最大吸収スペクトルは、約1.8eV(700nm)であるのに対し、従来の代表的な電子ドナーであるP3HTのバンド幅は、Eg=1.9eVである。そのため、P3HTとPC61BMとを組み合わせた従来の光電変換層では、太陽光のうち、350〜650nmの波長の光だけしか吸収できず、しかも、この範囲においても、吸収できるのは、利用可能な光子の約46%に過ぎない。 また、非特許文献1および2の材料は、エネルギー変換効率は高いものの、近赤外領域の光線に対する吸収率が低い。 このように、従来の電子ドナーを用いた有機薄膜太陽電池の多くは、利用波長が可視光域に限られ、近赤外光を有効利用できない。 非特許文献3および特許文献1〜2の化合物は、ある程度長波長側に吸収を有するものの、700nmを超えるような長波長の光の吸収率はそれほど高くない。また、これらの化合物は、HOMOのエネルギー準位がそれほど低くないため、エネルギー変換効率を高めることが困難である。 また、機能性色素の分野でも、より長波長側の光線を吸収できれば、幅広い波長領域を有する太陽光やより低エネルギーの光線を有効利用できるため、有用であると考えられる。 本発明の目的は、近赤外領域の光線を有効に吸収可能で、かつ、HOMOのエネルギー準位が低いスクアリリウム化合物、それを含む薄膜および有機薄膜太陽電池を提供することである。 本発明の一局面は、下記式(A):(式(A)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R5、または−N(−R6)−R7を示し、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。環Xおよび環Yは、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子およびイオウ原子からなる群より選択された少なくとも一種を有する5〜6員複素環とベンゼン環との縮合環を示し、nは、1〜100の整数を示す。)で表される骨格を有するスクアリリウム化合物に関する。 本発明の他の一局面は、上記スクアリリウム化合物を含む薄膜に関する。 本発明のさらに他の一局面は、電子ドナーおよび電子アクセプターを含む光電変換層(または光活性層)を有し、電子ドナーが、上記スクアリリウム化合物を含み、電子アクセプターがフラーレン化合物を含む、有機薄膜太陽電池に関する。 本発明によれば、近赤外領域に及ぶ広い波長領域の光線を吸収可能で、かつ、HOMOのエネルギー準位が低いスクアリリウム化合物、それを含む薄膜および有機薄膜太陽電池を提供できる。図1は、本発明の有機薄膜太陽電池の一実施形態を示す模式図である。図2は、実施例1および比較例1で得られたスクアリリウム化合物のクロロホルム溶液の紫外可視吸収スペクトルである。図3は、実施例1および比較例1で得られたスクアリリウム化合物の薄膜の紫外可視吸収スペクトルである。図4は、実施例1および比較例1で得られたスクアリリウム化合物、P3HTおよびPC61BMのエネルギーダイアグラムである。図5は、実施例1および比較例2のスクアリリウム化合物の合成に用いたスクアリリウム色素のクロロホルム溶液の紫外可視吸収スペクトルである。(スクアリリウム化合物) 本発明のスクアリリウム化合物は、下記式(A)で表される骨格を有する。(式(A)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R5、または−N(−R6)−R7を示し、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。環Xおよび環Yは、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子およびイオウ原子からなる群より選択された少なくとも一種を有する5〜6員複素環とベンゼン環との縮合環を示し、nは、1〜100の整数を示す。) 骨格(A)は、上記のように、ベンゾジチオフェン(BD)骨格と、スクアリリウム色素(SQD)骨格とを有する。そして、SQD骨格は、スクアリリウム(SQ)骨格と、SQ骨格に結合した、複素環を含む縮合環XおよびYとを有する。通常のSQ骨格は、スクアリン酸に由来して、シクロブテン環に置換したオキソ基(=O)を有するが、本発明では、このオキソ基に代えて、SQ骨格は、ジシアノメチレン基(=C(−CN)2)を有する。 SQD骨格は、シャープで強い吸収を近赤外領域に有し、BD骨格は、光増感作用を有するため、本発明のスクアリリウム化合物は、モル吸光係数が非常に高い。また、スクアリリウム化合物は、BD骨格、SQD骨格の縮合環XおよびY、ならびにSQ骨格において、大きな平面の共役構造を有するので、π電子系が広がると考えられる。そのため、吸収スペクトルにおける極大波長λmaxおよび吸収スペクトルの立ち上がりを示す波長λonsetが、長波長側にシフトする。従って、従来のものよりも、近赤外領域の光線に対する吸収能および捕集能が極めて高い。これにより、太陽光の有効吸収率を高めることができ、光電変換素子などとして用いた場合に、トータルの光電変換効率を高めることができる。 本発明のスクアリリウム化合物では、SQ骨格が、ジシアノメチレン基を有することにより、従来のオキソ基を有する化合物と比較しても、λmaxおよびλonsetの長波長シフトの程度が極めて大きい。 また、従来のオキソ基を有する化合物の吸収スペクトルにおけるλmaxおよびλonsetは、溶液の形態で測定した場合と、薄膜の形態で測定した場合とで、それほど大きな違いは見られない。ところが、本発明のスクアリリウム化合物では、吸収スペクトルを薄膜の形態で測定した場合に、溶液の形態で測定した場合よりも、λmaxおよびλonsetがさらに大きく長波長シフトする。これは、SQ骨格のジシアノメチレン基が、スクアリリウム化合物の分子の配向や結晶性に影響を及ぼすためと考えられる。 そのため、本発明のスクアリリウム化合物は、これを含む薄膜として用いると、近赤外領域の光線に対する高い吸収能を有効に活用できる。 本発明のスクアリリウム化合物は、これを含む薄膜の形態で測定した紫外可視吸収スペクトルにおいて、λmaxが、例えば、750nm以上、好ましくは760nm以上、さらに好ましくは770nm以上である。また、スクアリリウム化合物を含む薄膜の紫外可視吸収スペクトルにおいて、λonsetは、例えば、800nmを超え、好ましくは810nm以上、さらに好ましくは820nm以上となる場合もある。このように、本発明のスクアリリウム化合物は、800nmを超えるような波長の光線でも、有効に吸収することが可能である。 また、本発明のスクアリリウム化合物では、SQ骨格が、ジシアノメチレン基を有することにより、オキソ基を有する場合と比べて、HOMOのエネルギー準位を低下させることができる。HOMOのエネルギー準位が下がると、スクアリリウム化合物を、太陽電池の光電変換層において電子ドナーとして使用した場合に、Vocを高めることができる。Vocが高くなると、太陽電池のエネルギー変換効率ηを高めることができる。 式(A)において、環Xおよび環Yで表される縮合環は、5〜6員の複素環と、この複素環に縮合したベンゼン環とを有する。SQ骨格は、複素環およびベンゼン環のいずれと結合していてもよいが、複素環と結合しているのが好ましい。つまり、式(A)において、SQ骨格が結合している縮合環XおよびYの炭素原子は、複素環を構成する炭素原子である。 縮合環XおよびYが有する複素環は、窒素原子、酸素原子およびイオウ原子からなる群より選択された少なくとも一種のヘテロ原子を有する5〜6員の複素環である。このような複素環としては、例えば、ピロール、ピロリン、イミダゾール、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピリジン、ピラジンなどの窒素含有複素環;ジヒドロフラン、フラン、ジヒドロピランなどの酸素含有複素環;ジヒドロチオフェン、チオフェン、ジヒドロチアピランなどのイオウ含有複素環;オキサゾリン、オキサゾール、チアゾリン、チアゾール、チアジン、オキサチアジンなどの複数種のヘテロ原子を有する複素環などが挙げられる。複素環を構成するヘテロ原子の個数は、例えば、1〜3、好ましくは1または2である。 複素環としては、ヘテロ原子として、少なくとも窒素原子を有するものが好ましく、上記窒素含有複素環がさらに好ましい。窒素含有複素環のうち、特に、1つの窒素原子を有するものが好ましい。縮合環Xと縮合環Yとは、後述するように、SQ骨格を介して共鳴構造を取り得るので、縮合環Yが有する複素環は、炭素−窒素二重結合を、環内に有するのが好ましい。 式(A)において、縮合環Xに対応する三価基のうち、好ましいものは、例えば、下記式(X1)で表すことができる。(式(X1)中、環Z1は、5または6員の窒素含有複素環を示し、R8は、炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R9およびR10は、置換基であり、それぞれ独立に、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R11、または−N(−R12)−R13を示し、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R13は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。p1は、0〜4の整数を示し、q1は、0〜3の整数を示す。) 式(X1)において、環Z1は、縮合環Xが有する複素環に対応するので、環Z1で表される5または6員の窒素含有複素環は、上記例示の窒素含有複素環である。 式(X1)で表される三価基のうち、特に、下記式(X2)または(X3)で表される三価基が好ましい。(式(X2)または(X3)中、R9a〜R9dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R11、または−N(−R12)−R13を示す。R8、R10〜R13およびq1は前記に同じ。) また、式(A)において、縮合環Yに対応する二価基のうち、好ましいものは、例えば、下記式(Y1)で表すことができる。(式(Y1)中、環Z2は、5または6員の窒素含有複素環を示し、R14は、炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R15およびR16は、置換基であり、それぞれ独立に、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R17、または−N(−R18)−R19を示し、R17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R19は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。p2は、0〜4の整数を示し、q2は、0〜3の整数を示す。) 式(Y1)において、環Z2は、縮合環Yが有する複素環に対応するので、環Z2で表される5または6員の窒素含有複素環は、上記例示の窒素含有複素環である。ただし、環Z2は、炭素−窒素二重結合を環内に有するので、上記例示の窒素含有複素環のうち、ピロール、ジヒドロピリジン、またはピリジン環である。 式(Y1)で表される二価基のうち、特に、下記式(Y2)または(Y3)で表される二価基が好ましい。(式(Y2)または(Y3)中、R15a〜R15dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R17、または−N(−R18)−R19を示す。R14、R16〜R19およびq2は前記に同じ。) SQD骨格において、環Xと、環Yとは、SQ骨格を介して、式(A)および下記式(A−1)間の共鳴構造として表されるような、構造であることが好ましく、式(A−1)で表される化合物も、本発明のスクアリリウム化合物に包含される。なお、スクアリリウム化合物全体では、ベンゾチオフェン骨格を含めて、広い範囲での共鳴構造式間の極限構造として表すことができる。(式中、R1〜R4、X、Yおよびnは前記に同じ。) 前記式(A)、(X1)〜(X3)および(Y1)〜(Y3)において、R1〜R19、R9a〜R9d、およびR15a〜R15dで表される炭素数1〜16の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル基などの炭素数1〜16のアルキル基;ビニル、アリル基などの炭素数2〜16のアルケニル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基などの炭素数3〜16のシクロアルキル基;フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜16のアリール基;ベンジル、フェネチル基などの炭素数7〜16のアラルキル基などが例示できる。アルキル基およびアルケニル基は、それぞれ、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。 アルケニル基は、好ましくはC2-8アルケニル基、さらに好ましくはC2-6アルケニル基である。シクロアルキル基は、好ましくはC5-16シクロアルキル基、さらに好ましくはC5-8シクロアルキル基である。アリール基は、好ましくはC6-14アリール基、さらに好ましくはC6-10アリール基である。アラルキル基は、好ましくはC6-14アリール−C1-4アルキル基、さらに好ましくはC6-10アリール−C1-2アルキル基である。 上記の炭化水素基のうち、特にアルキル基が好ましい。 R1およびR2で表される炭化水素基としては、炭素数4〜14のアルキル基が好ましく、炭素数8〜14のアルキル基がさらに好ましい。 有機溶媒に対するスクアリリウム化合物の溶解性を高める観点から、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭化水素基であるのが好ましい。R1とR2は、同じ炭化水素基であってもよい。 R3およびR4で表される炭化水素基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であるのが好ましく、特に、いずれも水素原子であるのが好ましい。 R5〜R7、R11〜R13およびR17〜R19で表される炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がさらに好ましい。 R8およびR14で表される炭化水素基としては、炭素数4〜16のアルキル基が好ましく、炭素数8〜14のアルキル基がさらに好ましい。 R9およびR15は、それぞれ独立に、炭化水素基であるのが好ましい。R9およびR15で表される炭化水素基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。 複素環Z1が有する置換基R9の個数p1は、複素環Z1の員数に応じて適宜決定でき、好ましくは0〜3、さらに好ましくは1または2である。複素環Z2が有する置換基R15の個数p2は、複素環Z2の員数および環を構成する二重結合の個数に応じて適宜決定でき、好ましくは0〜2、さらに好ましくは1または2である。 なお、p1が2以上の場合、複素環Z1が有する複数のR9は、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、p2が2以上の場合、複素環Z2が有する複数のR15は、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。 R9a〜R9dおよびR15a〜R15dは、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であるのが好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基(特に、メチル基またはエチル基)であるのがさらに好ましい。 R9a、R9b、R15aおよびR15bは、好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基であり、R9c、R9d、R15cおよびR15dは、好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。 縮合環のベンゼン環が有する置換基R10およびR16の個数q1およびq2は、それぞれ、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0または1である。 q1が2以上の場合、ベンゼン環が有する複数のR10は、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、q2が2以上の場合、ベンゼン環が有する複数のR16は、それぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。 R10およびR16は、それぞれ独立に、炭化水素基であるのが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基(特に、メチル基またはエチル基)であるのがさらに好ましい。 本発明のスクアリリウム化合物において、BD骨格およびSQD骨格からなる骨格の繰り返し数nは、好ましくは5〜100、さらに好ましくは8〜50または10〜20の整数である。また、繰り返し数nが、例えば、1〜10の整数であるスクアリリウム化合物は、より鎖長の長い本発明のスクアリリウム化合物の原料や中間体として利用することもできる。また、このような繰り返し数を有するスクアリリウム化合物は、溶媒に対する溶解性も高いため、溶媒に溶解して、薄膜を形成するのにも適している。そのため、フラーレン化合物などの電子アクセプターとともに、有機薄膜太陽電池の光電変換層を形成するのに有用である。 一般に、分子鎖長が長くなると、分子の構造が三次元的になったり、さらに絡まりあったりして、分子を配向させにくくなり、結晶性を高めることが難しくなる。しかし、本発明のスクアリリウム化合物では、分子全体に亘ってπ共役系が安定に広がることにより、分子鎖長が長くなっても、分子を配向させ易く、結晶性を高めることができる。このような効果は、特に、スクアリリウム化合物を含む薄膜において顕著に得ることができる。そのため、本発明では、繰り返し数nが、例えば、11〜100の整数であるスクアリリウム化合物(ポリマー)であっても、高い導電性を確保することができる。この場合、繰り返し数nは、好ましくは11〜50、さらに好ましくは12〜25である。 スクアリリウム化合物は、式(A)で表される骨格を有する限り、末端の構造は特に制限されない。本発明のスクアリリウム化合物は、例えば、下記式(A1)または(A2)で表される化合物であってもよい。(式中、Q1は、水素原子、ハロゲン原子、または下記式(Q1)で表されるSQD残基であり、Q2は、水素原子、ハロゲン原子、または下記式(Q2)で表されるBD残基であり、Arは、アリール基を示し、R20は、アリール基の置換基であり、−O−R20aまたは−N(−R20b)−R20cを示し、R20aおよびR20bは炭素数1〜16の炭化水素基であり、R20cは、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。R1〜R4、X、Yおよびnは前記に同じ。)(式中、Q3およびQ4は、それぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子であり、R1〜R4、XおよびYは前記に同じ。) 式(A1)において、Q3およびQ4で表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素原子などが例示できる。これらのハロゲン原子のうち、ヨウ素原子が好ましい。 Q1およびQ2がいずれも、水素原子またはハロゲン原子である化合物;Q1が水素原子であり、Q2がハロゲン原子である化合物;Q1がSQD残基であり、Q2が水素原子またはハロゲン原子である化合物;もしくはQ1が水素原子であり、Q2がBD残基(特に、Q4が水素原子)である化合物などが好ましい。Q1がSQD残基であり、Q2が水素原子またはハロゲン原子である化合物のうち、Q2およびQ3の双方が水素原子である化合物、Q2およびQ3の双方がハロゲン原子である化合物などが好ましい。 Arで表されるアリール基としては、フェニル、ナフチル基などのC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基が例示できる。 R20a〜R20cで表される炭化水素基としては、R5〜R7で表される炭化水素基と同様のものが例示できる。 置換基R20の個数mは、好ましくは0〜3、さらに好ましくは1または2である。 本発明のスクアリリウム化合物は、吸光度も高く、可視から近赤外領域の光線を有効に吸収できるバンド幅の低い化合物である。これにより、スクアリリウム化合物は、光励起により、効果的に電荷を生成させることができるので、優れた光電変換作用を有する。また、スクアリリウム化合物は、薄膜の状態にしたときに、近赤外領域の光線に対して特に高い吸収能を有する。そのため、本発明のスクアリリウム化合物は、上記のように、これを含む薄膜や有機薄膜太陽電池の光電交換層に用いる電子ドナーとして有用であるとともに、近赤外領域の光線を吸収可能な機能性色素としても利用できる。 スクアリリウム化合物を含む薄膜は、スクアリリウム化合物以外に、他の成分、他のポリマーや添加剤、電子アクセプターとしてのフラーレン化合物(後述のフラーレン化合物など)などを含んでもよい。 薄膜は、剥離性であってもよい基材シートの表面に、構成成分を含む溶液を、スピンキャストなどの方法により塗布することで形成できる。 溶液に使用する溶媒としては、トルエンなどの炭化水素、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素、これらの混合溶媒などが使用でき、ハロゲン含有炭化水素を用いるのが好ましい。塗布の方法は、特に制限されず、例えば、スピンコーティング、インクジェット印刷、ローラーキャスティングなどの方法が例示できる。 溶液の塗布により形成された薄膜は、分子を配向させて結晶性を高めるために、アニール処理してもよい。アニール処理は、熱アニール、溶媒蒸気アニールのいずれであってもよい。 熱アニールでは、例えば、50〜120℃の温度で、薄膜を加熱する。加熱時間は、例えば、10分〜6時間である。 溶媒蒸気アニールでは、溶媒蒸気の雰囲気下、溶液の塗布により形成された薄膜を加熱する。溶媒としては、スクアリリウム化合物を溶解可能で、ある程度の高さの沸点(例えば、60℃以上の沸点)を有する溶媒、例えば、クロロホルムなどのハロゲン化アルカン;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素などが例示できる。 溶媒蒸気アニールにおいて、加熱温度は、例えば、10〜50℃、好ましくは10〜30℃である。また、加熱時間は、例えば、15分〜24時間、好ましくは15分〜10時間である。 薄膜の厚みは、特に制限されず、例えば、10〜500nm、好ましくは50〜300nm、さらに好ましくは100〜200nmである。 スクアリリウム化合物を含む薄膜は、近赤外領域の光線に対して非常に高い吸収能を有しており、前記のようなλmaxおよびλonsetを有する。(スクアリリウム化合物の製造方法) 本発明のスクアリリウム化合物は、BD骨格に対応するベンゾチオフェン化合物と、SQD骨格に対応するスクアリリウム色素化合物とを、公知の反応を利用して、両骨格を連結させることにより得ることができる。 具体的には、例えば、BD骨格を有する有機スズ化合物(BD−Sn)と、SQD骨格を有する化合物(SQD−X)とを、Stilleカップリング反応させることにより、スクアリリウム化合物を得ることができる。 (Stilleカップリング工程) Stilleカップリング工程は、下記の反応工程式で表すことができる。(式中、R21はアルキル基を示し、X1はハロゲン原子またはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。R1〜R4、XおよびYは前記に同じ。) R21で表されるアルキル基としては、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基が例示できる。これらのうち、メチル基が好ましい。 X1で表されるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素原子などが例示できる。X1は、好ましくはヨウ素原子である。 このようにして得られるスクアリリウム化合物は、末端に、−Sn(R21)3基やX1を有していてもよいが、−Sn(R21)3基は、Stilleカップリング反応中に脱離する場合がある。この脱離により、−Sn(R21)3基は、水素原子や、ハロゲン原子などのX1などに置換される。 また、スクアリリウム化合物の末端の−Sn(R21)3基やX1は、公知の適当な方法により、脱離させてもよい。−Sn(R21)3基が脱離したスクアリリウム化合物は、例えば、前記式(A1)で表される。また、X1が脱離したスクアリリウム化合物は、例えば、前記式(A1)のQ2および/またはQ3が水素原子である化合物などとして表すことができる。なお、式(A1)のQ2およびQ3の他、Q1およびQ4で表されるハロゲン原子は、上記反応の反応系に含まれるX1のハロゲン原子に相当する。 また、上記反応において、SQD−Xとともに、スクアリリウム化合物の末端に相当するモル比で、SQD−Xが有する2つのX1のうち1つが、水素原子に置き換わった化合物を併用してもよい。このような化合物は、例えば、下記式で表すことができる。(式中、X、YおよびX1は前記に同じ。) また、上記反応において、SQD−Xとともに、スクアリリウム化合物の末端に相当するモル比で、下記式で表される化合物を併用してもよい。(式中、Ar、R20、Y、X1およびmは、前記に同じ。) さらに、上記の反応において、BD−Snとともに、BD−Snの2つの−Sn(R21)3基のうちの1つが、水素原子に置き換わった化合物を併用してもよい。 Stilleカップリング工程は、パラジウム触媒の存在下で行うことができる。パラジウム触媒としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムなどのPd(0)錯体などが例示できる。パラジウム触媒には、必要により、ハロゲン化第一銅などのCu(I)触媒を併用してもよい。ハロゲン化第一銅としては、CuCl、CuBr、CuIなどが例示できる。 Stilleカップリング反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ベンゼン、トルエンなどの非プロトン性溶媒中で行うことができる。非プロトン性溶媒は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。 反応温度は、溶媒の沸点やBD−SnおよびSQD−Xの種類などに応じて、例えば、40〜150℃程度の範囲から適宜選択できる。反応は一段階で行ってもよく、異なる温度にて多段階で行ってもよい。 反応時間は、反応原料の種類や、式(A)で表される骨格における繰り返し数nに応じて、例えば、10〜200時間程度の範囲から選択できる。 原料となるBD−SnおよびSQD−Xは、それぞれ、市販のものを用いてもよく、公知の反応を利用して、合成したものを用いてもよい。 (BD−Snの合成) BD−Snは、例えば、下記式に従って、BD骨格に対応するベンゾジチオフェンと、(R21)3SnClとを反応させることにより得ることができる。(式中、R1〜R4およびR21は前記に同じ。) 上記反応は、例えば、n−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物の存在下、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒(極性非プロトン性溶媒など)中で、行うことができる。 (SQD−Xの合成) SQD−Xは、例えば、SQ骨格に対応するスクアリン酸化合物と、環Xに対応するハロゲン化物および環Yに対応するハロゲン化物とを反応させることにより、得ることができる。 環Xが、SQ骨格に結合する炭素原子と、この炭素原子に隣接する窒素原子とを有し、これらの炭素原子と窒素原子とが二重結合を形成した場合の環構造が、環Yと同じである場合、SQD−Xは、例えば、下記式に従って、SQ骨格に対応するスクアリン酸化合物(アニオン)と、環Yに対応するハロゲン化物やトリフルオロメタンスルホニル化合物とを反応させることにより得ることができる。このような反応は、環Xに対応する三価基が式(X2)であり、環Yに対応する二価基が式(Y2)である化合物、環Xに対応する三価基が式(X3)であり、環Yに対応する三価基が式(Y3)である化合物などの合成に有用である。(式中、R22は、水素原子またはアルキル基を示し、X、YおよびX1は前記に同じ。) R22で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基などのC1-6アルキル基が例示できる。 上記反応は、例えば、触媒としてのキノリンの存在下、溶媒中で加熱することにより行うことができる。溶媒としては、例えば、n−ブタノールなどのアルコール、ベンゼンなどの炭化水素、ピリジンなどの複素環化合物、これらの混合溶媒などが使用できる。 上記反応に使用されるスクアリン酸化合物、環Xに対応するハロゲン化物および環Yに対応するハロゲン化物は、それぞれ、市販のものを使用してもよく、公知の反応を利用して合成してもよい。 (スクアリン酸化合物の合成) 上記スクアリン酸化合物(アニオン)は、例えば、スクアリン酸またはそのアルキルエステルと、ジシアノメタンとを反応させることにより得ることができる。 この反応は、トリエチルアミンなどの有機アミン(第3級アミンなど)の存在下で行うことができる。そのため、スクアリン酸は、アルキルエステルに変換して、ジシアノメタンとの反応に供するのが好ましい。 スクアリン酸のアルキルエステルは、上記R22のアルキル基に対応するアルキルエステルである。スクアリン酸のアルキルエステルは、スクアリン酸と、上記アルキル基に対応するアルキルアルコールとを反応させることにより得られる。(有機薄膜太陽電池) 有機薄膜太陽電池は、電子ドナーおよび電子アクセプターを含む光電変換層を有する。本発明では、電子ドナーが、上記の本発明のスクアリリウム化合物を含み、電子アクセプターがフラーレン化合物を含む。 図1は、有機薄膜太陽電池の一実施形態を示す模式図である。有機薄膜太陽電池は、太陽光が照射される側から順に、ガラス基板層1、カソードとしての透明電極層2、ホール移動層3、光電変換層4、電子移動層5およびアノード層6を含む。 光電変換層では、電子ドナーが太陽光を吸収し、吸収した光エネルギーにより、電子ドナーの電子がHOMOからLUMOに励起されて、ドナー励起子が発生する。ドナー励起子の励起電子は、光電変換層内で拡散して、電子アクセプターのLUMOへ電荷移動し、アクセプターラジカルアニオン電荷キャリアおよびドナーラジカルカチオン電荷キャリアを発生することにより、電荷分離状態が得られる。 電子ドナーとしてのスクアリリウム化合物は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。 電子アクセプターとしては、有機薄膜太陽電池の電子アクセプターとして公知の材料、例えば、PC61BM、[6,6]−フェニル−C71−酢酸メチルエステル(PC71BM)などのフラーレン化合物(フェニル基と、メトキシカルボニルプロピル基とを有するフラーレン化合物など)が使用できる。電子アクセプターは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。PC71BMを用いると、PC61BMを用いた場合に比べて、エネルギー変換効率を高めることができる。 バルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池では、光電変換層は、電子ドナーと電子アクセプターの混合物で形成される。 二層型の有機薄膜太陽電池では、光電変換層は、電子ドナーを含む層と、電子アクセプターを含む層とを少なくとも有する。光電変換層は、p−n接合であってもよく、電子ドナーを含む層と、電子アクセプターを含む層との間に、電子ドナーおよび電子アクセプターの混合物の層が形成されたp−i−n接合であってもよい。 光電変換層、電子ドナーを含む層は、それぞれ、さらに、他の光電変換作用を有する導電材料、色素、公知の添加剤などを含んでもよい。電子アクセプターを含む層も、公知の添加剤を含んでもよい。 バルクヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池において、光電変換層は、フラーレン化合物1質量部に対して、スクアリリウム化合物を、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部含む。 光電変換層は、公知の方法により、ホール移動層の片面(透明電極層側とは反対の表面)に形成できる。光電交換層、電子ドナーを含む層、電子アクセプターを含む層などの光電交換層を形成する各層は、構成成分を含む溶液を、スピンキャストなどの方法により塗布することで形成できる。 光電変換層やこれを構成する各層を、溶液の塗布により形成する場合、溶媒としては、前記薄膜の項で例示の溶媒などが使用できる。また、塗布の方法も、前記薄膜と同様の方法が採用できる。 溶液の塗布により形成された層は、分子を配向させて結晶性を高めるために、好ましくは、アニール処理される。アニール処理は、熱アニール、溶媒蒸気アニールのいずれであってもよい。熱アニールや溶媒蒸気アニールの方法や条件は、薄膜のアニールの方法や条件と同様のものが採用できる。溶媒蒸気アニールでは、溶媒として、スクアリリウム化合物およびフラーレン化合物の双方に対して相溶性の高い溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、前記薄膜の溶媒蒸気アニールの項で例示の溶媒が挙げられる。 P3HTとPC61BMを含む従来の光電変換層では、熱アニール処理を行うのが結晶性の向上に有効であることが知られているが、本発明では、溶媒蒸気アニールを行うのが、結晶性を向上させる点からは有利である。 溶媒蒸気アニールを、10〜60分程度行うと、まず、フラーレン化合物が結晶化し、さらに続けて溶媒蒸気アニールを行うことにより、層全体の結晶化が起こる。これにより、光電変換層において、貫通ネットワーク構造が形成され、カソードおよびアノードに各電荷を運ぶ連続的な通路が形成される。 光電変換層の厚みは、例えば、10〜500nm、好ましくは50〜300nm、さらに好ましくは100〜200nmである。 カソードとしての透明電極層2は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)などを含む。これらのうち、ITOが好ましい。 透明電極層の厚みは、例えば、1〜1000nmである。透明電極層は、公知の方法、例えば、真空蒸着やイオンスパッタリングなどにより形成できる。 ホール移動層3は、ホール輸送性を有し、かつHOMOのエネルギー準位が、真空準位から比較して透明電極層よりも、低いレベルにある物質を含む。このような物質の具体例としては、ポリエチレンジオキシオルトチオフェン・ポリスチレンスルホン酸会合体(PEDOT・PSS)などが挙げられる。 ホール移動層の厚みは、例えば、10〜300nmである。ホール移動層は、公知の方法、例えば、上記の物質を含む分散液や溶液を、透明電極層の表面にスピンコーティングなどにより塗布することにより形成できる。 電子移動層5は、例えば、フッ化リチウム、カルシウム、リチウム、マグネシウムなどの仕事関数が小さな材料を含む。これらのうち、フッ化リチウムが好ましい。 電子移動層の厚みは、例えば、0.1〜5nm、好ましくは0.1〜0.3nmである。 アノード層6は、アルミニウムやインジウムなどの仕事関数が小さな材料で形成できる。 アノード層の厚みは、例えば、1〜300nm、好ましくは10〜300nmである。 電子移動層やアノード層は、公知の方法、例えば、真空蒸着やイオンスパッタリングなどにより形成できる。 以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 実施例1 下記の反応工程式に従って、下記の手順で、下記式(5)で表される骨格を有するスクアリリウム化合物を合成した。(a)式(1)で表されるスクアリリウムエステルの合成 K. Y. Law, F. C. Bailey, Can. J. Chem. 1986, 64, 2267-2273、およびR. I. Zubatyuk, V. N. Baumer, A. L. Tatarets, L. D. Patsenker, O. V. Shishkin, Acta. Cryst. 2004, E60, o2252-o2254に記載の方法に従って、式(1)で表される2−ブトキシ−3−(ジシアノメチレン)−4−オキソシクロブテ−1−エノラートを合成した。(b)式(3)で表されるスクアリリウム色素(SQ2−I)の合成 1−ブタノール30mlおよびピリジン30mlの混合液に、上記(a)で得られた式(1)のトリエチルアンモニウム 2−ブトキシ−3−(ジシアノメチレン)−4−オキソシクロブテ−1−エノラート(1.929g,6.04mmol)と、式(2)で表される1−ドデシル−5−ヨード−2,3,3−トリメチル−3H−インドール−1−イウムヨーダイド(7.507g,12.91mmol)と、触媒量のキノリンを添加し、混合物を、攪拌下、80℃で、2時間加熱して反応させ、室温まで冷却した。 得られた反応混合物から、減圧下で溶媒を留去し、残渣を得た。得られた残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルC−300,展開溶媒:塩化メチレン/ヘキサン=4/1(v/v))で分離し、目的物である式(3)のスクアリリウム色素のヨウ素体(SQ2−I)3.153g(収率51%)を単離した。 得られた式(3)のスクアリリウム色素(SQ2−I)の分析結果は以下の通りである。 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.87 (t, 6H, J = 6.7 Hz), 1.20-1.42(m, 36H), 1.71- 1.80(m, 16H), 3.97 (t, 4H, 7.5 Hz), 6.52 (s, 2H), 6.81 (d, 2H, J = 8.3 Hz), 7.62-7.66 (m, 4H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.95, 171.09, 168.00, 167.15, 144.75, 141.91, 137.03, 131.48, 118.81, 112.00, 89.71, 87.91, 49.42, 44.60, 41.31, 31.90, 29.60, 29.52, 29.39, 29.35, 29.33, 27.26, 26.66, 26.61, 22.69, 14.13. IR (KBr, cm-1): 2924, 2854, 2195, 1491, 1474, 1450, 1346, 1288, 1186, 1117, 978. TOF-MS (m/z) 1032 ([M]+). 質量分析: 計算値(C53H70I2N4O): C, 61.63; H, 6.83; N, 5.42. 検出値:C, 61.84; H, 6.94; N, 5.09. 分解点Td:247℃(c)式(5)で表される骨格を有するスクアリリウム化合物の合成 上記(b)で得られたSQ2−I(979mg,9.48×10-4mol)、式(4)で表されるスズ化ベンゾジチオフェン誘導体(736mg,9.51×10-4mol)、触媒としてのPd(PPh3)4(46.3mg,4.01×10-5mol)およびヨウ化第一銅CuI(8.01mg,4.21×10-5mol)を、シュレンク管に入れ、窒素雰囲気下で、脱水トルエン/脱水DMF混合液(4/1(v/v))16.8mlを加えて、50℃で120時間攪拌することにより反応を行った。なお、脱水トルエン/脱水DMF混合液は、凍結脱気を3回行ったものを用いた。 得られた反応混合物を室温まで冷却して、溶媒を留去し、クロロホルムおよびメタノールを用いて、再沈殿させた。沈殿物を溶媒に溶解させて、カラムクロマトグラフィー(シリカゲルC−300、展開溶媒:クロロホルム)により、Pd触媒を除去し、再度沈殿処理を行って、目的物の式(5)で表される骨格を有するスクアリリウム化合物(poly−SQ2)を、807mg(収率68%)得た。得られたスクアリリウム化合物を、さらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業製,JAIGEL−2H,排除限界分子量5000,展開溶媒:クロロホルム)を用いて精製し、高分子量体を分取した。 得られたpoly−SQ2の高分子量体の分析結果は以下の通りである。 1H NMR [CDCl3, 400 MHz]: δ 0.86-0.92 (m, 12H), 1.19-1.69 (m, 58H), 1.75-2.02 (m, 16H), 4.07 (s, 4H), 4.36 (s, 4H), 6.60 (s, 2H), 6.96-7.21 (m, 2H), 7.31-7.87 (m, 8H). 13C NMR [CDCl3, 100 MHz]: δ 173.44, 171.56, 168.22, 167.06, 144.53, 144.44, 143.71, 143.35, 142.61, 133.28, 131.33, 131.14, 129.94, 126.98, 120.54, 120.32, 119.23, 115.94, 110.85, 90.38, 74.40, 74.35, 49.78, 49.73, 45.01, 44.81, 41.41, 32.26, 30.94, 29.96, 29.91, 29.78, 29.69, 27.77, 27.14, 27.08, 26.49, 23.04, 14.51, 14.47. IR (KBr, cm-1): 3472, 3383, 2924, 2854, 2195, 1474, 1450, 1346, 1288, 1217, 1186, 1148, 1117, 978. 質量分析: 計算値(C79H106N4O3S2): C, 77.53; H,8.73; N, 4.58. 検出値: C, 77.79; H, 8.55; N, 4.27. 分解点Td: 289℃ 分子量[GPC (THF at 40℃)]: Mn = 12100, Mw = 14100, Mp = 11600, Mw/Mn = 1.17. なお、分解点は、化合物の重量減少量を、示差熱熱重量同時測定装置(RIGAKU TG-DTA TG8120)を用いて測定し、化合物の重量が3%減少した温度を分解点とした。 分子量(ポリスチレン換算分子量)は、安定剤を含むTHFを展開溶媒として用い、40℃で、GPC(東ソー製,TSKgel MultiporeHXL-M)により測定した。 比較例1 実施例1に準じて、下記式(6)で表される骨格を有するスクアリリウム化合物(poly−SQ1)を合成した。 比較例1では、実施例1の反応工程式における式(1)のスクアリリウムエステルに代えて、スクアリン酸を用い、溶媒として、1−ブタノールおよびベンゼンの混合液を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行った。なお、各工程の反応時間は、反応の進行の程度に応じて、適宜調整した。 得られたpoly−SQ1について、GPC(THF,40℃)で測定した分子量は、Mn=7000、Mw=11000、Mp=12600、Mw/Mn=1.57であった。 (紫外可視吸収スペクトルの測定) 実施例1および比較例1で得られた各スクアリリウム化合物について、クロロホルム中、および薄膜中で、紫外可視吸収スペクトルを測定した。 具体的には、各スクアリリウム化合物を、5.0×106mol/lの濃度で含むクロロホルム溶液を調製し、この溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定した。 また、薄膜中での紫外可視吸収スペクトルは、各スクアリリウム化合物を、10mg/mlの濃度で含むクロロホルム溶液を調製し、この溶液を、石英ガラス表面にスパンコートすることにより薄膜を作製し、この薄膜について測定した。 測定した吸収スペクトルを、図2(クロロホルム中)および図3(薄膜中)に示す。また、各スクアリリウム化合物のλmax、λonset、モル吸光係数ε(M-1cm-1)を表1に示す。また、光学バンド幅Egoptを、λonsetから下記式により求めた値も合わせて表1に示す。 Egopt=1240/λonset (エネルギーバンド幅およびエネルギー準位の評価) 実施例および比較例で得られた各スクアリリウム化合物を0.1unit mmol/lの濃度で含む塩化メチレン溶液のサイクリックボルタンメトリー(CV)を測定し、酸化側の電位E1/2を求めた。CV測定は、参照電極に0.1mol/lの硝酸銀水溶液を用い、電解質に0.1mol/lの過塩素酸テトラブチルアンモニウムを用いて、スキャン速度100mV/sで行った。なお、CVでは、poly−SQ1およびpoly−SQ2ともに、二段階の可逆的酸化によりピークが観察された。 E1/2を、フェロセンを外部標準物質として、標準水素電極を基準とした電位EOX,1/2に換算した。 このEOX,1/2から、スクアリリウム化合物のHOMOのエネルギー準位EHOMOを、下記式により算出した。下記式に示されるように、EHOMOは、EOX,1/2から、真空中でのフェロセンのエネルギー準位(4.80eV)、および上記と同じCVの測定条件で得られたフェロセンのEOX,1/2=0.16Vから補正することにより算出される。 EHOMO=−((EOX,1/2−1.60)+4.80) また、スクアリリウム化合物のLUMOのエネルギー準位ELUMOを、下記式より算出した。 ELUMO=EHOMO+Egopt EOX、EHOMOおよびELUMOの値を表1に示すとともに、poly−SQ1およびpoly−SQ2のエネルギーダイアグラムを図4に示す。図4には、P3HTおよびPC61BMのエネルギーダイアグラムも合わせて示した。 なお、表1には、SQ2−I、および式(3)において、ジシアノメチレン基が、オキソ基に置き換わった化合物であるSQ1−Iについて、poly−SQ2と同様にしてクロロホルム中で測定した紫外可視吸収スペクトルのデータ、およびエネルギー準位のデータも合わせて示す。SQ1−Iは、比較例1において、実施例1のSQ2−Iに代えて用いた化合物である。 また、SQ2−Iおよびpoly−SQ2の紫外可視吸収スペクトルを、図5に示す。 表1および図5から明らかなように、SQ2−Iは、701nmにλmaxを有するシャープな吸収を示したのに対し、ポリマーであるpoly−SQ2のλmaxは、SQ2−Iよりも約50nm長波長側にシフトし、750nmであった。λmaxが長波長側にシフトしたのは、SQ2−Iよりも、poly−SQ2ではπ電子共役系が拡張したためと考えられる。また、poly−SQ2の吸収は、SQ2−Iよりもややブロードになった。 表1、図2および図3から明らかなように、スクアリリウム化合物におけるスクアリリウム骨格のオキソ基(poly−SQ1)が、ジシアノメチレン基(poly−SQ2)に変わることにより、スクアリリウム化合物の吸収スペクトルは大きく長波長シフトした。具体的には、poly−SQ2は、poly−SQ1に比べて、クロロホルム中で、約40nm、薄膜中で、約70nm、λmaxがそれぞれ長波長側にシフトした。 poly−SQ1の場合、クロロホルム中と薄膜中とでは、λmaxにそれほど大きな違いは見られない。これに対し、poly−SQ2の場合には、クロロホルム中に比べて、薄膜中でのλmaxは、約30nmも長波長側にシフトした。また、図3に示されるように、λonsetも、薄膜中では大きく長波長側にシフトし、800nmを超えている。このような結果から明らかなように、poly−SQ2を用いると、poly−SQ1よりもさらに長波長領域の光線を有効に吸収できる。 表1から明らかなように、poly−SQ2は、poly−SQ1に比べて、バンド幅が0.09eV低下し、LUMOの準位ELUMOも、0.08eV低くなった。そのため、PC61BMのEHOMOとの差を大きくできるので、エネルギー変換効率ηを高めることができると考えられる。 図4に示されるように、poly−SQ2は、P3HTと比較して、バンド幅が小さく、EHOMOが低い。一方、poly−SQ2のELUMOは、P3HTとほぼ同等である。そのため、poly−SQ2では、P3HTと同様に、PC61BMへのスムーズな電子移動が期待できる。 実施例2および比較例2 実施例1および比較例1で得られたスクアリリウム化合物poly−SQ1およびpoly−SQ2のそれぞれを用いて、下記の手順で、図1に示す二層型有機薄膜太陽電池を作製した。 ガラス基板層1の片面に、透明電極層2としてのITO層が形成されたITO基板(ジオマテック製、〜5Ω/cm2)を、水、メタノール、アセトンを、この順番に用いて、各15分ずつ超音波洗浄し、さらに2−プロパノールで30分間超音波洗浄した。残存した溶媒を、エアロダスターで除去し、UV−オゾン処理を行った。処理後のITO基板の表面に、市販の導電性高分子PEDOT・PSS溶液を、スピンコート法により、回転速度5,000rpmで80秒かけて塗布し、130℃で1時間焼成することにより、厚み130±30nmのホール移動層3を形成した。 アルゴン雰囲気下で、ホール移動層3の表面に、スクアリリウム化合物とPC61BMとを、50:50の質量比で含むクロロホルム溶液(スクアリリウム化合物およびPC61BMの合計濃度10mg/ml)を、スピンコート法により、回転速度2,000rpmで、80秒かけて塗布し、光電変換層4を形成した。光電変換層4の厚みは、120±10nmであった。 光電変換層4の表面に、フッ化リチウムを、約1×10-4Paの減圧下で、蒸着することにより、電子移動層5を形成した。続けて、電子移動層5の表面に、さらに、アルミニウムを、約1×10-4Paの減圧下で、蒸着することによりアノード層6を形成した。亜電子移動層5とアノード層6の合計厚みは、約150nmであった。このようにして、バルクヘテロ型の有機薄膜太陽電池を得た。有機薄膜太陽電池の照射面積は、0.1cm2または0.04cm2とした。 実施例3 PC61BMに代えて、PC71BMを用いる以外は、実施例2と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製した。 実施例4 下記の手順に従って、光電交換層を形成する以外は、実施例2と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製した。 PC61BMに代えて、PC71BMを用いる以外は、実施例2と同様にして、スクアリリウム化合物およびPC71BMを含むクロロホルム溶液を調製した。得られたクロロホルム溶液を、スピンコート法により、回転速度2,000rpmで、80秒かけて、ホール移動層3の表面に塗布し、塗膜を形成した。塗膜を、溶媒蒸気アニール(クロロホルム蒸気雰囲気下、室温で30分放置)することにより、光電変換層4を形成した。 実施例2〜4および比較例2で得られた有機薄膜太陽電池のAM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光照射下での光電変換能を、分光感度測定装置(分光計器製、CEP−2000型)により評価した。また、これらの測定により得られたVocおよびηを、表2に示す。 表2から明らかなように、poly−SQ1を用いた比較例2の有機薄膜太陽電池では、Vocが低く、結果としてエネルギー変換効率ηが低くなった。これに比べて、poly−SQ2を用いた実施例の有機薄膜太陽電池では、いずれも、高いVocが得られ、高いエネルギー変換効率ηが得られた。電子アクセプターとして、PC71BMを用いた実施例3および4では、PC61BMを用いた実施例2よりも、さらに、Vocが向上し、ηが高くなった。 なお、実施例の有機薄膜太陽電池のIPCE曲線は、400〜1000nmの幅広い波長範囲の光線に対して、比較例よりも高い強度で、応答可能であることを示した。 本発明のスクアリリウム化合物は、近赤外領域に及ぶ広い波長領域の光線を吸収可能で、かつ、HOMOのエネルギー準位が低く、優れた光電変換作用を有する。そのため、本発明のスクアリリウム化合物は、有機薄膜太陽電池の光電交換層に用いる電子ドナーとして有用であるとともに、機能性色素としても利用できる。 1 ガラス基板層 2 透明電極層 3 ホール移動層 4 光電変換層 5 電子移動層 6 アノード層 下記式(A):(式(A)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R5、または−N(−R6)−R7を示し、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。環Xおよび環Yは、それぞれ独立に、窒素原子、酸素原子およびイオウ原子からなる群より選択された少なくとも一種を有する5〜6員複素環とベンゼン環との縮合環を示し、nは、1〜100の整数を示す。)で表される骨格を有するスクアリリウム化合物。 R1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数4〜14のアルキル基であり、R3およびR4が、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である、請求項1に記載のスクアリリウム化合物。 前記式(A)において、前記環Xに対応する三価基が、下記式:(式(X1)中、環Z1は、5または6員の窒素含有複素環を示し、R8は、炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R9およびR10は、置換基であり、それぞれ独立に、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R11、または−N(−R12)−R13を示し、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R13は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。p1は、0〜4の整数を示し、q1は、0〜3の整数を示す。)で表され、前記環Yに対応する二価基が、下記式(Y1):(式(Y1)中、環Z2は、5または6員の窒素含有複素環を示し、R14は、炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R15およびR16は、置換基であり、それぞれ独立に、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R17、または−N(−R18)−R19を示し、R17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜16の炭化水素基を示し、R19は、炭素数1〜16の炭化水素基を示す。p2は、0〜4の整数を示し、q2は、0〜3の整数を示す。)で表される、請求項1または2に記載のスクアリリウム化合物。 R8およびR14が、それぞれ独立に、炭素数4〜16のアルキル基であり、R9およびR15が、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、R10およびR16が、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基であり、p1は0〜2の整数であり、q1は0〜3の整数である、請求項3に記載のスクアリリウム化合物。 前記環Xに対応する三価基が、下記式(X2)または(X3):(式(X2)または(X3)中、R9a〜R9dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R11、または−N(−R12)−R13を示す。R8、R10〜R13およびq1は請求項3の記載に同じ。)で表され、 前記環Yに対応する二価基が、下記式(Y2)または(Y3):(式(Y2)または(Y3)中、R15a〜R15dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16の炭化水素基、−O−R17、または−N(−R18)−R19を示す。R14、R16〜R19およびq2は請求項3の記載に同じ。)で表される、請求項3に記載のスクアリリウム化合物。 nが11〜100の整数である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスクアリリウム化合物。 請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクアリリウム化合物を含む薄膜。 前記スクアリリウム化合物が、前記式(A)において、R1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜16の炭化水素基である化合物である、請求項7に記載の薄膜。 さらに、電子アクセプターとしてのフラーレン化合物を含む請求項7または8に記載の薄膜。 紫外可視吸収スペクトルの極大吸収波長λmaxが750nm以上である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の薄膜。 電子ドナーおよび電子アクセプターを含む光電変換層を有し、 前記電子ドナーが、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクアリリウム化合物を含み、 前記電子アクセプターがフラーレン化合物を含む、有機薄膜太陽電池。 前記スクアリリウム化合物が、前記式(A)において、R1およびR2が、それぞれ独立に、炭素数1〜16の炭化水素基であり、nが11〜100である化合物である、請求項11に記載の有機薄膜太陽電池。 【課題】近赤外領域の光線を有効に吸収可能で、かつ、HOMOのエネルギー準位が低いスクアリリウム化合物を提供する。【解決手段】スクアリリウム化合物は、下記式(A)で表される骨格を有する。【化1】(式(A)中、R1およびR2は、水素原子または炭化水素基を示し、R3およびR4は、水素原子、炭化水素基、−O−R5、または−N(−R6)−R7を示し、R5およびR6は、水素原子または炭化水素基を示し、R7は炭化水素基を示す。環Xおよび環Yは、5〜6員複素環とベンゼン環との縮合環を示し、nは、1〜100の整数を示す。)【選択図】なし