タイトル: | 公開特許公報(A)_アルキルチオールの製造方法 |
出願番号: | 2012067490 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07C 319/02,C07C 321/04,B01J 31/02,C07B 61/00 |
宮田 真良 神田 尚明 神吉 利彦 JP 2013199441 公開特許公報(A) 20131003 2012067490 20120323 アルキルチオールの製造方法 住友精化株式会社 000195661 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所 110000280 宮田 真良 神田 尚明 神吉 利彦 C07C 319/02 20060101AFI20130906BHJP C07C 321/04 20060101ALI20130906BHJP B01J 31/02 20060101ALI20130906BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130906BHJP JPC07C319/02C07C321/04B01J31/02 102ZC07B61/00 300 6 OL 10 4G169 4H006 4H039 4G169AA02 4G169BA21B 4G169BA49 4G169BB20B 4G169BD01B 4G169BD06B 4G169BD13B 4G169BE01B 4G169BE33B 4G169CB25 4G169CB70 4H006AA02 4H006AC63 4H006BA65 4H006BB31 4H006BB46 4H006TA04 4H039CA60 4H039CD20 本発明は、アルキルチオールの製造方法に関する。さらに詳しくは、医薬品、農薬、機能性高分子化合物などの原料として有用なアルキルチオールの製造方法に関する。 アルキルチオールは、医薬品、農薬、機能性高分子化合物などを合成する際の原料として用いられている。アルキルチオールの1つであるメタンチオールの製造方法として、硫化水素アルカリ金属塩水溶液とクロロメタンとを10〜175℃の温度で2MPa以下の圧力で反応させることによってメタンチオールを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 しかしながら、硫化水素アルカリ金属塩水溶液には、一般に不純物として硫化ナトリウムなどの硫化アルカリ金属塩が含まれているため、前記方法には、アルキルチオールの収率が著しく低くなるおそれがある。米国特許第2816145号明細書 本発明は、高収率でアルキルチオールを製造することができるアルキルチオールの製造方法を提供することを目的とする。 本発明は、(1)不純物として式(I): M3-nS (I)(式中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子、nはMの原子価を表わす数を示す)で表わされる硫化金属塩を含有する式(II): M(SH)n (II)(式中、Mおよびnは前記と同じ)で表わされる硫化水素金属塩を原料とするアルキルチオールの製造方法であって、前記硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合してなる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整した後、前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させることを特徴とするアルキルチオールの製造方法、(2)硫化水素金属塩が硫化水素アルカリ金属塩である前記(1)記載のアルキルチオールの製造方法、(3)硫化水素金属塩が硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウムまたは硫化水素カリウムである前記(1)または(2)に記載のアルキルチオールの製造方法、(4)硫化水素金属塩が硫化水素ナトリウムである前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルキルチオールの製造方法、(5)ハロゲン化アルキルが、式(III): RX (III)(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロゲン化アルキルである前記(1)〜(4)に記載のアルキルチオールの製造方法、ならびに(6)ハロゲン化アルキルがハロゲン化メチルである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のアルキルチオールの製造方法に関する。 本発明のアルキルチオールの製造方法によれば、高収率でアルキルチオールを製造することができるという優れた効果が奏される。 本発明のアルキルチオールの製造方法は、前記したように、不純物として式(I): M3-nS (I)(式中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子、nはMの原子価を表わす数を示す)で表わされる硫化金属塩を含有する式(II): M(SH)n (II)(式中、Mおよびnは前記と同じ)で表わされる硫化水素金属塩を原料とするアルキルチオールの製造方法であって、前記硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合してなる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整した後、前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させることを特徴とする。 本発明のアルキルチオールの製造方法は、式(II)で表わされる硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合することによって得られる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整する点に1つの大きな特徴を有する。アルキルチオールの製造に用いられる原料である式(II)で表わされる硫化水素金属塩には、一般に不純物として式(I)で表わされる硫化金属塩が1〜1.5質量%含まれている。例えば、硫化水素アルカリ金属塩には、不純物として硫化アルカリ金属塩が含まれ、硫化水素アルカリ土類金属塩には、不純物として硫化アルカリ土類金属塩が含まれている。かかる硫化金属塩とハロゲン化アルキルとが反応した際には硫化ジアルキルが生成するため、アルキルチオールの収率が著しく低くなることがある。これに対して、本発明のアルキルチオールの製造方法によれば、式(II)で表わされる硫化水素金属塩に不純物として式(I)で表わされる硫化金属塩が含まれているにもかかわらず、高収率でアルキルチオールを製造することができる。 式(I)において、Mは、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子である。アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示に限定されるものではない。また、アルカリ土類金属原子としては、例えば、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。 式(I)において、nは、Mの原子価を表わす数である。Mがアルカリ金属原子である場合、nは1であり、Mがアルカリ土類金属である場合、nは2である。 式(I)で表わされる硫化金属塩は、本発明のアルキルチオールの製造方法において、原料として用いられる式(II)で表わされる硫化水素金属塩中の金属原子に対応する硫化金属塩である。 式(II)において、Mおよびnは、式(I)におけるMおよびnと同じである。式(II)において、Mは、アルキルチオールを効率よく製造することができることから、好ましくはアルカリ金属、より好ましくはリチウム、ナトリウムおよびカリウム、さらに好ましくはナトリウムである。 硫化水素金属塩としては、例えば、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウムなどの硫化水素アルカリ金属塩、硫化水素カルシウム、硫化水素マグネシウムなどの硫化水素アルカリ土類金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの硫化水素金属のなかでは、アルキルチオールを効率よく製造することができることから、硫化水素アルカリ金属塩が好ましく、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウムおよび硫化水素カリウムがより好ましく、硫化水素ナトリウムが特に好ましい。 混合液とハロゲン化アルキルとを接触させる際に用いられるハロゲン化アルキル1モルあたりの硫化水素金属塩の量は、アルキルチオールの収率を向上させる観点から、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは1モル以上であり、経済性を高める観点から、好ましくは3モル以下、より好ましくは2モル以下である。 水として、例えば、精製水などが用いられる。前記混合液中の硫化水素金属塩100質量部あたりの水の量は、硫化水素金属塩を十分に溶解させる観点から、好ましくは60質量部以上、より好ましくは120質量部以上であり、反応を円滑に進行させ、アルキルチオールの収率を向上させる観点から、好ましくは1200質量部以下、より好ましくは600質量部以下である。 非水溶性有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物;クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。 前記混合液中の水100質量部あたりの非水溶性有機溶媒の量は、収率を向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、経済性を高める観点から、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは1000質量部以下である。 相間移動触媒としては、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリエチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリエチルアンモニウムクロライド、オクチルトリエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩;ヘキサデシルトリエチルホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドなどの4級ホスホニウム塩;18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6などのクラウンエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、取り扱いが容易であり、経済性を高める観点から、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩およびテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライドなどの4級ホスホニウム塩が好ましく、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドがより好ましい。 前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させる際に用いられるハロゲン化アルキル1モルあたりの相間移動触媒の量は、硫化水素金属塩とハロゲン化アルキルとを効率よく反応させる観点から、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上であり、経済性を高める観点から、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.02モル以下である。 本発明のアルキルチオールの製造方法では、前記混合液の水層のpHを8.5〜10に調整する。前記混合液の水層のpHは、硫化水素の発生を抑制して経済性を高める観点から、8.5以上、好ましくは9以上であり、収率を向上させる観点から、10以下、好ましくは9.5以下である。前記混合液の水層のpHは、混合液にpH調整剤として酸を添加することによって調製することができる。 酸としては、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、ギ酸、リン酸、硫化水素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸のなかでは、取り扱いが容易であることから、塩酸が好ましい。 混合液の水層のpHを調整した後、前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させる。前記混合液とハロゲン化アルキルとの接触は、例えば、前記混合液にハロゲン化アルキルを吹き込むこと、前記混合液とハロゲン化アルキルとを混合することなどによって行なうことができる。前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させることにより、前記混合液中の硫化水素金属塩とハロゲン化アルキルとを反応させ、アルキルチオールを得ることができる。 ハロゲン化アルキルとしては、例えば、式(III): RX (III)(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す)で表される化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。 式(III)において、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル基のなかでは、高い反応性を有することから、メチル基が好ましい。 式(III)において、Xは、ハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらのハロゲン原子のなかでは、反応性を高め、かつ経済性を高める観点から、塩素原子および臭素原子が好ましい。 ハロゲン化アルキルのなかでは、効率よくアルキルチオールを製造する観点から、ハロゲン化メチルが好ましく、塩化メチルおよび臭化メチルがより好ましい。 ハロゲン化アルキル1モルに対する硫化水素金属塩の量は、アルキルチオールの収率を向上させる観点から、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは1モル以上であり、経済性を高める観点から、好ましくは3モル以下、より好ましくは2モル以下である。 前記混合液とハロゲン化アルキルとの反応温度は、反応速度を高める観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、副反応を抑制し、収率を向上させる観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。 前記混合液とハロゲン化アルキルとの接触の際の圧力は、通常、常圧であるが、必要により、加圧してもよく、あるいは減圧してもよい。 前記混合液とハロゲン化アルキルとの反応時間は、反応温度、相間移動触媒の種類、ハロゲン化アルキルの種類などによって異なるので一概には決定することができないため、反応温度、相間移動触媒の種類、ハロゲン化アルキルの種類などに応じて適宜決定することが好ましい。前記混合液とハロゲン化アルキルとの反応時間は、通常、1〜50時間程度である。 本発明のアルキルチオールの製造方法では、水と非水溶性有機溶媒との2層からなる不均一系溶媒中で硫化水素金属塩とハロゲン化アルキルとの反応が行なわれる。反応によって生成するアルキルチオールは、有機溶媒層に存在する。したがって、反応によって生成するアルキルチオールは、例えば、反応終了後の反応液を室温まで冷却し、水層を除去し、有機溶媒層を抽出、蒸留などの通常の精製手段に供することによって容易に単離することができる。一方、水層には相間移動触媒が含まれているので、かかる水層から相間移動触媒を単離し、再利用することができる。 以上説明したように、不純物として式(I)で表わされる硫化金属塩を含有する式(II)で表わされる硫化水素金属塩を原料として用いてアルキルチオールを製造する際に、前記硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合することによって得られる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整することにより、高収率でアルキルチオールを製造することができる。したがって、本発明のアルキルチオールの製造方法は、医薬品、農薬、機能性高分子化合物などの原料を製造する際に好適に用いることができる。 つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。実施例1 撹拌機と温度計と冷却器とを備えた1000mL四つ口フラスコ内に、窒素ガス雰囲気下、常圧で25質量%硫化水素ナトリウム水溶液246.4g(硫化水素アルカリ金属塩の含有量:1.10モル、硫化ナトリウムの含有量:0.04モル)、非水溶性有機溶媒としてクロロベンゼン400gおよび相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド3.9g(0.012モル)を添加した。得られた混合物を撹拌しながら、塩酸を前記混合物に添加することにより、当該混合物の水層のpHを10に調整した。得られた混合液中の硫化水素アルカリ金属塩100質量部あたりの水の量は300質量部、混合液中の水100質量部あたりのクロロベンゼンの量は220質量部である。 つぎに、得られた混合物を30℃で撹拌しながら、前記混合物にハロゲン化アルキルとしてクロロメタン50.5g(1.00モル)を4時間かけて吹き込み、30℃で5時間さらに撹拌を続け、水とクロロベンゼンとの2層からなる不均一系溶媒中で硫化水素ナトリウムとクロロメタンとを反応させた。 反応終了後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、反応混合物から水層を分離して除去した。つぎに、クロロベンゼン層に25質量%水酸化ナトリウム水溶液160gを添加した後、前記クロロベンゼン層を撹拌した。その後、クロロベンゼン層を単離し、メタンチオールナトリウム塩の水溶液215gを得た。酸化還元滴定法により、前記水溶液中のメタンチオールナトリウム塩の濃度を定量し、得られたメタンチオールナトリウム塩の質量を算出した。その結果、得られたメタンチオールナトリウム塩の量は65g(0.92モル)であり、クロロメタンに対する収率は92%であった。実施例2 撹拌機と温度計と冷却器とを備えた1000mL四つ口フラスコ内に、窒素ガス雰囲気下、常圧で25質量%硫化水素ナトリウム水溶液246.4g(硫化水素アルカリ金属塩の含有量:1.10モル、硫化ナトリウムの含有量:0.04モル)、非水溶性有機溶媒としてクロロベンゼン400gおよび相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド3.9g(0.012モル)を添加した。得られた混合物を撹拌しながら、塩酸を前記混合物に添加することにより、当該混合物の水層のpHを9に調整した。なお、得られた混合液中の硫化水素アルカリ金属塩100質量部あたりの水の量は300質量部、混合液中の水100質量部あたりのクロロベンゼンの量は220質量部である。 つぎに、得られた混合物を30℃で撹拌しながら、前記混合物にハロゲン化アルキルとしてクロロメタン50.5g(1.00モル)を4時間かけて吹き込み、30℃で5時間さらに撹拌を続け、水とクロロベンゼンとの2層からなる不均一系溶媒中で硫化水素ナトリウムとクロロメタンとを反応させた。 反応終了後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、反応混合物から水層を分離して除去した。つぎに、クロロベンゼン層に25質量%水酸化ナトリウム水溶液160gを添加した後、前記クロロベンゼン層を撹拌した。その後、クロロベンゼン層を単離し、メタンチオールナトリウム塩の水溶液220gを得た。酸化還元滴定法により、前記水溶液中のメタンチオールナトリウム塩の濃度を定量し、得られたメタンチオールナトリウム塩の質量を算出した。その結果、得られたメタンチオールナトリウム塩の量は66g(0.94モル)であり、クロロメタンに対する収率は94%であった。比較例1 実施例1において、塩酸を用いて水層のpHの調整を行わなかったことを除き、実施例1と同様の操作を行なうことにより、メタンチオールナトリウム塩の水溶液201gを得た。酸化還元滴定法により、前記水溶液中のメタンチオールナトリウム塩の濃度を定量し、得られたメタンチオールナトリウム塩の質量を算出した。その結果、得られたメタンチオールナトリウム塩は61g(0.87モル)であり、クロロメタンに対する収率は84%であった。 実施例1および2ならびに比較例1において、ハロゲン化アルキルの種類、水層のpH、生成物およびその収率を調べた結果を表1に示す。 表1に示された結果から、実施例1および2で得られた各生成物の収率は90%を超えているのに対して、比較例1で得られた生成物の収率は、84%にとどまっていることがわかる。したがって、実施例1および2のアルキルチオールの製造方法によれば、高収率で安定してアルキルチオールを得ることができることがわかる。実施例3〜7 実施例2において、ハロゲン化アルキルとしてクロロメタンを用いる代わりに表2に示される化合物を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行なうことにより、アルキルチオールのナトリウム塩を得た。ハロゲン化アルキルの種類、水層のpH、生成物およびその収率を調べた結果を表2に示す。 表2に示された結果から、実施例3〜7で得られた各生成物の収率は、90%を超えており、しかも91〜93%と非常に安定した収率で取得していることから、実施例3〜7のアルキルチオールの製造方法によれば、高収率で安定してアルキルチオールを得ることができることがわかる。実施例8 実施例1において、硫化水素アルカリ金属塩を用いる代わりに硫化水素アルカリ土類金属塩である硫化水素カルシウムまたは硫化水素マグネシウムを用い、実施例1と同様の操作を行なうことにより、アルキルチオールのカルシウム塩およびアルキルチオールのマグネシウム塩を得る。その結果、硫化水素アルカリ金属塩を用いた場合と同様の結果が得られる。 以上説明したように、不純物として硫化アルカリ金属塩または硫化アルカリ土類金属塩を含有する硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合することによって得られる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整した後、混合液とハロゲン化アルキルとを接触させることにより、高収率で安定してアルキルチオールが得られることがわかる。 不純物として式(I): M3-nS (I)(式中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子、nはMの原子価を表わす数を示す)で表わされる硫化金属塩を含有する式(II): M(SH)n (II)(式中、Mおよびnは前記と同じ)で表わされる硫化水素金属塩を原料とするアルキルチオールの製造方法であって、前記硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合してなる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整した後、前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させることを特徴とするアルキルチオールの製造方法。 硫化水素金属塩が硫化水素アルカリ金属塩である請求項1記載のアルキルチオールの製造方法。 硫化水素金属塩が硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウムまたは硫化水素カリウムである請求項1または2に記載のアルキルチオールの製造方法。 硫化水素金属塩が硫化水素ナトリウムである請求項1〜3のいずれかに記載のアルキルチオールの製造方法。 ハロゲン化アルキルが、式(III): RX (III)(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロゲン化アルキルである請求項1〜4に記載のアルキルチオールの製造方法。 ハロゲン化アルキルがハロゲン化メチルである請求項1〜5のいずれかに記載のアルキルチオールの製造方法。 【課題】高収率でアルキルチオールを製造することができるアルキルチオールの製造方法を提供すること。【解決手段】不純物として式(I): M3-nS (I)(式中、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子、nはMの原子価を表わす数を示す)で表わされる硫化金属塩を含有する式(II): M(SH)n (II)(式中、Mおよびnは前記と同じ)で表わされる硫化水素金属塩を原料とするアルキルチオールの製造方法であって、前記硫化水素金属塩、水、非水溶性有機溶媒および相関移動触媒を混合してなる混合液の水層のpHを8.5〜10に調整した後、前記混合液とハロゲン化アルキルとを接触させることを特徴とするアルキルチオールの製造方法。【選択図】なし