生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_イムノクロマトグラフィー検出方法
出願番号:2012066409
年次:2013
IPC分類:G01N 33/543


特許情報キャッシュ

伊藤 大輔 JP 2013195403 公開特許公報(A) 20130930 2012066409 20120322 イムノクロマトグラフィー検出方法 田中貴金属工業株式会社 509352945 柿澤 紀世雄 100123423 伊藤 大輔 G01N 33/543 20060101AFI20130903BHJP JPG01N33/543 521G01N33/543 541ZG01N33/543 501J 10 OL 21 本発明は、非特異的反応を抑制する高性能、高感度なイムノクロマトグラフィー検出方法に関する。また、本発明は、非特異的反応を抑制して、迅速、簡便に正確に試料中の検出対象物を検査/測定ができる検出キットに関するものであり、さらに詳しくは、金属ナノ粒子で標識した検出対象物(被検出物質)を検出するための標識物質、即ち、検出対象物に特異的に結合する物質で金属コロイド粒子を感作した感作金属コロイドを、乾燥処理に対してまた乾燥状態において保護安定化し、かつ、非特異的反応を抑制して、迅速、簡便、正確に試料中の検出対象物を検査する方法に関する。 近年、検出試料の前処理を行う必要の無い、免疫クロマトグラフィー用ストリップ形式のイムノアッセイは、抗体の持つ特異的反応性を利用して、試料液中の抗原を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として重要性が高まっている。特に、ウィルスや細菌等の病原体検査キットは、一般の病院やクリニックでも汎用されている身近な免疫クロマトグラフィー装置である。 ところで、免疫クロマトグラフィー装置の最も簡単な構造としては、試料添加部位、標識物質保持部、判定(検出)部位、免疫クロマトグラフィー用多孔質担体、および試料吸収部位が相互に繋がった構造である。標識物質保持部は、金属ナノ粒子で標識した検出対象物を検出するための標識物質を保護安定化溶液で処理して後、免疫クロマトグラフィー用多孔質担体に含浸又は塗布し、次いで通気乾燥、真空乾燥又は凍結乾燥などをすることにより、製造されている。 そして、保護安定化溶液としては、従来から、牛血清アルブミン(BSA)などの蛋白質を保護安定化剤として含むものがよく知られているが、乾燥状態で長期間に亘って安定に維持できないという問題があったため、更なる改良、研究がなされてきた。例えば、カゼイン、ホエイ蛋白、カゼイン分解物を含有するものが報告され(特許文献1参照)、また、各種イムノアッセイにおける標識抗体の保護安定化として、金コロイドに生体分子(例えば、抗体等)を添加した後、チオール及び/又はジスルフィド基で置換されたポリエチレングリコールを含有させることにより、コンジュゲートを保護安定化する(即ち、粒子の凝集を最小にし、かつ吸着可能な自由表面を飽和させる)技術が知られている(特許文献2参照)。さらに、トレハロースといった糖類20〜80%および緩衝液0.5〜2mol/Lからなる保護安定化溶液が、固相免疫試薬を乾燥状態で長期間安定に保存できるものとして提案されている(特許文献3参照)。 また、感作金属コロイド含有凍結乾燥物の安定化を改善するために、感作金属コロイド含有溶液の凍結乾燥に際して、トレハロース、グルタミン酸−アルギニン、トリプトファン、塩化Ca等々の1種以上を含有させる技術が公知である(特許文献4参照)。 さらに、水溶液中で保存されているタンパク質、特に酵素等の保存安定性に優れ、3ケ月保存後の、診断正確度の低下が少ない体外診断薬組成物として、グアニジン(その塩)、またはこれに更にアルギニン(その塩、又はその誘導体)を安定化剤として含有させることにより、水溶液中でのタンパク質の凝集や加水分解等を起こすという問題点を解決できることが報告されている(特許文献5参照)。 一方で、従来から免疫クロマトグラフィー装置において、バックグラウンド着色(判定部の固定相抗体以外の部分の着色)、ブランク発色(検出物質が存在しない場合での固定化相の発色、)およびプロゾーン現象(大過剰の被験物質を試料とした時に、見かけ上被験物質が少ないような偽陰性現象)が、検出時のSN比を下げるだけでなく、誤動作の原因にもなるため問題視されている。バックグラウンド着色は、可視化された移動相抗体と多孔質担体との疎水的な結合が原因であり、また、ブランク発色は、負電荷を帯びた移動相抗体と正電荷を帯びた固定相担体との電気的相互作用が原因であり、非特異発色とも言われる。さらに、プロゾーン現象は、標識物と反応できなかった過剰の被験物質が判定部位と反応し、金属粒子で標識した被験物質を検出するための標識物質が判定部位と反応できなくなるのが原因とされている。 この対策として、種々の観点からの研究が多々なされている。例えば、pH緩衝剤などを含む展開液を用いる免疫クロマトグラフィー検出方法において、生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、非特異反応を抑制するために種々の添加剤を使用しており、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異反応の抑制のための蛋白質(例えば、牛血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン等)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ツイーン20、トリトンX−100等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)若しくはその塩等が、添加剤として挙げられている(特許文献6参照)。 また、被験物質を塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン等)又はアミノ糖(例えば、グルコサミン等)を含む移動相で展開する免疫クロマトグラフィー分析法(特許文献7参照)、ならびに、アルギニン濃度が0.02〜1.5Mで、pHが7.0〜9.5で、アルギニン以外に緩衝剤を実質的に含まないアッセイ用媒体を用いるメンブランアッセイ法(特許文献8参照)が知られている。 しかしながら、バックグラウンド着色およびブランク発色などの対策、さらに生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、非特異反応を抑制したり、さらには、標識抗体といったコンジュゲートを安定化したりするために蛋白質(例えば、牛血清アルブミン、ゼラチン、カゼイン、ホエイ蛋白、カゼイン分解物を含有するもの等)、高分子化合物(例えば、チオール及び/又はジスルフィド基で置換されたポリエチレングリコール等)、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン等)などが挙げられてきてはいるものの、非特異反応は抑制されても、検出感度が低下してしまったりといった問題点が生じたりして、未だ十分に目的が達成されたとは言えず、依然として非特異反応を十分に抑制できないという同様な問題があった。 本発明者等は、上記の高分子化合物(例えば、チオール及び/又はジスルフィド基で置換されたポリエチレングリコール等)に着目して実験を行なった結果、試料中の被験物質をイムノクロマトグラフィー法により検出する際、ブランク発色や非特異反応が依然として起こることを観察している。そのため、乾燥保持されているコンジュゲートも長期に亘って保護安定化させ、かつ、非特異反応を十分に抑制して、検出感度の向上を達成するという課題が依然としてあった。 本発明は、従来技術に比して、標識物質を保護安定化し、かつ非特異反応を抑制する高性能、高感度なイムノクロマトグラフィー検出方法を提供することにある。また、従来技術に比して、標識物質を保護安定化し、かつ非特異的反応を抑制して、迅速、簡便および高精度に検査ができるイムノクロマトグラフィー検出キットを提供することにある。例えば、ウィルスや細菌等の病原体と特異的に反応して迅速、簡便な病原体の感染検査ができる免疫クロマトグラフィー装置を提供することにある。 さらに、試料を検体希釈液により測定に適した濃度に調整あるいは希釈した検体をこの検出キットの試料添加部に供給し、標識物質保持部に乾燥保持された標識物質と共に移動相として展開し、展開された移動相中の検出対象物を判定部で検出するにおいて、非特異的反応を抑制して、迅速、簡便、高精度に検査ができる検出キットを提供することにある。例えば、鼻汁または痰を検体希釈液により調整あるいは希釈したものをこの検出キットの試料添加部に供給することによって、迅速、簡便および高精度に病原体の感染検査ができる検出キットを提供することにある。また、本発明は、非特異的反応を抑制して、試料中の検出対象物をイムノクロマトグラフィー法により検出する方法に関する。 本発明は、下記の(1)〜(9)のイムノクロマトグラフィー検出方法、イムノクロマトグラフィー装置および検出用キットを提供するものである。 (1)本発明の第1の特徴は、検体を含む展開液をイムノクロマトグラフ媒体中に添加する工程、標識物質保持部に乾燥保持されている金ナノ粒子により修飾された標識物質により検出対象物を認識させる工程、標識物質と検出対象物の複合体を移動相として展開させる工程、および展開された移動相中の検出対象物を判定部で検出する工程からなるイムノクロマトグラフィー検出方法において、標識物質をメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体で保護し、次いでアルギニン及びカゼインと共に標識物質保持部に乾燥保持させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法、にある。 (2)本発明の第2の特徴は、メルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体が、メルカプト基を1以上有する分子量が1000〜30000のポリエチレングリコールまたはその誘導体であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法、にある。 (3)本発明の第3の特徴は、メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体により保護処理した後の溶液濃度が0.0001〜0.05重量%であることを特徴とする請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 (4)本発明の第4の特徴は、クロマトグラフィー媒体(例えば、グラスファイバーパッド等)に湿潤させる前の標識物質溶液の終濃度として、アルギニンの濃度が液中0.01〜2重量%であり、カゼインの濃度が液中0.1〜10重量%であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法、にある。 (5)本発明の第5の特徴は、金ナノ粒子の平均粒径が30〜100nmの赤色金ナノ粒子または平均粒径が20〜200nmの青色金ナノ粒子であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法、にある。 (6)本発明の第6の特徴は、検体が、鼻汁、鼻腔拭い液、咽頭拭い液または痰であることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法、にある。 (7)本発明の第7の特徴は、検体希釈液にグアニジンを含有させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法、にある。 (8)本発明の第8の特徴は、試料添加部、標識物質保持部、クロマトグラフィー媒体部、検出部および吸収部から実質的に順次構成されており、且つ試料添加部の端部と検出部との間の領域部に、標識物質をメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体により保護し、アルギニン及びカゼインと共に乾燥保持させた標識物質保持部が設けられていることを特徴とするイムノクロマトグラフィー装置、にある。 (9)本発明の第9の特徴は、試料添加部、標識物質保持部、クロマトグラフィー媒体部、検出部および吸収部から実質的に順次構成されており、且つ試料添加部の端部と検出部との間の領域部に標識物質をメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体により保護し、アルギニン及びカゼインと共に乾燥保持させた標識物質保持部が設けられているイムノクロマトグラフィー装置からなることを特徴とする検出キット、にある。 本発明のイムノクロマトグラフィー検出方法は、イムノクロマトグラフィー装置に標識物質保持部を設けるに際し、標識物質を分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールにより、好ましくは分子量1000〜30000の、より好ましくは分子量2000〜20000のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又は誘導体により保護し、アルギニン及びカゼインと共に乾燥保持させることにより、金属ナノ粒子で標識した検出対象物を検出するための標識物質、即ち、被検出物質に特異的に結合する物質で金属コロイド粒子を感作した感作金属コロイドを、乾燥処理から保護すると共に長期間に亘って乾燥状態で安定的に保持できるため、試料中の検出対象物(例えば、抗原など)を検出する際に、その安定化や非特異反応の抑制機構の原理の詳細は不明であるが、分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又は誘導体、アルギニン及びカゼインの三者が三位一体となって、協同作用して、非特異反応を顕著に抑制でき、しかも、感度の低下がないので、正確に結果の判定が可能である。例えば、検体として用いる咽頭拭い液中のウイルス等を検出する際に、感度の低下がなく、しかも、非特異反応を顕著に抑制するため、正確に感染の有無検査等の結果の判定が可能である。本発明のイムノクロマトグラフィー用検査キットは、病原菌の有無検査に有効であり、特に特定ウィルスの有無検査が迅速かつ正確に可能であることにより、的確な治療措置を行なうことが出来るため、医療現場において好適に用いられる。イムノクロマトグラフィー装置の試験片の概略図 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明者等は、免疫クロマトグラフィー装置において、鋭意研究を重ねた結果、イムノクロマトグラフィー装置に標識物質保持部を設けるに際し、標識物質を分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールにより、好ましくは分子量2000〜20000のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコールにより保護し、アルギニン及びカゼインと共に乾燥保持させることにより、被検出物質に特異的に結合する物質(例えば、抗体、抗原、酵素、ペプチド等々の生体分子)で金属コロイド粒子を感作した感作金属コロイドを、乾燥処理から安定的に保護すると共に長期間に亘って乾燥状態で安定的に保持できるようにしたものである。その作用機序は不明ではあるが、分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体、アルギニン及びカゼインの三者は、共働して標識物質における金属粒子の自由表面に複合吸着することにより被覆飽和させて、非特異的反応を惹起するような吸着の可能性を顕著に消失させ、かつ、金属粒子の凝集を最低に保持する作用を果たし、さらに、移動相抗体と多孔質担体との疎水結合や移動相抗体と固定相担体との電気的相互作用を、アルギニン、メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体及びカゼインの相互作用によって高度に打ち消す作用をすることが想定される。さらに検出対象物や標識化した検出試薬の安定化、並びに検出対象物と標識抗体との反応による複合体の安定化が、メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体、アルギニン及びカゼインの相乗作用によってなされると同時にそれらの移動相としての移動をスムーズにする作用を果たすことにより、非特異反応を極めて顕著に抑制して、試料中の検出対象物を特異的に高感度かつ迅速に検出/測定が高精度に出来ることを初めて知見し、本発明の完成に至ったものである。 本発明で使用可能なポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体とは、 分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体であり、そのメルカプト基を1以上有するという部分は、モノメルカプト、ジメルカプト等であり、分枝構造を採る場合には、トリメルカプト、テトラメルカプト等の例が挙げられる。そのアルキレングリコール及び/又はその誘導体部分の例として、ポリエチレングリコール(「PEG」という)、ポリプロピレングリコール(「PPG」という)、ポリブチレングリコール(「PBG」という)のような単独重合体、或いはエチレングリコール(「EG」という)セグメント、プロピレングリコール(「PG」という)セグメントの任意の構成割合からなる、例えば、EG、PG、BGの混在するランダムまたはPEG、PPG、PBGブロックの混在するブロック共重合体などが挙げられる。 例えば、HS−PEG、HS−PEG−SH、HS−PPG、HS−PPG−SHSH−PBG、HS−PBG−HS、HS−PEG−PPG、HS−PEG−PPG−HS、HS−PEG−PBG−HS、HS−PEG−PPG−PBG−HS などの各種EG,PG,BGなどをランダムに、またはブロックとして任意に含むポリマーが挙げられる。 ポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体部分の範疇に属する特に本発明の実施に有用な重合体は、ポリエチレングリコール(PEG)であり、その分子量としては、例えば、分子量1000〜30000の範囲のもの、具体的な分子量の例は、1500、5000、8000、15000、18000、25000というような任意の分子量のものが使用できる。実際には、その正確な数値の分子量を入手することが困難であるから、その分子量の前後のものを入手して使用すれば足りる。いずれにせよ、メルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体の範疇に属するものであることが必須の要件である。そして、メルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールやその誘導体は、これらの混合物であっても使用可能である。 本発明のイムノクロマトグラフィー用の標識物質の保護に最も好適に用いられる分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール(PEG)及び/又はその誘導体としては、一般式 X−(CH2CH2O)n−CH2CH2−SH (ここで、Xは、HS−、保護されていてもよいHO−、アルキル−O−を、nは、15〜540の整数を表わす。)で表わされ、その誘導体としては、末端基であるOH及びSHの保護基や誘導体をいう。例えば、OHの場合には、ペプチド合成の分野で汎用されている保護基、p−トルエンスルホニル基、カルボニル基等が含まれ、さらに、アルキル基、特に、メチル基が好ましく用いられる。 具体的なメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体としては、例えば、モノメルカプトポリエチレングリコール、ジメルカプトポリエチレングリコールが挙げられるが、分枝構造を採る場合には、トリメルカプトポリエチレングリコール及び/又はその誘導体などが挙げられる。 本発明のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール(PEG)及び/又はその誘導体としては、市販されている分子量のもの(分子量が1000〜30000)を入手して使用することができる。特に好ましい分子量としては、2000〜20000のものであり、例えば、メトキシ−PEG−チオール2000、チオール−PEG−チオール3400、メトキシ−PEG−チオール5000、メトキシ−PEG−チオール20000等々の商品として入手できることが挙げられる。分子量が2000未満では、標識物質に対するPEG修飾が十分であっても、乾燥に対する安定性や保護機能が十分に発揮できなかったり、さらに、非特異反応の抑制も低下したりする。一方で、分子量が20000を超えると、標識物質に対するPEG修飾が不均一かつ不十分となって、その結果、乾燥に対する安定性や保護機能が均一かつ十分に発揮できなかったり、さらに、非特異反応の抑制も低下したりする。いずれにせよ、分子量が1000〜30000の範囲内のものであれば、比較的高純度のものとして入手できるばかりでなく、標識物質に対するPEG修飾が十分になされ、乾燥に対する安定性や保護機能が十分に発揮され、かつ、非特異反応の抑制も十分になされる。 分子量が1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールまたはその誘導体を使用することを必須としながらも、場合によっては、例えば、分子量が3000のPEGと8000のPEGというような、分子量が相違する二種類のメルカプト基含有ポリアルキレングリコールまたはその誘導体を任意の割合でポリマーブレンドしたものも使用できる。同様に、メルカプト基の観点から吟味すれば、メルカプト基を1個有するポリアルキレングリコールまたはその誘導体と2個有するポリアルキレングリコールまたはその誘導体を任意の割合でポリマーブレンドしたものも、例えば、「HS−PEGとHS−PEG−SH」の混合物のようなものが挙げられる。さらには、メルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールまたはその誘導体20〜99wt%程度とメルカプト基を有しないポリアルキレングリコール1〜80wt%程度のポリマーブレンドのものも、例えば、「HS−PEGとPEG」の混合物のようなものが挙げられる。このポリマーブレンドの場合には、メルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールの機能を低下させないようにブレンド量の調整に注意を要する。 ブレンドポリマーにおける分子量が相違する二種類のメルカプト基含有ポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体の例としては、チオール−PEG−チオール3400とメトキシ−PEG−チオール5000の混合物からなる仕様のものを用いることが可能である。 メルカプト基を1個以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体、特に代表的なメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又は誘導体を、検出対象物に特異的に反応する試薬成分(例えば、抗体など)を金ナノ粒子により修飾した標識物質に用いる濃度としては、メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール誘導体により保護処理した後の溶液中、0.0001〜0.05重量%の濃度であり、好ましくは0.0005〜0.01重量%の濃度であり、例えば、水中0.001重量%濃度の分子量5000のメトキシ−PEG−チオールを用いることができる。0.0001重量%未満では、乾燥に対する安定性や保護機能が不十分となり、かつブランク発色や非特異的反応を抑制できず正確な判定が行なえない。0.05重量%を超えて用いる場合、標識物質粒子が凝集する場合があるばかりか、必要以上の濃度となり、それに応じた効果が期待できず、経済的でなく無駄となる。 本発明のイムノクロマトグラフィー用の標識物質溶液中に含有されるアルギニンとは、5−グアニジノ−2−アミノペンタン酸とも呼称される、天然に存在するアミノ酸類である。アルギニンとしては、L−アルギニン(C6H14N4O2)が好ましく用いられ、その濃度は、グラスファイバーパッドに浸潤させる前の標識物質溶液の終濃度として液中0.01〜2重量%の濃度であり、好ましくは0.02〜0.5重量%の濃度である。例えば、0.1重量%のL−アルギニン水溶液が好ましく用いられる。0.01重量%未満では、乾燥に対する安定性や保護機能が不十分であり、かつブランク発色や非特異的反応を抑制できず正確な判定が行なえない。2重量%以上では、必要以上の濃度となり、それに応じた効果が期待できず、無駄となる。 本発明のカゼインとは、牛乳やチーズに含まれる天然に存在するリンタンパク類の一種であり、イムノクロマトグラフィー用の標識物質溶液中に含有されるカゼインとしては、カゼインそのものや、カゼインを主成分として含有するスキムミルクなどが用いられる。その濃度は、グラスファイバーパッドに浸潤させる前の標識物質溶液の終濃度として液中0.1〜10重量%の濃度であり、好ましくは0.2〜5重量%の濃度である。例えば、1重量%のカゼインを含む緩衝液が好ましく用いられる。0.1重量%未満では、十分な作用効果が奏されない。10重量%以上では、必要以上の濃度となり、それに応じた効果が期待できず、無駄となる。 メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール誘導体により保護された標識物質の水溶液(「A」と略す)に、アルギニンの水溶液(「B」と略す)及びカゼインの水溶液(「C」と略す)を、上記のような濃度となるように適宜組み合わせて調合するが、B及びCの各濃度は、0.01〜2重量%及び0.1〜10重量%であり、好ましくは0.05〜1重量%及び0.5〜5重量%である。 本発明では、検体希釈液中にグアニジン又はその塩を含有させることが好ましい。グアニジンの塩としては、無機塩または有機塩であってよく、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩等々である。グアニジンの濃度は、水もしくは緩衝液中1〜200mMの濃度であり、好ましくは2〜100mMの濃度であり、さらに好ましくは、5〜50mMの濃度である。例えば、20mMのグアニジン塩酸塩を含む緩衝液が好ましく用いられる。1mM未満では、十分な作用効果が達成されない。200mM以上では、必要以上の濃度となり、それに応じた効果が期待できず、無駄となる。 本発明のイムノクロマトグラフィー検出方法に使用する、好ましくは、金ナノ粒子は平均粒径が30〜100nmの赤色金ナノ粒子、および/または平均粒径が20〜200nmの青色金ナノ粒子が好ましい。勿論、白金、銀、ゲルマニウム、ロジウム、パラジウムなどの貴金属粒子、チタン、鉄、亜鉛などの平均粒径が10〜250nm、好ましくは35〜120nm程度の金ナノ金属粒子も使用できる。しかし、金ナノ粒子は、診断精度の面で最も推奨されるが、金を主体とする金と白金のような金属の混合物も使用することができる。さらには、ある特殊な診断の為に、金属ナノ粒子をできるだけ同一形状にする、例えば真球状にするとか、各粒子の粒径をできるだけ均一そろえるという工夫をすることもできる。 このようなナノ金属粒子が分散状態にある、例えば、抗体、抗原による感作金属コロイド、感作金コロイド、感作白金−金コロイド、感作金−銀コロイド、鉄コロイドなど挙げられるが、金コロイドが取り扱いが容易であり、測定の精度などから推奨される。コロイド金標識増感剤の併用も診断の測定感度を向上させる為に推奨される。 診断の目的が、高感度、高精度が求められるような特殊な場合には、金コロイドの例で言えば、コロイドの粒子の形状を同じ形のもの、例えば真球状にしたものを多くするとか、コロイド粒子の粒径を均一にするということ、例えば、40nm、80nm、または120nmというような、特定な粒径の一点に集中させるという、いわゆる粒度分布曲線を狭くしたコロイドにするという工夫をすることも可能である。 さらには、金属コロイドの発色性を調和する為に、金の粒子状態およびその集まりにより色彩が異なるので、可視光線の領域における特有の色彩を有する、例えば、赤色金ナノ粒子コロイドと青色金ナノ粒子コロイドを任意の割合で配合することにより、所定の色彩を有する金ナノ粒子コロイドを調整することも可能である。判定の際には、色彩を調節することにより、より鮮明な色彩表示を工夫することにより、判定の精度を向上させることも可能であり、例えば赤(波長770〜640nm)緑(波長490〜430nm)青(490〜430nm)の光の三原色を適宜組み合わせる要領である。いずれの金属ナノ粒子コロイドも、製品として市場から容易に入手できる。 なお、平均粒径は、コロイドの粒度分布を動的光散乱法粒度分布計で測定した後の平均粒径を求めるという各種慣用の測定法に基づいて決めることができる。 本発明のイムノクロマトグラフィー用の標識物質溶液等々は、緩衝剤や界面活性剤、特に、非イオン界面活性剤を含有させることが好ましい。 含有させる緩衝剤としては、試料の添加や試料の蒸発や希釈による濃度の変化、外部からの多少の異物の混入によっても致命的な影響を生じない作用(緩衝作用)を持つものであれば特に制限はない。 本発明において、緩衝剤としては、酢酸緩衝液(酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(リン酸+リン酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液(トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン+塩酸)、TE緩衝液(トリス+エチレンジアミン四酢酸)、TAE緩衝液(トリス+酢酸+エチレンジアミン四酢酸)、TBE緩衝液(トリス+ホウ酸+エチレンジアミン四酢酸)又はHEPES緩衝液(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルフォン酸)等が挙げられる。好ましくは、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などであり、より好ましくは、HEPES緩衝液である。また、悪影響を及ぼさない範囲内においてその他の緩衝剤を配合して使用することもできる。 本発明のイムノクロマトグラフィー用の標識物質溶液や検体希釈液等々を含む試薬組成物中に含有させる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(日油(株)製、商品名:ノニオン(登録商標)MN811、ナカライテスク社製、商品名:NP−40)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合しても用いることが出来る。 本発明のイムノクロマトグラフィー用の各種試薬組成物には、生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、非特異的反応を抑制することが公知の添加剤、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質(例えば、牛血清アルブミン、ゼラチン等)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストラン等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸等)、あるいは、抗菌剤等々の1種もしくは2種以上を添加して使用することも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。また、これらの抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質、高分子化合物、イオン性界面活性剤又はポリアニオン、あるいは、抗菌剤等々の1種もしくは2種以上を、固定相を構成するクロマトグラフィー媒体上の、移動相の移動経路上に保持させておくことも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。 本発明のイムノクロマトグラフィー用標識物質溶液を固相中に保持させるに際し、標識物質溶液中に含有させる保護安定化物質もしくは溶解促進物質としては、糖類、即ち、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖又は多糖類が使用できる。単糖類としては、グルコース、ガラクトース、キシロース、フラクトース等が、二糖類としては、トレハロース、シュークロース、ラクトース、マルトース等が、三糖類やオリゴ糖としては、ラフィノース等が、多糖類としては、グルコン酸、デキストラン等が、挙げられ、これらは、1種又は2種以上を混合して用いても何ら差支えない。 また、本発明の標識物質保持部をイムノクロマトグラフィー装置の領域部内に設けるとは、試料添加部の端部と判定部との間の領域内に、標識物質を分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するアルキレングリコール及び/又はその誘導体(保護試薬)により保護処理された溶液と、アルギニン及びカゼイン(安定化試薬)を混合した標識物質保護安定化試薬含有組成物を、塗布、吸着もしくは含浸させて後、乾燥させることによって担持または保持もしくは形成させるものである。標識物質保護安定化試薬含有組成物を調製するに際して、保護処理された標識物質溶液と混合する試薬の添加順序としては、どの安定化試薬を最初に混合し、又、どの安定化試薬を最後に混合するかは、標識物質保護安定化試薬含有組成物の状態を考慮して、任意に決めることができるものであり、設計事項の範囲内である。例えば、標識物質にまず分子量1000〜30000のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体を添加し、次いでこれにアルギニン又はカゼインを一者ずつ順次加えていってもよい。あるいは、標識物質にまず該ポリエチレングリコール及び/又はその誘導体を添加し、次いでこれにアルギニン及びカゼインの二者混合物を加えてもよい。もしくはアルギニン及びカゼインの二者混合物(添加順不同)の溶液へ、標識物質に該ポリエチレングリコール誘導体を加えた溶液を加えてもよい。加えるにあたっては、均一に加えられるのであれば少量ずつ連続的に加えても又は間欠的に加えてもよいし、一度に加えてもよく、加える量に応じて適宜なし得る設計事項の範囲内である。標識物質保持部の大きさ(幅)、濃度などはその性能を考慮して、任意に決めることができるものであり、設計事項の範囲内である。 本発明のイムノクロマトグラフィー用標識物質溶液やその他の試薬組成物を含む部位を設ける方法としては、例えば、イムノクロマトグラフィー装置におけるグラスファイバーパッド(標識物質保持部材)中へイムノクロマトグラフィー用標識物質溶液を塗布又は含浸させた後、乾燥させる方法(通気乾燥、真空乾燥、自然乾燥、凍結乾燥等々)により、グラスファイバーパッド中へ担持または保持させる態様とすることができる。 本発明のイムノクロマトグラフィー用の検体希釈液は、また展開液としても使用することができるものであるが、通常、溶媒として水を用い、これに緩衝液、塩、および非イオン界面活性剤、さらに、前記抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するための蛋白質、高分子化合物(PVP等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン、あるいは、抗菌剤、キレート剤等々の1種もしくは2種以上を加える。加える順序は特に特定されず、同時に加えても差支えない。展開液として用いる場合には、検出試料と展開液を予め混合したものを、サンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下して展開させることもできるし、先に試料をサンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下して後、展開液をサンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下して展開させてもよい。試料希釈液として使用する場合には、試料を測定に適した濃度に調整する或いは希釈する希釈液は、そのまま展開液としてサンプルパッド(試料添加部分)上に供給・滴下することにより使用できる。 本発明の検出対象物を含む試料(検体)としては、例えば、主として生体試料、即ち、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液、汗、涙、羊水、乳頭分泌液、鼻汁、痰、鼻腔又は咽頭拭い液、皮膚からの浸出液、組織や細胞及び糞便からの抽出物等々が挙げられる。 本発明の検出対象物としては、それと特異的に結合する、例えば、抗原−抗体反応のように特異的に結合する物質が存在するもしくは製造できるものであればよく、特に限定されない。検出対象物が完全抗原といったそれ自体が抗原性を有するものであっても、もしくはハプテン(不完全抗原)といったそれ自体が抗原性を有しなくても化学的変成物とすることにより抗原性を持つに至るものであってもよい。これらの検出対象物と特異的に結合する物質が存在するもしくは製造できるものであればよく、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体とすることができる。本発明の検出対象物を例示すれば、ペプチドホルモン(成長ホルモン(GH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、メラミン細胞刺激ホルモン(MSH)、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、下垂体ホルモン、カルシユウム代謝調節ホルモン、膵ホルモン、消化管ホルモン、血管作用ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、エストロン等の卵胞ホルモン、プロゲストロン等の天然又は合成黄体ホルモン、テストステロン等の男性ホルモン、コルチゾール等の副腎皮質ホルモン、ジヨードサイロニン等の甲状腺ホルモン類等々のホルモン、前立腺性酸性フォスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、アルカリ性フォスファターゼ、トランスアミナーゼ、トリプシン、ペプシノーゲン、α−フェトプロテイン(AFP)、ガン胎児性抗原(CEA)等のガン特異物質、免疫グロブリンG(IgG)等の血清蛋白成分、リュウマチ因子、セロトニン、ウロキナーゼ、フェリチン、サブスタンP、便潜血、梅毒抗体、インフルエンザウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス、マイコプラズマ、HBs抗原、HBs抗体、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、コレステロール、胆汁酸、強心性ステロイド、サポゲニン等のその他のステロイド類、エピネフリン、ドーパミン、生理活性アルカロイド類、アミノ基含有向精神薬類、TRH等の低分子ペプチド類、プロスタグランジン類、ビタミン類、ペニシリン等の抗生物質類、その他生体内成分、生体内投与薬物およびその代謝産物等が挙げられるが、好ましい検出対象物としては、特にウィルスや細菌等の病原体、好ましくはインフルエンザウィルス、アデノウィルス、ロタウィルス、マイコプラズマ等々に最適に用いられ、本発明の検出対象物を含む試料(検体)としては、例えば、鼻汁、痰、鼻腔又は咽頭拭い液が用いられる。 本発明の検体として咽頭拭い液を用いた場合は、検体希釈液を用いて希釈して後、イムノクロマトグラフィー装置におけるサンプルパッド上に供給/滴下する。本発明のイムノクロマトグラフィー用検査キットは、病原菌の有無検査に有効であり、特に特定ウィルスの有無検査の結果により迅速で正確な治療措置を行なうことが出来る。 鼻汁、痰、鼻腔又は咽頭拭い液等々の生体試料中に存在するウィルス等の有無を検査するためのイムノクロマトグラフィー装置は、その構造およびその動作・検出手法は公知である。 従来のイムノクロマトグラフィー装置のサンプルパッド中へ生体試料を採取した本発明の検体希釈液を供給/滴下し、本発明のイムノクロマトグラフィー用標識物質溶液を担持させた、例えば、含浸後、乾燥させたイムノクロマトグラフィー装置を用いて、特異的に結合する反応、例えば、抗原抗体反応により試料中の検出対象物、例えば、咽頭拭い液中のインフルエンザウィルス等の同定・定量等の検査をすることができる。 イムノクロマトグラフィー装置および仕様について、以下に説明をする。イムノクロマトグラフィー装置は、試料添加部位(1)(「サンプルパッド」)、標識物質保持部位(2)、クロマトグラフィー媒体(3)、判定部位(4)、吸収部位(5)、およびバッキングシート(6)から構成されている。それらの各部位の構造、仕様および態様は以下のとおりである。 1)試料添加部位(1)(「サンプルパッド」)は、図1を参考にすると、試料が迅速に吸収されるが、保持力は弱く、速やかに反応部へと試料が移動していくような性質の多孔質シートで構成されている。多孔質シートとしては、セルロース濾紙、ガラスファイバー濾紙、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、綿布等が挙げられる。本発明の多孔質シートとしては、ガラスファイバー濾紙が好ましく用いられる。本発明においては、非特異的反応を抑制するために、サンプルパッド(1)中に、緩衝液および非イオン界面活性剤等々を含むイムノクロマトグラフィー用試薬組成物を予め含浸させて後、乾燥させる等の手段により担持させる態様とすることができる。例えば、トリス塩酸緩衝液および片末端にアルキル基を持つポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体の各成分を含有するイムノクロマトグラフィー用試薬組成物の成分を予め担持または保持させておく態様とすることが可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。 2)標識物質保持部位(2)には、標識成分によって試薬成分を標識した標識試薬を担持または保持させている。標識成分としては、金コロイド粒子、銀コロイド粒子等の金属コロイド粒子、各種のモノマーを(共)重合させて合成した合成高分子を染色して得られる着色ラテックス粒子、酵素、蛍光化合物、その他を用いることができる。試薬成分としては、分析物を認識する能力を有する粒子又は分子であり、好ましくはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントである(第二試薬)。 3)クロマトグラフィー媒体(3)は、膜担体上に判定部位(4)を作成したものである。膜担体としては、毛細管現象により試料検体を吸収し移動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラスファイバー、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。それらの繊維、織布、不織布、布、膜などの任意のものからなる。 4)判定部位(4)には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメント(第一試薬)が、ニトロセルロースのシート上に担持固定されている。 この判定部位(4)に用いる試薬成分(第一試薬)および標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)は、その一方又は両方がモノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよいが、特異性を保った上で製造コストや抗体の安定供給を考慮する場合は少なくとも一方がポリクローナル抗体であることが好ましい。更に、標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)は、測定感度等の点から特異性の高いモノクローナル抗体がより好ましい。インフルエンザウィルスといった病原性が高い検体の検査にあっては、両方がモノクローナル抗体であることが最も好ましい。 モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントは、公知であり、入手可能であり、公知の方法により調整することができる。抗体産生動物種としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等々である。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでも良い。 モノクローナル抗体は、常法に従って、抗原(インフルエンザウィルス等)で免疫したマウスの脾臓細胞と骨隋腫細胞をハイブリッドさせ、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選択し、このハイブリドーマから産生されてくるモノクローナル抗体を収得する。例えば、ケーラーとミルスタインの技法(Nature 256(1975)495−497)を参照。 ポリクローナル抗体は、常套手法により、抗原(インフルエンザウィルス等)を産生動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)に免疫して得た抗血清中から目的とする抗体を分離することにより得られる。 インフルエンザウィルスは、ウィルス粒子を構成するタンパク質のうち、M1蛋白(エンベロープの内側に、それを裏打ちする形で局在し、実質的な殻の役割を果たしている。)とNP蛋白(エンベロープ内部にあり、核蛋白質にらせん状に巻付いていて、ヌクレオカプシドに相当する。)の抗原性の違いに基づいて、A型、B型、C型に分類される。流行の規模や感染時の被害が大きいA型インフルエンザウィルスは、直径80〜120nm程度の、エンベロープ(殻)を持つマイナス鎖の一本鎖RNAウィルスであるが、A型はさらに、ウィルス表面蛋白質であるヘマグルチミン(血球凝集素、HA)とノイラミニダーゼ(NA)の抗原性の違いに基づいて、HAでは16種類(H1からH16)、NAでは9種類(N1からN9)の亜型に分類されている。 判定部位(4)に用いる試薬成分(第一試薬)および標識試薬に用いる試薬成分(第二試薬)としては、それぞれ抗インフルエンザウィルスモノクローナル抗体あるいは抗インフルエンザウィルスポリクローナル抗体のどちらも用いることが可能である。しかしながら、両方に抗インフルエンザウィルスモノクローナル抗体を用いることが反応の正確性と効率性の観点から最も好ましい。 5)吸収部位(5)は、過剰の試料を迅速に吸収する能力を有する材料、ガラス濾紙等が用いられる。 6)バッキングシート(6)は、基材である。片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより、片面が粘着性を有し、該粘着面上に試料添加部(1)、標識物質保持部(2)、クロマトグラフィー媒体(3)、判定部(4)、および吸収部(5)の一部または全部が密着して設けられている。バッキングシート(6)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性、非透湿性となるようなものであれば、基材としては、特に限定されない。 判定の原理を概説すると、1.試料(例えば、咽頭拭い液などの検体)を、測定精度を低下させることなく、イムノクロマトグラフィー媒体中をスムーズに移動する程度の濃度に検体希釈液で調製あるいは希釈して検体試料とする。これをサンプルパッド(1)上に、所定量(通常、0.1〜2ml)滴下する。検体試料が滴下されると、サンプルパッド(1)中を検体試料は移動を開始する。2.次いで検体試料は、標識物質保持部位(2)へと移動する。ここを検体試料が通過する際、標識物質保持部位(2)に保持されていた溶解補助物質がまず検体試料の水分に溶解し、次いで標識物質と共に保持されていた保護安定化物質並びに標識物質が、検体試料の水分に溶解し、検体試料と共に移動する。3.ついで、検体試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフィー媒体(3)上の判定部位(4)を通過する。ここでは、検体試料中に溶解している保護安定化物質等を含むイムノクロマトグラフィー用試薬組成物により非特異的結合反応は抑制され、抗原・抗体の特異的結合反応により、インフルエンザウィルスが存在する場合には、検体試料中のインフルエンザウィルスが、判定部位(4)に保持、即ち、担持固定されている抗体と標識試薬とによってサンドイッチ状に挟まれるように特異的に反応結合して、判定部位(4)が着色する。インフルエンザウィルスが存在しない場合には、試料の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフィー媒体(3)上の判定部位(4)を通過しても特異的結合反応が起こらないので、判定部位(4)が着色しない。4.最後に、試料の水分は、吸収部位(5)へと移動する。このように、試料、例えば、検体試料中のインフルエンザウィルスの有無を検査することにより、インフルエンザウィルスの感染の有無を正確に判定することができる。 採取した試料である鼻汁、痰、鼻腔又は咽頭拭い液は、試料希釈液により約10〜100倍に希釈して、その150μLをサンプルパッド(1)上に滴下/供給して展開することにより、上記と同様の検査を行なうことができ、上記と同様な結果を達成することができる。 以下、本発明の有効性を各仕様の実施例および実施態様を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明の有意性を説明する。その実施の仕様は以下のとおりのものである。[実施例1](1)クロマトグラフィー媒体上への判定部の作製 メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF12250mm×25mm)を用いた。5重量%のスクロースおよび5重量%のイソプロパノールを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるように抗インフルエンザA型ウィルスモノクローナル抗体(第一抗体)を希釈し、その希釈された溶液150μLを抗体塗布機(BioDot社製)によりメンブラン上に1mmの幅で塗布し、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフィー媒体上に判定部を作製した。(2)標識物質溶液の作製 金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:平均粒子径40nm)0.5mLに、HEPES緩衝(pH7.5)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈した抗インフルエンザAモノクローナル抗体0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、0.01重量%のPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)を含むHEPES緩衝液(pH7.5)を0.1ml加え(添加後のPEG−SH濃度:0.001重量%)、室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液を作製した。(3)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製 上記作製した標識物質溶液200μlに100μlの25重量%トレハロース水溶液と80μlの5重量%のカゼイン(終濃度:1重量%)を含むリン酸緩衝液(pH9.0)、5μlの10重量%のL−アルギニン水溶液(終濃度:0.1重量%)を加えたものを12mm×100mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識保持部材を作製した。次に、バッキングシートから成る基材に、上記作製した判定部を有するクロマトグラフィー媒体、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるグラスファイバー製のサンプルパッド、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片とした。(4)検体希釈液の作製 1重量%の非イオン界面活性剤(日油株式会社製、商品名:MN811とナカライテスク社製、商品名NP−40の1:1混合物)、80mMの塩化カリウム、20mMのグアニジン塩酸塩、0.4重量%のポリビニルピロリドン(平均分子量36万)を含む50mMのHEPES緩衝液(pH7.5)を調製し、鼻汁・痰・咽頭ぬぐい液等の検体を希釈処理するための試薬とした。(5)測定上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片及び検体希釈液を用いて、以下の方法で検体中の抗原であるインフルエンザA型ウィルスの存在の有無を測定した。即ち、吸引トラップの片方の管を吸引ポンプに、もう片方の管をインフルエンザに感染していない人の鼻腔の奥部まで挿入し、吸引ポンプを陰圧にして鼻汁を採取した。採取した鼻汁を上記検体希釈液で20倍に希釈し、これを陰性検体試料とした。また、陰性検体試料に、蛋白濃度が25ng/mLとなるように市販の不活化インフルエンザA型ウィルス抗原を加えたものを陽性検体試料とした。陰性検体試料、陽性検体試料とも120μLをイムノクロマトグラフィー用試験片のサンプルパッド上に添加し展開させ、15分後に目視判定をした。テストラインの赤い線を確認できるものを「+」、鮮明に確認できるものを「++」、より強く鮮明に確認できるものを「+++」、赤い線は確認できるが、非常に色が薄いものを「±」、赤い線を確認できないものを「−」とした。表1に結果を示す。[実施例2] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、0.01重量%のPEG−SH(分子量2000)のものを使用して、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。[実施例3] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、0.01重量%のPEG−SH(分子量20000)のものを使用して、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。[比較例1] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、0.01重量%のPEG(分子量20000)という、メルカプト基を有しないポリエチレングリコールを使用して、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。[比較例2] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、0.01重量%のPEG(分子量5000)に代えて、同じ機能が予測されるポリビニルピロリドン(PVP K−90 分子量630000)を使用して、実施例1と同じ手順態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。[比較例3] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、0.01重量%のPEG−SH(分子量5000)のものを使用して、標識物質保持部のアミノ酸成分をL−アルギニンに代えて「L−グルタミン酸」を使用して実施例1と同じ態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。[比較例4] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、0.01重量%のPEG−SH(分子量5000)のものを使用して、標識物質保持部のアミノ酸成分をL−アルギニンに代えて「L−グルタミン酸+グアニジン塩酸塩」を使用して実施例1と同じ態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。[比較例5] 標識物質の保護剤として、実施例1の(2)標識物質溶液の作製の工程で、PEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)を含むHEPES緩衝液(pH7.5)を用い、標識物質保持部のアミノ酸成分としてL−アルギニンを用いて、標識物質保持部のタンパク質成分であるカゼインに代えて「BSA」を使用して実施例1と同じ態様で実施した。そして、同じ目視判定基準に従って判定した。その判定結果を表1に示す。5.配合する成分による影響の評価 1)表1の実施例1〜3の結果から、標識物質の保護剤としてPEG−SH(分子量2000〜20000)を含むHEPES緩衝液(pH7.5)を用い、これにカゼインを含むリン酸緩衝液(pH9.0)とL−アルギニン水溶液が配合される場合にのみ、抗原量が0ngでの「+」や「±」といった陽性、偽陽性を示さず、ブランク発色や非特異反応が抑制されることが解る。 2)「比較例1」および「比較例2」に見るとおり、標識物質の保護剤としてPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)を用いずにPEG(分子量20000)またはPVP K−90(分子量630000)を用いた場合(即ち、比較例1、2の場合)には、標識物質保持部のタンパク質成分としてカゼインを用い、かつ、標識物質保持部のアミノ酸成分としてL−アルギニンを用いたとしても、抗原量が0ngで「+」や「±」といった陽性、偽陽性を示し、正確な検査結果が得られないことが解る。 3)また、比較例3、4に見るとおり、標識物質の保護剤としてPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)を含むHEPES緩衝液(pH7.5)を用い、これにカゼインを含むリン酸緩衝液(pH9.0)を用いても、標識物質保持部のアミノ酸成分としてL−アルギニンを用いずにL−グルタミン酸あるいはL−グルタミン酸とグアニジン塩酸塩の混合物を用いた場合(即ち、比較例3、4の場合)には、抗原量が0ngで「+」といった陽性を示し、ブランク発色又は非特異反応が惹起していることが解る。 4)「比較例5」に見るとおり、標識物質の保護剤としてPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)を含むHEPES緩衝液(pH7.5)を用い、標識物質保持部のアミノ酸成分としてL−アルギニンを用いても、標識物質保持部のタンパク質成分としてカゼインを用いずにBSAを用いた場合(即ち、比較例5の場合)には、抗原量が0ngおよび25ngで「±」といった偽陽性を示し、正確な検査結果が得られないことが解る。 以下に、本発明を実施する場合には、上記実施例1〜3に準拠して実施することにより有意性を確認することができるが、その実施例の条件を若干変えて実施した場合でも同様に確認できることを、試験例または実施態様を挙げて詳細に説明するが、これらの試験例または実施態様に限定されるものではない。[実施態様1] 別の実施態様として、上記実施例1における標識物質の保護剤であるPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)に代えて、PEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)とPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−020SH、分子量2000)との混合物を用いて同様にして測定を行なった。上記実施例1におけるPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)のみの場合と略同様の目的を達成することが可能である。[実施態様2] また、上記実施例3におけるPEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−200SH、分子量20000)に代えて、PEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)との混合物を用いて同様にして測定を行なった。上記実施例3におけるPEG−SH(分子量20000)単独の場合と略同様の目的を達成することが可能であることが確認できる。[実施態様3] さらに、上記実施例1における標識物質の保護剤として、PEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−050SH、分子量5000)に代えて、PEG−SH(日本油脂株式会社製、商品名:SUNBRIGHT ME−100SH、分子量10000)を用いて同様にして測定を行なった。上記試験例1の場合と略同様の目的を達成することが可能であることが確認できる。[実施態様4] 次に、保護剤のメルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール誘導体により標識物質を保護処理した溶液中の該保護剤の濃度、保護処理した溶液へ混合されるアミノ酸成分のアルギニン及びタンパク質成分のカゼインの二成分の終濃度の仕様を示す(表2)。・メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール誘導体(A)は、その保護処理後の溶液濃度(重量%)を0.0005、0.005、0.01、0.001、0.001という重量%濃度として標識物質を保護処理した以外は実施例1と同様に実施する。・アルギニン溶液(B)は、その終濃度(重量%)を0.5、0.2、0.02、0、0.1という重量%濃度とした以外は実施例1と同様に実施する。・カゼイン溶液(C)は、その終濃度(重量%)を0.2、5、2、1、0という重量%濃度とした以外は実施例1と同様に実施する。(なお、各成分の重量部=各成分濃度×各成分の配合量×100で計算。) 上記実施態様(調合例)1〜3のような三成分の組成割合(固体換算:重量部)の溶液を使用する場合にあっても、経時変化において安定であり、しかも、標識物質の色彩が非常に鮮明で、測定時間、取り扱い、測定精度が、向上し、実施例1と略同程度の判定結果が達成される。 また、上記実施態様(調合例)4のようにアミノ酸成分のアルギニンが不含の場合にあっては、抗原量が0ngであっても陽性を示し、ブランク発色又は非特異反応が惹起するばかりか、展開時に標識粒子が一部凝集し感度の低下や展開ムラが生じる。さらに、上記実施態様(調合例)5のようにタンパク質成分のカゼインが不含の場合にあっても、抗原量が0ngで偽陽性を示し、非特異反応が惹起して正確な検査結果が得られないばかりか、展開時に標識粒子が一部凝集し感度の低下や展開ムラが生じる。 次に、実施例1における検体希釈液中のグアニジン塩酸塩の濃度の仕様を、実施例5〜9として示す。[実施例5〜9] 実施例5〜9の各実施例における検体処理液中のグアニジン塩酸塩の濃度を、2,5,20,50,100mMとしたこと以外は実施例1と同様に実施し、それぞれ3回の繰り返し実験を行なった。その仕様と結果を表3に示す。 以上により、標識物質の保護剤として、メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール誘導体、標識物質保持部のアミノ酸成分としてL−アルギニン、および標識物質保持部のタンパク質成分としてカゼインという組み合わせを用いことにより、ブランク発色や非特異的反応を抑制し、感度よく正確に病原菌の有無検査が出来ることが見出された。 本発明の検出キットは、ブランク発色や非特異的反応を抑制し、特異的に鼻汁、鼻腔拭い液、咽頭拭い液または痰中の病原菌の有無を高感度かつ正確に検出できるので、病気の迅速な治療ができるという、産業上の利用可能性を有する。 1 試料添加部(サンプルパッド) 2 標識物質保持部 3 クロマトグラフィー媒体 4 判定部 5 吸収部 6 バッキングシート特開平9−80051号公報特開平10−73594号公報特開平2003−215127号公報特開平11−125635号公報特開2011−196996号公報特開2007−322310号公報特開2001−289852号公報特開2007−114049号公報 検体を含む展開液をイムノクロマトグラフ媒体中に添加する工程、標識物質保持部に乾燥保持されている金ナノ粒子により修飾された標識物質により検出対象物を認識させる工程、標識物質と検出対象物の複合体を移動相として展開させる工程、および展開された移動相中の検出対象物を判定部で検出する工程からなるイムノクロマトグラフィー検出方法において、標識物質をメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体で保護し、次いでアルギニン及びカゼインと共に標識物質保持部に乾燥保持させることを特徴とするイムノクロマトグラフィー検出方法。 メルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体が、メルカプト基を1以上有する分子量が1000〜30000のポリエチレングリコール及び/又はその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 メルカプト基を1以上有するポリエチレングリコール及び/又はその誘導体により保護処理した後の溶液濃度が0.0001〜0.05重量%であることを特徴とする請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 クロマトグラフィー媒体に湿潤させる前の標識物質溶液の終濃度として、アルギニンの濃度が液中0.01〜2重量%であり、カゼインの濃度が液中0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 金ナノ粒子の平均粒径が30〜100nmの赤色金ナノ粒子または平均粒径が20〜200nmの青色金ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 検体が、鼻汁、鼻腔拭い液、咽頭拭い液または痰であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 検体希釈液にグアニジンを含有させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 含有させるグアニジンの濃度は、水又は緩衝液中1〜200mMであることを特徴とする請求項7に記載のイムノクロマトグラフィー検出方法。 試料添加部、標識物質保持部、クロマトグラフィー媒体部、検出部および吸収部から実質的に順次構成されており、且つ試料添加部の端部と検出部との間の領域部に、標識物質をメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体により保護し、アルギニン及びカゼインと共に乾燥保持させた標識物質保持部が設けられていることを特徴とするイムノクロマトグラフィー装置。 試料添加部、標識物質保持部、クロマトグラフィー媒体部、検出部および吸収部から実質的に順次構成されており、且つ試料添加部の端部と検出部との間の領域部に標識物質をメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコール及び/又はその誘導体により保護し、アルギニン及びカゼインと共に乾燥保持させた標識物質保持部が設けられているイムノクロマトグラフィー装置からなることを特徴とする検出キット。 【課題】 免疫クロマトグラフィー装置を用いて検出対象物を検出する従来技術に比して、非特異的反応を抑制することができるイムノクロマトグラフィー検出方法、およびそれを用いた、高性能、高感度な免疫クロマトグラフィー装置ならびに迅速、簡便な検査ができる検出キットを提供する。【解決手段】 本発明は、イムノクロマトグラフィー法により試料中の検出対象物を検出するイムノクロマトグラフィー装置であって、標識物質が分子量2000〜20000のメルカプト基を1以上有するポリアルキレングリコールまたはその誘導体により保護され、アルギニン及びカゼインと共に標識物質保持部に乾燥保持されていることを特徴とするイムノクロマトグラフィー装置およびそれを用いる検出方法または検出キットである。本発明のイムノクロマトグラフィー装置を用いる検出方法にあっては、ブランク発色といった非特異的反応を消失することができるため、高性能、高感度な検査が可能である。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る