タイトル: | 再公表特許(A1)_N−フェニルマレイミド化合物およびそれを使用して得られる共重合体組成物 |
出願番号: | 2012057029 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 207/448,C08F 222/40,C08L 55/00,C08L 35/00 |
高木 浩之 JP WO2012128255 20120927 JP2012057029 20120319 N−フェニルマレイミド化合物およびそれを使用して得られる共重合体組成物 株式会社日本触媒 000004628 八田国際特許業務法人 110000671 高木 浩之 JP 2011065547 20110324 C07D 207/448 20060101AFI20140627BHJP C08F 222/40 20060101ALI20140627BHJP C08L 55/00 20060101ALI20140627BHJP C08L 35/00 20060101ALI20140627BHJP JPC07D207/448C08F222/40C08L55/00C08L35/00 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN 再公表特許(A1) 20140724 2013505968 27 4C069 4J002 4J100 4C069AD08 4C069BA08 4C069BC12 4C069CC02 4J002AC071 4J002BC061 4J002BH021 4J002BN151 4J002EP016 4J002GA00 4J002GB00 4J100AB02P 4J100AM02R 4J100AM48Q 4J100CA05 4J100JA50 4J100JA64 本発明は、N−フェニルマレイミド化合物およびそれを使用して得られる共重合体組成物に関する。より詳しくは、マレイミド化合物を製造する際に必然的に発生する化合物の含有量が少ないN−フェニルマレイミド化合物、および、そのN−フェニルマレイミド化合物を単量体の少なくとも一成分として用いる共重合により得られる共重合体組成物に関する。 マレイミド化合物は、樹脂原料、医薬農薬などの原料として有用な化合物であり、特に、ABS樹脂、AS樹脂、AB樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂などのスチレン系樹脂、および、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、フェノール樹脂などの耐熱性向上のために、共重合成分の一つとして多く用いられている。その中でも、N−フェニルマレイミド(以下、PMIともいう)が反応性や耐熱性の点で優れることから、特に広く使用されている。 マレイミド化合物の製造方法については、無水マレイン酸と第一アミン類とを一段階で脱水反応させることにより得る方法(例えば、特許文献1、2)、無水マレイン酸と第一アミンとからマレアミン酸類を生成させ、このマレアミン酸類の脱水閉環イミド化反応により得る方法(例えば、特許文献3〜6)、対応するマレアミン酸モノエステル類の閉環イミド化反応により得る方法(例えば、特許文献7〜9)など、従来から多くの方法が知られている。これらの方法のうち、無水マレイン酸と第一アミン類とから一段階で得る方法では、未だ収率が低いため生産性が悪いという問題、また、マレアミン酸モノエステル類より得る方法では、閉環イミド化反応により発生するアルコールが製品中に残存混入するといった問題などがあるため、工業的には一般にマレアミン酸類の脱水閉環イミド化反応により得る方法が行われている。なお、N−フェニルマレイミドを製造する際の第一アミン類はアニリンであり、マレアミン酸類はN−フェニルマレアミン酸である。 ところで、上記の方法によりN−フェニルマレイミドを製造するにあたっては、中間体としてN−フェニルマレアミン酸(以下、PMAともいう)の生成を経由することになるが、このPMAが加水分解を受けるとアニリンとマレイン酸が生成する。生成した(または原料に由来する)アニリンは、目的生成物であるPMIと反応して、2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド(以下、APSIともいう)を生成し、このAPSIはさらに無水マレイン酸と反応して、N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(以下、PPMAともいう)を生成し、さらにこのPPMAが分解することによってPMIを生成することが知られている。また、上記PMAは、異性化により、N−フェニルフマルアミン酸(以下、PFAともいう)を生成することも知られている。上述したような樹脂製品を得るための共重合成分の一つとして、これら中間体や副生成物が不純物として存在するPMIを用いた場合、得られる共重合体が着色あるいは変色したり、銀条やフィシュアイなどの現象が生じることによる共重合体の品質(耐熱性、強度)が低下したりするなどの問題点があった。 このような問題を解決するために、例えば特許文献3には、閉環イミド化後の反応混合物をマレイミド類を含む有機溶媒層と触媒層とに分離し、該マレイミド類含有有機溶媒層を70℃以上の温度で水洗処理したのち有機溶媒層と水層とを分離することにより、マレイミド類中の酸成分(PMA、無水マレイン酸およびフマル酸)を低減する方法が開示されている。また、例えば特許文献10には、水と共沸蒸留可能な有機溶媒、融点が150℃以上でかつN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒の存在下で、第一アミン類と無水マレイン酸を投与し、100〜140℃で脱水閉環反応を行なうことにより、純度95重量%以上のN−置換マレイミドを製造する方法が開示されている。 さらに、例えば特許文献11には、マレイミド化合物中の第一アミンと2−アミノ−N−置換スクシンイミド化合物の含有量を特定量以下にして変色を防止する貯蔵安定化方法において、2−アミノ−N−置換スクシンイミド化合物量の調整方法として、反応時の無水マレイン酸と第一アミンのモル比を制御するか、反応後半に無水マレイン酸を添加して2−アミノ−N−置換スクシンイミド化合物を分解することで、2−アミノ−N−置換スクシンイミド化合物の生成を抑制できることが開示されている。特開平5−25129号公報米国特許出願公開第2005/182260号明細書特開平3−56463号公報特開平4−243864号公報特開平4−295462号公報特開平5−140095号公報特開平4−221365号公報特開平4−290868号公報特開平6−184105号公報特開2009−126866号公報特開平6−135931号公報 しかしながら、これらの方法で得られたN−フェニルマレイミドを使用しても、上述したような樹脂製品における問題点を解消するには、まだ不十分であることが多かった。 上述したように、N−フェニルマレイミドを共重合単量体の少なくとも一成分として用いる共重合体において、品質の向上の点で必ずしも満足できてはいないのが現状である。この原因としては、N−フェニルマレイミドに含有される不純物に由来すると想定されるため、それらの含有量を所望の程度まで低減することが必要となる。 すなわち、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、得られる共重合体の品質に影響を及ぼすN−フェニルマレイミド化合物に含有される不純物の種類及び含有量を同定することである。 本発明の他の目的は、特定の不純物を特定量以下で含むN−フェニルマレイミド化合物を提供することである。 本発明のさらなる他の目的は、特定量以下の不純物を含有するN−フェニルマレイミド化合物を共重合単量体の少なくとも一成分として用いることにより、得られる共重合体の品質が向上した共重合体組成物を提供することにある。 本発明者は上記課題を解決するために、共重合単量体の少なくとも一成分として用いるN−フェニルマレイミド化合物中の不純物の影響について鋭意検討を加えた。その結果、特定の不純物、具体的にはN−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)の含有量を0.1重量%以下におよび/またはN−フェニルフマルアミン酸(PFA)の含有量を0.3重量%以下にすることにより、そのN−フェニルマレイミド化合物を用いて得られる共重合体の品質が改善できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち、上記諸目的は、N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を0.1重量%以下および/またはN−フェニルフマルアミン酸(PFA)を0.3重量%以下、含有する、N−フェニルマレイミド化合物によって達成できる。 上記諸目的は、上記N−フェニルマレイミド化合物および該N−フェニルマレイミド化合物と共重合可能な一種以上の他の単量体または樹脂を共重合して得られる共重合体組成物によっても達成できる。 本発明によれば、不純物含有量が低減したN−フェニルマレイミド化合物が得られる。このようなN−フェニルマレイミド化合物を用いると、得られる共重合体の着色、銀条、フィシュアイなどの現象が低減され、該共重合体の品質(例えば、外観、耐熱性、強度)が向上する。本発明により得られる共重合体組成物は、外観、耐熱性、強度に優れることから、耐熱性樹脂として種々の分野で多岐にわたって好適に使用することができる。更に、特にAB樹脂、ABS樹脂またはAS樹脂の変性耐熱性樹脂として、自動車分野や家電分野をはじめとする耐熱性樹脂を使用する各種用途に対して好適に用いることができる。 本発明の第一は、N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を0.1重量%以下および/またはN−フェニルフマルアミン酸(PFA)を0.3重量%以下、含有する、N−フェニルマレイミド化合物(以下では、単にN−フェニルマレイミドまたはPMIとも称する)に関する。N−フェニルマレイミドを工業的に製造する上で、他の物質を全く含まない「完全に純粋な」N−フェニルマレイミドを得ることは非常に困難であり、種々の物質が不純物として混在したものとして得られるのが一般的である。そこで、本発明では、N−フェニルマレイミド中に混在する物質の中でも、特に、種々の用途へN−フェニルマレイミドを使用する際に問題を生じる原因となる物質およびその量(臨界量)を初めて特定したのである。 なお、本明細書において、「N−フェニルマレイミド化合物」とは、実質的にN−フェニルマレイミドから構成されるものを意味する。具体的には、本発明に係るN−フェニルマレイミド化合物は、N−フェニルマレイミドの純度が96重量%以上のものを意味する。本発明に係るN−フェニルマレイミド化合物は、N−フェニルマレイミドの純度が97重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましく、99重量%以上であることが特に好ましい。このため、本発明に係るN−フェニルマレイミド化合物は、純度が96重量%以上のN−フェニルマレイミド製品、N−フェニルマレイミド粗製物、N−フェニルマレイミド精製品、N−フェニルマレイミド原材料、N−フェニルマレイミド原料、N−フェニルマレイミド材料など、種々の形態を包含する。なお、本願明細書において、「質量」と「重量」、「質量%」と「重量%」、および「質量部」と「重量部」は同義語である。 以下、本発明を詳細に説明する。 N−フェニルマレイミドに代表されるN−置換マレイミド化合物類を製造する方法としては、上述した先行技術文献等に記載されているような方法で製造することができ、特に限定されない。具体的には、(a)無水マレイン酸と第一アミン類とを一段階で脱水反応させることにより得る方法;(b)無水マレイン酸と第一アミン類とからマレアミン酸類を生成させ、このマレアミン酸類の脱水閉環イミド化反応により得る方法;(c)対応するマレアミン酸モノエステル類の閉環イミド化反応により得る方法などがある。これらのうち、(b)の方法が好ましく、即ち、例えば、N−フェニルマレイミドを製造する方法としては、無水マレイン酸とアニリンを原料として反応させて、N−フェニルマレアミン酸(PMA)を生成させ、このN−フェニルマレアミン酸を脱水閉環イミド化反応させる方法が特に好ましい。 上記(b)の方法によりN−フェニルマレイミドを製造するにあたっては、中間体としてのN−フェニルマレアミン酸(PMA)の加水分解により、アニリンとマレイン酸が生成する。この生成したアニリン、または原料に由来するアニリンが、目的生成物であるN−フェニルマレイミドと反応して、2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド(APSI)を生成する。また、このAPSIはさらに、原料に由来する無水マレイン酸と反応して、N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を生成する。さらに、N−フェニルマレアミン酸(PMA)の異性化により、N−フェニルフマルアミン酸(PFA)を生成する(下記反応式参照)。 ここで、本発明でいうところのN−フェニルマレイミド(PMI)とは、次式に示される化学構造を有する化合物である。 また、本発明でいうところのN−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)とは、次式に示される化学構造を有する化合物である。 また、本発明でいうところのN−フェニルフマルアミン酸(PFA)とは、次式に示される化学構造を有する化合物である。 また、本発明でいうところのN−フェニルマレアミン酸(PMA)とは、次式に示される化学構造を有する化合物である。 また、本発明でいうところの2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド(APSI)とは、次式に示される化学構造を有する化合物である。 上記したように、中間体のPMAは、脱水閉環イミド化反応を経て目的生成物であるPMIを得るか、または、加水分解反応を受けてアニリンとマレイン酸を生成するもしくは異性化によりPFAを副生することになるが、必ずしもその全量がいずれかの反応を受けて完全に変化するということはなく、PMI中に不純物として存在することになる。また、PMIとアニリンとの反応により生成したAPSIは、製造過程において分解して再びPMIに戻ることは容易ではないため、一般には、反応系にさらに過剰の無水マレイン酸を導入することにより、一旦、APSIに比べてPMIへの分解反応が進みやすいとされているPPMAを得、これを経由してPMIを得る手法が採られることが多い。しかしながら、ここでのAPSIからPPMAへの反応、および、PPMAからPMIへの分解反応についても、必ずしもそれらの全量が完全に変化するということはないため、これらAPSIおよびPPMAについてもPMI中に不純物として存在することになる。また、このPMAの異性化により、N−フェニルフマルアミン酸(PFA)も生成するが、このPFAもまた、製造過程においてその全量が再異性化してPMIに戻ることは容易ではないため、PMI中に不純物として存在することになる。 このように、本発明に係るN−フェニルマレイミド化合物(PMI)には、不純物としてPPMA、PFA、PMAおよびAPSIが含まれることになる。これら不純物を含有するPMIを共重合単量体の一成分として使用すると、外観、耐熱性、強度等の品質が低下する恐れがあることは上述したとおりであり、これらの含有量をできるだけ低減させることが望まれる。 本発明において上記不純物のうち、特にPPMA及びPFAの含有量が、N−フェニルマレイミド化合物を用いて得られる共重合体の品質(例えば、外観、耐熱性、強度等)に影響を与えること、また、上記共重合体の品質に影響を与えるこれらの含有量の上限がを初めて見出した。即ち、本発明のN−フェニルマレイミド化合物は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、PPMAを0.1重量%以下またはPFAを0.3重量%以下にすることを特徴とする。なお、N−フェニルマレイミド化合物中の上記PPMAまたはPFAの含有量は、少なくとも一方の含有量を満たせばよいが、上記双方の含有量を満たすことが好ましい。 そのため、本発明においては、N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を0.1重量%以下および/またはN−フェニルフマルアミン酸(PFA)を0.3重量%以下含有するN−フェニルマレイミド(PMI)を共重合単量体の少なくとも一成分として用いる。 N−フェニルマレイミド化合物中のPPMAの含有量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.1重量%以下である。ここで、上記PPMAの含有量が0.1重量%を超えるN−フェニルマレイミド化合物を共重合単量体の一成分として用いると、製造される共重合体の外観、耐熱性、強度等の品質が低下し、好ましくない。N−フェニルマレイミド化合物中のPPMAの含有量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.09重量%以下であることが好ましく、0.08重量%以下であることがより好ましく、0.06重量%以下であることがさらに好ましく、0.03重量%以下であることがさらにより好ましく、0.01重量%以下であることが特に好ましい。なお、N−フェニルマレイミド化合物中のPPMAの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.005重量%以上であることが好ましい。なお、本明細書において、PPMAの含有量は、下記実施例で測定された値である。 また、N−フェニルマレイミド化合物中のPFAの含有量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.3重量%以下である。ここで、上記PFAの含有量が0.3重量%を超えるN−フェニルマレイミド化合物を共重合単量体の一成分として用いると、製造される共重合体では、外観、耐熱性、強度等の品質が低下し、好ましくない。N−フェニルマレイミド化合物中のPFAの含有量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.25重量%以下、0.2重量%以下、0.15重量%以下、0.1重量%以下の順で好ましい。なお、N−フェニルマレイミド化合物中のPFAの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.01重量%以上であることが好ましい。なお、本明細書において、PFAの含有量は、下記実施例で測定された値である。 上記に加えて、PMA及びAPSIもN−フェニルマレイミド化合物を用いて得られる共重合体の品質(例えば、外観、耐熱性、強度等)に影響を与えること、また、上記共重合体の品質に影響を与えるこれらの含有量の上限が見出された。即ち、本発明のN−フェニルマレイミド化合物は、PMA及びAPSIを含有するが、この際のN−フェニルマレイミド化合物中のPMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.5重量%以下であることが好ましい。ここで、上記PMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量が0.5重量%を超えるN−フェニルマレイミド化合物を共重合単量体の一成分として用いると、製造される共重合体では、外観、耐熱性、強度等の品質が低下し好ましくない。N−フェニルマレイミド化合物中のPMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下の順で好ましい。なお、N−フェニルマレイミド化合物中のPMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.1重量%以上であることが好ましい。 なお、N−フェニルマレイミド化合物中のPMA、APSI及びPPMAの含有総量は、上記を満たしていれば特に制限されない。具体的には、N−フェニルマレイミド化合物中のPMA、APSI及びPPMAの含有総量は、0.35重量%以下、0.3重量%以下、0.25重量%、0.2重量%以下、0.15重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.03重量%以下の順で好ましい。なお、N−フェニルマレイミド化合物中のPMA、APSI及びPPMAの含有総量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.1重量%以上であることが好ましい。 ここで、N−フェニルマレイミド化合物中のPMAの含有量は、上記を満たすものであれば特に制限されない。具体的には、N−フェニルマレイミド化合物中のPMAの含有量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.2重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましく、0.07重量%以下であることがさらにより好ましく、0.05重量%以下であることがさらに好ましく、0.02重量%以下であることが特に好ましい。なお、N−フェニルマレイミド化合物中のPMAの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.005重量%以上であることが好ましい。なお、本明細書において、PMAの含有量は、下記実施例で測定された値である。 また、N−フェニルマレイミド化合物中のAPSIの含有量もまた、上記を満たすものであれば特に制限されない。具体的には、N−フェニルマレイミド化合物中のAPSIの含有量は、N−フェニルマレイミド化合物全量に対して、0.2重量%以下、0.15重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.03重量%以下、0.01重量%以下の順で好ましい。なお、N−フェニルマレイミド化合物中のAPSIの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.02重量%以上であることが好ましい。なお、本明細書において、APSIの含有量は、下記実施例で測定された値である。 これらの不純物を上述したような範囲にまで低減したPMIを共重合単量体の一成分として使用することにより、上述したような共重合体、すなわち、樹脂製品の品質上の問題点を改善することができる。なお、これら上述したような不純物を含んでなるPMIの純度としては、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、98.5重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.5重量%超、99.7重量%以上、99.8重量%以上の順で好ましい。なお、本明細書において、PMIの純度は、下記実施例で測定された値である。 N−フェニルマレイミドに代表されるN−置換マレイミド化合物類を製造する方法としては、上述したとおり、特に限定されず、上述した先行技術文献等に記載されているような方法等の公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。具体的には、(a)無水マレイン酸と第一アミン類とを一段階で脱水反応させることにより得る方法;(b)無水マレイン酸と第一アミン類とからマレアミン酸類を生成させ、このマレアミン酸類の脱水閉環イミド化反応により得る方法;(c)対応するマレアミン酸モノエステル類の閉環イミド化反応により得る方法などがある。これらのうち、(b)の方法が好ましく、即ち、例えば、N−フェニルマレイミドを製造する方法としては、無水マレイン酸とアニリンを原料として反応させて、N−フェニルマレアミン酸(PMA)を生成させ、このN−フェニルマレアミン酸を脱水閉環イミド化反応させる方法が特に好ましい。以下では、上記方法(b)の好ましい実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記形態に限定されない。 本発明に係るPMIの製造方法としては、まず、無水マレイン酸とアニリンとからN−フェニルマレアミン酸を得、これを閉環イミド化(脱水閉環イミド化反応)させることにより、PMIを製造する。より詳細には、無水マレイン酸にアニリンを加えて、N−フェニルマレアミン酸を得る。次に、得られたN−フェニルマレアミン酸を有機溶媒中で酸触媒の存在下で加熱し、生成水を有機溶媒との混合物として系外に留去しつつ、閉環イミド化反応させることによりPMIを得る。この場合、反応系に加えたアニリン全量に対し、反応系に加える無水マレイン酸全量のモル比が1を越え2以下、好ましくは1を越え1.3以下で行なわれる。 また、上記無水マレイン酸とアニリンとからN−フェニルマレアミン酸を得る工程において、無水マレイン酸またはアニリンは、そのままの形態で使用されてもよいが、有機溶媒に溶解した溶液の形態で使用することが好ましい。なお、無水マレイン酸またはアニリンを有機溶媒に溶解した溶液の形態で使用した場合には、次のN−フェニルマレアミン酸の脱水閉環イミド化反応は、そのまま溶液(有機溶媒)中で行うことができる。 ここで(PMIを製造する際に)使用されうる有機溶媒は、特に制限されないが、水に不溶性または不混和性でかつ不活性である(反応に関与しない)溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、沸点50〜120℃の石油留分、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、メシチレン、tert−ブチルベンゼン、プソイドクメン、トリメチルヘキサン、オクタン、テトラクロルエタン、ノナン、クロルベンゼン、エチルシクロヘキサン、沸点120〜170℃の石油留分、m−ジクロルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、p−ジクロルベンゼン、デカン、p−シメン、o−ジクロルベンゼン、ブチルベンゼン、デカハイドロナフタリン、テトラハイドロナフタリン、ドデカン、ナフタリン、シクロヘキシルベンゼン、沸点170〜250℃の石油留分等がある。上記有機溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。 上記有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、反応を円滑に行ないかつ経済的条件を満足させる点から、原料である無水マレイン酸とアニリンとの総量に対して、0.5〜20倍量(重量)、好ましくは1〜7倍量(重量)使用される。また、PMIの溶解度、価格、取扱いやすさ等も考慮しながら反応条件に合った沸点を有するものが選ばれる。さらに反応終了後のPMIと溶媒との分離を考えると、低沸点の溶媒を使用し加圧下で反応せしめた方が有利な場合もある。ここで、無水マレイン酸およびアニリンは、同じ有機溶媒に溶解されてもあるいは異なる有機溶媒に溶解されてもよいが、同じ有機溶媒に溶解されることが好ましい。また、無水マレイン酸またはアニリンを有機溶媒に溶解した溶液の形態で使用する場合の無水マレイン酸またはアニリンの濃度は、無水マレイン酸またはアニリンが溶解できる濃度であれば特に制限されない。具体的には、無水マレイン酸100gに対して、有機溶媒0〜500g、より好ましくは10〜200g添加・溶解されることが好ましい。また、アニリン100gに対して、有機溶媒0〜500g、より好ましくは5〜200g添加・溶解されることが好ましい。 また、無水マレイン酸にアニリンを加える際の条件は特に制限されない。例えば、添加温度は、およそ50〜140℃が好ましい。また、添加時間は、およそ10〜120分が好ましい。 上記のようにして得られたN−フェニルマレアミン酸は、有機溶媒中で、好ましくは酸触媒の存在下で加熱され、生成水を有機溶媒との混合物として系外に留去しつつ、閉環イミド化(脱水閉環イミド化反応)を行い、所望のN−フェニルマレイミド(PMI)を得る。 ここで、有機溶媒は、上記と同様の有機溶媒が使用できる。また、無水マレイン酸またはアニリンを有機溶媒に溶解した溶液の形態で使用した場合には、次のN−フェニルマレアミン酸の脱水閉環イミド化反応は、そのまま溶液(有機溶媒)中で行うことができる。 また、酸触媒としては、硫酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸などの一塩基酸あるいは多塩基酸および/またはPMI製造時の原料であるアニリンと該酸とを中和反応させることによってえられたアミン塩が用いられる。これら触媒の使用量は、原料である無水マレイン酸および/またはアニリンに対して1〜200モル%、好ましくは10〜100モル%の範囲である。また触媒としての酸のうち一部ないし全部がアミンによって中和されていてもよい。 また、これら触媒は固体担体に担持されていてもよい。固体の担体としては、天然鉱物類、例えば、カオリン類、クレー、滑石、チョーク、石英、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土等;合成鉱物、例えば、高度に分散した珪酸、アルミナ、珪酸塩、活性炭、石こう、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化ジルコニウム等;天然の岩石、例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石、ドロマイト等が用いられる。これらの無機担体は粒状物あるいはそれを造粒、分級することによって得られる粒状物あるいはハニカム状などの形で用いられる。また、有機性の担体も使用することも可能で、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、フェノール樹脂などの粒状担体も使用することができる。担体がケイソウ土、シリカゲルなどのように多孔質である場合には特に良好な結果を得ることができる。例えば、市販品の例として、ケイソウ土としてはラジオライト(商品名;昭和化学工業株式会社製)を、また、シリカゲルとしてはキャリアクト(商品名;富士シリシア化学株式会社製)、サイロイド(商品名;富士シリシア化学株式会社製)、マイクロビーズシリカゲル(商品名;富士シリシア化学株式会社製)、ワコーゲル(商品名;和光純薬工業株式会社製)、などをあげることができる。 また場合により、金属含有化合物や安定剤を反応系に共存させて反応させることもできる。この時使用される金属含有化合物としては、特に制限されないが、亜鉛、クロム、パラジウム、コバルト、ニッケル、鉄およびアルミニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物および硫酸塩等が挙げられる。これらのうち、特に有効であるのは、酢酸亜鉛である。これらの使用量は原料である無水マレイン酸および/またはアニリンに対して、金属として0.005〜0.5モル%であり、好ましくは0.01〜0.1モル%である。 また、安定剤として、メトキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、フェノチアジン、ハイドロキノン、アルキル化ジフェニルアミン類、メチレンブルー、tert−ブチルカテコール、tert−ブチルハイドロキノン、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル類、メルカプトベンズイミダゾール、トリフェニルホスファイト、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類などが用いられる。これら安定剤の効果は脱水閉環イミド化反応により生成したPMIを当該イミド化反応の高温下においても変質することなく安定に存在せしめる役割を果している。その添加量は、特に制限されないが、原料である無水マレイン酸および/またはアニリンに対して0.001〜0.5モル%である。ここで、このような添加量であれば、上記した安定化効果を十分発揮でき、また、製品中への混入の問題も回避できる。 上記脱水閉環イミド化反応条件は、N−フェニルマレアミン酸の閉環イミド化反応が進行する条件であれば特に制限されない。具体的には、脱水閉環イミド化反応温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは20〜140℃、特に好ましくは30〜120℃である。また、脱水閉環イミド化反応時間は、好ましくは10〜200分、より好ましくは15〜120分間である。このような反応条件であれば、N−フェニルマレアミン酸の閉環イミド化反応が効率よく進行して、N−フェニルマレイミド(PMI)を効率よく得ることができる。 また、上記脱水閉環イミド化反応の途中に無水マレイン酸の一部を追加添加することも可能である。無水マレイン酸を追加添加することにより、得られるPMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を低減できる。ここで、無水マレイン酸の追加添加量は、特に制限されないが、初期反応(N−フェニルマレアミン酸を得る)工程において使用される無水マレイン酸100gに対して、5〜50gであることが好ましく、10〜30gであることがより好ましい。このような量であれば、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を有効に低減できる。この際、無水マレイン酸は、そのままの形態で使用されてもよいが、有機溶媒に溶解した溶液の形態で使用することが好ましい。後者の場合に使用できる有機溶媒は、特に制限されないが、上記有機溶媒と同様のものが使用できる。好ましくは、初期反応工程で無水マレイン酸を溶解したのと同じ有機溶媒を使用することが好ましい。 追加添加する無水マレイン酸を有機溶媒に溶解した溶液の形態で使用する場合の無水マレイン酸の濃度は、無水マレイン酸が溶解できる濃度であれば特に制限されない。具体的には、無水マレイン酸100gに対して有機溶媒0〜500g、より好ましくは10〜200g添加・溶解されることが好ましい。このような量であれば、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を有効に低減できる。 無水マレイン酸(またはその溶液)を追加添加する時期は、特に制限されない。具体的には、N−フェニルマレアミン酸を触媒と混合した時(反応開始時)から、5〜120分経過後であることが好ましく、10〜60分経過後であることがより好ましい。このような時期であれば、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を有効に低減できる。なお、無水マレイン酸(またはその溶液)の追加添加は、一括して行われてもあるいは複数回(例えば、2〜5回)に分けて行われてもよいが、一括して行われることが好ましい。 このようにして得られるPMIは、そのままでも本発明の共重合体の製造に使用することはできるが、さらに精製工程を加えることによって、本発明に係る、高純度であって、PPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量の少ないPMIを得ることができるので好ましい。精製方法については、上述した特許文献に記載された方法など、従来より知られている精製方法によっても得ることはできるが、その精製工程を繰り返したり、精製条件をより厳しくすることによって、長期安定的に効率よく得ることができるので好ましい。 以下に、本発明に係る精製方法の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明は、下記形態に限定されない。すなわち、例えば、上記したようにして製造されたPMIを含有する反応液を、触媒から分離した(分離工程)後、50℃以上の水で洗浄する工程(水洗工程)を3回以上繰り返すことが好ましい。上記分離工程において、PMIを含有する反応液と触媒との分離は、特に制限されないが、例えば、静置分離、あるいはサイクロン、遠心分離、シックナーなど公知の方法いずれも用いることができる。 水洗工程において、水洗処理に用いられる水は下水、純水、上水に限らず弱アルカリ性、弱酸性でもかまわない。使用される水の量は、特に制限されず、液濃度などによっても異なる。具体的には、水を、原料として用いたアニリンに対して、重量比で、0.5倍以上、より好ましくは1〜5倍使用する。このような量の水を使用することによって、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を十分低減できる。 また、水洗工程では、50℃以上の水で洗浄することが好ましい。ここで、水の温度が50℃未満であるまたは水洗水量が不足(例えば、水洗回数が2回以下)である場合には、反応中に生じた不溶性の物質を十分分解し水に可溶性にできず、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を十分低減できない。水の温度は、55℃を超えて95℃未満であることが好ましく、57〜93℃であることがより好ましく、60〜90℃であることが特に好ましい。なお、触媒を除去後のPMIを含む反応液の温度と上記水の温度との差が大きい場合には、触媒を除去した後のPMIを含む反応液を添加する水の温度と同じ位(好ましくは水の温度±5℃、より好ましくは水の温度±3℃)にまで冷却した後、水洗工程を行うことが好ましい。このような条件であれば、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を十分低減できる。 水洗方法は、特に制限されないが、触媒を除去後のPMIを含む反応液に上記水を添加・撹拌する方法が好ましく使用できる。水洗処理は、回分式、連続式いずれの方法によっても実施できる。 所定温度の水を添加した後は、PMIを含む層(有機層)と水層との混合物を静置させることにより、2層は分液する。有機層から水層を分離する。PMIを含有する反応液に水を添加してから有機層を水層と分離するまでを、水洗工程とする。この水洗工程において、例えば回分式の場合における水洗回数(合計回数)は、特に制限されないが、3〜6回であることが好ましく、4〜5回であることがより好ましい。このような条件であれば、PMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量を十分低減できる。 上記水洗工程後、有機層から有機溶媒を留出させる。ここで、有機溶媒を留出する前の有機層中の水分量を適切に調節することが好ましい。具体的には、有機溶媒を留出する前の有機層中の水分量が、当該有機層(反応液層)中に含まれるPMI(粗製PMI)の含有量に対して、1重量%未満であることが好ましく、0.05〜0.99重量%がより好ましく、0.5〜0.98重量%がさらにより好ましい。これにより、ことによりPMI中のPPMA及びPFA、さらにはAPSIおよびPMAの含有量をより低減させたN−フェニルマレイミドを得ることができる。なお、本明細書において、「有機溶媒を留出する前の有機層中の水分量」とは、反応液から溶媒を留去した後の残留分に対する水分量として算出される。 上記方法によって、0.1重量%以下のN−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)および/または0.3重量%以下のN−フェニルフマルアミン酸(PFA)を含有する、N−フェニルマレイミド化合物が得られる。また、このN−フェニルマレイミド化合物は、PPMA、PFA、N−フェニルマレアミン酸(PMA)および2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド(APSI)の含有総量が0.5重量%以下でありうる。上記したように、本発明のN−フェニルマレイミド化合物はこれらの不純物含量が非常に少ないため、このN−フェニルマレイミド化合物を用いて得られる共重合体は、外観、耐熱性、強度等の品質が向上できる。 すなわち、本発明の第二は、本発明のN−フェニルマレイミド化合物および該N−フェニルマレイミド化合物と共重合可能な一種以上の他の単量体または樹脂を共重合して得られる共重合体組成物に関する。 本発明の共重合体組成物は、不純物(PPMA、PFA、さらにはPMA、APSI)の含有量が非常に少ないPMIを用いて製造されるため、これらの不純物含有量もまた低い。 具体的には、本発明の共重合体組成物中の、PPMAの含有量は、共重合体組成物に対して、0.05重量%以下であることが好ましく、0.03重量%以下であることがより好ましく、0.02重量%以下であることがより好ましく、0.02重量%未満であることがより好ましい。ここで、上記PPMAの含有量であれば、得られる共重合体組成物は優れた外観、耐熱性、強度等の品質を発揮する。なお、共重合体組成物中のPPMAの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.001重量%以上であることが好ましく、0.002重量%以上であることがより好ましい。 また、本発明の共重合体組成物中の、PFAの含有量は、共重合体組成物に対して、0.15重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましく、0.07重量%以下であることがさらにより好ましく、0.05重量%以下であることが特に好ましい。ここで、上記PFAの含有量であれば、得られる共重合体組成物は優れた外観、耐熱性、強度等の品質を発揮する。なお共重合体組成物中のPFAの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.002重量%以上であることが好ましく、0.005重量%以上であることがより好ましい。 本発明の共重合体組成物中の、PMAの含有量は、共重合体組成物に対して、0.1重量%以下であることが好ましく、0.08重量%以下であることがより好ましく、0.05重量%以下であることがさらにより好ましく、0.01重量%以下であることが特に好ましい。ここで、上記PMAの含有量であれば、得られる共重合体組成物は優れた外観、耐熱性、強度等の品質を発揮する。なお、共重合体組成物中のPMAの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.002重量%以上であることが好ましく、0.005重量%以上であることがより好ましい。 本発明の共重合体組成物中の、APSIの含有量は、共重合体組成物に対して、0.1重量%以下であることが好ましく、0.06重量%以下であることがより好ましく、0.04重量%以下であることがさらにより好ましく、0.025重量%以下であることがより好ましい。ここで、上記APSIの含有量であれば、得られる共重合体組成物は優れた外観、耐熱性、強度等の品質を発揮する。なお、共重合体組成物中のAPSIの含有量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.002重量%以上であることが好ましく、0.005重量%以上であることがより好ましい。 本発明の共重合体組成物中の、PMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量は、共重合体組成物に対して、0.25重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以下であることがより好ましく、0.15重量%以下であることがさらにより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましく、0.05重量%以下であることが特に好ましい。ここで、上記PMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量であれば、得られる共重合体組成物は優れた外観、耐熱性、強度等の品質を発揮する。なお、共重合体組成物中のPMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量の下限は、少ないほど(即ち、0重量%)好ましいが、産業上の観点から、通常、0重量%超であり、0.005重量%以上であることが好ましい。 本発明の共重合体組成物は、N−フェニルマレイミド化合物(PMI)および該N−フェニルマレイミド化合物と共重合可能な一種以上の他の単量体または樹脂を共重合して得られる。ここで、製造原料として使用されるPMI以外の単量体(他の単量体)は、PMIと共重合可能であれば特に制限されない。具体的には、他の単量体としては、マレイミド化合物(N−フェニルマレイミドを除く)、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、不飽和ニトリル類、オレフイン類、ジエン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、フッ化ビニル類、プロピオン酸アリル等の飽和脂肪酸モノカルボン酸のアリルエステル類または(メタ)アクリルエステル類、多価(メタ)アクリレート類、多価アリレート類、グリシジル化合物、不飽和カルボン酸類等を挙げることができる。これら例示の化合物のうち、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、不飽和ニトリル類、が特に好ましい。なお、上記他の単量体は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。 マレイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド;N−ベンジルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド;N−ニトロフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミド、N−ジメチルフェニルマレイミド、N−ジクロルフェニルマレイミド、N−ブロムフェニルマレイミド、N−ジブロムフェニルマレイミド、N−トリクロルフェニルマレイミド、N−トリブロムフェニルマレイミド等のニトロ基、アルコキシル基、アルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等が置換してなるN−置換フェニルマレイミドなどが挙げられる。入手の容易性や得られる共重合体の物性等を総合的に考慮して、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが好適に使用される。なお、これらのマレイミド化合物を複数種類組み合わせて用いることもできる。 (メタ)アクリル酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、エステル基として、炭素数1〜18のアルキル基、シクロヘキシル基、およびベンジル基のうちのいずれかを有する(メタ)アクリル酸エステルが好適である。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。なお、これらの(メタ)アクリル酸エステルを複数種類組み合わせて用いることもできる。 芳香族ビニル類としては、特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、イソプロペニルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレンが特に好ましい。不飽和ニトリル類としては、特に制限されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等を挙げることができる。 オレフイン類としては、特に制限されないが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン等を挙げることができる。ジエン類としては、特に制限されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン等を挙げることができる。ビニルエーテル類としては、特に制限されないが、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等を挙げることができる。 ビニルエステル類としては、特に制限されないが、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができる。フッ化ビニル類としては、特に制限されないが、例えば、フッ化ビニリデン等を挙げることができる。多価(メタ)アクリレート類としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジもしくはトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。 多価アリレート類としては、特に制限されないが、例えば、トリルイソシアヌレート等を挙げることができる。グリシジル化合物としては、特に制限されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。不飽和カルボン酸類としては、特に制限されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、あるいはそれらの半エステル化物や無水物を挙げることができる。 また、同様にして製造原料として使用される樹脂は、PMIと共重合可能であれば特に制限されない。具体的には、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、AB樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、ACS樹脂(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらのうち、AB樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ブタジエンゴムが好ましい。なお、上記樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてよい。または、上記1種以上の樹脂は、上記1種以上の他の単量体と組み合わせて使用されてもよい。 上記他の単量体及び樹脂の配合量(他の単量体及び樹脂の合計配合量)は、50〜95重量%であることが好ましく、60〜90重量%であることがさらに好ましい。50重量%未満の場合は、得られる共重合体の溶融時の粘度が高くなり、成形加工性の面で不利になる傾向となる。また95重量%を超えると、耐熱性の向上が認められにくい傾向となる。すなわち、本発明に係る共重合体組成物を製造するにあたって、全共重合原料中に占めるN−フェニルマレイミド化合物の配合量は、5〜50重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがさらに好ましい。このような量であれば、N−フェニルマレイミドによる耐熱性を十分向上できる。 また、これら単量体と共重合可能な単量体としては、例えばフマロニトリル、イソプロピルフマレート、アセナフチレン等を挙げることができる。かかる共重合可能な単量体は任意添加成分であって、本発明においては製造原料として使用してもしなくてもよいが、使用する場合は、その配合量としては0〜30重量%の範囲内で使用することができる。 (共)重合体の分子量を制御するために連鎖移動剤を用いることができる。ここで、連鎖移動剤は特に制限されないが、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンやα−スチレンダイマー等が挙げられる。さらに、得られる共重合体樹脂の用途や要求性能に合わせて、紫外線吸収剤や安定剤などの各種添加剤を加えることもできる。 本発明のPMIを一種以上の他の単量体または樹脂と共重合する際には、重合開始剤を使用できる。ここで使用されうる重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、有機過酸化物系重合開始剤やアゾ系重合開始剤が好適に使用できる。有機過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシオクトエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−tert−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等が挙げられる。なお重合開始剤としては、半減期温度(1時間半減期温度)が60〜140℃程度のものが好ましく、80℃から120℃程度のものがより好ましい。これらの重合開始剤は単独で使用してもよく、複数種類を組み合わせて用いることもできる。 共重合反応の方法としては、予め原料単量体(PMI、他の単量体および/または樹脂)、重合開始剤、および必要であれば連鎖移動剤、分散剤等の重合助剤等と同時に、必要であればジビニルビフェニル等の多官能性芳香族単量体を所定量添加して、懸濁、乳化、塊状等のバッチ重合方法を採用してもよい。あるいは、原料単量体等にジビニルビフェニル等の多官能性芳香族単量体を所定量溶解したものを、連続的に重合系にフィードして、塊状重合、溶液重合等の連続重合方法を採用してもよい。例えば、塊状のバッチ重合や塊状もしくは溶液の連続重合で重合開始剤を使用しない熱重合だけの場合、生産性向上の目的から130℃以上の重合温度が好ましい。しかしながら、このような方法で重合を行なうとオリゴマーの副生の恐れがあるため、好ましくは、有機過酸化物系やアゾ系等の重合開始剤を原料に対し50〜2000ppm添加し、重合温度を下げて重合するのが好ましい。 この場合の重合温度は、特に限定されるものではないが、重合開始剤の1時間半減期温度(T1)よりも5〜20℃程度高い温度の70〜160℃程度が好ましく、80〜140℃程度がより好ましい。重合温度が70℃未満となると未反応単量体や溶媒を取り除く脱揮工程の負荷が大きくなり、残存単量体や残存溶媒が増えて、品質上好ましくない。また、160℃を越えると重合反応の制御が不可能となったり、色相が悪化したりするので好ましくない。懸濁、乳化重合の場合は、重合温度70〜90℃が好ましく、75〜85℃が特に好ましい。この場合は有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤を乳化剤や界面活性剤とともに用いる。有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤、乳化剤、界面活性剤の種類は特に限定しない。また、重合時間は、特に限定されるものではないが、0.5〜10時間程度が好ましく、1〜5時間程度がより好ましい。なお、重合は、単一の条件で行っても、あるいは異なる条件で複数回に分けて行ってもよい。後者の場合の重合温度及び重合時間は、各重合操作における条件が上記範囲であることが好ましい。 または、上記重合操作後は、得られた共重合体組成物を、必要であれば、水蒸気蒸留により脱溶媒し、粉砕、乾燥後、押し出し器を通して、共重合体樹脂をペレットとして回収してもよい。 上記のようにして得られる本発明の共重合体組成物は、そのまま単独で実用に供してもよいが、かかる共重合体をさらに、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂等のゴム変性グラフト共重合体とブレンドすると、耐熱性及び耐衝撃性が一層優れた樹脂組成物とすることができるので好ましい。 上記により得られた共重合体組成物は、上述したような種々の用途に使用される目的で、さらに押出成形や射出成形など従来一般に用いられている成形方法によって所望の形状に成形することができる。 以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお特にことわりのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味するものとする。 (PMIおよび含有物質の分析方法) PMIの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、株式会社島津製作所製、型番LC−10A)を用いて測定するとともに、各含有物質を分取して含有量を測定した。条件は以下のとおりである。 なお、共重合体組成物中のPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量は、下記条件にて、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)によって測定した。 〔実施例1〕 200ccのビーカー中にオルトリン酸20gを添加し、次に粒状シリカゲル担体(キャリアクト30;商品名、フジ・デビソンケミカル社製)を加えオルトリン酸を担持せしめた。温度計、水分離器をそなえた冷却管、滴下ロートおよび攪拌機をそなえたフラスコに、無水マレイン酸55gをキシレン50gに溶解せしめた液を仕込んだ。次にフラスコ内部の温度を80℃に調整し、アニリン50gをキシレン400gに溶解した液を30分かけて少しずつ添加し、N−フェニルマレアミン酸のキシレンスラリー液を合成した。得られたスラリー液に、前もってビーカー中において調整した触媒とジブチルジチオカルバミン酸銅0.1gを添加し、140℃にて3時間反応させた。反応終了後、反応液を触媒層から分離した。分離した反応液を85〜90℃に冷却し、87℃の純水150gをこの反応液に加えて5分間攪拌した。次に攪拌を停止させたところ、反応液層と水層はすみやかに分離した。また、この両層の界面は極めて明確であり、両層の分離は容易であった。続いてこの操作をもう三度繰り返した。この3回目の操作において反応液層と水層の分離の静置時間として30分保持し、油水分離後、得られた反応液層中の水分量は0.8g(反応液層中のPMIに対して、0.87(=0.8/92)重量%)であった。この反応液層からキシレンを留去せしめ92gの黄色の結晶を得た。次に、この結晶を3mmHgの減圧下160℃で蒸留を行ない、85gの彩やかな黄色結晶のN−フェニルマレイミド化合物を得た。得られたN−フェニルマレイミド化合物の含有成分分析結果を表1に示す。 〔比較例1〕 実施例1において、繰り返して行なう分離操作を一度のみとした以外は、実施例1と同様に行なってN−フェニルマレイミド化合物を得た。得られたN−フェニルマレイミド化合物の分析結果を表1に示す。 〔比較例2〕 実施例1において、3回目の分離後の静置時間を5分保持した以外は、実施例1と同様に行なってN−フェニルマレイミド化合物を82g得た。なお、この際、反応液層と水層とを分離後、得られた反応液層中の水分量は、1.3g(反応液層中のPMIに対して、1.41(=1.3/92)重量%)であった。得られたN−フェニルマレイミド化合物の含有成分分析結果を表1に示す。 〔実施例2〕 実施例1において反応終了後、反応液を触媒層から分離し、分離した反応液を90〜95℃に冷却し、95℃の純水150gをこの反応液に加えて5分間攪拌した以外は、実施例1と同様に行なって、N−フェニルマレイミド化合物84gを得た。なお、この際、反応液層と水層とを分離後、得られた反応液層中の水分量は、0.9g(反応液層中のPMIに対して、0.98(=0.9/92)重量%)であった。得られたN−フェニルマレイミド化合物の含有成分分析結果を表1に示す。 〔実施例3〕 実施例1において反応終了後、反応液を触媒層から分離し、分離した反応液を55〜60℃に冷却し、55℃の純水150gをこの反応液に加えて5分間攪拌した操作以外は、実施例1と同様に行なって、N−フェニルマレイミド化合物78gを得た。なお、この際、反応液層と水層とを分離後、得られた反応液層中の水分量は、0.6g(反応液層中のPMIに対して、0.65(=0.6/92)重量%)であった。得られたN−フェニルマレイミド化合物の含有成分分析結果を表1に示す。 〔実施例4〕 比較例1において、N−フェニルマレアミン酸のキシレンスラリー液に触媒とジブチルジチオカルバミン酸銅を添加して140℃にて反応させる際、反応開始より30分経過後に、無水マレイン酸10gをキシレン15gに溶解せしめた液を添加した以外は、比較例1と同様に行なってN−フェニルマレイミド化合物を得た。その分析結果を表1に示した。 〔実施例5〕 実施例1において、N−フェニルマレアミン酸のキシレンスラリー液に触媒とジブチルジチオカルバミン酸銅を添加して140℃にて反応させる際、反応開始より30分経過後に、無水マレイン酸10gをキシレン15gに溶解せしめた液を添加した以外は、実施例1と同様に行なってN−フェニルマレイミド化合物を得た。その分析結果を表1に示した。 〔実施例6〕 内容積30リットルのリボン翼を備えた重合器の内部を窒素置換し、ここへブタジエンゴム(BR01;商品名、JSR株式会社製)20重量部、実施例1で得られたN−フェニルマレイミド化合物20重量部、アクリロニトリル15重量部およびトルエン100重量部を仕込み、50℃で前記ブタジエンゴムおよびN−フェニルマレイミド化合物が完全に溶解するまで攪拌した。次いで、スチレン45重量部とtert−ドデシルメルカプタン0.1重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.4重量部を加えた後、昇温して100℃で2.2時間重合し、更に昇温して120℃で2.2時間重合を実施した。重合転化率は、98%であった。重合終了後、水蒸気蒸留により脱溶媒し、粉砕、乾燥後、240℃の温度下で40mmφの押し出し器を通して、共重合体樹脂をペレットとして回収した。得られた共重合体樹脂を押し出し機により溶融混煉りした後、射出成形して試験片を作製し、物性を測定した。なお、熱変形温度は「ASTM D648」、アイゾット衝撃強度は「ASTM D256」に準じてそれぞれ測定を行なった。目視による外観とあわせて、物性測定の結果を表2に示す。 また、上記重合により得られた共重合体樹脂(共重合体組成物)におけるPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量を測定した。その結果を表2に示す。 〔実施例7〕 実施例2で得られたN−フェニルマレイミド化合物を使用した以外は、実施例6と同様に重合を行なって共重合体樹脂(共重合体組成物)を得た。物性測定の結果を表2に示す。 また、上記重合により得られた共重合体樹脂におけるPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量を測定した。その結果を表2に示す。 〔実施例8〕 実施例3で得られたN−フェニルマレイミド化合物を使用した以外は、実施例6と同様に重合を行なって共重合体樹脂(共重合体組成物)を得た。物性測定の結果を表2に示す。 また、上記重合により得られた共重合体樹脂におけるPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量を測定した。その結果を表2に示す。 〔実施例9〕 実施例4で得られたN−フェニルマレイミド化合物を使用した以外は、実施例6と同様に重合を行なって共重合体樹脂(共重合体組成物)を得た。物性測定の結果を表2に示す。 また、上記重合により得られた共重合体樹脂におけるPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量を測定した。その結果を表2に示す。 〔実施例10〕 実施例5で得られたN−フェニルマレイミド化合物を使用した以外は、実施例6と同様に重合を行なって共重合体樹脂(共重合体組成物)を得た。物性測定の結果を表2に示す。 また、上記重合により得られた共重合体樹脂におけるPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量を測定した。その結果を表2に示す。 〔比較例3〜4〕 比較例1〜2で得られたN−フェニルマレイミド化合物を使用した以外は、実施例6と同様に重合を行なって共重合体樹脂(共重合体組成物)を得た。物性測定の結果を表2に示す。 また、上記重合により得られた共重合体におけるPPMA、PFA、PMA及びAPSIの含有量を測定した。その結果を表2に示す。 本発明の方法によれば、N−フェニルマレイミドを共重合単量体の少なくとも一成分として用いて得られる共重合体であって、着色、銀条、フィシュアイなどの現象が低減され、の品質(外観、耐熱性、強度)が向上した共重合体を効率よく製造することができる。 さらに、本出願は、2011年3月24日に出願された日本特許出願番号2011−065547号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。 N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を0.1重量%以下および/またはN−フェニルフマルアミン酸(PFA)を0.3重量%以下、含有する、N−フェニルマレイミド化合物。 さらに、N−フェニルマレアミン酸(PMA)および2−アニリノ−N−フェニルスクシンイミド(APSI)を含有し、該PMA、APSI、PPMAおよびPFAの含有総量が0.5重量%以下である、請求項1に記載のN−フェニルマレイミド化合物。 請求項1または2に記載のN−フェニルマレイミド化合物および該N−フェニルマレイミド化合物と共重合可能な一種以上の他の単量体または樹脂を共重合して得られる共重合体組成物。 N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を0.05重量%以下含有する、請求項3に記載の共重合体組成物。 N−フェニルフマルアミン酸(PFA)を0.15重量%以下含有する、請求項3または4に記載の共重合体組成物。 アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(AB樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)またはアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)が該共重合により得られる、請求項3〜5のいずれか1項に記載の共重合体組成物。 本発明は、特定量以下の不純物を含有するN−フェニルマレイミドを共重合単量体の少なくとも一成分として用いることにより、得られる共重合体の品質を向上させることのできる、N−フェニルマレイミド化合物を提供する。本発明のN−フェニルマレイミド化合物は、N−(2,5−ジオキソ−1−フェニル−3−ピロリジニル)−N−フェニルマレアミン酸(PPMA)を0.1重量%以下および/またはN−フェニルフマルアミン酸(PFA)を0.3重量%以下、含有する。