タイトル: | 公開特許公報(A)_中心静脈投与用輸液製剤 |
出願番号: | 2012052434 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/198,A61K 9/08,A61P 3/02,A61P 43/00,A61K 31/7004,A61K 33/14,A61K 33/04,A61K 33/42,A61K 45/00 |
坂田 文子 伊藤 宏 高橋 啓明 JP 2013184941 公開特許公報(A) 20130919 2012052434 20120309 中心静脈投与用輸液製剤 テルモ株式会社 000109543 坂田 文子 伊藤 宏 高橋 啓明 A61K 31/198 20060101AFI20130827BHJP A61K 9/08 20060101ALI20130827BHJP A61P 3/02 20060101ALI20130827BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130827BHJP A61K 31/7004 20060101ALI20130827BHJP A61K 33/14 20060101ALI20130827BHJP A61K 33/04 20060101ALI20130827BHJP A61K 33/42 20060101ALI20130827BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130827BHJP JPA61K31/198A61K9/08A61P3/02A61P43/00 111A61K31/7004A61P43/00 121A61K33/14A61K33/04A61K33/42A61K45/00 6 OL 15 4C076 4C084 4C086 4C206 4C076AA12 4C076BB17 4C076CC21 4C076CC22 4C076CC29 4C076FF68 4C084AA22 4C084MA17 4C084MA66 4C084NA10 4C084ZC021 4C084ZC211 4C084ZC222 4C084ZC751 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA01 4C086HA02 4C086HA15 4C086HA17 4C086HA20 4C086HA24 4C086MA03 4C086MA04 4C086MA17 4C086MA66 4C086NA10 4C086ZC02 4C086ZC21 4C086ZC75 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA53 4C206MA03 4C206MA04 4C206MA10 4C206MA37 4C206MA86 4C206NA10 4C206ZC02 4C206ZC21 4C206ZC75 本発明は、糖、アミノ酸、電解質およびビタミンを含有する中心静脈投与用輸液製剤に関する。より詳細には、本発明は、熱量必要量の小さい患者に対して、1日を通して輸液交換の必要がなく、長期間に亘り適切な栄養管理を行うことができる中心静脈投与用輸液製剤に関する。 経口・経腸栄養が不可能または不十分な場合には、静脈栄養法が用いられる。静脈栄養法には、末梢静脈栄養法と中心静脈栄養法があり、静脈栄養の実施期間の長期化が予測される場合には、中心静脈栄養法が行なわれる(非特許文献1)。 中心静脈栄養法においては、糖質、アミノ酸、電解質およびビタミン、また必要により必須微量元素を含んだ中心静脈投与用輸液製剤が投与される。一般的に、中心静脈投与用輸液製剤は、2室容器からなるバッグの第1室に糖質と電解質を、第2室にアミノ酸をそれぞれ分離して充填し、さらに必要によりビタミンを充填した第3室の小室を有する1バッグ形態で提供され、投与前に、これら2室あるいは3室を混合し患者に投与する。 中心静脈投与用輸液製剤(高カロリー輸液)は、1日用量として1700〜2200mLの輸液量で、グルコース240〜500g、アミノ酸40〜80g、総熱量として1120〜2300kcal程度、さらに1日に必要な電解質およびビタミンを投与可能なように設計され、通常、1日用量を2バッグに分けた製剤として提供されている(非特許文献2、3)。しかしながら最近では、手術の低侵襲化に加え、より早期から消化器官を使用する経腸栄養管理が推奨されてきており、中心静脈栄養療法に要求される投与総熱量は全般的に低下傾向にある。また、療養系の病床では、体格の小さな高齢者が多いことから消費熱量は小さいと考えられる。 実際、本発明者らが中心静脈栄養の処方実態を調査した結果、1日当りにおいて、半日用量の中心静脈投与用輸液製剤1バッグに他の輸液製剤を併用する処方例や、3/4日用量を単独投与する処方例が多いことが明らかになった。 しかしながら、従来の中心静脈投与用輸液製剤では、投与総熱量を調整する目的で投与量を減少させた場合、電解質およびビタミン投与量も半日量、あるいは3/4日量となり、1日維持量を投与することができなかった。電解質およびビタミンの不足分を投与するには個々の医療機関において専用の輸液製剤の調製が必要となり、細菌感染や医療過誤のリスク、医療従事者の作業負担を増大させていた。日本静脈経腸栄養学会編集 静脈経腸栄養ガイドライン 第2版 p7小山諭ほか、臨床外科、66(2)、p724-p730、2011杉浦伸一、静脈経腸栄養、25(2)、p17−22、2010 本発明は上記の状況を鑑みてなされたもので、比較的低侵襲の術後患者や経腸栄養管理を併用している患者、高齢患者等の、熱量必要量が小さい患者、あるいは中心静脈栄養療法が長期間に亘る患者に対して、1日1剤で電解質およびビタミンを1日維持量投与することができ、長期間に亘り適切な栄養管理を行うことができる中心静脈投与用輸液製剤を提供することを目的とする。 上記の課題は、以下の本発明により解決される。(1)糖、アミノ酸、電解質およびビタミンを含有し;1日投与量が1300〜1700mLであり;1日投与量中の総熱量が500〜1000kcalであり;1日投与量中に、ナトリウムイオン80〜120mEqおよびアミノ酸20〜40gを含有し;窒素(N:単位はg)に対する非蛋白熱量(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が90〜140の範囲内であるとともに;1日投与量を1つの容器に収容したことを特徴とする中心静脈投与用輸液製剤。(2)電解質として、1日投与量中にカリウムイオンを30〜50mEq含有する(1)に記載の中心静脈投与用輸液製剤。(3)前記容器は用時連通可能な隔離手段により複数の区画に分画されており、糖溶液、アミノ酸溶液およびビタミン溶液がそれぞれ異なる区画に収容され、投与前に混合して使用するものである(1)または(2)に記載の中心静脈投与用輸液製剤。(4)さらに、 ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKからなる群より選択される1または2以上のビタミンを、下記の範囲で含有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液製剤。 ビタミンB1 4.8〜7.2mg ビタミンB2 2.88〜4.32mg ビタミンB6 4.8〜7.2mg ビタミンB12 4〜6μg ナイアシン 32〜48mg パントテン酸 12〜18mg 葉酸 0.48〜0.72mg ビオチン 0.048〜0.072mg ビタミンC 160〜240mg ビタミンA 2640〜3960IU ビタミンD 4〜6μg ビタミンE 8〜12mg ビタミンK 0.12〜0.18mg(5)さらに、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロムおよびモリブデンからなる群より選択される1または2以上の必須微量元素類を含有することを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液製剤。(6)熱量必要量が小さい患者に投与するための輸液製剤である(1)ないし(5)のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液製剤。 なお、本発明において、「熱量必要量が小さい患者」とは、比較的低侵襲の術後患者や経腸栄養管理を併用している患者、高齢患者等であって、1日に必要な総熱量が1000kcal以下の患者を言うものとする。 また、本発明の中心静脈投与用輸液製剤は、本発明の範囲で浸透圧を低く調製した場合には末梢静脈から投与することも可能な輸液製剤であり、そのような使用を妨げるものではない。 本発明の高カロリー輸液製剤は、熱量必要量が小さい患者や中心静脈栄養療法が長期間に亘る患者に対して、1日1剤で必要な電解質およびビタミンを補給することが可能となる。また、長期間に亘り投与した場合にも、適切な量の電解質およびビタミンを補給可能であるとともに、輸液交換の手間が省かれることによって医療従事者の負担を軽減することができる。 また、近年増加傾向にあるこうした患者に幅広く適用可能な組成であり、さらに従来の高カロリー輸液を一部残して投与する場合に比べて薬液の無駄も省くことができるため、医療経済性にも資する。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中プレアルブミン(PA)の値の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中レチノール結合蛋白(RBP)の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中総蛋白(TP)の値の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中アルブミン(ALB)の値の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中ビタミンB1濃度の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中ビタミンB6濃度の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中ビタミンC濃度の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中葉酸濃度の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中ビタミンA濃度の推移を示すグラフである。ビーグル犬に中心静脈投与用輸液製剤を7日間持続投与した場合の血中ビタミンD濃度の推移を示すグラフである。 以下に、本発明の中心静脈投与用輸液製剤について詳細に説明する。 本発明の中心静脈投与用輸液剤が含有する糖は、生体内で熱量源として代謝されるものであればよく、通常の輸液に用いられる糖であれば特に限定されない。このような糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、マルトースなどが挙げられるが、中でも、生体が最も利用しやすい糖であることおよび血糖管理の観点から、グルコースを配合することが好ましい。糖に由来する熱量は非蛋白熱量であるため、本発明においては、糖の含有量は投与状態における非蛋白熱量/窒素比(NPC/N比)が所定範囲となるように調節されるが、グルコースを用いる場合、一日投与量当り、好ましくは85〜230g、より好ましくは125〜190gである。また、必要に応じ、トレハロース、キシリトール、ソルビトール、グリセリンなどの他の糖を加えてもよい。 なお、本明細書において「投与状態」とは、輸液製剤が患者に投与される直前の状態を言い、後述するように糖、アミノ酸およびビタミンを別区画に収容し、用時混合して使用する剤型の場合には、全ての成分を混合し終えた状態を言う。また、特に言及がある場合を除き、本明細書における各成分の含有量は製造時の仕込み量である。 本発明の中心静脈投与用輸液剤が含有するアミノ酸は、通常の栄養補給を目的とする輸液に含有されている生体に必要な各種アミノ酸であれば特に制限はなく、例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェ二ルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、L−グリシンおよびL−システインを挙げることができる。なお、配合するアミノ酸は、遊離アミノ酸のほかに、無機酸塩、有機酸塩、生体内で加水分解可能なエステル体などの形態でもよい。また、同種あるいは異種のアミノ酸をペプチド結合させたペプチド類の形態で配合してもよい。 本発明の中心静脈投与用輸液剤は、一日投与量当りにおいて、これらのアミノ酸を20〜40g、より好ましくは24〜36g含有する。また、アミノ酸は中心静脈投与用輸液における主たる窒素源であるため、投与状態における非蛋白熱量/窒素比(NPC/N比)が所定範囲となるように調節される。これらのアミノ酸の含有比率は、患者の維持が可能な限り特に限定されるものではないが、例えば、当業者に既知の指標である、1944年にローズらが決定した必須アミノ酸必要量に基づくVuj−N処方のもの、1957年FAOの特別委員会報告によるもの、1965年FAO/WHOの共同委員会報告による人乳または全卵アミノ酸組成に基づくもの、血漿中アミノ酸組成のフィッシャー比、などに従って決定することが好ましい。具体的には、本発明において各アミノ酸の含有量は例えば以下の表1に記載のようにすることができる。なお、本明細書において、アミノ酸の含有量は、遊離アミノ酸である場合には遊離アミノ酸自体の重量を、アミノ酸塩や誘導体である場合には遊離アミノ酸に換算した重量を、ジペプチド類とした場合にはその構成成分であるそれぞれのアミノ酸に換算した重量をそれぞれ意味するものとする。 本発明の中心静脈投与用輸液剤が含有する電解質は、通常の栄養補給を目的とする輸液に含有されている電解質であり、例えば生体機能や体液の電解質バランスを維持するうえで必要とされる無機成分であるナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロル、リンなどを挙げることができる。 電解質としては、水溶液中で電離する無機塩や有機塩が好ましく、具体例としては下記のものやこれらの水和物などを挙げることができ、これらを1種または2種以上を含有することができる。 ナトリウム供給源:塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、水酸化ナトリウム カリウム供給源:塩化カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、水酸化カリウム カルシウム供給源:グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム マグネシウム供給源:硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、アミノ酸マグネシウム塩 クロル供給源:塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム リン供給源:リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム リン酸またはその塩を含有する場合、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが共存すると、中性・アルカリ性条件下ではカルシウム塩またはマグネシウム塩を形成して沈殿物を形成する可能性があるため、これらを配合する場合には別々の区画に収容するか、あるいは溶液をpH5以下の酸性条件に調整する必要がある。 本発明の中心静脈投与用輸液剤は、1日投与量中にナトリウムイオン(Na+)を80〜120mEq、より好ましくは85〜115mEq含有する。80mEq未満であると低ナトリウム血症を生じる可能性があるため好ましくない。逆に120mEqを超えると代謝機能の低下した高齢者等に投与した場合にナトリウム過剰となるため好ましくない。上記電解質は、ナトリウムイオン含有量がこの範囲になるよう選択して含有することができる。 本発明の中心静脈投与用輸液剤は、1日投与量中にカリウムイオン(K+)を30〜50mEq、さらに好ましくは30〜40mEq含有する。30mEq未満であると、1日量として十分なカリウムを投与することができなくなり、低カリウム血症を生じる可能性があるため好ましくない。逆に、60mEqを超えると、代謝機能の低下した高齢者や術後早期で異化亢進状態にある患者等に投与した場合にカリウム過剰となるため好ましくない。ここで、糖を投与するとインスリン分泌を刺激する。インスリンは細胞内へのカリウム流入を促進し、血清カリウム濃度を低下させる作用を有する。従って、カリウムイオンの含有量は糖の含有量に応じて決定することが好ましく、糖1g当りカリウムイオン含有量が0.2〜0.3mEqの範囲になるよう選択して含有することが好ましい。 また、その他の電解質は下記の量含有することが好ましい。Ca2+ 13〜21mEqMg2+ 16〜24mEqCl− 80〜120mEq 本発明の中心静脈投与用輸液剤が含有するビタミン類は、通常の栄養補給を目的とする輸液に含有されている生体に必要な各種ビタミン類であれば特に制限はなく、例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビタミンH(ビオチン)ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどを挙げることができ、これらは従来から使用されているものを何れも用いることができる。 ビタミンB1としては、チアミンやその誘導体であるプロスルチアミン、アクトチアミン、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン、およびそれらの塩である塩酸チアミン、硝酸チアミン等を用いることができる。 ビタミンB2としては、リボフラビンや、リン酸リボフラビン、また、誘導体としてフラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドおよびそれらの塩酸塩等を用いることができる。 ビタミンB6としては、ピリドキシンや、リン酸ピリドキシン、また、誘導体としてピリドキサール、ピリドキサシンなどを用いることができる。 ビタミンB12としては、シアノコバラミン、酢酸ヒドロキシコバラミン、メチルコバラミン等を用いることができる。 ビタミンCとしては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等を用いることができる。 ナイアシンとしては、ニコチン酸アミド、ニコチン酸などのニコチン酸類、またはこれらの塩を用いることができる。 パントテン酸、葉酸およびビタミンH(ビオチン)は、そのものあるいは誘導体の形で用いてもよく、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩として用いることができる。また、パントテン酸の誘導体としてはパンテノールなどを挙げることができる。 ビタミンAおよびその誘導体としては、ビタミンA1(レチノール)、ビタミンA2(3−デヒドロレチノール)、ビタミンA3(サブビタミンA)、レチネン(ビタミンAアルデヒド)、ビタミンA酸、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールなどを用いることができる。 ビタミンDおよびその誘導体としてはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンD4、プロビタミンD2(エルゴステリン)、プロビタミンD3(デヒドロコレステリン)などを用いることができる。 ビタミンEおよびその誘導体としてはα−トコフェロール、酢酸トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールなどを用いることができる。 ビタミンKおよびその誘導体としてはビタミンK1(フィロキノン、フィトナジオン)、ビタミンK2(ファルノキノン)、ビタミンK3(メナジオン)、ビタミンK4、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK7などを用いることができる。 ビタミンの含有量および含有比率は、患者の維持が可能な限り特に限定されるものではないが、米国食品医薬品局(FDA)が2000年に承認した米国医師会(American Medical Association)の静脈注射用総合ビタミン剤の1日投与量の推奨値(改訂AMA処方)によるビタミン類を配合するのが好ましい。 なお、具体的には、本発明において各ビタミンの含有量(ビタミン単体として)は例えば下記のようにすることができる。 ビタミンB1 4.8〜7.2mg ビタミンB2 2.88〜4.32mg ビタミンB6 4.8〜7.2mg ビタミンB12 4〜6μg ナイアシン 32〜48mg パントテン酸 12〜18mg 葉酸 0.48〜0.72mg ビオチン 0.048〜0.072mg ビタミンC 160〜240mg ビタミンA 2640〜3960IU ビタミンD 4〜6μg ビタミンE 8〜12mg ビタミンK 0.12〜0.18mg 本発明の中心静脈投与用輸液は、1日投与量が1300〜1700mLであり、さらに好ましくは1400〜1600mLである。1300mL未満であると、十分な栄養分を含有することができず、または含有しようとすると輸液中の浸透圧が高くなり過ぎてしまうため、好ましくない。1700mLを超えると、逆に浸透圧が低くなり過ぎ、また水分過剰となるため好ましくない。 本発明の中心静脈投与用輸液は、1日投与量中の総熱量が500〜1000kcal、好ましくは600〜900kcalである。本発明の中心静脈投与用輸液において、配合される熱量は上記範囲を満たす限りにおいて、適宜調節し得る。1日投与量中の総熱量が500kcal未満であると、経腸栄養法と中心静脈輸液を併用している患者や高齢の患者といえども1日に投与する熱量として不十分である場合が多くなり、逆に1000kcalを超えると過剰である場合が多くなることから好ましくない。 また、本発明の中心静脈投与用輸液は、窒素(N:単位はg)に対する非蛋白熱量(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が90〜140であり、より好ましくは120〜140である。NPC/Nが90未満であると、蛋白合成に必要な熱量が不足し、投与したアミノ酸が蛋白合成に利用されず熱量として利用され分解されるため好ましくない。逆に140以上であると、投与されるアミノ酸が不足するため好ましくない。 本発明の中心静脈投与用輸液剤は、さらに必須微量元素を含有してもよい。必須微量元素とは、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロム、モリブデン等の微量ではあるが生体にとって不可欠な金属元素である。これらのうち特に亜鉛と銅は中心静脈栄養が長期間に亘る際に欠乏しやすいため、含有することが好ましい。本発明において、亜鉛は1日投与量中に(亜鉛元素として)3〜450μmol、より好ましくは7.5〜225μmol含有することが好ましい。また、銅は、(銅元素として)0.75〜60μmol、より好ましくは0.75〜30μmol含有することが好ましい。亜鉛の供給源としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などが例示され、また、銅の供給源としては、硫酸銅が例示される。 そして、本発明の中心静脈投与用輸液は、1日投与量が1つの容器に収容されている。このような容器としては、輸液用容器として一般的に用いられている公知のものを使用することができるが、製剤安定性の観点からは、用時連通可能な隔壁で区画された複数の室を有する容器を用い、混合して時間が経過すると化学変化を起こして沈殿の生成、変質、着色などを生じる成分同士を別の室に収容したものとすることが好ましい。例えば、糖とアミノ酸を混合すると、いわゆるメイラード反応により経時的に薬液の着色が生じるため、これらを別の室に収容することが好ましい。第1室に糖を主とする溶液を、第2室にアミノ酸を主とする溶液を収容し、さらに第3室に脂溶性ビタミン溶液を収容して、用時に各室を連通させて薬液を混合することで投与状態の輸液を調製するものであることが好ましい。 具体的には、例えば、可撓性容器であって、複数の室が弱シール部(隔壁)により連通可能に区画され、容器の一室を外部より押圧することによる内部水圧の上昇によって弱シール部の剥離が生じ、各室が連通するよう構成された容器が好適な例として挙げられる。また、容器を複数の室に区画する隔壁に破断可能な流路閉塞体が設けられている構造のものを用いてもよい。またさらに、輸液容器の本体の一部に用時連通可能に別部材からなる硬質の小容器を取り付けたものを用いることもでき、この場合、液量の少ない脂溶性ビタミン溶液を小容器に収容することが好ましい。すなわち、本発明の中心静脈投与用輸液の容器としては、必要最小限の室数を有し、各室に収容されている複数の溶液を容器内で閉鎖的に混合でき、混合して得られる輸液を容器外に排出するための取出口を有するものであれば、いずれも好適に用いることが可能である。 容器の材質は特に限定されないが、合成樹脂が好ましく、容器本体をある程度の耐熱性のある可撓性のプラスチックおよび/またはエラストマーから形成することが好ましい。容器本体の形成に用いるプラスチックおよび/またはエラストマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンおよび/またはポリブテンとの混合物などのようなポリオレフィン類あるいはそれらの部分架橋物;エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分架橋物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;軟質塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいは環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とし、必要に応じて各種エラストマーなどを添加することにより軟質化した樹脂組成物を挙げることができる。また、容器本体は、前記したプラスチックおよび/またはエラストマーの1種よりなる単層構造であってもよいし、前記したポリマーからなる複数のポリマー層を有する積層構造であってもよいし、あるいはそれらにさらにポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンなどのガスバリア性の層を積層したものであってもよい。 可撓性容器は合成樹脂をブロー成形することにより形成したもの、前記樹脂から形成された2枚のシートの周縁部を融着して形成したもの、インフレーション成形機により前記樹脂を押し出し成形して筒状に成形したものの両端開口部を融着するなどすることにより製造したものを用いることができる。 このような可撓性容器の具体例としては、特開2006−87904、特開2007−50085、特開2007−267941、特開2008−200367等に記載されたものを挙げることができる。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 下記の表2の実施例1、2の組成で、本発明の中心静脈投与用輸液剤を調製した。 調製方法は以下の通りである。(1)896mL中、下記表3に示す成分を有する糖溶液を調製した。(2)600mL中、下記表4に示す成分を有するアミノ酸溶液を調製した。(3)4mL中、下記表5に示す成分を有するビタミン溶液を調製した。(4)弱シール性の隔壁によって3つの区画に仕切られた輸液用容器の大室に上記(1)で調製した糖溶液を充填し、中室に上記(2)で調製したアミノ酸溶液を充填し、小室に上記(3)で調製したビタミン溶液を充填した。(5)上記(4)で得られた輸液製剤を、常法に従い高圧蒸気滅菌した。(6)上記(5)で得られた輸液製剤を、脱酸素剤とともに酸素非透過性の外包材で包装した。 また、下記試験例1で用いた対照液の組成を比較例1、2に示した。(試験例1) 表2に示した本発明の中心静脈投与用輸液剤(実施例1、2)の栄養補給効果を確認するために、以下の動物実験を行った。なお、対照液として、表1の市販高カロリー輸液キット製剤(比較例1:フルカリック1号、比較例2:フルカリック2号、いずれもテルモ株式会社製。「フルカリック」はテルモ株式会社の登録商標。)を用いた。 24時間絶食させたビーグル犬(Iar系ビーグル、雄性、6〜7ヵ月齢、体重10kg前後)にペントバルビタール麻酔下でカテーテルを右外頸静脈から挿入し、前大静脈内に留置した。無拘束下に輸液ポンプを用いて、輸液剤を7日間持続投与した。投与量は、投与開始日から翌日(0POD〜1POD)にかけては25kcal/kg/day、翌日から2日間(1POD〜3POD)は52kcal/kg/day、その後4日間(3POD〜7POD)は70kcal/kg/dayとした。試験群には、0POD〜3PODは実施例1、3POD〜7PODには実施例2の中心静脈投与用輸液剤を投与した。対照群には、0POD〜3PODは比較例1、3POD〜7PODには比較例2の中心静脈投与用輸液剤を投与した。0POD、3PODおよび7PODに、橈側皮静脈より採血し、血清中の栄養評価指標および各種ビタミン濃度を測定した。 7日間の体重および体重変化率を表6に示した。試験群の体重変化率は、対照群と同等であった。栄養評価指標(プレアルブミン(PA)、レチノール結合蛋白(RBP)、総蛋白(TP)およびアルブミン(ALB)の結果を図1、図2、図3および図4にそれぞれ示した。いずれの項目も、試験群と対照群の間に差を認めなかった。水溶性ビタミン(ビタミンB1、B6、Cおよび葉酸)の結果を図5、図6、図7および図8にそれぞれに示した。3PODおよび7PODともにいずれの項目も試験群が対照群よりも高値を示し、十分なビタミン補給効果があると考えられた。脂溶性ビタミン(ビタミンAおよびD)の結果を図9および図10にそれぞれ示した。ビタミンAおよびDは試験群と対照群の間に差を認めなかった。これらの結果から、実施例1および2の中心静脈投与用輸液剤は、熱量必要量が小さい患者や中心静脈栄養療法が長期間に亘る患者に対し適切な栄養管理を行うことのできる輸液剤であると考えられた。糖、アミノ酸、電解質およびビタミンを含有し;1日投与量が1300〜1700mLであり;1日投与量中の総熱量が500〜1000kcalであり;1日投与量中に、ナトリウムイオン80〜120mEqおよびアミノ酸20〜40gを含有し;窒素(N:単位はg)に対する非蛋白熱量(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が90〜140の範囲内であるとともに;1日投与量を1つの容器に収容したことを特徴とする中心静脈投与用輸液製剤。電解質として、1日投与量中にカリウムイオンを30〜50mEq含有する請求項1に記載の中心静脈投与用輸液製剤。前記容器は用時連通可能な隔離手段により複数の区画に分画されており、糖溶液、アミノ酸溶液およびビタミン溶液がそれぞれ異なる区画に収容され、投与前に混合して使用するものである請求項1または2に記載の中心静脈投与用輸液製剤。さらに、 ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKからなる群より選択される1または2以上のビタミンを、下記の範囲で含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液製剤。 ビタミンB1 4.8〜7.2mg ビタミンB2 2.88〜4.32mg ビタミンB6 4.8〜7.2mg ビタミンB12 4〜6μg ナイアシン 32〜48mg パントテン酸 12〜18mg 葉酸 0.48〜0.72mg ビオチン 0.048〜0.072mg ビタミンC 160〜240mg ビタミンA 2640〜3960IU ビタミンD 4〜6μg ビタミンE 8〜12mg ビタミンK 0.12〜0.18mgさらに、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロムおよびモリブデンからなる群より選択される1または2以上の必須微量元素類を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液製剤。熱量必要量が小さい患者に投与するための輸液製剤である請求項1ないし5のいずれかに記載の中心静脈投与用輸液製剤。 【課題】 熱量必要量が小さい患者に対して、1日を通して輸液交換なしに電解質およびビタミンを1日維持量投与することができ、長期間に亘り適切な栄養管理を行うことができる中心静脈投与用輸液製剤を提供することを目的とする。【解決手段】糖、アミノ酸、電解質およびビタミンを含有し、1日投与量が1300〜1700mLであり、1日投与量中の総熱量が500〜1000kcalであり、1日投与量中に、ナトリウムイオン85〜115mEqおよびアミノ酸20〜40gを含有し、窒素(N:単位はg)に対する非蛋白熱量(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が90〜140の範囲内であるとともに、1日投与量を1つの容器に収容したことを特徴とする中心静脈投与用輸液製剤。【選択図】なし