タイトル: | 公開特許公報(A)_アセトンの精製方法及び保管方法 |
出願番号: | 2012045448 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07C 45/82,C07C 49/08 |
藤川 卓也 小波 栄治 山内 英路 JP 2013180978 公開特許公報(A) 20130912 2012045448 20120301 アセトンの精製方法及び保管方法 住友化学株式会社 000002093 特許業務法人深見特許事務所 110001195 藤川 卓也 小波 栄治 山内 英路 C07C 45/82 20060101AFI20130826BHJP C07C 49/08 20060101ALI20130826BHJP JPC07C45/82C07C49/08 J 11 1 OL 8 4H006 4H006AA02 4H006AA04 4H006AD11 4H006BC51 4H006BD82 4H006BD83 4H006BD84 本発明は、アセトンの精製方法及び保管方法に関する。 特許文献1には、アセトンをアルドール縮合させてジアセトンアルコールを製造する方法において、従来用いられていた触媒である酸化マグネシウムに鉄等の元素を添加することで、その収率が向上したことが記載されている。特開昭62−192335号公報 粗アセトンを蒸留操作に供することにより精留分離し、得られる精留分離物を貯蔵槽に移送し、精製アセトンとして製品出荷するまでの期間保管した際に、前記精製アセトンの中に、精留分離後からの保管期間における熱履歴に応じた量のジアセトンアルコール(DAA)が不純物として存在することがあった。 本発明者らは、製品出荷する精製アセトンに不純物として含まれるジアセトンアルコールを減らす装置及び方法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。本発明は、以下の通りである。 〔1〕 精留塔と、熱交換器と、貯蔵槽と、それらを機能可能に連結するための配管とを備えるアセトンの連続的な製造のための装置であって、(a)前記精留塔は、(i)粗アセトンを供給するための原料供給口、(ii)それに連結した原料供給配管、(iii)目的とする蒸留物を取り出すための精留分離物取出口、及び(iv)それに連結した精留分離物取出配管を具備しており、(b)前記熱交換器は、(i)前記精留分離物取出配管、及び(ii)前記貯蔵槽に連結した貯蔵槽移送配管を具備しており、(c)貯蔵槽は、前記貯蔵槽移送配管を具備しており、(d)前記熱交換器が、35℃を超える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器であり、且つ、(e)35℃を超える温度である精留分離物を、前記精留分離物取出口から前記熱交換器に移送するための前記精留分離物取出配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする装置。 〔2〕 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼または炭素鋼のいずれかの材質であることを特徴とする〔1〕記載の装置。 〔3〕 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする〔1〕記載の装置。 〔4〕 前記貯蔵槽の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかの項記載の装置。 〔5〕 前記熱交換器が、30℃を超える温度である精留分離物を30℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器であり、且つ、30℃を超える温度である精留分離物を、前記精留分離物取出口から前記熱交換器に移送するための前記精留分離物取出配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかの項記載の装置。 〔6〕 アセトンの連続的な製造及び保管のための方法であって、(a)粗アセトンを、原料供給配管を経由して、原料供給口から精留塔に供給し、次いで35℃を超える温度である精留分離物として、目的とする蒸留物を精留分離物取出口から取り出す工程、(b)前記精留分離物取出口から取り出された前記35℃を超える温度である精留分離物を、その材質がステンレス鋼である精留分離物取出配管を経由して、35℃を越える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器に移送する工程、(c)前記熱交換器に具備された、貯蔵槽に連結した貯蔵槽移送配管を経由して、35℃以下の温度である精留分離物を貯蔵槽に移送し、次いで、移送された精留分離物を貯蔵槽内で精製アセトンとして製品出荷するまでの期間保管する工程を含むことを特徴とする方法。 〔7〕 前記精留塔内には、酸化マグネシウムが実質的に含まれないことを特徴とする〔6〕記載の方法。 〔8〕 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼または炭素鋼のいずれかの材質であることを特徴とする〔6〕又は〔7〕記載の方法。 〔9〕 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする〔6〕又は〔7〕のいずれかの項記載の方法。 〔10〕 前記貯蔵槽の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする〔6〕〜〔9〕のいずれかの項記載の方法。 〔11〕 精留分離物を熱交換器に移送する工程が、前記精留分離物取出口から取り出された前記30℃を超える温度である精留分離物を、その材質がステンレス鋼である精留分離物取出配管を経由して、30℃を越える温度である精留分離物を30℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器に移送する工程であることを特徴とする〔6〕〜〔10〕のいずれかの項記載の方法。 本発明によって、製品出荷する精製アセトンに不純物として含まれるジアセトンアルコールを減らす装置及び方法が提供される。本発明の実施の一形態であるアセトンの連続的な製造のための装置の模式図である。 以下に、本発明を、図1を用いて説明する。1.アセトンの連続的な製造のための装置 本発明のアセトンの連続的な製造のための装置は、精留塔[10]と、熱交換器[20]と、貯蔵槽[30]と、それらを機能可能に連結するための配管とを備えるアセトンの連続的な製造のための装置であって、(a)前記精留塔[10]は、(i)粗アセトンを供給するための原料供給口[11]、(ii)それに連結した原料供給配管[12]、(iii)目的とする蒸留物を取り出すための精留分離物取出口[13]、及び(iv)それに連結した精留分離物取出配管[14]を具備しており、(b)前記熱交換器[20]は、(i)前記精留分離物取出配管[14]、及び(ii)前記貯蔵槽に連結した貯蔵槽移送配管[21]を具備しており、(c)貯蔵槽[30]は、前記貯蔵槽移送配管[21]を具備しており、(d)前記熱交換器[20]が、35℃を超える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器であり、且つ、(e)35℃を超える温度である精留分離物を、前記精留分離物取出口[13]から前記熱交換器[20]に移送するための前記精留分離物取出配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする装置である。 熱交換器[20]で、35℃を超える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱することで、アセトン中のDAAの量が減少する。常圧で精留する場合であれば、精留分離物は、同装置の内部では、通常、55〜60℃程度である。熱交換機[20]で、その高い温度の精留分離物を、35℃以下に除熱する。それによって、DAAの副生が減少して、品質の高いアセトンを製造することができる。特に、酸化鉄を含有する材料を用いる配管または貯蔵槽を用いる場合は、除熱される精留分離物の同配管及び貯蔵庫の各温度は、例えば30℃以下、又は20℃以下等、より低いほうが、DAA量の低い高純度のアセトンを製造することができる。 本発明の装置において、精留分離物取出配管[14]の材質がステンレス鋼とすることで、アセトン中のDAAの量が減少する。 ステンレス鋼は、一般に、含有するクロム(Cr)が空気中で酸素と結合して表面に不動態皮膜を形成しており、耐食性が高い。ステンレス鋼が作る不動態皮膜は、通常、5nm程のごく薄いクロムの水和オキシ酸化物CrOx(OH)2−x・nH2Oが主体で構成されている。本発明では、いかなるステンレス鋼も使用できる。具体的には、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化ステンレス鋼等が挙げられる。好ましいステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼が挙げられ、特に好ましくはSUS304等のオーステナイト系の18%クロム(Cr)8%ニッケル(Ni)の(18−8)ステンレス鋼が挙げられる。 さらにアセトン中のDAAの量を減少させるために、貯蔵槽移送配管[21]の材質をステンレス鋼とすることが好ましく、さらには貯蔵槽[30]の材質をステンレス鋼とすることが好ましい。これによって、さらにDAAの量が減少し、純度の高いアセトンを製造することができる。 また、精留塔[10]内に酸化マグネシウムが実質的に含まれないことで、さらにアセトン中のDAAの量を減少させることができ、好ましい。2.アセトンの連続的な製造及び保管のための方法 本発明のアセトンの連続的な製造及び保管のための方法は、アセトンの連続的な製造及び保管のための方法であって、(a)粗アセトンを、原料供給配管[12]を経由して、原料供給口[11]から精留塔[10]に供給し、次いで35℃を超える温度である精留分離物として、目的とする蒸留物を精留分離物取出口[13]から取り出す工程、(b)前記精留分離物取出口[13]から取り出された前記35℃を超える温度である精留分離物を、その材質がステンレス鋼である精留分離物取出配管[14]を経由して、35℃を越える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器[20]に移送する工程、(c)前記熱交換器[20]に具備された、貯蔵槽[30]に連結した貯蔵槽移送配管[21]を経由して、35℃以下の温度である精留分離物を貯蔵槽[30]に移送し、次いで、移送された精留分離物を貯蔵槽[30]内で精製アセトンとして製品出荷するまでの期間保管する工程を含むことを特徴とする方法である。 本発明の方法は、本発明の装置における説明に従って、実施することができ、それによって、DAAの量が減少した純度の高いアセトンを製造することができる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例1 SUS304共存下のアセトン中のDAAの増加 セパラブルフラスコに精留したアセトン687gを加え、SUS304(ステンレス鋼)(内径83mmφ×120mm)の管の断片12cmを浸漬して、22時間、加熱還流した。SUS304の接液面積は0.91cm2/gであり、内径55.3mmφの配管を用いた状況に相当する。その際、経時的にアセトン中のDAAの濃度を、GCを用いて下記条件で分析した。[GC分析条件]カラム:DB−210,0.53mmφ×30m,1.0μm(J&W Scientific社製)検出方法:FID流速: 5ml/分(He)カラム温度: 50℃(5分)⇒10℃/分⇒200℃(40分) 時間/温度 0分/50℃,5分/50℃,20分/200℃,60分/200℃インジェクター温度:250℃検出器温度:250℃ その分析結果を表1に示す。 表1に記載される通り、22時間の還流では、DAAは全く増加しなかった。実施例2 α−酸化鉄(III)共存下のアセトン中のDAAの増加 精留したアセトン250gに、α−酸化鉄(III)(99.9%,和光純薬製,未開封品)0.15gを加えて、7時間、加熱還流した。その際、経時的にアセトン中のDAAの濃度を、上記条件でGCを用いて分析した。その結果を表2に示す。 表2に記載される通り、α−酸化鉄(III)の混入により、急速にDAAが生成した。従って、アセトン精留にかかる装置において、α−酸化鉄(III)が混ざった材料を用いた場合、DAAが生成されることが分かる。実施例3 アセトンの連続的な製造のための装置におけるSUS配管への変更 アセトンの連続的な製造のための装置において、精留塔と熱交換器とを連結する精留分離物取出配管を、SS(一般構造用圧延鋼材である炭素鋼)製の配管から、SUS304(ステンレス鋼)製の配管に変更した。その結果、貯蔵槽に貯蔵されたアセトン中に含まれるDAAの濃度は、69ppmから58ppmに減少した。実施例4 アセトンの連続的な製造のための装置における熱交換器から貯蔵槽へ移送する精製アセトンの温度の変更 熱交換器と貯蔵槽を連結する貯蔵槽移送配管がSS(一般構造用圧延鋼材である炭素鋼)製の配管である、アセトンの連続的な製造のための装置において、熱交換器から貯蔵槽へ移送する精製アセトンの温度を、35.7℃から29.3℃に変更した。その結果、貯蔵槽に貯蔵されたアセトン中に含まれるDAAの濃度は、160ppmから89ppmに減少した。また、同温度を、29.3℃から17.7℃に変更した。その結果、貯蔵槽に貯蔵されたアセトン中に含まれるDAAの濃度は、89ppmから69ppmに減少した。実施例5 アセトンの連続的な製造のための装置における貯蔵槽のSUS材質への変更 貯蔵槽の材質をSS(一般構造用圧延鋼材である炭素鋼)製からSUS(ステンレス鋼)製に変更した。その結果、貯蔵槽に貯蔵されたアセトン中に含まれるDAAの濃度は、48ppmから36ppmに低下した。その結果を表3に示す。 本発明によって、製品出荷する精製アセトンに不純物として含まれるジアセトンアルコールを減らす装置及び方法が提供される。 10 精留塔 11 原料供給口 12 原料供給配管 13 精留分離物取出口 14 精留分離物取出配管 20 熱交換器 21 貯蔵槽移送配管 30 貯蔵槽 精留塔と、熱交換器と、貯蔵槽と、それらを機能可能に連結するための配管とを備えるアセトンの連続的な製造のための装置であって、(a)前記精留塔は、(i)粗アセトンを供給するための原料供給口、(ii)それに連結した原料供給配管、(iii)目的とする蒸留物を取り出すための精留分離物取出口、及び(iv)それに連結した精留分離物取出配管を具備しており、(b)前記熱交換器は、(i)前記精留分離物取出配管、及び(ii)前記貯蔵槽に連結した貯蔵槽移送配管を具備しており、(c)貯蔵槽は、前記貯蔵槽移送配管を具備しており、(d)前記熱交換器が、35℃を超える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器であり、且つ、(e)35℃を超える温度である精留分離物を、前記精留分離物取出口から前記熱交換器に移送するための前記精留分離物取出配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする装置。 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼または炭素鋼のいずれかの材質であることを特徴とする請求項1記載の装置。 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1記載の装置。 前記貯蔵槽の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの請求項記載の装置。 前記熱交換器が、30℃を超える温度である精留分離物を30℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器であり、且つ、30℃を超える温度である精留分離物を、前記精留分離物取出口から前記熱交換器に移送するための前記精留分離物取出配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項記載の装置。 アセトンの連続的な製造及び保管のための方法であって、(a)粗アセトンを、原料供給配管を経由して、原料供給口から精留塔に供給し、次いで35℃を超える温度である精留分離物として、目的とする蒸留物を精留分離物取出口から取り出す工程、(b)前記精留分離物取出口から取り出された前記35℃を超える温度である精留分離物を、その材質がステンレス鋼である精留分離物取出配管を経由して、35℃を越える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器に移送する工程、(c)前記熱交換器に具備された、貯蔵槽に連結した貯蔵槽移送配管を経由して、20℃以下の温度である精留分離物を貯蔵槽に移送し、次いで、移送された精留分離物を貯蔵槽内で精製アセトンとして製品出荷するまでの期間保管する工程を含むことを特徴とする方法。 前記精留塔内には、酸化マグネシウムが実質的に含まれないことを特徴とする請求項6記載の方法。 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼または炭素鋼であることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。 前記貯蔵槽移送配管の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。 前記貯蔵槽の材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかの請求項記載の方法。 精留分離物を熱交換器に移送する工程が、前記精留分離物取出口から取り出された前記30℃を超える温度である精留分離物を、その材質がステンレス鋼である精留分離物取出配管を経由して、30℃を越える温度である精留分離物を30℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器に移送する工程であることを特徴とする請求項6〜10のいずれかの請求項記載の方法。 【課題】製品出荷する精製アセトンに不純物として含まれるジアセトンアルコールを減らす装置等の提供。【解決手段】精留塔と熱交換器と貯蔵槽とそれらを機能可能に連結するための配管とを備えるアセトンの連続的な製造のための装置であって、 前記精留塔は、粗アセトンを供給するための原料供給口、それに連結した原料供給配管、目的とする蒸留物を取り出すための精留分離物取出口、及びそれに連結した精留分離物取出配管を具備しており、 前記熱交換器は、前記精留分離物取出配管、及び前記貯蔵槽に連結した貯蔵槽移送配管を具備しており、 貯蔵槽は前記貯蔵槽移送配管を具備しており、 前記熱交換器が35℃を超える温度である精留分離物を35℃以下の温度になるように除熱する機能を有する熱交換器であり、 35℃を超える温度である精留分離物を前記精留分離物取出口から前記熱交換器に移送するための前記精留分離物取出配管の材質がステンレス鋼である装置等。【選択図】図1