タイトル: | 公開特許公報(A)_抗体含有花粉アレルギー防御素材 |
出願番号: | 2012027387 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07K 16/16,A61K 39/395,A61P 37/08 |
塚本 康浩 JP 2013163662 公開特許公報(A) 20130822 2012027387 20120210 抗体含有花粉アレルギー防御素材 オーストリッチファーマ株式会社 508198535 廣幸 正樹 100118924 塚本 康浩 C07K 16/16 20060101AFI20130726BHJP A61K 39/395 20060101ALI20130726BHJP A61P 37/08 20060101ALI20130726BHJP JPC07K16/16A61K39/395 YA61P37/08 2 OL 7 4C085 4H045 4C085AA33 4C085BB31 4C085CC22 4C085CC40 4C085DD31 4H045AA11 4H045DA75 4H045EA01 4H045EA20 4H045EA60 4H045FA71 4H045GA01 4H045GA05 本発明は、ダチョウから得た花粉アレルギーを防御する抗体に関する。 近年、花粉症は日本を始め世界各国で人を悩ますアレルギー性疾患である。涙、鼻水、クシャミ、咳、発熱、頭痛、けだるさ等、様々な症状を引き起こし、仕事の能率等の低下による経済的ダメージは莫大である。花粉症の原因は、主にスギおよびヒノキの花粉であり、そのなかの特定蛋白質がアレルゲンとされている。スギ花粉のアレルゲンはCryj1、Cryj2であり、ヒノキ花粉のアレルゲンはChao1、Chao2である。実際に、花粉症の患者の血液にはこれらアレルゲンの一つないし複数にたいする抗体が産生されていることが証明されている。 従来花粉に対するアレルギーを抑制させる方法として、スギ花粉特異的IgE抗体の産生を抑制する抑制剤は知られていた(特許文献1)。この特許文献では、ヒトの腸内又は発酵食品から分離される細菌を含有させた抑制剤が開示されている。そして、細菌はエンテロコッカス・フェカリスFERM BP−10284(産業技術総合研究所・特許微生物寄託センター寄託番号)であるのが好適であるとされている。特開2007−091694号 アレルギーは、マスト細胞のIgEが抗原であるアレルゲンに結合し、ヒスタミン等を分泌することで生じる。したがって、IgEとアレルゲンとの結合を妨げることでアレルギーの予防が可能であると考えられる。 本発明は、体外において花粉アレルゲンと結合することで、花粉アレルゲンがIgEと結合できないようにする抗体をダチョウから得ることで完成した。より具体的には、本発明の抗体含有花粉アレルギー防御素材は、花粉アレルゲンを免疫したダチョウが産卵した卵から得た抗体である。また、本発明の抗体含有花粉アレルギー防御素材は、花粉症に自然罹患したダチョウが産卵した卵から得た抗体も含む。 本発明のアレルギー防御素材は、体外において花粉アレルギーのアレルゲンに対して特異的に吸着するので、花粉アレルゲンが体内のIgEに結合することを防止することができる。そのため、アレルギー症状を抑えることができるという効果を奏する。ウエスタンブロットの結果を示す写真である。PBS(コントロール)と、花粉アレルゲンと、花粉アレルゲン+本発明の抗体を塗った人の1時間後の所見を示す写真である。 本発明では、花粉症に罹患したダチョウから産卵される卵から抗体を抽出し、上記花粉アレルゲンに対する抗体を大量に回収することに成功し、完成に至った。ダチョウの寿命は60年と驚くほど長く、また開放的な飼育(野外)をするため花粉による感作を受ける確率が高い。そのため、必然的に花粉症になる可能性が高くなると考えられる。 ダチョウは鳥類であるので、体内で産生された抗体が卵に移行する。つまり、花粉症に自然罹患しているダチョウを用いれば卵から花粉アレルギーに対する抗体が大量に回収できる。ダチョウ一羽から年間400グラム(ウサギ800匹分)の抗体を得ることができる。 その抗体を用いれば、体外で花粉アレルゲンを中和(抗原性を失わせる)することが可能となり、人へのアレルギー性を抑制することができる。これらの抗体は、花粉症予防用のマスクやエアコンフィルター、化粧品、目薬、食品(キャンデーやガム)、口腔洗浄剤、点鼻剤として利用できる。また、スプレーや噴霧剤として空間や壁、衣服の花粉アレルゲンの失活にも応用化できる。 すなわち、本発明のポイントは、花粉症のダチョウの卵から抗体を得ること、その抗体がヒトの花粉アレルギーを抑制すること、およびスギ花粉のCryj1だけをダチョウに免疫してもCryj2、Chao1、Chao2に交差する抗体が産生されることである。 野外飼育のダチョウの血液を採取したところ、15頭中4頭にCryj1、Cryj2、Chao1、Chao2への抗体産生が認められた(ELISA)。それらダチョウから産卵された卵の卵黄より卵黄抗体を精製したところ、Cryj1、Cryj2、Chao1、Chao2に強く反応した(ELISA,Western Blotting)。つまり、花粉症に罹患したダチョウの卵黄には花粉アレルゲンに対する抗体が移行しており、大量に回収されることが可能となった。 上記アレルゲンをしみこませた濾紙にダチョウ卵黄抗体を添加し、花粉アレルギー患者(ヒト)の前腕部に塗布した(パッチテスト)ところ、アレルゲン(Cryj1、Cryj2、Chao1、Chao2)のみの濾紙を塗布した場合は、赤発(アレルギー反応)したが、アレルゲンと抗体をしみこませた濾紙では、アレルギー反応が出なかった。つまり、ダチョウ抗体によりヒトの花粉アレルギーが抑制されることが証明された。 次に人為的にダチョウへアレルゲン(Cryj1)を免疫する場合の結果を示す。初回免疫は、フロイントの完全アジュバントにCryj1 30μgを混和し、メスのダチョウの腰部の筋肉内に接種した。追加免疫は、初回免疫2週間後にフロイントの不完全アジュバントにCryj1 30μgを混和し、同メスダチョウの腰部の筋肉内に接種した。追加免疫2週後以降に産卵されるダチョウ卵より抗体を精製した。 抗体の精製法を以下に示す。卵黄からの抗体(IgY)の精製は以下のように行った。まず、卵黄に5倍量のTBS(20mMTris−HCl、0.15M NaCl、0.5%NaN3)と同量の10%デキストラン硫酸/TBSを加え20分攪拌する。そして1MCaCl2/TBSを卵黄と同量加え攪拌し、12時間静置する。 その後、15000rpmで20分遠心し上清を回収する。次に、最終濃度40%になるように硫酸アンモニウムを加え4℃で12時間静置する。その後、15000rpmで20分遠心し、沈殿物を回収する。最後に、卵黄と同量のTBSに再懸濁し、TBSにて透析する。この課程により90%以上の純度のIgYの回収が可能となった。1個の卵黄より2〜4gのIgYを精製することができた。 <ELISA法による測定> 以下のELISAにより、得られた抗体の抗原反応性を測定した。2μg/mLのCryj1、Cryj2、Chao1、Chao2をそれぞれELISA用96穴マイクロプレートの各wellに100μl入れ、室温で2時間放置した。その後、PBSで3回洗浄したのち、市販のブロッキング溶液(ブロックエース:大日本住友製薬)を各wellに100μl入れ2時間放置した。その後、PBSで3回洗浄したのち、免疫前および免疫後のダチョウIgY抗体の段階希釈液(2mg/mLを原液として100倍、200倍〜と2倍段階希釈)を各wellに50μl入れ室温で1時間放置した。 その後、PBSで3回洗浄したのちペルオキシダーゼ標識抗ダチョウIgY・ウサギポリクローナル抗体(自作)を各wellに100μl入れ45分間放置した。PBSで3回洗浄したのち市販のペルオキシダーゼ用発色キット(住友ベークライト)により30分間発色し、ELISA用プレートリーダーにより吸光度(450nm)を測定した。得られた結果を、正常ダチョウ(花粉症に罹患していないダチョウ)のIgY(卵黄抗体)の吸光度値の2倍以上となる最高希釈倍率で示した。結果を表1に示す。 野外で飼育されていた雌のダチョウは血液(血清)内にアレルゲン(Cryj1、Cryj2、Chao1、Chao2)に対する抗体を有している。さらに、それら抗体は卵黄にも移行している。Cryj1のみを免疫したダチョウからの血清、卵黄の抗体は、Cryj2、Chao1、Chao2にも交差できる(つまり1アレルゲンを免疫するだけで、スギとヒノキのアレルゲンに交差する抗体が得られる)。 <ウエスタンブロット法> 8%SDS−PAGEによりCryj1、Cryj2、Chao1、Chao2それぞれを20μg電気泳動し、PVDF膜に転写後に、花粉症ダチョウ(No.1)の卵黄より得た抗体(1000倍希釈)を1時間室温で反応させた。界面活性剤入りPBSで洗浄後、HRP標識抗ダチョウIgYウサギ抗体を1時間室温で反応させた。PBSで洗浄後、ECLキットによりレントゲンフィルムにて可視化した。結果を図1に示す。花粉症ダチョウの卵黄から回収した抗体は、スギ花粉およびヒノキ花粉に強く反応することがわかる。 <ダチョウ抗体の花粉アレルギーに対する効果(パッチテスト)> 直径7mmの円形濾紙にスギアレルゲン(Cryj1:20μgとCryj2:20μg)をしみこませたものを、花粉アレルギー患者ボランティア26人の前腕部皮膚に塗布した。上記、アレルゲン含有濾紙にダチョウ抗体(花粉症罹患ダチョウ(No.1)の卵黄から得た卵黄抗体20μg)を添加させたものを、同人物の前腕部皮膚の別箇所に塗布した。また、対照として、PBSのみをしみこませた濾紙を同人物の前腕部皮膚の別箇所に塗布した。24時間後の濾紙塗布部分の発赤の程度を観察した。表2にその結果を示す。 スギ花粉抗原だけをしみこませた場合は、26人中24人にダチョウの抗体を添加場合は、被験者26人のうち24人に発赤が確認されたが、ダチョウの抗体を添加した場合は、3名に発赤が確認されただけであった。 図2には、上記のものを同人物の前腕部皮膚の別箇所に塗布した場合の1時間後の写真を示す。ダチョウ抗体を添加することでスギ花粉に対するアレルギー反応(発赤)が抑制された。絆創膏の後は、3か所ともに残っている。 その抗体を用いれば、体外で花粉アレルゲンを中和(抗原性を失わせる)することが可能となり、人へのアレルギー性を抑制することができる。これらの抗体は、花粉症予防用のマスクやエアコンフィルター、化粧品、目薬、食品(キャンデーやガム)、口腔洗浄剤、点鼻剤として利用できる。また、スプレーや噴霧剤として空間や壁、衣服の花粉アレルゲンの失活にも応用化できる。 花粉アレルゲンを免疫したダチョウが産卵した卵から得た抗体からなる抗体含有花粉アレルギー防御素材。 花粉症に自然罹患したダチョウが産卵した卵から得た抗体からなる抗体含有花粉アレルギー防御素材。 【課題】アレルギーは、マスト細胞のIgEが抗原であるアレルゲンに結合し、ヒスタミン等を分泌することで生じる。したがって、IgEとアレルゲンとの結合を妨げることでアレルギーの予防が可能であると考えられる。【解決手段】本発明の抗体含有花粉アレルギー防御素材は、花粉アレルゲンを免疫したダチョウが産卵した卵から得た抗体からなる抗体含有花粉アレルギー防御素材である。また、本発明の抗体含有花粉アレルギー防御素材は、花粉症に自然罹患したダチョウが産卵した卵から得た抗体も含む。【選択図】なし