生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_酸塩基触媒を用いる製造方法並びに酸塩基触媒
出願番号:2012024551
年次:2013
IPC分類:B01J 31/12,B01J 31/22,B01J 23/30,B01J 23/20,C07C 273/18,C07C 275/24,C07C 275/26,C07C 275/06,C07F 7/10,C07D 239/96,C07D 235/26,C07D 239/70,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

水野 哲孝 米原 宏司 住田 康隆 JP 2013158740 公開特許公報(A) 20130819 2012024551 20120207 酸塩基触媒を用いる製造方法並びに酸塩基触媒 株式会社日本触媒 000004628 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 水野 哲孝 米原 宏司 住田 康隆 B01J 31/12 20060101AFI20130723BHJP B01J 31/22 20060101ALI20130723BHJP B01J 23/30 20060101ALI20130723BHJP B01J 23/20 20060101ALI20130723BHJP C07C 273/18 20060101ALI20130723BHJP C07C 275/24 20060101ALI20130723BHJP C07C 275/26 20060101ALI20130723BHJP C07C 275/06 20060101ALI20130723BHJP C07F 7/10 20060101ALI20130723BHJP C07D 239/96 20060101ALI20130723BHJP C07D 235/26 20060101ALI20130723BHJP C07D 239/70 20060101ALI20130723BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130723BHJP JPB01J31/12 ZB01J31/22 ZB01J23/30 ZB01J23/20 ZC07C273/18C07C275/24C07C275/26C07C275/06C07F7/10 SC07D239/96C07D235/26 BC07D239/70C07B61/00 300 7 OL 39 4G169 4H006 4H039 4H049 4G169AA06 4G169BA21A 4G169BA21B 4G169BA27A 4G169BA27B 4G169BA28B 4G169BA42A 4G169BA47A 4G169BB06A 4G169BB06B 4G169BC02B 4G169BC15A 4G169BC20A 4G169BC25A 4G169BC26A 4G169BC27A 4G169BC30A 4G169BC34A 4G169BC38A 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4H049VT17本発明は、酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法並びに該製造方法に用いられる酸及び/又は塩基触媒に関する。より詳しくは、原料化合物から反応生成物を製造するに際し、特に、二酸化炭素等を原料として工業的に有用な化合物を製造するに際し、酸及び/又は塩基触媒を用いて製造する方法、並びに、該製造方法に好適に用いられる酸及び/又は塩基触媒に関する。オキソ酸塩は、中心原子に複数の酸素原子が配位した構造を有する化合物である。このようなオキソ酸塩の用途に関して、タングステン酸を担体に担持させて焼成して調製された固体酸を酸触媒として用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。ところで、酸塩基触媒を用いて有用な有機化合物を合成する手法が知られていて、中でも、強酸や強塩基触媒等を用いた反応系において、二酸化炭素を原料の1つとして様々な有機化合物を合成することが注目され、様々な検討がなされている。二酸化炭素は、入手が容易であるだけでなく、近年は、工場等から排出される二酸化炭素が問題視され、排出量の低減が求められていることから、排出される二酸化炭素を有用な化合物に転換することができれば、環境問題への対応の点からも好ましい。また、二酸化炭素は、有機化合物における種々の官能基と反応して有用な化合物を合成することができることから、二酸化炭素を用いる製法は、工業原料等として用いられる有機化合物の製造方法として注目されている。しかしながら、種々の反応系において収率や転化率が低く、反応効率や生産性等を向上させ、工業的に実用化され得るように改善する余地があった。また、二酸化炭素等を用いて更に多様な有機化合物を合成するために、二酸化炭素等と反応する基質がもつ官能基の種類を豊富にすることができるように工夫する余地があった。特開2007−175649号公報(第1−2頁)上述したように、タングステン酸を担体に担持させた固体酸が酸触媒として機能することが開示されている。しかしながら、タングステン酸等のオキソ酸塩を触媒として用いる場合、固体酸触媒以外の形態で用いることは開示されていない。そのような形態としては、均一系触媒、塩基触媒としての形態が挙げられ、その場合、均一系触媒としての有利な点として、例えば、反応効率を高めることができる可能性がある。また、酸触媒を用いる反応だけではなく、塩基触媒を用いる反応に対しても適用が可能となる。二酸化炭素等を用いて多様な有機化合物を合成する工程において、そのような工程に好適な触媒を選択することができれば、収率や転化率を向上させることができ、また、基質がもつ官能基の種類を豊富にすることができる可能性がある。本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、酸触媒としてだけではなく、塩基触媒としても用いることができ、また、均一系触媒の形態で供給することができ、しかも、二酸化炭素等を用いて多様な有機化合物を合成する工程において好適な触媒作用を発揮し得る酸及び/又は塩基触媒を用いて製造する方法、並びに、該製造方法に好適に用いられる酸及び/又は塩基触媒を提供することを目的とする。本発明者は、酸塩基触媒を用いて有用な有機化合物を合成する手法について種々検討したところ、専ら酸触媒として知られていたオキソ酸塩に着目し、特定の遷移金属元素を有するオキソ酸塩が酸触媒としてだけではなく、塩基触媒として好適であることを見いだした。そして、このような単核オキソ酸塩が均一系触媒として機能することができ、酸塩基触媒を用いる反応系において高い収率を達成することができること、特に、二酸化炭素等を原料の1つとして様々な有機化合物を合成する反応系において好適に用いることができることを見いだしたものである。このようなオキソ酸塩において、特定の遷移金属元素とは、周期律表における第4族〜第6族元素からなる群より選択される遷移金属元素である。例えば、これらの族及び隣接する第7族の遷移金属元素を比較すると、酸塩基触媒として高い収率を得る順に並べれば、タングステン(W)>バナジウム(V)>モリブデン(Mo)>レニウム(Re)となる。タングステン(W)が最も収率が高く、タングステン(W)とバナジウム(V)が酸塩基触媒として優れ、次いでモリブデン(Mo)を挙げることができる。隣接する第7族に属するレニウム(Re)の活性は低く、第5族及び第6族元素に属する遷移金属元素の活性とは大きく異なる。単核オキソ酸塩においては、中心原子を第4族〜第6族元素に属する遷移金属元素とする場合、特に第5族及び第6族元素に属する遷移金属元素とする場合が、特異的であるといえる。これらのことから、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。すなわち本発明は、原料化合物から反応生成物を製造するに際し、酸及び/又は塩基触媒を用いて製造する方法であって、上記製造方法は、酸及び/又は塩基触媒としてオキソ酸塩を用いて反応させる工程を含み、上記オキソ酸塩は、複数の酸素原子が1つの金属元素に対して結合した単核の錯体であり、金属元素として周期律表における第4族〜第6族元素からなる群より選択される遷移金属元素を有する酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法である。以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。本発明のオキソ酸塩は、複数の酸素原子が1つの金属元素に対して結合した単核の錯体である。すなわち、錯体の中心原子となる金属元素が1つであり、それに対して複数の酸素原子が結合するという基本骨格を有することになる。なお、本発明において、ある原子が中心原子に結合しているという場合、共有結合を形成していることが好ましいが、配位結合、イオン結合、分子間力による結合等であってもよく、ある原子が中心原子と何らかの化学的結合力によって結びつき、中心原子に配位していると認められればよい。本発明のオキソ酸塩において、上記中心原子は、周期律表の第4族〜第6族から選択される少なくとも1種の遷移金属元素である。なお、上記族番号は、旧族番号で表すと、第4A族(IVA)、第5A族(VA)、第6A族(VIA)となる。上記第4族〜第6族に属する遷移金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf);バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta);クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等が挙げられる。本発明においては、いずれの元素を選択しても、同族元素は同様の化学特性をもつことから、その効果に差異はあるが同様の触媒作用を発揮するといえる。族番号が違うものであっても、族番号が隣接すること、また、すべて遷移金属元素としての特性を有することから、後述する実施例において触媒としての作用が証明された実施形態以外の形態であっても、その効果に差異はあるが酸塩基触媒としての触媒作用を発揮するといえる。但し、単核オキソ酸塩において、隣接する族に属する元素であったとしても、例えば、第7族に属する遷移金属元素が中心原子となる場合は、本発明の有利な効果を奏することにはならない。したがって、本発明においては、第4族〜第6族から選択される遷移金属元素を中心原子とすることに技術的意義があり、第4族〜第6族という隣接する族において、本発明の有利な効果に差異があるとはいえ酸塩基触媒としての触媒作用を発揮することになる。上記オキソ酸塩は、金属元素として、チタン、ジルコニウム、タングステン、バナジウム又はモリブデンを有することが好ましい。すなわち、単核オキソ酸塩において、中心原子がチタン、ジルコニウム、タングステン、バナジウム又はモリブデンであることが好ましい。また、酸塩基触媒として用いるときに高い収率を得ることができるという点から、上述したように、より好ましい遷移金属元素から順に、タングステン、バナジウム、モリブデンとなる。更に好ましくは、タングステン、バナジウムである。上記オキソ酸塩の最も好ましい形態は、金属元素としてタングステンを有する形態である。タングステンを中心原子とする形態は、本発明のオキソ酸塩において酸塩基触媒としての活性をより高くすることができる。上記オキソ酸塩の好ましい形態を化学式で表すと、下記一般式(1)〜(3)で表される。[XO4]2− (1)[YO4]3−、[YO3]− (2)[ZO3]2− (3)上記一般式中、Xは、中心原子であり、周期律表における第6族元素からなる群より選択される遷移金属元素を表す。Yは、中心原子であり、周期律表における第5族元素からなる群より選択される遷移金属元素を表す。Zは、中心原子であり、周期律表における第4族元素からなる群より選択される遷移金属元素を表す。本発明のオキソ酸塩は、上記一般式(1)〜(3)で表されるようにアニオンの形態である化合物であってもよく、カチオンを有する化合物であってもよい。カチオンを有する場合、下記一般式(1’)〜(3’)のように表すことができる。Am[XO4]n (1’)Am[YO4]n、Am[YO3]n (2’)Am[ZO3]n (3’)上記一般式中、X、Y、Zは、上記と同様である。Aは、カチオンを表す。mは、カチオンであるAの数を表し、1以上の数である。nは、アニオンである[XO4]、[YO4]、[YO3]、[ZO3]の数を表し、1以上の数である。m及びnは、カチオン及びアニオンの価数によって決まることになる。Aが複数ある場合、Aは同一であってもよく、異なっていてもよい。本発明においては、上記オキソ酸塩は、均一系触媒となるものである。均一系触媒とは、担体に担持させて調製される固体触媒と区別されるものであり、触媒に関する技術分野において均一系触媒であると評価されるものであればよい。均一系触媒として用いる場合は、例えば、上記オキソ酸塩を触媒として用いる反応系において、反応溶液中に溶解するものであることが好ましい。例えば、上記カチオンを選択することにより、オキソ酸塩を均一系触媒とすることができる。また、用いるカチオンの種類等によっても、反応性等に影響を与えるものである。本発明における好ましいカチオンについては後述する。また、本発明における上記オキソ酸塩は、不均一系触媒として用いることもできる。不均一系触媒として用いる場合は、例えば、当該オキソ酸塩をイオン交換樹脂等に吸着させた形態、無機担体に担持した形態等で用いることができる。上記オキソ酸塩の好ましい形態としては、[WO4]2−、[MoO4]2−、[VO4]3−、[VO3]−、[TiO3]2−等が挙げられる。また、カチオンを有する場合の好ましい形態としては、上記オキソ酸塩の好ましい形態に、後述のカチオンを組合せたもの等が挙げられる。より好ましい形態としては、(TPA)2[WO4]、(TPA)2[MoO4]、(TPA)3[VO4]、(TPA)[VO3]、(TPA)2[TiO3]、(TBA)2[WO4]、(TBA)2[MoO4]、(TBA)3[VO4]、(TBA)[VO3]、(TBA)2[TiO3]等が挙げられ、更に好ましい形態としては、(TBA)2[WO4]等が挙げられる。なお、「TPA」は「テトラ−n−プロピルアンモニウム」、「TBA」は「テトラ−n−ブチルアンモニウム」を意味する。本発明におけるオキソ酸塩の一例である(TBA)2[WO4]の製造方法を以下に記載する。当該オキソ酸塩の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、中心原子を有する原料及びカチオン原料を用い、溶媒中で反応させ、オキソ酸塩を製造することができる。上記中心原子を有する原料としては、上記中心原子を有するものであれば特に限定されないが、以下のようなものが挙げられる。タングステン原料としては、例えばタングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸セシウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸、酸化タングステン水和物等が挙げられる。バナジウム原料としては、例えばバナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、バナジン酸セシウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸バリウム、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸等が挙げられる。モリブデン原料としては、例えばモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、酸化モリブデン等が挙げられる。ニオブ原料としては、例えばニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸セシウム、ニオブ酸カルシウム、ニオブ酸バリウム、ニオブ酸アンモニウム、ニオブ酸等が挙げられる。タンタル原料としては、例えばタンタル酸ナトリウム、タンタル酸カリウム、タンタル酸セシウム、タンタル酸カルシウム、タンタル酸バリウム、タンタル酸アンモニウム、タンタル酸等が挙げられる。クロム原料としては、例えばクロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、クロム酸セシウム、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム、クロム酸アンモニウム、クロム酸、酸化クロム等が挙げられる。チタン原料としては、例えばチタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸セシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸アンモニウム、チタン酸、酸化チタン水和物等が挙げられる。ジルコニウム原料としては、例えばジルコニウム酸ナトリウム、ジルコニウム酸カリウム、ジルコニウム酸セシウム、ジルコニウム酸カルシウム、ジルコニウム酸バリウム、ジルコニウム酸アンモニウム、ジルコニウム酸、酸化ジルコニウム水和物等が挙げられる。ハフニウム原料としては、例えばハフニウム酸ナトリウム、ハフニウム酸カリウム、ハフニウム酸セシウム、ハフニウム酸カルシウム、ハフニウム酸バリウム、ハフニウム酸アンモニウム、ハフニウム酸、酸化ハフニウム水和物等が挙げられる。上記カチオン(上記一般式(1’)〜(3’)のAで表されるもの)としては、例えば、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、四級有機基含有アンモニウムカチオン、四級有機基含有ホスホニウムカチオン等が挙げられる。また、酸塩基反応において高い触媒活性を有する点から、プロトン、四級有機基含有アンモニウムカチオン、四級有機基含有ホスホニウムアンモニウムカチオンが好ましい。上記四級有機基含有アンモニウムカチオンにおける4個の有機基は、全て同じでも各々異なっていてもよく、全て同じアルキル基であることが好ましい。当該有機基としては、好ましくは炭素数1〜12であり、より好ましくは炭素数1〜10であり、更に好ましくは直鎖状の炭素数1〜8である。すなわち、四級有機基含有アンモニウムカチオンとしては、炭素数4〜48のものが好ましく、より好ましくは炭素数4〜40のものである。上記四級有機基含有アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリラウリルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオン、セチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ−n−プロピルアンモニウムカチオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオンが好ましい。より好ましくは、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオンである。上記のカチオン原料としては、例えば硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物塩、酢酸塩、リン酸塩、水酸化物塩等が挙げられ、好ましくは硝酸塩、ハロゲン化物塩、酢酸塩、水酸化物塩である。硝酸塩を使用すると、不純物の混入やタングステンへの配位を防ぎ、前記オキソ酸塩構造を保持しやすい。上記カチオン原料の使用量は、製造工程、生産性、及び、コスト等の点から、上記中心原子を有する原料100質量部に対して、好ましくは0.001〜100000質量部であり、より好ましくは0.01〜10000質量部である。上記製造方法においては、溶媒を使用することができる。当該溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては1種又は2種以上用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素化合物;リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。上記溶媒の使用量としては、製造工程、生産性、及びコストの点から、反応基質100質量部に対して、好ましくは0.1〜10000質量部であり、より好ましくは1〜5000質量部である。反応温度としては、製造工程、生産性、及び、コストの点から、好ましくは0〜250℃であり、より好ましくは10〜200℃である。反応時間としては、製造工程、生産性、及び、コストの点から、好ましくは0.1〜60時間であり、より好ましくは1〜50時間である。上記オキソ酸塩の用途としては、塩基触媒として用いられることが好ましい。一般的に、塩基触媒を用いれば反応する、反応効率が向上する、転化率が向上する、収率が向上するといった反応であれば本発明におけるオキソ酸塩を触媒として適用することができる。種々の塩基触媒を用いる反応系を後述するが、中でも、上記オキソ酸塩を用いる製造方法は、二酸化炭素を原料の1つとして有機化合物を製造する方法に適用されることが好ましい。二酸化炭素を用いる反応は、上述したように工業的有機化学の分野において重要な技術的意義がある。このような反応において、上記オキソ酸塩は、(1)触媒活性が高いため、少ない使用量であっても高い収率を得ることができる、(2)反応基質における様々な置換基に対して耐性がある、(3)触媒性能の保持性が高いため、再使用しても高い触媒性能を発揮することができる、といった点において有利な効果を奏することになる。本発明の製造方法は、上記オキソ酸塩に加えて、上記オキソ酸塩の金属元素とは異なる金属元素を有する化合物を酸及び/又は塩基触媒として用いて反応させる工程を含み、上記化合物は、金属元素として周期律表における第3族及び第7族元素〜第15族元素からなる群より選択される遷移金属元素を有する酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法もまた、本発明の1つである。なお、上記第2触媒成分において、上記族番号は、旧族番号で表すと、第3族(IIIA)及び第7族(VIIA)〜第15族(VB)の一部となる。本明細書においては、上記オキソ酸塩を「第1触媒成分」、上記周期律表における第3族及び第7族〜第15族元素からなる群より選択される遷移金属元素を有する化合物を「第2触媒成分」ともいう。上記第1触媒成分及び第2触媒成分を用いる製造方法においては、第1触媒成分のみでは充分な触媒活性を得られにくい反応系において有効であり、第2触媒成分を用いることによって触媒活性をより高め、収率等をより向上させることができる。上記第1触媒成分及び第2触媒成分を用いる場合、その使用量比(第1触媒成分/第2触媒成分のモル比)としては、反応性・経済性・安全性の点から、100/1〜1/100であることが好ましく、より好ましくは90/1〜1/90である。上記第2触媒成分の化合物において、第3族及び第7族〜第15族に属する遷移金属元素としては、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、上記第2触媒成分の化合物における遷移金属元素としては、マンガン、鉄、ロジウム、ニッケル、銅、銀、金、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、インジウム、ゲルマニウム、錫が好ましく、ロジウム、ニッケル、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、インジウム、錫がより好ましく、ロジウムが更に好ましい。本発明の製造方法において、第1触媒成分及び第2触媒成分における金属元素の組み合わせとしては、第1触媒成分における遷移金属元素がタングステン、バナジウム又はモリブデンであり、第2触媒成分における遷移金属元素がマンガン、鉄、ロジウム、ニッケル、銅、銀、金、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、インジウム、ゲルマニウム、錫であることが好ましい。より好ましくは、第1触媒成分がタングステン又はバナジウムであり、第2触媒成分が鉄、ロジウム、ニッケル、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、インジウム、錫である。更に好ましくは、第1触媒成分がタングステンであり、第2触媒成分がロジウムである。上記第2触媒成分は、第1触媒成分と同様に均一系触媒であることが好ましく、また、その構成は、第7族〜第15族からなる群より選択される遷移金属元素に、アセテート(OAc)、フルオロメタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート(OTf)、アルコキシド、ナイトレート、ハロゲン、ホウ素・ケイ素・窒素・リン・カルベン・ヒ素・酸素・硫黄・セレン・テルルを配位点とする配位子等が配位している化合物であることが好ましい。具体的には、La(OTf)3、Fe(OAc)3、Rh2(OAc)4、Ni(OAc)2、CuCl2、CuCl、CuBr2、Zn(OTf)2、B(OCH3)3、Al(CH3)3、Sn(OC4H9)4等を挙げることができる。本発明の製造方法に用いられる酸及び/又は塩基触媒もまた、本発明の1つである。上記酸及び/又は塩基触媒は、上記オキソ酸塩を必須として構成されることになり、触媒として用いられる反応系に応じて、上記オキソ酸塩のみによって構成されていてもよく、また、上記オキソ酸塩と他の成分とによって構成されていてもよい。他の成分としては、触媒として機能する成分であってもなくてもよい。触媒として機能しない成分を含む場合、該成分と上記オキソ酸塩を必須とする触媒として機能する成分とが一体となって本発明の酸及び/又は塩基触媒を構成することになる。この場合、触媒として機能する成分が主体的に含まれるようにすることが好ましい。なお、「主体的に含まれる」とは、触媒100質量%に対して、50質量%以上含まれることを意味する。好ましくは70質量%であり、より好ましくは90質量%以上である。上記酸及び/又は塩基触媒の好ましい形態としては、上記オキソ酸塩のみによって構成される形態、上記オキソ酸塩を第1触媒成分とし、それとともに上記第2触媒成分とによって構成される形態を挙げることができる。以下では、本発明の製造方法について、上述した以外の好ましい形態について詳述する。本発明の製造方法が好適に適用できる反応としては、二酸化炭素を用いる反応と、二酸化炭素を用いない反応等が挙げられる。上記二酸化炭素を用いる反応としては、次のような反応を一例として挙げることができる。当該反応においては、下記する以外の種々の官能基をもつ原料化合物も用いることができる。また、二酸化炭素を用いる反応としては、触媒を用いて芳香族ジアミンと二酸化炭素を反応させて尿素誘導体を得る反応、触媒を用いて第1級アミンと二酸化炭素を反応させて尿素誘導体を得る反応等も、一例として挙げることができる。なお、尿素誘導体の従来の合成法は、高い毒性と腐食性を有するホスゲン及びその誘導体(図22、ルートA)、又は、一酸化炭素(酸化剤と併用)、ジアルキルカーボネート及び尿素等の様々な非ホスゲンカルボニル試剤(図22、ルートB−D)を使用している。しかし、本発明における二酸化炭素を用いた触媒的方法は、従来の方法とは異なり、高い原子効率性を有し、副生物が水のみであるため、経済的であり、環境的にも有利である(図22、ルートE)。上記二酸化炭素を用いない反応としては、次のような反応を一例として挙げることができる。当該反応においては、下記する以外の種々の官能基をもつ原料化合物も用いることができる。上記二酸化炭素を用いる反応においては、上記オキソ酸塩のみによって触媒を構成することが好ましく、また、上記二酸化炭素を用いない反応においては、上記オキソ酸塩を第1触媒成分とし、上記第2触媒成分とともに触媒を構成することが好ましい。第2触媒成分を用いる場合は、第1触媒成分のみを用いる場合と比較して、これらの触媒成分の機能が相まって発揮されることにより、飛躍的に触媒活性を高めることができる。これらの反応においても、上記オキソ酸塩の金属元素をタングステン、バナジウム又はモリブデンとすることが好ましい。より好ましくは、タングステン又はバナジウムであり、最も好ましくは、タングステンである。本発明の製造方法が適用できる反応、すなわち、酸塩基反応を例示すると、(1)エステル化反応、(2)炭素骨格異性化反応、(3)重合反応、(4)付加反応、(5)開環反応、(6)脱離反応、(7)アセタール化反応、(8)ケタール化反応、(9)芳香族求電子置換反応、(10)芳香族求核置換反応、(11)アルドール反応、(12)ピナコール転移反応、(13)ベックマン転移反応、(14)カニッツァロ反応、(15)クライゼン縮合反応、(16)ダルゼンズ縮合反応、(17)ディールズアルダー反応、(18)フリーデルクラフツ反応、(19)フリース転移反応、(20)ガッターマン・コッホ反応、(21)マンニッヒ反応、(22)マイケル反応、(23)プリンス反応、(24)グリコシル化反応、(25)加溶媒分解反応、(26)1,3−双極性環状付加反応、(27)エン反応やカルボニル−エン反応等を挙げることができる。これら酸塩基反応により、官能基や骨格が新しく構築された有機化合物の製造が可能となる。上記酸及び/又は塩基触媒を上述した酸塩基反応に使用する場合の使用量としては、反応基質100質量部に対して、0.0001質量部以上とすることが好ましく、また、1000質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.001質量部以上であり、また、500質量部以下である。なお、本発明における触媒の種類は、1種としてもよく、2種以上としてもよいが、本発明における触媒を2種以上用いる場合は、該触媒の合計量が上記範囲内となることが好ましい。なお、本発明の製造方法においては、原料化合物から反応生成物を製造することになるが、反応生成物を構成することになる原料化合物を基質又は反応基質ともいう。上記使用量は、反応生成物を構成することになる原料化合物すべてを反応基質とし、それを100質量部としたときの上記酸及び/又は塩基触媒の使用量である。上記酸塩基反応の反応方法としては、気相反応又は液相反応のいずれの反応方法においても可能であるが、本発明における触媒が均一系触媒となることから、液相中で反応を行うのが好適であり、充分な触媒活性を発揮させることができる。上記酸塩基反応を液相中で行う場合、用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が挙げられ、有機溶媒としては1種又は2種以上用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の含窒素化合物;リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。なお、基質化合物が反応条件で液体の場合には、上記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。上記酸塩基反応における反応条件としては、液相反応及び気相反応ともに以下のとおり。反応温度としては、製造工程、生産性、及び、コストの点から、好ましくは0〜250℃であり、より好ましくは10〜200℃である。反応時間としては、製造工程、生産性、及び、コストの点から、好ましくは0.1〜60時間であり、より好ましくは1〜50時間である。反応圧力は、常圧(0.1MPa)以上が好ましい。また、15.5MPa以下が好ましく、5.1MPa以下がより好ましい。また、減圧下で反応を行うこともできる。また、上記酸塩基反応の反応方法としては、本発明における触媒を、例えばイオン交換樹脂や無機担体等に吸着させた形態で、不均一系触媒として用いることもできる。上記イオン交換樹脂としては、例えばアンモニウム塩基含有イオン交換樹脂等が挙げられる。反応温度としては、製造工程、生産性、及び、コストの点から、好ましくは0〜250℃であり、より好ましくは10〜200℃である。反応時間としては、製造工程、生産性、及び、コストの点から、好ましくは0.1〜60時間であり、より好ましくは1〜50時間である。反応圧力は、常圧(0.1MPa)以上が好ましい。また、15.5MPa以下が好ましく、5.1MPa以下がより好ましい。また、減圧下で反応を行うこともできる。上記酸塩基反応において、本発明の酸及び/又は塩基触媒を用いることにより、酸塩基反応によって原料化合物から様々な反応生成物を製造すること、特に、二酸化炭素等を原料として工業的に有用な化合物を製造することが可能となる。本発明の酸及び/又は塩基触媒を用いた製造方法においては、(1)触媒活性が高いため、少ない触媒使用量であっても高い収率を得ることができる、(2)反応基質における様々な置換基に対して耐性がある、(3)触媒性能の保持性が高いため、再使用しても高い触媒性能を発揮することができる、といった点において有利な効果を奏することになる。本発明の製造方法を実施することにより、各種工業製品の製造において用いる中間体や原料として有用な化合物を効率よく供給することが可能となる。化合物(I)の183W−NMRスペクトルを示す図である。化合物(I)のIRスペクトルを示す図である。化合物(I)のラマンスペクトルを示す図である。化合物(I)のCSI−MSスペクトル(溶媒DMF)を示す図である。TBA2[W6O19]の183W−NMRスペクトルを示す図である。TBA2[W6O19]のIRスペクトルを示す図である。TBA2[W6O19]のラマンスペクトルを示す図である。TBA2[W6O19]のCSI−MSスペクトル(溶媒DMF)を示す図である。TBA4[W10O32]の183W−NMRスペクトルを示す図である。TBA4[W10O32]のIRスペクトルを示す図である。TBA4[W10O32]のラマンスペクトルを示す図である。化合物(1a)の1H−NMRスペクトルを示す図である。(a)は化合物(1a)の1H−NMRスペクトルを、(b)は化合物(I)存在下における化合物(1a)の1H−NMRスペクトルを、(c)は二酸化炭素及び化合物(I)存在下における化合物(1a)の1H−NMRスペクトルを示す。化合物(I)の13C−NMRスペクトルを示す図である。(a)は二酸化炭素存在下における化合物(I)の、(b)は二酸化炭素及び化合物(I)存在下における化合物(1a)の13C−NMRスペクトルを示す。化合物(I)の183W−NMRスペクトルを示す図である。(a)は二酸化炭素導入前の、(b)は二酸化炭素導入後の化合物(I)の183W−NMRスペクトルを示す。二酸化炭素及び化合物(I)存在下における、(a)は化合物(1a)の1H−NMRスペクトルを、(b)は化合物(1a)の13C−NMRスペクトルを示す図である。化合物(1a)から化合物(2a)を得る反応機構を示す図である。様々なタングステン中心オキソ酸塩の計算された分子構造と酸素原子のNBO電荷を示す図である。(a)は化合物(3a)の、(b)は化合物(I)存在下における化合物(3a)の、1H−NMRスペクトルを示し、(c)は二酸化炭素存在下での化合物(I)の13C−NMRスペクトルを示す図である。DMF/DMF−d7(0.4/0.2mL)中、233Kにおける二酸化炭素下での化合物(I)(0.5M)の、(A)13C−NMRスペクトル、及び、(B)183W−NMRスペクトルを示す図である。アミンと二酸化炭素の反応についての可能な反応機構を示す図である。大気圧の二酸化炭素圧下での、化合物(I)で触媒された尿素誘導体の合成を示す図である。アミンとカルボニル試剤の反応から尿素誘導体を得る合成経路を示す図である。以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「モル%」を意味するものとする。また、「TBA」は「テトラ−n−ブチルアンモニウム」を意味する。以下の合成例、実施例等において、ガスクロマトグラフィー分析は、Shimadzu GC−2014(InertCap−5キャピラリーカラム(内径0.25mm、長さ60m)装備のフレームイオン化検出器)を用いて行った。NMRスペクトルは、JEOLJNM−EX−270(1H,270MHz;11B,86.4MHz;13C,67.8MHz;183W,11.2MHz)スペクトロメーターにより記録した。ケミカルシフト(δ)は、1H及び13C−NMRスペクトルはSi(CH3)4から、11B−NMRスペクトルはBF3・H2Oから、183W−NMRスペクトルは2MNa2WO4を標準とし、ppmで記載した。IRスペクトルは、JascoFT/IR−460Plus(KBrディスク使用)で測定した。アセトニトリル及びトルエン(共に関東社製)は、Ultimate Solvent System(Glass Contour社製)で精製した。他の溶媒、2−アミノベンゾニトリル(1a〜1i)、芳香族ジアミン(3a〜3j)及びアミン(5a〜5f)は、関東社製、TCI社製又はAldrich社製(試薬グレード)のものを、使用前に精製した。重水素化溶媒(D2O、CD3CN、CDCl3、DMSO−d6及びDMF−d7)は、ACROS社、C/D/N Isotopes社又はAldrich社から購入し、そのまま使用した。キナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2a)〜(2b)、(2d)〜(2i)は、それらの1H及び13C−NMRシグナルと文献データとの比較により同定した。ポリオキソタングステン((TBA)2[WO4](I)、TBA2[W6O19]、TBA4[W10O32]及びTBA4[α−SiW12O40])は、文献の記載に従って合成し、同定した。合成例1:(TBA)2[WO4](I)の合成下記文献を参考に合成した。Che,T.M.;Day,V.W.;Francesconi,L.C.;Fredich,M.F.;Klemperer,W.G.;Shum,W. Inorg.Chem.1985,24,4055。また、結晶構造はベンジルトリメチルアンモニウム塩として、W.Clegg;R.J.Errington;K.A.Fraser;D.G.Richards;J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1993,1105−1107のFig.1で報告されている。0.35Mの[(n−C4H9)4N]OH水溶液(30mL,10.5mmol)を80℃に加熱した。これに、H2WO4(1.4g,5.6mmol)を0.2gずつ5分おきに7回に分けて加えた。この溶液を80℃で5〜10分間、加熱攪拌した後、室温まで冷却し、とけ残りをろ別(Kiriyama5C使用)した。得られた溶液を加熱し、溶液量が約8mLになるまで蒸発させた。80℃でエバポレーターを用いて乾燥し、その後60℃で真空乾燥を24時間行い、(TBA)2[WO4](2.55g、収率66%)を得た。IR(KBr,ν):2990,2958,2945,2919,2874,1474,1464,1455,1379,1364,1240,1166,1109,1069,1058,1031,992,838,738cm−1。183W−NMR(11.2MHz,DMSO−d6,298K):δ=16.5ppm。元素分析:Calcd for [(n−C4H9)4N]2[WO4]:C,52.45;H,9.90;N,3.82;W,25.09。Found:C,52.20;H,9.93;N,3.84;W,24.91。図1〜図4に、化合物(I)の183W−NMRスペクトル、IRスペクトル、ラマンスペクトル、CSI−MSスペクトルをそれぞれ示す。合成例2:TBA2[W6O19]の合成下記文献を参考に合成した。Fournier,M.;Inorg.Synth.1990,27,80。Na2WO4・2H2O(3.3g,10mmol)と無水酢酸(4mL)をDMF(3mL)に溶解させ、100℃で3時間攪拌した。この溶液に、無水酢酸(2mL)と12MのHCl(1.8mL)をDMF(5mL)に溶解させて得た溶液を加え、1〜2分間攪拌し、沈殿をろ別(Kiriyama5C使用)した。この沈殿をMeOH(5mL)で洗浄し、この溶液を室温まで冷却した。この溶液に、[(n−C4H9)4N]Br(1.5g,4.7mmol)のMeOH(5mL)溶液を加え、5分間攪拌後、沈殿をろ過・回収した(Kiriyama5C使用)。沈殿をMeOH(2mL)、Et2O(5mL)で洗浄し、乾燥して、TBA2[W6O19](2.3g、収率84%)を得た。元素分析:Calcd for [(n−C4H9)4N]2[W6O19]:C,20.31;H,3.84;N,1.48;W,58.30。Found:C,20.21;H,3.76;N,1.39。図5〜図8に、TBA2[W6O19]の183W−NMRスペクトル、IRスペクトル、ラマンスペクトル、CSI−MSスペクトルをそれぞれ示す。合成例3:TBA4[W10O32]の合成下記文献を参考に合成した。Fournier,M.;Inorg.Synth.1990,27,81。Na2WO4・2H2O(1.6g,4.9mmol)をH2O(10mL)に溶解させ、沸騰させた。この溶液に、3MのHCl(3.4mL,10mmol)を素早く加え、1〜2分間攪拌した。この溶液に、[(n−C4H9)4N]Br(0.64g,2.0mmol)をH2O(1mL)に溶解させて得た溶液を加え、1〜2分間攪拌し、沈殿をろ別(Kiriyama5C使用)した。沸騰水(4mL×3)、EtOH(6mL×2)、Et2O(10mL×2)で沈殿を洗浄し、乾燥させた。乾燥させた沈殿を、MeCN(1mL)に80℃で溶解させ、室温まで冷却した。得られた結晶をろ別(Kiriyama5C使用)し、Et2Oで洗浄し、TBA4[W10O32](0.8g、収率63%)を得た。元素分析:Calcd for [(n−C4H9)4N]4[W10O32]:C,23.15;H,4.37;N,1.69;W,55.37。Found:C,22.78;H,4.34;N,1.62。図9〜図11に、TBA4[W10O32]の183W−NMRスペクトル、IRスペクトル、ラマンスペクトルをそれぞれ示す。合成例4:TBA4[α−SiW12O40]の合成下記文献を参考に合成した。Teze,A;Herve,G.;Inorg.Synth.1990,27,93。ナトリウムメタシリケート(1.1g,5mmol)を、室温で撹拌しながら蒸留水(10mL)に溶解させた(溶液A)。1Lビーカー中でナトリウムタングステート(18.2g,55mmol)を熱水(30mL)に溶解させた(溶液B)。この溶液Bに、タングステン酸の沈殿を溶解させるために強く撹拌しながら、4MのHCl(16.5mL)溶液を5分間かけて滴下した。溶液Aを添加後、すぐに4MのHCl(5mL)溶液を添加した。pHは5〜6であった。この溶液を1時間、100℃に保った。1Mのナトリウムタングステート(5mL,5mmol)溶液を添加後、すぐに4MのHCl(8mL)溶液を添加した。この溶液を室温まで冷却し、分液漏斗に移した。これにEt2O(8mL)と、Et2Oと−20℃に冷やした濃HClの混合液(12mL)を添加した後、下層を回収し、Et2Oを減圧留去した。得られた水溶液に、[(n−C4H9)4N]Br(0.64g,1.99mmol)をH2O(1mL)に溶解させて得た溶液を加え、1〜2分間攪拌し、沈殿をろ別(Kiriyama5C使用)した。沸騰水(4mL×3)、EtOH(6mL×2)、Et2O(10mL×2)で沈殿を洗浄し、乾燥させた。乾燥させた沈殿を、MeCN(1mL)に80℃で溶解させ、室温まで冷却した。得られた結晶をろ別(Kiriyama5C使用)し、Et2Oで洗浄し、TBA4[α−SiW12O40](10g、収率72%)を得た。合成例5:TBA5[α−BW12O40]の合成ホウ素化タングステン酸のテトラブチルアンモニウム塩(TBA4H[α−BW12O40])を文献(Rocchiccioli−Deltcheff,C.;Fournier,M.;Franck,R.;Thouvenot,R.;Inorg.Chem.1983,22,207−216)に従って合成した。273Kに冷却された、TBA4H[α−BW12O40](1.93g、0.5mmol)のアセトニトリル溶液(10mL)に、TBAOH・30H2O(0.4g、0.5mmol)を加え、当該溶液を273Kで2時間撹拌した。不溶物質を濾過により除去し、ジエチルエーテル(250mL)を添加した。得られた溶液を室温で12時間放置し、得られた白色沈殿をデカンテーションで集め、減圧乾燥し、分析的に純粋なTBA5[α−BW12O40](1.44g、収率71%)を得た。IR(KBr、ν):2961,2934,2872,1483,1380,1151,989,946,898,823,743cm−1。11B−NMR(86.4MHz,CD3CN,298K):δ=2.93ppm。183W−NMR(11.2MHz,CD3CN,298K):δ=−115.2ppm。元素分析:Calcd for TBA5[α−BW12O40]:C,23.62;H,4.43;N,1.75。Found:C,23.61;H,4.46;N,1.72。合成例6:TBA6[α−CoW12O40]の合成コバルトタングステン酸(H6[α−CoW12O40])を文献(Baker,L.C.;Shimons,V.E.;J.Am.Chem.Soc.1959,81,4744−4745)に従って合成した。H6[α−CoW12O40](0.46g、0.16mmol)の水溶液(8mL)に、TBABr(0.3g、0.93mmol)を加え、その溶液を10分間撹拌した。得られた青色沈殿を濾過により集め、水(60mL)及びジエチルエーテル(2mL)で洗浄し、減圧乾燥して、分析的に純粋なTBA4H2[α−CoW12O40](0.42g、収率68%)を得た。273Kに冷却された、TBA4H2[α−CoW12O40](0.16g、0.04mmol)のアセトニトリル溶液(1mL)中に、TBAOH・30H2O(0.063g、0.08mmol)を加え、当該溶液を273Kで2時間撹拌した。不溶物質を濾過により除去し、ジエチルエーテル(30mL)を添加した。得られた溶液を室温で12時間放置し、得られた淡青色沈殿をデカンテーションで集め、減圧乾燥し、分析的に純粋なTBA6[α−CoW12O40](0.14g、収率71%)を得た。IR(KBr、ν):2960,2933,2873,1483,1381,1153,1108,1061,1028,934,870,762,692,452,369cm−1。元素分析:Calcd for TBA6[α−CoW12O40]:C,26.45;H,4.99;N,1.93。Found:C,26.33;H,4.91;N,2.09。合成例7:TBAHCO3の合成TBAOH(40%水溶液で2g)の水溶液(4mL)に、室温で2時間、二酸化炭素の泡を吹き込んだ。得られた溶液を、313Kでエバポレーターで濃縮して無色油状物を得、313Kで6時間減圧乾燥した。13C−NMR(67.8MHz,DMF−d7,298K):δ=159.7ppm。元素分析:Calcd for TBAHCO3・3.5H2O:C,55.71;H,12.10;N,3.82。Found:C,55.58,H,12.37,N,3.77。実施例1:化合物(I)を触媒とした、2−アミノベンゾニトリルと二酸化炭素の反応化合物(I)の触媒反応を以下のように行った。化合物(1a)(1mmol)、化合物(I)(20μmol)及びDMSO(2mL)を、マグネティックスターラーが入ったテフロン(R)容器に注ぎ、それをステンレススチールオートクレーブに入れた。このオートクレーブに二酸化炭素(2MPa)を導入し、この反応混合物を373Kで12時間撹拌した。反応完了後、オートクレーブを室温まで冷し、二酸化炭素をゆっくりと排気した。この反応混合物を1M塩酸水溶液(5mL)に加え、得られた沈殿を濾過により集めた。次いで、水(2mL)、トルエン(2mL)及びジエチルエーテル(2mL)で洗浄し、減圧乾燥して、分析的に純粋なキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2a)(1H−NMRによる純度>95%)を得た。単離した生成物を、文献データの1H及び13C−NMRスペクトルと比較することにより同定した。1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.27(s,1H),11.13(s,1H),7.89(dd,J=1.4,8.4Hz,1H),7.64(dt,J=1.5,7.8Hz,1H),7.19−7.13(m,2H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K):δ=162.8,150.3,140.9,134.9,126.9,122.3,115.3,114.3。実施例2:少量の化合物(I)を触媒として用いた化合物(1f)の反応オートクレーブ反応器中に、化合物(I)(化合物(1f)に対して0.2mol%)、化合物(1f)(5mmol)及びDMSO(2mL)を連続的に加えた。二酸化炭素(2MPa)をオートクレーブに導入し、その反応混合物を393Kで24時間撹拌した。反応完了後、オートクレーブを室温まで冷し、二酸化炭素をゆっくりと排気した。この反応混合物を1M塩酸水溶液(25mL)に加え、得られた沈殿を濾過により集めた。次いで、水(35mL)、トルエン(20mL)及びジエチルエーテル(20mL)で洗浄し、減圧乾燥して、分析的に純粋な6−クロロキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2f)(0.9g、収率92%、1H−NMRによる純度99%)を得た。1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.43(s,1H),11.26(s,1H),7.80(d,J=2.7Hz,1H),7.67(dd,J=2.6,8.8Hz,1H),7.17(d,J=8.6Hz,1H)。13C{1H}−NMR:(67.8MHz,DMSO−d6,298K)δ=161.8,150.0,139.7,134.8,126.2,125.9,117.5,115.8。元素分析:Calcd for C8H5N2O2Cl:C,48.88;H,2.56;N,14.25。Found:C,48.61;H,2.82;N,14.03。上記実施例1又は2と同様にして、触媒として化合物(I)を用いて、以下の化合物(2b)〜(2e)、(2g)〜(2i)を合成した。実施例3:6,7−ジメトキシキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2b)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.10(s,1H),10.93(s,1H),7.26(s,1H),6.68(s,1H),3.83(s,3H),3.78(s,3H)。13C{1H}−NMR:(67.8MHz,DMSO−d6,298K)δ=162.3,154.8,150.3,144.9,136.4,107.1,106.1,97.7,55.8,55.7。実施例4:7−メチルキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2c)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.20(s,1H),11.08(s,1H),7.77(d,J=7.8Hz,1H),7.02−6.95(m,2H),2.36(s,3H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K):δ=162.7,150.4,145.6,140.9,126.9,123.6,115.1,112.0,21.4。実施例5:6−メチルキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2d)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.22(s,1H),11.06(s,1H),7.69(s,1H),7.46(dd,J=2.2,8.4Hz,1H),7.07(d,J=8.6Hz,1H),2.28(s,3H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K):δ=162.7,150.1,138.6,135.8,131.4,126.3,115.2,114.0,20.2。実施例6:7−クロロキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2e)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.41(s,1H),11.25(s,1H),7.88(d,J=8.4Hz,1H),7.24−7.13(m,2H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K):δ=162.0,150.1,141.9,139.2,129.0,122.4,114.6,113.3。実施例7:6−フルオロキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2g)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.41(s,1H),11.19(s,1H),7.60−7.50(m,2H),7.21−7.16(m,1H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K):δ=162.1(4JC−F=3.3Hz),157.3(1JC−F=239Hz),150.0,137.5,122.9(2JC−F=23.4Hz),117.5(3JC−F=8.3Hz),115.4(3J=7.3Hz),111.8(4JC−F=3.4Hz)。実施例8:6−ブロモキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2h)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.45(s,1H),11.28(s,1H),7.94(d,J=2.4Hz,1H),7.80(dd,J=2.4,8.6Hz,1H),7.12(d,J=8.4Hz,1H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6):δ=161.7,150.0,140.0,137.5,128.9,117.7,116.2,113.8。実施例9:6−ニトロキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2i)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K):δ=11.78(s,1H),11.72(s,1H),8.59(d,J=2.4Hz,1H),8.46(ddd,J=0.8,2.8,8.9Hz,1H),7.32(d,J=8.9Hz,1H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K):δ=161.6,150.0,145.6,141.8,129.6,123.1,116.6,114.5。実験例1様々な触媒を用いて、ジメチルスルホキシド(DMSO)中での2−アミノベンゾニトリル(1a)と二酸化炭素(2MPa)の反応を調べた。その結果を表1に示す。試験した触媒の中で、化合物(I)を用いて、96%の高収率でキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2a)を得た(表1、エントリー1)。[MO4]n−(M=V,Mo,W及びRe)のナトリウム塩の触媒活性は、W(55%)>V(29%)>Mo(5%)>Re(<1%)(表1、エントリー11−14)の順で減少した。化合物(I)の非存在下、又は、イソポリタングステート(TBA2[W6O19]及びTBA4[W10O32])、ケギン型ヘテロポリタングステート(TBAn[α−XW12O40](X=Si,B及びCo))及びH2WO4の触媒前駆体の存在下では、反応は殆ど起こらなかった(表1,エントリー10及び15−20)。ポリタングステートアニオンの電荷及びサイズは、酸素原子の塩基性度に影響を与え、より高い電荷密度(即ちサイズ当たりの負電荷)を有するタングステートは、より塩基性である。化合物(I)の負電荷は、TBA2[W6O19]の負電荷と同じであるが、化合物(I)のサイズはTBA2[W6O19]のサイズよりも小さく、これは化合物(I)が強塩基性であることを示す。化合物(I)の触媒量を2mol%まで減少させた場合、当該反応は依然として効率的に行われ、化合物(2a)を収率93%で得た(表1、エントリー2)。反応完了後、当該反応混合物に化合物(1a)(1mmol)を添加し、同じ条件下で反応を行った。当該反応は、第1回目と殆ど同じ収率及び選択性で再び行われた(表1、エントリー2−3)。このように、化合物(I)は本来再利用可能である。例え、低圧(0.3MPa)の二酸化炭素下でも、化合物(2a)は収率91%(表1、エントリー2)で得られた。化合物(I)は、TBAOH・30H2Oの単純なブレンステッド塩基よりも、活性がより強かった(表1、エントリー21)。TBABr触媒を、エポキシを用いた二酸化炭素の環付加による環状カーボネートの合成に用いたところ、当該触媒もこの反応に不活性であった(表1、エントリー22)。これら結果は、WO42−が本発明において重要な役割を担っていることを示唆した。試験した溶媒の内、DMSOが最も効果的な溶媒であった(表1、エントリー2)。N,N−ジメチルアセタミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン及びアセトニトリルを用いると、化合物(2a)を収率77,75,49,29%でそれぞれ得た。一方、1,2−ジクロロエタンは貧溶媒であった(表1、エントリー4−9)。実験例22−アミノベンゾニトリルと二酸化炭素の化合物(I)−触媒反応について実験した(表2)。電子供与性及び電子吸引性の基質を用いて、様々な種類の2−アミノベンゾニトリルが変換され、対応のキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオンを高い収率で得た。4,5−ジメトキシ−2−アミノベンゾニトリル(1b)は、6,7−ジメトキシ−キナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2b)を収率96%で得た(表2,エントリー2)。当該化合物は、プラゾシン、ブナゾシン及びドクサゾシンの合成に有用な重要な中間体である。5−ハロゲン置換2−アミノベンゾニトリル((1f)−(1h))の反応は、効率的に進み、対応のキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン((2f)−(2h))を高い収率で得た(表2、エントリー6−8)。5−ニトロ−2−アミノベンゾニトリル(1i)は、塩基性の低いアミノ基のために不活性であること、及び、生成物の錯体混合物は、化学量論量のDBUを用いて、化合物(1i)と二酸化炭素の反応により形成されることが報告されている。一方、化合物(I)−触媒反応は選択的に進み、6−ニトロ−キナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオン(2i)を収率74%で得た(表2、エントリー9)。さらに、化合物(I)を少ない触媒量(化合物(1f)に対して0.2mol%)で用いて、二酸化炭素と化合物(1f)の5mmolスケール反応を行ったところ、効率的に反応が進み、分析的に純粋な化合物(2f)を0.9g(収率92%)単離できた(反応式(iii))。この場合、TONは458に達し、この値は、DBU(19)、TMG(19)、Cs2CO3(3)及び[Bmim]OH(3)系よりもずっと高い(表3)。二酸化炭素の炭素原子上のアミノ基の求核反応により、対応のカルバミン酸を当該反応の中間体として得ること、及び、塩基性触媒が当該工程において重要な役割を果たすことが推測された。WO42−の塩基性(水中での共役酸のpKaが3.7)は、DBU(12.0)及びTMG(13.6)の塩基性よりもずっと弱いが、化合物(I)は当該反応におけるより高い触媒活性を示した。実験例3化合物(I)の役割を解明するために、化合物(1a)と二酸化炭素を用いた場合の化合物(I)の反応性を、1H,13C及び183W−NMRスペクトルによって測定した。化合物(I)存在下における化合物(1a)の1H−NMRスペクトルは、NH2及び3−Hプロトンの低磁場シフトを示した(図12(b))。NH2プロトンの6.28ppmから6.95ppmへのシフトは、化合物(1a)及び化合物(I)間の水素結合を示す。これは、水素結合の存在による当該NH2プロトンの低磁場シフトが報告されているためである。水素結合は、化合物(1a)におけるアミノ基の求核性を強めるであろう。化合物(I)のDMF溶液中への二酸化炭素の導入により、新たな13C−NMRシグナルが163.7ppmに現れた(図13(a))。当該シグナルのケミカルシフトは、カーボネート炭素の化学シフト(約169ppm)よりも、ビカーボネート炭素のケミカルシフト(約161ppm)に近い。さらに、化合物(I)の183W−NMRスペクトルは、二酸化炭素の導入後、シグナルがシフトしたことを示した(図14)。W=O結合のプロトン化が、183W−NMRシグナルの低磁場シフトを引き起こしたことが報告されている。これらの結果は、水存在下、化合物(I)が二酸化炭素と反応して、ビカーボネート種であるTBA2[(HWO4)(HCO3)](II)を形成できることを示唆する。13C−NMRシグナルが、アミジニウムビカーボネートである[DBUH+][HCO3−]及び[PMePh3][HCO3]のビカーボネート炭素にそれぞれあたる、161.1及び160.4ppmに現れた。化合物(II)のビカーボネート炭素が、TBAHCO3での値より低い位置に現れたことは、化合物(II)でのビカーボネートは、単離されるのではなく、[DBUH+][HCO3−]の水素結合と同様の方法で水素結合によりモノプロトン化されたタングステートと内部反応することを示す。一方、化合物(1a)の1H−NMRスペクトルは、TBA4[α−SiW12O40]及びTBA2[W6O19]のような他のタングステートの存在によって、本来、変化しなかった。また、ビカーボネート種に対応する13C−NMRシグナルは観測されなかった。化合物(II)の存在下、化合物(1a)の溶液に二酸化炭素を導入すると、ビカーボネート炭素とアミノプロトンのシグナルは、233Kでそれぞれ163.6及び6.48ppmに現れた(図12(c)及び図13(b))。このことは、化合物(1a)と二酸化炭素が同時に活性化されたことを示すものである。室温を298Kに上げた場合、化合物(1a)と二酸化炭素が反応して対応のカルバミン酸を収率14%で得たこと、及び、化合物(I)が存在しない場合はカルバミン酸が形成されなかったことが、1H及び13C−NMRスペクトルから確認できた(図15)。よって、化合物(I)により、化合物(1a)と二酸化炭素が共同的に活性化されることにより、対応のカルバミン酸の形成を促進した。カルバミン酸を求核的に環化し、次いで転位することにより、生成物(2a)を得た(図16)。結局、単核タングステート(I)は、様々な2−アミノベンゾニトリルと二酸化炭素から、化合物(I)による2−アミノベンゾニトリルと二酸化炭素の特異な共同活性化を経て、対応のキナゾリン−2,4(1H,3H)−ジオンに変換する反応のための高い触媒活性を示した。実施例10インドールとジメチルシリルベンゼンを反応させ、化合物1を得る反応における各溶媒の効果を調べた。その結果を表4に示す。また、上記化合物1を得る反応における各触媒の効果を調べた。その結果を表5〜10に示す。実施例11:化合物(I)を触媒とした、アミンと二酸化炭素の反応化合物(3a)(1mmol)、化合物(I)(0.02mmol)及びN−メチルピロリドン(NMP)(1mL)を、マグネティックスターラーが入ったテフロン(R)容器に注ぎ、それをステンレススチールオートクレーブに入れた。このオートクレーブに二酸化炭素(2MPa)を導入し、この反応混合物を413Kで24時間撹拌した。反応完了後、オートクレーブを室温まで冷やし、二酸化炭素をゆっくりと排気した。この反応混合物を1M塩酸水溶液(5mL)に加え、得られた沈殿を濾過により集めた。次いで、水(2mL)、トルエン(2mL)及びジエチルエーテル(2mL)で洗浄し、減圧乾燥して、化合物(4a)(収率90%)を得た。1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=10.56(s,2H),6.91(s,4H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=155.2,129.6,120.4,108.4。上記実施例11と同様にして、触媒として化合物(I)を用いて、以下の化合物(4b)〜(4e)、(4g)〜(4i)を合成した。実施例12:4−メチルベンズイミダゾール−2−オン(4b)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=10.65(s,1H),10.53(s,1H),6.85−6.71(m,3H),2.25(s,3H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=155.5,129.2,128.5,121.5,120.3,118.1,106.0,16.1。実施例13:5−メチルベンズイミダゾール−2−オン(4c)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=10.47(s,1H),10.43(s,1H),6.80−6.71(m,3H),2.27(s,3H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=155.4,129.8,129.3,127.4,120.8,109.0,108.1,21.0。実施例14:5−フルオロベンズイミダゾール−2−オン(4d)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=10.74(s,1H),10.63(s,1H),6.90−6.85(m,1H),6.79−6.69(m,2H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=157.4(1JC−F=233Hz),155.6,130.3(2JC−F=12.9Hz),126.0,108.7(3JC−F=9.4Hz),106.5(2JC−F=23.4Hz),96.4(2JC−F=27.9Hz)。実施例15:5−クロロベンズイミダゾール−2−オン(4e)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=10.76(brs,2H),6.98−6.89(m,3H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=155.2,130.8,128.6,124.5,120.1,109.5,108.4。実施例16:5−ベンゾイルベンズイミダゾール−2−オン(4g)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=11.11(s,1H),10.88(s,1H),7.70−7.62(m,3H),7.58−7.52(m,2H),7.43(dd,J=1.5,8.2Hz,1H),7.33(d,J=1.6Hz,1H),7.07(d,J=8.1Hz,1H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=195.0,155.4,138.2,134.0,131.8,129.7,129.4,129.2,128.3,124.4,109.7,108.0。実施例17:1H,3H−ペリミジン−2−オン(4h)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=10.07(s,2H),7.24−7.18(m,2H),7.12−7.09(m,2H),6.51(dd,J=0.8,7.3Hz,2H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=150.1,137.7,134.1,128.0,117.6,113.6,104.0。実施例18:5,5′−ビベンズイミダゾール−2,2′−ジオン(4i)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,333K,TMS):δ=10.43(brs,4H),7.13(dd,J=1.9,8.1Hz,2H),7.06(d,J=1.6Hz,2H),6.95(d,J=8.1Hz,2H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,333K,TMS):δ=155.2,133.7,130.2,128.6,118.8,108.4,106.3。実施例19:化合物(I)を触媒とした、アミンと二酸化炭素の反応化合物(5a)(1mmol)、化合物(I)(0.02mmol)及びN−メチルピロリドン(NMP)(1mL)を、マグネティックスターラーが入ったテフロン(R)容器に注ぎ、それをステンレススチールオートクレーブに入れた。このオートクレーブに二酸化炭素(2MPa)を導入し、この反応混合物を413Kで24時間撹拌した。反応完了後、オートクレーブを室温まで冷やし、二酸化炭素をゆっくりと排気した。この反応混合物を1M塩酸水溶液(5mL)に加え、得られた沈殿を濾過により集めた。次いで、水(2mL)、トルエン(2mL)及びジエチルエーテル(2mL)で洗浄し、減圧乾燥して、化合物(6a)(収率80%)を得た。MS(EI,70eV):m/z(%):172(M+,43),143(11),130(21),129(25),101(23),100(22),87(16),74(33),73(14),72(17),58(10),57(35),56(17)。上記実施例19と同様にして、触媒として化合物(I)を用いて、以下の化合物(6b)〜(6f)を合成した。実施例20:ジヘキシルウレア(6b)1H−NMR(270MHz,CDCl3,298K,TMS):δ=4.45(brs,2H),3.15(q,J=6.5Hz,4H),1.53−1.43(m,4H),1.36−1.25(m,12H),0.88(t,J=6.6Hz,6H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,CDCl3,298K,TMS):δ=158.4,40.6,31.5,30.2,26.5,22.6,14.0。MS(EI,70eV):m/z(%)228(M+,100),199(71),185(98),171(18),158(43),145(17),143(15),128(76),115(44),102(75),100(42)。実施例21:ジオクチルウレア(6c)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,323K,TMS):δ=5.62(t,J=5.4Hz,2H),2.95(q,J=6.6Hz,4H),1.39−1.25(m,24H),0.86(t,J=6.8Hz,6H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,323K,TMS):δ=157.9,39.0,31.0,29.8,28.5,28.4,26.1,21.8,13.6。MS(EI,70eV):m/z(%)284(M+,70),255(35),241(48),227(75),213(76),199(18),186(34),156(87),143(28),130(76),99(52),69(66),57(92),55(100)。実施例22:ジノニルウレア(6d)1H−NMR(270MHz,CDCl3,298K,TMS):δ=4.32(br,s,2H),3.14(t,J=7.0Hz,4H),1.51−1.26(m,.28H),0.88(t,J=7.0Hz,6H)。13C−NMR(67.8MHz,CDCl3,298K,TMS):δ=158.3,40.7,31.8,30.2,29.5,29.3,29.2,26.9,22.7,14.1。MS(EI,70eV):m/z(%):312(M+,18),283(10),269(12),255(12),241(22),227(21),170(21),144(20),143(11),142(10),126(14),113(18),112(35),100(16),99(88),98(43),86(13),85(27),84(18),83(14),71(14),70(19),69(35),58(16),57(33),56(55),55(73),54(10),44(78),43(97),42(29),41(100)。実施例23:ジクロロヘキシルウレア(6e)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=5.57(d,J=8.1Hz,2H),1.75−1.49(m,10H),1.93−0.94(m,10H)。13C{1H}−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=156.6,47.5,33.3,25.3,24.4。MS(EI):m/z(%)224(M+,22),143(26),99(34),56(100)。実施例24:ジベンジルウレア(6f)1H−NMR(270MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=7.32−7.24(m,10H),6.44(t,J=5.9Hz,2H),4.23(d,J=5.9Hz,4H)。13C−NMR(67.8MHz,DMSO−d6,298K,TMS):δ=158.1,140.9,128.2,127.0,126.5,43.0。MS(EI,70eV):m/z(%):240(M+,34),149(26),133(12),107(14),106(100),104(12),91(54),79(25),77(19),65(17),51(11)。実験例4ポリオキソメタレート(POM)アニオンの電荷とサイズは、酸素原子の塩基度に強く影響を及ぼし、より高い電荷密度(サイズ当たりの負電荷)を有するPOMはより塩基性である。この概念に基づいて、高電荷密度を有するモノマー性メタレート[MO4]n−の塩基性を調べた。密度機能理論(DFT)計算により、様々なタングステン中心オキソ酸塩の構造を最適化し、自然結合オービタル(NBO)電荷を比較して、様々なPOMにおける酸素原子の塩基度を確認した(図17)。[WO4]2−における酸素原子のNBO電荷は−0.934であり、その値は、[W6O19]2−、[W10O32]4−、[α−SiW12O40]4−等の他のタングステン中心オキソ酸塩における値(−0.569〜−0.753)よりもずっと低かったことから、[WO4]2−が最も塩基性であることが示された。実験例5[WO4]2−が、アミン及び二酸化炭素の両方を活性化することのできる二官能性触媒として働きうると考え、1H、13C、183W−NMR分光器を用いて、1,2−フェニレンジアミン(3a)及び二酸化炭素と、化合物(I)との相互作用を試験した。DMF/DMF−d7中、298Kでの化合物(3a)(50mM)の1H−NMRスペクトルは、化合物(3a)に対して化合物(I)を1当量添加することにより、NH2プロトンが4.22ppmから4.76ppmへ低磁場シフトした。水素結合存在によるNH2プロトンの低磁場シフトが報告されているので、上記のことから、化合物(3a)と化合物(I)が水素結合していることが示された(図18a、18b)。この水素結合は、化合物(3a)において、N−H結合を弱くし、NH2基の求核性を強めた。化合物(I)のDMF溶液を二酸化炭素(0.1MPa)にさらした場合、新しい13Cシグナルは163.6ppmに現れた(図18c)。更に二酸化炭素(0.6MPa)を導入すると、160.9ppmに新しいシグナルが現れ、163.6ppmのシグナルが消えた(図19(A))。163.6及び160.9ppmでの13C−NMRシグナルはそれぞれ、6.7及び6.1Hzのカップリング定数(2JW−C、14%サテライト強度)に付随することを示し、W−O−C結合の存在を示唆した。W2R2(R′C≡CR′′)2(O−i−Pr)4(R=CH2Ph,CH2SiMe3,n−Pr及びC6H4−p−Me;R′CCR′′=MeC≡CMe,MeC≡CEt及びEtC≡CEt)における末端O−i−Prリガンドのα−炭素原子は、同様のカップリング定数2JW−C(4−12Hz)を示す。このケミカルシフトは、フリーのCO2(125.3ppm)及びTBAHCO3(160.7ppm)の化学シフトと異なった。よって、163.6及び160.9ppmでの13Cシグナルは、ルイス塩基−二酸化炭素付加物と同様の方法で、二酸化炭素の1分子及び2分子と、化合物(I)の反応を経て形成された、化合物(I)と二酸化炭素の付加物(化合物(I)−CO2(III)及び化合物(I)−2CO2(IV))に割り当てられる。化合物(I)のDMF溶液を二酸化炭素(0.1MPa)にさらした場合、16.4ppmでの183Wシグナルの強度が低減し、新しいシグナルが57.8ppmに現れた(図19(B))。更に二酸化炭素(0.6MPa)を導入すると、上記2つのシグナルが消え、22.6ppmに新しいシグナルが現れた(図19(B))。同様に、57.8及び22.6ppmでの183Wシグナルはそれぞれ、化合物(III)及び化合物(IV)に割り当てられる。一方、TBA4[α−SiW12O40]及びTBA2[W6O19]等の他のタングステン中心オキソ酸塩と、化合物(3a)及び二酸化炭素との相互作用は、1H及び13C−NMR分光器によって観測されなかった。このことは、化合物(I)と、化合物(3a)及び二酸化炭素との間に特定の相互作用があることを示した。実験例6化合物(I)の二官能性に基づいて、化合物(3a)と二酸化炭素からベンズイミダゾール−2−オン(化合物(4a))への反応を行った。当該反応は効果的に行われ、化合物(I)を用いると、化合物(4a)は収率90%で得られた(表11、エントリー1)。Cs2CO3,K2CO3,K3PO4,t−BuOK,DBU,KF,TMG及びNa2CO3等の他の塩基を用いた場合、化合物(4a)は収率17−44%で得られた(表11、エントリー5−12)。エポキシを用いた二酸化炭素の環付加による環状カーボネートの合成で用いられているEt3N又はTBABrの存在下、又は、化合物(I)の非存在下では、反応は殆ど進行しなかった(表11、エントリー13−15)。これら結果より、[WO4]2−が本反応において重要な役割を果たしていることが示唆された。試験した溶媒の内、N−メチルピロリドン(NMP)は最も効果的な溶媒であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセタミド(DMA)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いた場合は、化合物(4a)はそれぞれ収率87、74及び49%で得られた(表11、エントリー2−4)。実験例7化合物(I)を触媒系として用い、構造的に多様な芳香族ジアミンと二酸化炭素の反応について試験した(表12)。フェニル環上に電子供与性基及び電子吸引性基を有する1,2−フェニレンジアミン(3a)〜(3h)の変換は効率的に行われ、対応のベンズイミダゾール−2−オン(4a)〜(4h)を良好〜優れた収率で得た(表12、エントリー1−7)。フェニル環上の置換基の位置は反応に影響を与えなかった。1,8−ジアミノナフタレン(3i)及び3,3′−ジアミノベンジジン(3j)も効果的に変換され、対応の環状尿素(4i,4j)をそれぞれ収率97、94%で得た(表12、エントリー8−9)。実験例8化合物(I)を触媒として用い、第1級アミンと二酸化炭素の反応による1,3−二置換尿素の合成も行った。n−ブチルアミン(5a)、n−ヘキシルアミン(5b)、n−オクチルアミン(5c)、n−ノニルアミン(5d)、シクロヘキシルアミン(5e)及びベンジルアミン(5f)等の第1級アルキルアミンを、対応の1,3−二置換尿素に収率65〜80%で変換した(表13)。一方、第2級アミンのジ−n−ブチルアミンの反応は殆ど進まなかった。このことは、当該反応はイソシアネート中間体を経て進行することを示唆している(図20)。驚くことに、これまでに報告された触媒系ではずっと高い二酸化炭素圧(2.5−10MPa)が必要とされていたにもかかわらず、化合物(4a)及び(6b)は、大気圧の二酸化炭素圧下でさえ、収率77及び62%で得られた(図21)。結局、単核のタングステン中心オキソ酸塩(I)は、芳香族ジアミンと第1級アミンを用いた二酸化炭素変換において高い触媒活性を示した。上記NMR、動力学的及び理論的研究から、化合物(I)による基質及び二酸化炭素の同時活性化により、二酸化炭素の強力で効率的な化学的固定が行われることがわかった。比較実験例1水酸化セシウム、炭酸セシウム、イオン性溶液、KOH/PEG1000等の様々な種類の塩基が、尿素誘導体合成用の触媒として従来用いられているが、これらの系は、低いターンオーバー数(TON、3.3−52)、厳しい反応条件(高い二酸化炭素圧(2.5−8MPa)及び反応温度(423−453K))、脱水剤又は添加剤の必要性、基質に対する狭い適用性(表14)等の不利な点があった。なお、図12〜図22の具体的な説明を以下に示す。図12:(a)は化合物(1a)の、(b)は化合物(I)存在下における化合物(1a)の、(c)は二酸化炭素及び化合物(I)存在下における化合物(1a)の、1H−NMRスペクトルを示す。条件:化合物(I)(0.2M)、化合物(1a)(0.9M)、DMF/DMF−d7(v/v,2/1;0.6mL)、CO2(0.1MPa)、233K。図13:(a)は二酸化炭素存在下における化合物(I)の、(b)は二酸化炭素及び化合物(I)存在下における化合物(1a)の、13C−NMRスペクトルを示す。条件:化合物(I)(0.2M)、化合物(1a)(0.9M)、DMF/DMF−d7(v/v,2/1;0.6mL)、CO2(0.1MPa)、233K。図14:(a)は二酸化炭素導入前の、(b)は二酸化炭素導入後の、化合物(I)の183W−NMRスペクトルを示す。条件:化合物(I)(0.2M)、DMF/DMF−d7(v/v,2/1;2.3mL)、CO2(0.1MPa)、233K。図15:二酸化炭素及び化合物(I)存在下における、(a)は化合物(1a)の1H−NMRスペクトルを、(b)は化合物(1a)の13C−NMRスペクトルを示す。条件:化合物(I)(0.2M)、化合物(1a)(0.9M)、DMF/DMF−d7(v/v,2/1;0.6mL)、CO2(0.1MPa)、298K。図16:化合物(I)を触媒とした、化合物(1a)と二酸化炭素の反応における、反応機構を示す。図17:様々なタングステン中心オキソ酸塩の計算された分子構造と酸素原子のNBO電荷を示す。当該構造は、ガウス03プログラムパッケージを使用したDFTにより計算した。理論:B3LYP;basis sets:6−31++G*(O原子)、6−31G*(Si原子)、LanL2DZ(W原子)。a:[WO4]2−。b:[W6O19]2−。c:[W10O32]4−。d:[α−SiW12O40]4−。図18:(a)は化合物(3a)の、(b)は化合物(I)存在下における化合物(3a)の、1H−NMRスペクトルを示し、(c)は二酸化炭素存在下での化合物(I)の13C−NMRスペクトルを示す。条件:(a)化合物(3a)(0.05M)、DMF/DMF−d7(0.4/0.2mL)、298K。(b):化合物(I)(0.05M)、化合物(3a)(0.05M)、DMF/DMF−d7(0.4/0.2mL)、298K。(c):化合物(I)(0.5M)、CO2(0.1MPa)、DMF/DMF−d7(0.4/0.2mL)、233K。図19:DMF/DMF−d7(0.4/0.2mL)中、233Kにおける二酸化炭素下での化合物(I)(0.5M)の、(A)13C−NMRスペクトル、及び、(B)183W−NMRスペクトルを示す。化合物(I)(0.5M)の溶液に、下記条件で二酸化炭素を導入した。b:CO2(0.1MPa)、233K。c:CO2(0.1MPa)、213K。d:CO2(0.2MPa)、213K。e:CO2(0.6MPa)、213K。図20:アミンと二酸化炭素の反応についての可能な反応機構を示す。図21:大気圧の二酸化炭素圧下での、化合物(I)で触媒された尿素誘導体の合成を示す。図22:アミンとカルボニル試剤の反応から尿素誘導体を得る合成経路を示す。また、各表は以下のものを示す。表1:化合物(1a)と二酸化炭素の反応における、溶媒と触媒の効果表2:化合物(I)を触媒とした、様々な2−アミノベンゾニトリルと二酸化炭素の反応表3:化合物(1f)と二酸化炭素の反応のための様々な触媒系表4:溶媒効果表5〜10:触媒効果表11:化合物(3a)と二酸化炭素の反応における、触媒と溶媒の効果表12:化合物(I)を触媒とした、様々な芳香族ジアミンと二酸化炭素の反応表13:化合物(I)を触媒とした、様々な第1級アミンと二酸化炭素の反応表14:各触媒を用いた、アミンと二酸化炭素の反応による尿素の合成表1における各注釈等は以下のとおり。反応条件:化合物(1a)(1mmol)、触媒(W:化合物(1a)に対して12mol%)、溶媒(2mL)、二酸化炭素(2MPa)、373K、12時間、収率はガスクロマトグラフィー分析により測定b:触媒(化合物(1a)に対して2mol%)c:再利用実験d:二酸化炭素(0.3MPa)、48時間e:触媒(化合物(1a)に対して12mol%)表2における各注釈等は以下のとおり。反応条件:基質(1mmol)、化合物(I)(基質に対して2mol%)、DMSO(2mL)、二酸化炭素(2MPa)、373Kb:化合物(I)(化合物(1e)に対して10mol%)、413Kc:化合物(I)(化合物(1i)に対して10mol%)、393Kd:収率は、反応溶液の1H−NMR分析により測定表11における各注釈等は以下のとおり。反応条件:化合物(3a)(1mmol)、触媒(0.02mmol)、溶媒(1mL)、413K、24時間、収率はガスクロマトグラフィー分析により測定表12における各注釈等は以下のとおり。反応条件:基質(1mmol、又は、エントリー9では0.5mmol)、化合物(I)(0.02mmol)、二酸化炭素(2MPa)、NMP(1mL)、413K、24時間、収率はガスクロマトグラフィー分析又は液体クロマトグラフィー分析により測定*:化合物(I)(0.05mmol)**:化合物(I)(0.1mmol)***:基質(0.5mmol)表13における各注釈等は以下のとおり。反応条件:基質(1mmol)、化合物(I)(0.02mmol)、NMP(1mL)、二酸化炭素(2MPa)、413K、24時間、収率はガスクロマトグラフィー分析により測定*:化合物(I)(0.05mmol)表14における各注釈等は以下のとおり。a:[Bmim]Cl:1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドb:NMP:N−メチルピロリドンc:[Bmim]OH:1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシド上記実施例において、オキソ酸塩が、酸塩基反応によって原料化合物から様々な反応生成物を製造すること、特に、二酸化炭素等を原料として工業的に有用な化合物を製造すること等において高い触媒活性を有することが示された。なお、上記実施例においては、中心原子がタングステンの形態において実証されているが、第4族〜第6族に属する遷移金属元素から選ばれる場合であれば、これら同族又は近似・隣接した族に属する元素であれば、同様の触媒作用を発揮しうる。すなわち、第4族〜第6族に属する遷移金属元素を中心原子とするオキソ酸塩とすることにより、これが上記酸塩基反応に高い触媒活性を示すことになる作用機序は、本発明のポリオキソ酸塩を用いた場合にはすべて同様である。したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。原料化合物から反応生成物を製造するに際し、酸及び/又は塩基触媒を用いて製造する方法であって、該製造方法は、酸及び/又は塩基触媒としてオキソ酸塩を用いて反応させる工程を含み、該オキソ酸塩は、複数の酸素原子が1つの金属元素に対して結合した単核の錯体であり、金属元素として周期律表における第4族〜第6族元素からなる群より選択される遷移金属元素を有することを特徴とする酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。前記オキソ酸塩は、金属元素としてチタン、ジルコニウム、タングステン、バナジウム又はモリブデンを有することを特徴とする請求項1に記載の酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。前記オキソ酸塩は、金属元素としてタングステンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。前記オキソ酸塩は、塩基触媒として用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。前記製造方法は、前記オキソ酸塩に加えて、前記オキソ酸塩の金属元素とは異なる金属元素を有する化合物を酸及び/又は塩基触媒として用いて反応させる工程を含み、該化合物は、金属元素として周期律表における第3族及び第7族〜第15族からなる群より選択される遷移金属元素を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。前記化合物は、金属元素としてロジウムを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法に用いられることを特徴とする酸及び/又は塩基触媒。 【課題】酸触媒としてだけではなく、塩基触媒としても用いることができ、また、均一系触媒の形態で供給することができ、しかも、二酸化炭素等を用いて多様な有機化合物を合成する工程において好適な触媒作用を発揮し得る酸及び/又は塩基触媒を用いて製造する方法、並びに、該製造方法に好適に用いられる酸及び/又は塩基触媒を提供する。【解決手段】原料化合物から反応生成物を製造するに際し、酸及び/又は塩基触媒を用いて製造する方法であって、該製造方法は、酸及び/又は塩基触媒としてオキソ酸塩を用いて反応させる工程を含み、オキソ酸塩は、複数の酸素原子が1つの金属元素に対して結合した単核の錯体であり、金属元素として周期律表における第4族〜第6族元素からなる群より選択される遷移金属元素を有することを特徴とする酸及び/又は塩基触媒を用いる製造方法。【選択図】なし


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