生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ダチョウ抗体水溶液
出願番号:2012010612
年次:2013
IPC分類:A61K 39/395,G01N 33/531,C07K 16/18


特許情報キャッシュ

石川 貴大 塚本 康浩 JP 2013147471 公開特許公報(A) 20130801 2012010612 20120123 ダチョウ抗体水溶液 株式会社ベンチャーバンク 502322822 オーストリッチファーマ株式会社 508198535 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 石川 貴大 塚本 康浩 A61K 39/395 20060101AFI20130705BHJP G01N 33/531 20060101ALI20130705BHJP C07K 16/18 20060101ALN20130705BHJP JPA61K39/395 YG01N33/531 AC07K16/18 3 OL 9 4C085 4H045 4C085AA32 4C085AA33 4C085BB31 4C085CC40 4C085DD14 4C085EE07 4H045AA11 4H045CA40 4H045DA76 4H045EA20 4H045EA50 4H045FA71 本発明は、ダチョウ抗体を含有する水溶液に関する。より詳しくは、ダチョウ抗体を安定して長期間保存できる水溶液に関する。 近年、ロット間差が少なく、一度に大量の抗体を得ることができるという利点から、ダチョウの抗体が注目を浴びている。ダチョウの卵の大きさは、鶏卵のおよそ20〜30倍であり、その卵から得ることのできる抗体の量も同等倍である。従って、1羽のダチョウから大量の抗体を得ることができ、ロット間の差を少なくすることができるという利点がある。 また、ダチョウの卵は鶏卵と比較しアレルギーが少ないという特徴もある。従って、卵から得られた抗体含有物を経口摂取し、予防若しくは治療効果を図る場合には、アレルギー反応を回避しやすいという利点もある。 さらにまた、ダチョウの卵は鶏卵のような臭いがなく、例えばマスクなどに用いてもほとんどの人に対して問題なく利用できる。 このように鶏に比べてダチョウを使った抗体は利点が多く、本発明者らはダチョウ抗体およびこの利用に関して種々の発明をしている(例えば特許文献1,2)。 ところで、ダチョウ抗体産生のしくみは次のとおりである。すなわち、ダチョウに抗原を免疫すればダチョウ血液中に当該抗原に特異的な抗体が産生され、そのうちIgYが卵黄に移行し、産卵と同時に排出される。この卵黄よりIgYを抽出すれば前記抗原に特異的で高感度の抗体を大量に得ることができる。通常、ダチョウの一個の卵黄から2〜4gのIgYの精製が可能であり、1羽のダチョウから年間400gの抗体を得ることが可能である。つまり、当該抗体を診断キットに利用した場合には、1羽で約4000万人分以上のロット差の少ない診断キットの作製が可能となる。 ここで、抗体は通常高濃度の抗体溶液として冷蔵保存されており、抗体を利用した製品を製造する場合、製造する段階において、所望の濃度に希釈され、さらに必要に応じて他の成分と混合されて製品化・流通・販売される。 しかし、高濃度の抗体溶液を所望の濃度に希釈するには、クリーンな環境下で、精密な操作が必要とされるため、製造場所は限られ、製造者も一定の経験が必要とされる。また、抗体の性質上いったん希釈すると溶液状態ではいっそう不安定となることから、その保存を厳重に管理する必要があり、それにも限界があった。通常、希釈後は数時間以内に使いきってしまうか、あるいは乾燥された状態で保存されることが多かった。特開2009−23985号公報特開2011−20927号公報 本発明は、ダチョウ抗体の希釈溶液を安定して長期間保存可能とする技術の提供を課題とする。すなわち、長期間保存可能なダチョウ抗体の水溶液の提供およびダチョウ抗体水溶液の保存方法の提供を課題とする。本発明は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、驚くべきことにダチョウ抗体の水溶液にトレハロースを含有させることにより溶液での保存が安定して可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を有する。〔1〕ダチョウ抗体を含む水溶液であって、抗体濃度が1〜2000μg/mlであり、トレハロースを含む前記水溶液。〔2〕トレハロースが0.1%〜50%である前記〔1〕に記載の水溶液。〔3〕プラスチック容器に1〜10ml充填された前記〔1〕または〔2〕に記載の水溶液。 本発明のダチョウ抗体は希釈された溶液として長期間安定して保存可能であることから、使用時に希釈するための環境、設備、スキルが不要であり、取り扱いが容易であることから、特定の製造業者だけではなく、一般ユーザーも使用可能である。そのため、抗体の用途も様々なものに広げることが可能である。各組成の保存溶液中でダチョウ抗体を保存した場合の抗体力価を示す棒グラフである(試験例2)(水溶液中の抗体の濃度) 本発明のダチョウ抗体水溶液のダチョウ抗体の濃度は、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば1−2000μg/ml、望ましくは10−1000μg/ml、さらに望ましくは100−200μg/mlで使用される。(組成) 本発明のダチョウ抗体水溶液の組成は、前記濃度のダチョウ抗体のほかに、緩衝液およびトレハロースを含む。本発明のダチョウ抗体の水溶液中のトレハロースの濃度は、0.1−50%がよく、さらに望ましくは1−10%、よりいっそう望ましくは2−4%である。緩衝液も抗体の保存安定性に影響を与えないものであればいずれでもよく、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。このうちでもリン酸緩衝液が好ましい。本発明の水溶液は、これ以外に抗体の保存安定性および用途に影響を与えない範囲であれば他の成分を含むことも可能であり、例えば防腐剤、塩などが挙げられる。本発明のダチョウ抗体水溶液のpHは3〜10が好ましい。(用途) 本発明のダチョウ抗体の水溶液は、通常水溶液として使用できる用途であればいずれにも用いることができる。例えば、水溶液は不活性ガスとともに充填しスプレーとして用いたり、噴霧容器に入れて噴霧して使用することができる。また、水溶液の保存量としては例えば1単位1〜1000mlが挙げられ、好ましくは1〜300mlさらに好ましくは1〜100mlが挙げられ、個人単位での1回ずつの使用目的としては1〜10mlなど少量ずつ充填したキット溶液とすることもできる。またこのような水溶液は、液体そのままで使用する以外に、ディフューザーに数滴滴下してミスト状にして使用することもできる。スプレーとして使用する場合を例にあげると、抗インフルエンザ抗体溶液を使用するマスクにスプレーすれば抗体塗布マスクを簡単に作製することができる。また、食中毒菌に対する抗体であれば調理器具、食品などにスプレー塗布することができる。また、抗虫歯・歯周病菌抗体であれば口中や歯ブラシに塗布することも可能である。 本発明のダチョウ抗体水溶液は、その保存安定性に影響を与えない容器であればいずれも用いることができ、その材質はガラス製、プラスチック製のいずれも使用することができる。プラスチック製としては通常水溶液の保存に用いられるものであればいずれでもよいが、例えばポリスチレン製が望ましい例として挙げられる。(抗体種類) 本発明に用いられるダチョウ抗体としては、ダチョウに抗原を投与して免疫することにより得られる抗体であればいずれの抗原に対する抗体であってもよく、一例を挙げれば、抗皮膚常在菌抗体、抗虫歯・歯周病菌抗体、抗インフルエンザ抗体、抗スギ花粉抗体、抗水虫菌抗体、抗ピロリ菌抗体、抗ハウスダスト抗体、抗アクネ菌抗体などである。本発明のダチョウ抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。また、当該抗体としては、ポリクローナル抗体はもちろんのことモノクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体は周知の製造方法によって得られる。(保存方法) 本発明のダチョウ抗体の水溶液は、−80〜60℃での保存が望ましく、−20〜30℃がさらに望ましく、4〜10℃がよりいっそう望ましい。また、保存期間は、1〜2年が望ましい。本発明によれば所定濃度の抗体水溶液として従来に比べて長期間安定した保存をすることができるようになった。〔試験例1〕ダチョウ抗体の作製方法 本実施例では、一例としてインフルエンザウイルスに対するダチョウ抗体を作製した。1.免疫 雌のダチョウにA/New Caledonia/20/99(H1N1)のHA抗原免疫した。初回免疫はHA抗原30μgをフロイントの完全アジュバントに混和し雌ダチョウの腰部筋肉内に接種した。2週間後および4週間後に追加免疫(HA抗原30μgをフロイントの不完全アジュバントに混和)した。初回免疫から6週目以降に産卵されたダチョウ卵の卵黄よりダチョウIgYを精製した。2.抗体の精製 卵黄に5倍量のTBS(20mMTris−HCl、0.15M NaCl,0.5%NaN3)と同量の10%デキストラン硫酸/TBSを加え20分攪拌する。その後、1MCaCl2/TBSを卵黄と同量加え攪拌し、12時間静置する。その後、15000rpmで20分遠心し上清を回収する。次に、最終濃度40%になるように硫酸アンモニウムを加え4℃で12時間静置する。その後、15000rpmで20分遠心し、沈殿物を回収する。最後に、卵黄と同量のTBSに再懸濁し、TBSにて透析する。前記工程により、90%以上の純度のIgYの回収が可能となった。1個の卵黄より2〜4gのIgYを精製することができた。精製したIgYを以下の試験において、抗インフルエンザウイルスダチョウ抗体(以下、単にダチョウ抗体ということがある)として用いた。〔試験例2〕ダチョウ抗体保存溶液の選定試験 ダチョウ抗体を溶液状態で保存するにあたり、保存に適した組成および保存条件について検討を行った。1.試験方法1−1.保存条件 試験例1で得られたダチョウ抗体(2mg/mL)を下記表1の保存条件で保存し、保存した後のダチョウ抗体の抗体力価を測定した。1−2.力価測定方法 抗体力価の測定は、上記各条件で保存したダチョウ抗体保存溶液をインフルエンザウイルスと混合し、これをMDCK細胞に吸着させてインフルエンザウイルスを細胞に感染させ、細胞に生じるCPEが観察される抗体の最大希釈倍率を調べることにより行った。 ここで、MDCK細胞は、インフルエンザウイルスの分離同定やウイルス力価の測定に用いられる一般的な培養細胞であり、通常、敷石状に単層に培養でき、例えばウイルスに感染することで細胞に何らかの変化が生じる球形に変形するため細胞変性効果(CPE:cytopathic effect)を顕微鏡下で容易に観察することができる細胞である。 CPEの有無を記録し、定法に従って50%感染抑制値を算出した。50%感染抑制値は少ない値ほど抗体としてウイルス中和効果があることを示す。 具体的な手順を以下に示す。(i)1−1.で保存された後のダチョウ抗体保存溶液を濾過滅菌した(フィルター:Steradisc25 0.2μm/0.45μm,クラボウ製)。(ii)4倍希釈系列の作成空プレートの1列目のウエルに(i)で濾過滅菌済みのダチョウ抗体保存溶液を200μL添加した。1列目から50μLとり2列目に添加し、GIT(トリプシン含有培養液)を150μL添加した。同様に2列目のウエルから50μLとり3列目に添加し、GITを150μL添加した。これを繰り返して12列目まで段階的に希釈溶液を作成した。(iii)4倍希釈系列を作成したプレートの各ウエルに100TCID50(100Tissue culture infectious dose:100倍したら組織培養細胞の50%が感染する量)のインフルエンザウイルスA/Osaka/309/2007(H1N1)を添加し、37℃で1時間放置した。(iv)MDCK細胞を培養した96穴プレートに(iii)のウイルスを含む抗体保存溶液を25μL 摂取した。(v)35℃、5%CO2インキュベーター内で30分反応させ、インフルエンザウイルスをMDCK細胞に吸着させた。(vi)ウエル内の培養液をアスピレータで除去した。(vii)各ウエルにウイルス増殖用培地(2.5%トリプシン500μL/100mL GIT)を100μL追加した。(viii)35℃、5%CO2インキュベーター内で、培養した。(vix)培養5日後、CPEを顕微鏡で観察した。CPEが連続しないものは、連続しているウエルまでカウントした。(x)定法「Behrens−Karber変法」に従って、ウイルス感染の50%抑制価を算出した。2.試験結果 結果を図1に示す。本結果は、NO(1)の保存溶液(PBS4℃3週間)で保存した場合の抗体力価を100とした場合の数値として示した。これによれば、トレハロースおよびグリセリンを含む保存水溶液((4)、(5)、(6)、(7))でダチョウ抗体を保存した場合にPBS4℃で3週間保存した場合と同程度の力価が維持されており、キトサンに比べてはるかに高い力価であった。このうちでもトレハロースを含む保存溶液は50℃、3週間保存した場合でも((4))、PBS4℃3週間とほとんど変わらない高い値であった。したがって、ダチョウ抗体の保存にはトレハロースが適しており、トレハロースを含むことにより、常温以上の高温下でも長期間安定した抗体の活性を維持することが可能であることがわかった。〔試験例3〕ダチョウ抗体水溶液の製造方法 下記組成を以下の製造手順にしたがって混合し、下記組成のダチョウ抗体水溶液1.5kgを得た。ダチョウ抗体は、前記試験例1で得たものを用いた。1.ダチョウ抗体水溶液組成水 87.02%トレハロース 4%ダチョウ抗体 1%NaCl 0.80%NaH2PO4 0.05%Na2HPO4 0.13%1,3ブチレングリコール 5%KMO-6 2%2.製造手順(1)1.の組成のうち抗体以外の組成を順次容器内に投入する。(2)容器を内容物が85℃になるまで加温し、10分間維持した。(3)その後、内容物が30℃になるまで冷却した。(4)抗体を投入し、約10分間ゆっくり攪拌した。〔試験例4〕ダチョウ抗体水溶液の安定化試験 ダチョウ抗体の保存安定性について、保存温度、保存期間を変えて試験を行った。1.試験方法 試験例3で製造したダチョウ抗体保存溶液を、40℃、室温(22−24℃)、4℃で2週間または4週間保存し、保存後のダチョウ抗体の抗原反応性をELISA法により測定した。(1)ELISA法 2μg/mLのインフルエンザHA抗原(H1、H3、B)をELISA用96穴マイクロプレートの各ウエルに100μL入れ、室温で2時間放置した。その後、PBSで3回洗浄したのち、市販のブロッキング溶液(ブロックエース:大日本住友製薬)を各ウエルに100μL入れ2時間放置した。その後、PBSで3回洗浄した後、免疫前のIgY(インフルエンザ抗原を注射する前の、ダチョウの卵から精製したIgY)または試験例1のダチョウ抗体の段階希釈液(150μg/mLを原液として、100倍、200倍・・・・と2倍ずつ段階希釈したもの)を各ウエルに50μL入れ1時間放置した。その後、PBSで3回洗浄したのち、ペルオキシダーゼ標識抗ダチョウIgY・ウサギポリクローナル抗体(MOLECULAR MEDICINE REPORTS 1: 203−209,2008)を各ウエルに100μL入れ45分間放置した。PBSで3回洗浄した後市販のペルオキシダーゼ用発色キット(住友ベークライト)により30分間発色し、ELISA用プレートリーダーにより吸光度(450nm)を測定した。得られた結果を免疫前のIgYの同希釈倍率の吸光度値の2倍以上となる最高希釈倍率で示した。比較のため、製造直後のダチョウ抗体保存溶液およびダチョウ抗体原液(試験例1で得られたダチョウ抗体をPBSのみを溶媒とした150μg/mLの抗体原液)についても試験した。2.試験結果 結果を表2に示す3.考察 上記の結果より、今回実施した安定性試験の条件では、インフルエンザウイルス抗原に対するダチョウ抗体の反応性の劣化はおこらないと判断した。すなわち、本発明のダチョウ抗体保存溶液で保存することにより、室温4週間および40℃4週間という環境下においても抗体の劣化が起こらず、製造直後と変わらない反応性を維持していた。なお、40℃4週間という条件は、略室温1−2年間の保存に相当すると考えられ、本発明による室温での長期保存安定性を裏付ける結果が得られた。 本発明のダチョウ抗体は希釈された溶液として長期間安定して保存可能であることから、使用時に希釈するための環境、設備、スキルが不要であり、取り扱いが容易であることから、特定の製造業者だけではなく、一般ユーザーも使用可能である。そのため、抗体の用途も様々なものに広げることが可能である。ダチョウ抗体を含む水溶液であって、抗体濃度が1〜2000μg/mlであり、トレハロースを含む前記水溶液。トレハロースが0.1%〜50%である請求項1に記載の水溶液。プラスチック容器に1〜10ml充填された請求項1または2に記載の水溶液。 【課題】ダチョウ抗体の希釈溶液を安定して長期間保存可能とする技術の提供を課題とする。すなわち、長期間保存可能なダチョウ抗体の水溶液の提供およびダチョウ抗体水溶液の保存方法の提供を課題とする。【解決手段】ダチョウ抗体を含む水溶液において、抗体濃度が1〜2000μg/mlであり、トレハロースを含むことによってダチョウ抗体水溶液を長期間にわたって安定的に保存することが可能となった。【選択図】なし


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