タイトル: | 公開特許公報(A)_腸内酪酸産生菌増加剤 |
出願番号: | 2012010336 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 35/74,A23K 1/16,A23K 1/18,A23L 1/30,A61P 35/00,A61P 1/04,A61P 1/00,C12Q 1/68 |
畑中 美咲 中村 康則 JP 2013147469 公開特許公報(A) 20130801 2012010336 20120120 腸内酪酸産生菌増加剤 カルピス株式会社 000104353 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 畑中 美咲 中村 康則 A61K 35/74 20060101AFI20130705BHJP A23K 1/16 20060101ALI20130705BHJP A23K 1/18 20060101ALI20130705BHJP A23L 1/30 20060101ALI20130705BHJP A61P 35/00 20060101ALI20130705BHJP A61P 1/04 20060101ALI20130705BHJP A61P 1/00 20060101ALI20130705BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20130705BHJP JPA61K35/74 AA23K1/16 304BA23K1/18 AA23L1/30 ZA61P35/00A61P1/04A61P1/00C12Q1/68 A 17 OL 15 2B005 2B150 4B018 4B063 4C087 2B005AA05 2B150AA01 2B150AA06 2B150AB03 2B150AC01 2B150AC03 2B150AC36 2B150DD12 2B150DD13 2B150DD17 2B150DJ24 2B150DJ27 4B018LB10 4B018MD80 4B018ME11 4B018MF13 4B063QA01 4B063QQ06 4B063QQ42 4B063QR32 4B063QR62 4B063QS25 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC65 4C087CA09 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA66 4C087ZA68 4C087ZB26 4C087ZC61 本発明は、腸内酪酸産生菌増加剤、具体的には、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)による腸内クロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)群増加剤に関する。 本発明はまた、上記の腸内酪酸産生菌増加剤を含む食品、飼料又は医薬品に関する。 腸管の粘膜細胞については、消化管ホルモンなどの液性因子、酪酸、グルタミンなど腸管内栄養素、食物繊維(ペクチン、等)、レクチンなどの増殖因子などによって、その増殖や分化が調節されている(非特許文献1)。 このうち酪酸は、大腸上皮細胞に作用して細胞分化や遺伝子の発現等を修飾することにより、大腸上皮細胞の構造や機能を維持する上で重要な役割を果たすと考えられており、潰瘍性大腸炎モデルにおいてその抗炎症作用や傷害腸管の修復が確認されているし、また大腸がんの予防などに重要に関与することが報告されている(非特許文献1、特許文献1)。これまで、腸内の酪酸濃度を増加させる方法として、プレバイオティクスとしてはオリゴ糖を摂取する方法など、また、プロバイオティクスとしてはビフィズス菌、乳酸菌、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)M588を投与する方法などが知られている(非特許文献1)。 特に、酪酸産生菌であるクロストリジウム・ブチリカムM588は、その投与によって腸内の酪酸濃度を上昇させるとともに、ラクトバチルスやユーバクテリアなどの菌量を増加し腸内細菌の是正にも寄与することが示されている(非特許文献1)。また、ビフィズス菌(例えば、Bifidobacterium longum)や乳酸菌(例えば、Lactobacillus acidophilus)の投与では、これらの投与菌自体によって腸内の酪酸濃度が上昇すると推定される(特許文献1)。 しかしながら、一方で、プロバイオティクスでは、ヒトでの個体差が大きく、摂取した菌株がすべてのヒトに同様の効果をもたらすわけではなく、また、プレバイオティクスでは、摂取量が非常に多いため実用的な面での課題も指摘されている。 このような課題を解決するために、クロストリジウム・ブチリカムM588のような酪酸産生菌の投与によって腸管内で酪酸を増加させることが望ましい方法のひとつであると考えられる。 本願では、それ自体酪酸産生菌ではないが腸内内在性の酪酸産生菌の増加を可能にする有用なバチルス属細菌を提供するが、関連する先行技術として、特許文献2には、バチルス属細菌、好ましくはバチルス・ズブチリスC-3102株の発酵産物、培養上清又は培養物を有効成分とする、腸上皮細胞からの活性酸素の産生抑制やIL-8の産生抑制による炎症性腸疾患の予防治療剤が開示されているし、また、特許文献3には、バチルス・ズブチリス芽胞菌体(例えばバチルス・ズブチリスC-3102株)をその形態を維持したまま大腸に送達することにより、大腸におけるビフィズス菌を効果的に増加させる方法が開示されている。特開平10-084909号公報国際公開第2008/069102号パンフレット国際公開第2011/111783号パンフレット佐々木雅也ら, 腸内細菌学雑誌, 19:1-8, 2005 本発明の目的は、動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有する有用な菌を提供することを目的とする。 本発明の別の目的はまた、そのような有用菌を、腸内酪酸産生菌を増加するための食品、飼料又は医薬品の有効成分として使用することである。 本発明は、要約すると以下の特徴を含む。 (1) 動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有する、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)の、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体を有効成分として含む、腸内酪酸産生菌増加剤。 (2) 酪酸産生菌がクロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)群に属する菌である、上記(1)に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (3) 酪酸産生菌がフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー(Feacalibacterium prausnitzii)である、上記(1)に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (4) 混合菌の芽胞対発芽菌の比率が95:5〜5:95である、上記(1)又は(2)に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (5) 混合菌の芽胞対発芽菌の比率が85:15〜15:85である、請求項1又は2に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (6) バチルス・ズブチリスがバチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)又は該C-3102株由来の変異株である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (7) 腸溶性剤型に処方されている、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (8) 動物がヒト、家畜動物又はペット動物である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (9) 食品添加剤又は飼料添加剤として使用するためのものである、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 (10) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤を含む食品。 (11) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤を含む飼料。 (12) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤を含む医薬品。 (13) 炎症性腸疾患又は大腸癌の予防又は治療用である、上記(12)に記載の医薬品。 (14) 炎症性腸疾患又は大腸癌の予防又は軽減用である、上記(10)に記載の食品。 (15) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤又はそれを含む飼料を、非ヒト動物に投与するか又は摂食させることを含む、該動物の腸内で酪酸産生菌を増加する方法。 (16) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤を食品又は飼料に添加することを含む、食品又は飼料に、腸内酪酸産生菌を増加させる機能を付与する方法。 (17) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の腸内酪酸産生菌増加剤を食品又は飼料に添加することを含む、腸内酪酸産生菌を増加させる機能を有する食品又は飼料の製造方法。 これまで芽胞による腸内酪酸濃度の上昇について、非特許文献1(佐々木雅也ら, 腸内細菌学雑誌, 19:1-8, 2005)に、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum) M588芽胞製剤が腸内酪酸濃度を高めることが記載されているが、この細菌は酪酸産生菌そのものであり、腸内内在性の酪酸産生菌を増加させる作用はない。また従来から、食物繊維、オリゴ糖などのプレバイオティクスは、酪酸などの短鎖脂肪酸の腸内産生に寄与し、それによって、腸内細菌菌叢のバランスを調節し、有害細菌の活動を抑制するという働きをすることが知られている。 これに対して、本発明で使用される、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、例えばバチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)の芽胞又は、好ましくは、芽胞と発芽菌の混合菌又は発芽菌体は、腸内の酪酸産生菌、特にクロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)群に属する菌、好ましくはフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー(Feacalibacterium prausnitzii)を増加させる能力を有する。これまで、バチルス・ズブチリスの、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体に腸内酪酸産生菌を増加させるという知見はなく、本発明はまったく意外なことであった。腸内酪酸産生菌のなかでフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーは、炎症性大腸炎に罹患した患者において低下しているという報告(文献Sokol et al, Inflamm Bowel Dies, 15, 1183, 2009)があることから、本発明の腸内酪酸産生菌増加剤によってフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーを増加させ、それによって産生される酪酸等によって炎症部位の腸管細胞の修復と炎症の改善が可能になる。 さらに、本発明の腸内酪酸産生菌増加剤は、腸内有害菌であるクロストリジウム・パーフリンゲンス(C. perfringens)(ブタでの出血性壊死性腸炎の発症に関与する(山崎洋子、臨床獣医、2(3)63-68(1984)))およびエンテロバクテリア科細菌(Enterobacteriasea)を低下させる作用をもつ。 本発明をさらに詳細に説明する。<腸内酪酸産生菌増加剤> 本発明は、動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有する、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)の、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体を有効成分として含む、腸内酪酸産生菌増加剤を提供する。 腸管内には多数の細菌群が存在し腸内細菌菌叢を形成している。細菌群は、非病原性の細菌からなり、健康時には細菌が異常増殖しないようにコントロールされている。細菌群は、消化された食物を利用して、からだの健康維持に必要な物質を産生することも行っている。そのような物質のひとつに酪酸がある。 酪酸は、腸管粘膜細胞を増殖させ、かつ抗炎症作用を有することが知られている。潰瘍性大腸炎の臨床治療法のひとつとして酪酸注腸療法が利用されているゆえんでもある。 本発明の技術思想は、動物腸内に存在する酪酸産生菌を増加させる能力を有する、バチルス・ズブチリスの芽胞又は、好ましくは、芽胞と発芽菌の混合菌又は発芽菌体を動物に経口的に投与又は摂取させることによって腸内で酪酸産生菌を増加させ、それによって腸内の酪酸濃度を増加させることである。腸内での酪酸濃度の上昇が、大腸粘膜を保護し、腸管の炎症部位を修復し治癒させると考えられる。 本発明の腸内酪酸産生菌増加剤の有効成分は、上記のとおり、動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有する、バチルス・ズブチリスの芽胞又は、好ましくは、芽胞と発芽菌の混合菌又は発芽菌体である。 バチルス・ズブチリスの芽胞は、公知の方法によって得ることができる。そのような方法は、以下の方法に限定されないが、例えば、バチルス・ズブチリスの懸濁液を60〜80℃の温度で約30分加熱する方法、芽胞形成培地(酵母エキス3.0g、デキストロース10.0g、塩化ナトリウム5.0g、硫酸マンガン0.1g、Nutrient Agar15.0g、精製水1000ml、pH 7.2)で35℃、10〜14日間培養する方法(辻明良ら,環境感染,Vol. 17(4):335-340, 2002)、芽胞形成培地 (酵母エキス3g、ポリペプトン10g、グルコース10g、硫酸マンガン0.1g、塩化ナトリウム3g、Agar 20g、精製水1000ml、pH 7.2)に菌を塗布して 30℃で7 日間培養する方法(良本康久食品照射, 36巻, pp. 8-12, 2001)、バチルス属細菌を炭素源が消費し尽くされるまで培養し、その後24〜72時間通気する方法(特開2000-217567号公報)などである。 芽胞の発芽は、以下の非限定的な方法、例えば、グルコースブロス(pH 7.0)又はリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁した芽胞を30〜80℃で20〜80MPaの圧力下で約60分処理する方法(重田有仁ら,広島食工技報、No. 25, 37-40, 2009)、酸化などにより芽胞殻を損傷する方法、グルコースやアラニンなどの発芽剤と接触させる方法、TS培地で37℃で2〜4時間撹拌する方法などによって行うことができる。 芽胞は動物に経口投与されたとき、食道、胃、十二指腸を通って大腸に達するまでの間に、芽胞の一部が発芽し栄養細胞に変化してもよい。 本発明によれば、バチルス・ズブチリスについて、「芽胞」又は「芽胞と発芽菌の混合菌」又は「発芽菌体」が使用されるが、好ましくは「芽胞と発芽菌の混合菌」又は「発芽菌体」が使用される。該混合菌の芽胞対発芽菌の菌数の比率は、動物腸内で、99:1〜1:99、好ましくは95:5〜5:95、例えば90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85、例えば80:20〜20:80、さらに好ましくは70:30〜30:70、例えば60:40〜40:60、50:50などである。 本発明で使用可能なバチルス・ズブチリス株は、動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有するものであればいずれの株であってもよい。そのような株は、例えば、バチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)あるいは、それらの株由来の変異株を包含する。 上記変異株は、親株を、ニトロソグアニジン、ニトロソウレア、エタンスルホン酸メチル、それらの誘導体などの化学変異原の存在下に培養するか、培養親株に、紫外線、ガンマ線、X線などの高エネルギー線を照射するなどの方法によって得ることができる。 本明細書で使用される「動物」は、脊椎動物、具体的には、哺乳動物、例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、家禽類など)、ペット動物(「愛がん動物」ともいう)(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、競技用動物(ウマなど)、その他、爬虫類、鳥類(ニワトリなど)などである。好ましくは哺乳動物、鳥類およびペット動物であり、より好ましくはヒトおよび家畜動物およびペット動物である。 本発明の腸内酪酸産生菌増加剤は、腸溶性剤型に処方されていることが好ましい。腸溶性剤型には、バチルス・ズブチリスの、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体が、例えば1投与単位あたり1×104〜1×1012個CFU含有するように処方されうる。ここで、CFUは、コロニー形成単位(colony forming unit)を指す。 腸溶性剤型は、有効成分を胃酸から保護するためのものであり、腸溶性に処方されるのであればいかなる剤型でもよく、例えば錠剤もしくはタブレット、丸剤、顆粒剤、カプセル剤などを含む。例えば、上記の芽胞、混合菌又は発芽菌体と混合された担体もしくは賦形剤を任意の形状に成形し、その表面を、腸溶性成分で単層又は多層にフィルムコーティングしてもよいし、あるいは、上記の芽胞、混合菌又は発芽菌体を、担体もしくは賦形剤および腸溶性成分と混合し、任意の形状に成形してもよいし、あるいは、上記の芽胞、混合菌又は発芽菌体、担体もしくは賦形剤、および腸溶性成分を混合し顆粒状に成形したものをカプセルに封入してもよい。いずれにしても剤型が腸溶性を付与することができる限り、上記の実施形態以外の剤型であってもよい。 腸溶性成分としては、腸管におけるような塩基性環境で可溶性のポリマーが使用され、例えばメタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、シェラックなどの腸溶性コーティング用ポリマーが使用されうる。これらの腸溶性成分は1種類で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用しうる。1投与単位あたりの腸溶性成分の含有量は、以下のものに限定されないが、例えば1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%である。 本発明の腸内酪酸産生菌増加剤には、腸溶性成分の他に、担体もしくは賦形剤、添加剤などを含有させうる。 担体もしくは賦形剤として、以下のものに限定されないが、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖、乳糖、デキストリン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、ガムなどが挙げられる。 添加剤として、以下のものに限定されないが、医薬分野で通常使用される添加剤、例えば、崩壊剤、着色剤、通常の甘味剤もしくは高甘味度甘味剤、可塑剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、滑沢剤、芳味剤、安定剤などが挙げられる。 腸溶性剤型の表面は、必要に応じて、糖、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルクなどの添加剤から選択される少なくとも1種の物質でさらに被覆されてもよい。 本発明の腸内酪酸産生菌増加剤にはさらに、オリゴ糖、食物繊維などの酪酸産生を誘導する物質が含まれてもよい。 本発明の腸内酪酸産生菌増加剤によって、腸内で増加する酪酸産生菌は、クロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)群に属する菌、好ましくはフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー(Feacalibacterium prausnitzii)である。表1、表2から明らかなように、腸内のクロストリジウム・レプタム群およびフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーは、発芽菌(栄養細胞)の比率に依存して増加する傾向が認められる。 上述したように、腸内酪酸産生菌のなかでフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーは、炎症性大腸炎に罹患した患者において低下しているという報告(Sokol et al, Inflamm Bowel Dies, 15, 1183, 2009)があることから、本発明の腸内酪酸産生菌増加剤によってフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーを増加させ、それによって産生される酪酸によって炎症部位の腸管細胞の修復と炎症の改善が可能になると考えられる。 本発明の腸内酪酸産生菌増加剤は、食品添加剤としても、また飼料添加剤としても使用することができる。<医薬品> 本発明はさらに、腸内酪酸産生菌増加剤を含む医薬品を提供する。好ましくは、腸内酪酸産生菌増加剤を含む腸溶性剤型からなる医薬品を提供する。 このような腸溶性剤型(「腸溶性製剤」)については、<腸内酪酸産生菌増加剤>の項目で説明したとおりである。 腸溶性剤型には、バチルス・ズブチリスの、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体が、例えば1投与単位あたり1×104〜1×1012個CFU含有され、その他、担体又は賦形剤および腸溶性成分が含まれ、さらに必要に応じて添加剤が含まれる。 担体又は賦形剤としては、上で例示したものが使用されうる。 添加剤には、例えば崩壊剤、着色剤、甘味剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、滑沢剤、香味剤、安定剤、可塑剤などが含まれる。 崩壊剤の例は、澱粉、アルギン酸又はその塩、ナトリウム澱粉グリコラートなどである。 甘味剤の例は、スクロース、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、エリスリトール、ステビア、キシリトール、トレハロースなどである。 増量剤の例は、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉類、糖類などである。 結合剤の例は、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉類、アラビアゴム、キサンタンガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどである。 湿潤剤の例は、レシチン、ポリソルベート、ラウリルスルフェート、ソルビトール、ラクトフェリン、グリセリンなどである。 滑沢剤の例は、シリカ、タルク、ステアリン酸又はその塩、ポリエチレングリコールなどである。 香味剤の例は、ハーブ類、果実エキス、メントール、スペアミント油などである。 本発明の医薬品は、腸内酪酸産生菌、好ましくはクロストリジウム・レプタム群に属する菌、より好ましくはフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーを増加させる作用があり、その結果、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸炎、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、大腸癌などの疾患の予防又は治療のために使用されうる。 炎症性腸炎については、デキストラン硫酸の投与によって作製された潰瘍性大腸炎モデルラットに酪酸注腸により、酪酸に炎症修復効果があることが確認されている(佐々木雅也ら, 腸内細菌学雑誌, 19:1-8, 2005)。 アレルギー性疾患や自己免疫疾患については、腸内のクロストリジウム属細菌が、免疫抑制に関わる腸管の制御性T細胞を強力に誘導することが知られている(K. Atarashi et al., Science 2011; 331:337-341)。制御性T細胞の誘導によってアレルギー性疾患や自己免疫疾患の軽減だけでなく、炎症性腸炎の軽減も確認されている。 大腸癌については、大腸癌細胞の増殖が酪酸によって阻害されることが知られている(Int. J. Cancer 128(11): 259-2601, 2010)。また、腸内で酪酸を増強するプレバイオティクスが大腸癌を予防できることが知られている(J. Nutrition 134(4): 940-944, 2004)。 本発明の医薬品は、経口投与用に腸溶性剤型に製剤化される。剤型は、固体製剤であれば特に制限はないが、例えば錠剤、タブレット、丸剤、顆粒剤、カプセル剤などである。 投与量は、通常、1日あたり1〜2投与単位が好ましい。<食品> 本発明はさらに、腸内酪酸産生菌増加剤を含む食品を提供する。好ましくは、腸内酪酸産生菌増加剤を含む腸溶性剤型からなる機能性食品を提供する。 好ましい腸内酪酸産生菌は、クロストリジウム・レプタム群に属する菌であり、より好ましくはフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーである。 本発明の食品は、通常の食品に、本発明の上記腸内酪酸産生菌増加剤を添加もしくは混合し、腸内酪酸産生菌増加機能が付与された食品であってもよいし、あるいは、タブレット、ペレット、顆粒、カプセル剤などの形状に成形された、腸内酪酸産生菌増加機能が付与された機能性食品であってもよい。 食品が、腸内酪酸産生菌増加剤を含む腸溶性剤型に作製される場合、該剤型の成分等については、上で説明したとおりである。 腸溶性剤型には、種々の添加剤を加えることができる。そのような添加剤は、例えば、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドン、抗炎症性ペプチドなどである。 本発明の食品は、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸炎、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、大腸癌などの疾患の予防又は軽減のために使用されうる。 本明細書中で使用する「機能性食品」という用語は、生体に対して一定の機能性を有する食品を意味し、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)および栄養機能食品を含む保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセルおよび液剤などの各種剤形のもの)などのいわゆる健康食品全般を包含する。本発明の機能性食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含する。 本発明の食品は、本発明の腸内酪酸産生菌増加剤等の上記物質のほかに、その食品の製造に用いられる他の食品素材、例えば、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、着色料(クチナシ色素、赤102等)、香料(オレンジ香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム、スクロース、キシリトール、トレハロース、アセスルファムK、スクラロース、エリスリトール等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、うまみ調味料(グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)等、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)、賦形剤(水溶性デキストリン等)等などを配合して、常法に従って製造することができる。<飼料> 本発明はさらに、上記の腸内酪酸産生菌増加剤を含む飼料を提供する。腸内酪酸産生菌増加剤は、飼料添加剤として使用しうる。 好ましい腸内酪酸産生菌は、クロストリジウム・レプタム群に属する菌である。 飼料は、好ましくは家畜類(例えばウシ、ブタ、ヒツジ、家禽など)やペットの飼料である。 バチルス・ズブチリスの芽胞又は芽胞と発芽菌の混合菌、担体又は賦形剤、必要に応じて添加剤および腸溶性成分と一緒に配合し、顆粒状、ペレット状などの動物が食べ易い形状に作製されうる。担体又は賦形剤、添加剤および腸溶性成分は、上で例示したものを飼料でも使用しうる。 飼料は、トウモロコシ粉、米粉、糠などの穀粉、無機物、アミノ酸、タンパク質、ビタミン類、脂質などを含みうる。具体的には、日本標準飼料成分表(2009年版、農業・食品産業技術総合研究機構編)に記載されるような成分を含みうる。 本発明の飼料は、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸炎、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、大腸癌などの疾患の予防又は軽減のために使用されうる。<腸内酪酸産生菌増加機能付与方法〕 本発明はさらに、上記の腸内酪酸産生菌増加剤を食品又は飼料に添加することを含む、食品又は飼料に、腸内酪酸産生菌、好ましくはクロストリジウム・レプタム群に属する菌、を増加させる機能を付与する方法を提供する。 腸内酪酸産生菌増加剤は、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、好ましくはバチルス・ズブチリスがバチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)もしくは該C-3102株由来の変異株、の芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体、あるいは該芽胞、該混合菌又は該発芽菌体と上で例示したような担体もしくは賦形剤とを含む食品添加剤又は飼料添加剤である。 腸内酪酸産生菌増加剤の添加量は、腸内酪酸産生菌を増加させる機能を付与する量であり、非限定的に、例えば、食品又は飼料1回食分又は1組成物あたり、上記バチルス・ズブチリスの芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体1×104〜1×1012個CFUに相当する含有量である。 腸内酪酸産生菌増加剤は、上記のように腸溶性剤型に処方しうる。この場合、該剤型には、上に例示したような腸溶性成分を配合又はフィルムコーティングする。<食品又は飼料の製造方法> 本発明はさらに、上記の腸内酪酸産生菌増加剤を食品又は飼料に添加することを含む、腸内酪酸産生菌、好ましくはクロストリジウム・レプタム群に属する菌、さらに好ましくはフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー、を増加させる機能を有する食品又は飼料の製造方法を提供する。 腸内酪酸産生菌増加剤には、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、好ましくはバチルス・ズブチリスがバチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)もしくは該C-3102株由来の変異株、の芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体が含まれる。この有効成分の配合量は、<腸内酪酸産生菌増加機能付与方法>に記載されたものと同様である。 腸内酪酸産生菌増加剤は、腸溶性であってもよいし、あるいは非腸溶性であってもよいが、好ましくは、腸溶性である。腸内酪酸産生菌増加剤が腸溶性である場合には、その剤型に腸溶性成分が配合されるか、又はフィルムコーティングされる。 食品および飼料としては、特に制限はないが、例えば、上に記載された又は例示されたものが挙げられる。好ましい食品は、上記の腸内酪酸産生菌増加剤を含有させた、上記の機能性食品である。また、好ましい飼料は、上記の腸内酪酸産生菌増加剤を配合した固形飼料である。<腸内酪酸産生菌増加方法> 本発明はさらに、上記の腸内酪酸産生菌増加剤又はそれを含む飼料を、非ヒト動物に投与するか又は摂食させることを含む、該動物の腸内で酪酸産生菌を増加する方法を提供する。 好ましい酪酸産生菌は、クロストリジウム・レプタム群に属する菌、好ましくはフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーである。 内在性の腸内酪酸産生菌の増加に伴って腸内の酪酸濃度が有意に上昇する。オリゴ糖や水溶性食物繊維などの腸内の酪酸濃度を増加させる働きが知られているプロバイオティクスを飼料に混合することによって、腸内の酪酸濃度をさらに増加させる効果が期待できる。 非ヒト動物は、ヒトを除く上記の動物、すなわち脊椎動物であり、好ましくは哺乳動物および鳥類である。 本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はそれらの実施例によって制限されないものとする。[実施例1]<芽胞菌体の培養> バチルス・ズブチリスC-3102株(FERM BP-1096)を固体培地により培養した。すなわち、バチルス・ズブチリスを、商品名「トリプチケース・ソイ・ブロス」(BBL社)30g/Lに寒天2%を混合したTS寒天培地を用いて37℃で2〜3日培養し、芽胞菌体を得た。<ヒト人工大腸モデルを使ったクロストリジウム・レプタム群の変動> オランダTNOで所有している人工腸管モデル(TNO intestinal model:TIM-モデル(Havenaar, R.及びMinekus, M. Dairy Industries International 61:17-23, 1996、Marteau, P. et al. J Dairy Sci 80:1031-1037, 1996))を用い、ヒト腸内フローラの変動を評価した。すなわち、大腸の人工モデルとしてTNOで開発されたTIM-2モデルを使用し、腸内フローラの変動については定量PCR法で比較した。 定量PCR法に使用したクロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)群の検出プライマーは、 CAAGCACAAGCRGTGGAGT(配列番号1)及び、AGAGTSCTCTTGCGTA(配列番号2)であり、基準株として、クロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)ATCC 29065株(米国ATCCから入手可能)を用いた。また、フィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー(Feacalibacterium prausnitzii)の検出プライマーは、CCATGAATTGCCTTCAAAACTGTT(配列番号3)及び、GAGCCTCAGCGTCAGTTGGT(配列番号4)であり、基準株として、フィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー(Feacalibacterium prausnitzii)ATCC 27766(米国ATCCから入手可能)を用いた。 試験群として、無添加群(#1)、バチルス・ズブチリスC-3102株(FERM BP-1096)芽胞体をトータル1×1010個CFU添加する群(#2)、8%発芽菌体サンプルをトータル1×1010個CFU添加する群(#3)、30%発芽菌体サンプルをトータル1×1010個CFU添加する群(#4)を設定した。 発芽菌体サンプルは、バチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)を培養して得られた発芽菌体を用いた。商品名「トリプチケース・ソイ・ブロス」(BBL社)30g/Lで調整したTS液体培地を用いて37℃で2時間振とう培養して得た。 すなわち、バチルス・ズブチリスC-3102株(FERM BP-1096)を商品名「トリプチケース・ソイ・ブロス」(BBL社)30g/Lで調整したTS液体培地を用いて37℃で2時間振とう培養し、発芽率を確認した。 その結果、バチルス・ズブチリスC-3102株(FERM BP-1096)は、6回の培養で発芽率22〜32%となった。 発芽率の換算については、芽胞体が熱に強い性質を利用し、65℃30分加熱処理した菌体を「芽胞」とし、加熱処理しない菌体を「芽胞+栄養細胞」とし、非加熱菌体数/添加菌体数×100(%)―加熱菌数/添加菌体数×100(%)を発芽率として算出し評価した。2時間培養後、遠心分離により得られた上清と菌体のうち、菌体のみを集め、菌体サンプルとした。この菌体サンプルを30%発芽菌体サンプルとした。 TIM-2モデルにオランダ健常人ヒト腸内フローラを接種し、16時間前培養し、安定なフローラを形成させた後、試験サンプル(#1、#2、#3、#4)を添加し、72時間作用させた。それぞれの試験群につきn=2で実験を行なった。 また、実験前後の人工腸内内容物からDNAを抽出フェノール-クロロホルム法で抽出し、定量PCR法で定量比較した。(結果) クロストリジウム・レプタム群ついて、各群の実験前(0時間)と実験後(72時間)のコピー数の増減を対数値にして比較した結果を表1に示す。 表1から分かるように、30%発芽菌体(#4)を使用したとき、無添加群(#1)を使用したときと比べて約2倍近く腸内在性酪酸産生菌であるクロストリジウム・レプタム群が増加した。また、芽胞菌体(#2)、8%発芽菌体(#3)、30%発芽菌体(#4)を比較すると、発芽率依存的にクロストリジウム・レプタム群が増加した。 フィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーの増減についても、各群の実験前(0時間)と実験後(72時間)のコピー数の増減を対数値にして比較した結果を表2に示す。 表2の結果からもフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィーが、発芽率依存的に増加していることは明らかであった。[実施例2]<ヒト人工大腸モデルを使った酪酸濃度の変動> 実施例1で行った試験群の実験において、0時間、24時間、48時間、72時間ごとに、人工腸内透析液のサンプリングを行った。人工腸管透析液中の酪酸濃度(mmol)を測定した。 72時間の試験サンプルの酪酸濃度から0時間の試験サンプルの酪酸濃度を引いた結果を表3に示す。 表3から、30%発芽菌体(*2)を使用したとき、8%発芽(*1)を使用したときと比べて芽胞体の発芽率依存的に酪酸濃度が増加した。 なお実施例2では、サンプルごとのトータルの菌体数をそろえているため、芽胞菌体数は発芽率に依存して減少する。それにも関わらず30%発芽菌体(*2)を使用したときの酪産濃度が8%発芽菌体(*1)を使用したときの酪酸濃度よりも高い結果となっている。このことはバチルス・ズブチリス芽胞菌体が大腸においてビフィズス菌を増加させるという特許文献3などの従来の効果とは別の効果や作用機序であることを示唆する。 本発明は、バチルス・ズブチリスを使用して動物腸内の酪酸産生菌、特にクロストリジウム・レプタム群を増加させ、これによって腸内の酪酸濃度を増加させることを特徴としており、これまでに知られていない新しい考え方に基づいている。酪酸は、炎症性腸疾患の治療や大腸癌の予防・軽減等に有効であることが知られているし、また、腸内のクロストリジウム属細菌は制御性T細胞を誘導することも知られておりアレルギー性疾患や自己免疫疾患の軽減にも有効であると考えられる。 動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有する、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)の、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体を有効成分として含む、腸内酪酸産生菌増加剤。 酪酸産生菌がクロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)群に属する菌である、請求項1に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。酪酸産生菌がフィーカリバクテリウム・パラウスニッチィー(Feacalibacterium prausnitzii)である、上記(1)に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 混合菌の芽胞対発芽菌の比率が95:5〜5:95である、請求項1又は2に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 混合菌の芽胞対発芽菌の比率が85:15〜15:85である、請求項1又は2に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 バチルス・ズブチリスがバチルス・ズブチリスC-3102株(寄託番号FERM BP-1096)又は該C-3102株由来の変異株である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 腸溶性剤型に処方されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 動物がヒト、家畜動物又はペット動物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 食品添加剤又は飼料添加剤として使用するためのものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤を含む食品。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤を含む飼料。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤を含む医薬品。 炎症性腸疾患又は大腸癌の予防又は治療用である、請求項12に記載の医薬品。 炎症性腸疾患又は大腸癌の予防又は軽減用である、請求項10に記載の食品。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤又はそれを含む飼料を、非ヒト動物に投与するか又は摂食させることを含む、大腸において酪酸産生菌を増加する方法。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤を食品又は飼料に添加することを含む、食品又は飼料に、腸内酪酸産生菌を増加させる機能を付与する方法。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の腸内酪酸産生菌増加剤を食品又は飼料に添加することを含む、腸内酪酸産生菌を増加させる機能を有する食品又は飼料の製造方法。 【課題】腸内酪産生菌増加剤を提供する。【解決手段】動物腸内の酪酸産生菌を増加させる能力を有する、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)の、芽胞、芽胞と発芽菌の混合菌、又は発芽菌体を有効成分として含む、腸内酪酸産生菌増加剤、ならびに、腸内酪酸産生菌増加剤を含む食品、飼料又は医薬品。【選択図】なし配列表