タイトル: | 公開特許公報(A)_芳香族アミノ酸含量の増大した植物およびその作製方法 |
出願番号: | 2012001818 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A01H 5/00,A01H 1/00,C12N 15/09 |
郎 亜琴 平野 博人 三輪 哲也 JP 2013141421 公開特許公報(A) 20130722 2012001818 20120110 芳香族アミノ酸含量の増大した植物およびその作製方法 味の素株式会社 000000066 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 市川 さつき 100123777 滝澤 敏雄 100111501 郎 亜琴 平野 博人 三輪 哲也 A01H 5/00 20060101AFI20130625BHJP A01H 1/00 20060101ALI20130625BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130625BHJP JPA01H5/00 AA01H1/00 AC12N15/00 A 13 OL 22 2B030 4B024 2B030AA02 2B030AB03 2B030AD09 2B030CA17 2B030CB02 4B024AA08 4B024BA07 4B024CA04 4B024DA01 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 本発明は、植物における芳香族アミノ酸合成系の遺伝子操作に関する。特に、本発明は、芳香族アミノ酸含量が増強された形質転換植物およびその作製方法に関する。 また、本発明は芳香族アミノ酸に由来する二次代謝産物の含量が増加した形質転換植物およびその作製方法に関する。 芳香族アミノ酸のフェニルアラニン、チロシンとトリプトファンは蛋白質を合成する基質である一方、植物においては生長調節物質のホルモン、及び二次代謝産物の生産の基質でもある。 動物においては、これらのアミノ酸は必須アミノ酸であり、食物から摂取しなければならない。特に、トリプトファンはリジン、メチオニン、トレオニンと共に植物由来の飼料の品質を表す一つの栄養素である。したがって、食料や飼料となる作物に、これらのアミノ酸が高含有することが望ましい。 芳香族アミノ酸を基質として様々な機能性二次代謝産物が合成される。例えば、フェニルアラニンから合成されるフェニルプルパノイド、フラボノイド及びアルカノイドなどの2次代謝産物では、多くの成分が植物体内で抗菌、抗ストレス作用などを示し、これらは健康食品や薬としても使われている。抗酸化物質の一種であるビタミンEはチロシンの経路から合成される。また、トリプトファン合成経路からは植物の生長調節物質オーキシンの一種であるインドール酢酸などが合成される。以上のように、植物に含まれるアミノ酸の蓄積量の改変は、有用な二次代謝産物の大量合成や未知の機能性成分の検出に繋がると期待される。従って、機能性成分の探索に芳香族アミノ酸が高含有した植物の作出が期待される。 芳香族アミノ酸はシキミ酸合成経路からスタートする。シキミ酸合成経路とはホスホエノールピルビン酸(PEP)とエリスロース-4-リン酸(E-4P)が結合し、3-デオキシ-D-アラビノ-へプツロソン-7-リン酸(DAHP)になる反応から始まって、6つの酵素が関与し、7つの反応を通し、最後コリスミ酸が合成される経路である。この合成経路から、抗インフルエンザの薬として知られる、タミフルの原料、シキミ酸が合成される。そして、コリスミ酸を基質とし、芳香族アミノ酸のフェニルアラニン、チロシンとトリプトファンが合成される。シキミ酸合成経路を制御すると全ての芳香族アミノ酸、およびこの経路に係わる2次代謝産物も制御されると考えられる。 工業上では、微生物を利用してシキミ酸合成経路、及びアミノ酸合成経路を制御し、大量に芳香族アミノ酸を合成していることが知られており、フィードバック阻害解除遺伝子の導入が有効な手段として利用されている(欧州特許 EP745671;米国特許 US7638312)。 植物においては、芳香族アミノ酸合成経路の後半段階に関わる遺伝子のフィードバック阻害解除遺伝子を導入する手法で、芳香族アミノ酸を増加させた幾つかの報告がある。例えば、ArabidopsisにE. coliのフィードバック阻害解除遺伝子pheAを導入して、フェニルアラニンの高含量化している(Plant J. 2009;60(1):156-67)。また、Tozawa らはRiceにRice由来のフィードバック阻害解除遺伝子OASA1Dを導入してトリプトファンを増加させた(Plant Phys. 2001; 126: 1493-1506)。また、タバコに酵母由来のPDH遺伝子を導入し、ビタミンEを大量に合成させた(Plant Phys., 2004; 134: 92-100)。このような例においては、各アミノ酸合成経路の最終段階に関わる遺伝子を発現させているので、各遺伝子に対して1つのアミノ酸しか有効に増加させられない。 一方、シキミ酸合成経路のフィードバック阻害解除遺伝子を利用した芳香族アミノ酸増大の試みは、植物ではまだ報告がない。シキミ酸合成経路の最初のステップは、解糖系によって生成されるホスホエノールピルビン酸(PEP)と、D-エリトロース-4-リン酸(E-4P)とが結合して3-デオキシ-D-アラビノ-へプツロソン-7-リン酸が生成される工程である。この工程に関与する酵素はDAHPSである。微生物中では、DAHPSは3つのアイソザイムが存在し、aroG、aroF、aroHと呼ばれており、それぞれDAHPSの活性を80%、20%、1%有することが知られている。aroGはフェニルアラニンに、aroFはチロシンに、aroHはトリプトファンによってフィードバック阻害されることが知られている(J. BACTERIOL., 1988; 170(2) : 5500-5506)。フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除された例示的大腸菌DAHPSはaroGによってコードされるDAHPSのアミノ酸配列のN末端から150番目のプロリン(Pro)が他のアミノ酸、好ましくはロイシン(Leu)に置換された変異を有する。また、チロシンによるフィードバックが解除された例示的大腸菌DAHPSはaroFによってコードされるDAHPSのアミノ酸配列の148番目のProがLeuに置換された変異を有する(J. BACTERIOL., Nov. 1990, p. 6581-6584)。トリプトファンによるフィードバックが解除された、aroHによってコードされる大腸菌DAHPSの変異体の例はJ. BACTERIOL., Dec. 1988, p. 5500-5506に記載されている。 植物では、シロイヌナズナにおいて、2つのDAHPS遺伝子が存在し、それぞれ生理活性を持つと言われているが(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991; 88: 8821-8825、Mol. Plant, 2010; 3(6): 956-972)、アミノ酸からのフィードバック阻害を受けるかどうかは明らかにされていない。欧州特許第745671号公報米国特許第7638312号公報Plant J. 2009;60(1):156-67.Plant Phys., 2001; 126: 1493-1506Plant Phys., 2004; 134: 92-100J. BACTERIOL., 1988; 170(2) : 5500-5506J. BACTERIOL., Nov. 1990, p. 6581-6584J. BACTERIOL., Dec. 1988, p. 5500-5506Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991; 88: 8821-8825Mol. Plant, 2010; 3(6): 956-972 本発明は、同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して、芳香族アミノ酸の含量が増大した形質転換植物を提供する。また、本発明は、同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して、芳香族アミノ酸に由来する二次代謝産物の含量が増大した形質転換植物を提供する。さらに、本発明は、同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して芳香族アミノ酸に由来する新規な二次代謝物質を産生する形質転換植物を提供する。 本発明はシキミ酸合成経路に関与する3-デオキシ-D-アラビノ-ヘプツロン-7-リン酸合成酵素(DAHPS)の活性が増大した、および/または、DAHPSのフィードバック阻害が解除された、形質転換植物およびその作出方法を提供する。 特に、本発明はDAHPSをコードする遺伝子aroGを改変したフィードバック阻害解除aroGを植物に導入することにより、同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して芳香族アミノ酸の含量が増大した形質転換植物およびその作出方法を提供する。 また、本発明は、大腸菌のaroGを改変したフィードバック阻害解除aroGを植物に導入することにより、同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して芳香族アミノ酸に由来する二次代謝産物の含量が増大した形質転換植物およびその作出方法を提供する。図1はLigation PCRによる遺伝子配列の連結の概略を示す。図2はフィードバック阻害が解除されたDAHPSをコードするaroG(フィードバック阻害解除aroG)を含む遺伝子構築物の構造を示す。NPT II:ネオマイシホスホトランスフェラーゼII遺伝子; CaMV 35S promoter: カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター;rbcS:リブロース-1,5-二燐酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RubisCo)小サブユニットのトランジットペプチドコード配列;aroG:変異aroG(バクテリアのフィードバック非感受性DAHPS遺伝子);HA:ヘマグルチニンエピトープタグ;NOS-ter:ノパリンオクトピンシンターゼターミネーター;ATG:翻訳開始コドン;TAG:終止コドン;LB:T-DNA領域の左ボーダー配列;RB:T-DNA領域の右ボーダー配列。図3は野生型植物およびフィードバック阻害解除aroGを導入した形質転換植物のゲノム分析の結果を示す。Mは100 bp のDNAマーカー、レーン上の3、4、5、6、7、8、9、12、14、16、20はそれぞれ形質転換体系統の番号である。Wは野生型を示す。図4は野生型植物およびフィードバック阻害解除aroGを導入した形質転換体のアミノ酸分析結果を示す。縦軸は新鮮質量あたりのアミノ酸含量(mmol/g FW)を示す。横軸の数字はそれぞれ形質転換系統の番号である。図5は野生型植物およびフィードバック阻害解除aroGを導入した形質転換系統のウエスタンブロット分析の結果を示す。各レーンの上の数字はそれぞれ形質転換系統の番号を示す。図6は野生型植物およびフィードバック阻害解除aroGを導入した形質転換系統のポリフェノール総量の分析結果を示す。縦軸は植物体新鮮質量100g当たりの、没食子酸(gallic acid)に相当するポリフェノール含量(mg)を示す。横軸の数字は形質転換系統の番号を示す。Wは野生型を示す。図7は野生型植物およびフィードバック阻害解除aroGを導入した形質転換系統の抽出液の抗酸化活性の測定結果を示す。縦軸は植物体新鮮質量100g中の同等なフリーラジカルの消去能を有するアスコルビン酸に相当する量(mg)を示す。横軸の数字は形質転換系統の番号を示す。Wは野生型を示す。フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除された変異型大腸菌DAHPSのアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチド配列。図8−1つづき。 本発明は、植物における芳香族アミノ酸合成系の遺伝子操作に関する。具体的には、本発明は、芳香族アミノ酸含量が増強されたトランスジェニック植物、およびその作製方法に関する。 本発明において、芳香族アミノ酸合成に関与する酵素、特にシキミ酸合成系路に関与する酵素の活性および/またはそれらの酵素をコードする遺伝子が改変される。このような発現の改変は、例えば、a)酵素のコーディング配列が強力な構成プロモーターに機能し得る状態で結合されているトランスジーン、b)芳香族アミノ酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子のコピー数増加、c)芳香族アミノ酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を活性化する調節遺伝子、d)芳香族アミノ酸合成に関与する酵素のフィードバック阻害の解除、等によっておこなうことができる。 本発明の一実施態様においては、芳香族アミノ酸合成を行う酵素の活性が増大される。本発明の別の実施態様においては、芳香族アミノ酸合成を行う酵素をコードする遺伝子の発現が増強される。本発明の特に好ましい実施態様においては、芳香族アミノ酸合成に関与する遺伝子のフィードバック阻害を解除することにより、植物における芳香族アミノ酸合成が増強される。なお、本発明の形質転換植物におけるフィードバック阻害の「解除」とは、フィードバック阻害が全く生じないことのみを意味するのではなく、フィードバック阻害が同条件で栽培された野生型植物に比べて30%以上低下、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上低下、更に好ましくは90%以上低下、最も好ましくは99%以上低下していることを言う。また、フィードバック阻害の「解除」の程度は、例えば、Kikuchiら(Appl. Environ. Microbiol., 1997, 63, 761-762)が開示する手法により確認することができる。より具体的にはPhe(フェニルアラニン)存在下でDAHPS活性をSchonerとHerrman(J. Biol. Chem.,1976, 251, 5440-5447)の方法に従って測定し、共存するPhe濃度とDAHPS活性の低下との関係を測定することによりフィードバック阻害の解除の程度を評価することができる。例えば2〜10 mMの範囲の特定濃度のPhe共存下におけるDAHPSの比活性(U/mg)を野生型と本発明の形質転換植物由来のサンプルで比較することによってフィードバック阻害の程度を測定することができる。1Uは例えばホスホエノールピルビン酸とエリスロース-4-リン酸から37℃、1分間に1 μmolのDAHPを生成する酵素活性の単位として定義することができる。具体的には、前記Kikuchiらの文献に示されたように2 mMPheによって野生型DAHPS活性が90%阻害される場合、本発明の形質転換植物のDAHPS活性が2 mMのPheによって90%未満しか阻害されない場合、本発明の形質転換植物のDAHPSのフィードバック阻害は野生型植物に比べて「解除」されていると判断することができ、さらに本発明の形質転換植物のDAHPS活性が2 mMのPheによって45%しか阻害されない場合は本発明の形質転換植物のDAHPSのフィードバック阻害は野生型植物に比べて50%低下していると判断することができる。また、Pheによって本発明の形質転換植物のDAHPS活性が(測定可能範囲で)全く阻害されない場合、あるいは、寧ろPheによって活性が上昇する場合であっても、本発明の形質転換植物における芳香族アミノ酸合成に関与する遺伝子のフィードバック阻害が「同条件で栽培された野生型植物に比べてフィードバック阻害が同条件で栽培された野生型植物に比べて30%以上低下、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上低下、更に好ましくは90%以上低下、最も好ましくは99%以上低下している」のは言うまでもない。 本発明の方法は例えば以下の手順を含む:a)シキミ酸合成系路に関与する遺伝子をクローニングする工程;b)得られた遺伝子をフィードバック阻害が解除されるように改変する工程;c)必要に応じて、改変した遺伝子を必要により適切なベクターへ適切な方向に挿入し、再クローニングする工程;d)b)で得られた改変遺伝子またはc)で得られたベクターを植物または植物細胞へ導入し、形質転換体を得る工程。 また、本発明は、a)シキミ酸合成系路に関与する遺伝子をクローニングする工程;b)得られた遺伝子をフィードバック阻害が解除されるように改変する工程;c)改変した遺伝子またはその断片を用いて植物ゲノムにフィードバック阻害が解除された遺伝子を組み込むことにより、形質転換体を得る工程、を含んでも良い。 いずれの場合も、形質転換体が植物細胞の場合は得られた形質転換細胞を植物体へ再生することができる。 本発明において、活性が増強されるシキミ酸合成系路に関与する酵素には3-デオキシ-D-アラビノ-へプツロソン-7-リン酸合成酵素(DAHPS)が含まれる。また、本発明においてフィードバック阻害が解除されるシキミ酸合成系路に関与する遺伝子には、シキミ酸合成系路の最初のステップに関与する3-デオキシ-D-アラビノ-へプツロソン-7-リン酸合成酵素(DAHPS)のサブユニットを構成する少なくとも一つの遺伝子が含まれる。上述したように、大腸菌のDAHPSには3つのアイソザイムが存在し、それぞれaroG、aroF、aroHと呼ばれる遺伝子によってコードされている。このうちaroGによってコードされるDAHPSアイソザイムはDAHPSの全活性の80%を担い、aroGによってコードされるDAHPSは多数の2次代謝産物合成の基質となるフェニルアラニンによってフィードバック阻害される。したがって、本発明において活性が増大されるシキミ酸合成系路に関与する酵素としてはaroGによってコードされるDAHPSが特に好ましく、本発明において発現が増強される、または、フィードバック阻害が解除されるDAHPSをコードする遺伝子としてaroGが特に好ましい。本発明に使用できる、フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除された例示的大腸菌DAHPSはaroGによってコードされるDAHPS(配列番号2)のアミノ酸配列の150番目のプロリン(Pro)が他のアミノ酸、好ましくはロイシン(Leu)に置換された変異を有する(配列番号4)。 本発明において、フィードバック阻害が解除されるシキミ酸合成系路に関与する酵素をコードする遺伝子、特にaroG遺伝子の由来は特に限定されず、細菌、酵母、藻類、および植物由来の対応する遺伝子であってよい。一般に動物にはシキミ酸合成系路は動物には見られないが、存在したとすればその経路に関与する遺伝子も本発明において発現を増強する遺伝子、または、フィードバック阻害を解除すべき遺伝子として利用できることは当然である。そのような供給源から得られた配列は植物細胞内で機能する適切なプロモーターと機能可能に連結させることができ、また宿主植物におけるそれらの翻訳効率を高めるため、あるいはコードされた酵素の触媒作用を変えるためにin vitro突然変異誘発またはde novo合成によって改変してもよい。これらの改変には基質および/または触媒作用に関与する残基の修飾が含まれるが、これらに限られない。さらに、シキミ酸合成系路に関与する酵素をコードする遺伝子は、発現される宿主あるいはオルガネラのコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変することもできる。また、これらの遺伝子配列に適切なトランジットペプチド、例えば葉緑体への移行を促進するトランジットペプチド、をコードする核酸配列を連結してもよい。 さらに、ホスホエノールピルビン酸(PEP)とD-エリトロース-4-リン酸(E-4P)とから3-デオキシ-D-アラビノ-へプツロソン-7-リン酸3-デオキシ-D-アラビノ-へプツロソン-7-リン酸を合成する活性(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素活性、すなわち、DAHPS活性)を有し、フィードバック阻害が解除されたポリペプチドをコードする限り、上述した様々な核酸配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸も本発明に使用することができる。したがって、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質の1以上のアミノ酸が欠失、付加、置換されたタンパク質をコードする核酸断片も、DAHPS活性を有し、かつ、アミノ酸配列の150番目のProがLeuに置換された変異を含むポリペプチドをコードする限り本発明に利用することができる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。そのような条件はSambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載されているように当業者によく知られたものである。ストリンジェントな条件には、相同性が高いDNA同士、例えば80、90、95、97または99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、および、通常のサザンハイブリダイゼ−ションの洗浄条件である60℃、1xSSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1xSSC、0.1%SDSさらに好ましくは、68℃、0.1xSSC、0.1%SDSに相当する塩濃度、温度で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が含まれる。アミノ酸配列および核酸配列の相同性は、例えばEBI(European Bioinformatics Institute、http://www.ebi.ac.uk/)から提供されているBLAST、FASTA等の、当業者によく知られた解析プログラムを標準的なパラメーターと共に用いて計算することができる。 本発明の特に好ましい実施態様においては、大腸菌(E.coli)由来のDAHPS遺伝子、特にaroGが、フィードバック阻害が解除されるように改変され、改変されたE.coli DAHPS遺伝子は適切なプロモーターに連結された遺伝子構築物として植物に導入される。そのような遺伝子構築物の作製方法は当業者にはよく知られたものである。特定の遺伝子を改変する部位特異的変異導入方法も当業者にはよく知られたものである。大腸菌のarogG遺伝子のヌクレオチド配列を配列番号1に、aroGにコードされるDAHPSのアミノ酸配列を配列番号2に示す。フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除された大腸菌DAHPSの例はDAHPSのアミノ酸配列の150番目のプロリン(Pro)が他のアミノ酸、好ましくはロイシン(Leu)に置換された変異DAHPSである。このようなアミノ酸配列を有するDAHPSをコードする変異aroGの作製は、配列番号1および2の情報に基づいて部位特異的変異導入によって容易に作成することができる。フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除された大腸菌DAHPSをコードするヌクレオチド配列の例を配列番号3に、フィードバック阻害が解除されたDAHPSのアミノ酸配列の例を配列番号4に、および、それらをまとめて図8−1および図8−2に示す。配列番号4のアミノ酸配列以外に、配列番号2記載のアミノ酸配列の202位のアラニン(Ala)がスレオニン(Thr)に置換された配列、146位のアスパラギン酸(Asp)がアスパラギン(Asn)に置換された配列、または、147位のメチオニン(Met)がイソロイシン(Ile)に置換された配列からなる変異型DAHPSもフィードバック阻害が解除されたDAHPSの例である。 本明細書においては配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、少なくとも80、90、95、97または99%以上の配列同一性を有するポリペプチドであって、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列の150番目に対応するProが他のアミノ酸、好ましくはLeuに置換されたポリペプチドは「フィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素(DAHPS)」であり、そのような酵素をコードする遺伝子はフィードバック阻害が解除されたDAHPSをコードする「フィードバック阻害解除aroG」または「変異aroG」である。配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、少なくとも80、90、95、97または99%以上の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸断片は、たとえば配列番号1または配列番号3の配列情報に基づいて1または2以上の核酸プローブを設計し、それらのプローブを用いて、上述したハイブリダイズ条件下でシキミ酸合成系路を有する種々の生物種のcDNAライブラリー等をスクリーニングすることによっても容易に得られる。得られたクローンがDAHPS活性を有することは適切な宿主−発現系を用いて確認することができる。配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、少なくとも80、90、95、97または99%以上の配列同一性を有するポリペプチドにおける、配列番号2のアミノ酸配列の150番目の位置のProに対応するプロリンの位置は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと他のポリペプチドとのアラインメントによって同定することができる。配列のアラインメントはEBI等で提供しているCLUSTALW等の当業者によく知られたツールを使って行うことができる。 大腸菌DAHPSに対応する植物の内在性遺伝子について、上記と同様な変異を相同組換え等によって導入することにより、異種DNAを導入することなく、シキミ酸合成経路に関与する酵素のフィードバック阻害を解除することもできる。たとえば、シロイヌナズナのDAHPS遺伝子配列は、Keithら、1991,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88:8821-8825; Accession No. M74819から得ることができ、この配列情報に基づいて、シロイヌナズナまたは他の植物種における大腸菌DAHPSに対応する内在性遺伝子について上記と同様な変異を相同組換え等によって導入することができる。 本発明に使用される遺伝子構築物は、一般に、aroGまたは変異aroGの他に植物細胞内で機能する適切なプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターのような適切なターミネーター、その他の発現制御に有用なエレメント(たとえばエンハンサー)、および、形質転換体を選抜するための適切なマーカー遺伝子、例えばカナマイシン耐性遺伝子、G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などを含む薬剤耐性遺伝子を含んでよい。この構築物に含まれるプロモーターは構成的プロモーターであっても器官特異的若しくは生育特異的であってもよく、使用する宿主、遺伝子、必要とする発現量、発現させるべき器官、生育ステージ等に依存して選択することができる。本発明においてシキミ酸合成系路に関与する変異を含むまたは含まない遺伝子、特に変異を含むまたは含まないDAHPS遺伝子を発現させる場合、前述のプロモーターおよびその他の発現制御に有用なエレメントを複数使用することが望ましいこともある。 芳香族アミノ酸含量の増大した植物は、上述のように改変されたシキミ酸合成経路に関与する酵素、特にDAHPSをコードする核酸分子に連結された植物プロモーターを含む遺伝子構築物で植物細胞を形質転換することにより作製することができる。本発明の好ましい実施態様において使用される関連プロモーターは強力かつ非器官特異的または非生育ステージ特異的プロモーター(例えば、多くまたは全ての組織中で強く発現するプロモーター)である。この様な強力な構成的プロモーターにはCaMV35Sプロモーターが含まれる。 本発明の更に別の実施態様において、誘導プロモーターを所望の酵素をコードする配列に結合させた遺伝子構築物で植物を形質転換する事が有利であり得る。この様なプロモーターには、熱ショック遺伝子、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ遺伝子などの防御応答遺伝子、傷害応答遺伝子が含まれるがこれらに限定されない。 上述の遺伝子構築物は、その構築物を選抜するための選択可能なマーカーを含んでもよい。例えば、細菌中で伝達される構築物は抗生物質耐性遺伝子、例えばカナマイシン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、またはクロラムフェニコール対する耐性を与える遺伝子を含むことが好ましい。構築物を伝達するのに適したベクターとして、プラスミッド、コスミド、バクテリオファージまたはウイルスが挙げられる。加えて、組換え構築物は、これらの構築物により形質転換された植物細胞の単離、同定または追跡のための植物発現性の選抜マーカー遺伝子又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含んでも良い。選抜マーカーには、例えば、カナマイシン、G418、およびハイグロマイシンなどの抗生物質に対する耐性、スルフォニル尿素、フォスフィノスリシン、およびグリフォセートなどの除草剤に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる、これらに限定されない。スクリーニング可能なマーカー遺伝子には、β−グルクロニダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子が含まれるがこれらに限定はされない。 本発明に使用できる遺伝子導入法は特に限定されず、植物細胞あるいは植物体への遺伝子導入法として当業者に知られるいずれの方法を使用してもよい。例えば、本発明の実施態様の一つにおいて、アグロバクテリウムが遺伝子構築物を植物に導入するのに用いられる。この様な形質転換は2成分アグロバクテリウムT-DNAベクター(Bevan, 1984, Nuc. acid Res. 12:8711-8721)、および同時培養操作(Horschら、1985, Science, 227:1229-1231)を使用することが望ましい。アグロバクテリウム形質転換系はまた単子葉植物および植物細胞を形質転換するのに使用することもできる。植物を形質転換するためにアグロバクテリウム系を利用した植物の形質転換法は当業者によく知られたものである。 別の実施態様において、組換え核酸構築物を植物および植物細胞に導入する為の種々の別法を使用することができる。別の遺伝子導入法および形質転換方法には、裸のDNAの、カルシウム、ポリエチレングリコール(PEG)またはエレクトロポレーションを用いたプロトプラスト形質転換法、減圧浸潤法を用いたin planta形質転換法(C. R. Acad Sci. Paris, Life Science, 1993; 316, 1194-1199)が含まれる。 本発明において対象とする植物は特に限定されず、たとえば、トマト、ポテト、ビート、ダイズ、シロイヌナズナ、トウモロコシ、小麦、イネ、サトウキビ、トウガラシ、レタス、サツマイモ、ブロッコリー、ベリー類(イチゴ、ラズベリー、ポイズンベリー、グースベリー、ブルーベリー、マリオンベリー等)が挙げられるが、これらに限定されない。 形質転換された植物体、植物細胞、カルス、組織等は、形質転換に用いた遺伝子構築物に存在するマーカー遺伝子によりコードされた形質につき選択又はスクリーニングする事により同定され、単離することができる。更に形質転換された植物細胞および植物は、本発明の組換え核酸構築物に存在しうる可視のマーカー遺伝子(例えば、β−グルクロニダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子)の活性につきスクリーニングする事により同定することもできる。この様な選択方法およびスクリーニング方法は当業者に公知である。 さらに、本発明の遺伝子構築物を含む植物または植物細胞形質転換体を同定するために当業者に知られた種々の方法を使用することができる。そのような方法には、1)導入された組換えDNA断片を検出および同定するためのサザン分析またはPCR増幅;2)遺伝子構築物のRNA転写産物を検出および同定するためのノーザンブロット、S1 RNase保護、プライマー伸長PCR増幅または逆転写酵素PCR (RT-PCR)増幅;および、3)タンパク質ゲル電気泳動、ウエスタンブロット、免疫沈殿、またはエンザイムイムノアッセイ、が含まれるが、これらに限定されない。これらのアッセイ方法も当業者によく知られたものである。特定の変異を有するDNA断片をそのような変異を有しないDNA断片と区別する方法は当業者にはよく知られたものである。 形質転換された植物は所望の生物学的変化に関してスクリーニングすることができる。例えば、形質転換植物についてDAHPSレベルまたはDAHPS遺伝子発現レベルを所望の組織および/または生育段階で測定することができる。さらに、芳香族アミノ酸の含量、芳香族アミノ酸に由来する二次代謝産物、特にポリフェノール類等についてスクリーニングすることもできる。さらに、形質転換植物の抽出物について抗酸化活性を測定することもできる。 本発明の形質転換植物の芳香族アミノ酸の含量は、同条件で栽培した野生型植物に比較して1.2倍以上に増大している。本明細書において「芳香族アミノ酸」には、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンが含まれる。特に本発明の形質転換植物は同条件で栽培した野生型植物に比較して、植物体またはその一部の単位質量あたりのトリプトファンの含量が好ましくは2倍以上増加しているか、または、チロシンの含量が好ましくは10倍以上、特に好ましくは15倍以上に増加しているか、または、フェニルアラニンの含量が好ましくは10倍以上、特に好ましくは50倍以上に増加している。特に本発明の形質転換植物は、同条件で栽培した野生型植物に比較して、植物体またはその一部の単位質量あたりのトリプトファンの含量が好ましくは2倍以上増加しており、チロシンの含量が好ましくは10倍以上、より好ましくは15倍以上、特に好ましくは30倍以上に増加しており、かつ、フェニルアラニンの含量が好ましくは10倍以上、より好ましくは50倍以上、特に好ましくは160倍以上に増加している。植物の芳香族アミノ酸の含量は例えば商業的に入手可能な高速アミノ酸分析計によって簡便に測定することができる。 本発明の形質転換植物は芳香族アミノ酸含量が同条件で栽培した野生型植物に比較して増大しているので、本発明の形質転換植物において芳香族アミノ酸に由来する2次代謝産物の含量も増大している。このような二次代謝産物には、ポリフェノール類、アルカロイド、フェニルプロパノイド、ビタミンEなどが含まれる。好ましくは、本発明の形質転換植物の二次代謝産物の含量は同条件で栽培した野生型植物の1.2倍以上に増加する。特に、本発明の形質転換植物のポリフェノール類の含量は、植物体または植物体の一部の単位質量あたり同条件で栽培した野生型植物の1.2倍以上、より好ましくは1.8倍以上に増加する。ポリフェノールまたはポリフェノール類とは分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ化学物質の総称であり、フラボノイド、フェノール酸、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリン等が含まれる。フラボノイドにはアントシアニン、イソフラボン、フラボノール、カテキン、タンニン、ルチンが含まれるが、これらに限定されない。植物体または植物細胞からのポリフェノール類の回収方法は当業者にはよく知られており(Molecules 2008, 13, 581-594; Journal of Engineering Science and Technology 2007, 2(1), 70-80; J. Agric. Food Chem. 2006, 54, 112-119; J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 1237-1241)、例えば以下のように回収およびその総量を測定することができる。 例えば、植物体全体または果実などの植物体の一部、またはその他の植物由来のサンプルを蒸留水で洗浄し、ホモゲナイザーまたは超音波等の適切な方法で破砕する。サンプルは乾燥したものでもよい。場合により、破砕の前に凍結(あるいは凍結乾燥)してもよい。凍結によってポリフェノール類の収率が増大することもある。破砕後、サンプルを乾燥させても良い。破砕した(または更に乾燥させた)サンプルをサンプル質量の3〜10倍体積の70%メタノール水性溶液または70%アセトン水性溶液(pH約2)で約5分間〜1時間処理してポリフェノール類を抽出することができる。あるいは、破砕した(または更に乾燥させた)サンプルに適当量のエタノールを添加し、窒素雰囲気下で約60rmpで連続撹拌しながら、約10 MPaの圧力をかけてポリフェノール類を高圧抽出することもできる。サンプルと抽出バッファーの混合物を遠心またはろ過して残渣を除去し、抽出液を回収し、場合により更に真空にして抽出液の溶媒を蒸発させてもよい。溶媒を蒸発させて得られた乾燥物はそのまま、または適当な溶媒、例えば約70%(v/v)のメタノールに溶解して測定用のサンプル又はその他の用途に利用することができ、-20℃〜-80℃の低温下で保存することもできる。フェノール類の総量はFolin-Ciocalteau法(Am. J. Enol. Vitic. 1965, 16, 144-158)によって測定することができる。たとえば、50μL〜1mLのサンプル抽出液に1mL〜5mLの純水を加え、75μL〜1mLのFolin-Ciocalteau試薬 (2N) (SIGMA)を入れて、よく混合した後、5分間〜1時間室温でインキュベートする。次に、300μL〜10mLの7〜15%の炭酸ナトリウムを加えて、2時間インキュベートした後、750nm〜765nmにおける吸光度を測定することによってサンプル中のフェノール類の総量を決定することができる。標準曲線は没食子酸またはタンニン酸を用いて作製することができ、この標準曲線に基づいてフェノール類の総量を定量することができる。 個々のフェノール類化合物については高性能クロマトグラフィー(HPLC)等で測定することができる。HPLCで分析する場合は、サンプルをHPLCに装荷し、例えば、1%ギ酸とアセトニトリルの濃度勾配を用いて各フェノール化合物を溶出することができる。例えばギ酸中のアセトニトリル濃度(%v/v)を0〜15%(0〜50分)、15〜25%(50〜60分)、25〜100%(60〜70分)、100%(70〜72分)、100〜0%(72〜80分)と変化させてフェノール化合物を順次溶出することができる。 ポリフェノール類は抗酸化活性を有することが知られている。本発明の形質転換植物のポリフェノール含量は増大しているので、本発明の形質転換植物の抗酸化活性は同条件で栽培した野生型植物に比較して増大している。好ましくは、本発明の形質転換植物は、抗酸化活性が同条件で栽培した野生型植物の抗酸化活性の1.2倍以上、特に好ましくは2倍以上に増加している。抗酸化活性は、例えば、植物体若しくはその一部分から抽出した植物抽出物を用いて測定され、植物体またはその一部分の単位質量あたりの抗酸化活性に換算される。好ましくは、前記植物抽出物は70%メタノール水性溶液または70%アセトン水性溶液(約pH2)を用いて植物から抽出される。抗酸化活性は例えば以下のように測定することができる。 上述のように抽出したフェノール類を含むサンプルの抗酸化活性はフリーラジカルスカヴェンジング能測定法(DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)法)(J. Sci. Food Agric. 1998, 76, 270-276)、第二鉄還元抗酸化力測定法(FRAP法)(Anal. Biochem. 1996, 239. 70-76)およびABTSラジカルカチオン捕獲能測定法(ABTS法)(Free Radical Biol. Med.1999,26, 1231-1237)等を用いて測定することができる。DPPH法は、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)の安定なフリーラジカルとフェノール類等の水素供与体との反応性に基づいている。DPPH溶液の脱色がサンプルの抗酸化活性の指標となる。DPPH法では、DPPH(2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl)ラジカルに対する消去能が測定される。サンプルの適当量、たとえばサンプル50μLに700μLのメタノールを加えて、750uLの0.02mg/mLのDPPH (ALFA AESAR)を加えてよく混合する。必要であれば、サンプルの希釈列を作製してもよい。混合後10〜30分間室温でインキュベートし、517nmまたは530nmにおける吸光度を測定する。アスコルビン酸を用いて標準曲線を作製し、フリーラジカルの消去能に関して植物体新鮮質量100gと等価なアスコルビン酸の量(mg)として抗酸化活性を測定することができる。 FRAP法はフェノール類がFe3+をFe2+に還元できることに基づいている。FRAP法では、たとえば30μLのサンプルと250μLのFRAP試薬とを混合し、1時間後に595nmの吸光度の変化を測定し、植物体新鮮質量1gについて単位時間に還元されたFe2+のモル数(μmol)として抗酸化活性を測定することができる。標準曲線はFeSO4を用いて作製することができる。 ABTS法は2,2'-アジノビス(3-エチル-2,3-ジヒドロベンゾチアゾール-6-スルホン酸(ABTS)の酸化によって生じるラジカルカチオンであるABTS+の捕獲能に基づいている。たとえば、ABTS水溶液と過硫酸カリウム溶液とを混合し、最終濃度2.5 mM過硫酸カリウム溶液中の7 mM ABTS溶液を作製する。サンプルのメタノール希釈液10μLと前述のABTS溶液990μLとを混合し、6分後に734nmの吸光度を測定する。標準曲線はアスコルビン酸等を用いることによって作製することができる。植物体新鮮質量100gと等価なアスコルビン酸のモル数(μmol)として抗酸化活性を測定することができる。 本発明の形質転換植物は同種の野生型植物と同様な条件で栽培することができる。栽培された形質転換植物から上述したように70%メタノールまたは70%アセトン(pH 2.0)等を用いて芳香族アミノ酸やポリフェノール類を植物体またはその一部、または植物細胞から抽出して回収することもできる。大腸菌(E. coli)のaroG遺伝子の植物形質転換ベクターへの組込みi)フィードバック阻害解除aroG遺伝子の作製 大腸菌のDAHPSは、DAHPSのアミノ酸配列(配列番号2)の150番目のプロリン(Pro)をロイシン(Leu)に置換するとフェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除される(Kikuchiら、Appl. Environ. Microbiol., 1997, 63, 761-762)。DAHPSのアミノ酸配列におけるProからLeuへの変異は大腸菌のDAHPSをコードするDNA配列(配列番号1)の449位のCをTに変えることによって行った。これにより、フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除される。フィードバック阻害解除aroGは具体的には以下のように作製した(Kikuchiら、Appl. Environ. Microbiol., 1997, 63, 761-762、特願平3-196226)。aroG遺伝子のクローニング 野生種E. coli W3110のDNAから5'-GTATTTACCCCGTTATTGTC-3(配列番号5)および5'-ACTCCGCCGGAAGTGACTAA-3’(配列番号6)のプライマーを用いてPCRにより、aroG遺伝子の全長配列を含む2.0 kbのフラグメントを増幅した。このフラグメントを制限酵素SalI とEco47IIIで切断し、ベクターpMW119 (Wako Pure Chemical Industries, Osaka, Japan)のSalI-SmaIに挿入した。このベクターを大腸菌へ導入し、Wizard Minipreps DNA Purification System (Promega)のキットを用い、aroG遺伝子を含むpMW119プラスミドを回収した。ヒドロキシルアミン処理によりaroG遺伝子変異体の作出 5mgのpMW119プラスミドDNAを100 ml の処理バッファー(50mMリン酸ナトリウム、400mM ヒドロキシルアミンと、1mM EDTA、pH 6.0)中で75℃、2 h インキュベーションを行い、変異処理をした。処理したDNAをEASYTRAPシステム(Takara Shuzo, Kyoto, Japan)で精製し、DAHPS遺伝子の欠失したE. coli株(aroF363 aroG365 aroH367 str-712 thi-1 his-4 proA2 argE3 ilv-7) (J. Bacteriol. 99:707 (1969))へ導入した。得られた形質転換体は10 mM のPheを含有する寒天培地(カナマイシン50 ug/ml)でスクリーングを行い、Pheに対する耐性を評価した。その結果、Phe 耐性がある4つの形質転換体、pAROG4, pAROG8, pAROG15とpAROG29が得られた。aroG遺伝子の野生型と変異型のDNA配列を分析し、変異型の配列を確認した(表1)。その4つの形質転換体のDAHPS活性を解析した結果、pAROG4の活性が最も高かった。pAROG4ではaroGのDNA配列の449位のCがTに変化し、コードされるアミノ酸配列の150番目のProがLeuに置換されていた。この変異aroG(フィードバック阻害解除aroG)を以後の実験に使用した。 フェニルアラニンによるフィードバック阻害が解除された大腸菌DAHPSをコードするヌクレオチド配列を配列番号3に、フィードバック阻害が解除された大腸菌DAHPSのアミノ酸配列を配列番号4に示す。表1.変異型aroGの変異箇所および変異配列 a変異した箇所を下線で示す。アミノ酸配列変異について数字は残基番号を示す。ii)遺伝子配列の連結 Ligation PCR法(図1)を用い、フィードバック阻害解除aroG遺伝子配列の前に240bpのRubisCoスモールサブユニットトランジットペプチド配列(rbcS TP)(配列番号7)、aroG遺伝子配列の後ろにタンパク質検出用のHA(ヘマグルチニンエピトープタグ)配列TACCCATACGACGTCCCAGACTACGCT(配列番号8)を連結した。 プライマーrbcS_FとrbcS_Rを用い、シロイヌナズナのDNAから240bpのrbcS TPの配列をPCR増幅してrbcS TP断片DNAを得た。rbcS TPの配列の先頭には制限酵素Sma IサイトCCCGGGを含む15bpのベクターpUC19の配列と、配列の後ろに制限酵素Sal IのサイトGTCGACが付加されている。 プライマーaroG_FとaroG_Rを用い、aroGのDNA配列の449位のCがTに変化した、フィードバック阻害解除aroGを含むプラスミドDNAからaroG配列(ストップコドンなしの1050bp)を増幅してaroG遺伝子断片を得た。この断片においては、aroG遺伝子配列の5'側に8bpのrbcS TP配列と制限酵素Sal IのサイトGTCGA、および、3'側ストップコドンの手前に27bpのHA配列とKpn IのサイトGGTACCが付加されている。 上述の増幅した2つのPCR増幅産物を精製して以下のPCR用のテンプレートDNAとした。rbcS_FとHA-aroG_Rプライマーを用い、上述のrbcS TP断片DNAとaroG 遺伝子断片DNAをテンプレートとしてLigation PCRを行い、rbcS TP+aroG+HAの連結した配列を得た。この配列の下流に15bpのベクターpUC19の配列、制限酵素Sst IサイトGAGCTCとストップコドンTGAが付加している。使用したプライマーの配列を表2にまとめる。表2.HA配列およびRubisCoスモールサブユニットシグナルペプチド配列をaroG配列に連結するために使用したプライマー 上述のすべてのPCR増幅は以下のような条件で行った。1)95℃ 1min、2)94℃ 30s, 56℃ 30s, 72℃ 30sで、30サイクル、3)72℃ 7min。反応液組成(トータル25μl):dH2O(滅菌水) 18.3 μl; 10×PCR buffer 2.5μl; dNTP mix 2.0 μl;フォワードプライマー (10μM) 0.5 μl; リバースプライマー (10 μM) 0.5 ul; EXTaqポリメラーゼ(5 unit/μl) (TaKaRa 社製) 0.2 μl; DNAテンプレート (50ng/μl) 1.0 μl。 連結した配列をクローニング用ベクターpUC19(Clontech)に挿入した。コロニーからrbcS TP-aroG-HAを含むプラスミドを回収して配列を確認した。pUC19プラスミドから制限酵素Sma IとSst Iの二重切断よりrbcS TP-aroG-HA断片を切り出した。iii)変異aroGを含む植物形質転換ベクターの構築 植物形質転換ベクターpBI121(Clontech社)を制限酵素Sma IとSst Iで処理し、得られた産物をアガロースゲルで分離して、大きな方のベクター断片を回収した。Sma IとSst Iで切り出したrbcS TP-aroG-HA DNA断片と回収したベクター断片とをライゲーションし、rbcS TP-aroG-HA配列をベクターpBI121のSma IとSst I制限酵素のサイトに挿入した(図2)。得られたプラスミドDNAの配列を確認した。次に、このrbcS TP-aroG-HA配列を含むプラスミドをアグロバクテリウム・ツメファシエンスEHA105株に導入した。E. coli aroG遺伝子の植物形質転換ベクターへの組込み 実施例1で作製したpBI121aroGをアグロバクテリウム・ツメファシエンス EHA105株に導入し、得られたpBI121aroGを有するアグロバクテリウムEHA105培養液を減圧浸潤法によりシロイヌナズナColumbiaに感染させた。減圧浸潤法を用いたin planta形質転換法はBechtold らの方法(C. R. Acad Sci. Paris, Life Science, 1993; 316, 1194-1199)に従った。 シロイヌナズナを鉢で約3週間栽培した。シロイヌナズナは抽苔し始め、茎の高さが5〜6 cmになったところで摘心を行った。摘心後、植物体を更に数日から1週間栽培し、植物をアグロバクテリウムに感染できる状態にした。 aroGを挿入したpBI121ベクターを保持するアグロバクテリウム EHA105を2日間前培養し、前培養したアグロバクテリウムをLB液培地(抗生物質カナマイシンを含む)で更に24時間振とう培養した。その後、遠心により培養液からアグロバクテリウムを回収し、培地(1/2 MS, 5% Sucrose, SilwetL77 0.05%, pH5.7)に1時間懸濁して感染液を調製した。 シロイヌナズナ植物体からすでに開花または結実している花を取り除いた。シロイヌナズナ植物体が植えられた鉢を逆さにして、植物体を感染液に浸けた。鉢を入れたビーカーをデシケーターにいれ、-50kPaの圧にて5分間吸引した後、ゆっくり圧を戻し、植物に残った菌液をタオルで除去した。プラスチックのバケツに鉢を横倒しにして置き、ラップをかぶせて、一晩置いた。翌日、ラップを取り除き、鉢を起こして、光条件の良い場所で栽培を続けた。感染約4週間後種子を収穫した。収穫した種子を用い、実施例3に記載したように形質転換体の選抜を行った。形質転換体の選抜および形質転換体のゲノムDNA分析 pBI121aroGを有するアグロバクテリウムEHA105を感染させたシロイヌナズナ植物体から種子を収穫し、得られた種子(T1)を1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌し、滅菌水で3回洗い、カナマイシン含有(50μg/mL)の1/2 MS培地(2.2g/L MS(MURASHIGE & SKOOG MEDIUM, Duchefa Biochemie)、10g/Lスクロース、0.5g/lL MES-KOH(pH 5.7)、0.8%寒天)に播種し、選抜を行った。選抜の結果、カナマイシン耐性植物が11系統得られた。カナマイシン抵抗性を示した11系統のゲノムDNAを分析し、変異aroG遺伝子の導入を確認した。11系統の形質転換体のT1植物の葉から、ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの抽出はQIAGEN社のDNeasy Plant Kitを用いた。pBI121ベクターに特異的なNPTII遺伝子の配列に対して2つのプライマー、NPT II-F(フォワードプライマー)5'-TCTGATGCCGCCGTGTTCCG-3'(配列番号14)と NPT II-R(リバースプライマー)5'-TCTTCGTCCAGATCATCCTG-3'(配列番号15)を設計し、PCRを行った。 PCR増幅条件:95℃ 5min、2)94℃ 30s, 60℃ 30s, 72℃ 30sで、30サイクル、3)72℃ 7min。反応液組成は実施例2に記載の反応と同様とした。 PCR増幅の結果を図3に示す。Wは野生型(Columbia)、1から11は得られた形質転換植物を示す。野生型植物からは増幅断片が認められなかったが、形質転換体においては、約400 bpの断片が増幅された。この結果から、形質転換体にNPT II遺伝子が組み込まれていることが確認され、求める形質転換体(トランスジェニック植物)が得られたことが確認された。形質転換体のアミノ酸分析カナマイシン含有(50ug/ml)の1/2 MS培地(同上)で2週間選抜栽培したT2世代植物を材料として、アミノ酸分析を行った。アミノ酸の抽出方法は以下のように行った。 シロイヌナズナ植物(根を除く)を100 mg サンプリングし、粉末化(ホモジナイザーMM300 (Retsch))した。粉末のサンプルにそれぞれに1 mLと0.5 mLの80%エタノールを加えて2回抽出した。抽出液に遠心エバポレーターをかけて、エタノールを蒸発させた。そして、500 μLの純水を加えて、サンプルを溶解した。その後、500 μLのクロロホルムを加え、良く混合して、液を分離させて、上層の水性溶液を400 μL取って新しいチューブに移した。その水性溶液に遠心エバポレーターをかけて、水分を蒸発させて抽出物を得た。アミノ酸分析機にかける当日に800 uLの0.02 N HCLにこの抽出物を溶解して、フィルターろ過を行った。得られた抽出液から200 μLをサンプルとして用い、アミノ酸を測定した。アミノ酸の測定はL-8800 高速アミノ酸分析計(HITACHI)を用い、当機器の分析法に従って行った。各サンプルについて3回重複の実験を行い、サンプルの新鮮質量(FW)あたりのアミノ酸の量(nmol)を計算し、その平均値を結果とした。野生種と比べてフィードバック阻害解除aroGの形質転換体の幾つかの系統において芳香族アミノ酸の含量が増加した。各芳香族アミノ酸について、4、5、7番の系統で特に増加が見られた。 結果を表3、図4 a、bおよびcに示す。 表3.形質転換体のアミノ酸量 単位:mmol/g (FW) 4番の系統は一番芳香族アミノ酸の含量が高く、野生型平均フェニルアラニン含量0.096 mmol/g FW、 チロシン含量0.045 mmol/g FW、トリプトファン含量0.067 mmol/g FWと比較して、それぞれ約168倍(16.204 mmol/g FW)、約36倍(1.611 mmol/g FW)および約4倍(0.299 mmol/g FW)に上昇した(図4 a、bおよびc)。ウエスタンブロットによるaroGのタンパク質発現解析 カナマイシン含有 (50 μg/mL)の1/2 MS培地(同上)で2週間選抜栽培したT2世代シロイヌナズナ植物をウエスタンブロット分析の材料とした。タンパク質の抽出方法:シロイヌナズナ植物(根を除く)約40 mgを粉砕し、抽出Buffer (25 mM Tris, 75 mM Nacl, 0.1% NP−40)を加え、ボルテックスをかけ、続いて15000rpmで15分遠心し(4℃)、上清を回収した。回収した上清の一部分はウエスタンブロット分析用のタンパク質サンプル、残りはタンパク質の濃度測定用サンプルとして使用した。ウエスタンブロット解析にはHAに対するラットモノクローナル抗体Anti-HA High Affinity(Roche)を用いた。予想されるタンパク質の分子量は、aroGが38 kDa、rbcS TPが8 kDa、HAタグが1kDaであるので、aroG+rbcS TP+HAは47 kDaである。DAHPSは植物の中では葉緑体に局在して機能する。aroG+rbcS TP+HAのタンパク質は、rbcS TPの一部分の配列が切断された後、葉緑体に運ばれた場合は分子量が41.5 kDaになる。ウエスタンブロット解析の結果、野生型はバンドが検出されなかったが、12番と14番目以外の形質転換体においては、推定分子量(41.5 kDa)付近にタンパク質の発現が認められた(図5)。 この結果から、導入したE. coliのフィードバック阻害解除(変異)aroGがシロイヌナズナ形質転換体で発現していた。また、変異aroGにコードされるタンパク質はほぼ全て葉緑体へ移行していることが確認された。系統間においては、発現量の差が認められ、3、4、7と16番の形質転換体系統においては強く発現されており、5、6、8、9と20番形質転換体系統では比較的発現が弱かった。また、各系統のaroGの発現量はアミノ酸の含量(図4)と一致していた。総ポリフェノールの含量の分析 植物は芳香族アミノ酸から様々な機能性産物を合成する。その中でも、ポリフェノール類は抗酸化作用があることがよく知られていることから、フェニルアラニン含量が増大したaroGの形質転換体のポリフェノール類の総含量を調べた。 カナマイシンを含有(50 μg/mL)する1/2 MS培地(同上)で2週間選抜栽培したT2世代植物を用い、ポリフェノール類を抽出した。抽出方法はLamien-Medaらの論文(Lamien-Meda et al. Molecules, 2008, 13, 581-594)に記載された方法に従った。シロイヌナズナ植物の地上部100mgを液体窒素で凍結し、粉砕して粉末し、1.0mLの70%のメタノールを加えて2回抽出した。得られた抽出液を遠心エバポレーターにかけ、液体を完全に蒸発させた後、500μLの70%のメタノールに溶解した。その溶解液を用い、総ポリフェノール含量を測定した。測定はフォーリン・チオカルト法(Folin-Ciocalteau)を用いた。50μLの抽出液に1075μLの純水および75μLのFolin-Ciocalteau試薬 (2N)(SIGMA)を添加し、よく混合した後、8分間室温でインキュベートした。次に、300μLの15%の炭酸ナトリウムを加えて、2時間インキュベートした後、765nmにおける吸光度を測定した。0, 10, 20, 40, 80、160 mg/Lの没食子酸(gallic acid)を用いて検量線を作成した。測定した結果は植物体新鮮質量(FW)100g当たりの没食子酸(mg)に相当するポリフェノール含量として表示した(表4、図6)。表4 形質転換体の総ポリフェノール(PF)量 (gallic acidに相当するmg /100g) 野生種(W)と比較して、フィードバック阻害解除aroGを導入した形質転換体のポリフェノール量が増加していることが認められ、一番増加した4番の形質転換体系統ではポリフェノール量が1.8倍増えた。この結果から、フィードバック阻害解除(変異)aroG導入形質転換体ではポリフェノール量が増大していることが確認され、2次代謝産物の生合成が制御されていることが示唆された。抗酸化活性の測定 上記のポリフェノール抽出液を用い、抗酸化活性を調べた。Lamien-Meda らの論文(Molecules, 2008, 13, 581-594)に記載された方法に従い、DPPH(2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl)ラジカル法を使用して、抗酸化活性の指標としてラジカル消去能を測定した。50μLのサンプル抽出液に700μLのメタノールを加えて、750uLの0.02mg/mLのDPPH (ALFA AESAR)を入れて、よく混合した。その後、15分間室温でインキュベートし、517nmの吸光度で測定した。0, 0.2, 1, 2と4 ug/mLのアスコルビン酸で検量線を作成した。測定した結果は植物体の新鮮質量(FW)100g中の同等なフリーラジカルの消去能を有するアスコルビン酸に相当する量(mg)として表示した(表5、図7)。表5 形質転換体の抗酸化活性(新鮮質量100g中の同等なフリーラジカルの消去能を有するアスコルビン酸に相当する量(mg)) その結果、野生種(W)と比較してaroG形質転換体における抗酸化活性の上昇は前述のポリフェノール量の増加とほぼ同様の傾向であり、4番の形質転換体系統の抗酸化活性が野生種に比較して2.2倍増加していた。この結果からフィードバック阻害解除遺伝子aroGの導入により植物の抗酸化活性が上昇することが確認された。 3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素のフィードバック阻害が解除され、同条件で栽培した野生型植物に比較して芳香族アミノ酸の二次代謝産物の含量が増加した形質転換植物。 フィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素遺伝子が導入された、請求項1記載の形質転換植物。 フィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素が、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、少なくとも80%以上の配列同一性を有し、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列の150番目に対応するProが他のアミノ酸に置換されている、請求項2記載の形質転換植物。 フィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列である請求項3に記載の形質転換植物。 芳香族アミノ酸の二次代謝産物が、ポリフェノール類である請求項1〜4のいずれか1項に記載の形質転換植物。 同条件で栽培した野生型植物に比較してポリフェノール類の含量が1.2倍以上に増加している、請求項5記載の形質転換植物。 形質転換植物体またはその一部の単位質量あたりに換算される抗酸化活性が、同条件で栽培した野生型植物の植物体またはその一部の単位質量あたりに換算される抗酸化活性の1.2倍以上に増加しており、前記抗酸化活性が前記植物体またはその一部、および、前記野生型植物の植物体またはその一部から抽出した植物抽出物を用いて測定される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の形質転換植物。 シキミ酸合成系を有する植物において、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素のフィードバック阻害の解除を行うことを含む、芳香族アミノ酸の二次代謝産物の産生量が増加した形質転換植物の作出方法。 シキミ酸合成系を有する植物にフィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素をコードする遺伝子を導入することを含む、請求項8記載の形質転換植物の作出方法。 フィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素が、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、少なくとも80%以上の配列同一性を有し、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列の150番目に対応するProが他のアミノ酸に置換されている、請求項9記載の形質転換植物の作出方法。 フィードバック阻害が解除された3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列である、請求項10記載の形質転換植物の作出方法。 芳香族アミノ酸の二次代謝産物の産生量が増加した植物を選択することをさらに含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。 請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物からポリフェノール類を回収することを含む、ポリフェノール類の製造方法。 【課題】本発明は同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して、芳香族アミノ酸の生産量が増大した形質転換植物を提供する。また、本発明は、同一条件で栽培した同種の野生型植物に比較して、芳香族アミノ酸に由来する2次代謝産物の生産量が増大した形質転換植物を提供する。【解決手段】本発明はシキミ酸合成経路を有する植物において、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン-7-リン酸合成酵素(DAHPS)の活性を増大させる、または、DAHPSのフィードバック阻害を解除することを含む。より具体的には、本発明はDAHPSをコードする遺伝子aroGを改変したフィードバック阻害解除aroGを植物に導入することを含む。【選択図】なし配列表