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タイトル:特許公報(B2)_マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに属する微生物を検出する方法
出願番号:2011544325
年次:2015
IPC分類:G01N 33/569,G01N 33/53,C07K 16/12,C12Q 1/68,C12N 15/09,C12N 15/02


特許情報キャッシュ

皆川 温子 廣島 豊正 島田 康司 杉山 和之 水戸部 優樹 板垣 はつえ JP 5712140 特許公報(B2) 20150313 2011544325 20101203 マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに属する微生物を検出する方法 株式会社LSIメディエンス 591122956 森田 憲一 100090251 山口 健次郎 100139594 皆川 温子 廣島 豊正 島田 康司 杉山 和之 水戸部 優樹 板垣 はつえ JP 2009276115 20091204 JP 2010023102 20100204 20150507 G01N 33/569 20060101AFI20150416BHJP G01N 33/53 20060101ALI20150416BHJP C07K 16/12 20060101ALI20150416BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20150416BHJP C12N 15/09 20060101ALN20150416BHJP C12N 15/02 20060101ALN20150416BHJP JPG01N33/569 FG01N33/53 DG01N33/53 MC07K16/12C12Q1/68 AC12N15/00 AC12N15/00 B G01N 33/48−33/98 C07K 16/12 C12Q 1/68 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開平05−304990(JP,A) 特開昭63−000298(JP,A) 特開2002−306169(JP,A) 特開2004−073185(JP,A) 国際公開第01/057199(WO,A1) J. Weiner III et al.,Transcription proRles of the bacterium Mycoplasma pneumoniae grown at different temperatures,Nucleic Acids Research,2003年11月 1日,Vol. 31, No. 21,P.6306-6320 Hsun-Cheng Su et al.,Mapping phosphoproteins in Mycoplasma genitalium and Mycoplasma pneumoniae,BMC Microbiology,2007年 7月 2日,Vol.7,No.1,P.63 T. R. Kannan et al.,Characterization of a Unique ClpB Protein of Mycoplasma pneumoniae and Its Impact on Growth,INFECTION AND IMMUNITY,2008年11月,Vol. 76, No. 11,P.5082-5092 DASCHER C.C. et al.,Heat Shock Response in Mycoplasmas, Genome-Limited Organisms,J. Bacteriol.,1990年 4月,Vol.172, No.4,P.1823-1827 7 JP2010071652 20101203 WO2011068189 20110609 27 20130520 海野 佳子 本発明は、一般的な肺炎の原因微生物であるマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)に属する微生物の検出に特異的な分子を指標とする、該微生物の検出方法、及び該微生物の検出用試薬キットに関する。(1)マイコプラズマ・ニューモニエ肺炎の患者割合と症状 マイコプラズマ・ニューモニエ感染症は、市中非定型肺炎に分類され、市中肺炎に占める割合は成人では30〜40%、15〜25歳の若年成人に限ると60〜70%に及ぶとされている。マイコプラズマ・ニューモニエの感染経路は経気道感染であり、学校などの施設や家族内での感染が拡大することも少なくない。またマイコプラズマ・ニューモニエ感染症において、肺炎は感染症の約3〜5%に起こり、残りは気管支炎、上気道炎、不顕性感染となる。特徴的な症状として感染初期から喀痰を伴わない頑固な咳嗽で、発熱、頭痛、咽頭痛、悪寒、全身倦怠などの症状を伴う場合もある。(2)マイコプラズマ・ニューモニエ感染症の検査の現状 マイコプラズマ・ニューモニエ感染症の検査として、患者咽頭拭い液からの培養検査、患者血清を用いた抗体検査が一般的である。培養検査はマイコプラズマ・ニューモニエ自体が特殊な培地でしか発育しないこと、手技が困難なことや、最終的なマイコプラズマ・ニューモニエの同定にはPCR検査を実施する必要性があることから、限られた施設でしか検査できないのが現状であり、また培養に数週間が必要となるため、迅速に結果が得られる検査が求められている。 一方、抗体検査は、一般的には培養検査に比べ、手技が容易で迅速に結果が得られるため、良く用いられる検査であるが、マイコプラズマのIgM抗体価は持続性があるため、以前の感染か、今回の感染かの判断が難しいこと、抗体価上昇までに時間がかかることが問題となる。それらを解決するため、感染急性期と回復期の経時的な抗体価の上昇による判断が推奨されているが、回復期までの抗体検査を行うことは非常に時間を要するため、治療が遅れ、患者にとっては症状の長引きや悪化を招いたり、更には二次感染による感染拡大の悪影響を及ぼす可能性がある。 また、上記の問題を解決するため、マイコプラズマ・ニューモニエ感染症を診断するための有用なマイコプラズマ・ニューモニエに属する微生物を特異的に検出する抗体や検出方法が開示されている。 例えば、特許文献1は、約43キロダルトン(KDa)のマイコプラズマ・ニューモニエの膜抗原蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いた免疫検出法が記載されている。また、特許文献2は、リボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体を用い、マイコプラズマ・ニューモニエの検出を精度良く行うことができることが記載されている。また、特許文献3は、マイコプラズマ・ニューモニエのP1蛋白質に対するモノクローナル抗体で、マイコプラズマ属の他の種又は共存する菌叢の他の病原種とは1%もしくはそれ未満の交差反応性しか示さないモノクローナル抗体によって、マイコプラズマ・ニューモニエ感染の迅速かつ特異的な診断が可能となることが記載されている。 しかし、上記抗体及び当該抗体を用いる検出法は、臨床検体中のマイコプラズマ・ニューモニエに属する微生物を検出するためには、該微生物を含む検体の煩雑な前処理が必要な場合もあり、未だ、特異性や感度が低くマイコプラズマ・ニューモニエに対する特異的な診断のためには不十分であるという問題がある。(3)マイコプラズマ・ジェニタリウムと疾患 非淋菌性尿道炎の主要な起炎菌としてはクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)が知られている。しかし、非淋菌性尿道炎患者においてクラミジア・トラコマチスが検出されるのは30〜40%程度であり、多くはその症状が何に由来するか明らかでない。クラミジア・トラコマチス以外については、マイコプラズマ属及びウレアプラズマ属の微生物が注目されており、特にマイコプラズマ・ジェニタリウムは、非淋菌性尿道炎及び性行為感染症の起炎菌の1つとして示されている。(4)マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症の検査の現状 マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症は、論文では培養法やPCR法による報告例があるが、これらの方法は迅速な診断を行うことができないため、迅速かつ特異的に臨床検体中のマイコプラズマ・ジェニタリウムに属する微生物を検出する方法が求められている。特開昭63−298号公報国際公開WO2001/057199号パンフレット特開平5−304990号公報 従来の方法によれば、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに属する微生物を、迅速かつ特異的に検出することはできなかった。よって、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を迅速に診断することができず、治療が遅れ、患者にとっては症状の長引きや悪化を招いたり、更には二次感染による感染拡大の悪影響を及ぼす可能性があるのが現状である。これらマイコプラズマへの感染を迅速に検出・診断できれば、マイコプラズマに有効なマクロライド系抗生物質の投与が可能となり、感染初期に的確な治療を開始することが可能となる。 一方、マイコプラズマ・ニューモニエとマイコプラズマ・ジェニタリウムは、血清学的には非常に近いことが知られているが、上述したように、マイコプラズマ・ニューモニエとマイコプラズマ・ジェニタリウムの感染する場所(組織や器官など)が異なることから、両微生物を特異的に検出することが可能な分子を同定できれば、該分子を指標として、両感染症を診断することが可能となると考えた。 本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を迅速かつ特異的に診断するための分子を特定し、該分子を指標とした検出方法、検出キットを提供することを目的とした。 本発明者らは、上記のような現状に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染を迅速かつ特異的に検出するためにマイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムが属する微生物の有するDnaKを指標とすることを見出した。DnaK蛋白質は、熱ショック蛋白質70(Heat Shock Protein 70、Hsp70)とも呼ばれ、細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現量が上昇して細胞を保護する蛋白質の一群として発見され、現在では翻訳された蛋白質の細胞内での輸送やrefolding(分子シャペロン機能)に関与することが知られている。免疫学的測定法においてDnaK蛋白質を指標とする利点は、(1)DnaK蛋白質は蛋白質の輸送やrefoldingに関与する蛋白であることから、常に発現している蛋白質であること、(2)総蛋白質中の1%程度がDnaKであること、(3)存在様式は、単量体ではなく、3量体、6量体、それ以上の多量体が存在していることである。 本発明はこの知見に基づいて成し遂げられたものである。 すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。[1]マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムのDnaKを指標とすることを特徴とする、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出方法。[2]DnaK蛋白質を免疫学的に分析する、[1]の方法。[3]マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに特異的な抗DnaK抗体。[4][3]の抗DnaK抗体を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出用キット。[5]DnaK遺伝子を指標とする、[1]の方法。[6]マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに特異的なプライマー又はプローブ。[7][6]のプライマー又はプローブを含む、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出用キット。 本発明において“該微生物”とは、マイコプラズマ・ニューモニエあるいはマイコプラズマ・ジェニタリウムを意味し、特に、病原性を有し、下記で述べる疾患の原因菌として診断の意義の高い微生物をいう。本発明において、“該微生物と特異的に反応する抗体”とは、該微生物の種あるいは属に特異的に反応する抗体を指すが、微生物感染症の診断においては該微生物の種に特異的に反応する抗体が特に有用となる。 本発明における特定分子を指標としたマイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに属する微生物を検出する方法によれば、該微生物が引き起こすマイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を、迅速かつ特異的に診断を行うことができる。マイコプラズマ・ニューモニエM129株(P1遺伝子型:I型)とFH株(P1遺伝子型:II型)におけるDnaK遺伝子(配列番号6)の塩基配列(第1〜720番)を比較した結果を示す説明図である。図1に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるDnaK遺伝子の塩基配列(第721〜1440番)を比較した結果を示す説明図である。図1及び図2に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるDnaK遺伝子の塩基配列(第1441〜1788番)を比較した結果を示す説明図である。マイコプラズマ・ニューモニエM129株(P1遺伝子型:I型)とFH株(P1遺伝子型:II型)におけるP1遺伝子(M129株:配列番号7、FH株:配列番号8)の塩基配列(M129株に関して第1〜717番)を比較した結果を示す説明図である。図4に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるP1遺伝子の塩基配列(M129株に関して第718〜1416番)を比較した結果を示す説明図である。図4及び図5に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるP1遺伝子の塩基配列(M129株に関して第1417〜2136番)を比較した結果を示す説明図である。図4〜図6に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるP1遺伝子の塩基配列(M129株に関して第2137〜2856番)を比較した結果を示す説明図である。図4〜図7に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるP1遺伝子の塩基配列(M129株に関して第2857〜3564番)を比較した結果を示す説明図である。図4〜図8に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるP1遺伝子の塩基配列(M129株に関して第3565〜4284番)を比較した結果を示す説明図である。図4〜図9に続き、マイコプラズマ・ニューモニエ両株におけるP1遺伝子の塩基配列(M129株に関して第4285〜4884番)を比較した結果を示す説明図である。 以下、本発明を更に詳細に説明するが、以下の構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容のみに特定されるものではない。 本発明のマイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出方法は、該微生物のDnaKを指標として、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム(すなわち、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムのいずれか一方、あるいは、マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウムの両方、特に好ましくはマイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウムの両方)を検出することを特徴としており、これらの微生物を検出することにより、マイコプラズマ・ニューモニエ感染症及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を診断することができる。 本発明により診断されるマイコプラズマ・ニューモニエ感染症とは、マイコプラズマ肺炎である。また、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症とは、非淋菌性非クラミジア性尿道炎、子宮頸管炎である。 マイコプラズマ・ニューモニエ感染症を診断する際には、マイコプラズマ・ニューモニエが存在する可能性のある試料を使用すれば良いが、例えば咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻汁、喀痰、肺胞洗浄液が挙げられる。マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を診断する際には、マイコプラズマ・ジェニタリウムが存在する可能性のある試料を使用すれば良いが、例えば尿、尿道や子宮頸管擦過物が挙げられる。上記2つの感染症がいずれであるかの識別は、測定対象とする試料の採取場所によって決定することができる。 本発明において指標とするDnaKは、例えば、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のDnaK蛋白質(NCBI番号:NP_110122)、DnaK遺伝子(NCBI番号:NC_000912 REGION: 521837..523624)又は、マイコプラズマ・ジェニタリウム由来のDnaK蛋白質(NCBI番号:AAC71527)、DnaK遺伝子(NCBI番号:L43967 REGION: 374919..376706)である。上記に挙げた蛋白質あるいは遺伝子は、該微生物に属する一つの菌株の例であり、本発明において対象とする該微生物の有するDnaK配列は上記DnaK蛋白質あるいは遺伝子に相当する配列を示す。 また、実施例8に示したようにマイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子は、マイコプラズマ・ニューモニエのP1遺伝子の型が異なる株間においても100%一致し、また、異なる分離地および、過去50年間においても変異が認められなかった。そこのことから、マイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子及びDnaK蛋白質の配列は安定していると考えられる。よって、前記NCBIで公開されている遺伝子配列あるいは蛋白質配列を参照することが好ましい。1.抗体を用いた該微生物の検出方法及びキット 本発明のマイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムを検出する方法の第一の態様としては、該微生物に特異的な抗DnaK抗体を用いることを特徴としている。なお、特異的な抗体を選択する際には、該微生物への感度が少なくとも105CFU/mL以上、好ましくは104CFU/mL以上、更に好ましくは103CFU/mL以上あり、対象外の微生物への感度は少なくとも107CFU/mL以下、好ましくは108CFU/mL以下である。 本発明で用いることのできる抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれも使用することができ、以下の方法あるいはその他の類似の方法によって取得することができるが、これらの方法に限定されるものではない。 該抗体の作製方法の第一の態様としては、上記DnaK蛋白質の全長あるいはその部分ペプチドを用いて作製することができる。該DnaK蛋白質の遺伝子配列及びアミノ酸配列が既知の微生物については、他の微生物における該蛋白質のアミノ酸配列との類似性の少ない領域についてペプチド断片を合成すれば良い。抗体を作成するためのペプチドの長さは特に限定されないが該DnaK蛋白質に対する抗体の場合、この蛋白質を特徴づけられる長さがあれば良く、好ましくは5アミノ酸以上、特に好ましくは8アミノ酸以上のペプチドを用いれば良い。このペプチドあるいは全長蛋白質をそのまま、又はKLH(keyhole-limpet hemocyanin)やBSA(bovine serum albumin)といったキャリア蛋白質と架橋した後、必要に応じてアジュバントとともに動物へ接種せしめ、その血清を回収することで該DnaK蛋白質を認識する抗体(ポリクローナル抗体)を含む抗血清を得ることができる。また抗血清より抗体を精製して使用することもできる。接種する動物としてはヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット等であり、特にポリクローナル抗体作製にはウサギ、ヤギなどが好ましい。また、ハイブリドーマ細胞を作製する公知の方法によりモノクローナル抗体を得ることも可能であるが、この場合はマウスが好ましい。 また該蛋白質の全長又は5残基以上、望ましくは8残基以上のアミノ酸配列をグルタチオンS−トランスフェラーゼなどとフュージョン蛋白質としたものを精製して、又は未精製のまま、抗原として用いることもできる。成書(Antibodies; A laboratory manual, E.Harlow et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press)に示された各種の方法ならびに遺伝子クローニング法などにより分離されたイムノグロブリン遺伝子を用いて培養した細胞に発現させた遺伝子組み換え抗体によっても作製することができる。 更に上記のように作製した抗体から、公知の手法に従って、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウム(すなわち、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムのいずれか一方、あるいは、マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウムの両方、特に好ましくはマイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウムの両方)に特異的に反応し、それ以外の病原菌に反応しない抗体を選択することによって、特異性の高い該抗体を作製することができる。 本発明のマーカー抗原として用いることができる該DnaKに対する抗体は、前記の方法以外にも、以下の方法あるいはその他の類似の方法によって取得することができるがこれらの方法に限定されるものではない。a)該DnaK蛋白質の遺伝子配列及びアミノ酸配列が既知の微生物については、他の微生物における該蛋白質のアミノ酸配列との類似性の少ない領域についてペプチド断片を合成し、それを免疫原としてポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体を作製することにより目的の抗体を取得することができる。 また、既知の該遺伝子の両端部位におけるDNA配列をプライマーとしたPCR法による遺伝子増幅、相同部分配列を鋳型プローブとしたハイブリダイゼーション法など通常の遺伝子操作手法を用いることにより該遺伝子の全長配列を取得することができる。 その後、他の蛋白質遺伝子とのフュージョン遺伝子などを構築し、大腸菌等を宿主として公知の遺伝子導入手法により宿主内に該当フュージョン遺伝子を挿入し、大量に発現させた後にフュージョン蛋白質として用いた蛋白質に対する抗体アフィニティーカラム法などにより発現蛋白質を精製することにより目的とする蛋白質抗原を取得することができる。この場合、該DnaK蛋白質の全長蛋白質が抗原となるため対象外の微生物間で保存されているアミノ酸部分に対する抗体を取得しても本発明の目的に合致しない。従って、本法によって取得した抗原に対しては公知の手法によりモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、該当する微生物とのみ反応する抗体を産生するクローンを選択することにより目的の抗体を取得することができる。b)該DnaK蛋白質のアミノ酸配列が未知の微生物については1つには該DnaK蛋白質のアミノ酸配列が菌種間で80〜100%、好ましくは90〜100%相同であることにより、そのアミノ酸配列の相同部分の配列を基にしてPCR法による特定配列部分の遺伝子増幅や相同部分配列を鋳型プローブとしたハイブリダイゼーション法など通常の遺伝子操作手法を用いることにより該蛋白質遺伝子を容易に取得することができる。 目的とする蛋白質抗原の取得は、該蛋白質遺伝子と他の蛋白質遺伝子とのフュージョン遺伝子などを構築し、大腸菌等を宿主として公知の遺伝子導入手法により宿主内に該当フュージョン遺伝子を挿入し大量に発現させる。その後に、フュージョン蛋白質として用いた蛋白質に対する抗体アフィニティーカラム法などにより、発現蛋白質を取得することができる。この場合、該DnaK蛋白質の全長蛋白質が抗原となるため対象外の微生物間で保存されているアミノ酸部分に対する抗体を取得しても本発明の目的に合致しない。従って、本法によって取得した抗原に対しては公知の手法によりモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、該当する微生物とのみ反応する抗体を産生するクローンを選択することにより目的の抗体を取得することができる。c)あるいは該DnaK蛋白質のアミノ酸配列が未知な場合の別な方法として、既知の該DnaK蛋白質のアミノ酸配列のうち該微生物間で保存されている共通配列部分に相当する5〜30アミノ酸の合成ペプチドを作製し、そのペプチド配列に対し公知の方法でポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を作製する。該抗体を用いたアフィニティカラムクロマトによって目的の微生物細胞破砕液を精製することにより、高度に精製された該DnaK蛋白質を取得することができる。蛋白質の精製度が不足している場合は、公知の精製手法であるイオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過などの手法を用いて、精製度を高めることができる。得られた精製DnaK蛋白質抗原を基にして公知の方法によりハイブリドーマを取得し、目的の微生物に特異的に反応するハイブリドーマを選択することにより目的の抗体を取得することができる。 該抗体の作製方法の第二の態様としては、実施例1に示すように、マイコプラズマ・ニューモニエを免疫原とし、該DnaK蛋白質に反応するマイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムに特異的な抗体を作製することができる。 また、同様にして、マイコプラズマ・ジェニタリウムを免疫原として作製することもできる。上記微生物も免疫原とする場合、免疫原の調製は公知の方法によって行うことができる。公知の方法として、超音波処理、熱処理、界面活性剤処理、ホルマリン処理、凍結融解処理、塩酸処理があげられる。 上記の方法によって得られた該微生物に特異的な本発明の抗体は、種々の免疫学的分析法に用いることにより、目的とする該微生物に特異的な各種の検出試薬及びキットを提供することができる。 この抗体は、公知の全ての免疫学的分析法に利用することができる。例えば、ポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応法、マイクロタイタープレート中で行うELISA法、イムノクロマト法、着色粒子あるいは発色能を有する粒子、磁気粒子、酵素もしくは蛍光体で標識された該抗体を、単独あるいは複数で組み合わせたサンドイッチ法等に利用することができる。 また、本発明のDnaKを指標とする検出方法においては、積極的に細胞を破壊しなくても特異的にマイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムを検出することができるが、更に高感度に測定するために公知の微生物の処理方法を使用することができる。具体的には、TritonX−100、Tween−20、SDSをはじめとする種々の界面活性剤を用いた抽出試薬による処理法、適当なプロテアーゼなどの酵素を用いる酵素処理法、物理的方法による微生物細胞の破砕をはじめ既知の細胞構造の破砕手法が用いられる。界面活性剤等の組み合わせにより微生物ごとに試薬による最適な抽出条件を設定することが望ましい。 また、本発明における、抗体を用いる該微生物検出用試薬キットとは、当該検出方法を用いた検出用試薬キットに相当する。 本発明の抗体を少なくとも1種含んでいれば良く、使用する免疫測定法に合わせて、使用する抗体の数や種類や組み合わせは適宜変更することができる。更に、試料の前処理として、上記の抽出法による前処理液を含んでも良い。2.遺伝子を用いた該微生物の検出方法及びキット DNAの抽出方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、試料を界面活性剤による可溶化や、除タンパク剤による除タンパク等の操作を行って、DNAを取得する方法等が挙げられる。好ましくは、後述する該DnaK遺伝子の解析が可能なものであれば、例えば、引き続いてPCR法による遺伝子増幅を行う場合には、PCR反応の阻害物質を含まない状態に調製しておくことが好ましい。 試料の前処理方法としては、上述した抗体を用いた該微生物の検出方法と同様な方法を使用することもできる。 DNA抽出量としては、次に行う該DnaK遺伝子の解析が可能な量が抽出されていればよい。PCR法に供する場合には、例えば、1反応あたり5〜50fg以上である。 抽出されたDNAを用いて、該DnaK遺伝子の解析を行う。該DnaK遺伝子の解析は、公知の方法に従って行われる。例えば、PCR法による該DnaK遺伝子の増幅を検出する方法や、プローブ法により該DnaK遺伝子を特定する方法がある。例えば、PCR法による該DnaK遺伝子の増幅は、目的の塩基配列が増幅されるものであればいかなるものでもよいし、プローブ法による該DnaK遺伝子の特定は、目的の塩基配列が特定されるものであればいかなるものでも良い。 該DnaK遺伝子の目的の塩基配列の増幅あるいは特定を行うためには、マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムには80〜100%相同性を示し、それ以外の病原微生物には好ましくは60%以下の相同性を示す配列を適宜選択して用いることができる。また、これらのプライマーやプローブは、目的のDNA断片が増幅できれば、上記の塩基配列に変異や欠失や付加があっても良い。 例えば、マイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子を増幅する際には、後述の実施例にあるように、NCBIで公開されているマイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子配列(NCBI番号:NC_000912 REGION: 521837..523624)を元にPCR増幅プライマーを設計することができる。具体的には、前記DnaK遺伝子の全長を増幅するために、センスプライマーMpDnaK_S及びアンチセンスプライマーMpDnaK_Aを使用することができる。 一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムDnaK遺伝子を増幅する際には、NCBIで公開されているマイコプラズマ・ジェニタリウムのDnaK遺伝子配列(NCBI番号:L43967 REGION: 374919..376706)を元にPCR増幅プライマーを設計することができる。 また、実施例8に示したようにマイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子は、マイコプラズマ・ニューモニエのP1遺伝子の型が異なる株間においても100%一致し、また、異なる分離地および、過去50年間においても変異が認められなかった。このことから、マイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子を特異的に検出するためには、マイコプラズマ・ニューモニエの株間の相違を考慮する必要はなく、他菌株との相違を考慮することによって、設計することが可能となる。 また、マイコプラズマ・ニューモニエのDnaK蛋白質の配列も安定していると考えられることから、これを用いて作製した抗体は、遺伝子型、地域、年代によって反応性に差はないと考えられ、広範な地域、年代において使用することができる。 本発明の遺伝子を用いる該微生物検出用試薬キットとは、当該検出方法を用いた検出用試薬キットに相当する。マイコプラズマ・ニューモニエ及び/又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの特異的な検出方法に用いられるためのキットであって、目的の該DnaK遺伝子に特異的な塩基配列を増幅するための2種類のプライマーを少なくとも含むことを特徴とする。 また、別の態様としては、目的の該DnaK遺伝子に特異的な塩基配列を特定するための1種類のプローブを少なくとも含むことを特徴とする。 更に、試料の前処理として、上記の抽出法による前処理液を含んでも良い。 以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。《実施例1:マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウム特異的抗原の同定、及び、該特異的抗体の作製》(1)マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウムに特異的なモノクローナル抗体の作製(1−1)免疫菌株の培養及び免疫抗原の調製 マイコプラズマ・ニューモニエ6株(FH・Bru・Mac・M52・PI1428・M129-B7株:ATCCより購入)を、株毎にそれぞれ、PPLOグルコースブロス(ウマ血清、新鮮酵母エキス、酢酸タリウム含有)に接種し、37℃で7日間、好気条件下で培養した。遠心回収した各菌体を洗浄後、PBSに懸濁して凍結融解処理したものを免疫抗原とした。(1−2)免疫 免疫感作には、雌性Balb/cマウス 6週齢(日本クレア社)を使用した。各菌体に由来する抗原溶液を、それぞれ、フロイントのコンプリートアジュバント(SIGMA社)で乳化し、抗原100μgをマウスに皮下注射した。この後、免疫原に対する抗体価の上昇が認められるまで、2週間おきにフロイントのインコンプリートアジュバント(SIGMA社)で乳化した抗原50μgを皮下注射した。更に、細胞融合3日前にPBSで希釈した抗原25μgを腹腔内に注射した。(1−3)ハイブリドーマ作製 定法に従って、以下の操作を行った。免疫感作マウスより無菌的に取り出した脾臓細胞と骨髄腫細胞(P3U1)をポリエチレングリコール1500(Roche社)を用いて融合し、96穴プレートに播種した。HAT培地を用いてハイブリドーマ細胞を選択培養し、これらの培養上清に対して以下のELISA条件でスクリーニングを実施した。ELISAの固相化には、免疫原とした6種類の各株に由来する、各マイコプラズマ・ニューモニエ抗原1μg/mLを使用した。ブロッキング処理後、培養上清を添加し、4℃で一晩反応させた。洗浄液で3回洗浄後、2000倍希釈HRP標識ウサギ抗マウスIg抗体(Dako社)を添加し、室温で1時間反応させた。洗浄液で3回洗浄後、基質(TMBZ)溶液を添加し、室温で10分間反応させた。反応停止後、450nmの吸光度を測定した。これにより選出されたハイブリドーマについて限界希釈法によるクローニングを実施し、クローン株を樹立した。その内16株より産生されるモノクローナル抗体について、以下の検討を行った。得られたクローン株は、6種の各株に由来する免疫抗原のいずれとも反応するものである。(1−4)モノクローナル抗体の認識蛋白質の分子量の確認 ウェスタンブロットにより、上記16種のモノクローナル抗体の認識蛋白質の分子量を確認した。マイコプラズマ・ニューモニエ抗原(FH株)10μgを、SDS-PAGEし、続けてニトロセルロースメンブレンにブロットした。各クローンの培養上清をメンブレンに添加し、室温で1時間反応させた。洗浄液で3回洗浄後、1000倍希釈HRP標識ウサギ抗マウスIg抗体を添加し、室温で1時間反応させた。洗浄液で3回洗浄後、基質(4-クロロ-1-ナフトール)溶液を添加し、室温で10分間反応させた。発色後、蒸留水で洗浄し、反応を停止した。 その結果、10種が62〜69KDa、6種が40〜45KDaの分子を認識していることが判明した。そのことから、取得数が多く抗原性が高いと考えられる62〜69KDaの分子について、続いて抗原の同定を試みた。(1−5)取得抗体のサブクラスの同定 Iso Strip(Roche社)を用いて62〜69KDaの分子を認識するモノクローナル抗体10種のサブクラスを確認したところ、6種がH鎖G1/L鎖κ、1種がH鎖G1/L鎖λ、1種がH鎖2b/L鎖κ、1種がH鎖2b/L鎖λ、1種がH鎖2a/L鎖λであることが判った。(2)マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウム特異的抗原の同定(2−1)モノクローナル抗体認識抗原の精製(2−1−1)菌体培養 抗原精製には、これまでに全遺伝子配列が決定されているマイコプラズマ・ニューモニエM129-B7株菌体を用いた。マイコプラズマ・ニューモニエ(M129-B7株)を、PPLOグルコースブロス(ウマ血清、新鮮酵母エキス、酢酸タリウム含有)に接種し、37℃で7日間、好気条件下で培養した。遠心回収した菌体を洗浄後、PBSに懸濁して凍結処理した。(2−1−2)アフィニティークロマトグラフィーによる認識抗原の精製 CNBr-activated Sepharose 4B(GEヘルスケア社)に、(1)で得られたモノクローナル抗体MCM12をカラム担体に結合させ、抗原精製用アフィニティーカラムを作製した。カラム担体への結合は、0.1 mol/L NaHCO3-NaOH、0.5 mol/L NaCl(pH8.3)下でIgG 5mg/mL gelを4℃、一晩反応させた。未反応基のブロックには、0.2 mol/L グリシン緩衝液(pH8)を用いた。 マイコプラズマ・ニューモニエ菌体より抽出した蛋白質をカラムにアプライし、非吸着画分を溶出した後、3 mol/Lチオシアン酸ナトリウムによりカラム吸着画分を溶出・回収した。これを50mmol/L PBS(pH7)で透析したものを精製品とした。(2−2)取得モノクローナル抗体の認識蛋白質の同定(2−2−1)認識蛋白質のSDS-PAGE上での分子量確認 精製抗原を、SDS-PAGE及びウェスタンブロットにより解析した。精製抗原0.1μgをSDS-PAGEし、続けてニトロセルロースメンブレンにブロットした。モノクローナル抗体MCM12又はモノクローナル抗体MCM19の 10μg/mL IgG溶液を、それぞれ、メンブレンに添加し、室温で1時間反応させた。洗浄液で3回洗浄後、1000倍希釈HRP標識ウサギ抗マウスIg抗体を添加し、室温で1時間反応させた。洗浄液で3回洗浄後、基質(4-クロロ-1-ナフトール)溶液を添加し、室温で反応させた。発色後、蒸留水で洗浄し、反応を停止した。 いずれの抗体も精製抗原を認識することが確認できた。(2−2−2)精製抗原のN末端アミノ酸配列解析 定法に従って、精製抗原蛋白のN末端10アミノ酸残基を解析した。精製抗原をSDS-PAGEし、PVDFメンブレンにブロットした試料を50%メタノール/0.1%トリフルオロ酢酸、メタノールで洗浄後、乾燥し、N末端より10サイクルのアミノ酸配列分析を実施した。解析装置には、プロテインシーケンサーPPSQ-23A(島津製作所)とPTHアナライザーSPD-10A(島津製作所)を使用した。 その結果、以下の配列が得られた。S T D N G L I I G I(配列番号1) 定法に従って、データーベースSwiss-Protを用いた検索により、得られた配列はマイコプラズマ・ニューモニエのChaperone protein DnaKの2〜11残基目の配列と完全に一致した。また、このアミノ酸配列より推定される該DnaKの分子量は65KDaであり、ウェスタンブロット上での抗体認識抗原の分子量とほぼ一致した。 以上より、上記で取得された抗体は、マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウム特異的な抗DnaK抗体であることを確認することができた。《実施例2:ELISA法による取得抗体の感度及び交差性の検討》 実施例1で得られたモノクローナル抗体の内、モノクローナル抗体MCM12及びモノクローナル抗体MCM19を使用して該抗体の感度及び交差性の検討を行った。(1)試験菌株の培養及び調製(1−1)感度試験用菌株 表1に示すマイコプラズマ・ニューモニエ8株をPPLOグルコースブロス(ウマ血清、新鮮酵母エキス、酢酸タリウム含有)に接種し、37℃、4日間好気培養し、ブロスのpHが6.8となったものを試験菌として用いた。ブロス中の菌数は滅菌PBSにて10段階希釈液を作製、その各希釈液をPPLO(ウマ血清、新鮮酵母エキス、酢酸タリウム含有)寒天培地上に10μL接種後、37℃、10日間培養した。寒天培地上の発育集落を40倍の光学顕微鏡にて集落数を測定し、菌数を算出した。(1−2)交差性試験用菌株−1 (1−1)で示したマイコプラズマ・ニューモニエ以外のMycoplasma属、Ureaplasma属、Acholeplasma属のそれぞれの菌株を表2に示したブロス及び培養条件にて培養した。なお、培養は37℃で実施した。また、表2における「好気」及び「嫌気」は、それぞれ、好気培養及び嫌気培養であることを示す。ブロス中の菌数は滅菌PBSにて10段階希釈液を作製、その各希釈液をPPLO(ウマ血清、新鮮酵母エキス、酢酸タリウム含有)寒天培地上に10μL接種後、37℃、10日間培養した。寒天培地上の発育集落を40倍の光学顕微鏡にて集落数を測定し、菌数を算出した。試験菌数は106〜107cfu/mLで実施した。(1−3)交差性試験用菌株−2 (1−1)及び(1−2)で使用したMycoplasma属、Ureaplasma属、Acholeplasma属以外の細菌、真菌の交差反応性試験に供した微生物及びその培養条件を、表3〜6にそれぞれ示した。なお、使用培地としては、ハートインフュージョンアガー(ディフコ社)、トリプチケースソイIIヒツジ寒天培地(ベクトン・デッキンソン社)、チョコレート寒天培地(日水社)、変法GAM寒天培地(日水社)、スキロー寒天培地(ベクトン・デッキンソン社)、サブロー・デキストロースアガー(ディフコ社)を使用した。 これらの菌は寒天培地で培養後、滅菌PBSに107〜108cfu/mLになるように浮遊させ、試験菌とした。菌数測定は滅菌PBSに浮遊させた試験菌液を同緩衝液にて10段階希釈し、そのそれぞれを寒天培地に50μL接種し、培地上に発育した集落を肉眼にて測定した。なお、表中の菌株No.欄の空白部分は、臨床材料から分離同定されたものである。(2)ELISA法における感度及び交差性の検討(2−1)ELISA法の構築(2−1−1)固相化抗体調製方法及び固相化方法 モノクローナル抗体MCM19を含む腹水を硫安分画後、rProteinA Sepharose FF(GEヘルスケア社)を用いてIgG精製し、BCA法にて蛋白質定量を実施した。96ウェルのマイクロプレートに精製IgG抗体(10μg/mL)を固相化した。(2−1−2)アルカリ性ホスファターゼ標識用抗体調製方法及び標識体作製方法 モノクローナル抗体MCM12を含む腹水を硫安分画後、MEP Hypercel(日本ポール社)を用いてIgG精製を実施した。更に、IgGをペプシンにてF(ab’)2化後、F(ab’)2をアルカリ性ホスファターゼと架橋反応を行い、アルカリ性ホスファターゼ標識抗体を作製した。(2−1−3)ELISA法の実施方法 固相化96ウェルマイクロプレートを洗浄後、1%BSAを含む0.1mmol/L TBS(pH7.5)で室温、1時間ブロッキングした。試験菌液100μLを添加し、室温で1時間反応させた。洗浄後、アルカリ性ホスファターゼ標識抗体(10μg/mL)を添加し、室温で1時間反応させた。洗浄後、基質(pNPP)溶液で30分間発色させ、反応停止後に405nmでの吸光度を測定した。(3)感度試験 試験菌(1−1)を前述のELISAにて測定し、吸光度が0.05以上認められた最高希釈倍率の試験液から菌数を算定して表7に示した。 表7の結果から、本モノクローナル抗体を使用したELISAによって、マイコプラズマ・ニューモニエに対する感度は、103〜104cfu/mLであることが判った。(4)交差性試験 試験菌(1−2)(表2に記載のマイコプラズマ・ニューモニエ以外のMycoplasma属、Ureaplasma属、Acholeplasma属)及び試験菌(1−3)(表3〜6に記載の他細菌、真菌)を前述のELISAにて測定した。 マイコプラズマ・ジェニタリウム以外の微生物では、全て、吸光度が0.010未満であった。一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムでは、吸光度が0.05以上認められた最高希釈倍率の試験液から菌数を算定したところ、6.9×104cfu/mLであった。 これらの結果に示したとおり、本モノクローナル抗体を使用したELISAではマイコプラズマ・ジェニタリウムとは交差性が認められるが、それ以外の微生物には交差性が無いことがわかった。 以上より、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を診断する際に障害になる可能性のある、多くの細菌及び真菌とは交差しないことが確認された。《実施例3:イムノクロマト法による取得抗体の感度及び交差性の検討》(1)イムノクロマト法の構築(1−1)検出用標識物である金コロイド標識抗マイコプラズマ・ニューモニエ抗体の作製 直径40nmの金コロイド溶液(田中貴金属社)18mLに50mmol/L リン酸緩衝液(pH11)2mLを加えることでpHを調製した金コロイド溶液に、100μg/mLのモノクローナル抗体MCM12溶液2.5mLを加えて攪拌した。1時間攪拌した後、1質量%ポリエチレングリコール(Mw.20000、和光純薬社)水溶液を1mL加え攪拌し、続いて10質量%BSA水溶液(SIGMA社)を2mL加え攪拌した。この溶液を4℃、8000G、15分間遠心した後、1mL程度を残して上清を取り除き、超音波発生機により金コロイドを再分散した。この後、20mLのBSAを含むリン酸緩衝液に分散し、再び4℃、8000G、15分間遠心した後、1mL程度を残して上清を取り除き、超音波発生機により金コロイドを再分散し、金コロイド標識抗体溶液を作製した。(1−2)金コロイド保持パッドの作製 (1−1)で作製した金コロイド標識抗体溶液を上記BSAを含むリン酸緩衝液で希釈し、20mm×300mmに切ったガラスファイバーパッド(ミリポア社)に染み込ませ、一晩室温で乾燥し、金コロイド抗体保持パッドを作製した。(1−3)抗体固定化メンブレン(クロマトグラフ担体)の作製 30mm×300mmに切断したニトロセルロースメンブレン(ミリポア社)に関して以下のような方法により、抗体を固定化し抗体固定化メンブレンを作製した。メンブレンの長辺を下にし、下から16mmの位置に、5mg/mLとなるように調製した固定化用モノクローナル抗体MCM19溶液を塗布機(BioDot社)を用いて幅1mm程度のライン状に塗布し、乾燥させて、抗体固定化メンブレンを作製した。(1−4)イムノクロマトグラフキットの組み立て バック粘着シート(日栄化工社)に抗体固定化メンブレン、金コロイド保持パッド、吸収パッド(日本ポール社)を重ねて貼り付け、これら重ね貼り部材を、部材の長辺側を6mm幅になるようにカッターで切断していくことでイムノクロマトグラフ用テストストリップを作製した。これらをハウジングケースに入れ、試験用イムノクロマトグラフキットとした。(1−5)試験方法 TritonX-100を含むリン酸緩衝液で培養菌、PBS洗浄菌、培養上清、培養菌の沈殿を溶解し、各濃度の試験用マイコプラズマ・ニューモニエ抗原(又は菌株)溶液を作製した。各試験用イムノクロマトキットに、各濃度の試験用マイコプラズマ・ニューモニエ抗原(又は菌株)溶液を100μL滴下し、15分後に抗体固定メンブレンの抗マイコプラズマ・ニューモニエモノクローナル抗体を塗布した部位に目視で染色が見られた場合は「陽性」、染色が見られなかった場合は「陰性」と判別した。(2)感度試験 実施例2の試験菌(1−1)を前述のイムノクロマト法にて測定し、テストラインに出現した染色が認められた最高希釈倍率の試験液から菌数を算定して、表8に示した。 表8の結果から、本モノクローナル抗体を使用したイムノクロマト法においてマイコプラズマ・ニューモニエに対する感度は、103〜104cfu/mLであることが判った。(3)交差試験 実施例2の試験菌(1−2)(表2に記載のマイコプラズマ・ニューモニエ以外のMycoplasma属、Ureaplasma属、Acholeplasma属)及び試験菌(1−3)(表3〜6に記載の他細菌、真菌)を前述のイムノクロマト法にて測定した。 マイコプラズマ・ジェニタリウム以外の微生物は、全て、陰性、すなわち、染色が認められなかった。一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムでは染色が認められ、最高希釈倍率の試験液から菌数を算定したところ、6.9×104cfu/mLであった。 これらの結果に示したとおり、本モノクローナル抗体を使用したイムノクロマト法ではマイコプラズマ・ジェニタリウムとは交差性が認められるが、それ以外の微生物には交差性は認められなかった。 以上より、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症を診断する際に障害になる可能性のある、多くの細菌及び真菌とは交差しないことが確認された。≪実施例4:臨床検体の評価≫ マイコプラズマ感染症の疑いがある患者3名及び健常人33名から、咽頭拭い液を採取し、実施例3のイムノクロマト法に従って、マイコプラズマ・ニューモニエの検出を実施した。その結果、表9に示す通り、マイコプラズマ感染症の疑いがある患者3名では陽性反応が認められ、健常人33名では陰性であった。 また、同検体より定法に従ってDNAを抽出し、マイコプラズマ・ニューモニエP1遺伝子の一部(M.pneumoniae M129-B7 NCBI番号:NC_000912)を増幅する、Jensenら(APMIS. 1989;97(11):1046-8.)の定性PCR法の改法を用いて、マイコプラズマ・ニューモニエの遺伝子検出を実施し、両者を比較した。その結果、表9に示す通り、陽性、陰性共に両者は一致した。 次に、イムノクロマト法及び定性PCR法にていずれも陽性であった検体のDNAを用い、マイコプラズマ・ジェニタリウム16s rRNA領域の一部(M.genitalium G7 NCBI番号:L43967)を増幅するYoshidaら(J Clin Microbiol. 2002;40(4):1451-5.)のマイコプラズマ・ジェニタリウム定量PCR法の改法を用いて、マイコプラズマ・ジェニタリウムの遺伝子検出を実施した。その結果、表10に示す通り、全例からマイコプラズマ・ジェニタリウムの遺伝子は検出されなかった。 なお、この手法で、マイコプラズマ・ジェニタリウムの遺伝子の増幅が可能なことは確認されている。 以上の結果、本発明の抗体を使用して、特異的にマイコプラズマ・ニューモニエを検出し、マイコプラズマ感染症を診断することが可能なことが示された。《実施例5:マイコプラズマ・ニューモニエ培養菌株のDnaK遺伝子の増幅》 測定対象は、ATCCより購入したマイコプラズマ・ニューモニエ8株(M.pneumoniae FH:ATCC No.15531、M.pneumoniae Bru:ATCC No.15377、M.pneumoniae Mac:ATCC No.15492、M.pneumoniae Mutant 22:ATCC No.39505、M.pneumoniae M52:ATCC No.15293、M.pneumoniae PI1428:ATCC No.29085、M.pneumoniae M129-B7:ATCC No.29342および、M.pneumoniae UTMB-10P:ATCC No.49894)を用いた。これらのマイコプラズマ・ニューモニエ8株をPPLO培地にて培養し、DNAを抽出した。 DNA抽出は、スマイテストEX-R&Dキット(医学生物学研究所)を用い、10mmol/L Tris-HCl、1mmol/L EDTA Buffer pH8.0(ニッポンジーン)(以下、TE Buffer)に懸濁し、-40℃に凍結保存した。 抽出したDNAは、16s rRNA領域のマイコプラズマ共通定量PCRにて、遺伝子コピー数を測定し、それぞれ2×106から2×100 copies/μLまで、TE Bufferを用いて10倍階段希釈し、DnaK遺伝子の検出に使用した。 16s rRNA領域のマイコプラズマ共通定量PCRは、以下の通り実施した。 16s rRNA遺伝子領域を増幅するマイコプラズマ属に共通なプライマーを設計し、リアルタイムPCR法を用い、標準品を元に、抽出したM.pneumoniae DNAの遺伝子コピー数を算出した。リアルタイムPCRは、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I (Roche Applied Science)を用いた。 プライマー配列は以下を使用した。M.pneumoniae M129-B7 complete genome : GenBank Accession No.NC_000912 FmY4 : 5’-TGGGGAGCAAA(C/T)AGGATTAG-3’(配列番号2) nt 119,081-119,100 20mer MGSO-2 : 5’-CACCATCTGTCACTCTGTTAACCTC-3’(配列番号3) nt 119,332-119,356 25mer PCR条件は、95℃で10分反応させ、次いで、94℃、10秒で変性、60℃、2秒でアニーリング、72℃で12秒を50サイクル行った。 標準品には、M.pneumoniae(M129株)の16s rRNAの一部(771bp:16s rRNAの302〜1072番目)を組み換えしたpT7Blue T-Vector(タカラバイオ)の希釈系列(107、105、103、102、101copies/test)を用いた。標準品のコピー数は、以下の計算式に基づき算出した。 DNA 濃度(μg/mL)= ABS(260nm)×50および、1 Kbp DNAの1 pmol = 0.66μgより 次に、マイコプラズマ・ニューモニエDnaK遺伝子のPCRによる増幅は、以下のとおり実施した。PCR反応液は、大塚蒸留水(大塚製薬)18μLに、Premix EX Taq Hot Start Version (TaKaRa) 25μL、センスプライマー 10pmol/μL MpDnaK_S及びアンチセンスプライマー 10pmol/μL MpDnaK_Aを各1μL加え、45μLのマスターミックスチャーとし、抽出DNAを5μL添加、計50μLとした。PCR陰性コントロールには、TE Bufferを用いた。DnaK遺伝子全長1,788bpを増幅するために、上記センスプライマーは、DnaK遺伝子の開始コドンの5’側上流81bpに、アンチセンスプライマーは、終始コドンの3’側下流53bpに設計した。具体的にはM.peumoniae M129(GenBank Acc No. NC_000912)の521,756番目から521,782番目をセンスプライマー MpDnaK_S、523,655番目から523,677番目をアンチセンスプライマー MpDnaK_Aとした。 MpDnaK_S:5’-CTCAAACGCTAAAAGTGCTAACG-3’ 23mer(配列番号4) MpDnaK_A:5’-AAACCATTATTACAGGTCAAATAAGAC-3’ 27mer(配列番号5) 次にPCR反応は、Mastercycler(エッペンドルフ)を使用し、94℃、30秒で変性、50℃、30秒でアニーリング、72℃、2分を50サイクル行い、最後に72℃、5分インキュベートの条件で実施した。反応後、PCR産物5μLを用い、2%アガロース電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色後、紫外線照射により、約1,900bpの増幅バンドを確認した。 上記で調製したマイコプラズマ・ニューモニエ8株に対して検討した結果、8株すべてにおいて、102copies/testまで増幅が確認された。《実施例6:ヒトから分離されたマイコプラズマ培養菌株との交差性》 測定対象は、ATCCより購入したマイコプラズマ17株(M.genitalium:ATCC No.33530、M.hominis:ATCC No.23114、Ureaplasma parvum:ATCC No.700970、U. urealyticum:ATCC No.27618、M.fermentans:ATCC No.19989、Acholeplasma laidlawii:ATCC No.23206、A.oculi:ATCC No.51735、M.penetrans:ATCC No.55252、M.pirum:ATCC No.25960、M.orale:ATCC No.23714、M.salivarium:ATCC No.23064、M.arthritidis:ATCC No.19611、M.buccale:ATCC No.23636、M.faucium:ATCC No.25293、M.lipophilum:ATCC No.27104、M.primatum:ATCC No.25948および、M.spermatophilum:ATCC No.49695)を用いた。これらのマイコプラズマ17株を各PPLO培地にて培養し、実施例5と同様にDNAを抽出し、16s rRNA領域の定量PCRにて、遺伝子コピー数を測定し、それぞれ2×105 copies/μLに希釈した。 測定対象として上記マイコプラズマ17株を使用したこと以外は実施例5と同様にマイコプラズマ・ニューモニエDnaK遺伝子PCRを検討した結果、17株すべて増幅バンドは確認されなかった。M.peumoniaeのDnaK遺伝子増幅可能なDNA濃度の10,000倍濃度のDNA試料でも交差性は認められなかったことから、マイコプラズマ・ニューモニエDnaK遺伝子PCRは非常に特異性が高いことがわかった。《実施例7:臨床検体からのマイコプラズマ・ニューモニエDnaK遺伝子の増幅》 測定対象の検体は、国立感染症研究所「病原体検出マニュアル」p.1309-1344 「マイコプラズマ肺炎」の項に記載されているマイコプラズマ・ニューモニエP1遺伝子領域のnested PCRにて、陽性であった臨床検体46例(咽頭拭い液40例、鼻汁2例、鼻咽頭吸引液1例、鼻咽頭拭い液3例)および、陰性であった30例(健常人咽頭拭い液10例、臨床検体咽頭拭い液10例、鼻汁4例、鼻咽頭吸引液3例、鼻咽頭拭い液3例)の抽出DNAを用いた。 マイコプラズマ・ニューモニエDnaK遺伝子のPCRを実施した結果、P1遺伝子PCR陽性46例全てにおいてDnaK遺伝子の増幅が確認された。一方、P1遺伝子PCR陰性30例は、いずれもDnaK遺伝子の増幅は認められなかった。《実施例8:培養菌株および臨床検体のDnaK遺伝子塩基配列の解析》 DnaK遺伝子PCRにて増幅の認められた、実施例5のATCC株8株、実施例7の臨床検体8例(咽頭拭い液7例、鼻咽頭拭い液1例)のPCR産物の塩基配列を、BigDye Terminator v3.1(Applied Biosystems)を使用し、3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems)にて解読した。 その結果、上記、ATCC株8株および、臨床検体8例のPCR産物は、DnaK遺伝子1,788bp(配列番号6)が、すべて100%一致し、GenBankに登録のあるM129株(Acc No. NC_000912)およびFH株(Acc No. CP002077)とも100%一致した。図1〜図3にM129株とFH株の相同性を示す。 一方、P1遺伝子について、参考文献(JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY, 1996, p. 447-449 Vol. 34, No. 2)に従って、PCR−RLFP法によって型鑑別を行ったところ、実施例5のATCC株8株は2群に分かれた。具体的には、M129-B7株、M52株、PI1428株、Mutant 22株の4株がI型に分類でき、FH株、Bru株、Mac株、UTMB-10P株の4株がII型に分類できた。図4〜図10に代表的なM129株(配列番号7)とFH株(配列番号8)の相同性を示す。 この結果から、DnaK遺伝子は、P1遺伝子型の異なる株間でも100%一致し、また、異なる分離地および、過去50年間に分離された株おいても、塩基配列の変異が認められないため、獲得した抗体は、遺伝子型、地域、年代によって反応性に差はないと考えられた。 本発明によれば、口腔・鼻腔擦過物、尿、組織サンプル、体液又は培養物から採取された検体中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエ、及び/又は、マイコプラズマ・ジェニタリウムを特異的に感度良く検出することができ、特にマイコプラズマ・ニューモニエによって惹起される非定型肺炎の診断、あるいは、マイコプラズマ・ジェニタリウムによって惹起される非淋菌性尿道炎及び性感染症の診断に重要であり、医薬品の産業上有用である。 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。 マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムのDnaKを指標とすることを特徴とする、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出方法。 DnaK蛋白質を免疫学的に分析する、請求項1に記載の方法。 マイコプラズマ・ニューモニエ及びマイコプラズマ・ジェニタリウムに特異的な抗DnaKモノクローナル抗体。 請求項3に記載の抗DnaKモノクローナル抗体を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ又はマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出用キット。 DnaK遺伝子を指標とする、請求項1に記載の方法。 配列番号4で表される塩基配列からなるセンスプライマーと、配列番号5で表される塩基配列からなるアンチセンスプライマーとからなる、マイコプラズマ・ニューモニエのDnaK遺伝子に特異的なプライマーセット。 請求項6に記載のプライマーセットを含む、マイコプラズマ・ニューモニエの検出用キット。配列表


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