タイトル: | 特許公報(B2)_ペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体 |
出願番号: | 2011538496 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 471/06,H01L 51/05,H01L 51/30,H01L 29/786 |
平田 直毅 河野 寿夫 西勝 宏明 小熊 尚実 JP 5643215 特許公報(B2) 20141107 2011538496 20101029 ペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体 大日精化工業株式会社 000002820 近藤 利英子 100098707 菅野 重慶 100135987 岡田 薫 100161377 阿部 寛志 100169812 平田 直毅 河野 寿夫 西勝 宏明 小熊 尚実 JP 2009249127 20091029 20141217 C07D 471/06 20060101AFI20141127BHJP H01L 51/05 20060101ALN20141127BHJP H01L 51/30 20060101ALN20141127BHJP H01L 29/786 20060101ALN20141127BHJP JPC07D471/06H01L29/28 100AH01L29/28 250HH01L29/78 618B C07D H01L CAplus/REGISTRY(STN) WPI JSTPlus 米国特許第04156757(US,A) 特開昭57−176046(JP,A) 特開昭57−074361(JP,A) 西独国特許出願公開第03413418(DE,A) 特開昭60−089485(JP,A) 特公昭58−045984(JP,B1) 特開昭51−067328(JP,A) 中国特許出願公開第101353349(CN,A) 国際公開第2009/118742(WO,A1) Journal of the American Chemical Society,2001年,123(32),7959-7960 Journal of the American Chemical Society,2007年,29(20),6354-6355 Bioorganic & Medicinal Chemistry,2007年,15(1),186-193 Journal of Physical Chemistry B,2008年,112(30),8855-8858 Journal of the American Chemical Society,2004年,126(32),10021-10027 Applied Physics Letters,1995年,66(24),3331-3 2 JP2010069277 20101029 WO2011052719 20110505 13 20121226 堀 洋樹 本発明は、特定の置換基を有するペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体に関する。 従来、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタ或いは有機光導電体などの形成に用いる有機半導体材料としては、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料など各種の顔料誘導体使用されてきた。これらの中で、ペリレン顔料誘導体は、優れた半導体特性を有しており、ペリレン骨格の一部をシアノ化して半導体特性を向上したペリレン誘導体(特許文献1)や、フッ素化されたアルキル基の導入により耐久性を向上させたペリレン誘導体(特許文献2)などが公表されている。特表2007−527114号公報特表2008−524846号公報 しかしながら、従来知られている各種のペリレン顔料誘導体は、可視光領域に吸収を持つ染料などに比べて、耐光性或いは耐熱性などの優れた点を有するものの、充分に有機半導体材料としての使用目的を満たすだけの特性を有する材料は得られていない。 本発明者らは、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタ或いは有機光導電体などに用いる有機半導体材料を改良すべく研究し、下記一般式(1)、一般式(2)或いは式(3)で示される特定の置換基を有するペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体が優れた特性を有することを見出して本発明に至った。 すなわち、本発明は、下記一般式(1)、一般式(2)或いは式(3)で示される特定の置換基を有することを特徴とするペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体を提供する。(ただし、一般式(1)中、R1は炭素数が1〜20である分岐してもよいアルキル基を、R2は炭素数が2〜6である分岐してもよいアルキル基を、R3は炭素数が2〜6である分岐してもよいアルキル基を、X1およびX2は酸素原子、硫黄原子およびセレン原子から選択されるヘテロ原子を、Yはハロゲン原子或いはシアノ基を、mは0〜4の数を、そしてnは0〜2の数を、それぞれ示す。)(ただし、一般式(2)中、R1は炭素数1〜20の直鎖アルキル基を、R2は炭素数2〜6の直鎖アルキル基を、R3は炭素数2〜6の直鎖アルキル基を、X1およびX2は酸素原子を、Yはハロゲン原子或いはシアノ基を、mは0〜4の数を、そしてnは0〜2の数を、それぞれ示す。) 本発明によれば、優れた半導体特性を示し、かつ、薄膜としたような場合に耐久性に優れ、有機溶媒への溶解性が高く、有用な有機半導体材料に応用可能なペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体が提供される。例示化合物1の赤外吸収スペクトル。例示化合物2の赤外吸収スペクトル。 次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の特定の置換基を有するペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、公知の方法で合成できる。例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物を高沸点有機溶媒中で該当するアミン類と反応させて、本発明を特徴づける特定の置換基を導入すればよい。或いはペリレンテトラカルボキシジイミドを一旦カリウム塩にした後、該当するハロゲン化アルキルと反応させることによって特定の置換基を導入することでも、本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体を得ることができる。 本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体を合成する際に、使用するアミン成分としては、以下のものが挙げられる。例えば、3−メトキシ−n−エチルアミン、3−メトキシ−n−プロピルアミン、3−エトキシ−n−プロピルアミン、4−エトキシ−n−ブチルアミン、5−(n−ブチルオキシ)−n−ペンチルアミン、3−(n−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−ブチルオキシ)−n−ヘキシルアミン、3−(n−ヘプチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(iso−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(sec−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(tert−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−オクチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−デシルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−テトラデカオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−エイコサオキシ)−n−プロピルアミン、2−(2−エトキシエチルオキシ)エチルアミン、2−(2−n−ブチルオキシ)エチルアミン、2−(2−n−ヘキシルオキシ)エチルアミン、2−(2−n−オクチルオキシ)エチルアミン、2−(2−sec−オクチルオキシ)エチルアミン、2−(2−ブトキシプロピルオキシ)プロピルアミン、2−(2−(ドデシルオキシ)プロピルオキシ)プロピルアミン、3−(n−ブチルチオ)プロピルアミン、3−(エチルチオ)プロピルアミン、3−(n−ドデシルチオ)プロピルアミン、3−(n−ドデシルセラニル)プロピルアミンなどが使用できる。 原材料の入手しやすさや反応の容易さ、そして合成されたペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体の半導体特性などを考慮すると、3−メトキシ−n−プロピルアミン、3−エトキシ−n−プロピルアミン、5−(n−ブチルオキシ)−n−ペンチルアミン、3−(n−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−ブチルオキシ)−n−ヘキシルアミン、3−(n−ヘプチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−オクチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−デシルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−テトラデカオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−エイコサオキシ)−n−プロピルアミン、中でも3−(n−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン、3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピルアミンの使用が好ましい。 本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体を合成する際に使用するペリレンテトラカルボン酸無水物としては、以下のものが挙げられる。例えば、無置換の3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物、1,7−ジシアノ−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物、1,7−ジクロロ−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物、1,7−ジフルオロ−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物、1,6,7,10−テトラフルオロ−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、原材料の入手しやすさや反応の容易さ、そして合成されたペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体の半導体特性などを考慮すると、ペリレン骨格に置換基を導入していない、無置換のペリレンテトラカルボン酸無水物の使用が好ましい。 通常、ペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体を有機太陽電池や有機光半導体或いは有機トランジスタなどに用いる場合、高真空下で基板に蒸着させることが多く、一般的な方法であった。これは、従来知られているペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、有機溶媒に殆ど不溶であることが大きな要因の一つである。 これに対して、本発明の特定の置換基を有するペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、従来の誘導体と異なり、有機溶媒に比較的に溶解する。このために、本発明の誘導体は、その製造の際に、カラムクロマトグラフィーのような精製手段を執ることも可能であるし、有機半導体材料に応用する場合に、有機溶媒に溶解させてスピンコートなどの手法により基板に塗布させ、被膜(薄膜)を形成させることも可能である。後述する表2に、本発明の誘導体にかかる例示化合物を用い、各種溶媒における薄膜形成の状態を記した。有機溶媒への溶解特性は、ペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体の有機半導体材料などへの応用を飛躍的に向上させることを意味している。 以下、半導体特性を示し、かつ、上記した有機溶媒への溶解性を示す、本発明の特定の置換基を有するペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体の具体例を挙げるが、前記した一般式(1)中の各記号に該当する基或いは原子をそれぞれに特定した表1によって示す。しかし、これらは例示であって、本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体がこれらに限定されるものではない。これらの化合物の製造方法は、後述する実施例1に準じる。 上記に例示したような特定の置換基を有する本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、例えば、下記に挙げるような有機溶媒に比較的に溶解する。例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレンなどのハロゲン系炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族系炭化水素溶媒、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン系極性溶媒などである。本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、上記に挙げたような有機溶媒を、単独、あるいは複数を併用することで、適当な濃度の溶液とできる。このため、本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体によれば、その溶液を用いることで、従来の誘導体では利用できなかったスピンコート法などの溶液塗布法を適用することができ、該方法によって容易に均一な薄膜を形成することが可能になる。さらに、本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、充分な半導体特性を有するため、形成した薄膜は、例えば、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタ或いは有機光導電体などに用いられる良好な有機半導体薄膜として機能するものとなる。 本発明の特定の置換基を有するペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体の有機溶媒に対する溶解性を確認するため、先に挙げた例示化合物1〜17について、各有機溶媒を用い、スピンコート法によるシリコン基板上への薄膜形成状態で判断した。結果を、表2に示した。この結果、一般式(1)中のアルキル基の鎖長やヘテロ原子によって多少の違いがあるものの、有機溶剤に対して良好な溶解性を示し、スピンコート法などの溶液塗布法を適用することが可能であることが確認された。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。各実施例では、先に表1に示した例示化合物1〜17をそれぞれ合成した。[実施例1](例示化合物1の合成) ペリレンテトラカルボン酸無水物3.92gと、3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピルアミン9.72gとをイミダゾール40g中に分散させ、窒素気流下160℃で4時間攪拌した。冷却後、濾過し、濾物をメタノール・希塩酸、次いで水の順に洗浄した。その後、濾物を乾燥して5.90gの、下記式(3)で示されるN,N'−ビス(3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピル)−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボキシジイミドを、例示化合物1として得た(収率70%)。 上記で得られた例示化合物1についての各分析結果は以下に示す通りであり、これらの分析によって、例示化合物1は、上記の構造のものであることを確認した。 融点:330℃付近(分解) 元素分析値()内は理論値:C;76.88%(76.92%)、H;8.30%(8.37%)、N;3.25%(3.32%) 図1に赤外吸収スペクトルを示す。[実施例2](例示化合物2の合成) 実施例1で使用した3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピルアミン9.72gを、3−(n−ブチルオキシ)−n−プロピルアミン5.24gに代えた以外は実施例1と同様の方法で、例示化合物2として、4.95gの、N,N'−ビス(3−(n−ブチルオキシ)−n−プロピル)−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボキシジイミドを得た(収率80%)。合成した例示化合物2についての各分析結果は以下に示す通りであり、これらの分析によって、例示化合物2は、上記の化合物であることを確認した。 融点:340℃付近(分解) 元素分析値()内は理論値:C;73.81%(73.77%)、H;6.15%(6.19%)、N;4.49%(4.53%) 図2に赤外吸収スペクトルを示す。[実施例3〜17] 実施例1および2と同様の方法で、先に表1中に構造を示した例示化合物3〜17をそれぞれ合成した。そして、得られた各化合物の収率、融点、紫外・可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長を表3に示した。実施例1および2で得た例示化合物1、2についても最大吸収波長を測定し、結果を収率および融点とともに示した。例示化合物3〜17の紫外・可視光吸収スペクトルは、例示化合物1、2とほぼ同様であった。 以下表3に、各実施例で合成した例示化合物1〜17の収率、最大吸収波長および融点を記載する。 以下に本発明のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体を用いた有機半導体の作成例を示す。[参考例1] 例示化合物1(N,N'−ビス(3−(n−ドデシルオキシ)−n−プロピル)−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボキシジイミド)を用いた有機薄膜トランジスタの作製 まず、ゲート絶縁体層となる酸化シリコン膜(厚さ200nm)を表面に有するシリコン基板を用意した。実施例1で得た例示化合物1からなる有機半導体薄膜は、酸化シリコン膜上に真空蒸着法(蒸着レート2[nm/sec])により、厚さ30nmとなるように成膜した。次に、シャドーマスクを介して、ソース/ドレイン電極として金電極のパターンを形成し(30nm)、トップコンタクト型有機薄膜トランジスタを作成した。このときの、チャネル長、チャネル幅は、それぞれ100μm、2000μmとした。 上記で得られたトランジスタについて、異なるゲート電圧毎でのドレイン電圧とドレイン電流とを測定した。その結果、ドレイン電流−ドレイン電圧曲線に明澄な飽和領域が認められたことから、典型的なn型特性を有する電界効果トランジスタとして駆動することが示された。この曲線から算出した電子移動度は、3.3×10-2cm2/Vs、しきい電圧値は15Vであった。[参考例2] 参考例1で用いた例示化合物1をクロロホルムに濃度0.25%となるように溶解し、該溶液を用いて、スピンコーター(1,500回転/分,40秒)にて、ITO電極を表面に有する酸化膜付シリコン基板上に有機半導体薄膜を形成し、真空中において140℃、1時間の減圧乾燥を行った。 上記で得たトランジスタについて、トランジスタ特性を参考例1と同様に測定した。その結果、典型的なn型特性を有する電界効果トランジスタとして駆動することが示された。また、電子移動度は、0.40cm2/Vs、しきい電圧値は16Vであり、参考例1の真空蒸着法によって薄膜を形成した場合よりも半導体特性において優れたものが得られることを確認した。[参考例3] 本参考例では、参考例1で使用した例示化合物1に変えて、実施例2で得た例示化合物2(N,N'−ビス(3−(n−ブチルオキシ)−n−プロピル)−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボキシジイミド)を使用した。 参考例1と同様に例示化合物2よりなる有機半導体層を有するトップコンタクト型有機薄膜トランジスタを作成した。そして、典型的なn型特性を有する電界効果トランジスタとして駆動することが示された。また、電子移動度は、3.8×10-3cm2/Vs、しきい電圧値は10Vであった。 本発明によれば、優れた半導体特性を示し、かつ、薄膜としたような場合に耐久性に優れ、有用な有機半導体材料に応用可能なペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体が提供される。また、本発明によって提供される上記のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体は、有機溶剤への溶解性を示すため、溶液法によって薄膜などを形成することが可能であり、その実用性は極めて高いものとなることが期待される。 少なくとも、ハロゲン系炭化水素溶媒、非プロトン系極性溶媒及びエーテル系溶媒のいずれの有機溶剤に対しても溶解し、スピンコート法による基板上への薄膜形成が可能な、下記式(a)、(b)、(d)、(e)、(f)のいずれかで示されることを特徴とするペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体。 前記ハロゲン系炭化水素溶媒がクロロホルムであり、前記非プロトン系極性溶媒がトルエンであり、前記エーテル系溶媒がテトラヒドロフランである請求項1に記載のペリレンテトラカルボキシジイミド誘導体。