タイトル: | 特許公報(B2)_サイトカイン誘導キラー細胞の製造方法 |
出願番号: | 2011538454 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12N 5/0783,C12N 15/09,A61K 35/14,A61K 35/28,A61P 1/16,A61P 31/04,A61P 31/06,A61P 31/10,A61P 31/18,A61P 31/16,A61P 37/04 |
神 芽衣子 出野 美津子 榎 竜嗣 JP 5097856 特許公報(B2) 20120928 2011538454 20101027 サイトカイン誘導キラー細胞の製造方法 タカラバイオ株式会社 302019245 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 澤本 真奈美 100170520 神 芽衣子 出野 美津子 榎 竜嗣 JP 2009247347 20091028 20121212 C12N 5/0783 20100101AFI20121121BHJP C12N 15/09 20060101ALI20121121BHJP A61K 35/14 20060101ALI20121121BHJP A61K 35/28 20060101ALI20121121BHJP A61P 1/16 20060101ALI20121121BHJP A61P 31/04 20060101ALI20121121BHJP A61P 31/06 20060101ALI20121121BHJP A61P 31/10 20060101ALI20121121BHJP A61P 31/18 20060101ALI20121121BHJP A61P 31/16 20060101ALI20121121BHJP A61P 37/04 20060101ALI20121121BHJP JPC12N5/00 202LC12N15/00 AA61K35/14 ZA61K35/28A61P1/16A61P31/04A61P31/06A61P31/10A61P31/18A61P31/16A61P37/04 C12N 5/0783 C12N 5/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed CiNii 国際公開第2009/139413(WO,A1) THE JOURNAL OF DERMATOLOGY,2001年,Vol. 28, No. 12,pp. 746-752 香川県立中央病院医学雑誌,2006年 3月31日,第25巻,第25−29頁 Biology of Blood and Marrow Transplantation,2005年,Vol. 11, No. 3,pp. 181-187 第62回日本癌学会総会,2003年 8月25日,p. 438 Chinese Journal of Biotechnology,2008年 8月25日,Vol. 24, No. 8,pp. 1373-1380 Biotherapy,2008年 9月,Vol. 22, No. 5,pp. 297-302 5 JP2010069072 20101027 WO2011052638 20110505 26 20120604 太田 雄三 本発明は、養子免疫療法において効力の高いサイトカイン誘導キラー細胞(CIK細胞)の製造方法、当該製造方法により得られるCIK細胞、当該CIK細胞を含有する医薬等に関する。 なお、本願は、2009年10月28日出願の日本国特許出願第2009−247347号に対して優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2009−247347号の全内容を本願に組み込むものである。 近年、薬剤治療法や放射線療法のように患者に重い肉体的負担がある治療法が見直され、より負担の軽い免疫治療法に関心が高まっている。当該療法には、例えば、体外に取り出した免疫関連細胞を培養して細胞数を増加させ、及び/又は治療効果に係る活性を強化して患者に移植する養子免疫治療法が含まれる。 養子免疫療法においてエフェクター細胞として利用される細胞として、リンホカイン活性化キラー(lymphokine activated killer;LAK)細胞、腫瘍内浸潤リンパ球(tumour infiltrating lymphocyte;TIL)、細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte;CTL)及びサイトカイン誘導キラー(cytokine−induced killer;CIK)細胞が知られている。 LAK細胞は、インターロイキン(IL)−2存在下にリンパ球を増殖させて得ることができる細胞集団であり、腫瘍細胞を溶解するが正常細胞を溶解しないという性質を有している。LAK細胞の調製に関しては、培養時にIL−2とともに抗CD3抗体を共存させる方法も開発されている。 TILは腫瘍組織に浸潤したT細胞であり、LAK細胞よりも著しい腫瘍抗原特異性を有する。本細胞も体外で増殖させ、治療に使用することができる。しかし、TILは患者の腫瘍組織を摘出して入手する必要があるため、採取操作が煩雑であり、また、得られる細胞数も少ないという問題点を有している。 CTLは、HLA(human leukocyte antigen;ヒト白血球抗原)拘束性の腫瘍関連抗原(ペプチド、タンパク質等)、抗原提示細胞及びIL−2の存在下で腫瘍関連抗原特異的にリンパ球を誘導・増殖させて得ることができる細胞集団であり、高い腫瘍抗原特異性を有している。しかし、CTLは大量培養が困難であり、また、誘導時に使用した腫瘍関連抗原を発現する細胞しか認識しないという性質を有しているため、同じ腫瘍であってもその抗原発現の有無によって効果が著しく異なるという問題点を有している。 CIK細胞は、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)から、インターフェロン(IFN)−γ、抗CD3抗体、及びIL−2の存在下での培養を行うことにより調製される細胞集団であり、CD3陽性かつCD56陽性の細胞を含有する細胞集団として特徴づけられる。CD3陽性CD56陽性の細胞は、PBMC中では希有な細胞であるが、標的細胞の非存在下で優先的に増殖させることができる。CIK細胞は、インビボにおいてLAK細胞に勝る腫瘍細胞に対する細胞傷害活性を発揮する(例えば、非特許文献1)。ただし、従来の方法により製造されたCIK細胞に含有されるCD3陽性CD56陽性細胞の比率は一般的には20%程度であり、また、CIK細胞の増殖性も3週間の培養で10倍程度と非常に低い。そのため、大量のCIK細胞を培養するためには患者から成分採血をする場合が多く、肉体的負担が大きいという問題点を有している(例えば、非特許文献2及び3)。J. Immunol.,1994年,Vol.153,p1687−1696Transfusion,2008年,Vol.48,p1629−639Biology of Blood and Marrow Transplantation,2005年,Vol.11,p181−187 CIK細胞の拡大培養の過程では、PBMCは多くの性質の異なる細胞集団に分化するため、拡大後の細胞集団中のCD3陽性CD56陽性細胞の割合は決して高いものではない。本発明の目的は、CD3陽性CD56陽性細胞を効率よく大量に得ることができるCIK細胞の製造方法を提供する事にある。 本発明を概説すれば、本発明の第1の態様は、(a)CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団をCD3リガンド存在下で培養する工程、(b)工程(a)により得られた細胞集団をCD3リガンドの非存在下で培養する工程、及び(c)工程(b)により得られた細胞集団をCD3リガンド存在下で培養する工程を包含するサイトカイン誘導キラー細胞の製造方法に関する。第1の態様において、工程(a)〜(c)のうち少なくとも一つの工程における細胞集団の培養が、インターフェロン−γ及び/又はインターロイキン−2の存在下で実施されてもよい。また、第1の態様において、CD3リガンドとしては、抗CD3抗体が例示される。また、第1の態様において、工程(a)における培養は、フィブロネクチンフラグメントとCD3リガンドとの共存下で実施してもよい。当該フィブロネクチンフラグメントとしては、VLA−4結合領域、VLA−5結合領域及びヘパリン結合領域からなる群より選択される領域を含有するものが例示される。 本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の製造方法により得ることができる、サイトカイン誘導キラー細胞に関する。 本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様のサイトカイン誘導キラー細胞を有効成分として含有する医薬に関する。 本発明の第4の態様は、対象に、有効量の本発明の第2の態様のサイトカイン誘導キラー細胞を投与する工程を含む、疾患の治療方法又は予防方法に関する。 本発明の第5の態様は、医薬の製造のための、本発明の第2の態様のサイトカイン誘導キラー細胞の使用に関する。 また、本発明の第6の態様は、疾患の治療に用いるための、本発明の第2の態様のサイトカイン誘導キラー細胞に関する。 本発明の第7の態様は、(A)CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団を、CD3リガンドを含有する培地中で培養する工程、(B)前記培地のCD3リガンド濃度を低下させる工程、(C)CD3リガンド濃度が低下した培地中で細胞集団を培養する工程、及び(D)培地にCD3リガンドを添加し、さらに細胞集団を培養する工程を包含する、サイトカイン誘導キラー細胞の製造方法に関する。 本発明により、高い細胞傷害活性を有するCD3陽性CD56陽性細胞を高含有する細胞集団を大量に拡大培養することが可能な、CIK細胞の製造方法が提供される。当該製造方法により大量に得られかつ高品質なCIK細胞は、生体内において高い治療効果を発揮することから、細胞医療による疾患の治療に極めて有用である。 本発明者らは、CD3リガンド存在下で培養された細胞集団をCD3リガンド非存在下で培養し、さらにCD3リガンド存在下で培養することにより、驚くべき事に、細胞表面にCD3及びCD56の両分子を発現する細胞が高い比率で含まれた細胞集団が大量に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 以下、本発明を具体的に説明する。(1)本発明のCIK細胞の製造方法 本発明の製造方法は、CIK細胞、すなわちCD3陽性かつCD56陽性として特徴づけられる亜細胞集団を高含有する細胞集団を製造する方法である。本発明のCIK細胞の製造方法は、(a)CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団をCD3リガンド存在下で培養する工程、(b)工程(a)により得られた細胞集団をCD3リガンドの非存在下で培養する工程、及び(c)工程(b)により得られた細胞集団をCD3リガンド存在下で培養する工程を包含する。 従来のCIK細胞の製造方法では、CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団に対してCD3リガンドによる刺激を与えた後、CD3リガンド非存在下で培養することにより完結していた。なお、CD3リガンドによる刺激後にCD3リガンド非存在下で培養を行う理由は、CD3リガンドによる過剰な刺激(高濃度、長期間刺激等)が細胞増殖を抑制するためである。これに対して、本発明のCIK細胞の製造方法は、CD3リガンドによる刺激〔上記の工程(a);以下、当該工程におけるCD3リガンド刺激を「初期刺激」と記載する〕が与えられた細胞集団をCD3リガンド非存在下で培養〔上記の工程(b)〕した後に、再度CD3リガンドによる刺激〔上記の工程(c);以下、当該工程におけるCD3リガンド刺激を「再刺激」と記載する〕を加えることを特徴とする。 なお、初期刺激にCD3リガンドを含有する培地を用いる場合、初期刺激の後に、培地を希釈してCD3リガンドの濃度を細胞増殖抑制作用が認められない程度まで低下させ、さらに細胞集団の培養を継続することにより、上記の工程(b)と同等の効果を得ることができる。すなわち、(A)CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団を、CD3リガンドを含有する培地中で培養する工程、(B)前記培地のCD3リガンド濃度を低下させる工程、(C)CD3リガンド濃度が低下した培地中で細胞集団を培養する工程、及び(D)培地にCD3リガンドを添加し、さらに細胞集団を培養する工程を含むCIK細胞の製造方法も、本発明の製造方法の一態様である。本態様の工程(A)は前記の初期刺激、工程(D)は、前記の再刺激とみなすことができる。上記の工程(C)における「CD3リガンド濃度が低下した培地」中のCD3リガンド濃度としては、CD3リガンドによる細胞増殖抑制作用が認められない濃度であれば特に限定はなく、例えば、工程(A)における培地中のCD3リガンド濃度の約1/50〜1/2倍の濃度が例示される。 本発明の製造方法に使用される「CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団」としては、末梢血、骨髄、臍帯血等から得ることができる細胞集団、あるいはこれらの材料から分離された血球系細胞の集団が例示される。好ましくは、PBMCが本発明に使用される。また、これらの細胞集団から分離されたCD3陽性CD56陽性細胞から実質的になる細胞集団を本発明に使用しても良い。分離は、例えば、セルソーター、磁気ビーズ、アフィニティーカラム等を用いる公知の手法で行うことができる。これらの細胞集団は、生体から採取されたそのまま、もしくは凍結保存されたもののいずれも本発明に使用することができる。また、CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団は、本発明に使用される前にインターフェロン−γ存在下で予め前培養された物であってもよい。 本発明に使用されるCD3リガンドとしては、CD3に結合活性を有する物質であれば特に限定はないが、例えば、抗CD3抗体、特に好適には、抗CD3モノクローナル抗体、例えば、OKT3〔J. Immunol.,第124巻、第6号、2708〜2713(1980)〕が例示される。 CD3リガンドの培地中の濃度としては特に限定はなく、例えば、抗CD3モノクローナル抗体を使用する場合、初期刺激の際には例えば0.001〜500μg/mL、特に0.01〜100μg/mLが好適であり、再刺激の際には例えば0.001〜100μg/mL、特に0.005〜50μg/mLが好適である。CD3リガンドは、培地中に溶解して共存させる以外に、適切な固相、例えば、シャーレ、フラスコ、バッグ等の細胞培養用器材(培養用容器;開放系のもの、及び閉鎖系のもののいずれをも含む)、又はビーズ、メンブレン、スライドガラス等の細胞培養用担体に固定化して使用してもよい。それらの固相の材質は、細胞培養に使用可能なものであれば特に限定されるものではない。CD3リガンドを固相に固定化しておけば、培養終了後、細胞と固相とを分離するのみで前記の成分と得られた細胞集団とを容易に分離することができ、細胞集団への前記成分の混入を防ぐことができる。CD3リガンドの固定化量は、前記の器材又は担体を培養に供した際に、該成分を培地中に溶解して用いる場合の所望の濃度と同様の割合となるよう選択されてもよいが、所望の効果が得られれば特に限定されるものではない。 前記の工程(a)、すなわち「CD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団をCD3リガンド存在下で培養する工程」の培養条件に特に限定はなく、通常の細胞培養に使用される条件を使用することができる。例えば、37℃、5%CO2等の条件で培養することができる。培養期間としては、本発明を特に限定するものではないが、例えば、1〜10日間、好適には1〜7日間が例示される。また、培養開始時の細胞数としては、特に限定はないが、好適には1×104〜1×108cells/mL、より好適には1×105〜5×107cells/mLが例示される。 前記の工程(b)、すなわち「工程(a)により得られた細胞集団をCD3リガンドの非存在下で培養する工程」は、例えば、工程(a)により得られた培養物から細胞集団とCD3リガンドとを分離し、さらにCD3リガンド非存在下で当該細胞集団を培養することにより実施される。細胞集団とCD3リガンドとの分離は、特に本発明を限定するものではないが、例えば、工程(a)においてCD3リガンドが固定化された細胞培養器材を用いる場合には、細胞集団をCD3リガンドが固定化されていない他の細胞培養器材に移すことにより実施される。また、例えば、工程(a)において遊離のCD3リガンドを含む培地を用いる場合には、当該培地をCD3リガンドを含まない培地に交換することにより実施することができる。工程(b)の培養条件に特に限定はなく、通常の細胞培養に使用される条件を使用することができる。例えば、37℃、5%CO2等の条件で培養することができる。工程(b)の培養期間としては、本発明を特に限定するものではないが、例えば、1〜20日間、好適には1〜10日間が例示される。 前記の工程(c)、すなわち「工程(b)により得られた細胞集団をCD3リガンド存在下で培養する工程」は、本発明を特に限定するものではないが、工程(b)により得られた培養物にCD3リガンドを添加することで実施してもよく、工程(b)により得られた培養物をCD3リガンドが固定化された細胞培養器材に移すことで実施してもよい。工程(c)の培養条件に特に限定はなく、通常の細胞培養に使用される条件を使用することができる。例えば、37℃、5%CO2等の条件で培養することができる。培養期間としては、本発明を特に限定するものではないが、例えば、1〜20日間、好適には1〜15日間が例示される。 また、前記の工程(c)を実施した後に、さらに、工程(d)として「工程(c)により得られた細胞集団をCD3リガンドの非存在下で培養する工程」を実施してもよい。当該工程(d)の培養条件も特に限定はなく、通常の細胞培養に使用される条件を使用することができる。例えば、37℃、5%CO2等の条件で培養することができる。工程(d)を実施した場合の培養期間としては、特に限定するものではないが、例えば、1〜20日間、好適には1〜15日間が例示される。 本発明の製造方法には、培養器材としてシャーレ、フラスコ、バッグ、大型培養槽、バイオリアクター等の細胞培養用器材(容器)を使用することができる。なお、バッグとしては、細胞培養用CO2ガス透過性バッグが好適である。大量の細胞を必要とする場合には、大型培養槽を使用してもよい。培養は開放系又は閉鎖系のどちらでも実施することができるが、好適には閉鎖系で培養が実施される。 本発明の製造方法におけるCD3陽性CD56陽性細胞に分化しうる細胞及び/又はCD3陽性CD56陽性細胞を含有する細胞集団に対するCD3リガンドによる初期刺激は、本発明を特に限定するものではないが、好適にはフィブロネクチンフラグメントの共存下で行われる。また、CD3リガンドによる再刺激についてもフィブロネクチンの共存下で行うことができる。 本発明に使用されるフィブロネクチンフラグメントの濃度には特に限定はないが、例えば、0.001〜500μg/mL、特に0.01〜500μg/mLが好適である。フィブロネクチンフラグメントは培地中に溶解して共存させる以外に、細胞培養用器材又は細胞培養用担体に固定化して使用することができる。フィブロネクチンフラグメントの固相への固定化は、例えば、適当な緩衝液に溶解したフラグメントを固相と接触させることにより実施でき、国際公開第97/18318号パンフレット、又は国際公開第00/09168号パンフレットに記載の方法によっても実施できる。フィブロネクチンフラグメント及びCD3リガンドを固相に固定化しておけば、培養終了後、細胞と固相とを分離するのみで前記の成分と得られた細胞集団とを容易に分離することができ、細胞集団への前記成分の混入を防ぐことができる。 フィブロネクチンフラグメントは、天然から得られたもの(天然のフィブロネクチンを酵素消化により断片化したもの等)、又は組換えDNA技術により製造されたもののいずれでもよい。フィブロネクチンフラグメントは、例えば、ルオスラーティ E.ら〔J. Biol. Chem.,第256巻、第14号、第7277〜7281頁(1981)〕の開示に基づき、天然起源の物質から実質的に純粋な形態で製造することができる。ここで、本明細書に記載する「実質的に純粋な形態のフィブロネクチンフラグメント」とは、これらが天然においてフィブロネクチンと一緒に存在する他のタンパク質を本質的に含有していないことを意味する。本発明において、フィブロネクチンフラグメントは、単一の分子種を使用してもよく、複数の分子種を混合して使用してもよい。 本発明に使用できるフィブロネクチンフラグメント、ならびに該フラグメントの調製に関する有用な情報は、例えば、コーンブリット A.R.ら〔EMBO J.、第4巻、第7号、1755〜1759(1985)〕、及びセキグチ K.ら〔Biochemistry、第25巻、第17号、4936〜4941(1986)〕等より得ることができる。また、フィブロネクチンをコードする核酸配列又はフィブロネクチンのアミノ酸配列は、Genbank Accession No. NM_002026、NP_002017に開示されている。 本発明には、細胞接着活性及び/又はヘパリン結合活性を有するフィブロネクチンフラグメントが好適に使用できる。フィブロネクチン中には、細胞表面のインテグリンと結合する活性を有する領域が存在する。前記領域として、VLA(very late antigen)−4又はVLA−5結合領域が例示される。フィブロネクチンのC末端側寄りの部位にはIIICSと呼ばれる領域が存在する。ここにはCS−1と呼ばれる25アミノ酸からなる領域が含まれており、当該領域はVLA−4に対して結合活性を示す。CS−1領域のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。 また、フィブロネクチンにはIII型と呼ばれる繰り返し配列が存在しており、N末側から10番目のIII型の繰り返し配列には細胞への結合領域が存在している。10番目のIII型の繰り返し配列のアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。前記配列中の、VLA−5との結合に中心的役割を果たす配列は、配列表の配列番号3に示すArg−Gly−Asp−Ser(RGDS)の4アミノ酸である。配列表の配列番号4に示すアミノ酸配列からなるC−274は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、強い細胞接着活性を有する組換えフィブロネクチンフラグメントである。 さらに、フィブロネクチンはヘパリンと結合する活性を有している。フィブロネクチンのヘパリン結合領域は、前記のIII型繰り返し配列のN末側から12番目〜14番目に相当する。配列表の配列番号5に示すアミノ酸配列からなるH−271はこのヘパリン結合領域からなる組換えフィブロネクチンフラグメントである。 本発明には、各領域を単独で含有するフラグメントのほか、これらの領域の2以上が直接、あるいは適切なリンカーを介して結合されたフラグメントを使用することができる。前記フラグメントに含まれるフィブロネクチン由来の領域は同一のものであっても、異なるものであってもよい。複数の結合領域を分子内に有するフィブロネクチンフラグメントとしては、VLA−4結合領域及びヘパリン結合領域を含有するH−296(配列表の配列番号6で表されるアミノ酸配列)、VLA−5結合領域及びヘパリン結合領域を含有するCH−271(配列表の配列番号7で表されるアミノ酸配列)、VLA−4結合領域、VLA−5結合領域及びヘパリン結合領域を含有するCH−296(配列表の配列番号8で表されるアミノ酸配列)、VLA−4結合領域及びVLA−5結合領域を含有するC−CS1(配列表の配列番号9で表されるアミノ酸配列)等のポリペプチドが例示される。これらの各種ポリペプチドは非特許文献2に記載されており、その開示に従って作製することができる。CH−296は、レトロネクチン(Retronectin:登録商標)の名称でタカラバイオ社より販売されている。 なお、本発明に使用されるフラグメントとしては、フィブロネクチンフラグメントによる所望の効果が得られる限り、上記に例示した天然のフィブロネクチンのアミノ酸配列の少なくとも一部を含むフラグメントと同等な機能を有する、当該フラグメントを構成するポリペプチドのアミノ酸配列に1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるものであってもよい。また、例えば、C−274やH−271において1又は2のIII型繰り返し配列を欠失させたものであってもよい。 細胞接着活性は、本発明で使用されるフラグメント(その細胞結合ドメイン)と細胞との結合を公知の方法でアッセイして調べることができる。例えば、このような方法には、ウイリアムズ D.A.らの方法〔Nature、第352巻、第438〜441頁(1991)〕が含まれる。当該方法は、培養プレートに固定化したフラグメントに対する細胞の結合を測定する方法である。また、ヘパリン結合活性は、本発明に使用されるフラグメント(そのヘパリン結合ドメイン)とヘパリンとの結合を公知の方法を使用してアッセイすることにより調べることができる。例えば、上記のウイリアムズ D.A.らの方法において、細胞の代わりにヘパリン(例えば、標識ヘパリン)を使用することにより、同様の方法でフラグメントとヘパリンとの結合の評価を行うことができる。 組換えフィブロネクチンフラグメントの本発明への使用は、入手、取り扱いの容易さ以外に、その品質の均一性、ウイルス等の混入の危険性が低いという安全面からも好ましい。本発明に使用されるフィブロネクチンフラグメントの分子量には特に限定はないが、好適には1〜200kDa、より好適には5〜190kDa、さらに好適には10〜180kDaである。当該分子量は、例えば、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定することができる。 本発明のCIK細胞の製造方法において使用される培地は、(a)〜(c)のどの工程についても特に限定はなく、リンパ球の拡大培養等に使用しうる公知の培地を使用することができ、例えば、市販の培地を適宜選択して使用することができる。これらの培地はその本来の構成成分以外にサイトカイン類、適当なタンパク質、又はその他の成分を含んでいてもよい。通常、IFN−γ及びIL−2からなる群より選択された少なくとも1種を含有する培地が本発明に使用される。IFN−γの培地中の濃度には特に限定はないが、50〜10000U/mL、より好適には100〜5000U/mLである。IL−2の培地中の濃度にも限定はないが、10〜5000U/mL、好適には50〜2000U/mLである。さらに、IL−1α、IL−7、IL−12等のサイトカイン類を培地に添加してもよい。当該成分の培地中の濃度は、所望の効果が得られれば特に限定されるものではない。 これらの成分は、前記の工程(a)〜(c)のいずれの工程においても使用することができ、本発明を特に限定するものではないが、例えばIFN−γは前記の工程(a)において好適に使用され、IL−2は前記の工程(a)〜(c)の全ての工程において好適に使用される。 また、培地には血清又は血漿を添加してもよい。これらの培地中への添加量は特に限定はないが、0容量%超〜20容量%が例示され、また培養段階に応じて使用する血清又は血漿の量を変更することができる。例えば、血清又は血漿濃度を段階的に減らして使用することもできる。なお、血清又は血漿の由来としては、自己(培養する細胞と由来が同じであることを意味する)もしくは非自己(培養する細胞と由来が異なることを意味する)のいずれでも良いが、安全性の観点から自己由来のものが好適である。また、ヒト血清アルブミンのような、単離された血清成分を添加してもよい。 また、培地には増殖能を奪う処理が施された細胞を添加してもよい。本明細書において「増殖能を奪う処理」とは、細胞の増殖能を喪失させるか、もしくは低下させる処理であれば特に限定はなく、例えば、化学的処理及び/又は物理的処理により実施することができる。前記の化学的処理としては、例えば、化学薬剤(ホルマリン等)、抗癌剤(有糸分裂インヒビター、例えば、マイトマイシンC等)、加熱・加温、凍結融解又は超音波による処理が例示される。また、前記の物理的処理として、例えば、放射線の照射により前記の処理を実施する場合、例えば、γ線やX線が使用される。放射線の照射は照射された細胞の増殖能が失われる量であれば特に限定はないが、例えば、100〜20000R(0.88〜175.40Gy)、好ましくは1000〜8000R(8.77〜70.16Gy)である。本発明の製造方法における培地に増殖能を奪う処理が施された細胞を添加することにより、得られるCIK細胞の数を増大させることができる。また、肺がん細胞株等に対して高い細胞傷害活性を示す細胞集団を得ることができる。 増殖能を奪う処理が施された細胞は、細胞分裂又はDNA合成といった増殖に関わる能力を失った、あるいは当該能力が低下した細胞である。例えば、放射線処理を行った細胞は、増殖能が低下しているが、処理直後は生細胞と同様の形態及び形質を示し、サイトカイン等のタンパク質を分泌する代謝能を維持している。「増殖能を奪う処理が施された細胞」は患者自身に由来するものであることが望ましい。本発明に使用される「増殖能を奪う処理が施された細胞」としては、本発明を特に限定するものではないが、放射線の照射によって増殖能を奪う処理を施した、患者自身に由来する細胞(Autologous−Irradiated cell;AIC)が好適に例示される。 本発明の方法において使用する「増殖能を奪う処理が施された細胞」の細胞濃度としては、特に限定はないが、例えば、1〜1×108cells/mL、好適には10〜5×107cells/mL、さらに好適には1×102〜2×107cells/mLが例示される。 また、本発明のCIK細胞の製造方法において使用される培地には、生物応答修飾剤が含まれていてもよい。「生物応答修飾剤」とは、Biological response modifier(BRM)とも呼ばれる、生体において非特異的な免疫応答能を向上させる一群の物質を意味する。 生物応答修飾剤としては、細菌由来製剤[OK−432、BCG(Bacillus Calmette Guerin)、Streptcoccus pyogenes、Corynebacterium parvum及びこれらの細胞壁骨格]、担子菌由来多糖(レンチナン、シゾフィラン、PSK等)、合成物質(ピランコポリマー、レバミゾール等)、又はサイトカイン類が知られている。「OK−432」とは、A群3型溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の弱毒性自然変異株(Su株)をペニシリンで処理した細菌由来製剤の一般名を意味する。本製剤は、ピシバニール(登録商標)の商品名で市販されている。好適な態様において、本発明には微生物由来製剤である生物応答修飾剤が使用され、特に好適にはOK−432が使用される。 培地中の生物応答修飾剤の濃度としては、特に本発明を限定するものではないが、例えば、OK−432を使用する場合、0.001〜1KE/mL、好ましくは0.005〜0.5KE/mL、さらに好ましくは0.01〜0.2KE/mLが例示される。通常、生物応答修飾剤は、培養開始時に培地に添加され得る。 本発明のCIK細胞の製造方法において、当該細胞集団に外来遺伝子を導入する工程をさらに包含することができる。なお、「外来遺伝子」とは、遺伝子導入対象のCIK細胞に人為的に導入される遺伝子のことを意味し、遺伝子導入対象の細胞と同種由来のものも包含される。 外来遺伝子の導入手段には特に限定はなく、公知の遺伝子導入方法により適切なものを選択して使用することができる。遺伝子導入の工程は、本発明の製造方法における任意の時点で実施することができる。例えば、前記細胞集団の製造と同時もしくは途中で、あるいは該工程の後に実施するのが、作業効率の観点から好適である。遺伝子導入はウイルスベクターを用いて、又はウイルスベクターを用いずに実施することができる。それらの方法の詳細についてはすでに多くの文献が公表されている。 前記ウイルスベクターには特に限定はなく、通常、遺伝子導入方法に使用される公知のウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等が使用される。導入される細胞の染色体DNA中にベクターに含まれる外来遺伝子を安定に組み込むことができるレトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターが特に好適である。上記ウイルスベクターとしては、感染した細胞中で自己複製できないように複製能を欠損させたものが好適である。また、遺伝子導入の際にレトロネクチン(登録商標)などの遺伝子導入効率を向上させる物質を用いることもできる。 ウイルスベクターを使用しない遺伝子導入方法として、リポソーム、リガンド−ポリリジンなどの担体を使用する方法、あるいはリン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などを使用することができる。この場合にはプラスミドDNA、直鎖状DNA又はRNAに組み込まれた外来遺伝子が導入される。 導入される外来遺伝子には特に限定はなく、前記細胞に導入することが望まれる任意の遺伝子(例えば、酵素、サイトカイン類、レセプター類等のタンパク質をコードするものの以外に、アンチセンス核酸、siRNA(small interfering RNA)、リボザイム等をコードするものが使用できる。これら外来遺伝子は、例えば、適当なプロモーターの制御下で発現されるようにベクター又はプラスミド等に挿入して使用することができる。また、エンハンサー配列又はターミネーター配列のような制御配列がベクター内に存在していてもよい。 本発明の方法によれば、癌等の患者の治療に使用される薬剤に対する耐性に関連する酵素をコードする遺伝子(例えば、多剤耐性遺伝子)を導入してCIK細胞に薬剤耐性を付与することができる。そのような細胞集団を用いれば、免疫療法と薬剤療法とを組み合わせることができ、従って、より高い治療効果を得ることが可能となる。一方、前記の態様とは逆に、特定の薬剤に対する感受性を付与するような遺伝子(例えば、チミジンキナーゼ遺伝子)を導入して、CIK細胞に該薬剤に対する感受性を付与することもできる。かかる場合、生体に移植した後の細胞を当該薬剤の投与によって除去することが可能となる。 また、導入される外来遺伝子としては、上記の以外に、例えば、腫瘍抗原特異的なT細胞レセプター(T cell receptor;TCR)をコードする核酸、あるいは腫瘍細胞上に発現する分子に特異的な抗体(抗CD19抗体等)、レセプター分子(TCR等)、リガンド、又はこれらの一部分を含む細胞外領域、膜貫通ドメイン、及び細胞内にシグナルを伝達する他の1種以上のシグナル関連分子の細胞内領域により構成されたキメラレセプターをコードする核酸も利用できる。当該キメラレセプターに関する有用な情報は、例えば、マルク−マリナ V.ら〔Expert Opin. Biol. Ther.、第9巻、第5号、579〜591(2009)〕より得られる。CIK細胞に上記のTCRやキメラレセプターをコードする核酸を導入することにより、目的の腫瘍細胞に対して特異的な細胞傷害活性を、CIK細胞に付与することができる。前記キメラレセプターの細胞外領域としては、例えば、抗体もしくはレセプター分子の細胞外領域、又は抗体の抗原認識部位もしくはレセプター分子のリガンド認識部位と、他の抗体もしくはレセプター分子(CD28等)由来のスペーサー/ヒンジ部位とが融合してなる細胞外領域が例示される。また、前記キメラレセプターの細胞内領域としては、例えば、リンパ球上に存在するシグナル関連分子の細胞内領域が例示される。当該シグナル関連分子の細胞内領域としては、例えば、CD3ζ鎖、CD28、4−1BB、CD134、FcR−γ、Syk−PTKの細胞内領域、又はこれらのシグナル伝達ドメインが例示される。 本発明の製造方法は、前記の方法で得られた細胞集団より、さらに、CD3陽性かつCD56陽性の細胞集団を分離する工程を包含してもよい。分離は、例えば、抗CD3抗体又は抗CD56抗体を用いて、セルソーター、磁気ビーズ、アフィニティーカラム等による公知の手法で行うことができる。こうして分離された細胞集団は高い細胞傷害活性を有する細胞が富化されたものであり、より高い治療効果を発揮することが期待される。(2)本発明のCIK細胞 本発明は、上記の本発明のCIK細胞の製造方法で得ることができるCIK細胞を提供する。本発明のCIK細胞は、従来の方法で製造されたCIK細胞に比べてCD3陽性CD56陽性細胞を高比率に含んでいることから、生体内でより強力な細胞傷害活性を発揮することで、高い治療効果を奏する。 本発明のCIK細胞中のCD3陽性CD56陽性細胞の比率としては、特に本発明を限定するものではないが、例えば、全細胞数の20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上が例示される。(3)本発明の医薬 本発明は、CIK細胞を有効成分として含有する医薬(治療剤又は予防剤)を提供する。当該CIK細胞を含有する前記治療剤は、免疫療法への使用に適している。免疫療法においては、患者の治療に適したCIK細胞が、例えば、注射又は点滴による投与方法によって、経静脈、経動脈、皮下、腹腔内等の経路で患者に投与される。本発明の治療剤は、本発明を特に限定するものではないが、例えば、癌、白血病、悪性腫瘍、肝炎、感染性疾患(例えば、インフルエンザ、結核、AIDS、MRSA感染症、VRE感染症もしくは深在性真菌症)等のCIK細胞に感受性を有する疾患の治療において非常に有用である。また、当該治療剤は、骨髄移植、放射線照射後等の免疫不全状態での感染症予防又は再発白血病の寛解を目的としたドナーリンパ球輸注、抗がん剤治療、放射線治療、抗体療法、温熱療法、他の免疫療法等の従来の治療法と組み合わせて利用できる。 本発明の治療剤及び予防剤は製薬分野で公知の方法に従い、例えば、本発明の方法により製造された細胞集団を有効成分として、公知の非経口投与に適した有機又は無機の担体、賦形剤、安定剤等と混合し、点滴剤又は注射剤として調製できる。なお、治療剤における本発明のCIK細胞の含有量、治療剤の投与量、及び当該治療剤に関する諸条件は、公知の免疫療法に従って適宜決定できる。医薬における本発明のCIK細胞の含有量としては、特に限定はないが、例えば、好適には1×103〜1×1011cells/mL、より好適には1×104〜1×1010cells/mL、さらに好適には1×105〜2×109cells/mLが例示される。また、本発明の医薬の投与量としては、特に限定はないが、例えば、成人一日あたり、好適には1×106〜1×1012cells/日、より好ましくは、1×107〜5×1011cells/日、さらに好ましくは1×108〜2×1011cells/日が例示される。さらに、当該治療剤による免疫療法と、公知の薬剤投与による薬剤治療、放射線治療、又は外科的手術による治療とを併用することもできる。(4)本発明の治療方法又は予防方法 本発明はまた、対象に、有効量の前述の方法により得ることができるCIK細胞を投与することを含む、疾患の治療方法又は予防方法を提供する。本明細書中において対象とは、例えば前述のような疾患に罹患した患者を示す。 本明細書中において有効量とは、前記CIK細胞を投与した場合に治療もしくは予防効果を発揮しうる当該細胞集団の量である。具体的な有効量は、投与形態、投与方法、使用目的、又は対象の年齢、体重、症状等によって適宜設定され一定ではない。投与方法にも限定はなく、例えば、上記の医薬と同様に、点滴、注射等により投与すればよい。 また、本発明により、医薬の製造のための本発明により得ることができるCIK細胞の使用も提供される。さらに、本発明により、疾患の治療に用いるための、本発明により得ることができるCIK細胞も提供される。当該医薬の製造方法は、前述の医薬と同様に行われる。また、当該医薬の投与される疾患についても、特に限定はないが、前述の医薬と同様である。 以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。実施例1 抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチンを用いたCIK細胞培養(1)PBMCの分離及び保存 インフォームド・コンセントの得られたヒト健常人ドナーA、ドナーB及びドナーCより、それぞれ成分採血を実施した(ここでいう成分採血とは、単核球採取を目的とした採血である)。得られた成分採血液をダルベッコPBS(インビトロジェン社製又は日水製薬社製;以下、DPBSと記載する)又は1%ヒト血清アルブミン(製剤名 ブミネート:バクスター社製、以下、HSAと記載する)を含む生理食塩水(以下、1%HSA/生理食塩水と記載する)で約2倍希釈した後、Ficoll−Paque PREMIUM又はFicoll−Paque PLUS(いずれもGEヘルスケア バイオサイエンス社製)15mLの上に希釈した成分採血液を30mLずつそれぞれ重層して、700×g、室温で20分間遠心した。遠心後、分離した層のうち、PBMC層をピペットで回収し、RPMI1640(インビトロジェン社製、シグマ社製又は和光純薬社製)又は1%HSA/生理食塩水を用いて45mLにフィルアップした後、650×g、4℃にて10分間遠心し、上清を除去した。同様の洗浄操作を、600×g、500×gと段階的に遠心加速度を落としながら計3回行った。 こうして各ドナーから採取したPBMCは、8%HSAを含むCP−1(極東製薬社製)とRPMI1640の等量混合液からなる保存液に懸濁し、液体窒素中にて保存した。これら保存PBMCを37℃水浴中にて急速解凍し、10μg/mL DNase(カルビオケム社製)を含むGT−T503(タカラバイオ社製)で洗浄後、トリパンブルー染色法にて生細胞数を算出した後に、以下の各実験に供した。(2)抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化プレートの作成 12穴細胞培養プレート(コーニング社製)に終濃度5μg/mL又は1μg/mLの抗ヒトCD3抗体(製剤名:オルソクローンOKT3注、ヤンセンファーマ社製)、及び終濃度5μg/mLのレトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)を含むACD−A液(テルモ社製)を0.45mL/ウェルずつ添加した。次に、5%CO2存在下37℃で5時間インキュベートした後、各ウェルよりACD−A液を除去することにより、抗CD3抗体及びレトロネクチンが固定化された細胞培養プレートを得た。また、終濃度5μg/mL又は1μg/mLの抗ヒトCD3抗体を含み、レトロネクチンを含まないACD−A液を用いる以外は上記と同様の操作を行うことにより、抗CD3抗体が固定化された細胞培養プレート(レトロネクチンが固定化されていないプレート)も作製した。なお、ここで作製した各プレートは、DPBSで2回、及びRPMI1640で1回洗浄した後に以下の各実験に使用した。(3)CIK細胞の培養 0.5%HumanAB型血清(Lonza社製)及び0.2%HSAを含むGT−T503(以下、0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503と記載する)に0.53×106cells/mLとなるように実施例1−(1)で調製したドナーA由来のPBMCを懸濁した。実施例1−(2)で作成した各種固定化培養プレートに、上記PBMC懸濁液を1mL/ウェルずつ添加し、さらに0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を0.75mL/ウェルずつ添加して、計1.75mL/ウェルとした。次に、各ウェルにIL−2(製剤名 プロロイキン:カイロン社製又はノバルティス社製)及びIFN−γ(製剤名 イムノマックス―γ注:塩野義製薬社製)をそれぞれ終濃度1000U/mLとなるように添加し、これらのプレートを5%CO2存在下37℃で培養を開始した(培養0日目)。培養4日目に、各ウェルの細胞液の一部を0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を用いて12.5倍希釈し、希釈液10mLをT−25細胞培養フラスコ(培養面積10cm2、コーニング社製)を立てたものに注ぎ、ここに終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した後、このフラスコにて培養を継続した。培養8日目に、各フラスコ内の細胞液の一部を0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を用いて4倍希釈し、希釈液10mLを新たなT−25細胞培養フラスコ(立てたもの)に注ぎ、ここに終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加し、さらに終濃度50ng/mLとなるように遊離の抗ヒトCD3抗体を添加した(抗ヒトCD3抗体再刺激群)。この際、対照群として抗ヒトCD3抗体を添加しない群を設定した。抗ヒトCD3抗体再刺激群及び対照群について培養を継続し、培養11日目に、各群の各フラスコ内の細胞液の一部を0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を用いて4倍希釈し、希釈液10mLを新たなT−25細胞培養フラスコ(立てたもの)に注ぎ、ここに終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した後、このフラスコにて培養を継続した。 培養開始14日目まで培養を継続し、14日目にトリパンブルー染色法にて生細胞数を計測し、培養開始時の細胞数と比較して拡大培養率(総細胞数換算)を算出した。結果を表1に示す。なお、以下の表中、−は無使用、+は使用を意味する。(4)CD3陽性CD56陽性(CD3+CD56+)細胞及びCD8陽性(CD8+)細胞含有比率の解析 実施例1−(3)で調製した培養開始後14日目の細胞について、CD3+CD56+細胞含有比率及びCD8+細胞含有比率をフローサイトメーター(Cytomics FC500:ベックマンコールター社製)で解析した。すなわち、培養開始後14日目の細胞をDPBSで洗浄した後、細胞を1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製、以下、BSAと記載する)を含むDPBS(以下、1%BSA/DPBSと記載する)中に懸濁し、PC5標識マウス抗ヒトCD3抗体、FITC標識マウス抗ヒトCD8及びRD1標識マウス抗ヒトCD56抗体(全てベックマンコールター社製)を添加した。同様に各細胞集団の一部には、ネガティブコントロールとしてFITC標識マウスIgG1/RD1標識マウスIgG1/PC5標識マウスIgG1(全てベックマンコールター社製)を添加した。各々の抗体を添加後、4℃で30分インキュベートした。インキュベート後、細胞を0.1%BSAを含むDPBS(以下、0.1%BSA/DPBSと記載する)で洗浄し、再度DPBSに懸濁した。これらの細胞をフローサイトメトリーに供し、CD3+CD56+細胞含有比率及びCD8+細胞含有比率を算出した。結果を表2に示す。 表2に示されるように、抗ヒトCD3抗体を用いた再刺激によってCD3+CD56+細胞が高い比率で得られた。また、CIK細胞の活性本体と言われるCD8+細胞が高い比率で得られた。また、抗ヒトCD3抗体とレトロネクチンとを組み合わせて細胞集団に初期刺激を与えることによって、これらの効果はさらに高まった。さらに、それらの効果は初期刺激として使用する抗ヒトCD3抗体の固定化濃度に依らず、著効を発揮した。表1に示されるように、高い拡大培養率でありながら、非常に高い比率でCD3+CD56+細胞を含むCIK細胞が得られた。 このことから本発明の製造方法は、CIK細胞の抗腫瘍活性に大きな役割を果たすCD3+CD56+CD8+細胞が効率よく得られる方法であることが示された。また、CD3+CD56+細胞の含有率が高いCIK細胞を大量に培養できることから、高い治療効果を発揮する細胞集団の製造方法であることが明らかとなった。(5)CD3+CD56+細胞の拡大培養率の評価 実施例1−(1)で調製したドナーA由来のPBMC、及び実施例1−(3)で調製した培養開始後14日目の細胞それぞれについて、実施例1−(4)と同様の方法でCD3+CD56+細胞含有比率を測定した。ただし、PBMCにおいては赤血球の混入を考慮し、FITC標識マウス抗ヒトCD3抗体、RD1標識マウス抗ヒトCD56抗体及びPC5標識マウス抗ヒトCD45抗体(全てベックマンコールター社製)を使用し、CD45陽性CD3+CD56+細胞を培養開始時のCD3+CD56+細胞と定義した。 こうして算出されたCD3+CD56+細胞含有比率と実施例1−(3)で算出された拡大培養率(総細胞数換算)とを用いて、培養期間中(14日間)にCD3+CD56+細胞が増殖した倍率すなわちCD3+CD56+細胞拡大培養比率を算出〔下記の式(1)〕した。なお、今回解凍して使用したPBMCにおけるCD3+CD56+細胞の含有比率(培養開始時のCD3+CD56+細胞含有比率)は1.54%であった。結果を表3に示す。 表3に示されるように、抗ヒトCD3抗体とレトロネクチンを組み合わせて細胞集団に初期刺激を与えること、さらには培養途中に抗ヒトCD3抗体を用いて再刺激することによって、培養14日間でのCD3+CD56+細胞の増殖性が格段に上昇した。また、それらの効果は初期刺激として使用する抗ヒトCD3抗体の固定化濃度に依らず、広い濃度範囲で効果を発揮した。 これらのことから、本発明の製造方法によれば、CIK細胞の活性成分と考えられているCD3+CD56+細胞を優位に増殖させることができ、CIK細胞の抗腫瘍活性に大きな役割を果たすCD3+CD56+細胞が効率よく得られることが明らかとなった。実施例2 抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチンを用いたCIK細胞培養(IFN−γ添加及びAutologous−irradiated cell使用の比較)(1)Autologous−irradiated cell(以下、AICと記載する)の調製 実施例1−(1)で調製したドナーA由来のPBMCを0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503に懸濁後、X線照射装置を使用し3400R(29.8Gy)のX線を照射した(以下、このX線照射後の細胞をPBMC AICと記載する)。この調製したPBMC AICを1.06×106cells/mLとなるように再度0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503に懸濁した。(2)CIK細胞の培養 0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503に1.06×106cells/mLとなるように実施例1−(1)で調製したドナーA由来のPBMCを懸濁した(IFN−γ前日無処理群と記載)。ただし、培養開始前日に同様に調製したPBMCを一晩IFN-γ(終濃度1000U/mL)存在下で培養した後、培養開始時に上記細胞濃度になるように懸濁した群も設定した(以下、IFN−γ前日処理群と記載する)。 実施例1−(2)と同様の方法で作成した抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチンの固定化プレート(ただし、抗ヒトCD3抗体固定化濃度は0.1μg/mLとした。)に、上記PBMC(IFN−γ前日無処理群)又はPBMC(IFN−γ前日処理群)を0.875mL/ウェルずつ添加し、さらにAICを使用する群には実施例2−(2)で調製したPBMC AICを0.875mL/ウェルを添加して、計1.75mL/ウェルとした。AICを使用しない群に対しては、AICの代わりに0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を0.875mL/ウェルずつ添加した。各ウェルにIL−2及びIFN−γをそれぞれ終濃度1000U/mLとなるように添加し、これらのプレートを5%CO2存在下37℃で培養を開始した(培養0日目)。培養方法は、実施例1−(3)と同様の方法により行い、培養4日目、8日目及び11日目の希釈、ならびに抗ヒトCD3抗体再刺激群、及び抗ヒトCD3抗体を添加しない群の設定等についても実施例1−(3)と同様に実施した。14日目まで培養を継続し、培養開始後11日目及び14日目にトリパンブルー染色法にて生細胞数を計測し、培養開始時の細胞数と比較して拡大培養率(総細胞数換算)を算出した。結果を表4に示す。(3)CD3+CD56+細胞及びCD8+細胞含有比率の解析 実施例1−(4)と同様の方法で、実施例2−(2)で調製した培養開始後14日目の細胞についてCD3+CD56+細胞含有比率及びCD8+細胞含有比率を解析した。結果を表5に示す。 表5に示されるように、抗ヒトCD3抗体とレトロネクチンを組み合わせて細胞集団に初期刺激を与えること、さらには培養途中に抗ヒトCD3抗体を用いて再刺激することによって、CD3+CD56+細胞が高い比率で得られた。また、これらの効果はPBMCに対するIFN−γ処理方法の違い又はAIC使用の有無に依らず、広く発揮された。このことから、本発明の製造方法は、既存のCIK細胞培養方法に広く適応可能であり、CIK細胞における重要構成成分であるCD3+CD56+細胞が効率よく得られる方法であることが明らかとなった。(4)CD3+CD56+細胞の拡大培養率の評価 実施例1−(1)で調製したドナーA由来のPBMC及び細胞実施例2−(2)で調製した培養開始後14日目の細胞それぞれについて、実施例1−(4)と同様の方法でCD3+CD56+細胞含有比率を測定した。 算出されたCD3+CD56+細胞含有比率と実施例2−(2)で算出された拡大培養率(総細胞数換算)を用いて培養期間中(14日間)にCD3+CD56+細胞が増殖した倍率(すなわち、CD3+CD56+細胞拡大培養率)を、実施例1−(5)と同様に算出した。なお、培養開始時におけるCD3+CD56+細胞の含有比率は0.6%であった。結果を表6に示す。 表6に示されるように、抗ヒトCD3抗体とレトロネクチンを組み合わせて細胞集団に初期刺激を与えること、さらには培養途中に抗ヒトCD3抗体を用いて再刺激することによって、CD3+CD56+細胞の増殖性が格段に上昇し、培養14日間でのCD3+CD56+細胞拡大培養率が格段に上昇した。加えて、AICを組み合わせることで、その拡大培養率はさらに上昇した。また、これらの効果はPBMCに対するIFN−γ処理方法の違いに依らず発揮された。 このことから、本発明の製造方法は、CIK細胞における重要構成成分であるCD3+CD56+細胞を効率よく得られる方法であることが明らかとなった。実施例3 抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチンを用いたCIK細胞培養(再刺激時の抗ヒトCD3抗体濃度の比較)(1)PBMC AICの調製 PBMC AICを、ドナーA由来のPBMCの代わりにドナーB由来のPBMC又はドナーC由来のPBMCを用いる以外は、実施例2−(1)と同様の方法で調製した。(2)CIK細胞の培養 実施例2−(2)と同様の方法でCIK細胞を培養した。ただし、PBMCとしては、ドナーB由来のPBMC又はドナーC由来のPBMC(実施例3−(1)で使用したドナーと同じドナー由来PBMCを使用)を用い、IFN−γ前日処理は行わなかった。また、培養開始8日目の抗ヒトCD3抗体による再刺激の際の抗ヒトCD3抗体の濃度を50ng/mL又は200ng/mLとした。 培養開始14日目まで培養を継続し、培養開始後14日目にトリパンブルー染色法にて生細胞数を計測し、培養開始時の細胞数と比較して拡大培養率(総細胞数換算)を算出した。結果を表7に示す。(3)CD3+CD56+細胞及びCD8+細胞含有比率の解析 実施例1−(4)と同様の方法で、実施例3−(2)で調製した培養開始後14日目の細胞についてCD3+CD56+細胞含有比率を解析した。結果を表8に示す。 表8に示されるように、抗ヒトCD3抗体とレトロネクチンとを組み合わせて細胞集団に初期刺激を与えること、さらには培養途中に抗ヒトCD3抗体を用いて再度刺激することによって、CD3+CD56+細胞が高い比率で得られた。また、これらの効果はドナー又は再刺激時の抗ヒトCD3抗体濃度に依らず発揮された。 このことから、本発明の製造方法は、CIK細胞における重要構成成分であるCD3+CD56+細胞が効率よく得られる方法であることが明らかとなった。(4)CD3+CD56+細胞の拡大培養率の評価 実施例1−(1)で調製したドナーB由来のPBMC、ドナーC由来のPBMC及び細胞実施例3−(2)で調製した培養開始後14日目の細胞それぞれについて、実施例1−(4)と同様の方法でCD3+CD56+細胞含有比率を測定した。 算出されたCD3+CD56+細胞含有比率と実施例3−(2)で算出された拡大培養率(総細胞数換算)とを用いて、培養期間中(14日間)にCD3+CD56+細胞が増殖した倍率(すなわち、CD3+CD56+細胞拡大培養率)を実施例1−(5)と同様に算出した。なお、培養開始時におけるCD3+CD56+細胞の含有比率は両ドナーとも1.62%であった。結果を表9に示す。 表9に示されるように、抗ヒトCD3抗体とレトロネクチンを組み合わせて細胞集団に初期刺激を与えること、さらには培養途中に抗ヒトCD3抗体を用いて再度刺激することによって、培養14日間でのCD3+CD56+細胞の増殖性が格段に上昇した。また、これらの効果はドナーや再刺激時の抗ヒトCD3抗体濃度によらず発揮された。 このことから本発明の製造方法は、CIK細胞における重要構成成分であるCD3+CD56+細胞を効率よく得られる方法であることが明らかとなった。実施例4 ガス透過性培養バッグを用いたCIK細胞培養(1)抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化CultiLife 215の作製 培養面積を86cm2になるようにシールしたガス透過性培養バッグCultiLife(登録商標) 215(タカラバイオ社製)に終濃度0.1または0.3μg/mLの抗ヒトCD3抗体、及び終濃度5μg/mLのレトロネクチン(登録商標)を含むACD−A液を10.4mL添加し、5%CO2存在下、37℃で5時間インキュベートした。なお、こうして作製した抗CD3抗体/レトロネクチン固定化CultiLife 215は、使用直前に1%HSA/生理食塩水で3回洗浄した。(2)CIK細胞集団の拡大培養 実施例4−(1)で作製した抗CD3抗体/レトロネクチン固定化CultiLife 215に、実施例1−(1)で調製したPBMCを1.2×107cellsずつ添加し、終濃度1000U/mLとなるようにIL−2を、終濃度1000U/mLとなるようにIFN−γをそれぞれ添加し、0.5%自己血漿(PBMCドナー由来の非働化処理済み血漿)及び0.2%HSAを含むGT−T503(以下、0.5%血漿/0.2%HSA/GT−T503と記載する)を用いて最終的に総液量を40mLとした。細胞液を添加した培養バッグを5%CO2存在下、37℃で培養を開始した(培養0日目)。培養開始4日目には、培養面積を300cm2になるようにシールしたガス透過性培養バッグCultiLife(登録商標) Eva(タカラバイオ社製)に細胞液23.4mLを移し、終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した後、0.5%血漿/0.2%HSA/GT−T503を用いて最終的に総液量を300mLとした。8日目には、CultiLife(登録商標) Eva内の細胞液75mLを、新たに培養面積を300cm2になるようにシールしたガス透過性培養バッグCultiLife(登録商標) Evaに移し替え、0.5%血漿/0.2%HSA/GT−T503を用いて4倍希釈し総液量を300mLとした後、終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した。さらに終濃度50ng/mLとなるように抗ヒトCD3抗体を添加することで再刺激を行った。11日目には、0.5%血漿/0.2%HSA/GT−T503を用いて2倍希釈し総液量を600mLとした後、終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した。培養は15日目まで継続した。培養開始後15日目にサンプリングした細胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞数を計測し、培養開始時の細胞数と比較して拡大培養率を算出した。また、実施例1−(4)と同様の方法で、CD3+CD56+細胞含有比率を測定した。結果を表10に示す。 表10に示されるように、ガス透過性培養バッグを用いて本発明の製造方法を実施しても、CD3+CD56+細胞を高い比率で含有する細胞集団が高い拡大培養率で得られた。また、これらの効果は、初期刺激時の抗ヒトCD3抗体濃度に依らず発揮された。実施例5 OK−432を用いたCIK細胞培養(AIC有無の比較)(1)抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化プレートの作成 実施例1−(2)と同様の方法で抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化プレートを作製した。ただし、抗ヒトCD3抗体は終濃度0.1μg/mLとなるようにした。(2)CIK細胞集団の拡大培養 実施例5−(1)で作成した抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化プレートを用いて、実施例2−(2)と同様の方法で培養を行った。ただし、IFN−γ前日処理群は設定せず、すべての群に終濃度0.05KE/mLとなるようにOK−432(製剤名 ピシバニール:中外製薬社製)を添加した。また、AIC添加の影響についても検討した。培養は15日目まで継続した。培養開始後15日目にサンプリングした細胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞数を計測し、培養開始時の細胞数と比較して拡大培養率を算出した。また、実施例1−(4)と同様の方法で、CD3+CD56+細胞含有比率を測定した。結果を表11に示す。 表11に示されるように、OK−432を添加した場合においても、CD3+CD56+細胞を高い比率で含む細胞集団が高い拡大培養比率で得られた。また、AICを添加することで拡大培養率が大幅に増加した。(3)細胞傷害活性の測定 実施例5−(2)で調製した培養開始後15日目の細胞について、細胞傷害活性を測定した。細胞傷害活性は、Calcein−AMを用いた細胞傷害活性測定法〔リヒテンフェルズ R.ら(Lichtenfels R.et al.)、J. Immunol. Methods、第172巻、第2号、第227〜239頁(1994)〕にて評価した。すなわち、慢性骨髄性白血病細胞株K562細胞及び肺がん細胞株A549細胞をそれぞれ(1〜2)×106cells/mLとなるように5%ウシ胎児血清(HyClone社製)を含むRPMI1640に懸濁した後で、終濃度25μMとなるようにCalcein−AM(同仁化学研究所社製)を添加し、37℃で1時間培養した。こうして得られた細胞をCalcein−AMを含まない培地にて洗浄したものを、Calcein標識標的細胞とした。 実施例5−(2)で調製した培養開始後15日目の細胞をエフェクター細胞として3×106cells/mL、1×105cells/mLとなるように5%HumanAB型血清、0.1mM NEAA mixture、1mM Sodium pyruvate、2mM L−グルタミン(全てLonza社製)、及び1% ペニシリン−ストレプトマイシン(ギブコBRL社製)又は100μg/mL 硫酸ストレプトマイシン(明治製菓社製)を含むRPMI1640で希釈後、96穴細胞培養プレート(コーニング社製)の各ウェルに100μL/ウェルずつ分注した。続いて、1×105cells/mLとなるように調製したCalcein標識標的細胞を、各ウェルに100μLずつ添加した。この際、Calcein標識標的細胞(T)に対するエフェクター細胞(E)の比、すなわちE/T比は、30及び10の2とおりとした。上記細胞懸濁液の入ったプレートを400×gで1分間遠心後、37℃、5%CO2存在下で4時間インキュベートした。その後、各ウェルから培養上清100μLを採取し、蛍光プレートリーダー(Mithras LB 940:ベルトールド社製)(励起485nm/測定535nm)によって培養上清中に放出されたCalcein量を測定した。「細胞傷害活性(%)」は以下の式(2)に従って算出した。 上記式において、最小放出量はCalcein標識標的細胞のみを含有するウェルのCalcein放出量であり、Calcein標識標的細胞からのCalcein自然放出量を示す。また、最大放出量はCalcein標識標的細胞に0.1%界面活性剤Triton X−100(ナカライテスク社製)を加えて細胞を完全破壊した際のCalcein放出量を示している。細胞傷害活性測定の結果を表12に示す。 表12に示されるように、本発明の製造方法により得られた細胞集団は、高い細胞傷害活性を発揮した。また、AICを添加することで、肺がん細胞株に対して高い細胞傷害活性を示す細胞集団が得られることが明らかになった。実施例6 CIK細胞への遺伝子導入(1)抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化プレートの作成 実施例1−(2)と同様の方法で抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチン固定化プレートを作製した。ただし、抗ヒトCD3抗体は終濃度0.3μg/mLとなるようにした。(2)AcGFP発現レトロウイルスベクタープラスミドの構築 AcGFP発現ベクターMT−AcGFPを以下のように調製した。pIRES2−AcGFP1(Clontech社製)を鋳型とし、配列表の配列番号10に記載の核酸配列からなるAcGFP5プライマー及び配列表の配列番号11に記載の核酸配列からなるAcGFP3プライマーを用いてPCRを行い、増幅断片をpMTベクター[ジーン セラピー 第7巻、第797−804項(2000)に記載されるpMベクター]に挿入してMT−AcGFPプラスミドを調製した。(3)プロデューサー細胞の作製 Retrovirus Packaging Kit(タカラバイオ社製)に含まれているプラスミドpGP、pE−eco及び実施例6−(1)で調製したMT−AcGFPで形質転換された293T細胞よりエコトロピックエンベロープを持つレトロウイルスを作製した。得られたレトロウイルスをプロデューサー細胞PG13(ATCC#:CRL−10686)に3回感染させた後、限界希釈にて複数のクローンを取得した。リアルタイムPCRによる培養上清中のウイルスRNA量の測定結果と、上清と接触させた培養細胞についてフローサイトメトリーで測定したAcGFPの陽性細胞率の結果を指標に1株のクローンを選択し、これをレトロウイルスベクタープロデューサー細胞として以下の実験に用いた。(4)ウイルス溶液の調製 実施例6−(3)で作製したプロデューサー細胞の培養上清を除き、DPBSで1回洗浄した後、Trypsin/EDTAで処理して細胞を剥離し、10%牛胎児血清(インビトロジェン社製)及び50U/mLペニシリン/50mg/mLストレプトマイシン(ナカライテスク社製)含有D−MEM(シグマアルドリッチ社製)に懸濁した後、100mm dish(イワキ社製)に細胞密度が25000細胞/cm2となるように播種した。24時間培養した後で培養上清を除き、新たな培地8mLを添加した。さらに24時間の培養を行い、上清を回収して0.45μmのフィルターでろ過し、−80℃で保存した。(5)レトロネクチン固定化プレートの作成(遺伝子導入時) 12穴ノントリートメントプレート(コーニング社製)に終濃度5μg/mLの抗ヒトCD3抗体及び終濃度25μg/mLのレトロネクチン(登録商標)を含むDPBS液を0.95mL/ウェルずつ添加した。次に、5%CO2存在下37℃で5時間インキュベートした後、各ウェルよりDPBS液を除去することにより、抗CD3抗体及びレトロネクチンが固定化された細胞培養プレートを得た。なお、ここで作製したプレートは、DPBSで3回洗浄した後に以下の各実験に使用した。(6)遺伝子導入用プレートの作成(ウイルスの固定化) 実施例6−(5)で作製したプレートに実施例6−(4)で作製したウイルス液を1mL/ウェルずつ添加し、32℃、1000×gで2時間遠心した。ただし、ウイルス液を添加しないウェルも作製した。このときウイルスを含まないウイルス希釈液(5%ウシ胎児血清を含むD−MEM)を1mL/ウェルずつ添加し、同様に遠心した。遠心後はウイルス液を吸引除去し、1.5%HSAを含むDPBSを1mL/ウェルずつ添加しすることで、洗浄した。(7)CIK細胞集団への遺伝子導入および拡大培養 実施例6−(1)で作成した抗ヒトCD3抗体及びレトロネクチンの固定化プレートを用いて、実施例2−(2)と同様の方法で培養を行った。ただし、IFN−γ前日処理群は設定しなかった。さらに、培養開始4日目に遺伝子導入(以下、1回感染群と記載する)、培養開始4及び5日目に連続して遺伝子導入(以下、2回感染群と記載する)、またそれぞれの感染群に対してウイルスを感染させない非遺伝子導入群(以下、対照群と記載する)を設定した。すなわち、1回感染群では、培養開始4日目に、実施例6−(6)で作製したプレートに細胞液0.4mLを移し、0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を4.6mL添加し、12.5倍希釈した後に終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した。このプレートにて8日目まで培養を継続した。2回感染群では、培養開始4日目に実施例6−(6)で作製したプレートに細胞液1.5mLを移し、0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を1.5mL添加し、2倍希釈した後に、終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した。さらに培養開始5日目に実施例6−(6)で作製したプレートに細胞液0.8mLを移し、0.5%HAB/0.2%HSA/GT−T503を4.2mL添加し、6倍希釈した後に終濃度500U/mLとなるようにIL−2を添加した。このプレートにて8日目まで培養を継続した。対照群では、1回感染群及び2回感染群ともにウイルスを固定していないプレートを用いて、同様の操作を行った。培養は14日目まで継続した。培養開始後14日目にサンプリングした細胞についてトリパンブルー染色法にて生細胞数を計測し、培養開始時の細胞数と比較して拡大培養率を算出した。また、実施例1−(4)と同様の方法でCD3+CD56+細胞含有比率を測定した。さらに、遺伝子導入により発現したタンパク質AcGFPの発現率を、遺伝子導入効率としてフローサイトメーターで解析した。結果を表13に示す。 表13に示されるように、CIK細胞拡大培養時に遺伝子導入を実施しても、高いCD3+CD56+細胞比率を保ったまま目的とする遺伝子を発現するCIK細胞が得られた。また、感染回数が多いほど高い遺伝子導入効率が得られることが明らかとなった。 本発明により、養子免疫療法に好適な亜細胞集団といわれているCD3陽性CD56陽性細胞を高い割合で含有するCIK細胞を大量に提供することが可能になる。本発明によって得ることができる細胞集団は、養子免疫療法において有用である。SEQ ID NO:1 ; Partial region of fibronectin named CS-1.SEQ ID NO:2 ; Partial region of fibronectin named III-10.SEQ ID NO:3 ; Partial region of fibronectin in III-10.SEQ ID NO:4 ; Fibronectin fragment named C-274.SEQ ID NO:5 ; Fibronectin fragment named H-271.SEQ ID NO:6 ; Fibronectin fragment named H-296.SEQ ID NO:7 ; Fibronectin fragment named CH-271.SEQ ID NO:8 ; Fibronectin fragment named CH-296.SEQ ID NO:9 ; Fibronectin fragment named C-CS1.SEQ ID NO:10 ; Designed oligonucleotide primer to amplify DNA fragment encodeing AcGFP.SEQ ID NO:11 ; Designed oligonucleotide primer to amplify DNA fragment encodeing AcGFP. 下記工程(a)〜(c)を包含する、サイトカイン誘導キラー細胞の製造方法:(a)末梢血単核細胞を抗CD3抗体存在下で培養する工程;(b)工程(a)により得られた細胞集団を抗CD3抗体の非存在下で培養する工程;及び(c)工程(b)により得られた細胞集団を抗CD3抗体存在下で培養する工程。 工程(a)〜(c)のうち少なくとも一つの工程における細胞集団の培養が、インターフェロン−γ及び/又はインターロイキン−2の存在下で実施される、請求項1記載の製造方法。 工程(a)における培養が、フィブロネクチンフラグメントと抗CD3抗体との共存下で実施される、請求項1に記載の製造方法。 フィブロネクチンフラグメントが、下記からなる群より選択される領域を含有する、請求項3に記載の製造方法: VLA−4結合領域; VLA−5結合領域;及び ヘパリン結合領域。 下記工程(A)〜(D)を包含する、サイトカイン誘導キラー細胞の製造方法:(A)末梢血単核細胞を、抗CD3抗体を含有する培地中で培養する工程;(B)前記培地の抗CD3抗体濃度を低下させる工程;(C)抗CD3抗体濃度が低下した培地中で細胞集団を培養する工程;及び(D)培地に抗CD3抗体を添加し、さらに細胞集団を培養する工程。配列表