タイトル: | 公表特許公報(A)_膜吸着を用いるブチリルコリンエステラーゼの精製 |
出願番号: | 2011536481 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12N 9/18 |
ザイデンバーグ, アレキサンダー ウェーバー, スーザン ガビット, パトリック レイ, ローラ テシュナー, ウォルフガング バッテルヴェック, ハラルド マイス−ポール, ウルスラ シュワルツ, ハンス−ペーター JP 2012508580 公表特許公報(A) 20120412 2011536481 20091112 膜吸着を用いるブチリルコリンエステラーゼの精製 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド 591013229 BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム 501453189 BAXTER HEALTHCARE S.A. 山本 秀策 100078282 安村 高明 100062409 森下 夏樹 100113413 ザイデンバーグ, アレキサンダー ウェーバー, スーザン ガビット, パトリック レイ, ローラ テシュナー, ウォルフガング バッテルヴェック, ハラルド マイス−ポール, ウルスラ シュワルツ, ハンス−ペーター US 61/113,899 20081112 C12N 9/18 20060101AFI20120316BHJP JPC12N9/18 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW US2009064264 20091112 WO2010056909 20100520 28 20110705 4B050 4B050CC03 4B050DD11 4B050FF11C 4B050FF14C 4B050FF16C 4B050LL01 関連出願についての相互参照 本出願は、2008年11月12日に出願された米国仮出願第61/113,899号に対する優先権を主張するものであり、前記仮出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。 有毒な有機リン(OP)剤は、民間および軍事の状況の両方で、危険である。OP薬剤としては、神経ガス(例えば、ソマン、サリン、タブン、VX)、農薬およびコカインが挙げられる。これらの薬剤は、アセチルコリンエステラーゼを不可逆的に阻害することによって作用すると考えられており、それは結果として気管支収縮、呼吸不全、そして死に至り得る。コリンエステラーゼポリペプチドアセチルコリンエステラーゼ(AChE)およびブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)は、これらの薬剤への暴露後に、ならびに予防的に、首尾よく適用されてきた(非特許文献1)。特に、ヒトBuChEは、広範囲な薬剤に対して保護効果があることが示されてきた。ヒトBuChEは、追加の暴露後の処理が必要なく、予防的に使用でき、ヒト、齧歯類、および霊長類において半減期が長い(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。酵素はヒト由来であるので、有害な免疫応答の危険性は最小限に抑えられる。 コリンエステラーゼ酵素を精製しようとする従来の努力は、血漿またはコーン画分IVペーストからの陰イオンカラムクロマトグラフィーに依拠するものであった(例えば、非特許文献6;非特許文献7を参照されたい)。大量製造のためには、これらの方法では、厄介なクロマトグラフィーカラム充填手順と、大量のバッファーとを用いる必要がある。Doctor et al.(2001)Chemical Warfare Agents: Toxicity at low levels, pp 191−214Ostergaard et al. (1988) Acta Anaesth. Scand., 32:266−69Raveh et al.(1993)Biochem.Pharmacol.45:2465−74Raveh et al.(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.145:43−53Allon et al.(1998)Toxicol.Sci. 43:121−28Grunwald et al.(1997) J.Biochem. Biophys. Methods 34:123−35Lockridge et al.(2005)J Med Chem Biol Radiol.3:nihms5095 本発明は、陰イオン交換膜を使用すると大量のコリンエステラーゼタンパク質を高効率で精製できるという知見に基づいている。膜は、大規模なタンパク質精製に関して、カラムクロマトグラフィーを超える多数の利点を提供する。膜は、より速い流速に耐えることができ、精製のための工程所要時間を減らすことができる。膜は、より高い動的結合能力を有し、その結果、充填される総タンパクの同じ量に必要とされる吸着媒体体積はより小さくてすむ。更に、製造されるロット当たり、必要とされるバッファーの体積も、より小さくてすむ。膜は、カラムに比べて大型化が容易であり、大規模製造プロセスのための試験的規模の開発および最適化の努力は、より予測可能で且つより適切なものとなる。また、膜は、大規模製造のカラムに伴う厄介な充填手順を必要としないので、使用し易い。 いくつかの実施態様では、本発明は、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)富化組成物をBChEを有する生物源から製造する方法を提供し、前記方法は、BChEを有する生物源を陰イオン交換材料に適用する工程;前記材料を洗浄する工程;および陰イオン交換後、前記BChEが、総タンパク質当たりの活性で測定すると、組成物中の総タンパク質当たり少なくとも10倍富化する、前記陰イオン交換材料から前記BChEを溶出する工程を含む。いくつかの実施態様では、BChEは、総タンパク質当たりの活性で測定すると、総タンパク質当たり少なくとも20、40、60、70、80、90、100、150、200以上富化する。いくつかの実施態様では、前記方法は、BChEの大量製造に適用される。 いくつかの実施態様では、生物源は、体液、例えば、血液または血液画分である。いくつかの実施態様では、体液は、血漿、血清、およびコーン画分IVまたはその亜画分から成る群より選択される。いくつかの実施態様では、生物源は、ミルク(例えば、トランスジェニック動物のミルク)、遺伝子導入植物もしくは植物細胞、または組換え細胞である。いくつかの実施態様では、組換え細胞は、HEK、COS、C127またはCHO細胞である。いくつかの実施態様では、生物源は、器官、例えば、肝臓または腎臓である。いくつかの実施態様では、生物源は、哺乳類、例えば、ヒト、ウサギ、ウマ、サル、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ネズミまたはマウスである。 いくつかの実施態様では、陰イオン交換材料から溶出させる工程の後に、BChEをアフィニティー精製する。いくつかの実施態様では、アフィニティーリガンドは、モノクローナル抗体、コカイン類似体、およびプロカインアミドから成る群より選択される。 いくつかの実施態様では、生物源は、液体形態であり、陰イオン交換材料に適用する前に濾過する。いくつかの実施態様では、生物源材料を溶媒−洗浄剤処理する。いくつかの実施態様では、生物源は、コーン画分IVであり、その場合、コーン画分IVを、ヒュームドシリカ化合物と接触させ、pH4.0〜4.5に調整し、そして濾過媒体で濾過する。 いくつかの実施態様では、陰イオン交換基(すなわち、官能基)を、膜または樹脂に結合させる。いくつかの実施態様では、陰イオン交換基を、膜に結合させる。いくつかの実施態様では、陰イオン交換基は、第四級アミン(Q)またはジエチルアミノエタン(DEAE)である。いくつかの実施態様では、2つ以上の陰イオン交換膜を、直列に接続する。 いくつかの実施態様では、陰イオン交換膜に適用される総タンパク質は、膜体積1ml当たり少なくとも1000mgである。いくつかの実施態様では、膜に適用される総タンパク質は、膜体積1ml当たり少なくとも1500,2000,2500,3000,4000mg以上である。 いくつかの実施態様では、適用工程のための流量は、1分間当たり少なくとも膜体積の1.5倍であり、例えば少なくとも2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6倍以上である。いくつかの実施態様では、陰イオン交換材料に適用される生物源材料は、2.8mS/cm以下の導電率を有する。いくつかの実施態様では、洗浄バッファーの導電率は、3.8mS/cm以下である。いくつかの実施態様では、溶出バッファーの導電率は、5.6mS/cm以上である。実施例で用いられる精製スキームの流れ図である。流量に対するBChEの回収率に関して、Q Hyper D カラムを、Pall社製およびSartorius社製 Q膜と比較しているグラフである。流量は、1分当たりのカラム体積(CV/分)または1分当たりの膜体積(MV/min)として表される。総タンパク質(TP)充填量に対するBChE回収率に関する3つの陰イオン交換媒体を比較しているグラフである。TPは、カラムまたは膜の体積1mL当たりに充填されたタンパク質のmgとして表される。実施例に記載してあるカラムおよび膜の運転に関する総タンパク質充填量を比較しているグラフである。前記の図は、本方法の利点のうちの一つ、すなわち、ベッド体積1ml当たり、カラムに比べて、膜が、はるかに大量のタンパク質を充填できることを例示している。各精製に関して、TP充填に対するBChE比活性を比較しているグラフである。比活性は、単位BChE/mgタンパク質と記載している。図6は、溶出液におけるBChE回収に関する、膜またはカラム上に充填されたタンパク質の導電率(充填導電率)の効果を例示しているグラフである。導電率はmS/cmとして表される。カラムおよび膜の運転の%BChE活性収支(充填された活性の百分率としてのLFT+WFT+溶出液中BChE活性)を示しているグラフである。図は、カラム中に比べて膜中において、有意に多くのBChE活性が占めていることを例示している。 コリンエステラーゼは、コカインおよび有機リン酸エステル、例えばサリンおよび他の化学兵器剤の毒性を中和するためのバイオスカベンジャーとして使用される。本発明は、生物源からのブチリルコリンエステラーゼ(BChE)の効果的な富化を提供する。 A.定義 ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)は、非特異的コリンエステラーゼ、血漿コリンエステラーゼおよび偽コリンエステラーゼとも呼ばれる。ヒト酵素(hBuChEまたはHu BuChEと呼ばれる)は、血漿中に340kDの四量体として存在する。各モノマーは、3つの鎖間ジスルフィド橋を有する。2つのモノマーはシステイン571においてジスルフィド結合を介して二量体を形成し、次に、2つの二量体は、疎水的相互作用によって四量体を形成する。本明細書において、BuChEは、四量体、二量体およびモノマーの形態、ならびに、ポリペプチド、そして受託番号P06276.1およびQ96HL2に記載されているHu BuChEポリペプチドと実質的に同じ多量体を広く指している。 本明細書において、「生体試料」または「生物源」は、器官および組織、例えば生検および剖検サンプル、そして凍結切片を含む。生物源としては、血液(血液画分を含む)、痰、組織、培養細胞、例えば、一次培養物、外植体、および形質転換細胞、尿などが挙げられる。例えば、生物源は、原核生物(例えば組換え細菌細胞)か、真核生物(例えば組換え細胞)、哺乳類(例えば霊長類、チンパンジー、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、齧歯類、モルモット、ラット、マウス、ウサギ)、鳥類、爬虫類、魚類もしくは組換え植物であることができる。 本明細書において、「陰イオン交換」とは、荷電−荷電相互作用に基づいてタンパク質を分離する方法を指す。一般的に、官能陰イオン交換基を、固体または半固体のマトリックス上に、例えば、樹脂または膜上に固定化する。陰イオン交換のために、固定化された官能基は正に帯電され、而して、負に帯電したタンパク質を優先的に保持する。陰イオン交換官能基としては、例えば第四級アミン(Q)およびジエチルアミノエタン(DEAE)が挙げられる。 他の適当なカチオン性官能基(陰イオン交換体)としては、アミノエチル(AE誘導体化マトリックス);ジメチルアミノエチル(DMAE誘導体化マトリックス);トリメチルアミノエチル(TMAE誘導体化マトリックス);ジエチル−(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル(QAE誘導体化マトリックス)および同様な基が挙げられる。市販されているカチオン性陰イオン交換マトリックス(cationic anion exchange matrices)としては:DEAE SEPHADEX(Pharmacia Biotech ABまたは”PB”), DEAE SEPHACEL(PB), DEAE SEPHAROSE FAST FLOW(PB), DEAE SEPHAROSE CL−6B (PB), DEAE SEPHACEL(PB), DEAE POROS(Perseptive BioSystems), QAE CELLEX (BioRad), QAE SEPHADEX (PB),Q SEPHAROSE FAST FLOW(PB), DEAE BIO−GEL A(BioRad), DEAE Cellulose(Whatman, Pierce), AG & Biorex Styrene/Divinyl Benzene Resins(BioRad), Anion exchange Macro−Prep Supports(BioRad), Fractogel.RTM.EMD DEAE, TMAC5 または DEAE(E.Merck), TOYOPEARL DEAE(TosoHaas), TOYOPEARL−QAE(TosoHaas), Q HyperD.RTM.(BioSepra), DEAE TRIS ACRYL.RTM.(BioSepra), DEAE SPHEROSIL.RTM.(BioSepra)が挙げられる。 本明細書において、「アフィニティークロマトグラフィー」とは、特定のタンパク質またはタンパク質上の部位に関して特異的な分離法を指している。官能アフィニティーリガンドは、固体または半固体のマトリックス上に固定化される。アフィニティーリガンドの例は、抗体および抗体フラグメント、天然リガンドまたはリガンド類似体(例えば、特定のレセプタのための)、および天然結合パートナーまたはその類似体(例えば、多サブユニット錯体のための)が挙げられる。BChEの場合、アフィニティーリガンドとしては、コカイン類似体、プロカインアミド、有機リン化合物、およびBChE−特異抗体が挙げられる。アフィニティーリガンドは、正に帯電したタンパク質を結合させるための酸性官能基または負に帯電したタンパク質を結合させるための塩基性官能基のようなイオン交換官能基を含むことができる。例としては、アミノ(例えば第二級、第三級)、および第四級アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられるが、これらに限定されない。例えばアルデヒドおよびエポキシ官能性のアフィニティーリガンドは、ヒドロキシル、アミノおよびチオール基を含むターゲット種を結合させるのに有用である。アフィニティーリガンド、および固体支持材に前記リガンドを結合させる方法は、精製技術では公知である。参照テキスト、Affinity Separations: A Practical Approach(Practical Approach Series), Paul Matejtschuk(Editor), Irl Pr: 1997;およびAffinity Chromatography, Herbert Schott, Marcel Dekker, New York:1997を参照されたい。 「洗浄バッファー」という用語は、目的のポリペプチド分子を溶出させる前に、イオン交換またはアフィニティー精製材料を洗浄するために、または、再平衡させるために用いられるバッファーを指している。洗浄バッファーおよび充填バッファーは同じマトリックスを用いることができるが、これは必須ではない。 「溶出バッファー」は、イオン交換またはアフィニティー精製の材料から目的のポリペプチドを溶出(除去)させるために用いられる。溶出バッファーの導電率および/またはpHは、目的のポリペプチドが前記材料から溶出されるような導電率および/またはpHである。 「導電率」という用語は、2つの電極間に電流を通す水溶液の能力を指している。溶液において、電流は、イオン輸送によって流れる。而して、水溶液中に存在するイオンの量が増加すると、溶液は、より高い導電率を有する。導電率の測定単位は、ミリジーメンス/cm(mS/cm)で、市販の導電率計を用いて測定できる。溶液の導電率は、溶液中のイオン濃度を変えることによって、変化させることができる。例えば、溶液中における緩衝剤の濃度および/または塩の濃度(例えばNaClまたはKCl)は、本明細書の実施例で示されているような所望の導電率を達成するために、変えることができる。 本明細書において、用語「フィルター」は、機械的な閉じ込めと、動電学的吸収(例えば膜濾過、デプスフィルター透析、限外濾過、ダイアフィルトレーションおよびナノ濾過)によって液・固分離のために用いられるデバイスを含む。濾材としては、セルロース、シリカ化合物、布、紙、多孔性磁器、炭などが挙げられ、濾材を通して液体を通過させて、懸濁された不純物、または、異なる大きさおよび/もしくは重量の材料を分離する。具体例としては、Zeta Plusデプスフィルター媒体(Cuno Corp.)およびSeitzデプスフィルター媒体(Pall Corp.)が挙げられる。 本明細書で使用される用語「回収率」とは、特定の分離工程または精製工程から回収されたタンパク質の量を指しており、%で表す。例えば、回収率は、分離工程に適用されたタンパク質の総量と、前記分離工程から例えば溶出によって回収されたタンパク質の総量とを比較できる。回収率は、例えば大きさ、免疫親和性または活性アッセイによる特定の検出により、分離工程に適用されたタンパク質の総量と、回収されたタンパク質の総量とを比較することによって、特定のタンパク質に関して測定できる。「実質的な同一性」または「実質的な相同性」とは、例えばデフォルトギャップウェイト(default gap weight)を用いるプログラムGAPまたはBESTFITによって最適に位置合わせしたときに、二つのペプチド配列が、少なくとも65%の配列同一性、例えば少なくとも80、85、90、92、95、96、97、98または99%の配列同一性を共有することを意味している。同一でない残基位置は、一般的に、保存的アミノ酸置換の分だけ異なる。 例えば細胞、もしくは核酸、タンパク質、もしくはベクターに関して用いる場合、用語「組換え」は、非相同の核酸もしくはタンパク質の導入によってまたは天然の核酸またはタンパク質の変化によって、細胞、核酸、タンパク質、もしくはベクターが修飾されたことを示唆しているか、または、細胞が、そのように修飾された細胞から誘導されることを示唆している。而して、例えば、組換え細胞は、前記細胞の天然(非組換え)型内には見出されない遺伝子を発現するか、または、そうでなければ異常に発現されるか、不十分に発現されるか、もしくはまったく発現されない天然型遺伝子を発現する。本明細書で使用される用語「組換え核酸」とは、一般的には例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いて核酸を操作することによって、in vitroで本来形成される核酸を意味している。このように、異なる配列の操作可能な結合が達成される。いったん組換え核酸を作製し、宿主細胞または微生物の中に再導入すると、それは、非組換え的に、すなわち、in vitro 操作よりもむしろ宿主細胞のin vivo細胞機構を用いて、複製することが理解される。同様に、「組換えタンパク質」とは、組換え技術を用いて、すなわち、上記した組換え核酸の発現によって作製されたタンパク質である。 「トランスジェニック」という用語は、組換え法を用いて発生させた細胞または微生物を記載するために使用される。一般的に、トランスジェニック細胞またはトランスジェニック微生物は、「導入遺伝子」または非内因性核酸を運ぶ。抗体または他の化合物に「特異的に(または選択的に)結合する」というフレーズは、しばしばタンパク質と他の生体物質(biologics)との異種集団においてタンパク質の存在の決定因子である結合反応を指している。而して、所定のアッセイ条件下では、特定の化合物または抗体は、タンパク質に対してバックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10〜100倍超結合する。そのような条件下での抗体への特異的な結合には、特定のタンパク質に関する特異性について選択される抗体が必要である。例えば、BChEモノマーまたは複合ポリペプチドに対して増加するポリクローナル抗体、多型変異体(polymorphic variants)、対立遺伝子、オルソログ、および保守的に修飾された変異体、またはスプライス変異体、またはそれらの一部分を選択して、BChEには特異的に免疫反応性であるが、他のタンパク質にはそうではないポリクローナル抗体のみを得ることができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り去ることによって達成できる。様々なイムノアッセイフォーマットは、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択できる。例えば、固相ELISAイムノアッセイを日常的に用いて、タンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択する。(例えば、特定の免疫反応性を測定するために用いることができるイムノアッセイフォーマットおよび条件を記載しているHarlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual(1988)参照をされたい)。 B.ブチリルコリンエステラーゼ ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)は、血漿中に340kDの四量体として存在する。BChEは、コカイン、ヘロインおよび中毒性有機リン塩を代謝するので、中毒および毒性を防止および減弱するのに有用である(例えば、Raveh et al.(1993) Biochem. Pharmacol.45:2465−74;Mattes et al.(1996) Pharmacol.Lett.58:257−61を参照されたい)。また、BChEは、βアミロイド繊維を結合することも明らかにされてきた(Podoly et al. (2008) Neurodeger.Dis.5:232−36)。 いくつかの実施態様では、BChEを修飾させて、循環におけるその滞留時間を向上させる。これは、毒素暴露のタイミングおよび期間が不確かな特に予防用途に特に有用である。薬学的に許容可能な水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)を結合させると、in vivoにおける酵素の滞留時間が向上する。ポリマーとしては、例えば、薬学的に許容可能なPEG混合物、モノ活性アルコキシ末端ポリアルキレン酸化物、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、および炭水化物系ポリマーが挙げられる。結合法は、例えば、国際公開第WO02/087624号に記載されている。例えば、BChE中の第一級アミンは、モル過剰の活性メトキシPEGによって標的にされ得る。いくつかの場合では、未修飾のBChEと比較すると、酵素の平均滞留時間は、5倍、10倍、また50倍にも増加することができる。 BChEは、自然に発生することができ、すなわち、内在性の供給源から単離できるか、または、組換えによって産生させることができる。内在性の供給源としては、ヒト、ウサギ、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジが挙げられる。一般的に、BChEは、血液または血液画分から単離されるが、組織または器官の抽出物(例えば、肝臓、脾臓、肺、骨髄、腎臓、胎盤など)からも単離できる。 有意レベルのBChEを有する血液製剤としては、血清画分および血漿画分が挙げられる。BChEは、これらのエレメントの亜画分からも単離できる。一つの公知の血液分離技術は、Harris,Blood Separation and Plasma Fractionation Wiley−Liss(1991)に記載されているコーン画分法である。コーンの方法(および、最近のその変法)によれば、血液タンパク質は、様々なエタノール濃度、pHおよび温度に基づいて、五つの画分へと分離される。BChEは、画分IVにおいて濃縮され、また、画分IVの特定の亜画分において濃縮される(例えば、IV−4、IV−6)。コーン画分は、ペーストとして凍結させて保存でき、本発明の方法で使用するために再懸濁させることができる。 組換え技術は、大規模にBChEを製造するのに有利であり得る。前記技術は、当業において公知であり、一般的に、例えばAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology (1995 補遺);および Sambrook et al.MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed.,(1989)に記載されている。簡単に言えば、プロモーターに作動可能に結合されていて、BChEをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを、BChE発現に有利な条件下で細胞中に導入する。 大腸菌は、組換え発現技術のための有用な原核宿主細胞である。使用に適する他の微生物宿主としては、桿菌、例えば枯草菌、および他の腸内細菌科、例えばサルモネラ菌属、セラシア属、および様々なシュードモナス属種が挙げられる。組換え発現ベクターは、原核宿主に導入され、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製開始点)を一般的に含む。更に、任意の数の様々な公知のプロモーター、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系またはλファージからのプロモーター系が存在することができる。これらのプロモーターは、オペレーター配列を選択的に用いて発現を典型的に制御し、そして転写および翻訳を開始し且つ完了するためのリボソーム結合部位配列などを有する。 他の微生物、例えば酵母(例えば、サッカロミセス)も発現のために使用できる。酵母は、要求通りに、例えば3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の糖分解酵素を含むプロモーター、および複製開始点配列、終結配列などのような発現制御配列を有する適当なベクターの宿主を有する。 植物および植物細胞の培養も、BChEの組換え発現のために使用できる(Larrick and Fry,Hum. Antibodies Hybridomas 2:172−189 (1991); Benvenuto et al,Plant Mol.Biol.17:865−874(1991); During et al.,Plant Mol.Biol.15:281−293(1990); Hiatt et al., Nature 342:76−78(1989))。植物宿主としては、例えば:シロイヌナズナ、タバコ、ニコチアナルスチカ、およびジャガイモが挙げられる。例示的な発現カセットは、例えばSijmonsらの方法(Bio/Technology 8:217−221(1990))によるプラスミドpMOG18である。根頭癌腫病菌(Agrobacterium tumifaciens)T−DNA−ベースのベクターも、BChEをコードする配列を発現させるために用いることができ;好ましくは、前記ベクターは、スペクチノマイシン抵抗性をコードするマーカー遺伝子または別の選択可能なマーカーを含む。 例えば、Putlitz et al.の方法(Bio/Technology 8:651−654 (1990))による、典型的にはバキュロウイルスベースの発現系を使用する昆虫細胞の培養を用いてBChEを発現させることもできる。 微生物および植物に加えて、哺乳類の細胞培養を用いて、本発明のポリペプチドを発現させ産生させることもできる(Winnacker,”From Genes to Clones”,VCH Publishers,New York(1987)を参照されたい)。哺乳動物細胞としては、HEK−293細胞、CHO細胞系、様々なCOS細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系などが挙げられる(例えば Lynch et al(1997)Toxicol.Appl.Pharmacol.145:363−71 for expression of BChE in HEK cellsを参照されたい)。これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al., Immunol.Rev.89:49−68(1986))を含み、また、必要なプロセシング情報部位(例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位)、および転写ターミネーター配列を含むことができる。発現制御配列は、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルスなどから誘導されるプロモーターを含む。ネオ発現カセットのような選択可能なマーカーも、発現ベクター中に含まれ得る。 BChEは、トランスジェニック哺乳動物のミルクから発現させ、そして精製することもできる。前記技術は、例えば米国特許第7,045,676号に記載されている。一般的な戦略と、組換えタンパク質を乳腺に発現させることを標的とするためにαSl−カゼイン制御配列を用いる例示的導入遺伝子とは、国際公開第WO 91/08216号および国際公開第WO 93/25567号において更に詳細に記載されている。乳腺特異的制御配列を用いる導入遺伝子の追加の例示としては、Simon et al.,Bio/Technology 6:179−183(1988)および国際公開第WO88/00239号(1988);EP 279,582およびLee et al.,Nucleic Acids Res.16:1027−1041(1988)が挙げられる。 C.タンパク質精製技術 タンパク質精製技術としては、例えば、溶解度を利用する方法(例えば塩析および溶媒沈殿)、分子量の違いを利用する方法(例えば透析、限外濾過、ゲル濾過およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、電荷の違いを利用する方法(例えばイオン交換カラムクロマトグラフィー)、特定の相互作用を利用する方法(例えばアフィニティークロマトグラフィー)、疎水性の違いを利用する方法(例えば逆相高性能液体クロマトグラフィー)、および等電位点の違いを利用する方法(例えば等電点電気泳動)が挙げられる。参考文献としては:Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer Press,3d edition(1994)およびAbelson et al.,Methods in Enzymology,Volume 182: Guide to Protein Purification,Academic Press(1990)が挙げられる。 細菌で発現されるタンパク質は、不溶性の凝集体(「封入体」)を形成できる。いくつかのプロトコルは、BChE封入体の精製に適する。例えば、封入体の精製は、細菌細胞の破壊による、例えば50mMのTRIS/HCL pH 7.5、50mMのNaCl、5mMのMgCl2、1mMのDTT、0.1mMのATPおよび1mMのPMSFのバッファー中における培養による、封入体の抽出、分離および/または精製を典型的に含む。細胞懸濁液は、2〜3回フレンチプレスを通過させて溶解させることができるか、または、ポリトロン(Brinkman Instruments)を用いて均質化することができるか、または、氷上で音波破砕することができる。細菌を溶解する別の方法は、当業者には明らかである(例えばSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed.1989); Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (1995 補遺)を参照されたい)。 必要に応じて、封入体は可溶化され、そして、溶解された細胞懸濁液は典型的には遠心分離されて不所望の不溶物を除去する。封入体を形成したタンパク質は、相溶性バッファーで希釈または透析することによって、復元できる。適当な溶媒としては、尿素(約4M〜約8M)、ホルムアミド(少なくとも約80%、体積/体積基準)、およびグアニジン塩酸塩(約4M〜約8M)が挙げられるが、それらに限定されない。凝集体形成性タンパク質を可溶化できるいくつかの溶媒、例えばSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、70%蟻酸は、免疫原性および/または活性の欠如を伴うタンパク質の不可逆的修飾の可能性の故に、この手順で使用するには不適である。グアニジン塩酸塩および同様の薬剤は修飾剤であるが、この修飾は、不可逆的ではなく、前記修飾剤を除去するかまたは希釈する(例えば透析によって)と復元が起こる可能性があり、そしてそれにより免疫学的におよび/または生物学的に活性なタンパク質の再形成が起こり得る。他の適当なバッファーは当業者には公知である。BChEポリペプチドは、標準的な分離技術によって、例えばNi−NTAアガロース樹脂を用いて、他の細菌タンパク質から分離される。 あるいは、細菌のペリプラズムからBChEポリペプチドを精製することも可能である。溶菌後に、BChEを細菌のペリプラズム中にエクスポートすると、当業者に公知の他の方法のみならず、冷浸透圧ショックによっても、細菌のペリプラズム画分を単離できる。組換えタンパク質をペリプラズムから単離するために、細菌細胞を遠心分離してペレットを形成させる。そのペレットを、20%のスクロースを含むバッファー中に再懸濁させる。その細胞を溶解させるために、細菌を遠心分離し、そしてペレットを、氷冷5mMのMgSO4中に再懸濁させ、約10分間氷浴中で保持する。その細胞懸濁液を遠心分離し、その上澄みをデカントし、保存する。前記上澄み中に存在する組換えタンパク質は、当業者に公知の標準的な分離技術によって、宿主タンパク質から分離できる。 しばしば初期工程として、特に、タンパク質混合物が複合体である場合、初期の塩分別(salt fractionation)によって、目的の組換えタンパク質から、多くの不所望の宿主細胞タンパク質(または細胞培地から誘導されるタンパク質)を分離することができる。硫酸アンモニウムは、タンパク質混合物の水の量を効果的に減らすことによってタンパク質を沈殿させるので、通常用いられる。次いで、タンパク質は、それらの溶解度に基づいて沈殿する。タンパク質は、疎水性であればあるほど、より低い硫酸アンモニウム濃度で沈殿しやすい。典型的なプロトコルは、得られる硫酸アンモニウム濃度が20〜30%であるように、飽和硫酸アンモニウムをタンパク質溶液に加えることを含む。この濃度は、最も疎水性のタンパク質を沈殿させる。次いで、沈殿物を廃棄し(目的のタンパク質が疎水性でない場合)、そして、目的のタンパク質が沈殿することが知られている濃度まで、硫酸アンモニウムを上澄みに加える。次いで、その沈殿物をバッファー中で可溶化させ、必要に応じて、透析またはダイアフィルトレーションのいずれかによって、過剰な塩を除去する。タンパク質の溶解性に依存する他の方法、例えば冷エタノール沈殿法は、当業者に公知であり、それらを用いて複合タンパク質混合物を分別することができる。 異なる孔径(例えば、アミコン膜またはミリポア膜)の膜に通す限外濾過を用いて、より大きいおよび小さい大きさのタンパク質から、BChEまたはBChE複合ポリペプチドを単離するために、BChEまたはBChE複合ポリペプチドの分子量を使用することができる。第一工程として、タンパク質混合物を、目的のタンパク質の分子量に比べてより低い分子量カットオフを有する孔径の膜を用いて限外濾過する。次いで、限外濾過の保持された部分を、目的のタンパク質の分子量を超える分子量カットオフを有する膜に対して限外濾過する。組換えタンパク質は膜を通過し、濾液中に移動する。次いで、その濾液を、更なる分離技術および精製技術によって分離および精製できる。 BChEポリペプチドは、その大きさ、正味の表面電荷、疎水性、および基質とリガントに関する親和性に基づいて他のタンパク質から分離できる。更に、BChEタンパク質に対して増加する抗体を、カラムマトリックスに結合させることができ、BChEタンパク質は免疫精製される。これらの技術(例えばFPLCおよびHPLC)のために使用されることができるクロマトグラフィー方法は、当業において公知である。クロマトグラフィーは、あらゆる規模で、そして、多くの異なる製造業者(例えば、Pharmacia Biotech)から入手した装置を用いて、実施できることは、当業者には明らかである。 イオン交換を用いて、正味電荷に基づいてタンパク質を分離できる。BChEは、標準pHでは負に帯電していて、陰イオン交換クロマトグラフィーにかけるには有利である。一つの実施態様では、pHは、結合のために4.0〜4.5に調整する。別の実施態様では、pHは、4.15〜4.35に調整する。官能陰イオン交換基としては、DEAEおよびモノQが挙げられる。モノQは、水素結合の干渉無しに真のイオン相互作用、または、タンパク質との静電的相互作用を提供する。これらの材料の結合形態は、例えば、Pall社、Sartobind社、Pharmacia Biotech社およびSigma−Aldrich社から市販されている。 イオン交換はpHに非常に敏感であり、理想的には、pHは、目的のタンパク質の等電位点に比べて少なくとも一単位高い。目的のタンパク質を用いる滴定曲線は、官能基とタンパク質との間の最適結合にとって最善のpHを決定するために、一般的に行われる。タンパク質のイオン交換で通常使用されるバッファーとしては、例えば、酢酸、クエン酸、メス、ホスフェート、ヘペス、L−ヒスチジン、イミダゾール、トリエタノールアミン、トリス、ジエタノールアミンが挙げられる。適当な対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、クロリド、臭素、水素、アセテート、およびマレアートが挙げられる。下記のように、様々な量の塩、例えば塩化ナトリウムをバッファーに加えることができる。上記バッファーの緩衝pH範囲は4.0〜8.8である。一つの実施態様では、塩化ナトリウムを含む洗浄バッファーとしてアセテートを使用する。一つの実施態様では、35mMの酢酸ナトリウムを、それぞれ20mMの塩化ナトリウムおよび150mMの塩化ナトリウムと一緒に使用する。別の実施態様では、150mMの塩化ナトリウムを有する35mMの酢酸ナトリウムによる一回洗浄を用いる。 陰イオン交換媒体に適用される溶液の導電率も、最適結合にとって重要であり、溶液の塩濃度を変えることによって変化させることができる。洗浄バッファーの導電率も、目的のタンパク質の結合を保持しながら、不純物および不所望のタンパク質を最適に洗浄するために一般的に最適化させる。陰イオン交換のための溶出バッファーは、タンパク質と官能基との間のイオン相互作用を破壊するために、より高い導電率を一般的に有する。これらの原則は、下記の実施例において更に詳細に例示する。 BChEポリペプチドは、基質、リガント、特異抗体または特異抗体フラグメントに関してそれらの親和性に基づいて、他の材料から分離することもできる。 BChEは、例えば、樹脂、膜または他の固定された媒体に結合されたプロカインアミドを用いて、精製することができる。プロカインアミド−セファロース樹脂を生成させる方法およびBChEの分離は、例えばGrunwald et al. (1997)J Biochem Biophys Methods 34:123−35およびLockridge & La Du (1978)J. Biol. Chem. 253:361−66に記載されている。BChEの溶出は、後に分離される遊離プロカインアミドを加えることによって達成できる。 BChEに関して特異的な多くの抗体は、当業において公知であり、市販されている。前記抗体としては、Santa Cruz BiotechnologyおよびSigma−Aldrichから市販されている002−01、6F41、3E8、C−15、C−18、N−13およびHPA001560が挙げられる。これらの抗体またはそれらの特異的なBChE結合フラグメントのうちの任意のものは、当業において公知の精製において使用するために、固定化された基質に結合させることができる。 D.保存方法 BChEのタンパク質分解によって、四量体を、遊離SH基を有する二量体とモノマーへ変換させることができ、そして、それにより、血液からのBChEのクリアランスが加速される。而して、適当な緩衝溶液中に、制御された条件下で、精製されたBChEを保存することは、重要である。例えば、BChEは、1mMのEDTAと一緒に、トリスバッファー、pH7.4〜8.0またはホスフェートバッファー、pH7.4〜8.0中において4℃で、何ヶ月も保存できる(Grunwald et al.(例えば1997)J Biochem Biophys Methods 34:123−35を参照されたい)。BChEは、凍結乾燥またはフリーズドライし、有意な活性損失も無く、数カ月間保存することもできる。タンパク質を保存する方法および適当な緩衝系は、当業において公知である。 E.タンパク質の量および純度を測定する方法 タンパク質濃度は、標準分析法、例えばBSAまたは他の標準的な較正を用いるLowry法によって測定できる(例えばScopes,前掲書;Grunwald,前掲書を参照されたい)。タンパク質溶液の濃度および含量は、ゲルまたはキャピラリー電気泳動法によって測定することもできる。 F.コリンエステラーゼ活性を測定する方法 コリンエステラーゼは、神経ガス(例えば、ソマン、サリン、タブン、VX)、農薬、コカインおよびヘロインと結合することができ、そして前記化合物を異化できる。基質結合および結合動力学は、当業において公知の任意の技術によって、例えば、標的化合物の検出可能に標識された類似体を用いて測定できる(例えばLockridge & Du Lu (1978) J. Biol. Chem. 253:361−66を参照されたい)。BChEの加水分解活性は、一般的には、Ellman et al. (1961) Biochem Pharmacol 7:88−95の技術を用いて測定する。簡単に言えば、BChEを、室温で、pH8.0のホスフェートバッファー中BTCに加える。一単位活性は、1μmol/分を加水分解するのに必要とされる酵素量として一般的に表される。BChE活性は、異なる基質、例えば、コカインまたはベンゾイルコリンを用いて試験することもできる(Mattes et al.(1996)Pharmacol. Lett.58:257−61;Lockridge & Du Lu,前掲書、を参照されたい)。活性は、例えば、未知のBChE濃度を有する溶液を滴定することによって、滴定することができる。 G.実施例 1.材料と方法 以下の研究は、BChEの精製に関して、Q Hyper D陰イオン交換樹脂をQ膜で置換した場合の規模を縮小しての評価を示している。Pall社製Mustang膜およびSartorius社製MA膜を、陰イオン交換精製工程中に試験した。膜のパラメーターは、表1に記載してある。 BuChEの精製に関して、陰イオン交換クロマトグラフィーの代わりとしてのQ−膜クロマトグラフィー工程に関する更に深い理解を得るために、本フィージビリティスタディーを行った。我々は、膜クロマトグラフィーにより回収率が向上し、且つ、次の重要なプロセスパラメーター:すなわち、流量、膜体積および総タンパク質(TP)充填量に関する生成物の損失が最小限に抑えられることを見出した。 図1で概説してあるように、各縮小運転(scale−down run)は以下の工程から成る:すなわち、(1)コーン画分IV−4沈殿1部を、注射用蒸留水(WFI)3(または4以上)部に懸濁させ、そして混合し;(2)その懸濁液にヒュームドシリカ(Aerosil社製)を加え、5N酢酸でpHを4.15〜4.35に調整し;(3)次いで、洗浄後バッファー(postwash buffer)としてpH 4.15〜4.35の35mM酢酸ナトリウムを用いて、圧搾濾過器中で、Cunoフィルターパッドを介して前記懸濁液を濾過し;(4)その濾液に、溶媒/洗浄剤(SD)混合物を加え;そして(5)連続運転セットごとに、5mL、2.75mLおよび0.41mLのベッド体積を有する膜を用いて、Q膜クロマトグラフィーを行う。 これらの基本的なプロセスパラメーターは、以下のように、膜実験ごとに調整した: 運転1 運転1〜9は、運転10〜11とは別に行った。運転1は、コーン画分IV(Fr.IV−4)濾液の新しい調製および新しいPall社製 Q Mustang膜を用いての運転11(下記)の繰り返しであった。バッファーおよび充填材の両方を、1.7mS/cmの導電率までWFIで希釈した。総タンパク質充填量は、膜体積(MV)1mL当たり1635mgであった。流量は、3.2MV/分(15.9mL/分)であった。タンパク質は、20mM、続いて150mMの二つの濃度のNaClを添加した35mMの酢酸ナトリウムバッファーで溶出させた。 運転2 先の実験(運転1)からのPall社製 Q Mustang 5mL膜を再利用した。バッファーも充填材も希釈を行わなかった(バッファーの導電率は3.1mS/cmであり、充填材は2.8mS/cmであった)。総タンパク質充填量は、膜体積(MV)1mL当たり1080mgであった。流量は、3.2MV/分(15.9mL/分)であった。タンパク質は、35mMの酢酸ナトリウムバッファーと150mMのNaClで溶出させた。 運転3 新しいSartorius社製 X100 2.75mL膜を使用した。バッファーおよび充填材は希釈しなかった(バッファーの導電率は3.7mS/cmであり、充填材は2.6mS/cmであった)。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり2335mgであった。流量は、5.8MV/分(15.9mL/分)であった。タンパク質は、35mM酢酸ナトリウムバッファーと150mMのNaClで溶出させた。 運転4 先の実験(運転3)からのSartorius社製 X100 2.75mL膜を再利用した。バッファーおよび充填材の両方を、1.7mS/cmの導電率までWFIで希釈した。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり1301mgであった。流量は、1.5MV/分(4.0mL/分)であった。タンパク質は、35mMの酢酸ナトリウムバッファーと150mMのNaClで溶出させた。 運転5 新しいSartorius社製 X100 2.75mL膜を使用した。バッファーも充填材も希釈を行わなかった(バッファーの導電率は3.8mS/cmであり、充填材は2.7mS/cmであった)。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり2246mgであった。流量は、2〜4.4MV/分(5.5〜12.0mL/分)であった。タンパク質は、35mMの酢酸ナトリウムバッファーと150mMのNaClで溶出させた。 運転6 新しいSartorius社製 X15 0.41mL膜を使用した。バッファーおよび充填材は希釈しなかった(バッファーの導電率は3.8mS/cmであり、充填材は2.7mS/cmであった)。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり2098mgであった。流量は、4.1MV/分(1.7mL/分)であった。タンパク質は、35mMの酢酸ナトリウムバッファーと150mMのNaClで溶出させた。 運転7 この運転は、同じSartorius社製 X15 0.41mL膜を使用した先の実験(運転6)の繰り返しだった。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり2167mgであった。 運転8 この運転は、同じSartorius社製 X15 0.41mL膜を使用している先の実験(運転6および7)の繰り返しであった。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり2169mgであった。 運転9 この運転は、同じSartorius社製 X15 0.41mL膜を使用している先の実験(運転6〜8)の繰り返しであった。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり2295mgであった。 運転10 運転10は、下記のQ陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いる同様な単離スキームに従って実行した。運転10では、新しいPall社製 Q Mustang 5mL膜を使用した。35mMの酢酸ナトリウム、pH4.2バッファーを、1.9mS/cmの導電率までWFIで希釈し、平衡化および洗浄のために使用した。充填材(SD処理したIV−4濾液)を、充填前に、1.8mS/cmの導電率までWFIで希釈した。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり4844mgであった。流量は、3.2MV/分(15.9mL/分)であった。タンパク質は、20mM、続いて150mMの二つの濃度のNaClを添加した35mMの酢酸ナトリウムバッファーで溶出させた。 運転11 先の実験(運転10)からのPall社製 Q Mustang 5mL膜を再利用した。バッファーおよび充填材の両方を、1.7mS/cmの導電率までWFIで希釈した。総タンパク質充填量は、膜体積1mL当たり1273mgであった。流量は、3.2MV/分(15.9mL/分)であった。タンパク質は、20mM、続いて150mMの二つの濃度のNaClを添加した35mMの酢酸ナトリウムバッファーで溶出させた。 上記の単離スキームの結果を、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いた結果と比較した。カラムクロマトグラフィーは、上記した膜運転10に従ってQ Hyper D陰イオン交換樹脂で行った。膜単離と同様に、カラム単離スキームは、アエロジル濾液の溶媒−洗浄剤処理から始めた。Q−媒体カラムは、35mMの酢酸ナトリウム(pH 4.25)による平衡化の前に、2MのNaCl、0.5Mの酢酸、および0.5NのNaOHでフラッシュした。その後で、溶媒−洗浄剤処理された濾液を、カラム上へと充填した。次いで、そのカラムを、35mMの酢酸ナトリウム、pH4.25で、次いで、20mMのNaClを添加した酢酸ナトリウムバッファーで洗浄して、不純物を洗い流した。溶出は、150mMのNaClを添加した酢酸ナトリウムバッファーで行った。タンパク質が溶出したら、2MのNaCl、0.5Mの酢酸、および0.5NのNaOHでカラムを再生させることができ、そして1MのNaClを添加した20%のEtOH中に保存できる。 2.結果 表2は、下記結果の概要を提供している。次の略語を使用する:すなわち、MV=膜体積(また、カラム体積);Cond=導電率;TP=総タンパク量;Spec.activity=特異的BChE活性;LFT=充填フロースルー;およびWFT=洗浄フロースルー、総合収支=充填された活性の百分率としてのLFT+WFT+溶出液におけるBChE活性。 媒体を通る流量を基準として、BChE回収率を、カラムと様々なQ−膜とで比較した。図2に示されているように、BChE回収率に関して悪影響を及ぼすことなく、カラムに比べて、膜では、有意に高い流量が観察された。膜のための流量が、カラムのためのそれに比べて、10倍を超えることも有り得ることが推論された。膜を使用する利点は、運転を実行するのに必要とされる時間の短縮であり、特に、より大量のタンパク質を膜上に充填する時間の短縮である(表2を参照されたい)。それ故、回収率も損なわれない。 次に、回収されるBChEの量対充填される総タンパク量(TP)に関して、Q−カラムを、Pall社製およびSartorius社製の膜と比較した。図3を参照されたい。カラムでは、ゲル上に充填されるタンパク質の総量を保持することに関して妥協せずに充填できるタンパク質の量が制限される。保持損失は、結果として、LFTにおけるBChE損失と、BChE回収率の低下とを招く。しかしながら、図3に示されているように、膜は、回収損失無しに、はるかにより大量のタンパク質を収容できる。表2は、TP充填の対照比較を提供しており、タンパク質を最大10倍まで膜上に充填できたことを示している。それ故、TP充填の保持は、カラムに比べて、膜では、より効率的である。 図4は、膜精製のこの利点の更なる裏付けを提供している。図4は、すべての運転に関して、充填されたTPの量を示している(Q−カラム運転、Pall社製の膜の運転、およびSartorius社製の膜の運転)。「膜10」(上記の運転10に対応)に関して示されているように、5倍を超える量のタンパク質を膜上に充填することができた。 図5は、各運転から回収されたBChE比活性を比較している。膜に関して達成されるタンパク質充填量が有意に高くても、BChE比活性に悪影響を及ぼさないことを見出した。 次に、BChE回収率に関する、充填されたタンパク質溶液の導電率の効果を観察した。図6に示されるように、初期のタンパク質溶液の導電率は回収率と相関していなかった。 図7は、陰イオン交換工程に関する、カラムを超える膜の別の利点を示している。有意に高いBChE活性収支(充填された活性の百分率としての、LFT+WFT+流出液中における総BChE活性)が膜で観察され、より多くの充填されたBChEを、結局は捕えることができたことを示している。この観察結果は、2つ以上のQ膜を直列に接続すると、BChE回収率を有意に向上させ得ることを示している。 3.結論 上記の結果は、以下のことを明示した:膜は、有意に高い流量(カラム0.1〜0.25CV/分対膜1.5〜5.8MV/分)で動作し;膜は、最大10倍までの充填タンパク質に耐えることができ;総BChE活性収支は、膜の場合により顕著であり(Pall社製膜の場合91%、Sartorius社製膜の場合85%、およびカラムの場合73%);そして膜は、バッファーの大量調製を必要としなかった。 ブチリルコリンエステラーゼを有する生物源からブチリルコリンエステラーゼ富化組成物を製造する方法であって、以下の工程:ブチリルコリンエステラーゼを有する生物源を陰イオン交換材料に適用する工程;前記材料を洗浄する工程;そして前記陰イオン交換材料からブチリルコリンエステラーゼを溶出させる工程、その場合、前記ブチリルコリンエステラーゼ含量が、陰イオン交換後に、総タンパク質当たりのブチリルコリンエステラーゼ活性によって測定したとき、前記組成物中において総タンパク質当たり少なくとも10倍富化されている、を含む前記方法。 前記生物源が、血液、血漿、トランスジェニック動物からのミルク、組換え植物、および組換え細胞から成る群より選択される請求項1記載の方法。 前記陰イオン交換材料から溶出された前記ブチリルコリンエステラーゼを、アフィニティー精製材料に適用する工程を更に含む請求項1記載の方法。 前記アフィニティー精製材料を、モノクローナル抗体およびプロカインアミドから成る群より選択する請求項3記載の方法。 前記生物源を、前記陰イオン交換材料に適用する前に、濾過する請求項1記載の方法。 前記生物源がコーン画分IVであって、その場合、前記コーン画分IVをヒュームドシリカ化合物と接触させ、pHを4.0〜4.5に調整し、そして前記コーン画分IVを濾材で濾過する請求項5記載の方法。 前記生物源を溶媒−洗浄剤処理する請求項1記載の方法。 前記官能陰イオン交換基を、膜または樹脂に結合させる請求項1記載の方法。 前記陰イオン交換膜に適用される総タンパク質が、膜体積1mL当たり少なくとも1000mgである請求項8記載の方法。 前記陰イオン交換膜に適用される総タンパク質が、膜体積1mL当たり少なくとも2000mgである請求項8記載の方法。 前記陰イオン交換材料に結合された前記官能陰イオン交換基が第四級アミン(Q)である請求項1記載の方法。 前記方法を、ブチリルコリンエステラーゼの大量生産に適用する請求項1記載の方法。 総タンパク質当たりのブチリルコリンエステラーゼ活性によって測定したとき、前記ブチリルコリンエステラーゼ組成物が、前記組成物中における総タンパク質当たり少なくとも20倍富化される請求項1記載の方法。 総タンパク質当たりブチリルコリンエステラーゼ活性によって測定したとき、前記ブチリルコリンエステラーゼ組成物が、前記組成物中における総タンパク質当たり少なくとも40倍富化される請求項1記載の方法。 総タンパク質当たりブチリルコリンエステラーゼ活性によって測定したとき、前記ブチリルコリンエステラーゼ組成物が、前記組成物中における総タンパク質当たり少なくとも60倍富化される請求項1記載の方法。 前記陰イオン交換材料が膜であり、そして、適用する工程のための流量が、1分間当たり少なくとも膜体積の1.5倍である請求項1記載の方法。 陰イオン交換材料が膜であり、そして、前記膜上に充填される前記生物源材料の導電率が2.8mS/cm以下である請求項1記載の方法。 前記陰イオン交換材料がQ膜であり、そして、少なくとも2つのQ膜を直列に接続する請求項1記載の方法。 陰イオン交換材料が膜であり、そして、前記洗浄工程における前記洗浄バッファーの導電率が3.8mS/cm以下である請求項1記載の方法。 前記陰イオン交換材料が膜であり、そして、前記溶出工程における前記溶出バッファーの導電率が少なくとも5.6mS/cmである請求項1記載の方法。 前記膜が、一連の2つ以上の膜である請求項8記載の方法。 本発明は、陰イオン交換材料を用いるブチリルコリンエステラーゼの精製に関するものであって、その場合、前記ブチリルコリンエステラーゼ含量は、組成物中の総タンパク質当たり少なくとも10倍富化される。本発明により、ブチリルコリンエステラーゼを有する生物源からブチリルコリンエステラーゼ富化組成物を製造する方法であって、以下の工程:ブチリルコリンエステラーゼを有する生物源を陰イオン交換材料に適用する工程;前記材料を洗浄する工程;そして前記陰イオン交換材料からブチリルコリンエステラーゼを溶出させる工程、その場合、前記ブチリルコリンエステラーゼ含量が、陰イオン交換後に、総タンパク質当たりのブチリルコリンエステラーゼ活性によって測定したとき、前記組成物中において総タンパク質当たり少なくとも10倍富化されている、を含む方法が提供される。【選択図】図1