タイトル: | 特許公報(B2)_遺伝子組み換えゼラチンを含む腎臓イメージング剤 |
出願番号: | 2011524849 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 49/00,A61K 47/42,A61K 51/00,C07K 14/78 |
中村 健太郎 田畑 泰彦 JP 5699078 特許公報(B2) 20150220 2011524849 20100730 遺伝子組み換えゼラチンを含む腎臓イメージング剤 富士フイルム株式会社 306037311 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 中村 健太郎 田畑 泰彦 JP 2009177583 20090730 20150408 A61K 49/00 20060101AFI20150319BHJP A61K 47/42 20060101ALI20150319BHJP A61K 51/00 20060101ALI20150319BHJP C07K 14/78 20060101ALN20150319BHJP JPA61K49/00 ZA61K47/42A61K49/02 ZA61K49/00 CC07K14/78 A61K 49/00−49/22 A61K 51/08 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 国際公開第2008/103041(WO,A1) 国際公開第2008/103042(WO,A1) 特開2009−023929(JP,A) Acta Physiologica Scandinavica,1995年,Vol.153,No.1,p51−60 Pharmaceutical Research,1989年,Vol.6,No.5,p422−427 Japanese Journal of Cancer Research,1988年,Vol.79,No.5,p636−646 Journal of Pharmacy and Pharmacology,1987年,Vol.39,No.9,p698−704 炎症と免疫,2008年,Vol.16,No.1,p115−123 Nephrology Frontier,2007年,Vol.6,No.3,p355−361 Diabetes Frontier,2000年,Vol.11,No.5,p677−684 9 JP2010062887 20100730 WO2011013792 20110203 20 20121130 小森 潔 本発明は、遺伝子組み換えゼラチンを用いた、腎臓イメージング剤に関する。 腎臓は、血液から老廃物や余分な水分の濾過し、尿を生成することで体液(細胞外液)の恒常性を維持するとともに、尿素等の蛋白質代謝物の排出を行う臓器である。又、ビタミンDの活性化や、エリスロポエチンの産生、レニンの産生といった内分泌と代謝調整を行っており、生体にとって非常に重要な臓器であることが知られている。 その腎臓の疾患には、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎盂腎炎、高血圧性腎硬化症、糖尿病性糸球体硬化症、腎結石、アミロイド腎、腎静脈血栓症、Alport症候群、腎腫瘍などが存在する。 腎臓は複雑な構造を持つ臓器であり、一部の急性疾患を除いて、通常、一端機能が低下すると元には戻らない。かつ、確実に進行していき最終的には「慢性腎不全」となり、進行が進むことで人工透析が必要になる。 人工透析では、週に2〜3回、一日4〜6時間、生涯透析を続けなければならなくなり、患者のQOLは著しく損なわれる。 同時に人工透析には多額の医療費(1兆3000億円)を必要とすることから、日本の総医療費(33兆円)を圧迫することが問題となっている。 各種腎疾患に対して、現在までに様々な薬物療法が実施されている。例えば、糸球体腎炎に対しては、炎症反応抑制のために副腎皮質ステロイド薬の投与、免疫抑制療法などがある。また、腎臓癌の多くを占める腎細胞癌に対しては、外科的切除以外に、スーテントやネクサバールのような分子標的薬の薬物療法が実施されている。ここで、腎細胞癌とは、腎臓の尿細管上皮細胞が癌化した腺癌のことである。しかしながら、これら薬物療法は、腎臓以外の臓器に対する副作用の強さやその効果などから、現在においても満足する薬物治療は実現できていないのが実情である。 一方、近年では薬物を効率よく目的臓器へ分布させるドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究・実用化が盛んになっている。例えば、リポソーム、エマルジョン、リピッドマイクロスフェア、ナノパーテイクルといった薬物保持小胞を使用する方法。薬剤、及び薬物担体のPEG化による血中安定性の向上、抗体によるアクティブターゲティングなどが存在する。 しかし、これらを用いたドラッグデリバリーには様々な問題点があり、特に腎臓の疾患部位への有効なデリバリーは困難であった。例えば、薬物保持小胞を用いる場合では、薬物保持小胞が肝臓や脾臓等に補足されやすいことなどから、正常な腎臓へのターゲッティングすら難しく、更に、正常な腎臓組織と、疾患を有した腎臓組織を分けてターゲティングするとなると、困難を極めている。 特に腎臓では、その血流量の多さ(成人で0.8〜1.2リットル/分、心拍出量の20〜25%)から通過する薬物量は非常に多いことが知られている。しかし、通過量は多い一方、薬物の多くは、腎臓内小器官へ移行せず、尿中へと排泄される為、その薬効が十分には発揮されていなかった。また、薬物を腎臓内、腎臓内小器官へとターゲッティングするような薬物担体もほとんど実現されていない。わずかながら報告されている有効なターゲティングを補助する薬物担体として、ポリビニルピロリドン系の化合物(Nature Biotechnology 21, 399 - 404 (2003) Synthesis of a poly(vinylpyrrolidone-co-dimethyl maleic anhydride) co-polymer and its application for renal drug targeting)が報告されているが、ポリビニルピロリドンは生体内で全く分解・代謝されない非生体吸収性材料として知られている(JECFA Roma, 24 March-2 April 1980: Toxicological Evaluation of Certain Food Additives: WHO Food Additive Series No.15)。腎臓からのろ過排泄を避ける設計がされた上記化合物では、腎臓への蓄積を成功させる代価として、非生体吸収性材料である異物が腎臓内に長期残留し続けることが大きな問題となり、実用化は困難であるのが実情である。特に、腎臓へ長期に亘って残留することは、予期せぬ薬剤による腎毒性の副作用を増大させることになる。多くの薬剤、造影剤が腎毒性の副作用を生じることが知られている。つまり、腎臓標的化担体としては、望ましくは投与後、即座に腎臓内小器官へと移行する一方、その蓄積効果は一過性であることが重要で、その後は分解・代謝・排泄により腎臓内から適切に除去されることが求められている。例えば、造影剤、PET診断剤(放射性同位体診断薬)などでは、投与後1,2時間で集積し、その後は可能な限り早く除去されることが求められている。しかしながら、上記ポリビニルピロリドン系化合物では、数日以上に亘って腎臓へ高濃度の残留を続けてしまい、この問題を解決することは出来なかった。また、上記ポリビニルピロリドン系化合物では、正常な腎臓組織と疾患を有した腎臓組織を分けてターゲティングすることは出来ない。その為、正常な腎臓へ長期に亘って残留することで、予期せぬ薬剤による腎毒性の副作用を増大させることにしかならず、疾患腎臓へ標的化剤としては実用することが出来ない問題点が存在した。 また、多くのイメージング剤・体内診断薬において、正常な腎臓と、疾患を有した腎臓に対する選択性のないことが問題となっている。腫瘍や炎症の診断においては、FDG(フルオロデオキシグルコース)を用いた疾患部位のPET(positron emission tomography)診断が実施されているが、FDGは生理的な非特異的集積により、正常な腎臓・尿管へ集積してしまう。その為、バックグランドが上がり、腎臓や尿管部位などに生じた疾患部位診断が困難である。体内診断薬においても、正常な腎組織と、疾患状態の腎組織を分けてターゲティングするイメージング剤が求められている。 つまり、腎臓を標的とするイメージング剤としては、蓄積効果は一過性であると同時に、正常な腎臓と疾患を有した腎臓を分けてターゲティングする標的化剤が強く求められている。これに対して、例えばIgA腎症の診断においては、抗IgA抗体を用いた組成物(特表2009−503115号公報)が報告されているが、これで提供される組成物は抗体で構成されることから、限定的な疾患(記載の抗IgA抗体ではIgA腎症だけ)にしか反応しない。その為、著しく汎用性を欠くことから診断薬としても実用的ではない。つまり、幅広く疾患を有す腎臓に対して標的可能である汎用性を有す標的化剤が求められている。 一方、ゼラチンをはじめとする生体高分子はこれまで広く医療材料として用いられてきたが、疾患腎臓のターゲティングに利用出来ることはこれまで知られていなかった。また、近年の遺伝子工学手法の進歩により、大腸菌や酵母に遺伝子を導入することによるタンパク質の合成が行われている。該手法により、種々の遺伝子組み換えコラーゲン様タンパク質が合成(例えば米国特許6992172号明細書、WO2008/103041号明細書)されており天然のゼラチンと比較して、非感染性には優れ、均一であり、配列が決定されているので強度、分解性を精密に設計することが可能であるなどの優位点を有する。しかし、提案されているこれらの用途は天然ゼラチンの代替の域を超えるものではなく、当然ながら疾患腎臓に対する標的化剤としての用途も知られていなかった。Nature Biotechnology 21, 399 - 404 (2003)JECFA Roma, 24 March-2 April 1980: Toxicological Evaluation of Certain Food Additives: WHO Food Additive Series No.15特表2009−503115号公報米国特許6992172号明細書WO2008/103041号明細書 本発明は、生体吸収性材料で構成され、かつ、腎臓に対して短時間で一過性に集積するとともに、その後の腎残留が長引かないような腎臓イメージング剤を提供することを解決すべき課題とした。さらに、本発明は、疾患を有した腎臓に対して幅広く集積し、かつ、その集積性が正常腎臓と疾患腎臓の間で差を有するような腎臓イメージング剤を提供することを解決すべき課題とした。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンなどのゼラチン様タンパク質が、腎臓に集積することを見出すことにより、この腎臓への集積効果を利用して、腎臓イメージング剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明によれば、ゼラチン様タンパク質を含む、腎臓イメージング剤が提供される。 好ましくは、ゼラチン様タンパク質が、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、プロネクチン、ビトロネクチン、又はそれらの組み合わせである。 好ましくは、ゼラチン様タンパク質が、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンである。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が2 KDa以上100 KDa以下である。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が10 KDa以上90 KDa以下である。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む。 好ましくは、細胞接着シグナルがArg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列である。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン及びスレオニンを含まない。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、及びシステインを含まない。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、Asp-Arg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列を含まない。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、式:A−[(Gly−X−Y)n]m−B(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)63]3−Gly(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、腎臓に集積する作用を有するアミノ酸配列を有する。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが架橋されている。 好ましくは、架橋がアルデヒド類、縮合剤、熱架橋、光架橋、又は酵素により施される。 好ましくは、本発明の腎臓イメージング剤は、さらに標識プローブを含有する。 好ましくは、標識プローブが、蛍光色素、放射性同位体、PET用核種、SPECT用核種、MRI造影剤、CT造影剤、又は磁性体である。 好ましくは、蛍光色素が、量子ドット、インドシアニングリーン又は近赤外蛍光色素であり、放射性同位体、PET用核種及びSPECT用核種が、11C、13N、15O、18F、66Ga、 67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、 64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、あるいはそれらの組み合わせであり、MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体が、ガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体・キレート錯体、あるいは又はそれらの組み合せである。 好ましくは、ゼラチン様タンパク質と標識プローブとが、直接又はリンカーを介すことにより物理的又は化学的に結合されている。 好ましくは、該結合が、配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、又は物理吸着である。 好ましくは、腎臓が、疾患を伴う腎臓である。 好ましくは、疾患が、糸球体腎炎、IgA腎症、糖尿病性腎症、膜性腎症、水腎症、造影剤腎症、腎盂腎炎、腎不全、急性腎炎、慢性腎炎、間質性腎炎、腎障害、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、糖尿病性糸球体硬化症、腎結石、アミロイド腎、腎静脈血栓症、Alport症候群、又は腎腫瘍である。 本発明によればさらに、ゼラチン様タンパク質を対象者に投与することを含む、腎臓をイメージングする方法が提供される。 本発明によればさらに、腎臓イメージング剤の製造のための、ゼラチン様タンパク質の使用が提供される。 本発明の腎臓イメージング剤は、腎臓への集積効果を利用して腎臓をイメージングすることが可能である。さらに本発明の腎臓イメージング剤は、腎臓に対して短時間で一過性に集積するとともに、その後の腎残留が長引かないことを特徴とする。さらに、本発明の腎臓イメージング剤は、疾患腎臓に対して正常腎臓よりも高い集積効果を有することを特徴とする。図1は、R-Gelの125Iラベルを示す。図2は、R-Gelの体内残存率を示す。図3は、R-Gelの血中クリアランスを示す。図4は、UUOモデルにおける腎臓病態変化: HE染色した組織切片を示す。図5は、UUOモデルにおける腎臓病態変化(MT染色した組織切片)を示す。図6は、UUOモデルにおいて抗Mac1抗体の腎炎腎への集積を示す。図7は、抗Mac1抗体及びR-Gelともに腎炎腎へと集積している様子を示す。図8は、UUOモデルにおいて、R-Gel及び抗Mac1抗体の腎炎腎への集積を示す。図9は、片腎摘16週令のHIGAマウスにおける糸球体腎炎の発症を腎臓の組織切片で示す(HE染色及びMT染色)。図10は、IgA腎症発症腎へのR-Gelの集積を示す。図11は、I/Rモデルにおける腎障害病態を組織切片で示す。図12は、R-GelのI/R腎への集積を示す。図13は、尿細管上皮細胞によるR-Gelの取込み:共焦点レーザー顕微鏡画像を示す。蛍光画像と、可視光画像(透過光画像)を比較、重ね合わせることで、R-Gelが細胞内に局在していることが分かる。図14は、炎症細胞・腹腔マクロファージによる細胞取り込み試験の結果を示す。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 本発明で用いるゼラチン様タンパク質は本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくはゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、プロネクチン、ビトロネクチンの何れか、又はその組み合わせである。ゼラチン様タンパク質の由来は特に限定されない。ゼラチン様タンパク質は、好ましくはゼラチンであり、特に好ましくは遺伝子組み換えゼラチンである。 本発明で用いることができる遺伝子組み換えゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンを用いることができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして好ましいものは、以下の態様の遺伝子組み換えゼラチンである。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは天然のゼラチン本来の性能から、生体適合性に優れ、且つ天然由来ではないことでBSEなどの懸念がなく、非感染性に優れている。また、本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは天然のものに比して均一であり、配列が決定されているので、強度、分解性においても後述の架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンの分子量は2 KDa以上100 KDa以下であることが好ましい。より好ましくは2.5 KDa以上95KDa以下である。より好ましくは5 KDa以上90 KDa以下である。最も好ましくは、10 KDa以上90KDa以下である。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、好ましくはコラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有する。ここで、複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly−X−Yにおいて、Glyはグリシン、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGXY配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成および配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X,Yであらわされるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%〜45%を占めることが好ましい。好ましくはその配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸がGXYの繰り返し構造であることが好ましい。 一般的なゼラチンは極性アミノ酸のうち、電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、アルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシンを指す。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。且つ該極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、システインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。 一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましく、さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおけるRGD配列の配置として、RGD間のアミノ酸数が0〜100の間、好ましくは25〜60の間で均一でないことが好ましい。 この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましく、遺伝子組み換えゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合に、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。遺伝子組み換えゼラチン内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明の遺伝子組み換えゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明の遺伝子組み換えゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。 また、遺伝子組み換えゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、A−[(Gly−X−Y)n]m−Bの繰り返し構造を有することが好ましい。mとして好ましくは2〜10、好ましくは3〜5である。nは3〜100が好ましく、15〜70がさらに好ましく、50〜65が最も好ましい。 繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれであっても構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、およびV型である。より好ましくは、I型、II型、III型である。別の形態によると、該コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ラットである。より好ましくはヒトである。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9.5である。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは脱アミン化されていない。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはプロコラーゲンおよびプロコラーゲンを有さない。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはテロペプタイドを有さない。 好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン用材料である。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして特に好ましくは、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)の相同性を有し、腎臓に集積する作用を有するアミノ酸配列;を有する遺伝子組換えゼラチンである。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定の遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、遺伝子組み換えゼラチンが産生されるので、培養物から産生された遺伝子組み換えゼラチンを回収することにより、本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンを調製することができる。 遺伝子組み換えゼラチン単独では性能が不十分である場合は、他の材料と混合や複合化を行っても構わない。例えば、種類の異なる遺伝子組み換えゼラチンや他の生体高分子や合成高分子と混合しても構わない。生体高分子としては、多糖、ポリペプチド、タンパク質、核酸、抗体等があげられる。好ましくは、多糖、ポリペプチド、タンパク質である。多糖、ポリペプチド、タンパク質としては例えば、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブロイン、カゼインが挙げられる。さらにこれらは必要に応じて部分的に化学修飾を施されていても構わない。例えば、ヒアルロン酸エチルエステルを用いてもよい。多糖としては、例えば、ヒアルロン酸やヘパリンに代表されるグリコサミノグリカン、キチン、キトサンが挙げられる。さらに、ポリアミノ酸の例としては、ポリーγ―グルタミン酸が挙げられる。 本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは用途に応じて、化学的に修飾することができる。化学的な修飾としては、遺伝子組み換えゼラチンの側鎖のカルボキシル基やアミノ基への低分子化合物あるいは各種高分子(生体高分子(糖、タンパク質)、合成高分子、ポリアミド)の導入や、遺伝子組み換えゼラチン間の架橋が挙げられる。該遺伝子組み換えゼラチンへの低分子化合物の導入としては、例えばカルボジイミド系の縮合剤が挙げられる。 本発明で用いる架橋剤は本発明を実施可能である限りは特に限定はなく、化学架橋剤でも酵素でもよい。化学架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、シアナミドなどが挙げられる。好ましくは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドである。さらに、遺伝子組み換えゼラチンの架橋としては、光反応性基を導入したゼラチンへの光照射、あるいは光増感剤の存在化での光照射によるものが挙げられる。光反応性基としては、例えば、シンナミル基、クマリン基、ジチオカルバミル基、キサンテン色素、カンファキノンが挙げられる。 酵素による架橋を行う場合、酵素としては、遺伝子組み換えゼラチン鎖間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼおよびラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。 遺伝子組み換えゼラチンの架橋には、遺伝子組み換えゼラチンの溶液と架橋剤を混合する過程とそれらの均一溶液の反応する過程の2つの過程を有する。 本発明において遺伝子組み換えゼラチンを架橋剤で処理する際の混合温度は、溶液を均一に攪拌できる限り特に限定されないが、好ましくは0℃〜40℃であり、より好ましくは0℃〜30℃であり、より好ましくは3℃〜25℃であり、より好ましくは3℃〜15℃であり、さらに好ましくは3℃〜10℃であり、特に好ましくは3℃〜7℃である。 遺伝子組み換えゼラチンと架橋剤を攪拌した後は温度を上昇させることができる。反応温度としては架橋が進行する限りは特に限定はないが、遺伝子組み換えゼラチンの変性や分解を考慮すると実質的には0℃〜60℃であり、より好ましくは0℃〜40℃であり、より好ましくは3℃〜25℃であり、より好ましくは3℃から15℃であり、さらに好ましくは3℃〜10℃であり、特に好ましくは3℃〜7℃である。 本発明においては、上記したゼラチン様タンパク質(特に好ましくは、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチン)を、対象者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することによって、標識プローブを腎臓に標的化することができる。即ち、本発明においては、ゼラチン様タンパク質は、腎臓を標的として集積することから、所望の標識プローブを腎臓を標的として送達することができる。従って、本発明においては、ゼラチン様タンパク質は、腎臓イメージング剤として使用することができる。 本発明の腎臓イメージング剤は、ゼラチン様タンパク質と一緒に標識プローブを含むことができる。標識プローブの例としては、蛍光色素、放射性同位体、PET用核種、SPECT用核種、MRI造影剤、CT造影剤、磁性体などが挙げられる。放射線同位体、PET用核種、SPECT(Single photon emission computed tomography)用核種として好ましくは、11C、13N、15O、18F、66Ga、 67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、 64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y 、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、あるいはそれらの組み合わせである。MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体が、ガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体・キレート錯体が挙げられる。また、蛍光色素としては、公知の量子ドット、インドシアニングリーン、近赤外蛍光色素(Cy5.5、Cy7、AlexaFluoro等)が挙げられる。 ゼラチン様タンパク質と標識プローブは、直接あるいはリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていることが好ましく、具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であることが好ましく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。 本発明の腎臓イメージング剤は、疾患を有した腎臓に対して幅広く集積し、かつ、その集積性が正常腎臓と疾患腎臓の間で差を有することを特徴とする。腎臓の疾患としては例えば、糸球体腎炎、IgA腎症、糖尿病性腎症、膜性腎症、水腎症、造影剤腎症、腎盂腎炎、腎不全、急性腎炎、慢性腎炎、間質性腎炎、腎障害、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、糖尿病性糸球体硬化症、腎結石、アミロイド腎、腎静脈血栓症、Alport症候群、又は腎腫瘍などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 本発明の腎臓イメージング剤は、その使用目的に合わせて用量、用法、剤型を適宜決定することが可能である。例えば、本発明の腎臓イメージング剤は、生体内の目的部位に直接投与してもよいし、あるいは注射用蒸留水、注射用生理食塩水、pH5〜8の緩衝液(リン酸系、クエン酸系等)等の水性溶媒等の液状賦形剤に懸濁して、例えば注射、塗布等により投与してもよい。また、適当な賦形剤と混合し、軟膏状、ゲル状、クリーム状等にしてから塗布してもよい。即ち、本発明の腎臓イメージング剤の投与形態は、経口でもよいし、非経口(例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与等)でもよい。剤型としては、例えば錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤、又は注射剤(例えば静脈内注射剤、筋肉内注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤等)等の非経口投与剤を挙げることができる。 本発明の腎臓イメージング剤の製剤化は、当業者に公知の方法に従って行うことができる。例えば、製剤用担体が液体の場合は、溶解又は分散させ、また、製剤用担体が粉末の場合は、混合又は吸着させることができる。さらに必要に応じて、薬学的に許容される添加物(例えば、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、芳香剤、矯味剤、剤皮、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、塑性剤、界面活性剤又は無痛化剤等)を含有させることもできる。 遺伝子組み換えゼラチンの投与量は、特に限定されないが、例えば、投与される生体の体重1kg当たり.10μg/kgから100mg/kgであり、好ましくは100μg/kgから10mg/kgである。 以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。 遺伝子組み換えゼラチンとして以下記載のCBE3を用意した(WO2008-103041に記載)。CBE3分子量:51.6kD構造: GAP[(GXY)63]3Gアミノ酸数:571個RGD配列:12個イミノ酸含量:33%ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。等電点:9.34アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G 以下の実施例では、特に断りのない限り、上記CBE3として表される遺伝子組み換えゼラチンをR-Gelと記載している。 また、その組成から分かる通り、R-Gelはアミノ酸だけから構成されるポリペプチド・蛋白質であり、生体吸収性の材料である。(1)R-Gelのヨードラベル(125I) R-GelをクロラミンT法により125I標識した。 1mgのR-Gelを1mLのbuffer.A(0.5M リン酸緩衝液, 0.5M NaCl, pH7.5)に溶解させた。内200μLに5μLのNaI / NaOH溶液を添加し、更に100μLの0.2mg/mLクロラミンT / buffer. Aを添加して(クロラミンT:ナカライテスク)、ボルテックスで2分間混合した。その後、100μLの4mg/mL SMS(二亜硫酸ナトリウム)水溶液を添加し、ボルテックスで2分間混合した(混合液B)。 予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化したPD-10カラム(GEヘルスケア社)へ混合液Bをアプライし、PBSで溶出した。溶出駅は500μLずつフラクションで回収した。回収したフラクション毎のγ線放射能量をオートウェルガンマシステム(ARC-380:Aloka社)にて測定することで、フラクション中の125Iを計測し、125IラベルされたR-Gelと遊離の125Iを分離した。(図1) これによって、R-Gelの125Iラベル化物を得た。(以後、これを125I-R-Gelと記す) 又、蛋白質の定量にはBCA法を用いている(BCA Protein Assay Reagent:ピアス社)。0.1mg/mL, 1,500万cpm/mLの125I-R-Gel / PBS溶液として得た。 また、比較検討の為、牛骨由来のアルカリ処理ゼラチン(以後、動物ゼラチンと呼称する)を、R-Gelと同重量濃度で上記と同様の処理をすることで、125I-動物ゼラチンを用意した。(2)DDYマウスへの125I-R-Gelの投与 DDYマウス(オス6週令:日本SLC)に、上記で作製した125I-R-Gelを200μL尾静脈投与し、投与後、1時間、3時間、6時間、24時間の組織分布を、各臓器・組織毎のγ線放射能量、及び排泄された尿のγ線放射能量をオートウェルガンマシステム(ARC-380:Aloka社)で測定した。臓器・組織中のγ線放射能量は解剖によって直接に、又、血中γ線放射能量は心採血した200μL中のγ線放射能量から計算により、決定した。 投与に当たっては、『125I-R-Gelをシリンジに採取した状態でのγ線放射能量』から『尾静脈投与後シリンジに残留したγ線放射能量』を引いた分を投与された125I-R-Gel量・γ線放射能量、とした。 尚、全血量は体重の8%重量であるとし、計算した。甲状腺に蓄積した125I-R-Gelは投与量の1%以下であり、遊離の125Iはほぼ存在せず、125IとR-Gelの結合は外れていなかった。 排泄尿中のγ線放射能量を除いた、全ての臓器・組織のγ線放射能量を加算した物を『125I-R-Gelの体内残存量』とし、それを投与されたγ線放射能量で除算した物を『125I-R-Gelの体内残存率』とした。 その結果、125I-R-Gelは投与後24時間後でも40%以上が生体内に残存していることが分かった(図2)。一般に低分子は、尿排泄によって体内残存率がとても低いことが知られている。例えばPM Van Hagenらは、『Evaluation of a radiolabelled cyclic DTPA-RGD analogue for tumor imaging and radionuclide therapy. Int. Journal of Cancer 2000;90:186-198』において、低分子である環状RGDペプチド(cyclic-RGDyK)が投与24時間後には、85%以上が尿排泄で回収されており、つまりは体内残存量が15%以下であることを示している。R-Gelが単体でも良い体内滞在性を有していることが分かる。 また、125I-R-Gelの血中クリアランスを%ID(% of Injected Dose)で表す血中量で測定すると、投与後一定時間における血中量(%ID)は、1時間で17.5±1.5%、3時間で7.9±0.6%、6時間で5.6±1.0%、24時間で1.7±0.3%(Average±S.D.で表示)であった(図3)。低分子であるRGDペプチドや環状RGDペプチド、そのアナログは体内からの急速に排泄され、迅速な血中クリアランスを示すことに比べ、R-Gelが高い血中滞在性を示すことが分かる。血中クリアランスとして、例えば環状RGD(cylclic-RGDfK)のtetramericなペプチド構成物である64Cu-DOTA-E{E[cyclic-(RGDfK)]2}2では、血中量が、投与30分後で0.61±0.01%、4時間後で0.21±0.01%であり、血中クリアランスが非常に早いことがWu Y, Zhang X, Xiong Z, et al.らによって、『microPET imaging of glioma αVβ3-integrin expression using 64Cu-labeled tetrameric RGD eptide. J Nucl Med 2005;46:1707-18.』で示されている。上記結果により、R-Gelにはイメージング剤として有用な「良好な血中滞在性」を有すことが分かる。(3)R-Gel、抗Mac1抗体、PSK(動物ゼラチン)のCy7ラベル R-Gel、抗Mac1抗体(Rat Anti-Mouse CD11b/Mac-1、SouthernBiotech社)、及び豚皮膚由来のゼラチン(以後、PSKと呼称する。新田ゼラチン社)について、蛍光色素Cy7ラベルを施した物を作製した。 Cy7としては、GEヘルスケア社のCy7 mono-reactive NHS esterを使用した。Cy7 NHS esterは10mg/mL濃度でDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解した。 10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、1mgのR-Gelを0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラム(GEヘルスケア社)にアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルしたR-Gel(以後、Cy7-R-Gelと記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7-R-Gelを得た。 同様にして、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、1mgの抗Mac1抗体を0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。 得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルした抗Mac1抗体(以後、Cy7-抗Mac1抗体と記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7-抗Mac1抗体を得た。 同様にして、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、1mgのPSKを0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。 得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルしたPSK(以後、Cy7-PSKと記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7-PSKを得た。(4)片側尿管結紮(UUO)モデル動物の作製 急性腎炎、間質性腎炎、間質性腎障害、腎不全の疾患動物として、片側尿管結紮モデル(以後UUOモデルと記載する)を作製した。動物はマウス(C57BL6、及びDDYマウス、オス、6週令)(日本クレア社、日本SLC)を用いた。UUO処置はネンブタール麻酔下で行い、左腎直下の尿管をニケ所、ナイロン縫合糸で結紮し、結紮したニケ所の間で尿管を切断した。開腹部を縫合し、消毒後に飼育した。これによって、左腎がUUO処置腎臓、右腎は正常な腎臓となる。(5)UUOモデルの病態観察 UUO処置後の左腎、及び正常な右腎について、経時的に組織切片を作製した。生理食塩水で灌流しながら、腎臓を摘出した。摘出した腎組織は10%ホルマリンでホルマリン固定し、パラフィン包埋後、組織切片を作製した。染色はHE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、及びMT(マッソントリクローム)染色を施した。それぞれ染色後の組織切片を図4及び図5に示す。これによって、UUO処置により、左腎で腎炎が生じていることが分かる。また、処置後3日目から明らかな炎症細胞の浸潤が認められた。(6)UUOモデルにおけるR-Gelの疾患腎への蓄積 UUOモデルにおいて、UUO処置後3日目の個体に対し、(3)で作製したCy7-抗Mac1抗体(200μL)を尾静脈投与した。抗Mac1抗体は、細胞表面に発現しているMac1に対する抗体であり、Mac1は炎症細胞マクロファージの表面に発現していることが知られている。 Cy7-抗Mac1抗体を投与し、24時間経過後にルミノ・イメージアナライザーLAS5000(富士フイルム試作品)で撮像、蛍光シグナルの検出及び測定・画像化を行った。可視光画像と蛍光画像を同時に撮像し、両画像の重ねあわせを行うことで蛍光を発する部位を同定した。蛍光画像の撮像に当たっては、光源に落射IR光源を使用し、フィルタには785nmのバンドパスフィルタを使用した。画像解析・シグナル強度の定量にはソフトウェアMultiGauge(富士フイルム)を使用した。これら光源とフィルタはCy7の蛍光シグナルに適したものである。 その結果、Cy7-抗Mac1抗体により、左腎(疾患腎)をイメージングすることに成功した。この際、正常腎である右腎から検出される蛍光シグナルよりも、疾患腎である左腎からの検出シグナルが有意に高かった。(図6、及び図8) 同様にして、UUOモデルにおいてUUO処置後3日目の個体に対し、上記(3)で作製したCy7-R-Gel(200μL)を尾静脈投与した。 Cy7-R-Gelを投与し、24時間経過後にルミノ・イメージアナライザーLAS5000(富士フイルム試作品)で撮像、蛍光シグナルの検出及び測定・画像化を行った。可視光画像と蛍光画像を同時に撮像し、両画像の重ねあわせを行うことで蛍光を発する部位を同定した。蛍光画像の撮像に当たっては、光源に落射IR光源を使用し、フィルタには785nmのバンドパスフィルタを使用した。画像解析・シグナル強度の定量にはソフトウェアMultiGauge(富士フイルム)を使用した。これら光源とフィルタはCy7の蛍光シグナルに適したものである。 その結果、Cy7-R-Gelにより、左腎(疾患腎)をイメージングすることに成功した。この際、正常腎である右腎から検出される蛍光シグナルよりも、疾患腎である左腎からの検出シグナルが有意に高かった(図7、及び図8)。これによりR-Gelは、正常腎よりも疾患腎への集積が有意に高いということが明らかになった。 また、図8には、腎臓直下尿管に切れ目を入れ、十分量の生理食塩水で灌流を施しながら摘出した右腎と左腎を同一条件下でLAS5000により撮像した画像を示した。Cy7色素のみを尾静脈投与した群では、左腎と右腎の蓄積に有意差のないのに比べて、抗Mac1抗体及びR-Gel投与群では左腎への蓄積が右腎に対して有意に高いことが分かる。 従って、本発明のR-Gelで提供される疾患腎臓標的化剤は、急性腎炎、間質性腎炎、間質性腎障害、腎不全を生じた疾患腎臓に対して、正常な腎臓よりも高い集積能を有することが示された。(7)IgA腎症自然発症マウス(HIGAマウス)のモデル準備 IgA腎症、及び糸球体腎炎のモデル動物として、HIGAマウス(日本SLC)を用いた。又、HIGAマウスは通常発症まで25週令程度の時間を要すことが知られているが、本実施例においては、片側の腎臓を摘出することで、自然発症を促進している。HIGAマウスのメスの8週令に対し、片腎摘出の処置を施し、その後、8週(つまり16週令まで)飼育した。片腎摘出の処置は、腎臓摘出の一般的手技に則って実施した。即ち、腎動脈及び腎静脈を結紮した上で腎臓を摘出した。(8)HIGAマウスの病態観察 上記、発症促進した片腎摘16週令HIGAマウス、及び未処置の16週令HIGAマウスについて、腎臓の組織切片を作製した。該組織は十分量の生理食塩水で灌流処置を施した腎組織である。固定は10%ホルマリンでホルマリン固定、パラフィン包埋した後、組織切片を作製した。染色はHE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、及びMT(マッソントリクローム)染色を施した。それぞれ染色後の組織切片を図9に示す。組織中の細胞数(炎症により炎症細胞が増加)で炎症・病態の変化を数値化した。結果、糸球体中では、片腎摘16週令群が未処置16週令群よりも有意に高くなり、一方、間質部分では、片腎摘16週令群と未処置16週令群で有意な変化は生じていなかった。これによって、片腎摘を施した群では、糸球体腎炎の発症が促進されていることが分かった。(9)HIGAマウスにおけるR-Gelの疾患腎への蓄積 片腎摘16週令HIGAマウスに対し、上記(3)で作製したCy7-R-Gel(200μL)を尾静脈投与した。 Cy7-R-Gelを投与し、24時間経過後にルミノ・イメージアナライザーLAS5000(富士フイルム試作品)で撮像、蛍光シグナルの検出及び測定・画像化を行った。可視光画像と蛍光画像を同時に撮像し、両画像の重ねあわせを行うことで蛍光を発する部位を同定した。蛍光画像の撮像に当たっては、光源に落射IR光源を使用し、フィルタには785nmのバンドパスフィルタを使用した。画像解析・シグナル強度の定量にはソフトウェアMultiGauge(富士フイルム)を使用した。これら光源とフィルタはCy7の蛍光シグナルに適したものである。 その結果、Cy7-R-Gelにより、HIGAマウスの疾患腎をイメージングすることに成功した。この際、同量(Cy7モル量として)のCy7のみを投与した群と比較して、Cy7-R-Gelによる疾患腎の蛍光シグナルは有意に高かった(図10)。さらに、未処置16週令群との比較から、Cy7のみを投与した群では、未処置16週令群と片腎摘16週令群で有意差がないのに比べて、Cy7-R-Gelを投与した群では、未処置16週令群よりも片腎摘16週令群における腎臓集積量が有意に高いことが分かった。これによりR-Gelは、正常に近い腎臓よりも、より疾患が進行した腎臓へ多く集積するということが明らかになった。これは、R-Gelが正常な腎臓と疾患腎とで集積差を生じさせるような標的化能を有していることを示している。 従って、本発明のR-Gelで提供される疾患腎臓標的化剤は、腎炎、糸球体腎炎、糸球体性腎障害、IgA腎症、腎不全を生じた疾患腎臓に対して、正常な腎臓よりも高い集積能を有することが示された。(10)虚血再灌流(I/R)の動物モデル作製 虚血再灌流による急性腎不全のモデル動物として、虚血再灌流モデル(Ischemia-Reperfusionモデル:以後I/Rモデルと記載する)を作製した。用いた動物はC57BL6マウスのオスの6週令。左腎へ繋がる腎動脈及び腎静脈部分を、動脈クレンメによって40分間、血流を止める虚血処置を施した。これによって、左腎でのみ虚血再灌流による腎障害を生じさせることが出来る為、右腎は正常な腎臓、左腎をI/Rによる疾患腎として扱うことが出来る。 虚血再灌流による腎障害は、ヒトにおける外科手術の術後後遺症として、また、臓器移植においては一時血流を止める(これで虚血状態が生じる)必要があるが、移植処置後、血流を再開させたことにより生じる腎障害として知られている。(11)I/Rモデル動物の病態観察 上記、I/Rマウスについて、腎臓の組織切片を作製した。該組織は十分量の生理食塩水で灌流処置を施して摘出した腎組織である。固定は10%ホルマリンでホルマリン固定、パラフィン包埋した後、組織切片を作製した。染色はHE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、及びMT(マッソントリクローム)染色を施した。染色後の組織切片を図11に示す。組織中の細胞数(炎症により炎症細胞が増加)で炎症・病態の変化を数値化した。結果、糸球体中で、左腎(I/R腎)の数値が右腎(正常、未処置腎)よりも有意に高くなり、I/Rによる腎障害が生じていた(図11)。処置後1日で大きな病態変化が観察された。これによって、I/R処置による虚血再灌流腎障害の疾患モデル作製出来たことを確認した。(12)虚血再灌流(I/R)モデル動物におけるR-Gelの疾患腎への蓄積 I/Rモデルマウスに対し、上記(3)で作製したCy7-R-Gel(200μL)を尾静脈投与した。 Cy7-R-Gelを投与し、24時間経過後にルミノ・イメージアナライザーLAS5000(富士フイルム試作品)で撮像、蛍光シグナルの検出及び測定・画像化を行った。可視光画像と蛍光画像を同時に撮像し、両画像の重ねあわせを行うことで蛍光を発する部位を同定した。蛍光画像の撮像に当たっては、光源に落射IR光源を使用し、フィルタには785nmのバンドパスフィルタを使用した。画像解析・シグナル強度の定量にはソフトウェアMultiGauge(富士フイルム)を使用した。これら光源とフィルタはCy7の蛍光シグナルに適したものである。 その結果、Cy7-R-Gelにより得られた蛍光シグナルは、正常腎である右腎から検出される蛍光シグナルよりも、虚血再灌流障害腎である左腎からの検出シグナルが有意に高かった(図12)。これによってR-Gelが、正常腎よりも虚血再灌流障害の疾患腎へ有意に多く集積するということが明らかになった。つまり、R-Gelで提供される標的化剤が、正常な腎臓よりも、腎障害を生じた疾患腎臓へ多く集積するということであり、これはR-Gelが正常な腎臓と疾患腎とで集積差を生じさせる標的化能を有していることを示している。従って、本発明のR-Gelで提供される疾患腎臓標的化剤は、虚血再灌流による腎障害を生じた疾患腎臓に対して、正常な腎臓よりも高い集積能を有することが示された。 以上のことより、本発明のR-Gelで提供される疾患腎臓標的化剤は、急性腎炎、間質性腎炎、間質性腎障害、糸球体腎炎、糸球体性腎障害、IgA腎症、臓器移植や外科手術にともなう虚血再灌流による腎障害、といった腎不全を生じた疾患腎臓に対して、汎用的な標的化能を有することが明らかとなった。それとともに、その集積性において、正常腎臓よりも疾患腎臓へ高く集積することが示された。これによって、課題を解決するような疾患腎臓標的化剤を提供することが出来た。(13)尿細管上皮細胞による細胞取り込み試験 次に、腎臓の尿細管上皮細胞がR-Gelを取込むかどうか、を細胞取込み試験によって実験を行った。尿細管上皮細胞を用意した。使用した細胞はヒト尿細管上皮細胞であるRPTEC(ヒト近位尿細管上皮細胞:タカラバイオ社)、培地は腎上皮細胞基本培地(無血清)(REBMTM:タカラバイオ社)及び腎上皮細胞培地キット(0.5% FBS)(REGMTM BulletKitTM:タカラバイオ社)を用いた。5×106cells/mLのRPTEC細胞をT-25フラスコ1枚当たり0.125mL添加し、5mLの培地(血清及び増殖因子添加済み)で培養を行い、十分量まで増殖させた。継代時、及び細胞剥離時には、EDTA含有0.25%trypsin溶液を使用した。その後、35mm細胞培養用ディッシュへ細胞を移し、培養したものを以下の実施例に用いている。 また、R-GelをCy2色素でラベル化したCy2-R-Gelを作製した。工程は全て滅菌状態で行いった。Cy2としては、GEヘルスケア社のCy2 Bis-reactive NHS esterを使用した。5mgのR-Gelを700μLの0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3に溶解し、0.1mgのCy2 Bis reactive NHS esterを添加した。混合液を十分に撹拌した後、遮光状態、37℃で1時間反応させた。得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy2ラベルしたR-Gel(以後、Cy2-R-Gelと記す)とCy2の未反応物を分離し、Cy2-R-Gelを得た。得られたCy2-R-Gelはフィルタ滅菌して用いた。 5cmディッシュ中で培養したRPTEC細胞に対し、培地を3mLにし、そこへ500μLのCy2-R-Gelを添加し、37℃で3時間インキュベートした。その後、十分量のPBS緩衝液で十分回数洗浄を行った。 得られたディッシュ中の細胞を共焦点レーザー顕微鏡(Nikon EZ-C1)で観察し、Cy2-R-Gelが尿細管上皮細胞に取込まれることを示した(図13)。又、添加することで、尿細管上皮細胞のメガリンレセプターを介した取込みを競合阻害することが知られているリゾチームを添加して、同様のCy2-R-Gelの取込み実験を行ったところ、Cy2-R-Gelの取込みが抑制された。 これによって、R-Gelで提供される疾患腎臓標的化剤が、尿細管上皮細胞へ取込まれることも示すことが出来た。腎細胞癌が、腎臓の組織のうち、特に尿細管上皮細胞の癌化による悪性腫瘍であることを考えると、R-Gelが尿細管上皮細胞へ取込まれることは腎細胞癌の疾患腎臓に対する標的化剤としての有用性が高いことも分かる。(14)炎症細胞・腹腔マクロファージによる細胞取り込み試験in vivo動物においてR-Gelが炎症腎へ集積することを示した。 次に、その集積メカニズム解明の為、R-Gelとマクロファージ(Mφ)(炎症細胞)の相互作用を調べた。 R-GelがMφと相互作用を有するか、Mφにより取込まれるか、を調べるために、in vitroでMφによる取込み実験を行った。Mφとしては、マウス腹腔Mφを使用した。マウス腹腔から採取したMφに対し、Cy2でラベルしたR-Gelを添加し、37℃で3時間インキュベートした後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行った。マウスはDDYマウスのオス、6週令を用い、2mLの3%チオグリコレートを腹腔に投与した後、3日後の個体から腹腔Mφを採取した。採取にあたって、培地はRPMI1640を用い、血清には終濃度10%FBSを使用した。 採取・培養したMφに対し、無血清状態で終濃度50μg/mLのCy2-R-Gelを添加し、37度で3時間インキュベートした。その後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、腹腔Mφ細胞中からCy2-R-Gelの蛍光シグナル局在が観察された(図14)。従って、R-Gelは腹腔Mφにより取込まれることが示された。これによって、R-Gelで提供される疾患腎臓標的化剤が、炎症部位で増加する炎症細胞へと取り込まれることが示された。これにより、疾患腎への集積が正常腎よりも高い理由について、その理由の一端をvitroで示唆する結果が得られた。配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる遺伝子組み換えゼラチンを含む、IgA腎症、糸球体腎炎、または虚血再灌流による腎不全を伴う腎臓のイメージング剤。遺伝子組み換えゼラチンが架橋されている、請求項1に記載の腎臓のイメージング剤。架橋がアルデヒド類、縮合剤、熱架橋、光架橋、又は酵素により施される、請求項2に記載の腎臓のイメージング剤。さらに標識プローブを含有する、請求項1から3の何れか一項に記載の疾患を伴う腎臓のイメージング剤。標識プローブが、蛍光色素、放射性同位体、PET用核種、SPECT用核種、MRI造影剤、CT造影剤、又は磁性体である請求項4に記載の疾患を伴う腎臓のイメージング剤。蛍光色素が、量子ドット、インドシアニングリーン又は近赤外蛍光色素であり、放射性同位体、PET用核種及びSPECT用核種が、11C、13N、15O、18F、66Ga、 67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、 64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、あるいはそれらの組み合わせであり、MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体が、ガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体・キレート錯体、あるいは又はそれらの組み合せである、請求項5に記載の疾患を伴う腎臓のイメージング剤。遺伝子組み換えゼラチンと標識プローブとが、直接又はリンカーを介すことにより物理的又は化学的に結合されている、請求項4から6の何れか一項に記載の疾患を伴う腎臓のイメージング剤。該結合が、配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、又は物理吸着である、請求項7に記載の疾患を伴う腎臓のイメージング剤。IgA腎症、糸球体腎炎、または虚血再灌流による腎不全を伴う腎臓のイメージング剤の製造のための、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる遺伝子組み換えゼラチンの使用。配列表