生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_デジタルPCRのための方法
出願番号:2011522567
年次:2011
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

デイビス マーク ダルトン タラ JP 2011530305 公表特許公報(A) 20111222 2011522567 20090811 デジタルPCRのための方法 ストークス バイオ リミテッド 511036945 清水 初志 100102978 春名 雅夫 100102118 山口 裕孝 100160923 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 佐藤 利光 100148699 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 大関 雅人 100114340 五十嵐 義弘 100114889 川本 和弥 100121072 デイビス マーク ダルトン タラ US 61/088,142 20080812 C12N 15/09 20060101AFI20111125BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20111125BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW IB2009007568 20090811 WO2010018465 20100218 18 20110404 4B024 4B063 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA11 4B024HA14 4B063QA13 4B063QQ42 4B063QQ52 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR55 4B063QS34 4B063QX01関連出願 本出願は、2008年8月12日出願の米国特許仮出願第61/088,142号に対して優先権を主張し、その内容は参照によって組み込まれる。技術分野 本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む、核酸増幅反応を行うための方法と装置に関連している。背景 PCRは、遺伝性疾患の検出、遺伝子パターンの特定、感染疾患の診断、遺伝子のクローニング、実父確定検査、および他のタイプの核酸分析などさまざまなタスクのために、医療およびバイオリサーチ環境で日常的に行われる分子増幅方法である。PCR方法論の検討については、例えばBarlett and Stirling (eds.)によるPCR Protocols (Methods in Molecular Biology)、Humana Press (2003)(非特許文献1)やMcPherson and MollerによるPCR、Taylor & Francis (2006) (非特許文献2)を参照のこと。 デジタルPCRは、最小限に希釈された試料からの単一DNA鋳型の増幅を可能にする技術で、1つの鋳型のみから得られ、異なるフルオロフォアまたは異なる対立遺伝子(例えば、野生型対突然変異体または父親対母親対立遺伝子など)を識別するための配列で検出できる単位複製配列を生成する。デジタルPCR方法論の検討については、例えば、Pohl et al., Expert Rev. Mol. Diagn., 4(1):41-7 (2004)(非特許文献3)を参照のこと。この技術の基本前提は、大きな試料をいくつかのより小さな部分容積(分割容量)に分割することであり、これによって部分容積は平均で単一コピーの標的を含む。次に、部分容積におけるポジティブ(positive)を計数することにより、開始容量中の標的の開始コピー数を推定し得る。最も一般的には、部分容積内で適正濃度に達するために開始試料の複数連続希釈法が使用され、その容量は任意のPCR装置によって通常決定される。この追加工程は、処理する試料の数を増加させる。この数を減らすために、統計的に試料全体の代表となる1セットの部分容積を試験する場合がある。しかし、特定の条件下では、非常に発現の低い遺伝子を検出することが必要な場合があり、これは多数のブランクの分割容量をもたらし、ひいては多数の評価すべき部分容積をもたらす。この場合、試料をより濃縮することは可能であるが、そうすることにより著しい変動性と損失が生じる可能性がある(例えば、N. Blow, Nature Methods, 4:869-875 (2007)(非特許文献4)を参照)。さらに、試料をより濃縮するということは、最初により多くの試料が必要となることを意味する。 さらなる検討で、増幅反応の容量を減らすことにより、単一分子検出の感度が向上する可能性があることが示唆されている。例えば、TaqMan(登録商標)分析では、蛍光を検出するために、ほぼ飽和量のPCR増幅生成物が必要である。1つには生成物鎖の再アニーリングのために、PCR反応は通常約1011個の生成物分子/マイクロリットルで飽和する。10μl PCRにおいて30サイクル後にこの生成物濃度に達するためには、少なくとも103個の開始鋳型分子が必要である。PCRの容量を〜10ナノリットルに減少させたところ、TaqMan(登録商標)分析で検出するのに必要な生成物を単一分子によって作製できた。PCR容量を小型化する試みがなされてきている(検討については、例えばZhang et al., Nucl. Acids Res., 35(13):4223-4237 (2007)(非特許文献5)を参照)。それでもなお、試料容量が減少するにつれ、表面対容量比の増加および変動性の他の潜在源のために、増幅は生化学表面吸収問題をますます起こしやすくなる。 従って、デジタルPCRを用いることを含めて、標的コピー数を正確に検出または定量するための方法および装置の必要性が存在する。Barlett and Stirling (eds.)、PCR Protocols (Methods in Molecular Biology)、Humana Press (2003)McPherson and Moller、PCR、Taylor & Francis (2006)Pohl et al., Expert Rev. Mol. Diagn., 4(1):41-7 (2004)N. Blow, Nature Methods, 4:869-875 (2007)Zhang et al., Nucl. Acids Res., 35(13):4223-4237 (2007) 本発明は、試料が液滴に分割されマイクロ流体チャネルを通してキャリア流体の連続流に入れられる、「油中液滴」技術を使用したデジタルPCRを実施するための方法を含む、核酸反応の実施方法を提供する。このような技術の一例がWO 2007/091228(米国特許出願第12/092,261号に対応)、WO 2007/091230(米国特許出願場第12/093,132号)、およびWO 2008/038259、ならびに実施例に記述されている。「連続流PCR」と呼ばれるこれらのシステムの一部では、反応と検出全体を通して液滴は完全にキャリア流体で覆われている。本発明は、10〜500 nlの試料液滴が発現の低い標的のPCR分析に利点を提供するという認識に、少なくともある程度基づいている。本発明のさまざまな態様が以下に記述されている。 特定の態様では、本方法は以下を含む:(a)検出すべき標的核酸を含む開始試料を提供する工程;(b)該試料の少なくとも一部を分割して、チャンネル(例えばキャピラリー)を通る不混和性キャリア流体(例えば油)の連続流に試料液滴のセットを提供する工程であって、該液滴のそれぞれが、平均で約1コピー以下の標的核酸およびポリメラーゼ連鎖反応を行うために十分な試薬を含む、工程;(c)該液滴を複数の熱領域に通すことにより、該標的核酸が存在する場合に該標的核酸を各液滴内で増幅させる工程;並びに、(d)流れている間に、該液滴中の該増幅された標的核酸の有無を検出し、かつ/またはその量を決定する、工程。 試料液滴の容量は、0.1 pl〜500 nl、好ましくは10〜500 nl、より好ましくは30〜350 nlである一方、開始試料の容量は0.05〜5000μl、好ましくは5〜3500μlである。これらの容量は、検出工程の前に添加される試薬(例えば、プライマー溶液など)の容量を含む場合がある 特定の態様では、液滴は球状である。一部の態様では、開始試料の分割によって生成された液滴は、標的核酸の1つ以上のプライマーを含む液滴の第二のセットと合わせられ、それによって増幅反応のための最終液滴が生成される。 一部の態様(「リアルタイム検出」)では、検出または量の決定は複数の熱サイクル時に行われ、これにより、例えばqPCRまたはリアルタイムPCR実施の際など、サイクル全体を通して増幅された標的核酸の量をモニターする。通常、熱サイクルは、少なくとも、増幅のほぼ飽和レベルに到達するのに必要なサイクルの回数行われる。サイクルの回数は標的の濃度および他の条件に依存し、通常20〜40の間である。 好適態様(「エンドポイント検出」)では、検出または量の決定は、ほぼ飽和点に達した後に行われる。エンドポイント検出では、標的核酸の開始コピー数は、一定の液滴中、最終的に増幅された液滴の数を数えることによって決定される場合がある。 分析されるセットにおける液滴の数は、それらを合わせた容量が開始試料の代表となるものである。液滴のセットは、開始試料中に存在するかまたは存在すると思われる標的核酸のコピー数に依存して、開始試料全体またはその一部のみを含む。標的核酸の開始濃度は、開始試料を希釈または濃縮することによって調整してもよい。例証的態様では、液滴のセットは一連の液滴10個を含み、開始試料では0.005 ng/μl cDNAである。 さらに本発明は、複数の開始試料を並行して処理する方法を提供し、ここで、開始試料の少なくとも一部は(a) 様々な濃度の標的核酸および/または(b) 様々な標的核酸を有する。一部の態様では、異なる開始試料からの液滴のセットは、チャネルにおいてキャリア流体の連続流中に一連の交互液滴を形成する。これらおよび本発明の他の態様を下記に詳細に記述する。GAPDH cDNAの4種類の濃度(5、0.5、0.05、0.005 ng/μl)で連続的に希釈された試料の増幅曲線を示す。増幅は実施例1に記述されるように実施された。閾値(ここでは0.3に設定)と各増幅曲線の交点がCt値を定義する。図1に示される結果に基づいた濃度の関数としてのCt値を示す。線の傾きにより、増幅効率を測定することができる。図1に示されるように、鋳型濃度を減少させた液滴10個の4セットからの蛍光シグナルを示す。プロットは、サイクル7(図3A)および42(図3B)での測定値を比較している。実施例2に記述されている研究に基づいた増幅トレースを示す。図4Aは、サイクル42における、鋳型なし対照(NTC)液滴に続く、増加させた試料濃度7種類の液滴蛍光トレースを示す。図4Bは、10個の1650 pg/μl液滴の増幅曲線を示す。図4Cは、Ctデータから作成された標準曲線を示し、300 nl液滴でほぼ単一分子の検出を示している。実施例3に記述されるように実施された、0.005 ng/μl cDNAの300μl試料からの液滴3,000個のセットに対する典型的なPCR熱サイクルトレースを示す。本発明の詳細な説明一般的方法 本発明は、検出されるべき標的核酸を含むかまたは含むことが疑われる試料で、PCRなどの核酸増幅反応を実施する方法を提供する。本明細書に記述される方法は、選択増幅方法としてPCRを利用しているが、PCRの代わりに別の核酸増幅技術を同様に使用してもよい。このような技術には、例えばリガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅システム(TAS)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、分枝RCA(HRCA)などが含まれる。 一般的に、本発明はいわゆる「デジタルPCR」および、開始試料をより小さな反応容量(これらの大部分は1コピー以下の標的を含む)に分割することによって核酸鋳型の開始コピー数を定量することができる類似の方法に関連している。 本発明の方法は、ある量の核酸標的の存在の決定のため、および例えば遺伝子発現解析に使用してもよく、発現の低い遺伝子に対して特に有用である。 一般的に、本発明の方法には、少なくとも以下の工程が含まれる:(a)検出すべき標的核酸を含む開始試料を提供する工程;(b)該試料の少なくとも一部を分割して、チャンネル(例えばキャピラリー)を通る不混和性キャリア流体(例えば油)の連続流に試料液滴のセットを提供する工程であって、該液滴のそれぞれが、平均で約1コピー以下の標的核酸およびポリメラーゼ連鎖反応を行うために十分な試薬を含む、工程;(c)該液滴を複数の熱領域に通すことにより、該標的核酸が存在する場合に該標的核酸を各液滴内で増幅させる工程;並びに、(d)流れている間に、該液滴中の該増幅された標的核酸の有無を検出し、かつ/またはその量を決定する、工程。 一部の態様(「リアルタイム検出」)においては、例えばqPCRまたはリアルタイムPCRを行う際、量を検出または決定する工程を複数の熱サイクルで行うことにより、サイクル全体を通して増幅された標的核酸の量をモニターする。通常、熱サイクルは少なくとも増幅の飽和レベル近傍に到達するために必要な回数行われる。サイクル数は標的の濃度や他の条件によるが、通常20回〜40回の間である。Ctの標的濃度への依存は実施例1で説明する。一部のこのような実施例においては、標的核酸のCt値は各サイクルの増幅軌跡を検出することにより決定する。「リアルタイム」検出は、標準曲線を作成するため、および検査試料内の標的を定量するために用いてもよい。 好適な態様(「終点検出」)において、含有量を検出または決定する工程は飽和レベル近傍に到達した後に行う。終点検出において、標的核酸の開始コピー数は、特定セットの液滴においてポジティブに増幅された液滴を数えて計数することにより決定されうる。液滴および試料 開始試料は少なくとも一つの標的核酸を含む(または含むことが疑われる)。なお、「開始試料」とは、液滴が生成される試料である。例えば、開始試料を従来の348ウェル位置のウェルに配置し、そこから液滴試料を抽出すればよい。開始試料の容積は異なってもよく、例えば0.05〜5000μl、好ましくは5〜3500μl、例えば5〜1000μl、50〜500μl、100〜350μlでもよい。一部の態様においては、開始試料を分割することにより生成した液滴を標的核酸のプライマーをもう一つ含む第2の液滴セットと混合して最終液滴を生成する。一部の態様では、開始試料は少なくとも2、5、10、100、500、1000またはそれ以上の標的核酸のコピーを含む。 液滴試料の容積は0.1pl〜500nl、好ましくは1pl〜500nl、10pl〜500nl、100pl〜500nl、1〜500nlまたは10〜500nl、さらに好ましくは30〜350nlである。一部の態様では、液滴試料の容積は50〜500、100〜500、150〜500、200〜500、50〜400、100〜400、150〜400、200〜400、50〜300、100〜300、150〜300、200〜300、または150〜250nlである。これらの容積は、検出工程の前に添加される試薬(例えば、プライマー液)の容積を含むこともある。一部の態様において液滴は球状であるが、他の態様において液滴はチャンネルの軸に添って引き伸ばされている。 分析されるセットの液滴数は、その合計容積が開始試料の代表となるものである。液滴セットは、開始試料中に存在するまたは存在すると疑われる標的核酸のコピー数に応じて、開始試料の全てまたは一部を含む。例えば、 開始試料容積の合計10%を含む液滴セットは、標的核酸を100コピー含む開始試料の代表となると考えられる。従って、分析される液滴のセットの期待数に応じて、該セットは数滴から数千滴の液滴を含む。一部の態様において、特定の標的核酸に対する液滴セットは、例えば5〜10000滴、例えば100〜5000、5〜1000、100〜500、5〜50、6〜30、10〜25滴、8滴以上、または10滴以上を含む。その他の態様においては、少なくとも開始試料の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が、または開始試料の全てが、液滴に分割される。 標準デジタルPCRは、分割された容積の半分のみがポジティブになる試料の希釈度を決定することを目的とする。この希釈度は、標的核酸が分割容積あたり平均で1/2に希釈されることを示す。本方法により、その多くはブランクかもしれないが、はるかに多数の分割容積を分析することができる。一部の態様において、セット中の液滴の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上の液滴は標的核酸を含まない。例えば、終点検出において、セットにおける10個以上(例えば20、50、100、1000、5000、または10000個)の液滴の50%未満(例えば、30%、20%、10%、5%以下)がポジティブに増幅されている。従って一部の態様において、容積に関係なく開始試料は1ゲノム当量以下の核酸を含む。特定の適用においては、DNAの質量はゲノムあたり〜3pg(例えば、3.3pg/ゲノム)と仮定されてもよい。 試料は分割して複製物(例えば、デュプリケート、トリプリケート等)としてもよく、そのなかで発現量が測定される。試料は同じ供給源に由来し得、増幅前に分割して複製してもよい。さらに、試料の連続希釈物を生成してもよい。複製物または希釈試料は、連続または並行して分析してもよい。並行処理システムにおいて、例えばWO2008/038259に開示されるように、別々の開始試料に相当する液滴セットが一連の交互の液滴を形成し、これが、液滴を増幅するサーマルサイクラーを通過する。様々な濃度の標的核酸および/または様々な標的核酸を伴う複数の開始試料は、このように並行して処理されてもよい。 試料は、得られた細胞や組織の物質、例えば細胞または組織の溶解物または抽出物を含んでいてもよい。抽出物は、ゴルジ複合体、ミトコンドリア、リソソーム、小胞体、細胞膜、および細胞骨格等の細胞内成分に富む物質を含んでいてもよい。一部の態様において、生体試料は単細胞から得られた物質を含む。生体試料は様々の供給源に由来してもよい。例えば生体試料は、様々な発育段階、分化段階、病期、および種(ヒト、ヒト以外の細菌やウイルス)の生物体全体、臓器、組織、または細胞から得ることができる。試料は、様々な処理条件(例えば、化学ライブラリの試験化合物)、組織または細胞種、または供給源(例えば、血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、痰、ふん便)等を表しうる。生体試料から核酸を抽出する様々な方法が知られている(例えば、Nucleic Acids Isolation Methods, Bowein (ed.)、American Scientific Publishers (2002)参照)。通常、ゲノムDNAは、ランダムな長い断片を作成するために機械的にせん断した細胞核抽出物から得られる。例えば、ゲノムDNAは、製造業者の手順にしたがってキアゲン社製のDNeasy Blood & Tissue Kitを用いて組織または細胞から抽出してもよい。 RNA分析(例えば、mRNA、siRNA等)の場合、例えば遺伝子発現解析の場合のように、PCRを行う前に核酸は始めにcDNAに逆転写される。この種のPCRは一般に「RT-PCR」と呼ばれ、実施例で説明する。油中液滴システム 本発明の方法を実施するには、適切であればどの装置を用いてもよい。一般的に、PCR装置は試料調製システム、サーモサイクラー、および検出装置を含む。試料調製時において試料は液滴に分割され、これが、円形の断面をもつキャピラリー等のチャンネルを連続的に流れる不混和性流体(例えば、シリコーン油や鉱油)に覆われる。各液滴を包む油は、一連の液滴の間の交差汚染および持ち越し汚染を回避する。試料はあらかじめプライマーと混合してもよく、または液滴にプライマーを添加してもよい。一部の態様において、開始試料を分割することによって生成した液滴を、標的核酸のプライマーを一つ以上含む第2の液滴セットと混合して最終液滴を生成する。液滴の混合は、WO2007/091230(米国特許出願番号12/093,132)およびWO2008/038259に記載されているように、例えば液体ブリッジを一つ以上用いて成すことができる。 調製システムからの液滴の列は、サーマルサイクラーを通ってもよい。試料が装置を通る速度は、外部のポンプ装置により制御されるキャリア液の速度の制御に依存する。試料は、完全なサーマル装置のN回の増幅サイクルを通るのと同じサーマルサイクリングと化学反応を受ける。これにより、各サイクル後に最大二倍の増幅が得られ、さらに、I が初期生成物、Eが反応の効率、Nがサイクル数を示す合計増幅I(1+E)Nが得られる。各液滴には蛍光プローブが含まれる。蛍光レベルは、例えばリアルタイムPCRの場合、各サイクル毎に各液滴で検出される。これには、例えば米国特許第5,723,591号および同第5,928,907号; www.idahotech.com; Gudnason et al., Nucleic Acids Res., 35(19):e127 (2007); および実施例に記載の、Taqman(登録商標)プローブ等の蛍光プローブおよび、SYBR GreenおよびLCGreen(登録商標)等のインターカレーティング蛍光塗料を用いる場合がある。 本発明の方法に用いるための例示的システムは、例えば、WO2007/091228 (米国特許出願第12/092,261号); WO2007/091230 (米国特許出願第12/093,132号);およびWO2008/038259に記載されている。このようなシステムの一つは、Stokes Bio (www.stokebio.ie)により製造されている。本発明の方法に適したその他の例示的なシステムは、例えばZhang et al. Nucleic Acids Res., 35(13):4223-4237 (2007)に記載され、さらに、Fluidigm (www.fluidigm.com), RainDance Technologies (www.raindancetechnologies.com), Microfluidic Systems (www.microfluidicsystems.com); Nanostream (www.nanostream.com);およびCaliper Life Sciences (www.caliperls.com)により製造されるものも含まれる。さらなるシステムは、例えばWang et al., J. Micromech. Microeng., 15:1369-1377 (2005); Jia et al., 38:2143-2149 (2005); Kim et al., Biochem. Eng. J., 29:91-97; Chen et al., Anal. Chem., 77:658-666; Chen et al., Analyst, 130:931-940 (2005); Munchow et al., Expert Rev. Mol. Diagn., 5:613-620 (2005);およびCharbert et al., Anal. Chem., 78:7722-7728 (2006);およびDorfman et al., Anal. Chem, 77:3700-3704 (2005)を参照する。 以下の実施例は本発明の態様を説明するものであり、本発明はこれに限定されない。実施例1: 段階希釈によるqPCR増幅効率の測定 総RNAを培養細胞から抽出して、cDNAに逆転写し、qPCR反応のための鋳型として使用する。鋳型の開始濃度は、5ng/μlであり、次いで0.5ng/μlに10倍希釈する。この10倍希釈を繰り返して、4種類の濃度のcDNA鋳型:5ng/μl、0.5ng/μl、0.05ng/μlおよび0.005ng/μlを含む試料を得る。Stokes Bio デバイス(www.stokesbio.ie)を使用して得られる、得られた増幅曲線を図1に示してある。図から分かるように、開始鋳型濃度が低ければ低いほど、蛍光シグナルを閾値レベルにするために必要なPCRサイクル数は多くなる。実際に、PCR反応が100%の効率である場合、0.5ng/μlの試料が5ng/μlの試料(0.5ng/μlの試料の10倍)と同じ閾値に到達するためには、更に3.32サイクルのPCRが必要でありうる。増幅曲線が閾値に到達する部分(fractional)サイクルは、Ct値と呼ばれる:試料の遺伝子発現の規準。閾値は、図1の各セットの増幅曲線について対応するCt値の0.3読み取り値にセットする。Ct値は、図2においてcDNA濃度に対してプロットしてある。このデータの解析から、最適な線の勾配が-3.53±0.13であることが示唆され、Applied Biosystems 7900HTなどの標準的PCTシステムでのqPCRで予想される範囲内である92%±4%の増幅効率が見積もられる。 図3Aは、Stokes Bioデバイスを使用する50サイクルの増幅のサイクル7からの蛍光シグナルを示す。小さなスパイクのそれぞれが、通過する液滴を表す。遠くの左のスパイクは、先頭の液滴を表す。各液滴のセットの濃度は、図に示したとおり、0.005から5ng/μlの範囲である。データの2つの局面が明らかにされる--油が満たされたキャピラリーからのバックグラウンド蛍光および各液滴からのバックグラウンドシグナルがあり-両方が一定であること。図3Bは、増幅が完了するときのサイクル42における同じ液滴を示す。セットにおける10個の液滴それぞれからのシグナルが、液滴間で異なることに注目されたい。これは、チャンネルごとの光学系が同一ではないためである。この効果は、データ処理の間に容易に規準化される。最高レベルの希釈(0.005ng/μl)では、10個の液滴中の4つのみが増幅された。これは、このレベルの鋳型希釈および液滴容積について予想される統計的な効果である。データ処理アルゴリズムは、これを考慮するようにデザインされている。実施例2: 高スループットqPCR性能妥当性確認 遺伝子発現の解析は、ゲノム機能解析の必須要素であり、qPCRに基づいた発現プロファイリングは、選択された遺伝子の正確なモニターのための黄金律である。遺伝子発現は、mRNAのcDNAへの逆転写に依存する。しかし、逆転写工程の効率に関する対照はないので、mRNAの完全な定量のための基準としてcDNAを使用することは一般に不可能である。この実施例は、標準的qPCRにおいて一般に使用される、ゲノムDNA(gDNA)からの、Stokes Bioによる増幅の代表的性能データを示す。 TaqMan(登録商標)RNase P遺伝子プライマーおよびプローブセットを使用して機器性能を評価する。RNase P遺伝子は、RNase P酵素のためのRNA部分をコードする1コピーの遺伝子である。複数の二倍希釈物をgDNAコピー数が公知のストックから作製する。これらの希釈物を使用して、Stokes Bio機器における増幅のための完全なqPCR反応を調製した。表1は、7つの反応セットのそれぞれについて、gDNA鋳型濃度を、対応する平均のCtおよび推定の開始コピー数と共に示す。また、鋳型なしの対照(NTC)も含まれるが、増幅は示さない。図4Aは、7セットの300nl液滴10個での、3回のNTC反応の液滴蛍光トレースを示す。10×複製物セットそれぞれは異なる濃度試料から採取した。インセットプロットは、各300nl液滴について優れたデータ分解能を示す。図4Bは、26.4のCtをもつ最も濃縮された反応セットの規準化された増幅プロットを示す。図4Bは、表1のCtデータから得た標準曲線を示す。エラーバーは、10×複製物セットそれぞれにおけるCt範囲を示す。Ctのばらつきは、ポアソンノイズまたは所与の濃度における液滴間の開始コピー数の変動に起因する。*3.3pgにつき1コピーを使用して決定した実施例3: デジタルPCR終点検出 この技術に関する前提は、出現する液滴に対して蛍光検出を行うための増幅過程後に、大きな容積を控えめな数のより小さな容積に分けて、それぞれの試料におけるコピーの数を減少させることである。したがって、増幅により生じる液滴の合計数を、開始コピー数を決定するために使用することができる。また、これは、希少な標的検出のためにも使用することができ、ここで、バックグランド分子の数が分割によって減少されるので、希少な標的についての増幅の統計確率が増加する。 統計的予測モデルを使用して、分割液滴に分配された標的分子の確率を得ることができる。これは、分子を含む液滴の数、およびしたがって蛍光を発することが予想される液滴の数の予測を提供するので、特に低濃度試料のために有益である。 使用した二項分布モデルは、多くの一般的状況において生じる離散確率分布である。認識された二項分布の例では、一定回数の独立したコイントスにおける表の数を計数するが、本明細書においては、元の試料から作製された一定の既知数の液滴におけるコピー数を計数する。一連のn回の独立試行またはn個の独立コピーにおいて、各試行またはコピーは、成功(計数される結果)または失敗を生じる。言い換えると、各コピーは2つの潜在的結果を有し、これは、モニターされる液滴に入るかまたは入らない。3000個の液滴に分割された試料については、モニターされる液滴ごとに、それぞれのコピーが同じ成功確率p(3000分の1)を有する。二項分布モデルは、一定回数の試行における成功の数を計数する。二項分布は、2つのパラメーターである主要容積におけるcDNAコピーの数n、およびそれぞれのコピーに共通する成功確率pによって、完全に決定される。結果として、コピー数および液滴の数を知ることにより、二項分布を使用することができる。 図5は、0.005ng/μlの試料についての典型的なトレースを示す。ここで示されたデータは、300μlの試料容積を使用し、これが100nl液滴容積をもつ〜3000個の液滴に分けられている。 もう一つの実験において、デジタルPCRは、最小限に希釈した試料から単一のDNA鋳型を増幅する工程、および1つの鋳型のみに由来する単位複製配列を生成する工程を伴う。これにより、従来のPCRから得られる指数関数的なアナログシグナルが、直線的なデジタルシグナルに変換され、したがって、PCR産物の統計分析が可能になる。 標的核酸配列のコピー数に対応するゲノムDNAの質量を決定するために、以下の式を使用した:N =(m x NA)/MM=n x 1.096 x 10-21 g/bp式中、nは、塩基対の数であり、mは、DNAの質量であり、NAは、アボガドロ数(6.02×1023 bp/mol)であり、およびMは、塩基対の平均分子量である。 ヒトゲノムDNA 10ng/μlの一連の2倍希釈を行った。関心対象の遺伝子は、RNAse P遺伝子であり、これは、一倍体ゲノムあたり単一コピーとして存在する。上記の式に基づいて、350nl液滴あたりのRNAse P遺伝子のコピー数を表2に示してある。 ゲノムあたりのDNA質量は、3.3pg/ゲノムであると想定された。PCR増幅は、一連の10個の鋳型なし対照(NTC)、続いてそれぞれのコピー数にて350nl容積の10個の液滴で、Stokes HTIで実施した。結果は、低コピー数にて、個別の液滴の増幅が生じたことを示す。この増幅のS曲線解析は、閾値サイクル(Ct)値が別々のCt値周辺に密集していることを示すようだった。 本開示において引用される全ての刊行物、特許、特許出願および生物学的配列は、これらの全体が参照により援用される。 核酸増幅反応を行う方法であって、(a)標的核酸を含む開始試料を提供する工程;(b)該試料の少なくとも一部を分割して、チャンネルを通る不混和性キャリア流体の連続流に試料液滴のセットを提供する工程であって、該液滴のそれぞれが、平均で約1コピー以下の標的核酸およびポリメラーゼ連鎖反応を行うために十分な試薬を含む、工程;(c)該液滴を複数の熱領域に通すことにより、該標的核酸が存在する場合に該標的核酸を各液滴内で増幅させる工程;並びに、(d)流れている間に、該液滴中の該増幅された標的核酸の有無を検出し、かつ/またはその量を決定する、工程を含む、方法。 各液滴の容積が0.1pl〜500nlである、請求項1記載の方法。 各液滴の容積が10〜500nlである、請求項2記載の方法。 各液滴の容積が30〜350nlである、請求項3記載の方法。 試料全体の代表となる一部の試料を液滴に分割する、請求項1記載の方法。 開始試料が少なくとも10コピーの標的核酸を含み、かつ該試料の少なくとも10%が分割される、請求項5記載の方法。 液滴のセットが5〜50個の液滴を含む、請求項5記載の方法。 開始試料からの液滴のセットが、それぞれ500nl以下の液滴100個以下を含む、請求項5記載の方法。 セットにおける8個以上の液滴の少なくとも50%が標的核酸を含まない、請求項1記載の方法。 工程(d)を複数の熱サイクルで行うことにより、サイクル全体を通る増幅された標的核酸の量をモニターする、請求項1記載の方法。 標的核酸についてのCt値を決定する工程を含む、請求項1記載の方法。 ポジティブに(positively)増幅された液滴の数が飽和後に計数される、請求項1記載の方法。 セットにおける10個以上の液滴の50%未満がポジティブに増幅される、請求項12記載の方法。 開始試料を調製するためのmRNAの逆転写を含む、請求項1記載の方法。 開始試料が1ゲノム当量以下の核酸を含む、請求項1記載の方法。 並行して複数の開始試料を処理する方法であって、それぞれが請求項1に従い、少なくともいくつかの開始試料が(a)様々な濃度の標的核酸および/または(2)様々な標的核酸を有する、方法。 並行処理が異なる試料由来の液滴セットを含み、該セットがチャンネルでの連続流において一連の交互液滴を形成する、請求項16記載の方法。 流れている間に液滴が不混和性キャリア流体に包まれたままである、請求項1記載の方法。 チャンネルが円形横断面を有するキャピラリーを含む、請求項1記載の方法。 液滴が球形である、請求項1記載の方法。 開始試料を分割することによって作製される液滴が、標的核酸のための1つまたは複数のプライマーを含む第2の液滴セットと混合されて、最終的な液滴を生じる、請求項1記載の方法。 液滴が1つまたは複数の液体ブリッジを使用して混合される、請求項21記載の方法。 核酸増幅反応を行う方法であって、(a)約1ゲノム当量の核酸を含む開始試料を提供する工程;(b)該試料の少なくとも一部を分割して、チャンネルを通る不混和性キャリア流体の連続流に少なくとも10個の試料液滴のセットを提供する工程であって、該液滴が、ポリメラーゼ連鎖反応を行うために十分な試薬を含む工程;(c)該液滴を複数の熱領域に通すことにより、標的核酸が該液滴内に存在するならば該標的核酸を飽和レベルの近くまたはそれを超えるまで増幅させる、工程;並びに、(d)流れている間に、該液滴中の増幅された標的核酸の有無を検出し、かつ/またはその量を決定する工程を含む、方法。 本発明は、「油中液滴」技術を使用するデジタルPCRを行うための方法を含む、核酸反応を行う方法を提供する。本方法において、開始試料は、それぞれが平均で約1コピー以下の標的核酸を含む試料液滴のセットに、少なくとも部分的に分割される。液滴は、チャンネルを通って不混和性キャリア流体の連続流に通され、これがサーマルサイクラーを通過することによって、標的が増幅される。一つの実施例では、液滴は、それぞれ約350nlであり、かつポジティブに(positively)増幅された液滴の数は、飽和近くの時点にて計数される。


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