生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_抗TIM−3抗体を用いた血液腫瘍治療法
出願番号:2011508396
年次:2015
IPC分類:A61K 39/395,A61P 35/02,A61P 35/00,G01N 33/53,C12N 15/09,C07K 16/28


特許情報キャッシュ

高柳 晋一郎 稲垣 好昌 赤司 浩一 菊繁 吉謙 JP 5748653 特許公報(B2) 20150522 2011508396 20100409 抗TIM−3抗体を用いた血液腫瘍治療法 協和発酵キリン株式会社 000001029 国立大学法人九州大学 504145342 特許業務法人栄光特許事務所 110002000 高柳 晋一郎 稲垣 好昌 赤司 浩一 菊繁 吉謙 US 61/168428 20090410 20150715 A61K 39/395 20060101AFI20150625BHJP A61P 35/02 20060101ALI20150625BHJP A61P 35/00 20060101ALI20150625BHJP G01N 33/53 20060101ALI20150625BHJP C12N 15/09 20060101ALN20150625BHJP C07K 16/28 20060101ALN20150625BHJP JPA61K39/395 TA61K39/395 EA61P35/02A61P35/00G01N33/53 YC12N15/00 AC07K16/28 A61K 39/395 A61P 35/00 A61P 35/02 G01N 33/53 C07K 16/28 C12N 15/09 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特表2007−530560(JP,A) 特表2005−526018(JP,A) 特表2008−500013(JP,A) 特表2011−518313(JP,A) MAJETI, R. et al.,Dysregulated gene expression networks in human acute myelogenous leukemia stem cells.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,2009年,Vol.106, No.9,p.3396-3401 9 JP2010056445 20100409 WO2010117057 20101014 40 20130402 天野 貴子 本発明は、ヒトTIM-3蛋白(別名:ヒトHAVCR2)に対する抗体を有効成分とする、骨髄性悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia; AML)に対する治療薬および診断薬に関する。さらに、本発明は、白血病幹細胞の単離方法に関する。悪性腫瘍について 悪性腫瘍(癌)は、わが国における死亡原因の第一位を占め、さらに患者数は年々増加してきており、有効性及び安全性の高い薬剤や治療法の開発が強く望まれている。悪性腫瘍を形成する原因として、放射線、紫外線や各種発癌性物質によるDNAの変異がある。悪性腫瘍に関する研究は、これら遺伝的な変化を分子生物学的に同定することに注力されてきた。その結果、多数の変異の蓄積などにより腫瘍化が引き起こされると考えられている。いくつかの決定的な変異については細胞株のモデルなどにより腫瘍化に直結することが示されてきている。本発明の対象疾患の一つである白血病においては、染色体異常が多く認められ、分類されている。その多くが染色体転座であり、おもな染色体転座についてはすでに転座関連遺伝子が同定されている。転座関連遺伝子の機能解析により、その遺伝子が白血病の発症に関与する例が知られている。癌幹細胞について 一方、細胞生物学的な見地から、正常組織同様に幹細胞が悪性腫瘍の起源であるとする、いわゆる癌幹細胞仮説が古くから提唱されてきた。幹細胞は、自己複製能と多分化能を有する細胞であると定義され、一般に全能性幹細胞と組織幹細胞に大別される。組織幹細胞は、血液系、肝臓、神経系など特定の組織・臓器の起源であり、極めて低い頻度で存在する。中でも造血幹細胞はもっとも研究が進んでいる。致死量の放射線照射により造血系を破壊したマウスに対し、1個の造血幹細胞を移植することで長期にわたって造血系を再建できることが報告されている(非特許文献1)。癌幹細胞は、正常幹細胞と異なり、長い間その実体を捉えられず、研究が遅れていた。しかし、1997年にDickらにより、急性骨髄性白血病においてはじめて癌幹細胞が同定された(非特許文献2)。以後、様々な悪性腫瘍において癌幹細胞の存在が報告されている。総合すると、腫瘍全体の数%以下の頻度で存在し、正常幹細胞同様に希少な細胞である。腫瘍を形成する残りの細胞は増幅能力の制限された腫瘍前駆細胞または腫瘍細胞であると考えられる。 これらの報告により、腫瘍においても正常組織同様にヒエラルキーが存在し、その頂点(起源)にある癌幹細胞が強い腫瘍形成能を有することが示された。以上のことから、正常な幹細胞にさまざまな変異が加わり、いわゆる癌幹細胞へ変化することが悪性腫瘍発症の始まりと考えられている。癌幹細胞の特性と治療上の問題 多くの報告を総合すると、癌幹細胞は正常幹細胞の持つ様々な特性を保持していると考えられる。たとえば、希少な細胞であること、幹細胞が存在する微小環境(niche)、多剤耐性遺伝子を含む遺伝子発現、細胞周期などに関する類似性が挙げられる。 なかでも、癌幹細胞は、正常幹細胞同様に多剤耐性遺伝子群を発現することと、細胞周期の休止期に存在するという特性は治療上の大きな問題点となりうる。多剤耐性遺伝子BCRPは様々な抗癌剤を細胞外に排出することで薬効を減弱させるポンプであり、その活性を利用した幹細胞の採取法が報告されている(非特許文献3)。幹細胞は、一生にわたって細胞を供給するために、分裂を極力控えた「冬眠」状態にあると考えられており(非特許文献4)、多くの抗癌剤や放射線に対する感受性が低下している(非特許文献5及び6)。これらの特性により、希少な癌幹細胞が治療に抵抗性を示すことが腫瘍再発の原因と考えられている。分子標的薬について 悪性腫瘍の治療は、抗癌剤療法、放射線療法、切除の3つが主な方針となる。血液腫瘍においては、抗癌剤療法と放射線療法に限られ、癌幹細胞がこれらの治療に対する抵抗性を持ちうることは前述したとおりである。もう一つの問題は、この二つの治療は影響が全身に及ぶため、副作用が大きい。この問題に対する対策の一つが分子標的医薬である。標的分子が発現している細胞でのみ薬効が発揮されることにより、副作用が軽減される。 血液疾患領域における分子標的医薬の代表的なものとして、イマチニブとリツキシマブが挙げられる。イマチニブは、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia;CML)患者の95%に観察される染色体異常(フィラデルフィア染色体)により産生される、Bcr-Ablという白血病化因子を標的とするものである。Bcr-Ablの機能を阻害することにより、白血病細胞の自殺を誘導する低分子医薬品である。リツキシマブは、B細胞上の表面分子であるCD20を認識する抗体医薬品で、B細胞の悪性腫瘍である非ホジキンリンパ腫に対する抗腫瘍効果を持つ。AMLに対する分子標的薬は少なく、AML細胞表面抗原として現れるCD33に対するモノクローナル抗体に抗生物質カリケアマイシンを結合させた薬剤ゲムツズマブ・オゾガマイシン (Mylotarg)があるが(非特許文献7)、CD33の発現が80%以上であること、再発、60歳以上、他の化学療法に抵抗性を示すことなど、4つの条件がそろった場合のみ適応となり、利用が制限されているといえる。これらのことから、新たな標的遺伝子の発見とそれに対する治療薬の開発は、治療の可能性と選択肢の拡大に直結する重要な発明であるといえる。分子標的薬の形態について 分子標的薬の形態として、抗体医薬品、低分子医薬品をはじめとし、ペプチド医薬品、サイトカインなど生体内蛋白製剤、siRNA、アプタマーなど、さまざまなものが研究・開発されている。治療薬としての抗体の使用は、抗体の特異性により、腫瘍特異的抗原が異種細胞の特性を示す病態の治療に有用である。抗体は、細胞表面に発現する蛋白質である腫瘍特異的抗原に結合し、このような細胞を有効に標的とする。抗体は、血中半減期が長く、抗原への特異性が高いという特徴を持ち、抗腫瘍剤として特に有用である。例えば、腫瘍特異的な抗原を標的とした抗体であれば、投与した抗体は腫瘍に集積することが推定されるので、補体依存性細胞傷害活性(CDC)や抗体依存的細胞性細胞傷害活性(ADCC)による、免疫システムの癌細胞に対する攻撃が期待できる。また、その抗体に放射性核種や細胞毒性物質などの薬剤を結合しておくことにより、結合した薬剤を効率よく腫瘍部位に送達することが可能となり、同時に、非特異的な他組織への該薬剤到達量が減少することで、副作用の軽減も見込むことができる。腫瘍特異的抗原に細胞死を誘導するような活性がある場合はアゴニスティックな活性を持つ抗体を投与することで、また、腫瘍特異的抗原が細胞の増殖及び生存に関与する場合は中和活性を持つ抗体を投与することで、腫瘍特異的な抗体の集積と、抗体の活性による腫瘍の増殖停止又は退縮が期待される。抗体は、上記のようにその特徴から抗腫瘍剤として適用するのに適切であると考えられる。抗体医薬品について 最初の抗体製造への進出には、対象動物としてマウスが使用された。しかしながら、多数の理由によりマウス抗体のinvivoでの使用は制限されている。ヒト宿主によって外来物として認識されるマウス抗体は、いわゆる「ヒト抗マウス抗体」すなわち「HAMA」応答を惹起する(非特許文献8)。さらに、マウス抗体のFc部分は、ヒト補体または細胞傷害活性の刺激に有効ではない。 このような問題を回避するためのアプローチのひとつとしてキメラ抗体が開発された(欧州特許出願公開第120694号及び同第125023号)。キメラ抗体は、2つまたはそれ以上の種由来の抗体の一部(マウス抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域など)を含む。このようなキメラ抗体の利点はマウス抗体の特徴は保持するが、ヒトFcを持つためヒト補体または細胞傷害活性を刺激することができる。しかし、このようなキメラ抗体も依然として「ヒト抗キメラ抗体」すなわち「HACA」応答を惹起する(非特許文献9)。 さらに、置換された抗体の一部のみが相補性決定領域(すなわち「CDR」)である組換え抗体が開発された(特許文献1及び2)。CDR移植技術を使用してマウスCDR、ヒト可変部フレームワーク及び定常領域からなる抗体(すなわち「ヒト化抗体」)が産生されている(非特許文献10)。TIM-3について TIM遺伝子ファミリーはマウスでは8つ、ヒトでは3つの遺伝子から構成され、それぞれ11番染色体と5q33領域に存在する(非特許文献11.)。これらの遺伝子領域は、自己免疫疾患およびアレルギー疾患に関連する。TIM蛋白質は構造的に保存されたイムノグロブリン・バリアブル(immunoglobulinvariable(IgV))ドメインとムチンドメインを持つI型膜貫通蛋白質である。TIM蛋白は、当初T細胞上に特異的に発現し、それらの活性を直接的に制御していると考えられてきたが、最近では抗原提示細胞上での発現および機能も報告されている(非特許文献12)。結晶構造解析により、TIM蛋白は保存された構造をもち、IgVドメイン内にリガンド結合部位を持つことが知られている。 TIM-3は、Th2細胞に発現せずにマウスTh1細胞特異的に発現する分子として同定された(非特許文献13)。TIM-3とそのリガンドであるガレクチン-9との結合により、マウスTh1細胞にアポトーシスが誘導され、Th1応答を阻害し、末梢性寛容を誘導する。マウス同様に、ヒトTh1細胞でも選択的に発現しており、マクロファージや樹状細胞でも発現している。ヒトTIM-3に対するsiRNAによる発現の減弱やブロッキング抗体による阻害により、CD4陽性T細胞からのインターフェロンγ(IFNγ)分泌の亢進などが認められており、TIM-3がヒトT細胞における阻害的な役割をすることを支持している。臨床検体を用いた解析では、自己免疫疾患患者由来のCD4陽性T細胞ではTIM-3の発現が見られなかった。特に、多発性硬化症患者の脳脊髄液由来のT細胞クローンでは、健常人由来のクローンに比べてTIM-3の発現が低く、インターフェロンγの分泌が高かった(非特許文献14)。 また、TIM-3とアレルギー及び/または喘息疾患との関連が示唆された報告があるが(特許文献3及び4)等)、TIM-3と血液腫瘍との関連は、急性骨髄性白血病の幹細胞と正常な造血幹細胞のマイクロアレイ解析を行った報告(非特許文献15)がなされているのみで、TIM-3と血液腫瘍との関連の多くはまだ解明されていない。英国特許出願公開第GB2188638A号米国特許第5585089号国際公開WO96/27603国際公開WO2003/063792Osawa Mら, Science. 273:242-5. (1996)BonnetDとDick JE, Nat Med. 3:730-7(1997)GoodellMAら, J Exp Med. 183:1797-806 (1996)YamazakiSら, EMBO J. 25:3515-23(2006)IshikawaFら,Nat Biotechnol.25:1315-21.(2007)Bao Sら, Nature. 444:756-60 (2006)BernsteinID,Leukemia(2000)14,474-475Schiffetal.,Canc.Res.(1985),45,879-885Bruggemann,etal.,J.Exp.Med.,170,2153-2157, 1989Riechmann,etal.,Nature(1988),332,323-327HaflerDAら,J Exp Med. 205:2699-701(2008)AndersonACら、Science 318:1141-3 (2007)MonneyLら、Nature 415: 536-41.(2002)KoguchiKら、J Exp Med. 203:1413-8.(2006)MajetiRら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2009Feb13. PMID: 19218430 従来の悪性腫瘍に対する治療法の課題として、第一に、抗癌剤や放射線治療などにより、全身に副作用が及ぶこと、第二に、治療に抵抗性を示す希少な癌幹細胞の残存により腫瘍の再発の可能性が高まりうること、第三として、血液腫瘍領域の治療薬のなかで、分子標的薬がまだ少ないことの3点が挙げられる。 本発明の第一の目的は、TIM-3に特異的に結合し、TIM-3を発現する悪性腫瘍細胞を攻撃しうる抗腫瘍物質を開発することにより、各種血液腫瘍の予防・診断又は治療剤を提供することにある。 本発明の第二の目的は、TIM-3が血液腫瘍細胞に発現するという知見をもとにTIM-3分子の利用法を提供することにある。 上述のように、白血病をはじめとする血液腫瘍に対する新規分子標的薬に対する期待は高く、新たな標的分子の発見とその利用は、安全かつ有効な治療法の開発につながるものと考えられる。抗体は本来認識特異性持つことから、分子標的の手段として有効である。そこで、本発明者らは、ヒトTIM-3の血液腫瘍における発現とヒトTIM-3に対する抗体の作製に関して鋭意研究した結果、TIM-3の治療標的としての利用法を見出した。 前述の課題を解決するための手段として、上記第一の課題に対しては正常細胞に比べて癌細胞で高発現している分子を標的とした治療薬の利用がある。これにより、癌細胞に対する薬効は大きく、正常細胞に対する副作用の小さい治療が可能になる。その上で、癌幹細胞に発現する分子を標的とすることで、第二の課題を解決しうる。上記2点を満たす治療薬を提供できれば、分子標的薬療法の選択肢の拡大にもつながり、第三の課題も解決できる。 本発明は、血液腫瘍に高発現する遺伝子であるTIM-3に対するヒトモノクローナル抗体を用い、癌幹細胞を含む悪性腫瘍細胞を攻撃することで、新たな分子標的型血液腫瘍治療薬を提供するものである。 本発明は、要約すると、以下の特徴を含む。(1)骨髄または末梢血にTIM-3が発現している細胞が認められる血液腫瘍の疑いのある被験体あるいは血液腫瘍の治療を受けた被験体に対して、TIM-3抗体を投与することを含む治療方法。(2)TIM-3抗体を有効成分として含むことを特徴とする、被験体において、骨髄または末梢血にTIM-3が発現している細胞が認められる血液腫瘍を予防又は治療するための組成物。(3)TIM-3抗体を含むことを特徴とする、被験体からの生物学的検体において、骨髄または末梢血にTIM-3が発現している細胞が認められる血液腫瘍を検出するための組成物。(4)細胞が、以下の(a)から(c)のいずれかの細胞画分である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の方法又は組成物。(a) Lin(-)CD34(+)CD38(-)(b) Lin(-)CD34(+)CD38(+)(c) Lin(-)CD34(-)(5)上記血液腫瘍が、AMLである、上記(1)から(4)のいずれかに記載の方法又は組成物。(6)上記血液腫瘍が、リンパ腫、MDSまたはCMLである、上記(1)から(4)のいずれかに記載の方法又は組成物。(7)上記血液腫瘍が、再発及び/又は難治性である、上記(1)から(6)のいずれかに記載の方法または組成物。(8)上記TIM-3抗体が、TIM-3モノクローナル抗体である、上記(1)から(7)のいずれかに記載の方法又は組成物。(9)上記TIM-3モノクローナル抗体が、ADCC活性及び/又はCDC活性を有する抗体である、上記(8)に記載の方法又は組成物。 TIM-3は生体の免疫機能を制御する遺伝子として知られてきた。本発明では、新たに見出したTIM-3の特性である血液腫瘍での発現を応用し、TIM-3発現細胞を標的とした抗腫瘍物質(好ましくは抗TIM-3抗体)を用いることで、治療剤や診断剤、さらには腫瘍細胞単離の標的としての遺伝子の利用法を確立した。 これまで、血液腫瘍領域においていくつかの分子標的薬が開発されてきたが、標的細胞に癌幹細胞が含まれるものは少ない。たとえば、CD33蛋白に対するAML治療薬Mylotargはその一つであるが(Bernstein、Leukemia (2000) 14, 474-475)、上述のとおり、CD33の発現率や再発、年齢及び化学療法抵抗性の条件が存在する。 本願の実施例中ではTIM-3発現株、あるいはAML初代細胞において、TIM-3抗体による細胞傷害性が確認されている。これはTIM-3抗体を用いた種々の血液疾患に対する治療効果も示唆している。ヒトTIM-3分子のAML (M0)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のAML (M1)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のAML (M2)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のAML (M3)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のAML (M4)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のAML (M5)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のAML (M6)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。抗TIM-3ポリクローナル抗体によるAML初代細胞傷害性試験の結果である。ヒトTIM-3分子のMDS患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のCML患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子のALL患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子の再発AML患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)およびLin(-)CD34(+)CD38(+)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子の健常人骨髄および幹細胞動員末梢血由来Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞およびLin(-)CD34(+)CD38(+)細胞における発現のマルチカラーのフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3分子の健常人由来正常末梢血液細胞における発現のフローサイトメトリー解析である。ヒトTIM-3のヒト細胞株における発現のフローサイトメトリー解析である。抗TIM-3ポリクローナル抗体によるAML細胞株ADCC試験の結果である。縦軸は特異的溶解率を示す。抗TIM-3ポリクローナル抗体によるAML細胞株CDC試験の結果である。(特定の好ましい実施形態の詳細な説明) 本明細書に用いられるセクションの見出しは、組織化の目的のためのみであるが、記載される主題に限定されると解釈されるべきではない。本出願に引用される全ての引用文献は、任意の目的のために本明細書について参照として明白に援用される。(概要) 本発明は、TIM-3発現細胞を標的とした悪性腫瘍に対する予防、診断又は治療剤またはそれらの方法を提供する。 特定の実施形態では、抗体は、TIM-3分子への結合活性を有し、エフェクター細胞を中心とした免疫システムによるTIM-3発現細胞の低減または除去を誘導する。 TIM-3発現細胞の機能制御に関与し、細胞の生存、増殖、休止、細胞死などを誘導する。 TIM-3発現細胞の機能制御に関与し、その細胞からのサイトカインまたはインターフェロン産生量を増加または減少させる。(TIM-3)TIM遺伝子ファミリーはマウスでは8つ、ヒトでは3つの遺伝子から構成され、それぞれ11番染色体と5q33領域に存在する。これらの遺伝子領域は、自己免疫疾患およびアレルギー疾患に関連する。TIM蛋白質は構造的に保存されたイムノグロブリン・バリアブル(immunoglobulinvariable(IgV))ドメインとムチンドメインを持つI型膜貫通蛋白質である。 TIM-3の既知のリガンドであるガレクチン-9は、ヒトでは抹消白血球やリンパ組織に発現していることが報告されている(Wada Jら、J Biol Chem. 272:6078-86.(1997))。ヒトガレクチン-9は、TIM-3以外にもGLUT-2輸送体蛋白やさまざまなオリゴサッカライドに結合することが知られている(Nagae Mら、J Mol Biol.375:119-35. (2008).)。 また、TIM-3は、HAVCR2とも呼ばれる。TIM-3には、哺乳類(例えば、霊長類、ヒト)型TIM-3が含まれる。そのため、本発明TIM-3抗体には、ヒトTIM-3などの哺乳類TIM-3配列と特異的に結合する抗体が含まれる。ヒトTIM-3などのTIM-3配列には、多型変異体が含まれる。全長ヒトTIM-3の非限定的な一例は、MFSHLPFDCVLLLLLLLLTRSSEVEYRAEVGQNAYLPCFYTPAAPGNLVPVCWGKGACPVFECGNVVLRTDERDVNYWTSRYWLNGDFRKGDVSLTIENVTLADSGIYCCRIQIPGIMNDEKFNLKLVIKPAKVTPAPTRQRDFTAAFPRMLTTRGHGPAETQTLGSLPDINLTQISTLANELRDSRLANDLRDSGATIRIGIYIGAGICAGLALALIFGALIFKWYSHSKEKIQNLSLISLANLPPSGLANAVAEGIRSEENIYTIEENVYEVEEPNEYYCYVSSRQQPSQPLGCRFAMP(配列番号1)として記載される配列である。(抗体) 抗体とは、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらの所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片も含む。 抗体は、成熟重鎖または軽鎖可変領域配列を含む。また、抗体は、成熟重鎖または軽鎖可変領域配列についての、抗体定常領域、相補性決定領域(CDR)またはフレームワーク(FR)領域内部または外部での置換物などの修飾形態および変異形態も含む。特定の態様では、置換には保存的アミノ酸置換が含まれる。 また、抗体は、成熟重鎖または軽鎖可変領域配列の部分配列も含む。特定の態様では、部分配列は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Fd、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)およびVLまたはVHから選択される。 また、抗体は異種ドメインも含む。特定の態様では、異種ドメインにはタグ、検出可能な標識または細胞傷害性薬剤が含まれる。 抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、それらのいずれものイソタイプまたはサブクラスが含まれる。特定の態様では、前記抗体はIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA、IgM、IgE、またはIgDアイソタイプである。「モノクローナル」抗体とは、真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一クローンに基づき、真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一クローンから得られあるいは真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一クローンから誘導される抗体を指す。ゆえに、「モノクローナル」抗体は、構造的に定義されるものであり、それが産生される方法ではない。 TIM-3抗体、抗TIM-3および抗TIM-3抗体とは、TIM-3と特異的に結合する抗体を指す。特異的結合とは、TIM-3中に存在するエピトープに対して選択的であるということである。特異的結合は、当技術分野で公知のアッセイ(例えば、免疫沈降、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング)を用いて非特異的結合と区別することができる。 TIM-3抗体が特異的に結合する抗原エピトープの全てまたは一部が異なるタンパク質に存在する場合に、この抗体は異なるタンパク質と結合する可能性がある。そのため、TIM-3抗体は、TIM-3エピトープの配列または構造的相同性の程度に応じて、そのTIM-3エピトープに対して高い配列または構造的相同性を有する別のタンパク質と特異的に結合可能性がある。よって、TIM-3抗体は、異なるタンパク質に、十分な配列または構造的相同性を有するエピトープが存在する場合に、異なるタンパク質と結合する可能性がある。 本願におけるTIM-3抗体には、単離および精製抗体が含まれる。単離または精製TIM-3抗体を含む本発明の抗体は、ヒトを含む。 組成物の修飾語として用いられる用語「単離(された)」とは、その組成物が人の手で作られるということ、あるいは天然に存在するin vivo環境にある1種以上の他の成分から、一般に、1以上の操作ステップまたはプロセスにより分離されるということを意味する。一般に、そのように分離された組成物は、そのような組成物が通常自然に結合する1種以上の材料、例えば、1種以上のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜を実質的に含まない。そのため、単離組成物は、その組成物が自然に発生する生物の細胞中の他の生体成分から、あるいはその組成物が(例えば、合成によりまたは細胞培養により)産生される人工培地から分離されている。例えば、単離TIM-3抗体は、その抗体が産生される動物(例えば、非トランスジェニック哺乳類またはトランスジェニック哺乳類(齧歯類(マウス)または有蹄類(ウシ)動物などの))から得ることができ、他のポリペプチドおよび核酸から分離されている。よって、その動物から得られる抗体を含有する血清は単離されていると考えられる。用語「単離(された)」は、別の物理的形状を排除するものではなく、例えば、単離抗体には、抗体部分配列、キメラ、マルチマー、または誘導体化された形態が含まれ得る。 組成物の修飾語として用いられる用語「精製(された)」とは、その組成物が一般に自然に結合する材料のほとんどまたは実質的に全てを含まない組成物を指す。精製抗体は、一般に、抗体環境に通常存在する成分から取り出されている。そのため、抗体産生ハイブリドーマ細胞培養物から分離された抗体上清は精製されていると考えられる。よって、精製(された)は、絶対純度を要求するものではなく、関係上の比(context specific)である。さらに、「精製(された)」組成物は、1種以上の他の分子と組み合わせることができる。そのため、用語「精製(された)」は、組成物の組合せを排除するものではない。純度は、例えば、UV分光法、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、気相)、ゲル電気泳動(例えば、銀またはクーマシー染色)および配列解析(ペプチドおよび核酸)などの任意の適切な方法により決定することができる。 「精製(された)」タンパク質および核酸には、標準的な精製法よって得られるタンパク質および核酸が含まれる。また、この用語には、宿主細胞での組換え発現や化学合成によって得られるタンパク質および核酸も含まれる。また、「精製(された)」は、混入物質のレベルが、ヒトまたは非ヒト動物への投与に関する監督官庁、例えば、食品医薬品局(the Food and Drug Administration)(FDA)に承認されるレベルより低い組成物を指すこともある。 TIM-3抗体には、細胞で発現されるTIM-3と特異的に結合するものもさらに含まれる。特定の実施形態では、TIM-3抗体は、TIM-3を発現する血液腫瘍細胞(AML細胞、CML細胞、骨髄異形成症候群(myelodysplasticsyndromes,MDS)細胞、ALL細胞、CLL細胞、多発性骨髄腫(MultipleMyeloma)細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫)、ヘルパーT細胞(たとえば、Th1細胞、Th17細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、単球・マクロファージおよびそれに類する細胞(肝臓星細胞、破骨細胞、ミクログリア細胞、表皮内大食細胞、塵埃細胞(肺胞大食細胞)など))またはTIM-3遺伝子導入細胞で発現されるTIM-3に特異的に結合する。 TIM-3抗体には、TIM-3細胞外ドメインのアミノ酸配列中のエピトープと特異的に結合する抗体が含まれる。特定の実施形態では、例示的TIM-3抗体は、クロスブロッキングアッセイ(across-blockingassay)により決定されるように、TIM-3上の3つの「エピトープ」と特異的に結合する。非限定的な例示的ヒトTIM-3細胞外ドメイン配列は、MFSHLPFDCVLLLLLLLLTRSSEVEYRAEVGQNAYLPCFYTPAAPGNLVPVCWGKGACPVFECGNVVLRTDERDVNYWTSRYWLNGDFRKGDVSLTIENVTLADSGIYCCRIQIPGIMNDEKFNLKLVIKPAKVTPAPTRQRDFTAAFPRMLTTRGHGPAETQTLGSLPDINLTQISTLANELRDSRLANDLRDSGATIR(配列番号2)として記載される。 TIM-3抗体には、1種以上のin vivo細胞上に、初代細胞分離株、継代培養細胞、培養細胞および不死化細胞中に存在するTIM-3と結合可能な抗体が含まれる。TIM-3を発現し得る非限定的な特定細胞種には、AML細胞および他の血液腫瘍細胞(例えば、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、Multiple Myeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞)ならびに非血液腫瘍細胞が含まれる。非血液腫瘍細胞の例としては、単球、樹状細胞、マクロファージ、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞などが挙げられる。本来TIM-3を発現しない細胞では、例えば、TIM-3をコードする核酸で細胞をトランスフェクトまたは形質転換することによって、TIM-3を発現させることができる。TIM-3と結合可能なTIM-3抗体は、TIM-3を発現または産生する1種以上のトランスフェクトまたは形質転換細胞と結合することができる。 本明細書でのAML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、Multiple Myeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞にはそれぞれの腫瘍幹細胞を含む。 腫瘍幹細胞とは、例えばLineage(-)CD34(+)CD38(-)骨髄細胞に代表される、腫瘍を構成する細胞群の一つである。疾患に応じた別名として、癌幹細胞や白血病幹細胞などがある。 血液腫瘍細胞のうち、例えば白血病患者の骨髄から採取した白血病細胞(白血病幹細胞や芽球)は、分化抗原(Lineageマーカー)や、CD34、CD38などの細胞表面分子マーカーで分画できる。白血病幹細胞の多くはLineage(-)CD34(+)CD38(-)細胞分画に存在する。一方、芽球は形態的に判断され、Lineage(-)CD34(+)CD38(+)細胞であるが、Lineage(-)CD34(+)CD38(-)細胞分画やLineage(-)CD34(-)細胞分画を含む様々な細胞集団に存在する。 TIM-3抗体には、TIM-3と結合し、in vivoでまたはin vitroで(例えば被験体において)TIM-3機能または活性をモジュレートする抗体が含まれる。本明細書において、TIM-3の活性または機能に関して用いられる場合の用語「モジュレートする」およびその文法上の変形は、TIM-3の活性または機能が検出可能なように影響、改変または変更を受けるということを意味する。よって、TIM-3の活性または機能をモジュレートするTIM-3抗体は、1種以上のTIM-3活性または機能を検出可能なように影響、改変または変更を与える抗体であり、そのようなTIM-3の活性または機能には、例えば、TIM-3リガンドとのTIM-3の結合、TIM-3媒介シグナル伝達またはTIM-3媒介細胞応答もしくはTIM-3によりモジュレーション可能な細胞応答、あるいは本明細書に記載されているか、そうでなければ公知であるかもしくは知り得る別のTIM-3活性または機能を含めることができる。 モジュレートすることができる非限定的な様々なTIM-3活性および機能には、例えば、TIM-3媒介シグナル伝達またはTIM-3媒介細胞応答もしくはTIM-3によりモジュレーション可能な細胞応答、細胞増殖または増加(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MultipleMyeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞、単球、樹状細胞、マクロファージ、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、細胞生存またはアポトーシスなど細胞死(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MultipleMyeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、サイトカイン(例えば、Th1、Th2および非Th1/Th2サイトカイン)およびインターフェロンの発現または産生、抗アポトーシスタンパク質またはプロアポトーシスタンパク質の発現または産生、ならびにそれらの障害、疾患、生理学的状態、病状および症状の処置、抑制または改善が含まれる。モジュレートされる特定のサイトカインとしては、限定されるものではないが、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-14、IL-16、IL-17、IL-23、IL-26、TNF-α、インターフェロンγ(invivoまたはin vitro)が挙げられる。特定の抗アポトーシスタンパク質またはプロアポトーシスタンパク質発現としては、限定されるものではないが、Bcl-xL、Bcl-2、Bad、BimおよびMcl-1が挙げられる。 よって、本明細書に記載の例示的抗体には、1種以上のTIM-3媒介シグナル伝達またはTIM-3媒介細胞応答もしくはTIM-3により誘導される細胞応答、細胞増殖(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MultipleMyeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、細胞生存またはアポトーシスなど細胞死(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MultipleMyeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、サイトカイン(例えば、Th1、Th2および他の非Th1/Th2サイトカイン、例えば、IL-17、IL-23およびIL-26)およびインターフェロンの発現または産生(Th1、Th2、非Th1/Th2、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-14、IL-16、IL-17、IL-23、IL-26、TNF-α、インターフェロンγ、およびGM-CSF(in vivoまたはin vitro)など)、抗アポトーシスタンパク質またはプロアポトーシスタンパク質の発現(例えば、Bcl-xL、Bcl-2、Bad、BimまたはMcl-1)、ならびにそれらの障害、疾患、病状および症状の処置、抑制または改善をモジュレートする抗体が含まれる。特定の態様では、本発明抗体は、AML細胞の増殖または生存をモジュレートし、他の血液腫瘍細胞(例えば、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、Multiple Myeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞)の数をモジュレートし、単球、樹状細胞、マクロファージ、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など非血液腫瘍細胞の増殖または生存をモジュレートし、あるいはAML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MultipleMyeloma細胞、またはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫など各種リンパ腫細胞を減少、消失または枯渇させる。 TIM-3抗体には、「変異体」とも呼ばれる置換物(例えば、アミノ酸置換物)、付加物および欠失物(例えば、部分配列またはフラグメント)などの改変形態が含まれる。そのような改変抗体形態および変異体は、本発明で示されるTIM-3抗体の少なくとも一部の機能または活性、例えばTIM-3と結合すること、あるいはTIM-3の活性または機能(例えば、TIM-3シグナル伝達)をモジュレートすることを保持する。よって、改変TIM-3抗体は、例えば、少なくとも一部のTIM-3結合あるいは1種以上のTIM-3機能または活性(例えば、シグナル伝達、細胞応答など)をモジュレートする能力を保持することができる。 本明細書において、用語「改変する」(「修飾する」)およびその文法上の変形は、組成物が参照組成物から外れているということを意味する。改変されたタンパク質、核酸および他の組成物は、非改変の参照タンパク質、核酸または他の組成物よりも高いまたは低い活性を有し、あるいは非改変の参照タンパク質、核酸または他の組成物とは異なる機能を有し得る。 アミノ酸置換を含むそのような抗体は、核酸によってコードされ得る。それゆえ、アミノ酸置換を含む抗体をコードする核酸配列も提供される。 用語「同一性」または「同一の」とは、2つ以上の参照される実体が同じであるということを意味する。よって、2つのタンパク質配列(例えば、TIM-3抗体)が同一である場合、それらは少なくとも参照される領域または部分内で同じアミノ酸配列を有する。「同一性領域」とは、2つ以上の参照される実体の同じである部分を指す。よって、2つのタンパク質配列が1つ以上の配列領域で同一である場合、それらはその領域内で同一性を共有する。「実質的同一性」とは、分子が、1種以上の参照分子機能または活性の少なくとも一部の機能または活性、あるいはその分子が同一性を共有する参照分子の関連/対応領域または部分を有するかあるいは有すると予測されるように、構造的にまたは機能的に保存されているということを意味する。よって、実質的同一性を有するポリペプチド(例えば、TIM-3抗体)は、参照ポリペプチド(例えば、TIM-3抗体)としての少なくとも一部の活性または機能を有するかあるいは有すると予測される。例えば、特定の一実施形態では、非改変TIM-3抗体の少なくとも一部の活性または機能を保持する1種以上の改変(例えば、アミノ酸置換、欠失または付加)を有するTIM-3抗体は、参照TIM-3抗体に対して実質的同一性を有すると考えられる。 構造的に関連したタンパク質と機能的に関連したタンパク質との違いから、機能または活性を保持するために必要な配列同一性の量は、タンパク質、領域およびその領域の機能または活性によって異なる。タンパク質ではわずか30%アミノ酸配列同一性が存在するだけで、ある活性または機能を保持することができるが、一般には、参照配列に対してより高い、例えば、少なくとも50%、60%、75%、85%、90%、95%、96%、97%、または98%の同一性が存在する。2配列間の同一性の程度は、当技術分野で公知のコンピュータープログラムや数学アルゴリズムを用いて確かめることができる。配列同一性の割合(相同性)を計算するそのようなアルゴリズムでは、一般に、比較領域にわたる配列ギャップとミスマッチを計上する。例えば、BLAST(例えば、BLAST 2.0)検索アルゴリズム(例えば、Altschul ら, J. Mol. Biol. 215:403 (1990)参照, NCBIを通じて公的に入手可能)は、以下のような例示的検索パラメーターを有する:ミスマッチ-2;ギャップ開始5;ギャップ伸長2。ポリペプチド配列比較では、BLASTPアルゴリズムを、一般に、PAM100、PAM 250、BLOSUM 62またはBLOSUM50.FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)などのスコア行列と組み合わせて用い、SSEARCH配列比較プログラムも同一性の程度を定量するために用いられる(Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci USA85:2444(1988);Pearson,MethodsMolBiol.132:185 (2000); およびSmithら,J.Mol. Biol. 147:195 (1981))。Delaunayに基づく位相マッピングを用いてタンパク質構造的類似性を定量するためのプログラムも開発された(Bostick ら,BiochemBiophysResCommun.304:320(2003))。 「保存的置換」は、生物学的に、化学的にまたは構造的に類似した残基による1個のアミノ酸の置換である。生物学的に類似したとは、置換によって生物活性、例えば、TIM-3結合活性が破壊されないということを意味する。構造的に類似したとは、アミノ酸が同じくらいの長さの側鎖を有する(例えば、アラニン、グリシンおよびセリン)ということ、または同じくらいのサイズということを意味する。化学的類似性とは、残基が同じ電荷を有するということあるいは親水性または疎水性であるということを意味する。特定の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの一疎水性残基の別のものとの置換、あるいは一極性残基の別のものとの置換、例えば、アルギニンのリジンとの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換、またはグルタミンのアスパラギンとの置換、セリンのトレオニンとの置換などが挙げられる。 また、改変抗体には、L-アミノ酸(およびそれらの混合物)と置換された1種以上のD-アミノ酸、構造的および機能的類似体、例えば、合成もしくは非天然アミノ酸またはアミノ酸類似体を有するペプチドミメティクスおよび誘導体化された形態も含まれる。改変には、環状構造、例えばアミノ末端およびカルボキシ末端の分子間の末端間アミド結合または分子内または分子間ジスルフィド結合が含まれる。 アミノ酸改変の非限定的なさらなる特定の例としては、TIM-3の部分配列(subsequence)およびフラグメントが挙げられる。例示的なTIM-3の部分配列およびフラグメントは、本発明の例示的TIM-3抗体が結合するTIM-3配列の一部を含む。また、例示的なTIM-3の部分配列およびフラグメントは、免疫原性部分、例えば、本発明の例示的TIM-3抗体が結合する配列を含むTIM-3の一部も含む。 TIM-3抗体部分配列およびフラグメントは、全長抗体としての結合親和性、全長抗体としての結合特異性、または全長抗体としての1種以上の活性または機能、例えば、TIM-3アンタゴニストまたはアゴニスト抗体の機能または活性を有し得る。抗体に関する場合の用語「機能的部分配列」および「機能的フラグメント」とは、全長参照抗体としての1種以上の機能または活性、例えば、TIM-3抗体の機能または活性の少なくとも一部を保持する抗体部分を意味する。例えば、TIM-3またはTIM-3の断片と結合する抗体部分配列またはフラグメントは機能的部分配列と考えられる。 抗体部分配列およびフラグメントは組み合わせることができる。例えば、VLまたはVH部分配列は、リンカー配列によって連結することができ、それによってVL-VHキメラを形成することができる。単鎖Fv(scFv)部分配列の組合せは、リンカー配列によって連結することができ、それによってscFv-scFvキメラを形成することができる。TIM-3抗体部分配列およびフラグメントは、単鎖抗体または可変領域を単独であるいは他のTIM-3抗体部分配列の全てまたは一部と組み合わせを含む。 抗体部分配列およびフラグメントは、抗体のタンパク質分解による加水分解、例えば、全抗体のペプシンまたはパパイン消化により調製することができる。ペプシンでの酵素的切断によってもたらされた抗体部分配列およびフラグメントは、F(ab')2として示される5Sフラグメントを与える。このフラグメントは、チオール還元剤を用いてさらに切断することができ、3.5S Fab'一価フラグメントを作り出すことができる。あるいは、ペプシンを用いた酵素的切断では、2つの一価Fab'フラグメントとFcフラグメントとが直接もたらされる(例えば、米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号; およびEdelman ら,MethodsEnymol.1:422(1967)参照)。他の抗体切断方法、例えば一価軽鎖-重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的もしくは化学的な方法も使用してよい。 タンパク質および抗体、ならびにそれらの部分配列およびフラグメントは、遺伝学的方法により作り出すことができる。技術は、タンパク質または抗体をコードする遺伝子の全てまたは一部を、Cos細胞または大腸菌(E. coli)などの宿主細胞中で発現させることを含む。組換え宿主細胞は、全長または部分配列、例えば、scFvを合成する(例えば、Whitlow ら, In: Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:97 (1991)、Bird ら, Science 242:423 (1988); および米国特許第4,946,778号参照)。単鎖Fvおよび抗体は、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号; Huston ら, Methods Enzymol 203:46(1991);Shuら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995(1993); およびSkerra ら, Science240:1038 (1988)に記載のとおり作り出すことができる。 修飾形態には、誘導体化された配列、例えば、遊離アミノ基がアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基を形成しており;遊離カルボキシ基が塩、メチルおよびエチルエステルを形成しており; 遊離ヒドロキシル基(free hydroxl groups)がO-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成しているアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸誘導体、例えば、4-ヒドロキシプロリン(プロリンの誘導体)、5-ヒドロキシリジン(リジンの誘導体)、ホモセリン(セリンの誘導体)、オルニチン(リジンの誘導体)などが含まれる。修飾は、当技術分野で公知の方法(例えば、PCRに基づく部位特異的、欠失および挿入突然変異誘発、化学修飾および突然変異誘発、架橋など)を用いて行うことができる。 タンパク質(例えば、抗体)、核酸、および他の組成物の修飾形態には、付加物および挿入物が含まれる。例えば、付加は、いずれもの種類の分子の、タンパク質(例えば、抗体)、核酸または他の組成物との共有または非共有結合であり得る。一般に、付加および挿入は異なる機能または活性を与える。 付加物および挿入物には、融合(キメラ)ポリペプチドまたは核酸配列が含まれ、それらは前記配列と共有結合した参照天然(野生型)配列中には通常存在しない1種以上の分子を有する配列である。特定の例は、多機能タンパク質(例えば、多重特異性抗体)を作り出すための別のタンパク質(例えば、抗体)のアミノ酸配列である。 また、TIM-3抗体には、異なるまたは補助機能または活性を与えるために、1つ以上の追加ドメインが共有結合しているキメラまたは融合物も含まれる。抗体には、2つ以上のアミノ酸配列が互いに結合されている、自然界では本来存在しないキメラまたは融合物が含まれる。 タンパク質(例えば、抗体)、核酸、または他の組成物と付加物または挿入物(例えば、異種ドメイン)との間に、2つの実体が異なる機能または活性を少なくとも一部維持するように、リンカー配列を挿入してよい。リンカー配列は、どちらかのドメインを促進することができまたはどちらかのドメインと相互作用することができる1種以上の特性を有していてよく、そのような特性には、フレキシブル構造、秩序二次構造が形成不能であることまたは疎水性もしくは荷電性が含まれる。フレキシブルタンパク質領域において一般に見られるアミノ酸には、グリシン、アスパラギンおよびセリンが含まれる。他の中性に近いアミノ酸、例えばトレオニンおよびアラニンもまた、リンカー配列に用いてよい。リンカー配列の長さは変動し得る(例えば、米国特許第6,087,329号参照)。リンカーには、化学架橋剤および結合剤(conjugatingagents)、例えばスルホ−スクシンイミジル誘導体(スルホ−SMCC、スルホ−SMPB)、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、グルタル酸ジスクシンイミジル(DSG)および酒石酸ジスクシンイミジル(DST)がさらに含まれる。 付加のさらなる例としては、グリコシル化、脂肪酸、脂質、アセチル化、リン酸化、アミド化、ホルミル化、ユビキチン化、および保護または遮断基による誘導体化ならびに数多くの化学修飾のうちのいずれかが挙げられる。他の置換および可能性については当業者ならば容易に分かり、本発明の範囲内であると考えられる。 そのような修飾配列は、細胞発現またはin vitro翻訳を介する組換えDNA技術を用いて作製することができる。ポリペプチドおよび核酸配列は、当技術分野で公知の方法、例えば、自動ペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA参照)を用いた化学合成によっても作り出すことができる。 置換物、部分配列および付加物などの修飾および変異抗体は、TIM-3抗体の検出可能な活性を保持することができるものである。一実施形態では、修飾抗体は、TIM-3分子への結合活性を有し、エフェクター細胞を中心とした免疫システムによるTIM-3発現細胞の低減または除去を誘導する。 TIM-3発現細胞の機能制御に関与し、細胞の生存、増殖、休止、細胞死などを誘導する。細胞死には、アポトーシス、ネクローシス、オートファジーなどを含む。 本願において、TIM-3をスクリーニングし、検出し、同定する無細胞方法(例えば、溶液中で、固相で)および細胞に基づいた方法(例えば、in vitroまたはin vivo)がさらに提供される。これらの方法は、溶液中で、in vitroで生体材料またはサンプルを用いて、およびin vivoで、例えば、動物由来の細胞(例えば、リンパ球)のサンプルにおいて実施することができる。一実施形態では、方法は、生体材料またはサンプルを、TIM-3との抗体の結合を可能にする条件下でTIM-3と結合する抗体と接触させることと;TIM-3との抗体の結合についてアッセイすることとを含む。抗体をTIM-3と結合させることによりTIM-3の存在が検出される。一態様では、TIM-3は細胞または組織に存在する。別の態様では、前記生体材料またはサンプルは哺乳類被験体から得られる。 組成物例えばタンパク質(例えば、TIM-3抗体)、材料、サンプル、または処置に関して用いられる場合の用語「接触させること」とは、その組成物(例えば、TIM-3抗体)と他の参照される実体との直接または間接相互作用を意味する。直接相互作用の特定の例は結合である。間接相互作用の特定の例は、組成物が中間分子に作用し、この中間分子が次に参照される実体に作用するという場合である。従って、例えば、細胞(例えば、リンパ球)をTIM-3抗体と接触させることには、その抗体を(例えば、TIM-3との結合を通じて)その細胞と結合させること、またはその抗体を中間物に作用させ、この中間物が次にその細胞に作用することが含まれる。 用語「アッセイすること」および「測定すること」ならびにその文法上の変形は、本明細書において同義的に用いられ、定性的測定または定量的測定のいずれか、あるいは定性的測定および定量的測定の両方を指す。これらの用語が結合に関して用いられる場合、本明細書に記載されており、当技術分野で公知の様々な方法を含む、相対量、結合の親和性または特異性を評価するいずれもの手段が意図される。例えば、TIM-3とのTIM-3抗体の結合は、フローサイトメトリーアッセイによってアッセイまたは測定することができる。(抗体の調製) 本願においては、TIM-3陽性細胞障害活性を有するヒトTIM-3抗体を作製するための方法も提供する。一実施形態では、方法は、ヒトFc組換えタンパク質とコンジュゲートされたヒトTIM-3細胞外ドメインまたはTIM-3遺伝子導入細胞を、ヒト免疫グロブリンを発現可能な動物(例えば、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックウシ)に投与すること;該動物をヒトTIM-3抗体の発現についてスクリーニングすること;ヒトTIM-3抗体を産生する動物を選択すること;選択された動物から抗体を単離すること;該ヒトTIM-3抗体がTIM-3アンタゴニスト活性を有するかどうかを判定することを含む。 抗体作製に適したTIM-3タンパク質は、種々の標準的なタンパク質精製または組換え発現技術のうちのいずれかによって作り出すことができる。例えば、TIM-3配列は、標準的なペプチド合成技術、例えば固相合成によって作り出すことができる。タンパク質の一部分には、発現または合成されたタンパク質の精製を容易にするために、FLAGタグ、T7タグまたはポリヒスチジン配列などのアミノ酸配列を含んでよい。そのタンパク質は細胞中で発現され、精製され得る。そのタンパク質は、組換え法によってより大きなタンパク質(例えば、融合物またはキメラ)の一部として発現され得る。免疫応答を起こすのに適したTIM-3の形態には、TIM-3部分配列、例えば免疫原性フラグメントが含まれる。さらなる形態のTIM-3としては、TIM-3発現細胞、TIM-3含有調製物または細胞抽出物もしくは画分、部分精製TIM-3が挙げられる。 ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である。例えば、TIM-3またはその免疫原性フラグメントは、所望により、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミン(例えば、BSA)などの担体とコンジュゲートされ、あるいはフロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントと混合され、動物を免疫するために使用される。ハイブリドーマ技術を用いて、TIM-3に応答する免疫動物由来の脾細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合することができる。ハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体は、TIM-3またはその免疫原性フラグメントとの反応性についてスクリーニングすることができる。 免疫し得る動物には、霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、またはモルモットが含まれる。初回および任意選択の追加免疫は、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、または皮下経路によるものであってよい。さらに、免疫応答を高めるために、抗原を、オボアルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリンおよび破傷風トキソイドなどの別のタンパク質と結合することができ、あるいはフロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントと混合することができる。初回および任意選択の追加免疫は、腹腔内経路、筋肉内経路、眼球内経路、または皮下経路によるものであってよい。追加免疫は、同じ濃度または異なる濃度のTIM-3調製物であってよく、規則または不規則な間隔であってよい。 動物には、ヒト遺伝子座を含むように遺伝子修飾されたものが含まれ、それを用いて、ヒト抗体を作り出すことができる。1種以上のヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物については、例えば、米国特許第5,939,598号、WO 02/43478、およびWO 02/092812に記載されている。従来のハイブリドーマ技術を用いて、抗原に対して高応答物である免疫マウス由来の脾細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合することができる。TIM-3と結合するモノクローナル抗体を得ることができる。 ヒトポリクローナル抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのさらなる方法は記載されている(例えば、Kuroiwaら, Nat. Biotechnol. 20:889 (2002);WO 98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735; 米国特許第5,413,923号; 同第5,625,126号; 同第5,633,425号; 同第5,569,825号;同第5,661,016号; 同第5,545,806号; 同第5,814,318号; 同第5,885,793号; 同第5,916,771号; および同第5,939,598号参照)。 抗体に関して用いられる場合の用語「ヒト」とは、抗体のアミノ酸配列が完全にヒトアミノ酸配列、すなわちヒト重鎖およびヒト軽鎖可変領域およびヒト定常領域であるということを意味する。よって、アミノ酸の全ては、ヒトアミノ酸でありまたはヒト抗体中に存在するものである。非ヒト抗体である抗体は、非ヒトアミノ酸残基をヒト抗体中に存在するアミノ酸残基と置き換えることによって完全ヒト抗体にし得る。ヒト抗体中に存在するアミノ酸残基、CDR領域マップおよびヒト抗体コンセンサス残基については、当技術分野で公知である(例えば、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版 US DepartmentofHealthandHumanServices.PublicHealth Service (1987); ChothiaおよびLesk(1987)参照。22の既知ヒトVHIII配列を対象にした調査に基づいたヒトVHサブグループIIIのコンセンサス配列、および30の既知ヒトκ I配列を対象にした調査に基づいたヒトVL κ鎖サブグループIのコンセンサス配列については、Padlan Mol. Immunol. 31:169 (1994); およびPadlanMol.Immunol.28:489(1991)に記載されている。よって、ヒト抗体には、1個以上のアミノ酸残基が任意の他のヒト抗体中に存在する1個以上のアミノ酸と置換されている抗体が含まれる。 TIM-3抗体には、例えば、CDRグラフティング(CDR-grafting)(EP 239,400;W091/09967; 米国特許第5,225,539号; 同第5,530,101号; および同第5,585,089号)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(EP 592,106; EP519,596;Padlan,MolecularImmunol.28:489(1991);Studnicka ら,ProteinEngineering7:805(1994);Roguska. ら,Proc. Nat'lAcad.Sci. USA91:969(1994))、およびチェーンシャッフリング(chainshuffling)(米国特許第5,565,332号)などの当技術分野で公知の技術を用いて作り出すことができるヒト化抗体が含まれる。ヒト化抗体を作り出すには、これまでヒトコンセンサス配列(Padlan, Mol. Immunol. 31:169 (1994); およびPadlan,Mol.Immunol.28:489(1991))が用いられてきた(Carter ら,Proc.Natl. Acad. Sci.USA89:4285(1992); およびPresta ら,J.Immunol.151:2623 (1993))。 抗体に関して用いられる場合の用語「ヒト化」とは、抗体のアミノ酸配列がアクセプターヒト免疫グロブリン分子中に所望の抗原と特異的に結合する1以上の相補性決定領域(CDR)の非ヒトアミノ酸残基(例えば、マウス、ラット、ヤギ、ウサギなど)と、Fvフレームワーク領域(FR)中に1以上のヒトアミノ酸残基(CDRにフランキングするアミノ酸残基である)とを有するということを意味する。「霊長類化」と呼ばれる抗体は、アクセプターヒト免疫グロブリン分子およびフレームワーク領域のアミノ酸残基が任意のヒト残基に加えて、任意の霊長類アミノ酸残基(例えば、サル、テナガザル、ゴリラ、チンパンジーオランウータン、マカクザル)であり得るということを除けば、「ヒト化」の意味の範囲内である。免疫グロブリンのヒトFR残基は、対応する非ヒト残基と置き換えることができる。よって、例えば、抗原親和性または特異性を改変する、一般には高めるために、CDRまたはヒトフレームワーク領域中の残基を、非ヒトCDRまたはフレームワーク領域ドナー抗体由来の対応する残基と置き換えることができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体にもドナーCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。例えば、ヒト抗体またはドナー非ヒト抗体には見られない特定位置でのFR置換は、その位置において結合親和性または特異性ヒト抗体を改善すると予測され得る。分子モデリングに基づく抗体フレームワークおよびCDR置換は、当技術分野では周知であり、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングや特定位置における異常フレームワーク残基を同定するための配列比較による(例えば、米国特許第5,585,089号; およびRiechmannら, Nature 332:323 (1988)参照)。 TIM-3抗体にはキメラ抗体が含まれる。本明細書において、抗体に関して用いられる場合の用語「キメラ」およびその文法上の変形は、抗体のアミノ酸配列が、2つ以上の異なる種に由来する、2つ以上の異なる種から得られるまたは単離される、あるいは2つ以上の異なる種に基づく1以上の部分を含有するということを意味する。例えば、抗体の一部分はヒト(例えば、定常領域)であり得、抗体の別の部分は非ヒト(例えば、ネズミ重鎖またはネズミ軽鎖可変領域)であり得る。よって、キメラ抗体の例は、抗体の異なる部分が異なる種起源のものである抗体である。キメラ抗体は、ヒト化または霊長類化抗体とは異なり、抗体の任意の領域に異なる種の配列を有し得る。 キメラ抗体を作製するための方法は当技術分野で公知である(例えば、Morrison,Science229:1202(1985);Oiら,BioTechniques 4:214 (1986);Gilliesら, J.Immunol.Methods 125:191 (1989); ならびに米国特許第5,807,715号; 同第4,816,567号; および同第4,816,397号)。例えば、Munro, Nature 312:597(1984);Neuberger ら,Nature312:604(1984);Sharonら, Nature 309:364(1984);Morrison ら,Proc.Nat'l. Acad. Sci. USA 81:6851(1984);Boulianne ら,Nature312:643 (1984); Capon ら,Nature337:525(1989); およびTraunecker ら,Nature339:68 (1989)では、ある種の抗体由来の可変領域が別の種の可変領域と置換されているキメラ抗体が記載されている。 また、TIM-3抗体は、ハイブリドーマ技術、組換え技術、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組合せを利用しても作製することができる(米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、および同第4,411,993号参照;MonoclonalAntibodies.Hybridomas:ANewDimensioninBiological Analyses, Plenum Press,Kennett,McKearn, およびBechtol(編),1980年、およびHarlow ら,Antibodies:ALaboratoryManual,ColdSpring Harbor Laboratory Press, 第2版 1988年も参照のこと)。 ヒト抗ヒトTIM-3抗体は、様々な形態の可溶性組換えヒトTIM-3タンパク質またはTIM-3を発現する細胞株で免疫した染色体導入マウス(KM mice(商標))を用いて作製できる(WO 02/43478、WO 02/092812、およびIshida, ら,IBC's11thAntibodyEngineeringMeeting.Abstract (2000))。ヒト抗ヒト抗体は、非形質転換親細胞系ではなく、ヒトTIM-3安定トランスフェクト細胞系、例えばJurkat-TIM-3細胞およびL929-TIM-3細胞を検出可能なように染色できる。 本願における抗体は、κ軽鎖配列またはλ軽鎖配列、天然に存在する抗体にあるような、どちらか一方の全長、それらの混合物(すなわちκ鎖配列とλ鎖配列との融合物)、およびそれらの部分配列/フラグメントを有し得る。天然に存在する抗体分子には、2つのκ軽鎖または2つのλ軽鎖が含まれている。 また、ヒトTIM-3抗体には、TIM-3と特異的に結合し、ラット抗ヒトTIM-3抗体344823(R&D Systems社製, カタログ番号MAB2365またはFAB2365P)のTIM-3との結合を阻止または遮断しない抗体も含まれる。 また、ヒトTIM-3抗体は、TIM-3と特異的に結合し、互いに結合を阻害する抗体、互いに結合を阻害しない抗体も含まれる。 TIM-3と特異的に結合する抗体を作製する方法は以下に提供される。一実施形態では、TIM-3抗体を作製するための方法は、所望により、ヒトFc組換えタンパク質とコンジュゲートされた、ヒトTIM-3、部分配列またはフラグメント(例えば、TIM-3細胞外ドメイン)を、ヒト免疫グロブリンを発現可能な動物(例えば、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックウシ)に投与することと、その動物をヒトTIM-3抗体の発現についてスクリーニングすることと、ヒトTIM-3抗体を産生する動物を選択すること、選択された動物から抗体を単離することとを含む。一態様では、この方法によりヒトTIM-3抗体がTIM-3アンタゴニストまたはアゴニスト活性を有するかどうかが判定される。 TIM-3リガンド(TIM-3L)とのTIM-3の結合を阻害または阻止するヒトTIM-3抗体を作製する方法がさらに提供される。一実施形態では、ヒトTIM-3抗体を作製するための方法は、所望により、ヒトFc組換えタンパク質とコンジュゲートされたTIM-3、部分配列またはフラグメント(例えば、TIM-3細胞外ドメイン)を、ヒト免疫グロブリンを発現可能な動物(例えば、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックウシ)に投与することと、その動物をヒトTIM-3抗体の発現についてスクリーニングすることと、ヒトTIM-3抗体を産生する動物を選択することと、選択された、ヒトTIM-3抗体を産生する動物から抗体を単離することとを含む。一態様では、この方法によりヒトTIM-3抗体がTIM-3リガンド(TIM-3L)とのTIM-3の結合を阻害または阻止するかどうかが判定される。 抗TIM-3モノクローナル抗体のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα-1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(WO2005/035586、WO2002/31140、WO00/61739)や、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明の抗TIM-3モノクローナル抗体にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。 エフェクター活性とは、抗体のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)、補体依存性傷害活性(CDC活性)や、マクロファージや樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody dependent phagocytosis,ADP活性)などが知られている。 抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体のエフェクター活性を増加または低下させることができる。抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体を発現することで、フコースが結合していない抗体を取得することができる。フコースが結合していない抗体は高いADCC活性を有する。一方、抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体を発現させることで、フコースが結合している抗体を取得できる。フコースが結合している抗体は、フコースが結合していない抗体よりも低いADCC活性を有する。 また、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCC活性やCDC活性を増加または低下させることができる。例えば、US2007/0148165に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体のCDC活性を増加させることができる。また、US6,737,056、US7,297,775、やUS7,317,091に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCC活性またはCDC活性を、増加させることも低下させることもできる。 更に、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体に使用することにより、抗体のエフェクター活性が制御された抗体を取得することができる。 核酸は、様々な長さのものであり得る。TIM-3抗体またはその部分配列をコードする核酸の長さは、一般に、約100個ヌクレオチド〜600個ヌクレオチド、あるいはそのような長さの範囲以内での任意の数値または数値域、100〜150個、150〜200個、200〜250個、250〜300個、300〜350個、350〜400個、400〜450個、450〜500個、500〜550個、または約550〜600個ヌクレオチド長、あるいはそのような長さの範囲以内での任意の数値または数値域または値(any numerical value or range or value)に及ぶ。TIM-3抗体またはその部分配列をコードする核酸と特異的にハイブリダイズする核酸の長さは、一般に、約10〜20個、20〜30個、30〜50個、50〜100個、100〜150個、150〜200個、200〜250個、250〜300個、300〜400個、400〜500個、500〜600個ヌクレオチド、あるいはそのような長さの範囲以内での任意の数値または数値域に及ぶ。 用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」とは、リン酸エステル結合または同等物によって結合された少なくとも2つ以上のリボ-またはデオキシ-リボ核酸塩基対(ヌクレオチド)を指す。核酸には、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオシドが含まれる。核酸には、単一分子、二重分子または三重分子、環状分子または線状分子が含まれる。例示的な核酸としては、限定されるものではないが:RNA、DNA、cDNA、ゲノム核酸、天然に存在する核酸および非天然核酸、例えば、合成核酸が挙げられる。短い核酸およびポリヌクレオチド(例えば、10〜20個、20〜30個、30〜50個、50〜100個ヌクレオチド)は、一般に、「オリゴヌクレオチド」または一本鎖もしくは二本鎖DNAの「プローブ」と呼ばれる。 核酸は、様々な標準的なクローニング技術および化学合成技術を用いて作り出すことができる。技術としては、限定されるものではないが、抗体コード配列とアニーリング可能なプライマー(例えば、縮重プライマー混合物)を用いたゲノムDNAまたはcDNA標的の核酸増幅、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。また、核酸は、化学合成(例えば、固相ホスホアミダイト合成)または遺伝子からの転写によっても作り出すことができる。作り出された配列は、その後、in vitroで翻訳し、またはプラスミドにクローニングし、増殖させた後、細胞(例えば、宿主細胞例えば酵母または細菌、真核生物(動物または哺乳類細胞あるいは植物など))で発現させることができる。 ベクターは、核酸の挿入または取り込みにより操作することができる媒介物である。ベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルスベクター、原核生物(細菌)ベクターおよび真核生物(植物、菌類、哺乳類)ベクターが挙げられる。ベクターは、in vitroでまたはin vivoでの核酸の発現のために用いることができる。そのようなベクターは、「発現ベクター」と呼ばれ、TIM-3抗体、その部分配列およびフラグメントをコードする核酸をはじめとする核酸の導入や、コードされるタンパク質のin vitroで(例えば、溶液中でまたは固相において)、細胞においてまたはinvivoで被験体においての発現に有用である。 また、ベクターは、核酸の操作にも用いることができる。遺伝子操作では、「クローニングベクター」を使用して、invitroで(例えば、溶液中でまたは固相において)、細胞においてまたはin vivoで被験体において、挿入された核酸を転写または翻訳することができる。 ベクターは、一般に、in vitroでまたはin vivoでの細胞における増殖のための複製起点を含む。ベクター内に存在する発現制御エレメントなどの制御エレメントは、必要に応じて、転写および翻訳を容易にするために含めることができる。 ベクターは選択マーカーを含む場合がある。「選択マーカー」は、遺伝子を含有する細胞の選択を可能にする遺伝子である。「正の選択」とは、正の選択が起こって、選択マーカーを含有する細胞を選択するプロセスを指す。薬剤耐性が正の選択マーカーの一例であり、マーカーを含有する細胞は薬剤含有培養培地中で生存し、マーカーのない細胞は死滅する。選択マーカーとしては、G418耐性を与えるneo;ハイグロマイシン耐性を与えるhygr;およびピューロマイシン耐性を与えるpuroなどの薬剤耐性遺伝子が挙げられる。他の正の選択マーカー遺伝子には、マーカーを含有する細胞の同定またはスクリーニングを可能にする遺伝子が含まれる。これらの遺伝子としては、とりわけ、蛍光タンパク質(GFPおよびGFP様発色団、ルシフェラーゼ)遺伝子、lacZ遺伝子、アルカリ性ホスファターゼ遺伝子、およびCD8などの表面マーカーが挙げられる。「負の選択」とは、適切な負の選択薬剤に暴露して、負の選択マーカーを含有する細胞を死滅させるプロセスを指す。例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を含有する細胞(Wigler ら、Cell 11 :223 (1977))は薬剤ガンシクロビル(GANC)に対して感受性である。同様に、gpt遺伝子は細胞を6-チオキサンチン感受性にする。 ウイルスベクターには、レトロウイルス(retroviral)(分裂細胞だけでなく非分裂細胞にも感染させるためのレンチウイルス)、泡沫状ウイルス(米国特許第5,624,820号、同第5,693,508号、同第5,665,577号、同第6,013,516号および同第5,674,703号; WO92/05266およびWO92/14829)、アデノウイルス(米国特許第5,700,470号、同第5,731,172号および同第5,928,944号)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(米国特許第5,604,090号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号)、サイトメガロウイルス(CMV)系ベクター(米国特許第5,561,063号)、レオウイルス、ロータウイルスゲノム、シミアンウイルス40(SV40)または乳頭腫ウイルス(Cone ら, Proc. Natl.Acad.Sci.USA81:6349(1984);EukaryoticViral Vectors, Cold SpringHarborLaboratory,Gluzman編,1982年;Sarverら,Mol.Cell. Biol.1:486 (1981); 米国特許第5,719,054号)に基づくものが含まれる。アデノウイルスはゆっくりと複製するかつ/または最終分化した細胞に効率よく感染し、このアデノウイルスを用いて、ゆっくりと複製する細胞かつ/または最終分化した細胞を標的にすることができる。発現に有用なさらなるウイルスベクターとしては、パルボウイルス、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルスおよびラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス)ならびに水疱性口内炎ウイルス(VSV)が挙げられる。 核酸を含むベクターは、その核酸が発現制御エレメントに機能しうる形で連結されている場合に、発現され得る。用語「機能しうる形で連結された」(operably linked)とは、それに関するエレメント間の物理的または機能的関係によりそれらのエレメントが意図されたように機能することが可能になるということを指す。よって、発現制御エレメントに「機能しうる形で連結された」核酸とは、制御エレメントが核酸転写、必要に応じて、その転写物の翻訳をモジュレートするということを意味する。 「発現制御エレメント」または「発現制御配列」は、機能しうる形で連結された核酸の発現に影響を及ぼすポリヌクレオチドである。プロモーターおよびエンハンサーは、発現制御エレメントおよび配列の非限定的な特定例である。「プロモーター」は、下流(3'方向)核酸配列の転写を開始可能なシス作用DNA調節領域である。プロモーター配列には、転写開始を促進するヌクレオチドが含まれる。エンハンサーも核酸発現を調節するが、それが機能しうる形で連結されている核酸の転写開始部位から離れて作用する。エンハンサーは、核酸の5'または3'末端のいずれかに存在する場合、さらに核酸内(例えば、イントロンまたはコード配列)に存在する場合にも作用する。さらなる発現制御エレメントとしては、リーダー配列および融合パートナー配列、多重遺伝子の作出のための内在性リボソーム結合部位(IRES)エレメント、またはポリシストロン性メッセージ、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にするための遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、目的の転写物の適切なポリアデニル化をもたらすポリアデニル化シグナル、および停止コドンが挙げられる。 発現制御エレメントには、機能しうる形で連結された核酸の転写がシグナルまたは刺激不在で起こる「構成的」エレメントが含まれる。シグナルまたは刺激に応答して発現を与え、機能しうる形で連結された核酸の発現を増減する発現制御エレメントは、「調節可能である」。シグナルまたは刺激に応答して機能しうる形で連結された核酸の発現を増加する調節可能なエレメントは、「誘導エレメント」と呼ばれている。シグナルまたは刺激に応答して機能しうる形で連結された核酸の発現を減少する調節可能なエレメントは、「抑制エレメント」(すなわち、シグナルは発現を減少し;そのシグナルが除去されまたは存在しない場合に、発現が増加する)と呼ばれている。 細菌の発現では、構成的プロモーターには、T7、ならびにバクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などの誘導プロモーターが含まれる。昆虫細胞系では、構成的または誘導プロモーター(例えば、エクジソン)が用いられ得る。酵母では、構成的プロモーターには、例えば、ADHまたはLEU2およびGALなどの誘導プロモーターが含まれる(例えば、Ausubel ら,In:CurrentProtocolsinMolecularBiology,第2巻, 第13章,GreenePublish.Assoc.&WileyInterscience編,1988年;Grantら, In: MethodsinEnzymology,153:516-544(1987),Wu& Grossman編, 1987年,Acad.Press,N.Y.; Glover, DNACloning, 第II巻,第3章,IRLPress,Wash.,D.C., 1986年; Bitter, In:MethodsinEnzymology,152:673-684(1987), Berger&Kimmel編,Acad.Press,N.Y.; および,Strathern ら,TheMolecular Biology oftheYeast SaccharomycesCold SpringHarborPress編, 第I巻および第II巻 (1982)参照)。 哺乳類の発現では、ウイルスまたは他の起源の構成的プロモーターが用いられ得る。例えば、CMV、SV40、またはウイルスの長い末端反復配列(LTR)など、または哺乳類細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター;熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答エレメント)もしくは哺乳類ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;マウス乳癌ウイルスLTR)由来の誘導プロモーターが用いられる。 発現制御エレメントには、特定の組織または細胞種において活性なエレメントが含まれ、このようなエレメントは「組織特異的発現制御エレメント」と呼ばれている。組織特異的発現制御エレメントは、一般に、特定の細胞または組織種においてより活性が高いが、これはこの組織特異的発現制御エレメントが、他の細胞または組織種と比べて、その特定の細胞または組織種において活性な転写活性化タンパク質、または他の転写調節因子により認識されるためである。そのような発現制御エレメントの非限定的な特定例は、ヘキソキナーゼII、COX-2、α-フェトプロテイン、癌胎児性抗原、DE3/MUC1、前立腺特異的抗原、C-erB2/neu、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、テロメラーゼ逆転写酵素および低酸素症-応答性プロモーターなどのプロモーターである。 本願によれば、TIM-3核酸またはベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。宿主細胞としては、限定されるものではないが、原核細胞および真核細胞、例えば細菌、真菌(酵母)、植物、昆虫、および動物(例えば、霊長類およびヒトなどの哺乳類)の細胞が挙げられる。形質転換細胞の非限定的な例としては、組換えバクテリオファージ核酸、プラスミド核酸またはコスミド核酸発現ベクターで形質転換された細菌;組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させたまたは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞;組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞;および組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染させた動物細胞、または安定な発現のために操作された形質転換動物細胞が挙げられる。TIM-3抗体、その部分配列およびフラグメントを発現する哺乳類宿主細胞の非限定的な例にはCHO細胞がある。宿主細胞は、初代細胞分離株、単離された二次細胞または継代培養細胞、あるいは株化細胞または不死化細胞培養物由来の複数の細胞または細胞集団であってよい。 細胞(例えば、宿主細胞)または生物に関して用いられる場合の用語「形質転換された」または「トランスフェクトされた」とは、外因性分子、例えば、タンパク質または核酸(例えば、トランスジーン)の細胞への取り込み後の細胞における遺伝子変化を意味する。よって、「トランスフェクトされた」または「形質転換された」細胞は、外因性分子が人の手で、例えば、組換えDNA技術により導入されている細胞、またはその後代である。 核酸またはタンパク質は、細胞およびその後代において安定にまたは一時的にトランスフェクトまたは形質転換(発現)することができる。細胞を増殖させ、導入したタンパク質を発現させることができ、または核酸を転写することができる。複製中に起こる突然変異が存在する可能性があるため、トランスフェクトまたは形質転換細胞の後代は、親細胞と同一ではない場合がある。 一般に、細胞トランスフェクションまたは形質転換ではベクターを使用する。ベクターは、ウイルス粒子または小胞内に含めることができ、所望により、標的細胞リガンドまたは受容体と結合するその粒子または小胞表面にタンパク質を含めることによって特定の細胞種に向けることができる。よって、ウイルス粒子または小胞自体、あるいはウイルス表面のタンパク質を作って、in vitroで、ex vivoでまたはin vivoでのトランスフェクションまたは形質転換を目的として細胞を標的にすることができる。従って、in vitroで、in vivoでおよびex vivoでの細胞、組織または器官へのウイルスおよび非ウイルスベクター送達手法が含まれる。 また、標的細胞(例えば、宿主細胞)への核酸の導入は、浸透圧衝撃(例えば、リン酸カルシウム)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合などのような当技術分野で公知の方法によっても行うことができる。in vitroで、ex vivoでおよびin vivoでの核酸およびポリペプチドの導入は、他の技術を用いても行うことができる。例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、またはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどのポリマー物質。核酸は、コアセルベーション技術によりまたは界面重合により、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセル、またはポリ(メチルメタクロレート)(poly(methylmethacrolate))マイクロカプセルを用いて調製したマイクロカプセル中に、あるいはコロイド系中に封入することができる。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系(水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなど)が含まれる。 様々な組成物を細胞に導入するためのリポソームは、当技術分野で公知であり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リポフェクチンおよびDOTAPが含まれる(例えば、米国特許第4,844,904号、同第5,000,959号、同第4,863,740号、および同第4,975,282号; ならびにGIBCO-BRL,Gaithersburg,Md)。遺伝子療法に有用なピペラジンに基づくアムフィリック陽イオン性脂質(piperazinebasedamphilic cationic lipids)も知られている(例えば、米国特許第5,861,397号参照)。陽イオン性脂質系も知られている(例えば、米国特許第5,459,127号参照)。本明細書において、ポリマー物質、マイクロカプセルおよびコロイド分散系(リポソームなど)をまとめて「小胞」と呼ぶ。 さらに抗体法において使用し得る好適な技術には、TIM-3に基づくアフィニティー精製、非変性ゲル精製、HPLCまたはRP-HPLC、サイズ排除、プロテインAカラムでの精製、あるいはこれらの技術の任意の組合せが含まれる。TIM-3抗体イソタイプは、ELISAアッセイを用いて決定することができ、例えば、マウスIg吸収抗ヒトIgを用いてヒトIgを同定することができる。 結合親和性は、結合(Ka)および解離(Kd)速度によって決定することができる。平衡親和性定数、KDはKa/Kd比である。結合(Ka)および解離(Kd)速度は、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて測定することができる(RichおよびMyszka,Curr.Opin.Biotechnol11:54(2000);Englebienne,Analyst. 123: 1599 (1998))。結合速度のリアルタイム検出およびモニタリングについての計装および方法は公知であり、市販されている(BiaCore 2000, Biacore AB, Upsala, Sweden; およびMalmqvist, Biochem. Soc. Trans. 27:335 (1999))。KD値は、TIM-3における結合部位の半分(50%)を飽和させるのに必要なTIM-3抗体濃度として定義することができる。(医薬組成物) 抗体は医薬組成物に含めることができる。一実施形態では、抗体は製薬上許容される担体、安定剤または賦形剤を含んでおり、水溶液の形態又は凍結乾燥製剤として調整される。典型的には、製薬的に許容可能な適当量の塩が製剤の等張化のために用いられる。許容できる担体、安定化剤又は賦形剤は、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝液;低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;メチオニン及びアスコルビン酸を含む抗酸化剤;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。(TIM-3発現細胞を標的とした抗腫瘍物質の治療的使用) TIM-3発現細胞を標的とした抗腫瘍物質としては、TIM-3抗体が挙げられるがこれに限定されるものではない。 治療的使用が検討される疾患としては、TIM-3を発現する血液腫瘍細胞(AML細胞、CML細胞、MDS細胞、ALL細胞、CLL細胞、多発性骨髄腫細胞、など)、ヘルパーT細胞(たとえば、Th1細胞、Th17細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、単球・マクロファージおよびそれに類する細胞(肝臓星細胞、破骨細胞、ミクログリア細胞、表皮内大食細胞、塵埃細胞(肺胞大食細胞)など))に結合または標的とすることにより治療が可能な疾患が考えられるが、これ治療的使用が検討される疾患としては、骨髄または末梢血中にTIM-3の発現が認められる血液疾患、特に血液腫瘍が挙げられる。具体的には急性骨髄性白血病(AML)が考えられる。急性骨髄性白血病は、造血幹細胞から種々の血球に分化していく途中の細胞において、それらのどの段階の細胞が腫瘍化したかによるFAB分類(French-American-British criteria) に基づいてM0(微分化型骨髄性白血病)、M1(未分化型骨髄芽球性白血病)、M2(分化型骨髄芽球性白血病)、M3(前骨髄球性白血病)、M4(骨髄単球性白血病)、M5(単球性白血病)、M6(赤白血病)及びM7(巨核球性白血病)の病型、およびそれらの亜型に分類される。また、さらなる疾患としては、例えば、急性リンパ性白血病、非定型的白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞性白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増多症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、骨髄異形成症候群、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫(濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、Burkittリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫およびCatsleman病)、T細胞リンパ腫(T/NK細胞リンパ腫、成人T細胞白血病、及びNK細胞白血病)が含まれる。 TIM-3抗体あるいはTIM-3発現細胞を標的とした抗腫瘍物質の投与または送達を含む本発明の方法は、任意の許容される方法(any acdceptable method)により実施することができる。特定の実施形態では、これらは被験体に局所的に、局部的に、または全身的に投与される。 また、上記の疾患を治療するためにTIM-3抗体あるいはTIM-3発現細胞を標的とした抗腫瘍物質は、同様の疾患に好適な他の治療剤(典型的には化学療法剤)と組み合わせや放射線療法との併用も考慮することができる。 好適な他の治療剤としては、シタラビン(Ara-C)、アントラサイクリン系の抗腫瘍剤(典型的には、ダウノルビシン(DNR)、イダルビシン(IDA))等の化学療法剤、all-trans retinoic acid(ATRA)、亜ヒ酸やAm80(タミバロテン)等の分化誘導療法剤、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(オゾガマイシンコンジュゲート抗CD33抗体)、トポテカン、フルダラビン、シクロスポリン、ミトキサントロン(MIT)、インターフェロン及び、イマチニブが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、臨床上有効とされる治療法との組合せも含まれる。 本発明により治療可能な被験体には、哺乳類(例えば、ヒト)が含まれる。特定の実施形態では、血液腫瘍の疑いのある被験体であるかあるいは血液腫瘍の治療を受けた被験体;TIM-3が発現している細胞が認められる血液腫瘍の疑いのある被験体であるかあるいは血液腫瘍の治療を受けた被験体;TIM-3媒介細胞応答の候補であるかあるいはTIM-3媒介細胞応答の治療を受けた被験体;骨髄性悪性腫瘍の疑いのある被験体であるかあるいは骨髄性悪性腫瘍の治療を受けた被験体;急性骨髄性白血病の疑いのある被験体であるかあるいは急性骨髄性白血病の治療を受けた被験体である。 本明細書において、用語「治療する」、「治療(すること)」、「処置」およびその文法上の変形は、患者において生理学的効果または転帰を得ることが望ましい各被験体または患者において行われるプロトコール、計画、過程または改善法を意味する。よって、本発明の方法には、とりわけ、特定の被験体の障害、疾患、生理学的状態、病状または症状において測定可能な改善または有益な効果をもたらす処置および治療法が含まれる。測定可能な改善または有益な効果は、障害、疾患、生理学的状態、病状または症状におけるいずれもの他覚的もしくは自覚的、過度的、一時的、または長期的改善、あるいはその障害、疾患、生理学的状態、病状または状態に関連または起因する有害な症状の発症、重症度、期間または頻度の軽減である。本発明方法では必ずしもすぐに効果が現れず、少し遅れて、時間の経過で最終的な改善または有益な効果が認められる可能性があり、特定の被験体において安定化または改善が起こる。 本明細書において、用語「再発」とは、被験体に対する治療が奏効し、または血液学的な寛解状態になった後に、症状が悪化することまたは非血液学的寛解状態になることを意味する。白血病における「寛解」とは、末梢血中に白血病細胞の芽球が見つからない状態を意味する。急性骨髄性白血病における寛解状態はNIHにより提唱されている(ChesonBD,etal.,JournalofClinicalOncology, Vol 8, 813-819参照)。また、「難治性」とは、被験体に対する治療に効果が認められない状態をいう。(アンタゴニスト) 抗体には、TIM-3の機能または活性に作用するものもさらに含まれる。特定の実施形態では、抗体は、TIM-3リガンドのTIM-3との結合を阻害または阻止し;TIM-3リガンドの細胞との結合を阻害または阻止し;TIM-3を解したシグナル伝達をモジュレートし(例えば、阻害または抑制する);TIM-3媒介細胞応答をモジュレートする。TIM-3発現細胞応答は、TIM-3発現細胞の増殖、IFNγなどサイトカイン産生の亢進、腫瘍免疫の増強を引き起こす。(アゴニスト抗体の利用法) 抗体には、TIM-3の機能または活性に作用するものもさらに含まれる。特定の実施形態では、抗体は、TIM-3へのTIM-3リガンドの結合を模倣し;TIM-3を解したシグナル伝達をモジュレートし(例えば、促進または増強する);TIM-3媒介細胞応答をモジュレートする。TIM-3発現細胞応答は、TIM-3発現細胞の増殖停止、サイトカイン産生の制御などを引き起こす。 特に断りのない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が関連する技術分野の業者には一般に明らかなものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験に、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、本明細書に記載しているものが好適な方法および材料である。(実施例1 骨髄および末梢血液細胞の調製) 患者および健康なボランティアからの検体の提供は九州大学病院倫理委員会承認のもと実施された。骨髄細胞は、白血病または骨髄異形成症候群患者および健康なボランティアから骨髄穿刺法により採取した。末梢血液は健康なボランティアから静脈採血により採取した。幹細胞動員末梢血は、自家末梢血幹細胞移植の適応疾患患者(化学療法により完全寛解に入ったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫再発症例で、化学療法に感受性のある症例)より採取した。詳しくは、化学療法(Cyclophosphamide(CY)大量療法またはVP-16(etoposide)大量療法)終了後、G-CSF製剤(Filgrastim)であるグラン(R)(協和発酵キリン社)を投与することで末梢血幹細胞を動員し、標準的なアフェレーシスにより採取した。実験には、検体中のCD34陽性細胞を確認するために採取した単核球の一部を用いた。なお、薬剤の投与量、スケジュールは保険適用の、標準的なプロトコールである。 採取した細胞は、凝固を防ぐために、ヘパリンを加えた。検体をPBSで希釈した後、Ficoll-Plaque Plus(GEHealthcare)を下に敷いた。単核細胞を血清および血小板から、1700 rpm、30分で遠心分離すること(ブレーキをかけない)により分離した。PBMCを含有する界面を集め、ステイニングメディウムを用いて洗浄した。再びステイニングメディウムを用いて懸濁し、細胞をチュルク液と混合後に計測した。1 x 106個の細胞あたり、ステイニングメディウム 100 uLを用いて再懸濁した。正常造血幹細胞および前駆細胞を染色する場合には上記、単核球分離後にIndirect CD34 MicroBead kit(Miltenyi Biotec)を用いてCD34陽性細胞のpositive selectionを行った後、最終的にステイニングメディウムを加えて全体で100uLの容量とした。(実施例2 骨髄正常造血および腫瘍幹細胞の染色と解析方法) 1次抗体として、抗ヒトCD34抗体(ベクトンディッキンソン(以下BDと略)社製 Cat No.340441) 2uL、抗ヒトCD38抗体(CALTAG社製、CatNo.MHCD3815) 20uL、抗ヒトCD90抗体(BD社製、CatNo.555595)2uL、およびTIM-3抗体(R&DSystems社製、344823)20 uLで4℃40分間染色した。その後PBSを加えて1500rpm5分間で遠心、洗浄後、上清を捨て、再度ステイニングメディウム100uLを加えた。2次抗体として抗ヒトLineage抗体(抗ヒトCD3(BD社製、CatNo.555341)、CD4(BD社製、CatNo.555348)、CD8(BD社製、CatNo.555636)、CD10(BD社製、CatNo.555376)、CD19(BD社製、CatNo.555414)、CD20(BD社製、CatNo.555624)、CD11b(BD社製、CatNo.555389)、CD14(ベックマンコールター社製、CatNo.A07765)、CD56(BD社製、CatNo.555517)、GPA(BD社製、Cat No.559944)抗体)をそれぞれ 5uLずつ、およびストレプトアビジンAPC-Cy7(BD社製、Cat No.554063) 5uLを加え、4℃40分間染色した。PBSを用いて洗浄後、PIを添加したステイニングメディウムで再懸濁した。検体はFACS Aria(BD)で解析およびsortingを施行した。(実施例3 ヒトTIM-3分子のヒト血液腫瘍における発現) 実施例1及び実施例2の方法を用いて、ヒトの血液腫瘍におけるヒトTIM-3分子の発現を調べた。 ヒトTIM-3分子のAML (M0)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図1および表1に示す。AML (M0)の患者では2例中1例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M0)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のAML (M1)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図2および表1に示す。AML (M1)の患者では9例全例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M1)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のAML (M2)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図3および表1に示す。AML (M2)の患者では10例全例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M2)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のAML (M3)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図4および表1に示す。AML (M3)の患者1例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M3)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のAML (M4)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図5および表1に示す。AML (M4)の患者では5例全例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M4)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のAML (M5)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図6および表1に示す。AML (M5)の患者では2例全例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M5)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のAML (M6)患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞、Lin(-)CD34(+)CD38(+)細胞、Lin(-)CD34(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図7および表1に示す。AML (M6)の患者では2例全例においてTIM-3の発現が認められた。よって、本実施例は、AML (M6)細胞に対するTIM-3分子の治療標的としての有用性を示すものである。 ヒトTIM-3分子のMDS患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図9に示す。MDSの患者では7例全例においてTIM-3の発現が認められた。 ヒトTIM-3分子のCML患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図10に示す。CMLの患者では2例全例においてTIM-3の発現が認められた。 ヒトTIM-3分子のALL患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図11に示す。ALLの患者1例ではTIM-3の発現が認められなかった。 ヒトTIM-3分子の再発AML患者由来骨髄Lin(-)CD34(+)CD38(-)およびLin(-)CD34(+)CD38(+)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。典型的な結果を図12に示す。AML再発患者ではLin(-)CD34(+)CD38(-)白血病幹細胞細胞およびLin(-)CD34(+)CD38(+)AML細胞においてTIM-3の発現が認められた。(実施例4 ヒトTIM-3分子のヒト正常血液細胞における発現) 方法は実施例1の骨髄および末梢血液細胞の調製、および、実施例2の骨髄正常造血および腫瘍幹細胞の染色と解析方法のとおりである。 ヒトTIM-3分子の健常人骨髄及び幹細胞動員末梢血由来Lin(-)CD34(+)CD38(-)細胞およびLin(-)CD34(+)CD38(+)細胞における発現をマルチカラーのフローサイトメトリー解析により調査した。結果を図13に示す。正常造血幹細胞フラクションであるLin(-)CD34(+)CD38(-)CD90(+)細胞ではTIM-3の発現が認められなかった。 また、リンパ球系共通前駆細胞(CLP)、骨髄系共通前駆細胞(CMP)、顆粒球・単球系前駆細胞(GMP)の一部でTIM-3の発現が認められたが、巨核球・赤血球系前駆細胞(MEP)では発現が認められなかった。 ヒトTIM-3分子の健常人由来正常末梢血液細胞における発現をフローサイトメトリー解析により調査した。実施例1の骨髄および末梢血液細胞の調製にしたがい、抗CD3抗体(BD社製、CatNo.555339)2μL、抗CD14抗体(BD社製、CatNo.555413)2μL、抗CD19抗体(BD社製、CatNo.555399) 10uL、およびTIM-3抗体(R&DSystems社製、344823)20 uLで4℃40分間染色した。ステイニングメディウムを用いて洗浄後、PIを添加したステイニングメディウムで再懸濁した。検体はFACSAria(BD)で解析した。 結果を図14に示す。TIM-3は単球において明瞭な発現を認めた。CD3陽性T細胞の一部でも発現を認めた。顆粒球およびB細胞では発現が認められなかった。(実施例5 TIM-3の細胞株における発現) hTIM-3のヒト細胞株における発現をフローサイトメトリー法にて解析した。 培養中の細胞をピペッティングにより回収し、遠心分離により濃縮した。ステイニングメディウムで洗浄後、ヒトIgG(終濃度1 mg/ml SIGMA社製)でブロッキングした。PE標識抗ヒトTIM-3モノクローナル抗体(R&D Systems)で染色し、4℃で30分間静置した。7-AAD(BDBiosciences)を添加し、ステイニングメディウムで洗浄後、再びステイニングメディウムで懸濁し、FACSCalibur(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)により解析した。その結果を図15に示す。Multiple Myelomaに由来するRPMI-8226細胞とARH77細胞、B細胞リンパ腫に由来するDaudi細胞、T細胞リンパ腫に由来するSR-786細胞、及びNK細胞リンパ腫に由来するNK-92細胞においてTIM-3の発現が認められた。さらに、AML由来であるKG-1細胞においてもTIM-3の発現が認められた。 このことから、TIM-3は、Multiple MyelomaやAMLにおいて発現している可能性が示され、これらの疾患に対する治療薬として抗ヒトTIM-3抗体の有用性を示唆するものである。(実施例6 可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白の調製) 以下の方法により蛋白を調製した。(hTIM-3 cDNAの分子クローニング) hTIM-3 cDNAは白血球由来cDNA(CLONTECHHumanMTCPanel)よりExTaq(タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR装置はGeneAmpPCRSystem9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのPCR反応でこれを使用)。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-58℃15秒-72℃30秒の3ステップ反応を40サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;TIM-3 Fw2:5’-GCCACCATGTTTTCACATCTTCCCTT-3’ (配列番号3)TIM-3 Re2:5’-CTATGGCATTGCAAAGCGAC-3’ (配列番号4) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。0.9kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて抽出した。抽出したDNA 4.5uLとpGEM-T Easy vector (Promega) 0.5uLを混合し、TaKaRa Ligation Kitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(X-Gal、アンピシリン含有)へ撒いた。pGEM-T Easy vectorのインサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃30秒の3ステップ反応を35サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。 用いたPCRプライマーは以下のとおり;T7: 5’- TAATACGACTCACTATAGGG-3’ (配列番号5)SP6: 5’-CATACGATTTAGGTGACACTATAG-3’ (配列番号6) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近の増幅が得られたコロニーを対象に、ダイレクトシークエンシング法により塩基配列を決定した。シークエンスサンプルの反応はBigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)とGeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのDNA配列解析でこれらを使用)。プライマーはT7およびSP6を用いた。シークエンス解析装置はABI 3700XL DNA analyzer(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのDNA配列解析でこれを使用)。GenBankaccessionnumberNM_032782のコーディングリージョンと同一の配列を有するクローンを選定し、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。(hTIM-3発現ベクターの作製) hTIM-3発現ベクターの作製には、ヒトTIM-3 cDNAの5’末端がpGEM-TEasy vector内のクローニングサイトのT7側にあるクローンを用いた。hTIM-3 / GEM-T EasyplasmidDNAとpMCs-IGRetrovirus Vector(コスモバイオ)をNotIで消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。それぞれ、0.9kb付近と5kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizardSVGelandPCRClean-Up Systemを用いて抽出した。抽出したhTIM-3 DNA4.5μLとpMCs-IGvector DNA 0.5μLを混合し、TaKaRaLigationKitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(アンピシリン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃45秒の3ステップ反応を35サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。 用いたPCRプライマーは以下のとおり;pMCs-Fw: 5’-TCAAAGTAGACGGCATCGCAG-3’ (配列番号7)TIM-3 Re1: 5’-GCATTGCAAAGCGACAAC-3’ (配列番号8) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.1kb付近の増幅が得られたコロニーからミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。精製したhTIM-3 / pMCs-IG plasmid DNAはDNA配列解析によりGenBank accession number NM_032782のコーディングリージョンと同一の配列を有することを確認した。DNA配列解析に用いたプライマーは以下のとおり;pMCs-Fw: 5’-TCAAAGTAGACGGCATCGCAG-3’ (配列番号9)hTIM-3 Fw1:5’-ACTCTGGAGCAACCATCA-3’ (配列番号10) hTIM-3蛋白の発現を確認するために、hTIM-3/pMCs-IGplasmidDNAを293T細胞へ一過性に発現させた。遺伝子導入にはFuGene6(Roche)を用いた。二日後に293T細胞を回収し、ステイニングメディウム(2% FCSおよび0.05%アジ化ナトリウム含有PBS)で洗浄後、PE標識抗ヒトTIM-3モノクローナル抗体(R&D Systems)を用いて染色した。再びステイニングメディウムで洗浄後、7-AAD(BDBiosciences)を添加し、FACSCalibur(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)により解析した。その結果、hTIM-3 / pMCs-IGベクターからのhTIM-3蛋白の発現が確認できた。(hTIM-3安定発現細胞株の作製) hTIM-3 /pMCs-IGまたはEmptypMCs-IGおよびVSV-G発現ベクターを293gp細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入にはFuGene6(Roche)を用いた。3日後、培養上清を回収し、0.45 um filter(ミリポア)で不純物を除いた。遠心分離(6000 x g、4℃、7時間)の後、沈殿をIMDM培地(Invitrogen)で溶解した。濃縮したレトロウイルス溶液とプロタミン溶液(和光純薬、終濃度100 μg/ ml)を、EoL-1細胞およびJurkat細胞培養液に加えた。数回の継代の後、FACSAriaにて培養培地中にGFP陽性感染細胞を採取した。さらに数回の継代の後、再度FACSAriaにて培養培地中にGFP陽性感染細胞を採取した。数回の継代の後、PE標識抗TIM-3モノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー法によりTIM-3の発現を確認した。(可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質発現ベクターの調製) ヒトTIM-3の細胞外領域をコードするcDNAをPCR法で増幅し、下流にFLAGタグとヒトFc配列を連結した(sTIM-3-FLAG-Fc / pTracerCMV)。 ヒトTIM-3の細胞外領域をコードするcDNAはhTIM-3 / pMCs-IGプラスミドDNAを鋳型としPrimeSTAR(R) HS DNA Polymerase (タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は98℃10秒-68℃40秒の2ステップ反応を20サイクル行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;pMCs-Fw: 5’-TCAAAGTAGACGGCATCGCAG-3’ (配列番号11)TIM3ED-FcReXba:5’- TTTTCTAGATCTGATGGTTGCTCCAGA-3’ (配列番号12) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。0.6kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて抽出した。精製されたDNAをEcoRIとXbaIで消化し、再度0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAE buffer)を行った。0.9kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて抽出した。精製されたDNAと同一酵素で解裂されていたpTracer-CMV-FLAG-humanFcベクター(改変pTracer-CMV[インビトロジェン社製]のXba I部位とApa I部位のところにFLAG及びヒトIgG1のFc領域を導入したプラスミド)を混合し、TaKaRa Ligation Kitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(アンピシリン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃40秒の3ステップ反応を35サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;T7: 5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’ (配列番号13)TIM3ED-FcReXba:5’- TTTTCTAGATCTGATGGTTGCTCCAGA-3’ (配列番号14) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。0.7kb付近の増幅が得られたコロニーからミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。精製したsTIM-3-FLAG-Fc/pTracerCMVplasmidDNAはDNA配列解析によりGenBankaccessionnumber NM_032782の当該領域と同一の配列を有することを確認した。DNA配列解析に用いたプライマーは以下のとおり;T7: 5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’ (配列番号15)hTIM-3 Fw1:5’-ACTCTGGAGCAACCATCA-3’ (配列番号16) インサート(EcoRI認識部位の後ろからApaI認識部位直前まで)の配列は以下のとおり:GATTGCCACCATGTTTTCACATCTTCCCTTTGACTGTGTCCTGCTGCTGCTGCTGCTACTACTTACAAGGTCCTCAGAAGTGGAATACAGAGCGGAGGTCGGTCAGAATGCCTATCTGCCCTGCTTCTACACCCCAGCCGCCCCAGGGAACCTCGTGCCCGTCTGCTGGGGCAAAGGAGCCTGTCCTGTGTTTGAATGTGGCAACGTGGTGCTCAGGACTGATGAAAGGGATGTGAATTATTGGACATCCAGATACTGGCTAAATGGGGATTTCCGCAAAGGAGATGTGTCCCTGACCATAGAGAATGTGACTCTAGCAGACAGTGGGATCTACTGCTGCCGGATCCAAATCCCAGGCATAATGAATGATGAAAAATTTAACCTGAAGTTGGTCATCAAACCAGCCAAGGTCACCCCTGCACCGACTCGGCAGAGAGACTTCACTGCAGCCTTTCCAAGGATGCTTACCACCAGGGGACATGGCCCAGCAGAGACACAGACACTGGGGAGCCTCCCTGATATAAATCTAACACAAATATCCACATTGGCCAATGAGTTACGGGACTCTAGATTGGCCAATGACTTACGGGACTCTGGAGCAACCATCAGATCTAGAGCAGACTACAAGGACGACGATGACAAGACTAGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGCGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGATGA (配列番号17)(可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質発現ベクターの調製) ヒトTIM-3の細胞外領域をコードするcDNAをPCR法で増幅し、下流にFLAGタグを連結した(sTIM-3-FLAG / pEF6 Myc_HisC)。 ヒトTIM-3の細胞外領域をコードするcDNAはhTIM-3 / pGEM-T EasyプラスミドDNAを鋳型としPrimeSTAR(R) HS DNA Polymerase (タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は98℃10秒-68℃30秒の2ステップ反応を25サイクル行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;TIM-3 Fw2:5’-GCCACCATGTTTTCACATCTTCCCTT-3’ (配列番号18)TIM3ED-FLAG4aa:5’- GTCCTTGTAGTCTCTGATGGTTGCTCCAGA-3’ (配列番号19) 得られたPCR産物2 uLを鋳型に、LA Taq (タカラバイオ株式会社) を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-58℃15秒-72℃30秒の3ステップ反応を16サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;TIM-3 Fw2:5’-GCCACCATGTTTTCACATCTTCCCTT-3’ (配列番号20)C-FLAG-NotR2:5’-AAAAGCGGCCGCTCACTTGTCGTCATCGTCCTTGTAGTC-3’ (配列番号21) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。0.6kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて抽出した。抽出したDNA 4uLとpGEM-T Easy vector (Promega) 0.5uLを混合し、Quick Ligation(TM) Kit(New England Biolabs社)を用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(X-Gal、アンピシリン含有)へ撒いた。pGEM-T Easy vectorのインサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃30秒の3ステップ反応を38サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;T7: 5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’ (配列番号22)SP6: 5’-CATACGATTTAGGTGACACTATAG-3’ (配列番号23) 得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。0.8kb付近の増幅が得られたコロニーを対象に、ダイレクトシークエンシング法により塩基配列を決定した。プライマーはT7およびSP6を用いた。GenBankaccessionnumberNM_032782のコーディングリージョンと同一の配列を有するクローンを選定し、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。 可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質発現ベクターの作製には、ヒトTIM-3 cDNAの5’末端がpGEM-TEasyvector内のクローニングサイトのT7側にあるクローンを用いた。hTIM-3 / GEM-T EasyplasmidDNAとpEF6Myc_HisC(インビトロジェン社)をNotIで消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。それぞれ、0.6kb付近と5kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizardSVGel and PCR Clean-Up Systemを用いて抽出した。抽出したsTIM-3 cDNA4uLとpEF6 Myc_HisC vector DNA0.5uLを混合し、QuickLigation(TM) Kit(New England Biolabs社)を用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(アンピシリン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃60秒の3ステップ反応を38サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;TIM-3 Fw2:5’-GCCACCATGTTTTCACATCTTCCCTT-3’ (配列番号24)BGH-R: 5’-TAGAAGGCACAGTCGAGG-3’ (配列番号25) 0.8kb付近の増幅が得られたコロニーから、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。 精製したsTIM-3-FLAG/ pEF6 Myc_HisC plasmid DNAはDNA配列解析によりGenBank accession number NM_032782の当該領域と同一の配列を有することを確認した。DNA配列解析に用いたプライマーは以下のとおり;T7: 5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’ (配列番号26)BGH-R: 5’-TAGAAGGCACAGTCGAGG-3’ (配列番号27) インサート(NotI認識部位の後ろからNotI認識部位直前まで)の配列は以下のとおり:GGGAATTCGATTGCCACCATGTTTTCACATCTTCCCTTTGACTGTGTCCTGCTGCTGCTGCTGCTACTACTTACAAGGTCCTCAGAAGTGGAATACAGAGCGGAGGTCGGTCAGAATGCCTATCTGCCCTGCTTCTACACCCCAGCCGCCCCAGGGAACCTCGTGCCCGTCTGCTGGGGCAAAGGAGCCTGTCCTGTGTTTGAATGTGGCAACGTGGTGCTCAGGACTGATGAAAGGGATGTGAATTATTGGACATCCAGATACTGGCTAAATGGGGATTTCCGCAAAGGAGATGTGTCCCTGACCATAGAGAATGTGACTCTAGCAGACAGTGGGATCTACTGCTGCCGGATCCAAATCCCAGGCATAATGAATGATGAAAAATTTAACCTGAAGTTGGTCATCAAACCAGCCAAGGTCACCCCTGCACCGACTCGGCAGAGAGACTTCACTGCAGCCTTTCCAAGGATGCTTACCACCAGGGGACATGGCCCAGCAGAGACACAGACACTGGGGAGCCTCCCTGATATAAATCTAACACAAATATCCACATTGGCCAATGAGTTACGGGACTCTAGATTGGCCAATGACTTACGGGACTCTGGAGCAACCATCAGAGACTACAAGGACGATGACGACAAGTGA (配列番号28)(可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質の調製) sTIM-3-FLAG-Fc/ pTracerCMV プラスミドDNAおよびsTIM-3-FLAG/ pEF6 Myc_HisCプラスミドDNAをQIAGENPlasmid Maxi Kitにより精製した。発現のための宿主細胞には、HEK293F細胞を用いた。HEK293F細胞はFreeStyle 293 Expression Medium(インビトロジェン社)を用いて振とう培養した(37℃、5 % CO2)。 遺伝子導入にはPEI法を用いた。Polyethylenimine,Linear,MW25,000(Polysciences社製)を秤量し、HClでpH7.0付近に調整しながらPBS(Invitrogen社製)中に溶解させた(1g/L)。1時間攪拌後、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社製)でろ過滅菌した。精製したプラスミドDNA 1mgとOpti-Pro SFM (Invitrogen社製) 20 mLを混合し、溶液Aとした。PEI溶液(1 g/L)2.5mLとOpti-ProSFM(Invitrogen社製) 20 mLを混合し、溶液Bとした。溶液Aと溶液Bを混合し、10分間静置した後、293F細胞1L(1 mL あたり細胞1000000個)に添加した。6日後、細胞上清を回収し、蛋白精製に用いた。 培養上清からの可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質の精製は以下の方法で行った。可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質を含む培養上清を遺伝子導入から6日後に遠心分離により回収し、フィルターを通過させた(950 mL)。トリス緩衝生理食塩水(TBS)で5倍希釈し、Anti-FLAGM2AgaroseAffinityGel(シグマ社製)を用いて作製しAnti-FLAGカラムにHiLoad Pump P-50(ファルマシアバイオテック社製)を用いてアプライした。溶出はFLAGペプチド(シグマ社製)を用い、マニュアルに従った。溶出液を8フラクションに分画し、各フラクションを還元条件化でSDS-PAGE (マルチゲルIIミニ10/20%グラジエントゲル; コスモバイオ社製)後、銀染色およびウェスタンブロッティングを行った。銀染色は銀染色試薬「第一」(第一化学社製)を用いた。ウェスタンブロッティングには、抗FLAG M2抗体(シグマ社製)とアルカリフォスファターゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリン抗体を用いた。目的の蛋白質が認められたフラクションをアミコンウルトラ-4 10K (ミリポア社製)を用いて濃縮し、Superdex 200 gp (GEヘルスケア社製)を用いてゲルろ過クロマトグラフィー を行った。分画し、各フラクションを還元条件化でSDS-PAGE(マルチゲルIIミニ 10 / 20% グラジエントゲル; コスモバイオ社製)後、銀染色およびウェスタンブロッティングを行った。銀染色は銀染色試薬「第一」(第一化学社製)を用いた。ウェスタンブロッティングには、抗FLAG M2抗体(シグマ社製)とアルカリフォスファターゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリン抗体を用いた。目的の蛋白質が認められたフラクションをアミコンウルトラ-4 10K (ミリポア社製)を用いて濃縮し、PBS 0.5 mLで洗浄した。孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社製)でろ過滅菌し、可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質を得た。リムルスES-IIキットワコー(和光純薬社製)を用いたリムルステストの結果、可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質からはエンドトキシンは検出されなかった。可溶型細胞膜外ヒトTIM-3ヒトFc融合蛋白質および可溶型細胞膜外ヒトTIM-3蛋白質の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mL を1.4 ODとして算出した。(実施例7 抗TIM-3ポリクローナル抗体によるTIM-3発現細胞株傷害性試験) 抗体を介した細胞性の細胞傷害活性は、抗体の存在下でエフェクターとしてヒト末梢血由来単核球(PeripheralBloodMononuclearCells以下、PBMC)を用い、ターゲット細胞への傷害活性(抗体依存性細胞性細胞傷害活性(Antibody-DependentCellularCytotoxicity)以下、ADCC)の測定を実施した。 抗体は、ヤギ由来抗TIM-3ポリクローナル抗体(R&DSystems社; AF2365)さらに、陰性コントロールとしてヤギ由来IgG(シグマ社製; I5256-10MG)を用いた。 方法は簡単には、ターゲット細胞をPBMC存在下で培養し、抗体によるターゲット細胞の溶解を計測するものである。 具体的には、ターゲット細胞としてTIM-3強制発現Jurkat細胞およびTIM-3強制発現EoL-1細胞を放射性同位元素51Crでラベルされたクロム酸ナトリウム(Na251CrO4、PerkinElmer社製、NEZ030S)と37℃、5% CO2存在下で1時間培養することでターゲット細胞を51Crでラベルした。ラベルしたターゲット細胞は、10% FCS含有RPMI-1640培地で3回洗浄し余分な51Crを除いた後に培地に懸濁し(40,000 cells / mL)、50 uL / wellを96-ウェルプレートに移した。PBMCを培地に懸濁し(4,000,000 cells / mL)、50 uL / wellをプレートに移した(エフェクター/ターゲット率=100)。抗体を培地に懸濁してプレートに50 uLを添加し(終濃度 10ug / mL)、37℃、5%CO2存在下で4時間培養した。抗体としては、抗ヒトTIM-3ヤギポリクローナル抗体(R&D Systems社製)、陰性コントロールとしてヤギIgG(シグマ社製)を用いた。エフェクターに用いたPBMCは、健常ヒト末梢血由来のサンプルを用いた。 ターゲット細胞の溶解度は、細胞が溶解し培地中に放出されたクロム酸ナトリウム中の51Cr量を測定した。すなわち、プレートと遠心した後、上清をシンチレータ入り96穴プレート(Lumaplate-TM、PerkinElmer社製)に50 μL移し、56℃、2時間で乾燥させた。プレートをシールし(TopSeal-A、Packard社製)、マイクロプレートリーダー(TopCount、PerkinElmer社製)で測定した。 その結果を、図16に示す。有意差検定は標準的なStudent’s t-testを用いてヤギIgGと比較し、危険率(p)が0.05以下のものを有意に異なるものとした。 ヒト由来IgGコントロールと比較して、下に示す抗TIM-3ポリクローナル抗体において有意にターゲット細胞溶解率の増加が認められた。このことから、TIM-3発現細胞に対するADCCを持つことが示された。よって、本実施例は、ADCCを用いたTIM-3陽性細胞除去を薬効とした治療の可能性を示すものである。 また、補体と抗体の存在下でターゲット細胞への傷害活性補体依存性細胞傷害活性(Complement-DependentCytotoxicity、以下、CDC)の測定を実施した。 方法は簡単には、ターゲット細胞に放射性クロム(51Cr)を細胞質内に取り込ませ、細胞死により培養液中に遊離される51Cr量をγ線量で測定した。 具体的には、ターゲット細胞としてTIM-3強制発現EoL-1細胞およびTIM-3強制発現Jurkat細胞106個を15μLのFetal CalfSerum (FCS)に懸濁し、50μL(37MBq/mL)の51Crラベルされたクロム酸ナトリウム(PerkinElmer社製:以下、51Crと書く)を添加し、1時間37℃で培養した。次に、培地を10mL添加し、遠心して培地を捨てることを3回繰り返すことで、細胞内に取り込まれていない51Crを除いた。 CDCは、51CrラベルしたTIM-3強制発現EoL-1細胞2000個に対して、最終濃度2.5%の幼弱ウサギ血清由来補体(Cedarlane社製; CL3441)と各濃度の抗体(終濃度0ug/ml、0.01ug/ml、0.1 ug/ml、1 ug/ml、10ug/ml)を混合した。U底96ウェルプレートにおいて、混合液の全体容量を150μLとし、ともに37℃、5% CO2存在下で2時間培養した。また、対照として、Triton-X100を終濃度0.33%で添加した。培養後、プレートを遠心して細胞を沈めた後、上清50μLを粉末シンチレーター含有の96穴プレート(LumaplateTM-96:パッカード社製)に移し、56℃、2時間で乾燥した。乾燥を確認後、専用カバー(TopSealTM-A:96-wellMicroplates:パッカード社製)でプレートをカバーし、シンチレーションカウンター(トップカウント:パッカード社製)でγ線量を測定した。 各ウェルの値から抗体濃度0 ug/mlにおけるγ線量を差し引いた値をTriton-X100を加えたウェル(特異的溶解率100%とする)の値で割ることにより、特異的溶解率を算出した。その結果を図17に示す。TIM-3ポリクローナル抗体の濃度依存的にターゲット細胞に対する障害活性が認められた。よって、本実施例は、CDCを用いたTIM-3陽性細胞除去を薬効とした治療の可能性を示すものである。(実施例8 抗TIM-3ポリクローナル抗体によるAML初代細胞傷害性試験) 抗体を介した細胞傷害性活性は、補体と抗体の存在下でターゲット細胞への傷害活性(補体依存性細胞傷害活性(Complement-DependentCytotoxicity)以下、CDC)の測定を実施した。 方法は簡単には、ターゲット細胞を補体成分存在下で培養し、抗体による細胞生存度の低下を計測するものである。 抗体は、ヤギ由来抗TIM-3ポリクローナル抗体さらに、陰性コントロールとしてヤギ由来IgG(シグマ社製; I5256-10MG)を用いた。 具体的には、ターゲット細胞として患者検体よりprimary AML細胞を10%FCS含有RPMI-1640培地に懸濁し1000000cells / wellを24-ウェルプレートに移した(462.5uL / well)。幼弱ウサギ血清由来補体(Cedarlane社製; CL3441)12.5 μL/well(最終濃度2.5%)を加えた。ヤギ由来抗TIM-3ポリクローナル抗体 (0.2 mg/ml) 25 μLを添加し(終濃度 10 μg / mL)、37℃、5% CO2存在下で3時間培養した。 死細胞の割合は、AnnexinV染色によるフローサイトメトリーにより評価した。PBSを用いて洗浄後、AnnexinV Binding Buffer (BD社製) 50 uLに再懸濁し、PIとAnnexinV-FITC(BD社製)を添加し室温で10分間染色した後、AnnexinV Binding Buffer (BD社製) 200 μLで希釈した。検体はFACSAria(BD社製)で解析した。AML細胞全体におけるAnnexinV(+)PI(-)細胞とPI(+)細胞の頻度を死細胞率とした。 その結果を、図8に示す。有意差検定は標準的なStudent’s t-testを用いてヒト由来IgGと比較し、危険率(p)が0.05以下のものを有意に異なるものとした。ヒト由来IgGコントロールと比較して、抗TIM-3ポリクローナル抗体において有意に死細胞率の上昇が認められた。このことから、TIM-3陽性初代AML細胞に対するCDCを持つことが示された。よって、本実施例は、初代AML細胞除去を薬効とした治療の可能性を示すものである。 本発明によれば、骨髄または末梢血のLin(-)CD34(+)CD38(-)細胞画分にTIM-3が発現している血液腫瘍の疑いのある被験体あるいは血液腫瘍の治療を受けた被験体に対して、TIM-3抗体を投与することを含む治療方法を提供することができる。配列番号3:TIM-3Fw2プライマー配列番号4:TIM-3 Re2プライマー配列番号5:T7プライマー配列番号6:SP6プライマー配列番号7:pMCs-Fwプライマー配列番号8:TIM-3 Re1プライマー配列番号9:pMCs-Fwプライマー配列番号10:hTIM-3 Fw1プライマー配列番号11:pMCs-Fwプライマー配列番号12:TIM3ED-FcReXbaプライマー配列番号13:T7プライマー配列番号14:TIM3ED-FcReXbaプライマー配列番号15:T7プライマー配列番号16:hTIM-3 Fw1プライマー配列番号17:インサート(EcoRI認識部位の後ろからApal認識部位直前まで)配列番号18:TIM-3Fw2プライマー配列番号19:TIM3ED-FLAG4aaプライマー配列番号20:TIM-3 Fw2プライマー配列番号21:C-FLAG-NotR2プライマー配列番号22:T7プライマー配列番号23:SP6プライマー配列番号24:TIM-3 Fw2プライマー配列番号25:BGH-Rプライマー配列番号26:T7プライマー配列番号27:BGH-Rプライマー配列番号28:インサート(NotI認識部位の後ろからNotI認識部位の直前まで) ADCC活性及び/又はCDC活性を有するTIM−3に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有してなる、骨髄または末梢血にTIM−3が発現し、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つの細胞画分である細胞が認められる骨髄性悪性腫瘍の疑いのある被験体あるいは骨髄性悪性腫瘍の治療を受けた被験体に対する治療剤。(a)Lin(−)CD34(+)CD38(−)(b)Lin(−)CD34(+)CD38(+)(c)Lin(−)CD34(−)但し、(a)の細胞画分である細胞のみが認められる被験体は除く。 ADCC活性及び/又はCDC活性を有するTIM−3に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有してなる、被験体において、骨髄または末梢血にTIM−3が発現し、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つの細胞画分である細胞が認められる骨髄性悪性腫瘍を予防又は治療するための組成物。(a)Lin(−)CD34(+)CD38(−)(b)Lin(−)CD34(+)CD38(+)(c)Lin(−)CD34(−)但し、(a)の細胞画分である細胞のみが認められる被験体は除く。 TIM−3に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有してなる、被験体からの生物学的検体において、骨髄または末梢血にTIM−3が発現し、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つの細胞画分である細胞が認められる骨髄性悪性腫瘍を検出するための組成物。(a)Lin(−)CD34(+)CD38(−)(b)Lin(−)CD34(+)CD38(+)(c)Lin(−)CD34(−)但し、(a)の細胞画分である細胞のみが認められる生物学的検体は除く。 上記骨髄性悪性腫瘍が、AMLである、請求項1から3のいずれか1項に記載の剤又は組成物。 上記骨髄性悪性腫瘍が、MDSまたはCMLである、請求項1から3のいずれか1項に記載の剤又は組成物。 上記骨髄性悪性腫瘍が、再発及び/又は難治性である、請求項1から5のいずれか1項に記載の剤または組成物。 上記モノクローナル抗体が、IgGクラスの抗体である請求項1から6のいずれか1項に記載の剤または組成物。 上記モノクローナル抗体が、ヒト定常領域を含む抗体である請求項1から6のいずれか1項に記載の剤または組成物。 上記モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体から選ばれるいずれか1つの抗体である、請求項1から6のいずれか1項に記載の剤または組成物。配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る