タイトル: | 特許公報(B2)_ケージ状シクロペンタン酸二無水物化合物、その製造法およびポリイミド |
出願番号: | 2011508364 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07D 493/08,C08G 73/10,C07B 61/00 |
鈴木 秀雄 野田 尚宏 JP 5637132 特許公報(B2) 20141031 2011508364 20100406 ケージ状シクロペンタン酸二無水物化合物、その製造法およびポリイミド 日産化学工業株式会社 000003986 小島 隆司 100079304 重松 沙織 100114513 小林 克成 100120721 石川 武史 100124590 鈴木 秀雄 野田 尚宏 JP 2009095953 20090410 20141210 C07D 493/08 20060101AFI20141120BHJP C08G 73/10 20060101ALI20141120BHJP C07B 61/00 20060101ALN20141120BHJP JPC07D493/08 BC08G73/10C07B61/00 300 C07D493/00−497/22 C07C 1/00−409/44 C07B 31/00− 61/00 C08G 73/00− 73/26 CAplus/REGISTRY(STN) 特開平07−002728(JP,A) 国際公開第2006/043519(WO,A1) 特開2009−019105(JP,A) 特開2009−057323(JP,A) 特開平09−029983(JP,A) 18 JP2010056222 20100406 WO2010116990 20101014 27 20130404 三上 晶子 本発明は、ケージ状シクロペンタン酸二無水物化合物、その製造法およびポリイミドに関し、例えば、光学材料用として好適なポリイミドおよびその原料モノマーであるケージ状シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物化合物およびその製造法に関する。 一般に、ポリイミドは、高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性を有しているため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルタなどの電子材料として広く用いられている。また、最近では光導波路用材料等の光通信用材料や携帯電話の基板としての用途も期待されている。 近年、この分野の発展は目覚ましく、それに対応して、用いられる材料に対しても益々高度な特性が要求されるようになってきている。すなわち、単に耐熱性、耐溶剤性に優れるだけでなく、透明性など用途に応じた性能を多数併せ持つポリイミドが望まれている。 従来汎用されている、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応により得られる全芳香族ポリイミドは、濃い琥珀色を呈して着色するため、高い透明性が要求される用途においては問題が生じる。また、全芳香族ポリイミドは、有機溶剤に不溶であるため、実際にはその前駆体であるポリアミック酸を熱による脱水閉環して製膜する必要がある。 透明性を実現する一つの方法として、脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応によりポリイミド前駆体を得て、当該前駆体をイミド化することで、比較的着色が少なく、高透明性のポリイミドが得られることが知られている(特許文献1,2参照)。 しかし、無置換脂環式テトラカルボン酸二無水物を原料としたポリアミック酸およびポリイミドは、一般的な有機溶媒に対する溶解性が低く、沸点の高い極性有機溶媒にしか溶解しない。この溶媒除去のため、製膜焼成時に高温を要し、有機EL素子を構成するその他の有機物に好ましくない影響を与える。 また、最近、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1:2,3:4−二無水物(以下、CPDA)をモノマーとしたポリイミドを有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)素子のガスバリア膜として利用することが検討されている(特許文献3参照)。 しかしながら、このポリイミドは、重合度が低く耐熱性という点で改良の余地があるのみならず、有機溶媒に対する溶解性についても必ずしも十分であるとは言えなかった。特公平2−24294号公報特開昭58−208322号公報特開2006−232960号公報 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、紫外線領域に吸収がなく光透過性に優れるとともに絶縁性も高く、さらに耐熱性および加工性が改善され、有機溶媒に対する溶解性に優れたポリイミドの原料モノマーとなり得る脂環式テトラカルボン酸二無水物化合物、その効率的かつ経済的な製造法、およびそのポリイミドを提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成するためにポリイミド構造の主鎖の直線性をより高めて重合度を上げることに着目して鋭意検討を重ね、その原料モノマーとしてケージ状シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物化合物を見出すとともに、これから得られたポリイミドが、直線性に優れるため、高重合度および高耐熱性を有し、かつ、有機溶媒に対する溶解性も良好であることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、1. 式[1]で表されることを特徴とするケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物、(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)2. 前記R1およびR2が、水素原子である1のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物、3. 式[4](式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)で表されるシス,シス,シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物と、式[5] R3OH [5](式中、R3は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)で表されるアルコール化合物とを、酸触媒の存在下で反応させて式[6](式中、R1、R2およびR3は、前記と同じ意味を表す。)で表されるシス,シス,シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸テトラアルキルエステル化合物を得る第1工程と、この第1工程で得られた前記式[6]で示される化合物を塩基触媒である金属アルコラート存在下で異性化して式[3](式中、R1、R2およびR3は、前記と同じ意味を表す。)で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸テトラアルキルエステル化合物を得る第2工程と、この第2工程で得られた前記式[3]で示される化合物を有機酸で分解して式[2](式中、R1およびR2は、前記と同じ意味を表す。)で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸化合物を得る第3工程と、この第3工程で得られた前記式[2]で示される化合物を脱水する第4工程とを備えることを特徴とする式[1](式中、R1およびR2は、前記と同じ意味を表す。)で表されるケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法、4. 前記第1工程における酸触媒が、硫酸である3のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法、5. 前記塩基触媒が、カリウムt−ブトキシドである3のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法、6. 前記第2工程における異性化反応温度が、0〜200℃である3のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法、7. 前記第3工程における有機酸が、蟻酸である3のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法、8. 前記第3工程における有機酸分解温度が、0〜200℃である3のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法、9. 前記第4工程における脱水が、有機酸無水物を用いて行われる3のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法、10. 下記一般式[7]で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%含むことを特徴とするポリアミック酸、〔式[7]中、Aは、式[8](式[8]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、a1〜a4は、式[7]におけるカルボニル炭素原子との結合箇所を表す。ただし、a1およびa3が同時にカルボキシル基に結合することはなく、a2およびa4が同時にカルボキシル基に結合することはない。)で示される4価の有機基を、Bは2価の有機基を表し、nは整数である。〕11. 前記R1およびR2が、水素原子またはメチル基である10のポリアミック酸、12. 前記Bが、脂環式ジアミンまたは脂肪族ジアミンに由来する2価の有機基である10のポリアミック酸、13. 前記Bが、式[9]〜[12]から選ばれる少なくとも1種である10または11のポリアミック酸、(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは1〜10の整数を表す。)14. 前記Bが、式[13]で示される13のポリアミック酸、15. 前記Bが、式[14]で示される13のポリアミック酸、16. 前記Bが、式[15]で示される13のポリアミック酸、17. 前記Bが、式[16]で示される13のポリアミック酸、18. 10〜17のいずれかのポリアミック酸を脱水閉環させて得られるポリイミドを提供する。 本発明によれば、高重合度および高耐熱性を有し、かつ、有機溶媒に対する溶解性も良好であるポリイミドを与え得るケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物(以下、“cage”CPDAという)、およびその効率的な製造法を提供できる。 本発明のポリイミドは、紫外線領域に吸収がないため光透過性が高く、さらに耐熱性が改善されているため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、および光導波路等の光通信用材料としての用途が期待される。実施例4で得られた“cage”CPDAの単結晶X線によるORTEP図である。実施例5で得られた“cage”CPDA−1,3−BAPBポリイミドの1H−NMRスペクトルを示す図である。実施例6で得られた“cage”CPDA−1,3−BAPBポリイミドの1H−NMRスペクトルを示す図である。実施例7で得られた“cage”CPDA−DPPポリイミドの1H−NMRスペクトルを示す図である。実施例8で得られた“cage”CPDA−p−PDAポリイミドの1H−NMRスペクトルを示す図である。実施例9で得られた“cage”CPDA−DDEポリイミドの1H−NMRスペクトルを示す図である。 以下、本発明についてさらに詳しく説明する。 なお、以下において、nはノルマルを、iはイソを、sはセカンダリーを、tはターシャリーを、cはシクロをそれぞれ表す。 上記各式において、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。 炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、c−ブチル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、c−ペンチル、2−メチル−c−ブチル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、c−ヘキシル、1−メチル−c−ペンチル、1−エチル−c−ブチル、1,2−ジメチル−c−ブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル基等が挙げられる。 本発明の“cage”CPDA化合物は、下記のスキームで示される4工程からなる方法にて製造することができる。 具体的には、シス,シス,シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物(以下、cis,cis,cis−CPDA化合物)とアルコール化合物とを酸触媒の存在下で反応させてシス,シス,シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸テトラアルキルエステル化合物(以下、cis,cis,cis−TACP化合物)を製造する第1工程、このcis,cis,cis−TACP化合物を塩基触媒下で異性化し,トランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸テトラアルキルエステル化合物(以下、trans,trans,trans−TACP化合物)を製造する第2工程、このtrans,trans,trans−TACP化合物を酸分解し、トランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸化合物(以下、trans,trans,trans−CPTC化合物)を製造する第3工程、およびこのtrans,trans,trans−CPTC化合物を脱水して“cage”CPDA化合物を得る第4工程からなる方法にて製造することができる。(式中、R1〜R3は、上記と同じ意味を表す。) なお、上記第1工程で原料として用いられるcis,cis,cis−CPDA化合物は、下記スキームで示される方法にて合成できる。 具体的には、シクロペンタジエン化合物(CPD化合物)と無水マレイン酸とのディールズ・アルダー反応により5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物化合物(NDA化合物)を得た後、これを酸化することにより、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸化合物(CPTC化合物)に誘導する。さらに、これを脱水することによって目的のcis,cis,cis−CPDA化合物が得られる。(式中、R1〜R2は、上記と同じ意味を表す。) ここで、CPD化合物の具体例としては、例えば、シクロペンタジエン、1−メチル−2,4−シクロペンタジエン、1−エチル−2,4−シクロペンタジエン、1−n−プロピル−2,4−シクロペンタジエン、1−n−ブチル−2,4−シクロペンタジエン、1−n−オクチル−2,4−シクロペンタジエン、1−n−ノニル−2,4−シクロペンタジエン、1−n−デシル−2,4−シクロペンタジエン、1,1−ジメチル−2,4−シクロペンタジエン、1,1−ジエチル−2,4−シクロペンタジエン、1,1−ジ(n−デシル)−2,4−シクロペンタジエン、1−フルオロ−2,4−シクロペンタジエン、1,1−ジフルオロ−2,4−シクロペンタジエン、1−クロロ−2,4−シクロペンタジエン、1,1−ジクロロ−2,4−シクロペンタジエン、1−ブロモ−2,4−シクロペンタジエン、1,1−ジブロモ−2,4−シクロペンタジエン等が挙げられる。 なお、シクロペンタジエンから製造されるcis,cis,cis−CPDA化合物は市販品として入手可能であり、それをそのまま使用できる。[1]第1工程:エステル化反応 この工程で用いられるアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−オクタノール,n−デカノール等に代表される炭素数1〜10のアルキルアルコール類が挙げられる。これらの中でも経済的なメタノールが好ましい。その使用量は、基質に対して2〜30質量倍が好ましく、特に、3〜10質量倍が適当である。 酸触媒としては、塩酸や硫酸等の無機酸、ヘテロポリ酸や陽イオン交換樹脂等の固体酸等が使用できるが、特に、硫酸が好ましい。その使用量は、基質に対して0.1〜20質量%が好ましく、特に、1〜10質量%が適当である。 反応温度は、通常、アルコール化合物の沸点程度であるが、20〜200℃が好ましく、特に、50〜150℃が好ましい。 反応の進行は、ガスクロマトグラフィ分析により確認することができる。原料の消失を確認した後、酸触媒として硫酸を用いる場合は、濃縮して得られた油状物に酢酸エチルと水を加えて抽出し、有機層を水洗した後、乾燥することにより、目的のcis,cis,cis−TACP化合物が得られる。[2]第2工程:異性化反応 この工程で用いられる塩基触媒としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラート、炭酸塩、水酸化物または酸化物等が挙げられるが、中でも、アルコラートが好ましい。 アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。 特に、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドが好ましく、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドがより好ましい。 塩基触媒の使用量は、基質に対して0.1〜50モル%が好ましく、特に、0.5〜20モル%が適当である。 溶媒としては、アルコール化合物が好適である。アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等の低級アルコール類が好ましく、メタノールがより好ましい。その使用量は、基質に対して3〜30質量倍が好ましく、特に、5〜10質量倍が適当である。 反応温度は、0〜200℃が好ましく、特に、20〜150℃が好ましい。 反応終了後、濃縮して得られた残渣を酢酸エチルと水で抽出し、35%塩酸で酸性にしてから有機層を分離し、これを濃縮することで、粗trans,trans,trans−TACP化合物が得られる。この粗物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、純粋なtrans,trans,trans−TACP化合物が得られる。[3]第3工程:酸分解反応 この工程で用いられる酸としては、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類などが挙げられる。これらの中で、蟻酸による方法が簡便である。その使用量は、基質に対して4モル当量以上が好ましい。 蟻酸を用いる場合は、副生する蟻酸エステルを蟻酸の一部に同伴させて留出させ、反応を促進させることから、10〜100モル当量の過剰量存在させることが好ましい。 さらに、本工程では、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸を併用することが好ましく、p−トルエンスルホン酸を併用することがより好ましい。その添加量は、基質に対して0.1〜10質量%が好ましく、特に、0.5〜5質量%が好ましい。 反応は、副生する酸エステルを留去しつつ、1H−NMRで原料が消失するまで行う。 反応温度は、0〜200℃が好ましい。 反応終了後は、反応液を濃縮し、その残渣にアセトニトリルを加えて加温溶解させてから、やや濃縮した後、氷冷して生じた結晶を濾過し、これを酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥してtrans,trans,trans−CPTC化合物が得られる。 なお、p−トルエンスルホン酸が残留する場合は、酢酸エチルと少量の水を加えて溶解後、有機層を濃縮し、その残渣にアセトニトリルを加えて加温溶解させてから、やや濃縮した後、氷冷して析出した結晶を濾過し、これを酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥すればよい。[4]第4工程:脱水反応 この工程で用いられる脱水剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸無水物、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド(DMC)等が挙げられるが、好ましくは安価な脂肪族カルボン酸無水物、特に、無水酢酸が好適である。その使用量は、基質に対して2〜50当量が好ましく、2〜10当量がより好ましい。 溶媒としては、過剰量加えた脱水剤を溶媒として用いても、反応に直接関与しない有機溶媒を用いてもよい。 このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;1,4−ジオキサン等が挙げられる。溶媒の使用量は、基質に対して1〜20質量倍が好ましく、1〜10質量倍がより好ましい。 反応温度は、通常、脱水剤または溶媒の沸点程度であるが、50〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。 反応時間は、反応温度によって変動するため一概には規定できないが、実用的には、0.1〜10時間、より好ましくは0.2〜5時間である。 反応後、脱水剤を(必要に応じて溶媒と共に)留去すると、高純度の“cage”CPDA化合物が得られる。得られた化合物は、必要に応じて再結晶法により精製してもよい。 また、第3工程で蟻酸を用いる場合は、その反応混合物を次の脱水工程に供し、蟻酸や副生する酢酸(脱水剤として無水酢酸を用いた場合)を、必要に応じて共存させた有機溶媒と共に留去させながら転化率を上げて、目的の“cage”CPDA化合物を得ることもできる(第3工程・第4工程ワンポット法)。 なお、上記各反応は、バッチ式で行っても流通式で行ってもよく、常圧でも加圧下で行ってもよい。 以上説明した本発明の“cage”CPDA化合物は、ジアミンとの重縮合反応により式[7]で示されるポリアミック酸とした後、熱または触媒を用いた脱水閉環反応により対応するポリイミドとすることができる。〔式[7]中、Aは、式[8](式[8]中、R1およびR2は、上記と同じ。a1〜a4は、式[7]における結合箇所を表す。ただし、a1およびa3が同時にカルボキシル基に結合することはなく、a2およびa4が同時にカルボキシル基に結合することはない。)で示される4価の有機基を、Bは2価の有機基を表し、nは整数である。〕 式[8]で示されるシクロペンタン骨格において、a1〜a4はトランス−トランス−トランスの位置関係にある。 上記R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基を表すが、水素原子またはメチル基が好ましい。すなわち、原料となる“cage”CPDA化合物として、ケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物、ケージ−5−メチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物、ケージ−5,5−ジメチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物を用いることが好ましい。 本発明のポリアミック酸は、式[7]で示される繰り返し単位を10モル%以上含むものであるが、本発明の目的である高い透明性および良好な有機溶媒溶解性を達成するためには、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、100モル%が式[7]で示される繰り返し構造であっても構わない。 ジアミンとしては、特に限定されるものではなく、従来ポリイミド合成に用いられている各種ジアミンを用いることができる。その具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,3−ビス(4,4’−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,5−フェノキシペンタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ビアダマンチル、1,6−ジアミノジアダマンタン(1,6−アミノペンタンシクロ[7.3.1.14,12,02,7.06,11]テトラデカン)等の脂環式ジアミン;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンなどが挙げられる。なお、これらのジアミンは、単独で、または2種類以上を混合して使用することもできる。 これらのジアミンのうち、脂環式ジアミンまたは脂肪族ジアミンを使用すると、本発明のポリアミック酸およびこれから得られるポリイミドの透明性がより高くなるので好ましい。 本発明のポリアミック酸において、好適なジアミン残基Bとしては、下記式[9]〜[12]で示されるものが挙げられる。 下記各式において、R4〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基を表すが、特に、水素原子が好ましい。 また、式[10]におけるmは1〜10の整数を表すが、特に1〜5の整数が好ましい。 したがって、より好適なジアミン残基Bとしては、下記式[13]〜[16]で示されるものが挙げられる。 上述したように、本発明において使用されるテトラカルボン酸二無水物の全モル数のうち、少なくとも10mol%は式[1]の“cage”CPDA化合物でなければならないが、“cage”CPDA化合物が10モル%以上となる限りにおいて、通常のポリイミドの合成に使用されるテトラカルボン酸化合物およびその誘導体を同時に用いることもできる。 その具体例としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸などの脂環式テトラカルボン酸およびこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物などが挙げられる。 また、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸およびこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物なども挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸化合物は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。 本発明のポリアミック酸を得る方法は特に限定されるものではなく、テトラカルボン酸二無水物および/またはその誘導体とジアミンとを公知の手法によって反応、重合させればよいが、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを混合し、反応させる方法が簡便である。 この際、使用される有機溶媒の具体例としては、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。なお、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。 溶液重合の反応温度は、−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度を選択することができる。また、ポリアミック酸の分子量は、反応に使用するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比を変えることによって制御することができ、通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。全テトラカルボン酸二無水物化合物のモル数と全ジアミン化合物のモル数との比は、カルボン酸化合物/ジアミン化合物=0.8〜1.2であることが好ましい。 テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中で混合する方法としては、ジアミンを有機溶媒に分散または溶解させた溶液を撹拌し、ここにテトラカルボン酸二無水物をそのままで、または有機溶媒に分散もしくは溶解させて添加する方法、反対にテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散または溶解させ、ここにジアミンを添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを交互に添加する方法などが挙げられ、本発明においてはこれらのいずれの方法であってもよい。 また、テトラカルボン酸二無水物またはジアミンとして複数種を用いる場合は、これら複数種の化合物を予め混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよい。 本発明のポリイミドは、以上のようにして得られたポリアミック酸を脱水閉環させて得られる。ここで、ポリアミック酸からポリイミドへの変化率(脱水閉環率)をイミド化率と定義するが、本発明のポリイミドのイミド化率は100%に限定されるものではなく、必要に応じて1〜100%の任意の値を選択することができる。 本発明において、ポリアミック酸を脱水閉環させる方法は特に限定されないが、通常のポリアミック酸と同様に、加熱による閉環や公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環させる方法を採用することができる。 加熱による方法は、100〜300℃、好ましくは120〜250℃の任意の温度で行うことができる。 化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基と、無水酢酸などとの存在下で行うことができ、この際の温度は、−20〜200℃の任意の温度を選択することができる。この反応ではポリアミック酸の重合溶液をそのまま、または希釈して用いることができる。また、後述する方法により、ポリアミック酸の重合溶液からポリアミック酸を回収し、これを適当な有機溶媒に溶解させた状態で行ってもよい。このときの有機溶媒としては、上述したポリアミック酸の重合溶媒が挙げられる。 このようにして得られたポリイミド(を含む)溶液は、そのまま使用することもでき、また、メタノール、エタノールなどの貧溶媒を加えてポリマーを沈殿させ、これを単離して粉末として、あるいはその粉末を適当な溶媒に再溶解させて使用することができる。 再溶解用溶媒は、得られたポリマーを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m−クレゾール、2−ピロリドン、NMP、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、DMAc、DMF、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。 また、単独ではポリマーを溶解しない溶媒であっても、溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えて使用することができる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどが挙げられる。 本発明のポリアミック酸またはポリイミドの分子量は特に限定されず、使用形態に応じて適切な分子量を選択すればよい。しかし、分子量が小さすぎると、そこから得られる材料の強度が不十分となり、一方、分子量が大きすぎると、ポリマー溶液とした際の作業性が悪くなる場合がある。 したがって、本発明のポリアミック酸またはポリイミドの分子量は、数平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、上記式[7]におけるnは、この分子量を満たす整数であることが好ましい。 以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例における各物性の測定装置は以下のとおりである。[1]1H−NMR 機種:Varian NMRSystem 400NB(400MHz) ECP500(JEOL) 測定溶媒:CDCl3,DMSO−d6[2]MASS 機種:LX−1000(JEOL)[3]融点(m.p.) 機種:微量融点測定装置(MP−S3)(ヤナコ機器開発研究所製)[4]単結晶X線結晶解析 装置:M18XHF/DIP2030(マックサイエンス製) X線:MoKα(45kV,200mA) 測定温度:室温[5]ポリアミック酸またはポリイミドの分子量の測定 装置:(株)センシュウ科学製、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC−7200)、Shodex社製カラム(KD803、805)を用い、DMFを溶離液として測定を行った。数平均分子量および重量平均分子量は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドを標品とした検量線により求めた。また、ポリイミドのイミド化率は、(1)得られたポリイミドをDMSO−d6に溶解させて1H−NMRを測定し、ベンゼン環のプロトンピークの積算値の和とイミド化せずに残存しているアミド酸基のプロトンピークの積算値との比から算出した。[実施例1]シス,シス,シス−テトラメチル1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート(cis,cis,cis−TMCP)の合成 内容積200mLパイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに、cis,cis,cis−CPDA17.9g(85mmol)、95%硫酸1.79g、およびメタノール89.5gを仕込み、80℃の油浴で6時間還流した。反応終了後、濃縮して油状物29gを得た。この油状物に酢酸エチルおよび水を加えて溶解後、有機層を分液してから、水洗、濃縮、減圧乾燥して無色油状物21.7gを得た(収率84.4%)。この油状物は、25℃で固化した。 この結晶は、1H−NMR解析によって、cis,cis,cis−TMCPであることが確認された。1H-NMR(CDCl3,δppm):2.398-2.453(m,1H), 2.779-2.838(m,1H), 3.102-3.127(m,2H), 3.404-3.426(m,2H), 3.678-3.728(m,12H).[実施例2]トランス,トランス,トランス−テトラメチル1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート(trans,trans,trans−TMCP)の合成 内容積100mLパイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに、cis,cis,cis−TMCP9.06g(30mmol)、カリウムt−ブトキシド(純度95%)1.01g(30mol%)、およびメタノール63gを仕込み、80℃の油浴で2時間還流した。反応終了後、濃縮して得られた残渣に酢酸エチルおよび水を加えて分液・抽出し、氷冷下、35%塩酸で酸性にしてから有機層を分離し、濃縮して粗油状物8.48g(収率93.6%)を得た。さらに、この粗油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:酢酸エチル/ヘプタン=1/3〜1/1)で精製して油状物6.14g(収率67.7%)を得た。 この油状物は、1H−NMR解析によって、trans,trans,trans−TMCPであることが確認された。1H-NMR(CDCl3,δppm):1.220-1.296(m,6H), 2.308(t,J=8Hz,2H), 3.208-3.572(m,3H), 3.670-3.747(m,3H), 4.105-4.229(m,4H).[実施例3]トランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸(trans,trans,trans−CPTC)の合成 内容積100mLパイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに、trans,trans,trans−TMCP4.74g(15.6mmol)、p−トルエンスルホン酸・一水和物0.474g(10質量%)、および蟻酸33.2gを仕込み、130℃に昇温して還流し、副生する蟻酸メチルを留去しながら7時間反応させた。その後、濃縮して脂状物3.60gを得た。続いて、この脂状物にアセトニトリルを加えて加温溶解後、やや濃縮してから一夜氷冷して析出した白色結晶を濾過し、酢酸エチル/n−ヘプタン=1/1(v/v)で洗浄後、減圧乾燥して白色結晶2.30g(収率59.9%)を得た。 この結晶は、MASSおよび1H−NMR解析によって、trans,trans,trans−CPTCであることが確認された。MASS(ESI-,m/e(%)):245([M−H] -,100), 227(57), 183(18).1H-NMR (DMSO-d6,δppm) : 2.033−2.078(m, 2H), 2.915−2.975(m, 2H), 3.178−3.195(m, 2H), 12.509(brs, 4H).m.p.: 208〜209 ℃.[実施例4]“cage”CPDAの合成 内容積100mLパイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコに、trans,trans,trans−CPTC7.80g(31.7mmol)および無水酢酸26.0g(255mmol)を仕込み、撹拌を開始しながら浴温110℃に昇温すると、7分で均一溶液になった。さらに10分間撹拌を続けて反応を終了させた後、濃縮してから残渣にDMFを加えて加温し、残渣を溶解させてから全質量が12.5gになるまで濃縮すると、結晶が析出してスラリー化した。さらに、酢酸エチルを加えて全質量を23.4gにしてから加温後、一夜氷冷して析出した白色結晶を濾過し、酢酸エチルで洗浄後、減圧乾燥して白色結晶5.13g(収率77.0%)を得た。 この結晶は、1H−NMRおよびX線構造解析によって、“cage”CPDAであることが確認された。1H-NMR (DMSO-d6,δppm) : 2.565−2.588(m, 2H), 3.618−3.646(m, 2H), 4.239(t, J=1.2Hz, 2H).m.p.:228〜230 ℃.“cage”CPDA単結晶X線測定結果 “cage”CPDAの単結晶は、上記の反応で得られた白色結晶をそのまま使用した。得られたORTEP図を図1に示す。・結晶学的パラメーター分子式 C9H6O6 分子量 210.14色相, 形状 colorless, plate晶系 triclinic空間群 P-1結晶系 plane 格子定数 a=6.621 (1) Å, b=11.007 (2) Å, c=12.191 (2) Å α=79.554 °, β=89.969°, γ=72.474 °V=831.8 (2) Å3Z 値 = 4D calc =1.513 Mg/m3 Mo K<α> radiationλ(MoKa)=0.71072Å, No. of measured reflections = 950 No. of observed reflections = 885 R = 0.06wR = 0.08Temp. = 297 K[実施例5]“cage”CPDA−1,3−BAPBポリアミック酸およびポリイミドの合成 20℃の水浴中に設置した撹拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、1,3−BAPB1.36g(4.85mmol)およびNMP9.60gを仕込み、回転速度185rpmで撹拌して溶解させた。続いて、この溶液を撹拌しつつ、“cage”CPDA1.02g(4.85mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20〜17℃で24時間撹拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液の粘度は、332mPa・sであった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は11,178で、重量平均分子量(Mw)は23,424であり、Mw/Mnは2.10であった。 続いて、この溶液にNMP28gを加えて固形分6質量%に調整し、無水酢酸10.2g(100mmol)を加えて5分間撹拌した後、ピリジン4.75g(60mmol)を加えて100℃で5時間撹拌した。 この溶液を室温に戻してから、撹拌したメタノール200mL中に滴下し、さらに1時間撹拌して析出した灰色粉末をろ取し、メタノール100mLで3回洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥し、“cage”CPDA−1,3−BAPBポリイミド2.0g(収率88.3%)を得た。このポリイミドについて、1H−NMR測定からイミド化率を算出したところ、79.8%であった。m.p.: 265〜270 ℃[実施例6]“cage”CPDA−1,3−BAPBポリアミック酸およびポリイミドの合成 20℃の水浴中に設置した撹拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、1,3−BAPB1.36g(4.85mmol)およびNMP9.60gを仕込み、回転速度185rpmで撹拌して溶解させた。続いて、この溶液を撹拌しつつ、“cage”CPDA1.02g(4.85mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、50℃で24時間撹拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液の粘度は、210mPa・sであった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は8,695で、重量平均分子量(Mw)は16,603であり、Mw/Mnは1.91であった。 続いて、この溶液に、NMP28gを加えて固形分6質量%に調整し、無水酢酸10.2g(100mmol)を加えて5分間撹拌した後、ピリジン4.75g(60mmol)を加えて110℃で2時間撹拌した。 この溶液を室温に戻してから、撹拌したメタノール160mL中に滴下し、さらに1時間撹拌して析出した灰色粉末をろ取し、メタノール120mLで3回洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥し、“cage”CPDA−1,3−BAPBポリイミド2.0g(収率88.3%)を得た。このポリイミドについて、1H−NMR測定からイミド化率を算出したところ、77.9%であった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は8,233で、重量平均分子量(Mw)は15,067であり、Mw/Mnは1.83であった。m.p.: 268〜270 ℃[実施例7]“cage”CPDA−DPPポリアミック酸およびポリイミドの合成 20℃の水浴中に設置した撹拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、4,4’−ジアミノ−1,5−フェノキシペンタン(DPP)1.39g(4.85mmol)およびNMP12.2gを仕込み、回転速度185rpmで撹拌して溶解させた。続いて、この溶液を撹拌しつつ、“cage”CPDA1.02g(4.85mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20〜17℃で24時間撹拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液の粘度は、5,920mPa・sであった。 続いて、この溶液にNMP37.4gを加えて固形分6質量%に調整し、無水酢酸10.2g(100mmol)を加えて5分間撹拌した後、ピリジン4.75g(60mmol)を加えて100℃で2時間撹拌した。 このNMP溶液を室温に戻してから、撹拌したメタノール190mL中に滴下し、さらに1時間撹拌して析出した灰色粉末をろ取し、メタノール60mLで3回洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥し、紫色粒状の“cage”CPDA−DDPポリイミド2.27g(収率98.5%)を得た。このポリイミドについて、1H−NMR測定からイミド化率を算出したところ95.9%であった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は23,563で、重量平均分子量(Mw)は77,031であり、Mw/Mnは3.27であった。m.p.: 275〜280 ℃[実施例8]“cage”CPDA−p−PDAポリアミック酸およびポリイミドの合成 20℃の水浴中に設置した撹拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、p−フェニレンジアミン(p−PDA)0.541g(5.00mmol)およびNMP8.2gを仕込み、回転速度185rpmで撹拌して溶解させた。続いて、この溶液を撹拌しつつ、“cage”CPDA1.05g(5.00mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20〜17℃で24時間撹拌して固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液の粘度は、1,355mPa・sであった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は28,448で、重量平均分子量(Mw)は95,779であり、Mw/Mnは3.37であった。 続いて、この溶液に、無水酢酸10.2g(100mmol)を加えて5分間撹拌した後、ピリジン4.75g(60mmol)を加えて110℃で2時間撹拌すると寒天状物が生成した。 この反応液を室温に戻してから、撹拌したメタノール170mL中に滴下し、寒天状物を砕きながら1時間撹拌した。析出した紫色寒天状物をろ取し、メタノール90mLで3回洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥し、“cage”CPDA−p−PDAポリイミド1.48g(収率100%)を得た。このポリイミドについて、1H−NMR測定からイミド化率を算出したところ、93.8%であった。m.p.: > 300 ℃[実施例9]“cage”CPDA−DDEポリアミック酸およびポリイミドの合成 20℃の水浴中に設置した撹拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)1.00g(5.00mmol)およびNMP8.3gを仕込み、回転速度185rpmで撹拌して溶解させた。続いて、この溶液を撹拌しつつ、“cage”CPDA1.05g(5.00mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20〜17℃で15時間撹拌すると水飴状の高粘度重合体になり撹拌軸に巻き付いたので、さらにNMP36.8gを加えて50℃で2時間撹拌して溶解させ、固形分6質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液の粘度は、119mPa・sであった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は50,129で、重量平均分子量(Mw)は241,300であり、Mw/Mnは4.81であった。 続いて、この溶液に、無水酢酸10.2g(100mmol)を加えて5分間撹拌した後、ピリジン4.75g(60mmol)を加えて100℃で撹拌すると、ゲル状になったので、さらに140℃に昇温して3時間撹拌すると均一溶液になった。 この溶液を室温に戻してから、撹拌したメタノール220mL中に滴下し、さらに1時間撹拌して析出した灰色粉末をろ取し、メタノール90mLで3回洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥し、“cage”CPDA−DDEポリイミド1.93g(収率100%)を得た。このポリイミドについて、1H−NMR測定からイミド化率を算出したところ、95.8%であった。m.p.: > 300 ℃[比較例1]CPDA−1,3−BAPBポリアミック酸およびポリイミドの合成 25℃の水浴中に設置した撹拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、1,3−BAPB2.79g(10mmol)およびNMP19.6gを仕込み、1,3−BAPBをNMPに溶解させた。続いて、この溶液を撹拌しつつ、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(CPDA)2.10g(10mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、25℃で24時間撹拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液にDMAcを加えて固形分8質量%に調整し、無水酢酸10.2g(100mmol)を加えて5分間撹拌した後、ピリジン7.9g(100mmol)を加えて100℃で2時間撹拌した。 この溶液を室温に戻してから、3.5容量倍の水中に滴下し、さらに30分間撹拌して析出した白色粉末をろ取し、水で洗浄後、80℃で2時間減圧乾燥し、CPDA/1,3−BAPBポリイミド3.8g(収率83.8%)を得た。このポリイミドについて、1H−NMR測定からイミド化率を算出したところ、90.1%であった。また、GPC測定の結果、数平均分子量(Mn)は2,421で、重量平均分子量(Mw)は3,030であり、Mw/Mnは1.25であった。m.p.: 193〜195 ℃ 以上の実施例および比較例から、本発明ポリイミドはCPDAポリイミドに比較して高い分子量を有するとともに、融点がCPDAポリイミドの200℃未満に対し、本発明ポリイミドは260℃以上であり、高耐熱性であることが明らかとなった。[ポリイミドの溶解性] 上記実施例5,6および比較例1で得られたポリイミドについて、下記表1に示される各種有機溶媒に対する溶解性を、下記手法により評価した。結果を併せて表1に示す。〈溶解性評価法〉 各ポリイミド2mgを、各有機溶媒0.2mLに添加して撹拌し、25℃(室温)で溶解したものを「◎」、80℃(加温)で溶解したものを「○」、80℃に加温して一部溶解したものを「△」、80℃で不溶を「×」として評価した。DMSO:ジメチルスルホオキシド、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、THF:テトラヒドロフラン 表1に示されるように、実施例5および実施例6で得られた“cage”CPDA−1,3−BAPBポリイミドは、比較例1のCPDA−1,3−BAPBポリイミドと比較すると、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)が高いにもかかわらず、有機溶媒に対する溶解性が高いことがわかる。 式[1]で表されることを特徴とするケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物。(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。) 前記R1およびR2が、水素原子である請求項1記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物。 式[4](式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)で表されるシス,シス,シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物と、式[5] R3OH [5](式中、R3は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)で表されるアルコール化合物とを、酸触媒の存在下で反応させて式[6](式中、R1、R2およびR3は、前記と同じ意味を表す。)で表されるシス,シス,シス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸テトラアルキルエステル化合物を得る第1工程と、この第1工程で得られた前記式[6]で示される化合物を塩基触媒である金属アルコラート存在下で異性化して式[3](式中、R1、R2およびR3は、前記と同じ意味を表す。)で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸テトラアルキルエステル化合物を得る第2工程と、この第2工程で得られた前記式[3]で示される化合物を有機酸で分解して式[2](式中、R1およびR2は、前記と同じ意味を表す。)で表されるトランス,トランス,トランス−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸化合物を得る第3工程と、この第3工程で得られた前記式[2]で示される化合物を脱水する第4工程とを備えることを特徴とする式[1](式中、R1およびR2は、前記と同じ意味を表す。)で表されるケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物化合物の製造法。 前記第1工程における酸触媒が、硫酸である請求項3記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法。 前記塩基触媒が、カリウムt−ブトキシドである請求項3記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法。 前記第2工程における異性化反応温度が、0〜200℃である請求項3記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法。 前記第3工程における有機酸が、蟻酸である請求項3記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法。 前記第3工程における有機酸分解温度が、0〜200℃である請求項3記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法。 前記第4工程における脱水が、有機酸無水物を用いて行われる請求項3記載のケージ−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸−1,3:2,4−二無水物の製造法。 下記一般式[7]で表される繰り返し単位を少なくとも10モル%含むことを特徴とするポリアミック酸。〔式[7]中、Aは、式[8](式[8]中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、a1〜a4は、式[7]におけるカルボニル炭素原子との結合箇所を表す。ただし、a1およびa3が同時にカルボキシル基に結合することはなく、a2およびa4が同時にカルボキシル基に結合することはない。)で示される4価の有機基を、Bは2価の有機基を表し、nは整数である。〕 前記R1およびR2が、水素原子またはメチル基である請求項10記載のポリアミック酸。 前記Bが、脂環式ジアミンまたは脂肪族ジアミンに由来する2価の有機基である請求項10記載のポリアミック酸。 前記Bが、式[9]〜[12]から選ばれる少なくとも1種である請求項10または11記載のポリアミック酸。(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基を表し、mは1〜10の整数を表す。) 前記Bが、式[13]で示される請求項13記載のポリアミック酸。 前記Bが、式[14]で示される請求項13記載のポリアミック酸。 前記Bが、式[15]で示される請求項13記載のポリアミック酸。 前記Bが、式[16]で示される請求項13記載のポリアミック酸。 請求項10〜17のいずれか1項記載のポリアミック酸を脱水閉環させて得られるポリイミド。