| タイトル: | 特許公報(B2)_免疫分析方法及びそのための試薬 |
| 出願番号: | 2011507211 |
| 年次: | 2014 |
| IPC分類: | G01N 33/531,G01N 33/543 |
加納 まゆみ JP 5426661 特許公報(B2) 20131206 2011507211 20100330 免疫分析方法及びそのための試薬 デンカ生研株式会社 591125371 特許業務法人谷川国際特許事務所 110001656 谷川 英次郎 100088546 加納 まゆみ JP 2009085100 20090331 20140226 G01N 33/531 20060101AFI20140206BHJP G01N 33/543 20060101ALI20140206BHJP JPG01N33/531 BG01N33/543 581J G01N 33/48−33/98 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2003−149244(JP,A) 特開平06−300761(JP,A) 特開平04−194664(JP,A) 特開2006−126166(JP,A) 特開2005−241415(JP,A) 9 JP2010055693 20100330 WO2010113943 20101007 11 20130129 廣田 健介 本発明は、低濃度試料の測定に有用な新規免疫分析方法及びそのための試薬に関する。 免疫学的分析方法は、血清、血漿、尿等の臨床検査で、自動分析装置を用いることにより簡便・迅速に測定が行えるため広く普及している。 免疫学的分析法の用途を拡大するためには、既存の試薬よりも低値領域の検出感度と信頼性が求められることがある。免疫学的分析試薬に界面活性剤を添加する手段は知られているが、マトリックスの影響回避等の反応性を制御する手段や吸光度変化量を増幅する手段として用いられることが多かった(特許文献1、2参照)。 免疫学的分析試薬の測定可能領域を拡大させる方法としては、測定領域の検出上限を上げる方法と、検出下限を下げる方法がある。 免疫学的分析試薬の測定可能領域の検出下限を下げて高感度化にするには、試薬に含まれる感作粒子や抗体又は抗原の量を増して低値領域の感度を上げる方法がある。しかし、低値領域の感度を上げても再現性が悪いと低値の精度が得られない。 低値領域の感度を上げるために反応性の高い成分を用いると、試薬の安定性が低下し、自己凝集によって試薬保存中に凝集反応が進行したり、非特異的凝集が起こってブランク試料でも凝集反応が進行する場合があった。 低値領域の感度を上げると、たとえば吸光度変化を測定する自動分析装置では、吸光度変化量に上限が設定されているために、高値領域の感度に制限が出てきて、広い測定領域が得られない場合がある。 測定領域の検出下限を下げようとした場合、上記のような問題が生じるため、測定可能領域を拡大させることは困難であった。特開2005-241415号公報特開2006-126166号公報 従って、本発明の目的は、免疫分析法における測定領域を拡大させることができる新規な方法を提供することにある。 本願発明者は、鋭意研究の結果、免疫分析の際に反応系内にポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを共存させることにより、ブランクの測定値のばらつきが抑えられてブランク測定値も低下し、被検物質の低濃度域における測定精度を高めることができることを見出し、本願発明を完成した。 すなわち、本発明は、免疫分析方法において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを反応系内に共存させることを含む、免疫分析におけるブランクの測定値を安定化する方法を提供する。 本発明により、免疫分析において被検物質の低濃度域における測定精度を高めることができる新規な手段が提供された。本発明の方法によれば、所定の物質を反応系に加えるのみで、特にブランクの測定値のばらつき(標準偏差)が抑えられ、測定値が安定する。これにより、従来の免疫分析方法では測定しにくい低濃度領域においても測定値に有意差が得られるようになり、低濃度領域の測定精度が向上する。本発明は検体中に微量に存在する物質の微量定量に有利である。本発明の実施例及び比較例の免疫凝集法における、測定試薬添加後の時間(秒)と吸光度変化の関係を示す図である。 本発明は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの存在下で免疫分析を行なうことを特徴とする。なお、本明細書中の%は特に断りがない限り質量基準(w/w%)である。また、「測定」といった場合には、検出、定量及び半定量が包含される。 ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、界面活性剤として通常使用されているものであれば特に限定されない。アルキル部分は、直鎖でも分岐でもよく、1以上の不飽和結合を含んでいてもよい。アルコキシ基のように、1つ以上の炭素が酸素に置き換わった不活性なアルキル基であってもよい。アルキル基中の一部がアリール基(フェニル基等)又はハロゲン原子等で置換されていてもよい。アルキル部分の炭素数は特に限定されないが、通常1〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは10〜15である。特に好ましいアルキル部分は、飽和又は数個以下の不飽和結合を含む直鎖状の炭素鎖であり、具体例としてはラウリル基等が挙げられる。 硫酸塩部分は、1価以上の塩であればよく、具体例としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、トリエタノールアミン塩やナトリウム塩が好適に用いられる。 ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の分子中のオキシエチレン単位の数は、特に限定されないが、通常1〜10程度である。 ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、単一組成であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、界面活性剤として販売されている市販品を好ましく用いることができる。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、界面活性剤として通常使用されているものであれば特に限定されない。脂肪酸のアルキル部分は直鎖でも分岐でもよく、1以上の不飽和結合を含んでいてもよい。アルコキシ基のように、1つ以上の炭素が酸素に置き換わった不活性なアルキル基であってもよい。アルキル基中の一部がハロゲン原子等で置換されていてもよい。アルキル部分の炭素数は特に限定されないが、通常1〜30、好ましくは5〜25、より好ましくは10〜20である。特に好ましいアルキル部分は、飽和又は数個以下の不飽和結合を含む直鎖又は分岐の炭素鎖であり、脂肪酸部分として好ましい具体例を挙げると、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等が挙げられる。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの分子中のオキシエチレン単位の数は、特に限定されないが、通常1〜100程度、好ましくは5〜60程度である。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの組成は、単一組成であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。組成の具体例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、界面活性剤として販売されている市販品を好ましく用いることができる。 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、HLB値が10〜20、数平均分子量が1000〜50000のものが添加効果が顕著であり、好適に用いられる。 本発明の分析方法では、抗原抗体反応の開始から抗原抗体反応量の検出・定量が終了するまでのいずれかの段階でポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを反応系内に共存させればよいが、抗原抗体反応の開始から検出・定量までの間にわたって共存させることが好ましい。従って、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、抗原抗体反応の開始前又は開始と同時に反応系内に好ましく添加することができる。例えば、検体を希釈する際に添加してもよいし、抗体又は抗原と検体とを混合する際に添加してもよい。また、免疫分析に用いる各種試薬に予めポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有させておいてもよい。例えば、検体を希釈する緩衝液や、抗体又は抗原を含む試薬等にこれらの物質を予め含有させておくことができる。免疫凝集の場合には、例えば、抗体又は抗原を固定化(感作)した不溶性担体粒子(感作粒子)を含む試薬にポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有させておくことができる。なお、B/F分離操作が行なわれる場合は、抗原抗体反応時に共存していたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが失われるため、洗浄液としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する緩衝液を用いるなど、適宜ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを反応系内に追加することが好ましい。 反応系内のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の濃度は、好ましくは0.0005〜0.25%であり、さらに好ましくは0.0125〜0.25%である。また、反応系内のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度は、好ましくは0.0005〜0.25%であり、さらに好ましくは0.0005〜0.005%である。免疫分析試薬に予め含有させる場合には、反応系内での濃度が上記した濃度になるように免疫分析試薬に含有させることができる。例えば、感作粒子を含む試薬中に含有させる場合、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の試薬中濃度は、好ましくは0.001〜0.5%、さらに好ましくは0.025〜0.5%とすることができ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの試薬中濃度は、好ましくは0.001〜0.5%、さらに好ましくは0.001〜0.01%とすることができる。 免疫分析の手法自体は周知である。本発明の免疫分析方法の態様としては、公知のいかなる免疫分析方法であってもよいが、中でも免疫凝集法が好ましく、特に不溶性担体粒子としてラテックス粒子を用いるラテックス凝集法が好ましい。免疫凝集法において感作粒子の凝集を検出する方法は周知であり、本発明においても、感作粒子の凝集による吸光度又は光散乱等を検出する方法等の周知の方法が使用可能である。例えば、免疫比濁法(TIA法、ラテックス凝集法)、比色法、RPLA法、CL法及びイムノクロマト法等が挙げられ、感度が高く定量精度が良い比濁法及び比色法が好適に用いられる。 免疫凝集法により免疫分析を行なう場合、用いる不溶性担体粒子は特に限定されず、免疫分析試薬に従来用いられている周知のものであってよい。例えば、ポリエチレンやポリスチレン等のラテックス粒子、アルミナ粒子、シリカ粒子、金コロイド、磁性粒子等の粒子が挙げられる。これらの不溶性担体の中ではラテックス粒子、特にポリスチレンラテックス粒子が好適に用いられる。ラテックス粒子のサイズは特に限定されないが、粒径は30〜600nmであることが好ましい。 本発明における免疫分析による測定対象物の具体例としては、C−反応性タンパク質(CRP)、フェリチン(FER)、ミオグロビン(Mb)、前立腺特異抗原(PSA)、β−2マイクログロブリン(BMG)、メガリン、ポドカリキシン等のマーカータンパク質や、大腸菌等の細菌、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、RSウイルス等のウイルスや、これらに対する抗体が挙げられる。好ましい測定対象物は各種疾病等のマーカーとなるマーカータンパク質である。 免疫分析に用いられる検体は、測定対象物を含み得るものであれば特に限定されないが、血液、血清、血漿、尿、便、唾液、組織液、髄液、ぬぐい液等の体液等又はその希釈物が好ましく、さらには血液、血清、血漿、尿、便、髄液又はこれらの希釈物が好ましい。 免疫分析に用いられるブランク試料は、測定対象物を含み得ないものであれば特に限定されないが、精製水、生理食塩液、緩衝液、陰性検体又はその希釈物が好ましい。 免疫凝集法自体は周知であり、ここで説明する必要はないが、被検試料中の抗原を測定する場合を例として簡単に説明すると、上記した不溶性担体粒子に、測定すべき抗原と抗原抗体反応する抗体若しくはその抗原結合性断片を固定化する。固定化の方法も周知であり、物理吸着又は共有結合等の周知の方法により行われる。得られた感作粒子の懸濁液と被検試料とを混合すると、被検試料中に含まれる測定すべき抗原によって感作粒子が凝集され、感作粒子懸濁液の吸光度が変化する。この吸光度の変化量(エンドポイント法)又は変化率(レート法)を測定する。測定すべき抗原を種々の既知濃度で含む複数の標準試料を準備し、それらについて上記方法により吸光度の変化量又は変化率を測定する。標準試料中の測定すべき抗原の濃度を横軸、測定された吸光度の変化量又は変化率を縦軸にプロットして検量線を描く。未知の被検試料についても同じ方法により吸光度の変化量又は変化率を測定し、測定結果を上記検量線に当てはめることにより、被検試料中の抗原を定量することができる。なお、このような免疫凝集法を行う自動装置が種々市販されており、市販の免疫凝集法用自動装置を用いて、容易、簡便に行うことができる。 下記実施例に記載されるように、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの共存下で免疫分析を行なうと、ブランク及び低濃度試料(下記実施例では0.005mg/dLのCRP)の測定値の変動が抑えられて安定化する。すなわち、測定値の標準偏差が小さくなる。その結果、ブランクと低濃度試料との間の測定値の有意差が増大するので、例えばCRPの場合は0〜0.005mg/dL程度の低濃度領域での分析精度が向上する。従って、本発明の分析方法は、被検物質の微量測定に非常に有利である。 上記した、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを予め含有させた免疫分析のための各種試薬は、上記本発明の方法に用いられる免疫分析試薬として提供することができる。本発明の免疫分析試薬には、免疫分析に用いられる各種試薬類が包含される。例えば、検体希釈液、抗体/抗原希釈液、固相化抗体/抗原、感作粒子懸濁液、洗浄液、酵素液、基質液、検量線作成用の被検物質標準液等が挙げられる。 本発明の免疫分析試薬としては、ラテックス凝集試薬等の免疫凝集試薬が好ましく、具体的には感作粒子を含む試薬が好ましい。免疫分析試薬中の感作粒子の濃度は、特に限定されないが、0.01〜0.5%であることが好ましい。感作粒子浮遊液中の抗体量及び抗原量は常法どおりであってよく、特に限定されないが、例えば抗体感作ラテックスの場合抗体量はラテックス浮遊液中に0.01〜2.0mg/mLとすることが好ましい。 本発明の免疫分析試薬中のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の濃度は、好ましくは0.0005〜0.25%、さらに好ましくは0.0125〜0.25%である。免疫分析試薬中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度は、好ましくは0.0005〜0.25%、さらに好ましくは0.0005〜0.005%である。 また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、免疫分析のための測定値安定化剤として提供することもできる。ここでいう測定値の安定化とは、上記したように、測定値の標準偏差を小さくするという意味である。該安定化剤は、免疫分析に用いられる各種試薬に添加して好ましく用いられる。 上記した本発明の免疫分析試薬は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含まない通常の試薬類等と共に免疫分析キットとして提供することができる。あるいは、本発明の免疫分析キットは、通常の免疫分析試薬類と上記本発明の測定値安定化剤とを組み合わせたキットであり得る。 以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されない。(使用試薬) C−反応性タンパク質(CRP)、フェリチン(FER)及びミオグロビン(Mb)に対する抗体を用いて、以下の通りに免疫凝集法による測定試薬を調製した。 抗CRP抗体、抗FER抗体及び抗Mb抗体のいずれかを平均粒径190nmのポリスチレンラテックス浮遊液1mLに対し0.08mg担持させてなる感作粒子を、緩衝液(トリス、pH8.0)に0.1%となるように懸濁し、ラテックス浮遊液を調製した。 上記ラテックス浮遊液に下記の通り界面活性剤を添加し、各タンパク質(CRP、FER、Mb)の測定試薬を調製した。比較例として、上記界面活性剤成分を添加しないラテックス浮遊液を用いた。測定試薬(実施例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.1% 界面活性剤2 0.005%測定試薬(比較例)ラテックス浮遊液のみ界面活性剤1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン(花王製「エマール20T」(商品名)、ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸トリエタノールアミンを主体)界面活性剤2:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(和光純薬製「Tween80」(商品名)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを主体、HLB=15、数平均分子量5000)(自動分析装置による測定) 自動分析装置は日立7180型自動分析装置によりエンドポイント法で自動測定を行った。 前述の測定試薬を用いて生理食塩水(ブランク)サンプル液の測定を計10回行った。サンプル液2.4μLに緩衝液(トリス、pH8.5)120μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、上記で調製した測定試薬を120μL添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定し、標準偏差を算出した。(結果) 測定結果を下記表1に示す。また、測定試薬添加直後の吸光度を0.000Absとした場合の経過時間における吸光度の変化を図1に示す。(考察) ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを添加することでブランクの標準偏差が小さくなり、ブランクの精度が向上することが示された。また、上記成分の添加効果は、抗体の種類に関わらず得られることが示された。 ブランクの精度が向上した要因は図1に示しているように、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを添加することで測定試薬添加後の経過時間による吸光度のバラツキが抑制された。このバラツキの抑制効果は2回測定しても変わらないことから、再現性があることが示された。(使用試薬) 抗CRP抗体を平均粒径150nmのポリスチレンラテックス浮遊液1mLに対し0.06mg担持させてなる感作粒子を、緩衝液(トリス、pH8.0)に0.12%となるように懸濁し、ラテックス浮遊液を調製した。 上記ラテックス浮遊液に以下の通り界面活性剤を添加して3種類のCRP測定試薬を調製した。試薬No.2-1(実施例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.1% 界面活性剤2 0.005%試薬No.2-2(比較例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.1%試薬No.2-3(比較例)ラテックス浮遊液のみ界面活性剤1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン(前掲)界面活性剤2:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(前掲)(自動分析装置による測定) 自動分析装置は日立7180型自動分析装置によりエンドポイント法で自動測定を行った。 上記のCRP測定試薬3試薬を用いてサンプル液の測定を各10回ずつ行なった。サンプル液として、生理食塩水(ブランク)及びCRPを濃度0.005mg/dLで含む生理食塩水(CRP)を用いた。サンプル液2.4μLに緩衝液(トリス、pH8.5)120μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、上記CRP測定試薬を120μL添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定した。(結果) 各サンプルの10回測定のデータより平均値と標準偏差を算出し、下記式により数値(以下、単に「差」という)を求めて測定精度を評価した。下記式により求められる差は、ブランクとCRP試料との間の測定値の有意差の指標となるものであり、差の値が大きいほど測定値間の有意差が大きいことを示す。[CRPの平均値−2×(CRPのSD)]−[ブランクの平均値+2×(ブランクのSD)](考察) 界面活性剤を添加することでブランク及びCRP試料の測定データの標準偏差SDが小さくなり、上記式で算出したCRP濃度0mg/dL(ブランク)と0.005mg/dL(CRP試料)の測定値の差が大きくなった。標準偏差SD値は、ブランク側で特に小さくなった。このように、検体中のCRP濃度0mg/dLとCRP濃度0.005mg/dLの測定値の差が拡大したので、低濃度側の測定可能領域が広がることが示された。(使用試薬) 抗CRP抗体を平均粒径190nmのポリスチレンラテックス浮遊液1mLに対し0.04mg担持させてなる感作粒子を、緩衝液(トリス、pH8.0)に0.1%となるように懸濁し、ラテックス浮遊液を調製した。 上記ラテックス浮遊液に以下の通り界面活性剤を添加して、界面活性剤1の濃度を変えた5種類のCRP測定試薬を調製した。試薬No.3-1(比較例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0% 界面活性剤2 0.005%試薬No.3-2(実施例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.01% 界面活性剤2 0.005%試薬No.3-3(実施例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.05% 界面活性剤2 0.005%試薬No.3-4(実施例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.10% 界面活性剤2 0.005%試薬No.3-5(実施例)ラテックス浮遊液+ 界面活性剤1 0.20% 界面活性剤2 0.005%界面活性剤1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン(前掲)界面活性剤2:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(前掲)(自動分析装置による測定) 自動分析装置は日立7180型自動分析装置によりエンドポイント法で自動測定を行った。 上記のCRP測定試薬5種類を用いて生理食塩水(ブランク)サンプル液の測定を各試薬とも5回行ない平均値をとった。サンプル液2.4μLに緩衝液(トリス、pH8.5)120μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、上記CRP測定試薬を120μL添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定し、吸光度変化量の平均値の比較を行った。(考察) ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンを添加することで生理食塩水(ブランク)測定時の吸光度変化量が小さくなり、非特異的凝集が著しく抑制されていたことが確認できた。これにより、測定対象濃度が低い領域での試薬の安定性が向上することが示された。 免疫分析方法において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを反応系内に共存させることを含む、免疫分析におけるブランクの測定値を安定化する方法。 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の濃度が0.0005〜0.25%である請求項1記載の方法。 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度が0.0005〜0.005%である請求項1又は2記載の方法。 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLB値が10〜20である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの数平均分子量が1000〜50000である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩がポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸トリエタノールアミンである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。 免疫凝集法である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。 ラテックス凝集法である請求項8記載の方法。