タイトル: | 公表特許公報(A)_凍結乾燥ナノエマルション |
出願番号: | 2011500060 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | A61K 9/107,A61K 9/19,A61K 47/14,B01J 13/00 |
ハネフェルト アンドレア シュミット マルティナ ヴィクトリア ガイスラー ジモン ラングート ペーター JP 2011519349 公表特許公報(A) 20110707 2011500060 20090226 凍結乾燥ナノエマルション メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 591032596 Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung 辻居 幸一 100092093 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 山崎 一夫 100119013 滝澤 敏雄 100111501 ハネフェルト アンドレア シュミット マルティナ ヴィクトリア ガイスラー ジモン ラングート ペーター DE 102008015366.4 20080320 A61K 9/107 20060101AFI20110610BHJP A61K 9/19 20060101ALI20110610BHJP A61K 47/14 20060101ALI20110610BHJP B01J 13/00 20060101ALI20110610BHJP JPA61K9/107A61K9/19A61K47/14B01J13/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW EP2009001355 20090226 WO2009115175 20090924 18 20100917 4C076 4G065 4C076AA17 4C076AA30 4C076DD46F 4C076GG08 4G065AA01 4G065AB05Y 4G065AB06Y 4G065AB12Y 4G065AB36X 4G065BA07 4G065BB01 4G065CA03 4G065CA21 4G065DA02 4G065EA01 4G065EA02 4G065FA02 本発明は、親油性相と、1種以上のスクロース脂肪酸エステルとを含む凍結乾燥ナノエマルション、該凍結乾燥ナノエマルションから再分散によって調製できるナノエマルション、及び前記凍結乾燥ナノエマルションの調製方法に関する。 エマルションは、相互に混和しない2種の液体から成り、一方の内部分散相が、他方の外部連続相内に細かく分布している分散系である。 ナノエマルションは、内部分散相が、水から成る外部相内に均質に分散している約20〜約500nmの範囲のサイズを有する非常に微細な親油性液滴から成るエマルション系である(O/Wエマルション)。好ましくはナノエマルションを非経口的に使用することができ、特に、栄養を経口摂取できない患者の静脈内栄養のためにナノエマルションが使用され、市販ブランド製品には、例えば、Intralipid(登録商標)、Lipodfundin(登録商標)、Lipovenos(登録商標)がある。全てのナノエマルションは乳濁/混濁した外観を有する。 ナノエマルションを、内部分散相が10nm〜50nmの粒径を有するマイクロエマルションと区別すべきである。マイクロエマルションは、ナノエマルションに比べて有意に高い乳化剤濃度を含み、通常は共乳化剤(co-emulsifier)をも含む。マイクロエマルションは自己乳化性であり、清澄又は乳白光の外観を有するが、高い乳化剤濃度の結果として、あまり耐容性がないので、非常に限られた範囲でしか非経口投与することができない。 静脈内投与することができるナノエマルションは、その成分の適合性及び脂肪粒子の粒径について高い要求を突きつける。非経口栄養摂取で使われる脂肪成分は、好ましくは高含量の不飽和脂肪酸を有する油、例えば大豆油、ベニバナ油及び綿実油などであり、使われる乳化剤は、レシチン、例えば卵、大豆及び脳のレシチン等であり、かつさらに通常はトコフェロールアセテート等の抗酸化剤、及びさらに必要に応じて補助物質を含む。 エマルションは通常、温めた油と水相のミキサーによるプレ乳化後に、高圧ホモジナイザーを用いたマイクロ乳化及び引き続き過熱蒸気を用いた滅菌によって調製される。 標準的粉砕技術(高圧均質化)を利用して迅速にナノエマルション調製することができる。しかし、ナノエマルションは熱力学的に不安定なので、貯蔵寿命が不十分なことが多い。特に高温で、また温度変化がある場合、長期間にわたって貯蔵すると、脂肪粒子の癒合が起こり、結果としてナノエマルション全体が使用できなくなる。 「Handbook on Injectable Drugs」(American Society of Hospital Pharma-cists, page 237-244 (1986), Lawrence A. Trissel)は、いくつかの市販製剤について述べている。それらは、大豆油又はベニバナ油、卵レシチン、グリセリン及び水を含み、≦0.5μmの平均粒径を有する。 ナノエマルションは、非経口投与すべき親油性薬物の担体系としても繰り返し使用されている。ここでの目的は、エマルション系からの制御放出によって、薬物の治療効率と安全性を高めることである(薬物送達システム)。 ナノエマルション中に存在する親油性活性化合物は、その溶解特性に応じて、脂肪粒子内に部分的又は全体的に包埋されている。従って極めて重要なことに、活性化合物の薬物動態学的挙動は、活性化合物が最初に放出される担体製剤の薬物動態学的挙動によって決まる。遅延放出は、活性化合物の局所的に高い濃度を回避し、分解を減少させ、ひいては作用の持続時間を増やす。活性化合物を含む市販のナノエマルションの例は、Diazepam(登録商標)-Lipuroである。 全ての市販のナノエマルションは、乳化剤としてレシチンを含む。レシチンは加水分解に敏感であり、加水分解生成物リゾレシチンは溶血を引き起こしうるので、NaOH又はオレイン酸Naを利用してエマルションのpHを調整しなければならず、かつ/又は加水分解を抑制する補助物質を添加しなければならない。一般的に、適用の観点から正当化されず安定化に役立つだけの補助物質は、それらが原因で生じる損害のリスクの可能性を基本的に排除するため、できる限り回避すべきである。 JP 11171796 Aは、活性化合物テプレノンを含み、乳化剤としてスクロース脂肪酸エステルを含む経口投与用エマルションの製剤を開示している。開示された開発の目的は、酸化に敏感な活性化合物を分解から保護すること及び経口投与用の口に合う製剤を提供することである。エマルションの凍結乾燥については記載していない。 米国特許第5,705,142号は、非経口投与にも適しているといわれている凍結乾燥ナノエマルションを開示している。脂肪相及び乳化剤に加えて、凍結乾燥ナノエマルションは、少なくとも40質量%の(アミン)凍結保護剤を含む。乳化剤としてレシチンに加えて、実施例の全てのエマルションが共乳化剤及び抗酸化剤としてα-トコフェロールを含む。さらに、通常は、再構成エマルションの液滴サイズを制御し、それをナノスケール範囲で維持する目的でポリビニルピロリドン(PVP)が懸濁媒体として存在する。 WO 94/14418 A1は、内部親油性相が親水性乳化剤とアセチル化モノグリセリドから成り、凍結保護剤/構造形成剤としてさらに糖又は糖アルコールを含む凍結乾燥エマルション組成物を開示している。アセチル化モノグリセリドは両親媒性作用を有するので、毒物学的観点から容認できない。さらに、該エマルション組成物は高比率の糖/糖アルコールを含み(実施例の糖:乳化剤+アセチル化モノグリセリドの質量比は2:1である)、再構成すると高浸透圧性、ひいては不十分な耐性のエマルション或いは低比率の親油性相のみを有するエマルションのいずれかが容易に調製されることを意味している。 JP 52-96724は、油/脂肪及び乳化剤に加えて、膜形成補助物質、例えば、ゼラチン、PVP、メチルセルロース、PVA、ポリエチレングリコール又はスクロース脂肪酸エステル等を含む凍結乾燥O/Wエマルションを開示している。最初に調製された(凍結乾燥前)開始エマルションも、凍結乾燥エマルションから再分散されたエマルションも両方とも2桁のμm範囲の液滴サイズを有する。さらに、凍結乾燥と再分散後に、開始エマルションと比較した粒径の有意な増加が起こる。該エマルションは非経口投与に適さない。 JP 2004/161650 Aは、乳化剤としてポリグリセロール脂肪酸エステル又はスクロース脂肪酸エステルを含み、外部相がポリビニルアルコール又はキサンタンゴム及び糖を含む凍結乾燥W/O/Wエマルションを開示している。ポリビニルアルコール又はキサンタンゴムがないと、該凍結乾燥W/O/Wエマルションは再分散してエマルションを与えることができず、これらの物質を含むエマルションの再分散後には平均粒径が約500〜>3000nmのW/O/Wエマルションが生じる。この再分散されたW/O/Wエマルションは経口投与には適しているが、非経口投与には適さない。 最近インターネットで公表された論文(Dong Zhao et al.: 静脈内注射用サブミクロンエマルション:特徴づけ、in vitro及びin vivo抗腫瘍効果(A submicron emulsion for intravenous injection: Characerization, in vitro and in vivo anti-tumor effect), Int J Pharm (2007), doi:10.1016/j.ijpharm.2008.01.055)は、乳化剤として油とレシチンに加えて、高比率のスクロースを含む(油相:糖の質量比=1:5)凍結乾燥ナノエマルションを開示している。加水分解に敏感なレシチンを使うため、エマルションはさらにビタミンEを含む。高比率のスクロースは、不利なことに再分散後に高浸透圧性溶液をもたらす。さらに、この糖含量は糖尿病患者に投与すると危険でないとはいえず、また高浸透圧性製剤をもたらしうる。 本発明の目的は、従来技術の欠点を是正すること並びに凍結乾燥が可能であり、水による再分散によって再分散させて非経口投与することができ、かつ開始エマルションに相当する液滴サイズ分布を有するナノエマルションを与えられるナノエマルションを提供することである。凍結乾燥ナノエマルションは、可能な最も簡単な構造を有するべきであり、さらに凍結保護剤及び抗酸化剤などの物質を添加せずに調製可能でもあるべきであり、かつ長期間にわたって安定した様式で貯蔵可能でなければならない(貯蔵寿命3年)。 驚くべきことに、脂質に加えて乳化剤としてスクロース脂肪酸エステルを含めば、これらの要件を満たす凍結乾燥ナノエマルションを提供できることが分かった。従って、本発明は、少なくとも1種の脂質と、少なくとも1種のスクロース脂肪酸エステルとを含むことを特徴とする凍結乾燥ナノエマルションに関する。スクロース脂肪酸エステルを含むエマルションの凍結乾燥前後の平均粒径と多分散性指数(PDI)を示すグラフである。標準エマルションと比較した本発明の代表的ナノエマルションの凍結乾燥前の粒径を示すグラフである。 スクロース脂肪酸エステルの安定性のため、pH調整(アルカリ化)も抗酸化剤の添加も必要ないことが利点である。驚くべきことに、凍結保護剤を添加しない場合でさえ凍結乾燥ナノエマルションを調製することができ、それにもかかわらず、水性液体を添加して再分散させて、実質的に開始エマルションの粒度分布に相当する粒度分布のナノエマルションを与えることができる。凍結保護剤を省略できる結果として、微生物汚染のリスクが軽減される(該添加剤は微生物の成長を促進する)。従って、好ましい実施形態によれば、本発明のナノエマルションは、例えば、糖、糖アルコール又はアミノ酸などの凍結保護剤を含まない。 さらに、本凍結乾燥ナノエマルションを再分散させて(少量の水の添加によって)、非経口投与の全体的な可能性に問題を生じさせる浸透圧の上昇を伴わずに、開始エマルションと比較して内部(脂質)相の比率が高いナノエマルションを与えることもできるのも有利である(高浸透圧性ナノエマルションは非経口的に十分耐えられない)。 親油性活性化合物を組み入れると、水性液体による再分散後に非経口投与が可能であるか又は経口投与することもできる薬物送達システムとして本発明の凍結乾燥ナノエマルションを利用することもできる。さらに、本凍結乾燥ナノエマルションは、例えば、非経口脂肪代替療法用の担体エマルションとしても適している。 本発明のある実施形態により、凍結乾燥ナノエマルションは1種以上の活性化合物を含む。従って、本発明は、少なくとも1種の脂質と、少なくとも1種のスクロース脂肪酸エステルと、少なくとも1種の活性化合物とを含むことを特徴とする凍結乾燥ナノエマルションにも関する。 親油性活性化合物、すなわち比較的水に溶けないが、例えば、ベンゼン、クロロホルム、アセトン、エーテル又はヘキサン等の1種以上の脂肪性溶媒に溶ける物質が好ましい。脂肪/油(三価アルコールグリセロールと種々の鎖長の飽和/不飽和モノカルボン酸とのトリエステル)中、好ましくは>1μg/mlの溶解度及び>1:1の油/水分布比を有する医薬活性化合物が好ましい。本発明の凍結乾燥ナノエマルション中に存在しうる親油性活性化合物の例:フィブレート、例えばフェノフィブレート/クロフィブレート、ベンゾジアゼピン、例えばカルバマゼピン、アゾール、例えばビホナゾール、ステロイド、例えばダナゾール。 凍結乾燥ナノエマルションを水性液体、好ましくは水で再分散させて、粒度分布が開始エマルション(すなわち、凍結乾燥を利用して凍結乾燥ナノエマルションに変換される前のナノエマルション)の粒度分布に実質的に相当するナノエマルションを与えることができる。再分散のために使用する水性液体は、純水、特に注射用水に加えて、溶解物質、例えば食塩水又はデキストロースなどの等張剤を含んでもよい。再分散のために特に好適な水性液体は生理食塩水及びデキストロース溶液である。 本発明の凍結乾燥ナノエマルションは、脂質として、ナノエマルション調製のための医薬的観点から適している基本的に全ての脂質、特にC8〜C22-脂肪酸、特に好ましくはC8〜C18-脂肪酸を含むモノグリセリド、ジグリセリド及び/若しくはトリグリセリド、並びに/又は脂溶性ビタミンを含むことができる。従って、本発明は、脂質として、好ましくは、C8〜C22-脂肪酸、好ましくはC8〜C18-脂肪酸を含むモノグリセリド、ジグリセリド及び/若しくはトリグリセリド、不飽和若しくは飽和C8〜C22-脂肪酸並びに/又は脂溶性ビタミン若しくは脂溶性活性化合物が存在することを特徴とする凍結乾燥ナノエマルションにも関する。 好適な脂質の例は、例えば、落花生油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、アザミ油(ベニバナ油)又は綿実油などの天然油、例えば、脂肪酸として基本的にC8〜C12-脂肪酸、特にカプリル酸及びカプリン酸を含む中鎖トリグリセリド(MCT)、トリグリセリド混合物などの半合成油のみならず、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)(ビタミンEとビタミンDが好ましい)である。 凍結乾燥ナノエマルションは、好ましくは脂質としてトリグリセリドを含む。特に好ましいトリグリセリドはC8〜C12-脂肪酸のトリグリセリドである。 スクロース脂肪酸エステルは、例えば、長鎖脂肪酸のメチルエステルを用いたスクロースのエステル交換反応によって得ることができるエステルである。本発明に従って利用できるスクロースエステルは、C8〜C22-脂肪酸との当該エステルであり、C12〜C18-脂肪酸、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸とのスクロースエステルが好ましく、特にラウリン酸及びミリスチン酸とのスクロースエステルが好ましい。スクロース脂肪酸エステルは商業的にも入手可能であり、例えば、三菱化学株式会社(日本、東京)によって商標名Ryotoで市販されている。その例は、商標名がRyoto L 1695、Ryoto M 1695及びRyoto S 1670であるラウリン酸、ミリスチン酸又はステアリン酸とのスクロース脂肪酸エステルである。 凍結乾燥ナノエマルションの有利な実施形態によれば、その中に存在する脂質とスクロース脂肪酸エステルが、相互に1:1〜5:1の質量比、好ましくは2:1〜4:1の質量比で存在する。従って、本発明は、脂質とスクロース脂肪酸エステルが、相互に1:1〜5:1の質量比、好ましくは2:1〜4:1の質量比で存在することを特徴とする凍結乾燥ナノエマルションにも関する。 脂質が水相中に乳化剤と共に分散しているナノエマルションを凍結乾燥させることによって、本発明の凍結乾燥ナノエマルションを調製することができる。脂質相と水相は、有利には、凍結乾燥されるナノエマルション(開始エマルション)中に相互に0.5:99.5〜30:70の質量比で存在する。従って、本発明は、脂質相と水相が相互に0.5:99.5〜30:70の質量比で存在するナノエマルションを凍結乾燥させることによって調製されることを特徴とする凍結乾燥ナノエマルションにも関する。 直接、例えば非経口又は経口投与できるナノエマルションに水性液体を添加することによって、簡単な方法で凍結乾燥ナノエマルションを再分散させることができる。従って、本発明は、水性液体による再分散によって前記凍結乾燥ナノエマルションから調製されることを特徴とするナノエマルションにも関する。 凍結乾燥エマルションの再分散のために添加する水性液体の量に依存して、再分散によって形成されるナノエマルション中の脂質と水性液体の相互の比率を広範囲にわたって変えることができる。例えば、少量の水性液体を使用すると、活性化合物の充填について単位体積当たり大量の活性化合物を含む高濃度のナノエマルションが形成される。これは、少ない体積を用いて大量の活性化合物を投与することをも可能にする。従って、高い活性化合物量を投与すべき場合、有利なことにこの目的に必要な注入体積を有意に減らすことができ、例えば、静脈点滴を静脈内注射と交換することができる。また、本凍結乾燥ナノエマルションは、例えば糖などの凍結保護剤が必要ないので、従来技術の凍結乾燥ナノエマルションのように無いと必然的に高張性になってしまう水性液体(例えば、非経口投与中に既知の耐性問題をもたらす)をほとんど用いずに、その再分散を行なうこともできる。 従って、本発明は、脂質と水が、相互に0.5:99.5〜50:50の質量比、好ましくは5:95〜50:50の質量比で存在することを特徴とするナノエマルションにも関する。 凍結乾燥による薬物製造で慣習となっている方法及び技術を利用して調製されたエマルションから水相を除去することによって、本発明の凍結乾燥ナノエマルションを調製することができる。従って、本発明は、本発明の凍結乾燥ナノエマルションの調製方法であって、最初に常法でナノエマルションを調製し、引き続きそれから外部水相を凍結乾燥によって除去することを特徴とする方法にも関する。 本発明の凍結乾燥ナノエマルションに活性化合物を組み入れることを目的とする場合、親水性活性化合物の場合は水性界面活性剤相(乳化剤界面層及び乳化剤ミセル)に溶解させることによって、また親油性活性化合物の場合は乳化剤と脂質を含む相に溶解させることによって、この組入れを行なうことができる。或いは、凍結乾燥を行なう直前に活性化合物を添加することもでき、加水分解に敏感であるか及び/又は熱に不安定な活性化合物にとって特に有利である。このように有利には、本発明の活性化合物含有エマルション組成物の調製方法を活性化合物の物理化学的特性に適合させることができる。従って、本発明の方法の有利な実施形態では、乳化前に、少なくとも1種の活性化合物を水相又は乳化剤と脂質を含む相のどちらかに溶解させるか或いはエマルションの凍結乾燥前に少なくとも1種の活性化合物をエマルションに添加する。 ここで、凍結乾燥前の分散系内の活性化合物分布は保証され、例えば平衡透析、差動透析及び限外ろ過などの常法を利用して容易にチェックできることに留意すべきである。 以下の実施例は、本発明をそれらの実施例に限定することなく説明する。ナノエマルション調製の一般的方法 スクロースエステルをH2Oに50℃で溶解させ、この油を50℃の温度で維持し、水相と油相を相互に混ぜ合わせ、混合相を3分間Ultraturraxを用いて8000rpmで前均質化し、引き続きAvestin Emulsiflex-C3での高圧均質化に供する(8サイクル、4×1000バール+4×2000バール)。 ナノエマルションを引き続き下記凍結乾燥プロセスに供する。1) 凍結プロセス:-50℃、3.5時間2) 主乾燥:-40℃、48時間までにわたって適切な減圧3) 後乾燥:-40℃〜+20℃、12時間までにわたって適切な減圧(実施例1) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 5g中鎖トリグリセリド 10g水 85g(実施例2) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 5g大豆油 10g水 85g(実施例3) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースミリスチン酸エステル(Ryoto M1695) 5g中鎖トリグリセリド 10g水 85g(実施例4) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 5g中鎖トリグリセリド 20g水 75g(実施例5) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースステアリン酸エステル(Ryoto S1670) 5g中鎖トリグリセリド 20g水 75g(実施例6) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 5g中鎖トリグリセリド 30g水 65g(実施例7) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 7.5g中鎖トリグリセリド 30g水 62.5g(実施例8) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 10g中鎖トリグリセリド 30g水 60g(実施例9) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 7.5g中鎖トリグリセリド 10g水 82.5g(実施例10) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 10g中鎖トリグリセリド 10g水 80g(実施例11) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 7.5g中鎖トリグリセリド 10g水 82.5g(実施例12) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 10g中鎖トリグリセリド 10g水 80g(実施例13)(活性化合物を含むナノエマルション) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。スクロースラウリン酸エステル(Ryoto L1695) 7.5g中鎖トリグリセリド 30gフェノフィブレート 1.5g水 61g(比較例1) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。PEG660-12-ヒドロキシステアレート(Solutol HS15) 5g中鎖トリグリセリド 10g水 85g(比較例2) 下記物質を用いて、上記一般的方法に従ってナノエマルションを調製する。ホスファチジルコリン、大豆ベース、75%純度: 5g大豆油 10g水 85g 乳化剤としてSolutol(登録商標)HS 15(PEG660-12-ヒドロキシステアレート)/Cremophor(登録商標)RH 40(PEG-40硬化ヒマシ油)/Lipoid S75(大豆ベースホスファチジルコリン)及びLipoid E80(卵ベースホスファチジルコリン)並びに脂質として中鎖トリグリセリド(MCT)を用いて(質量比は表2を参照されたい)、上記一般的方法と同様にナノエマルションを調製し、凍結乾燥させる。さらに、同一条件下で市販のナノエマルション(乳化剤としてホスファチジルコリンを含むLipovenos(登録商標))を凍結乾燥させる。 得られた凍結乾燥品(凍結乾燥ナノエマルション)は、いずれも完全なままの凍結乾燥ケークを持たず、全て崩壊している。水で再分散させると、相分離が起こるか又は非常に粗いエマルションが形成され、非経口投与には適さない。 対照的に、スクロース脂肪酸エステルを含むナノエマルションは、凍結乾燥後に構造を保持したケーク形成を示す。この凍結乾燥ケークに水を添加すると、エネルギーを入力せずに、<200nmの範囲の粒径を有するナノエマルションが生じる。 光子相関分光法を用いてサイズ測定を行なう。Zeatasizer Nano ZS(Malvern Ltd, UK)でエマルション液滴の強度加重平均径を決定する。DTS 5.03ソフトウェア(Malvern Ltd. UK)によって散乱シグナルを評価する。多分散性指数(polydisper-sity index)(PDI)がサンプルのサイズ分布の尺度としてこのソフトウェアに組み入れられる。 スクロース脂肪酸エステルを含むエマルションの凍結乾燥前後の平均粒径と多分散性指数(PDI)を表1に示し、図1にそのグラフを示す。表1 図2及び表2は、標準エマルションと比較した本発明の代表的ナノエマルションの凍結乾燥前の粒径を示す。驚くべきことに、スクロース脂肪酸エステルは、同じエネルギー入力及び同じ界面活性剤濃度のナノエマルションのために常用される乳化剤より約50nmまで小さいエマルション液滴をもたらす。 表2 少なくとも1種の脂質と、少なくとも1種のスクロース脂肪酸エステルとを含むことを特徴とする凍結乾燥ナノエマルション。 少なくとも1種の活性化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 C8〜C22-脂肪酸、好ましくはC8〜C18-脂肪酸を含むモノグリセリド、ジグリセリド及び/若しくはトリグリセリド、並びに/又は脂溶性ビタミンが脂質として存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 トリグリセリドが脂質として存在することを特徴とする請求項3に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 トリグリセリドがC8〜C12-脂肪酸を含むことを特徴とする請求項4に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 スクロース脂肪酸エステルがC8〜C22-脂肪酸、好ましくはC12〜C18-脂肪酸を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 脂質とスクロース脂肪酸エステルが、相互に1:1〜5:1の質量比、好ましくは2:1〜4:1の質量比で存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 脂質相と水相が0.5:99.5〜30:70の質量比で存在するナノエマルションを凍結乾燥させることによって調製されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の凍結乾燥ナノエマルション。 請求項1〜8のいずれか1項に記載の凍結乾燥ナノエマルションから、水による再分散によって調製されることを特徴とするナノエマルション。 脂質と水が相互に0.5:99.5〜50:50の質量比で存在することを特徴とする請求項9に記載のナノエマルション。 最初に常法でナノエマルションを調製し、引き続き凍結乾燥を利用して前記ナノエマルションから外部水相を除去することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の凍結乾燥ナノエマルションの調製方法。 乳化前に、水相若しくは脂質含有相のどちらかに少なくとも1種の活性化合物を溶解させるか又はエマルションの凍結乾燥前に少なくとも1種の活性化合物をエマルションに添加することを特徴とする請求項11に記載の方法。 本発明は、親油性相と1種以上のスクロース脂肪酸エステルとを含む凍結乾燥ナノエマルション、該凍結乾燥ナノエマルションから再分散によって調製できるナノエマルション、及び前記凍結乾燥ナノエマルションの調製方法に関する。【選択図】なし