生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_動物腸内共生菌を用いたセルラーゼ生産方法
出願番号:2011285149
年次:2013
IPC分類:C12N 9/42,C12N 1/00


特許情報キャッシュ

三沢 浩一 JP 2013132250 公開特許公報(A) 20130708 2011285149 20111227 動物腸内共生菌を用いたセルラーゼ生産方法 三沢 浩一 311018046 三沢 浩一 C12N 9/42 20060101AFI20130611BHJP C12N 1/00 20060101ALI20130611BHJP JPC12N9/42C12N1/00 P 4 OL 10 4B050 4B065 4B050CC10 4B050DD01 4B050DD02 4B050DD11 4B050FF01C 4B050LL04 4B050LL05 4B065AA01X 4B065AA15X 4B065AA38X 4B065AA41X 4B065AA90X 4B065AA99X 4B065AC14 4B065AC15 4B065AC16 4B065CA31 4B065CA54 4B065CA57当該発明は動物の腸内に共生する微生物群単位そのものを用いて混合培養する方法を基礎とし、その培養方法を基に従来からのセルラーゼ生産方法と異なる生産方法を用いることによってセルロースの分解能力が強くかつ、効率良く生産する事が出来る方法の発明に関する。セルロース資源は食料と競合しない天然資源であり、年間1千億トンの生産量がある。植物バイオマスをエネルギー源と利用できれば世界の年間エネルギー消費量の十倍にも相当するといわれており、将来にわたって人類にとって必要なエネルギーは充分確保できる勘定となる。一般にセルロースは単体で存在する事は少なく、ヘミセルロース、リグニン、などと共存している。その量比は大略4:3:3である。セルロース系資源は難分解高分子化合物の集合体であり、これらを有効に利用するにはまず安定で利用しやすい形態(グルコース)に転換する必要がある。セルロースの糖化については古くから酸糖化法が知られているが、強酸、高温、高圧が必要で、装置的にかなり厳しい条件が要求されるだけでなく、生成したグルコースの過分解が起こり、微生物の生育阻害物質や資化利用できない物質が生成されるなどの糖化液を発酵原料とするには不利な点がある。そこで、温和な条件(中性pH, 常温、常圧)で糖化でき、生成した糖の過分解も起こらない酵素糖化法が注目される。しかし、温和な条件で植物バイオマスを糖化できる酵素糖化法は酸糖化法に比べて反応が遅く大量の酵素を必要とする欠点があり、実用化のためには、強力な酵素生産菌の発見、酵素生産菌の改良育種、培養条件の検討などによる力価の向上などが重要な課題である(非特許文献1)。セルラーゼによるセルロース分解機構については未知の部分が多い。分解機構に関する研究は1950年代にReeseらによって開始され、その当時からセルロースの分解には作用様式の異なる複数の酵素が関与していると考えられていたが、詳細については現在でも明らかになっていない。セルラーゼ反応機構が明確ではなく概念の域に留まっている背景にはいくつかの原因が考えられる。第一にセルロースの構造がまだ不明であること、第二にセルラーゼの反応機構の解明に際しては、やむをえず一定の人為的処理の施された基質類が使われており、それらが実際に天然セルロースの物理化学的性質を完全に備えたものかどうか、また、こうした基質を用いた実験結果が果たして真のセルラーゼ活性を反映しているのかどうか疑わしいこと、そのほか、セルラーゼは微生物によって生成される過程において、その微生物によって同時に生産されるタンパク質分解酵素によって一部分解または修飾された結果、特異性の異なる別のセルラーゼ成分に転換される可能性があり、実験に使われた酵素が果たしてネイティブなセルラーゼであったか否かの判断ができない場合がある。このような事例が原因となって分解機構の解明をいっそう困難にしている。毎年毎年生産される森林のバイオマスは積もることなく土壌動物、菌類、バクテリア等によって分解されている。多くの生物にとって、これらの物質は摂食しても消化することができない難分解性の物質である。生物がセルロース等を消化するためには酵素のセルラーゼを必要とする。動物においては、ごく一部の昆虫あるいはカタツムリやフナクイムシといったわずかなものしかそれを作ることはできない(非特許文献2)。そこで、植物バイオマスの有効利用として植物バイオマスを主食とする土壌動物・昆虫類の植物バイオマス分解を行う腸内共生菌について調査することを試みた、食材性の土壌動物・昆虫類のすべてが、セルラーゼを持っているわけではないと思われるが、しかし、彼らは植物を食べ物として食し、生活を営んでいる。もし、セルラーゼをその動物自体が持たないとするならば、腸内に何らかのセルラーゼを生産出来る微生物群があるはずである。オカダンゴムシ、ワラジムシ、フナムシなどこれらの仲間は非社会性であるが、摂食や生殖行動と直接の関係がないにも関わらず、常時集団を形成して生活している。それらの集合はフェロモンによって誘発されている事が明らかにされており、フンに集合を引き起こす活性物質であるフェロモンが存在する事が分かっている。この地球上の生命の多様性には、まさに驚嘆すべきものがある。それらの多種多様性な生物は決して単独で生きているのではなく、周囲の環境や他の生物との様々な形のかかわりの中で、それぞれの生態的地位を確立している。最も密接な関係は共生と呼ばれる中にある。昆虫・土壌動物類には普通にはなかなか利用困難である食物を利用することに特殊化して繁栄しているものが多い、このような動物は体内に保有している共生微生物の助けによって利用困難な食物、栄養源を利用するのに成功して繁栄しているものが多い。昆虫はセルロース類を分解して栄養源として取り組むために、さまざまな微生物や原生動物などを利用している(非特許文献3)。オカダンゴムシはシロアリのように発達した後腸は持っていないが、腸内にいる微生物群により、植物バイオマスの消化を促進・手助けしている共生菌群がいると考えられる。山辺倫 (1993) 新規セルラーゼ生産菌の開発と応用. 遺伝. 42(4): 82-88.松本忠夫 (1988) 食材性昆虫と菌類および原生動物の消化共生. 遺伝. 42(2): 27-28.倉根隆一郎 (2003) 複合生物系と難培養微生物. 農芸化学学会誌. 77(12): 21-24.従来のセルラーゼの生産においては、単一の菌株を用いて培養し、その培養液からセルラーゼを精製するものであるが、本発明では複合生物系という考え方を用いた。自然界の多くの生物は、生物と生物、生物と環境が深く相互に関与し、多様な相互関係を維持しながら共存している。その多くは、単一生物では得られない高度な機能を有していると予想されている。従来では、単一微生物をその対象とし、分離培養が可能な微生物を取り扱うことが主であった。このような方法では利用可能な微生物は1%前後にしかすぎず、残りの99%以上は取り扱う事が出来ず、多くの生物資源が未利用のまま取り残されていると考えられている。自然界には分離・培養が可能な微生物と、それが困難な微生物が共存しており、単体では生きられないが、他の生物(動物、植物、昆虫、微生物)との相互作用で生育可能な微生物が見いだされ新たな機能性物質が見いだされる可能性、各々の微生物は分離培養可能な微生物であるがその各々の微生物を混合培養(複合生物系培養)したときに新たに機能性物質を生産する可能性があると考えられる。上記の事柄は、自然界においては多様な生物が相互し合い難分解高分子である植物バイオマスを利用していることから植物バイオマスの有効利用を行うにあたって用いるセルラーゼ剤についても同様なことが言えると思われる。基質となる植物バイオマスは、その構造が非常に強固な難分解高分子であるがために分解しにくく、植物バイオマスを分解すること自然界ではいろいろな菌の相互作用により分解資化が行われていることが知られている。混合培養を行うことにより、単一株の培養からのセルラーゼ精製より、混合培養は多数の生物が相互作用で生育することにより単一培養より、多くのセルラーゼのアイソザイムを生産する事が出来るもではないかと考えられる。また、オカダンゴムシは落ち葉の分解に深く関わり合っているが、オカダンゴムシ自体はセルラーゼを持たないと言われており、植物バイオマス消化・利用にあたり、条件的共生(微生物を消化管内で一時的に培養し、その消化力を利用する)と考えられているが、大量のバイオマスを処理・利用するために腸内セルラーゼ微生物群を常時保持していると言われている。本発明ではオカダンゴムシがどのように効率よく植物バイオマスを分解利用しているかを知るために、オカダンゴムシのフンから腸内細菌と思われる菌を分離し、その微生物群の同定、およびセルロースの分解能等の解明、植物バイオマスを主食とするオカダンゴムシの腸内の共生菌微生物群単位を用いて、複合生物系という観点から、腸内微生物群単位そのものを用いて混合培養し、セルラーゼを生産・精製し、得られたセルラーゼの特性等について検討し、新規なセルラーゼ生産方法を提供することを目的とする。本発明は動物の腸内共生群単位を用いて酵素を生産する方法である。動物腸内の個々の共生菌を用いてセルロース分解能力を測定して有益セルラーゼ生成菌を有する動物を選別する方法であり、選抜された動物の腸内共生菌群単位を培養する事によりセルラーゼを生産する方法である。検査結果よりその動物は土壌動物のダンゴムシの腸内共生菌群を用いてセルラーゼを生産する事により新規なセルラーゼ生産方法となる。動物体内共生菌群単位を用いる事で従来からの単一種からのセルラーゼ生産方法と異なり、複数種の腸内共生菌群を用いることにより単数種類のセルラーゼによる植物バイオマスの分解よりも、複数種菌群によるセルラーゼ生産菌によりセルロソーム(セルラーゼ複合体)が生産され従来よりも植物バイオマスに対する分解率を向上させる事が期待される。以下に本発明をさらに具体的に説明する。当該動物は、植物を主食とする食材性動物を対象とする。セルロースは、グルコースがβ−1,4グルコシド結合により高度に重合したグルコースポリマーであり、全ての植物の細胞壁構成成分として存在する。セルラーゼはセルロースを分解する酵素の総称であり、セルラーゼが単体の状態でも、加水分解酵素群のような複数酵素群の状態であってもセルロースの分解活性を有していれば本発明に含まれる。本発明において、「セルロースを分解または糖化すること」とは、セルロースを分解し、オリゴ糖類、二糖類、単糖類およびそれらの混合物にすることをいう。あるいは、言い換えれば、この用語は、セルラーゼによって、多糖類のグリコシド結合を加水分解することをいう。本発明において「培養」方法としては、液体培養および固体培養が挙げられるが、選択した微生物を培養できるかぎり、これらの方法に限定されない。(セルラーゼ生産菌の培養)セルラーゼ生産菌は、下記の実施例において具体的に記載されるように培養することが可能である。本発明において、炭素源として培地に加える粉末セルロールの量は、それぞれ、10〜1000g/L等の濃度帯で培養を行う事が好ましいが、条件によりセルロース濃度の変更をする事もあり、上記濃度に限定されるものではない。培養温度および培養時間は、セルラーゼ生産菌の種類によって異なるが、通常、25〜60℃、48時間〜10日ほどの条件で培養を行う。培養に用いることができる発酵槽としては、通気撹拌型、気泡塔型、流動層型、充填層型などが挙げられる。上記培養液から、遠心分離、濾過などの公知の方法によって菌体を除去し上清液を得る。この上清液は、このまま粗酵素液として使用することが可能である。次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[実施例1](粘度の測定)毛細管粘度計(Ostwald 粘度計)を用いて行った。これは最も代表的な粘度計で,全体がガラス製でできており、毛細部位に一定の体積の液を入れ給水後、自然流下させる.液面が通過する時間を測定する。また、粘度の測定においては落球粘度計および回転粘度計等の粘度計を用いても構わない。(セルラーゼの検出)Congo red を用いてセルロース寒天培地上の微生物由来のセルラーゼの検出を行った。セルラーゼは菌体外酵素であり、培地上に分泌される。Congo red はその分泌されたセルラーゼと反応し、培地上にセルラーゼが分泌されているとその分泌されている部分は赤く染まる。(動物体内および体外保有セルラーゼ生産菌能力試験)野外から植物を主食とする各種土壌動物・昆虫類を捕獲しセルロースを分解を有する能力を持つ微生物を個々個別に分離しスラントとし、昆虫・土壌動物から分離出来た腸内共生菌自体のセルロース分解能力の試験を行った。以下当該実験手順を記す。野外から植物を主食とする各種土壌動物・昆虫類を採取し、フンまたは、供試動物全体をすり潰し、5ml滅菌済みH2Oに入れ混合する(約30秒程度)。1%セルロース寒天培地に白金耳を用いて植種する。インキュベーターを用いて30℃、5日間培養する。セルロース寒天培地に形成されたコロニーを分離し、スラントとして保持する。各スラントより白金耳を用いて5 ml貧栄養 カルボキシメチルセルロース(CMC)1 % 水溶培養液に入れ、3日間30℃で振動培養する。3日後、各溶液それぞれ1ml を、粘度計を用いて粘度の測定をする。得られた、結果より、セルロース分解能力ランキング表を作成する。表1から明らかなように、実験の結果としてバッタ類よりもダンゴムシ等から強いCMC分解率を得られた。供試動物名については予備実験的に身近なところから採集できたものを用いたため、種名が明らかにできないものが多く、分類群のレベルも不統一になっている。ここではダンゴムシの成績が粘度を下げているものが比較的多いことに注目した(ここでいうダンゴムシにはワラジムシも含まれている)。上記より、強いセルラーゼ生成能を持つ菌がダンゴムシの腸内に存在する可能性が示唆された。バッタ類は非常に良く大量の植物を食するが、しかし、フンを見ると植物構造等はほとんど利用しておらず、植物の原形質内にある栄養豊富な、タンパク質・脂質・貯蔵炭水化物等を利用して生命を営んでいると推測される。しかし、等脚目類は枯葉を主食とし、植物の原形質類を生命の営みに利用するバッタ類とは異なった植物構造体の利用をしていると思われ、CMCを用いた粘度・セルロース分解能力測定実験からも難分解性高分子であるセルロースを利用しているものと推測される。[実施例2]次にオカダンゴムシの腸内共生菌数およびその組成を調べた。(段階希釈法)試料としてオカダンゴムシのフン(5粒程度)を滅菌済み0.9% 濃度食塩水(以下生理食塩水と記す)10ml 中に入れ混合し、当該試料1mlを滅菌済み生理食塩水9mlに入れ、試験管を振って混合する(約1分程度放置する)。希釈試料10ml から1ml 採取し、新しい9ml 生理食塩水に入れ、よく混合し、順次、10分の1ずつ希釈していき希釈完了後、試料から1ml採取し、9ml ブイヨン液体培地に加える。各希釈段階の3本一組の試験管を30℃、3日〜5日程度培養を行う。各希釈段階の3本一組の試験管において何本が濁るか数え菌数測定を行う。(菌体数の測定)段階希釈法を用いてオカダンゴムシの腸内および主食とするクスノキ(枯葉)自身の菌体数を求めた。オカダンゴムシ腸内からは1g当たり 2.27×107 の菌数を得られ、クスノキ(枯葉)の微生物数1g当たり 2.4×104 と比較するとオカダンゴムシ腸内においては微生物の活動が活発であることがわかり、オカダンゴムシの腸内環境は微生物にとって生活しやすい環境条件下であることが伺える。(オカダンゴムシのフンからの微生物群の分離)縦23cm ×横27cm の台所用メッシュに、一晩50℃で乾燥させた枯葉(0.3〜0.4 g程度)とオカダンゴムシ3匹を入れ、15 cm 滅菌済みシャーレ内に入れる。ただし、メッシュがシャーレの上・下底に当たらないようにする(下皿にフンのみ回収出来るようにするため)。暗所、25℃前後で静止しておく。1〜2日後にフンを採取。フン採取後、フン3粒を滅菌済み5 ml H2O内に入れ混合(約30秒程度)。1%セルロース寒天培地に接種する、30℃にて培養。5日経過後、出てきたコロニーをスラントにして保持する。(腸内微生物群の構成)クスノキ(枯葉)を主食とするオカダンゴムシのフンを滅菌済み生理食塩水5 ml内に懸濁し懸濁液を用いて1%セルロース寒天培地に発生する微生物を分離し、その微生物の同定を行った。その結果が表2である。その結果から、Bacillus 34%、Enterobacteriaceae 17%、Vibrionaceae 10%の順で菌株が分離された。スラントの構成を見ると、バクテリアが84%、真菌類が16%の構成比率となった。またオカダンゴムシが餌としているクスノキ(枯葉)1gを用いて乳鉢である程度小さくした後、滅菌済み5 ml内に懸濁しクスノキ(枯葉)自体からも菌の分離を試みた。その結果として、Pseudomonadaceae 38%、Nocardia 15%、Curvularia 15% の順で菌株が分離された。微生物の構成を見ると、バクテリアが53%、真菌類が47%の構成比率となった。クスノキ(枯葉)からの菌の分離ではバクテリアの分離株の種類は少なく、真菌類の分離株がある程度多様性を見せた。オカダンゴムシのフンから分離した微生物群相とクスノキ(枯葉)自体から分離された微生物群相はその構成が異なっていることがわかる。オカダンゴムシのフンの微生物群とクスノキ(枯葉)の微生物群を比較すると、フンのほうには圧倒的にバクテリアが多く、クスノキからは多く真菌類(カビ)が分離された。オカダンゴムシの腸内においてはバクテリアの活性が高いために真菌類の働きが抑制されたのではないかと考えられる。そのためにフンからの微生物相ではバクテリアが多く、クスノキ(枯葉)自体からではバクテリアと真菌類の分離の割合が半々程度となったと考えられる。このことよりフンから分離されたカビはコナラ自体に付着していた可能性が高い。(細菌類の腸内垂直伝播について)社会性昆虫として顕著な集団を作るシロアリは、共生微生物としてバクテリア以外にアメーバと原生動物がセルロース質を分解し、その代謝物をシロアリが利用することはよく知られており、また食材性の甲虫類の幼虫のカミキリムシ科の後腸は大変大きく、後腸内でバクテリアの作用によりセルロース質が分解され、共生微生物の作用により植物バイオマスを利用している。上記のような共生関係から判断すると、オカダンゴムシの腸内でのセルロース分解・消化の主役としてはバクテリアの活性が高く、またある程度のバクテリアにおける多様性を持っているため、バクテリアがその主役をなしているのではないかと考えられる。また、オカダンゴムシの腸内には多様性を持った微生物群が生息している事が今回の実験において判明した。オカダンゴムシの腸内微生物群の調査を行い、セルラーゼを分泌しない腸内微生物群とセルラーゼを分泌する菌群との割合がほぼ同程度の割合で存在する事が判明した。オカダンゴムシ自体はセルラーゼを分泌する能力を持たないと言われているので、腸内微生物群が半分程度存在する事はオカダンゴムシ腸内において微生物群およびオカダンゴムシそれぞれが共生関係を形成して難分解性高分子であるセルロースを分解・吸収・利用しているものと思われる。[比較例1](ダンゴムシ腸内共生菌単位を用いた混合培養によるセルラーゼ生産)等脚目は摂食や生殖行動と直接の関係がないにも関わらず、常時集団を形成して生活している。しかもその集合現象はフェロモンにより誘発されて、集合フェロモンはフン中に含まれている。食材性昆虫として有名なシロアリはフンを介して効率よくセルロースを分解できる菌群を垂直伝播しており、等脚目はシロアリのような社会性昆虫ではないが常時集団で生活しているためにフンを介して等脚目の腸内の微生物群・効率よくセルロースを分解できる菌群を垂直伝播しているのではないかと考えられた。腐食性土壌動物であるオカダンゴムシ自体がセルラーゼを分泌しないのであれば腸内の共生微生物群の力によってセルロース基質を分解しそれを利用しているものと考えられ、オカダンゴムシの腸内共生微生物単位そのものを用いる事によって活性の高いセルラーゼ剤が生産されるのではないかと考えた。そこで、フンを培養液を用いて培養し得られたセルラーゼ粗酵素液とそれと比較する為に畑の土を用いて同様の実験操作を行いセルラーゼの比活性を比較を行った。(セルラーゼの精製)セルラーゼは、上記上清液より、タンパク質精製に用いられる公知の方法、例えば、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質または抗体などを利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理など、を1つまたは複数組み合わせて用いて精製することが可能である。(セルラーゼ活性の測定)セルラーゼ活性は、上記上清液または精製したセルラーゼに、濾紙、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロース(Avicel)、サリシンおよびセロビオースなどの基質を加えて、一定時間酵素反応を行わせた後に、生じた還元糖をSomogy-Nelson法およびDNS法などにより発色させ所定の波長で比色定量して測定することが可能である。(セルラーゼ(β-glucosidase)の検出)基質として4-methylumbelliferyl-β-D-cellobioside ( MU-cellobioside ) を用いる事が出来る、酵素反応によりグリコシド結合が切れて4−MUが遊離すると塩基性下で強い青色の蛍光(440 nm )を発するので、高感度でグリコシダーゼ活性を測定することができる。(タンパク質の定量) Lowry-Folin methodを用い、下記1〜4までの試薬を用意した。1,0.1N NaOHにNaCO3・5H2Oを終濃度2% に溶解したもの2,2% 酒石酸ナトリウムにCuSO4・5H2Oを終濃度1% に溶解した3,アルカリ性試薬=試薬1、50ml と試薬2、1ml を直前に混合したもの。および4、フォリン試薬:フェノールフタレインを用いた。タンパク質を含む試料溶液をとり、試薬4、を5ml 加えてよく混合し、室温に10分間放置する。次に試薬3、を0.5ml 加えてすばやく混合後、30〜120分の間に分光光度計を用いて吸光度(750 nm)を測定する。別とに子牛血清アルブミン(BSA)を用いて作成したタンパク質標準曲線を作成し、定量を行う。(グルコースの定量) DNS法により3,5-Dintrosalicylic acid(DNS)の還元反応を利用した方法を用いた。DNS試薬:4.5% NaOH溶液に、1% DNS溶液およびロッセル塩を加える。別に10% NaOH溶液22ml に結晶フェノールを加えて溶解し、100ml とする。このアルカリ性フェノール液69ml にNaHCO3 6.9g を加えて溶かし、前記のDNS液を注いでロッセル塩が充分に溶解するまでかきまぜる。試料1mlに蒸留水2mlを加え3mlにする。0.05M 酢酸緩衝液(pH 4.7)1mlを加え、DNS試薬2mlを加え、沸騰水浴中に5分間保った後、水冷し、蒸留水を15ml 加え20ml とする。分光光度計の波長540nm で吸光度を測定し、グルコース量を算出した。また、Somogy-Nelson法においてもグルコースを測定する事が出来る。(セルラーゼの測定)以下の各基質を用いて酵素比活性を求めた(疎水性セルロース)1 ml Avicel 1% に酵素溶液0.5 mlを入れ40℃、60分反応終了後、1.1 ml 0.25 N NaOH を入れ、遊離したグルコースをDNS試薬を用いて測定する。1酵素単位の定義は、「1分間に、1μmol 量のグルコースを生成する酵素量」とする。(親水性セルロース) 1 ml CMC 1% に酵素溶液 0.5 mlを入れ40℃、30分反応終了後、1.1 ml 0.25 N NaOH を入れ、遊離したグルコースをDNS試薬を用いて測定する。1酵素単位の定義は、「1分間に、1μmol 量のグルコースを生成する酵素量」とする。(β―グルコシターゼ) 2 ml p-NPG 0.03% に酵素溶液 0.2 mlをいれ40℃ 30分反応終了後、2 ml 1M NaCO4を入れ、遊離したp-nitrophenolを分光時計400 nmの波長を用いて測定する。1酵素単位の定義は、「1分間に、1μmol 量のp-nitrophenolを生成する酵素量」とする。オカダンゴムシを野外より採取し、実施例2の方法を用いてフンを採取し、当該フンを3粒程度を貧栄養セルロース培地(表 2)を用いて30℃、3日間、振動培養したものを遠心分離器(12000rpm、10分)にて処理し、上澄み液を採取し、セルラーゼを精製し、各酵素比活性を求めたものが表 3となる。オカダンゴムシのフンを培養し得られたセルラーゼ粗酵素液と土を用いたセルラーゼ粗酵素液を得てセルラーゼの比活性を比較してみたところ、Avicelase、CMCase、Cellobiase、ともにオカダンゴムシのフン由来のセルラーゼ粗酵素液の方が良いセルラーゼの比活性を得られた。このことは、オカダンゴムシの腸内には比較的セルロースを良く分解できる腸内微生物群が常時存在しているのではないかと推測される。腐食性動物・等脚目オカダンゴムシの腸内にはセルロースを比較的良く分解できる微生物群が存在することが証明できたものと思われる。当該発明は動物腸内共生菌単位を用いい培養することで、土壌のような複数微生物群が存在する菌群よりもそのバランスが良く良い酵素供給源となる可能性が見出せた。当該事項は腸内細菌が垂直伝播する動物に当てはまることであり、その動物生活環境により微生物群がふるい分けされ、人為的にふるい分けするよりももっと複雑でかつ効率的な菌群が存在し、そのような菌群単位を目的に応じて培養・使用することにより、従来の単一種の培養からでは得られないような化学部質を得られる事および従来よりも活性の強い酵素の蛋白質等を得る事が出来、当該方法を用いることにより産業の発展に貢献出来る事が出来る。動物の腸内共生群単位を用いて酵素を生産する方法動物腸内の個々の共生菌を用いてセルロース分解能力を測定して有益セルラーゼ生成菌を有する動物を選別する方法請求項1において前記の動物腸内共生菌群単位を培養する事によりセルラーゼを生産する方法請求項1において前記の動物は土壌動物のダンゴムシの腸内共生菌群を用いてセルラーゼを生産する方法 【課題】本発明は、通常単一の菌株による加水分解類の酵素生産方法とは異なり、複合種による加水分解酵素特にセルラーゼを生産する方法を提供する。【解決手段】動物の腸内共生群単位を用いて酵素を生産する方法により、動物腸内の個々の共生菌を用いてセルロース分解能力を測定して有益セルロース生成菌を有する動物を選別し、選抜された動物の腸内共生菌群単位を培養する事によりセルラーゼを生産する方法であり、前記の動物は土壌動物のダンゴムシの腸内共生菌群を用いてセルラーゼを生産する方法【選択図】なし


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