タイトル: | 公開特許公報(A)_インダンおよび/またはインデンの製造方法 |
出願番号: | 2011284091 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07C 5/333,C07C 13/465,C07C 5/48,C07B 61/00 |
柴田 高範 平島 裕之 相田 冬樹 JP 2013133293 公開特許公報(A) 20130708 2011284091 20111226 インダンおよび/またはインデンの製造方法 学校法人早稲田大学 899000068 JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 森田 順之 100103285 柴田 高範 平島 裕之 相田 冬樹 C07C 5/333 20060101AFI20130611BHJP C07C 13/465 20060101ALI20130611BHJP C07C 5/48 20060101ALI20130611BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130611BHJP JPC07C5/333C07C13/465C07C5/48C07B61/00 300 6 OL 7 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC12 4H006BA23 4H006BA25 4H006BA26 4H006BA55 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC19 4H006BC32 4H006BE30 4H039CA41 4H039CC10 本発明は脱水素反応を利用して、テトラヒドロインデンからインダンおよび/またはインデンを製造する方法に関する。 インデンは石炭の乾留によって生じる油状物質から、蒸留することで得られる化合物である。多くはインデンとクマロンを含む留分として回収し、インデン・クマロン樹脂として使用されている。高純度のインデンは、同じ原料を精密蒸留することで得られる。高純度インデンは主として光学樹脂の原料として使用されている。また一部は医薬品原料としても使用されている。またインダンも医薬品やその他有機合成の中間体として使用されている。 先に本出願人らは、インデンの製造方法を発明し、特許出願を行った(特許文献1、2)。これらの方法は、金属酸化物を触媒として、実質的に400℃以上の高温にテトラヒドロインデンを晒し、脱水素反応でインデンを得る方法である。特開2000−063298号公報特開2000−063299号公報 先に述べたようにインデンは石炭から得られる油状物質を精密蒸留することで得られるが、ベンゾニトリルなどの極性化合物が不純物としてインデンに存在している。インデンは有機金属化合物の配位子としても使用されるが、不純物の極性物質は中心金属へ配位する可能性があり、高度に精製する必要がある。 テトラヒドロインデンを脱水素して得られるインデンは、そのような極性物質を含まない。それゆえ先の出願にあるようにテトラヒドロインデンは、インデン合成における重要な原料となる。 しかしながら脱水素反応は強烈な吸熱反応であり、一般的には400℃以上の高温を要する。高温条件下では目的の脱水素反応のほかに、コークの堆積などがおきて触媒が劣化する。またインデンを合成した後の精製工程を簡略化するためにも、より高選択的な反応が求められている。 本発明者らは上記課題について鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至ったものである。 すなわち本発明は、周期表8族金属を担体に担持した触媒を用いてテトラヒドロインデンを脱水素することを特徴とするインダンおよび/またはインデンの製造方法に関する。 本発明により、高い選択性及び高い転化率をもって、テトラヒドロインデンの脱水素反応によりインダンおよび/またはインデンを製造することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明において、触媒としては周期表8族金属を担体に担持した触媒が用いられる。 周期表8族金属としては、なかでもルテニウム、パラジウムおよび白金が脱水素化能に優れるので好ましい。 周期表8族金属を担持する担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でもシリカ、カーボンブラックには酸点が存在しないので好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。 本発明において、周期表8族金属の担持量は、担体に対して0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30質量%である。 触媒の調製方法については特に限定されるものではなく、任意の方法で調製することができる。 本発明においては、周期表8族金属を担体に担持した触媒を用いて、テトラヒドロインデンの脱水素反応を行う。 テトラヒドロインデンはシクロペンタジエンとブタジエンとのディールス・アルダー反応で合成される。シクロペンタジエンの前駆体であるジシクロペンタジエンには不純物とイソプレンやピペリレンが含まれており、このイソプレンやピペリレンがシクロペンタジエンに対してブタジエンと同様の反応性を示すことから、テトラヒドロインデン中には通常イソプレンやピペリレンとシクロペンタジエンとの付加体を不純物として含んでいる。 これらの不純物に本反応を適応すると、メチルインダンおよび/またはメチルインデンが得られる。このようなメチル化体がインダンおよびインデンに含まれていても支障がない場合には、原料であるテトラヒドロインデンを精製する必要はない。純粋なインダンおよび/またはインデンを得るにはテトラヒドロインデンを精製しておくことが好ましく、純度は95%以上とすることが好ましい。精製方法については全く任意であるが、蒸留が最も好ましく採用される。特に蒸留条件に制約はないが、逆ディールス・アルダー反応や重合反応を抑制するため、テトラヒドロインデンの蒸留時にはボトム温度を300℃以下とすることが好ましい。 本発明における脱水素反応は、反応温度が0〜200℃であることが好ましく、0〜150℃であることがより好ましい。200℃を超えると生成したインデンの重質化を併発するので好ましくない。特に酸素濃度を高くする場合には、重質化する傾向が高くなる。 本発明において、反応圧力は特に限定されるものではなく任意である。気相の雰囲気としては窒素、アルゴンなどの不活性ガスのほか、酸素、空気などの酸化性ガスも使用することができる。もちろんこれらの混合物も有効に使用できる。本反応は常圧において進行する。特に空気、酸素を用いる場合でも、常圧で反応は進行する。当然のことながら圧力をかけることにより、反応をよりスムースに進行させることができる。圧力をかける場合、10MPa以下であることが好ましく、それ以上の圧力では、過大な肉厚の容器を使用する必要があり、工業的なコストの点から好ましくはない。 本発明において、反応時間は通常0.1〜48時間であり、好ましくは0.1〜24時間である。反応時間が0.1時間より短いと所望の脱水素反応は進行しない。また反応時間が48時間を超えると副反応が併発するので好ましくない。 本発明における脱水素反応には、溶媒を使用することができる。特に炭化水素系溶媒が好ましく使用でき、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンに代表される芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどに代表される炭素数5〜20の直鎖状または分岐状炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、テトラリン、デカリンなどに代表されるナフテン系化合物が使用できる。その他としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなど)、アミド(ジメチルホルムアミド、ジメチル酢酸アミド、N−メチルピロリドンなど)などの溶媒も本発明の反応を阻害しない限りにおいて使用することができる。 また本発明においては、種々の炭素―炭素二重結合を有する化合物を共存させて、インダンおよびインデンを効率的に得ることも可能である。そのような化合物として2−ノルボルネン、ターシャリーブチルエチレンなどが挙げられる。結果的にこれらの化合物はノルボルナン、ジメチルヘキサン、すなわち水素化物となって、テトラヒドロインデンの脱水素反応を助長することができる。 テトラヒドロインデン自体も炭素―炭素二重結合を有する化合物であるから、そのような水素受容体としての作用もあり、オクタヒドロインデン(ビシクロ[4.3.0]ノナン)が生成する。 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、実施例で得られた化合物の収率は内部標準を用いたガスクロマトグラフィーで定量した。ガスクロマトグラフとして、島津製作所(株)製GC−17Aを用いた。[実施例1] 30mlシュレンク管中に、カーボンブラックに10質量%のPdを担持した触媒(以下、10質量%のPd/Cのように表記する。)113.2mgとテトラヒドロインデン(純度99.7%)120mg(1mmol)を混合キシレン(1.5ml)で分散した。スターラーチップを入れ、シュレンク管に空気の風船をつけて、電気ヒーターで120℃にて24時間加熱撹拌した。反応後は混合キシレン2.5mlでさらに希釈した。混合液はマイショリディスクH−13−5(東ソー(株)製、HPLC用ディスポーザブルフィルター)にて触媒をろ過した。ろ過された反応液を秤量し、内部標準として1−メチルナフタレンを加え、ガスクロマトグラフィーで定量分析した。なおガスクロマトグラフィーで検出されない重質物は、以下の式にて収率を算出した。 重質物収率=(A−B)/A A:仕込みテトラヒドロインデン(g) B:ガスクロで検出した成分(g) テトラヒドロインデン転化率は100%で、インダン収率は88%、オクタヒドロインデン収率は12%、重質分は得られなかった。[実施例2] 30mlシュレンク管中に、10質量%のPd/C(113.2mg)とテトラヒドロインデン(純度99.7%、120mg、1mmol)、2−ノルボルネン(5mmol)をエタノール(1.5ml)で分散した。スターラーチップを入れ、シュレンク管にアルゴンの風船をつけて、オイルバスで80℃にて24時間加熱撹拌した。反応後はエタノール2.5mlでさらに希釈した。混合液はマイショリディスクH−13−5(東ソー(株)製、HPLC用ディスポーザブルフィルター)にて触媒をろ過した。ろ過された反応液を秤量し、内部標準として1−メチルナフタレンを加え、ガスクロマトグラフィーで定量分析した。なおガスクロマトグラフィーで検出されない重質物は、以下の式にて収率を算出した。 重質物収率=(A−B)/A A:仕込みテトラヒドロインデン(g) B:ガスクロで検出した成分(g) テトラヒドロインデン転化率は98%で、インダン収率は26%、インデン収率は46%、重質分は24%であった。[実施例3] 30mlシュレンク管中に、10質量%のPd/C(113.2mg)とテトラヒドロインデン(純度99.7%、120mg、1mmol)をエタノール(1.5ml)で分散した。スターラーチップを入れ、シュレンク管に空気の風船をつけて、23℃にて0.5時間撹拌した。反応後はエタノール2.5mlでさらに希釈した。混合液はマイショリディスクH−13−5(東ソー(株)製、HPLC用ディスポーザブルフィルター)にて触媒をろ過した。ろ過された反応液を秤量し、内部標準として1−メチルナフタレンを加え、ガスクロマトグラフィーで定量分析した。なおガスクロマトグラフィーで検出されない重質物は、以下の式にて収率を算出した。 重質物収率=(A−B)/A A:仕込みテトラヒドロインデン(g) B:ガスクロで検出した成分(g) テトラヒドロインデン転化率は92%で、インダン収率は27%、インデン収率は4%、重質分は13%であった。[実施例4] オイルバスを使用して、反応温度を60℃にすること以外は実施例3と同様に行った。 テトラヒドロインデン転化率は100%で、インダン収率は64%、インデン収率は1%、オクタヒドロインデン収率は14%、重質分は1%であった。[実施例5] 反応温度を80℃にすること以外は実施例4と同様に行った。 テトラヒドロインデン転化率は100%で、インダン収率は72%、インデン収率は1%、オクタヒドロインデン収率は20%、重質分は得られなかった。[実施例6] 30mlシュレンク管中に、0.5質量%のPt/C(113.2mg)とテトラヒドロインデン(純度99.7%、120mg、1mmol)を混合キシレン(1.5ml)で分散した。スターラーチップを入れ、シュレンク管に酸素の風船をつけて、110℃にて24時間撹拌した。 ガスクロマトグラム質量分析で生成物を定性分析した。テトラヒドロインデンは残存しておらず、インデンが検出された。[実施例7] 30mlシュレンク管中に、0.5質量%のRu/C(113.2mg)とテトラヒドロインデン(純度99.7%、120mg、1mmol)を混合キシレン(1.5ml)で分散した。スターラーチップを入れ、シュレンク管に酸素の風船をつけて、110℃にて24時間撹拌した。 ガスクロマトグラム質量分析で生成物を定性分析した。テトラヒドロインデンは残存しておらず、インデンが検出された。[比較例1] Pd/Cを用いないこと以外は実施例3と同様に行った。定量的にテトラヒドロインデンが回収された。[比較例2] 50mlオートクレーブ中に、10質量%のPd/C(113.2mg)をテトラヒドロインデン(純度99.7%、1ml)で分散した。スターラーチップを入れ、オートクレーブの気相部位を空気で置換して、オイルバスで250℃にて24時間加熱撹拌した。 反応後オートクレーブを開放したところ、ガスクロマトグラフィーにて分析できない重質物となっていた。[比較例3] 30mlシュレンク管中に、10質量%のPd/C(113.2mg)とテトラヒドロインデン(純度99.7%、120mg、1mmol)を混合キシレン(1.5ml)で分散した。スターラーチップを入れ、シュレンク管に酸素の風船をつけて、電気ヒーターで120℃にて60時間加熱撹拌した。 反応後はガスクロマトグラフィーで分析できない重質物となっていた。 周期表8族金属を担体に担持した触媒を用いてテトラヒドロインデンを脱水素することを特徴とするインダンおよび/またはインデンの製造方法。 周期表8族金属がルテニウム、パラジウムまたは白金であることを特徴とする請求項1に記載のインダンおよび/またはインデンを製造方法。 担体がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインダンおよび/またはインデンの製造方法。 周期表8族金属の担持量が、担体に対して0.01〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインダンおよび/またはインデンの製造方法。 酸素分子を含む雰囲気下で脱水素反応を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインダンおよび/またはインデンの製造方法。 反応温度が0〜200℃、反応時間が0.1〜48時間、反応圧力が常圧〜10MPaの条件下に脱水素反応が行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインダンおよび/またはインデンの製造方法。 【課題】テトラヒドロインデンの脱水素により、インデンおよび/またはインダンを効率良く製造する方法を提供する。【解決手段】周期表8族金属を担体に担持した触媒を用いてテトラヒドロインデンを脱水素することにより、高い選択性及び高い転化率でインダンおよび/またはインデンを製造することができる。【選択図】なし