タイトル: | 公開特許公報(A)_テレフタル酸の製造方法 |
出願番号: | 2011281442 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12P 7/44,C07B 61/00 |
荒木 通啓 宮奥 康平 谷口 岳志 依田 尚文 湯村 秀一 JP 2013128460 公開特許公報(A) 20130704 2011281442 20111222 テレフタル酸の製造方法 三菱化学株式会社 000005968 川口 嘉之 100100549 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 下田 俊明 100151596 荒木 通啓 宮奥 康平 谷口 岳志 依田 尚文 湯村 秀一 C12P 7/44 20060101AFI20130607BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130607BHJP JPC12P7/44C07B61/00 Z 8 12 OL 41 4B064 4H006 4B064AD29 4B064CA21 4B064CB11 4B064DA01 4B064DA16 4H006AA02 本発明はテレフタル酸の製造方法に関する。本発明はまた、p−トルイル酸の製造方法に関する。 一般にテレフタル酸は、石油の2次製品であるパラキシレンと酢酸やマンガン塩、コバルト塩などを触媒に酸化させて製造されているが、石油枯渇化の懸念や価格の上昇圧力、環境問題に対する消費者の関心などから、バイオマス由来によるテレフタル酸の製造法の研究が行われている。 例えば、米国Draths社は大腸菌を遺伝子工学的に処理してグルコースなどの植物由来バイオマスからムコン酸を製造し、化学的に、同じくバイオ法で生産されたエチレンとディールスアルダー法により縮合し、シクロヘキセン1,4−ジカルボン酸を合成し、続いてベンゼン環の脱水素反応を行うことにより、テレフタル酸を製造する方法を検討している(特許文献1)。 また、Gevo社は、バイオマス由来のイソブタノールを化学的に変換させることでバイオマス由来のパラキシレンを製造する検討を実施している(特許文献2)。パラキシレンは、既存の方法によりテレフタル酸へと変換することができる。 また、マサチューセッツ大学及びAnellotech社は、バイオマスを無酸素状態で加熱することによって、パラキシレンを含む芳香族化合物をバイオマスから生産することができることを示し、これから既存の方法により、バイオマス由来のテレフタル酸を製造する方法を開発している(特許文献3)。 さらに、天然のテルペン類であるリモネンを化学的にパラシメン(p−cymene)に変換し、さらに2段階の酸化反応によってテレフタル酸を合成できることも知られている(特許文献4)。国際公開第2010/148081号US20110087000US20090227823US20100168461 本発明は、新規なテレフタル酸の合成方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、出発化合物から目的化合物までの新規の化合物の合成経路を選択するために、化合物の化学構造を数値に変換する変換部と、前記化合物のペアを作成し、前記化合物のペアの一方の化合物についての前記数値から他方の化合物についての前記数値を減算することにより差分値を算出する算出部と、前記化合物のペアに関する反応が既知である前記化合物ペアの前記差分値と、前記化合物のペアに関する反応が未知である前記化合物ペアの前記差分値とを比較し、前記差分値が一致する前記化合物ペアの未知反応を仮想反応として決定する決定部と、前記化合物を示すノードと、前記既知反応及び前記仮想反応のそれぞれを示すエッジと、によって前記化合物の合成経路を作成する作成部と、出発化合物から目的化合物までの合成経路を、作成された前記化合物の合成経路から選択する選択部と、を備える合成経路作成装置を見出し、特許出願を行った(特願2010−281794号および特願2011−179573号)。 そして、今回、この合成経路作成装置を用い、テレフタル酸の合成経路の探索を行ったところ、新たに3つの合成経路を見出し、本発明を完成させた。 本発明は、以下を提供する。[1]フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する工程、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する工程、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。[2]テレフタル酸生産能を有し、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する酵素、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する酵素、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を炭素源を含む培地中で培養してテレフタル酸を培地または菌体内に蓄積させ、テレフタル酸を培地または菌体内から回収することを特徴とする、テレフタル酸の製造方法。[3]フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する工程、マンデル酸を安息香酸に変換する工程、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。[4]テレフタル酸生産能を有し、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する酵素、マンデル酸を安息香酸に変換する酵素、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を炭素源を含む培地中で培養してテレフタル酸を培地または菌体内に蓄積させ、テレフタル酸を培地または菌体内から回収することを特徴とする、テレフタル酸の製造方法。[5]フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する工程、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する工程、フェニル酢酸をトルエンに変換する工程、トルエンをp−トルイル酸に変換する工程、およびp−トルイル酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。[6]p−トルイル酸生産能を有し、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を、炭素源を含む培地中で培養してp−トルイル酸を製造し、得られたp−トルイル酸をテレフタル酸に変換することを特徴とする、テレフタル酸の製造方法。[7]フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する工程、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する工程、フェニル酢酸をトルエンに変換する工程、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する工程を含む、p−トルイル酸の製造方法。[8]p−トルイル酸生産能を有し、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を、炭素源を含む培地中で培養してp−トルイル酸を製造することを特徴とする、p−トルイル酸の製造方法。 これまで知られているバイオマス由来のテレフタル酸製造法は、例えばパラキシレンなどの中間産物までをバイオ法により生産し、後に化学合成法によりテレフタル酸へと変換するものであり、製造プロセスが複雑になるため、投入エネルギーやプラント建設コストが高くなる懸念がある。 本発明によれば、バイオマスからテレフタル酸もしくはp−トルイル酸を直接バイオ法によって製造することができ、製造プロセスの簡略化による製造コスト低減が期待できる。また、プロセスに関わる投入エネルギー低減化も期待できるため従来法に比べ大きな利点があるといえる。本発明方法によって得られたテレフタル酸は、PETなどのポリエステルの製造に好適に使用できる。合成経路作成装置1の構成図KEGGのデータベースに登録されている炭素(C)を有する化合物についてのatom typesをグループ化した場合の例を示す図KEGGのデータベースに登録されている化合物についてのatom typesをグループ化した場合の例を示す図化合物(3-Hydroxypropionate)の化学構造式に含まれている部分構造の個数及び部分構造の結合状態の個数をカウントした場合の例を示す図合成経路作成装置1の機能構成図仮想反応法による化合物合成経路の作成のフローを示す図グラフを図形によって表現した場合の例を示す図合成経路の情報を示す図最適化法による化合物合成経路の作成のフローを示す図化合物の合成経路の例を示す図合成経路の情報の出力例を示す図本発明で見出されたテレフタル酸の合成経路を示す図 以下、本発明について具体的に説明する。<テレフタル酸の製造方法〜1> 本発明のテレフタル酸の製造方法の第一の態様は、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する工程(工程1a)、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する工程(工程1b)、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程(工程1c)を含む。 工程1aは、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にフェニルアラニンを用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する酵素としては、フェニルアラニンアンモニアリアーゼが挙げられる。この酵素については、例えば、Biochemistry. 2007 Jan 30;46(4):1004-12.に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、例えば、 同文献に記載されたような方法で、Anabaena属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、Anabaena variabilis由来のフェニルアラニンアンモニアリアーゼをコードするGenBank受入番号: FW572332.1の塩基配列(配列番号1)が例示される。ただし、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、GenBank受入番号: FW572332.1の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程1bは、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にトランス桂皮酸を用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、トランス桂皮酸を安息香酸に変換するに変換する酵素としては、Enoyl-CoA hydratase(EC 4.2.1.17)、3-Hydroxyacyl-CoA dehydrogenase(EC 1.1.1.35)、および3-Ketoacyl-CoA thiolase(EC 2.3.1.16)の酵素群が挙げられる。大腸菌では、Enoyl-CoA hydratase、3-Hydroxyacyl-CoA dehydrogenase活性を有するタンパク質はfadB遺伝子に、3-Ketoacyl-CoA thiolase活性を有するタンパク質はfadA遺伝子にそれぞれコードされており、これらがオペロンを形成していることが知られている(DiRusso CC. J Bacteriol. 1990 Nov; 172(11):6459-68.)。これらの酵素については、例えば、同文献に記載の方法に従って活性を測定することができ、該活性を指標として、例えば、大腸菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。また、これらの酵素は、必要に応じて、トランス桂皮酸を安息香酸に変換しやすいように基質特異性を改変させてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、上記fadB遺伝子(配列番号3)およびfadA遺伝子(配列番号5)が例示される。ただし、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記fadBおよびfadA遺伝子の塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、fadBおよびfadA遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程1cは、安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質に安息香酸を用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素としては、ベンゼン環にカルボキシル基を付加する酵素が挙げられる。この酵素については、例えば、Environmental Microbiology (2010) 12(10), 2783-2796に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、Clostrida属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、表1に記載のAbcAおよびAbcD遺伝子が例示される(Microbiology (2010) 12(10), 2783-2796)。AbcD及びAbcA遺伝子はオペロンを形成し、コードする蛋白質はヘテロ複合体を形成して、酵素反応を行っていると考えられている。ただし、トルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、表1に記載の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、トルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程1a〜1cについては、各工程を各反応を触媒する酵素、または各反応を触媒酵素の活性を有する微生物を用いて別々に行ってもよいが、各反応を触媒する酵素全て、または各反応を触媒する全ての酵素の活性を有する微生物を用い、同一反応系で、出発物質であるフェニルアラニンからテレフタル酸への変換反応を行うことが好ましい。 すなわち、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する活性、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する活性、および安息香酸をテレフタル酸に変換する活性を有する微生物の菌体もしくはその処理物を、フェニルアラニンを含む反応液中に加え、通常20〜40℃で反応させることによりテレフタル酸を生成させることができる。必要に応じて、補酵素等を加えることが好ましい。 なお、微生物は微生物の処理物を用いてもよい。処理物としては、アセトン、トルエン等で処理した菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物等が挙げられる。また、常法により担体に固定化した菌体、該処理物、酵素等を用いることもできる。 また、テレフタル酸生産能を有し、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する酵素活性、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する酵素活性、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素活性を有する微生物を用い、グルコースなどの炭素源から発酵法によりテレフタル酸を製造することもできる。この場合、微生物の培養に用いる培地及び培養条件は、使用する微生物の種類に応じて適宜設定することができるが、炭素源、窒素源、無機塩及び必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができる。培養は、用いる微生物の生育に好適な条件で行われる。通常、培養温度10℃〜45℃で12〜96時間実施する。なお、「テレフタル酸生産能を有し」とは炭素源を含む培地中で培養したときに、該炭素源を資化して培地または菌体内にテレフタル酸を蓄積しうる能力を有することをいう。例えば、公知のフェニルアラニン生産菌において、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する酵素活性、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する酵素活性、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素活性を高めることで、テレフタル酸生産能を付与することができる。 炭素源は、上記微生物が資化しうる炭素源であれば特に限定されないが、例えば、ガラクトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、グリセロール、シュークロース、サッカロース、デンプン、セルロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられる。 窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。 無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が用いられる。 また、ビオチン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加してもよい。 テレフタル酸は当該技術分野において周知の方法、例えば、有機溶媒を用いる抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより、培地から回収および精製することができる。<テレフタル酸の製造方法〜2> 本発明のテレフタル酸の製造方法の第二の態様は、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する工程(工程2a)、マンデル酸を安息香酸に変換する工程(工程2b)、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程(工程2c)を含む。 工程2aは、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にフェニルピルビン酸を用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する酵素としては、hydroxymandelate synthase(HMS)(EC1.13.11.46)が挙げられる。この酵素については、例えば、J. Am. Chem. Soc. 2000,122, 5389-5390に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、Amycolatopsis属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、Amycolatopsis orientalis 由来のhydroxymandelate synthaseをコードするGenBank受入番号AJ223998.1:14957..16030の塩基配列(配列番号11)が例示される。ただし、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、GenBank受入番号AJ223998.1の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。なお、必要に応じて、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換しやすいように蛋白工学的手法などを用いて基質特異性を改変してもよい。また、hydroxymandelate synthaseと立体構造がよく類似している4-Hydroxyphenylpyruvate dioxygenase (EC 1.13.11.27)もフェニルピルビン酸をマンデル酸に変換するために使用することができる。 工程2bは、マンデル酸を安息香酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にマンデル酸を用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、マンデル酸を安息香酸に変換する酵素としては、マンデル酸経路の反応を触媒する酵素群が挙げられる。すなわち、(S)-Mandelate dehydrogenaseによって(S)-マンデル酸をベンゾイルギ酸に変換(EC 1.1.99.31)、Benzoylformate decarboxylaseによるベンゾイルギ酸の脱炭酸によってベンズアルデヒドとし(EC 4.1.1.7)、さらにBenzaldehyde dehydrogenaseによってベンズアルデヒドから安息香酸を得る(EC 1.2.1.28、1.2.1.7)。これらの酵素をコードする遺伝子は様々な微生物種で見出されており、いずれの微生物由来の酵素も利用することができる。例えばPseudomonas putidaでは、(S)-Mandelate dehydrogenaseはmdlB遺伝子(配列番号13)に、Benzoylformate decarboxylaseはmdlC遺伝子(配列番号15)に、NAD+-dependent benzaldehyde dehydrogenaseはmdlD遺伝子(配列番号17)にそれぞれコードされている(Tsou AY. et al Biochemistry. 1990 Oct 23; 29(42):9856-62.)。またPseudomonas stutzeriでは、Benzoylformate decarboxylaseがdpgB遺伝子に、NAD+/NADP+-dependent benzaldehyde dehydrogenaseがdpgC遺伝子にそれぞれコードされている(Saehuan C. et al Biochim Biophys Acta. 2007 Nov; 1770(11):1585-92.)。 また(S)-マンデル酸から安息香酸を生成する経路として、抗生物質のクロロビオシンやノボビオシンの生合成経路の反応も候補として挙げられる。Streptomyces roseochromogenes由来のCloRは、クロロビオシンのRing A部位となる3-dimethylallyl-4-hydroxybenzoate(3DMA-4HB)の合成に関与し、3-dimethylallyl-4-hydroxymandelic acid(3DMA-4HMA)を脱炭酸することで3DMA-4HBに変換することが報告されている(Pojer F. et al J Biol Chem. 2003 Aug 15; 278(33):30661-8.)。CloRが基質とする3DMA-4HMAには3位にジメチルアリル基、4位に水酸基が存在するという点で(S)-マンデル酸と異なるが、CloRが(S)-マンデル酸を基質として許容する可能性はある。また必要に応じてCloRの基質特異性を改変させることも有効な手段となり得る。またStreptomyces spheroides由来のNovRは、Streptomyces roseochromogenes由来のCloRと95%の相同性を有しており、ノボビオシンのRing A部位となる3DMA-4HBの合成に関与すると考えられている(Keller S. et al Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. 2006 Dec; 62(Pt 12):1564-70.)。NovRもCloRと同様、(S)-マンデル酸から安息香酸を生成させる酵素の候補となる。 これらの酵素については、例えば、上述した文献に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、Pseudomonas属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、上述したような公知酵素をコードする塩基配列が例示される。ただし、マンデル酸を安息香酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、上記塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、マンデル酸を安息香酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程2cは、安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質に安息香酸を用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素としては、ベンゼン環にカルボキシル基を付加する酵素が挙げられる。この酵素については、例えば、Environmental Microbiology (2010) 12(10), 2783-2796に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、Clostrida属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、表2に記載のAbcAおよびAbcD遺伝子が例示される。AbcD及びAbcA遺伝子はオペロンを形成し、コードする蛋白質はヘテロ複合体を形成して、酵素反応を行っていると考えられている。ただし、トルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、表に記載の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、トルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程2a〜2cについては、各反応を別々に行ってもよいが、各工程を各反応を触媒する酵素、または各反応を触媒酵素の活性を有する微生物を用いて別々に行ってもよいが、各反応を触媒する酵素全て、または各反応を触媒する全ての酵素の活性を有する微生物を用い、同一反応系で、出発物質であるフェニルピルビン酸からテレフタル酸への変換反応を行うことが好ましい。 すなわち、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する活性、マンデル酸を安息香酸に変換する活性、および安息香酸をテレフタル酸に変換する活性を有する微生物の菌体もしくはその処理物を、フェニルピルビン酸を含む反応液中に加え、通常20〜40℃で反応させることによりテレフタル酸を生成させることができる。必要に応じて、補酵素等を加えることが好ましい。 なお、微生物は微生物の処理物を用いてもよい。処理物としては、アセトン、トルエン等で処理した菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物等が挙げられる。また、常法により担体に固定化した菌体、該処理物、酵素等を用いることもできる。 また、テレフタル酸生産能を有し、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する酵素活性、マンデル酸を安息香酸に変換する酵素活性、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素活性を有する微生物を用い、グルコースなどの炭素源から発酵法によりテレフタル酸を製造することもできる。この場合、微生物の培養に用いる培地及び培養条件は、使用する微生物の種類に応じて適宜設定することができるが、炭素源、窒素源、無機塩及び必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができる。培養は、用いる微生物の生育に好適な条件で行われる。通常、培養温度10℃〜45℃で12〜96時間実施する。なお、「テレフタル酸生産能を有し」とは炭素源を含む培地中で培養したときに、該炭素源を資化して培地または菌体内にテレフタル酸を蓄積しうる能力を有することをいう。例えば、公知のフェニルピルビン酸生産菌において、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する酵素活性、マンデル酸を安息香酸に変換する酵素活性、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素活性を高めることで、テレフタル酸生産能を付与することができる。 なお、培地成分やテレフタル酸の回収および精製方法は上述したとおりである。<テレフタル酸の製造方法〜3> 本発明のテレフタル酸の製造方法の第三の態様は、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する工程(工程3a)、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する工程(工程3b)、フェニル酢酸をトルエンに変換する工程(工程3c)、トルエンをp−トルイル酸に変換する工程(工程3d)、およびp−トルイル酸をテレフタル酸に変換する工程(工程3e)を含む。 工程3aは、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にフェニルアラニンを用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素としては、L-Phenylalanine oxidase(EC1.13.12.9)が挙げられる。この酵素については、例えば、Suzuki H et al (2004) J Biochem 136(5):617-27に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、例えば、J. Biochem. (Tokyo) 92 (1982) 1235-1240.に記載されたような方法で、シュードモナス属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌(エシェリヒア属細菌)、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、Pseudomonas sp. P-501のL-Phenylalanine oxidaseをコードするGenBank受入番号: AB167410の塩基配列(配列番号19)が例示される。ただし、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。ここで、ストリンジェントな条件としては、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる(以下、同様)。また、GenBank受入番号: AB167410の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程3bは、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にフェニルアセトアミドを用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素としては、アミダーゼ(EC 3.5.1.4)が挙げられる。この酵素については、例えば、J Bacteriol 178(12):3501-7やJ. Microbiol. Biotechnol.18(3) 552-9に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、ロドコッカス属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、Rhodococcus erythropolis由来のamidaseをコードするGenBank受入番号: EU029986.1の塩基配列(配列番号21)が例示される。ただし、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、GenBank受入番号: EU029986.1の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。また、その他のRhodococcus 由来アミダーゼ遺伝子も複数報告があり、これらもフェニルアセトアミドをフェニル酢酸へ変換するために使用できる。 工程3cは、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にフェニル酢酸を用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素としては、4−ヒドロキシフェニル酢酸脱炭酸酵素(EC 4.1.1.83)が挙げられる。この酵素については、例えば、Eur. J. Biochem 268 1363-1372やBiochemistry 2006 45 9584-92に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、クロストリジウム属やトルモナス属、ラクトバチラス属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、表3に記載のGenBank受入番号の塩基配列が例示される。すなわち、Clostridium difficle のHpdBとHpdC蛋白質はヘテロ複合体を形成して脱炭酸酵素の本体となり、HpdA蛋白質は活性化因子として働くことが示されているのでこれらの遺伝子群を使用することができる。また、Clostridium scatologenesのCsdB, CsdC, CsdA遺伝子群も使用できる。加えてトルエン分解菌であるTolumonas auensisは全ゲノムが報告されており(Lucus S et al (2009) EMBL database Accession No CP001616)、Tolumonas auensis の遺伝子群も使用することができる。 ただし、フェニル酢酸をトルエンに変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、これら塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、表3に記載のGenBank受入番号の(塩基配列によってコードされる)アミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、フェニル酢酸をトルエンに変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 また4−ヒドロキシフェニル酢酸脱炭酸酵素(4.1.1.61)は4−ヒドロキシベンゼンを基質としてフェノールを生成するが、この酵素でもフェニル酢酸をトルエンに変換する反応が可能であると考えられ、いくつか遺伝子配列が報告されており表4に記載する。 他にも、オキサロ酢酸脱炭酸酵素(EC 4.1.1.3)はオキサロ酢酸をピルビン酸と二酸化炭素に切断する反応を行い、同時にナトリウムポンプを持ち、切断時に得られたエネルギーを濃度勾配に変換するのでフェニル酢酸をトルエンに変換する反応に使用できると考えられる。なお、この酵素はビオチンと亜鉛イオンを要求する。表5に例示する。 同様のナトリウムポンプ系を有している酵素で、マロン酸脱炭酸酵素(EC 4.1.1.61)もフェニル酢酸をトルエンに変換する反応を実施できる可能性が高い。表6に例示する。 工程3dは、トルエンをp−トルイル酸に変換する酵素、または該酵素の活性を有する微生物を用いて行う。反応は基質にトルエンを用いて、好ましくは20〜40℃で行い、必要に応じて補酵素等を加える。 ここで、トルエンをp−トルイル酸に変換する酵素としては、ベンゼン環にカルボキシル基を付加する酵素が挙げられる。この酵素については、例えば、Environmental Microbiology (2010) 12(10), 2783-2796に記載の方法に従って活性を測定することができる。そして該活性を指標として、同文献に記載されたような方法で、Clostrida属細菌などから精製することができる。なお、部分精製酵素や該酵素の活性を有する画分を使用してもよい。また、遺伝子組み換えによって作製される組換え酵素を用いてもよい。 該酵素の活性を有する微生物としては、天然に該酵素の活性を有する微生物でもよいし、遺伝子改変等により該酵素の活性を付与された微生物であってもよい。微生物の種類は特に限定されないが、大腸菌、コリネ型細菌、シュードモナス属細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、ラクトバチルス属細菌、サクシノバチルス属細菌、アナエロビオスピリラム属細菌、アクチノバチルス属細菌、糸状菌、酵母等が例示される。該酵素の活性が付与された微生物は、公知の配列をもとに該酵素をコードするDNAを取得し、これを上記微生物に、ベクターや相同組換えなどを利用した形質転換法等により導入することで得ることができる。また、宿主微生物の染色体上の該酵素をコードする遺伝子のプロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても該酵素の活性を有する微生物を得ることができる。 公知の配列としては特に制限されないが、表7に記載のAbcAおよびAbcD遺伝子が例示される。AbcD及びAbcA遺伝子はオペロンを形成し、コードする蛋白質はヘテロ複合体を形成して、酵素反応を行っていると考えられている。ただし、トルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有する蛋白質をコードする限り、上記塩基配列の相補配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAのようなホモログであってもよい。また、表に記載の塩基配列にコードされるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、トルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。 工程3eではp-トルイル酸からテレフタル酸への変換を行う。p-トルイル酸からテレフタル酸への変換は、例えば、米国特許第3,089,906号(1963)などに記載の方法が知られている。メタノール等を反応系に共存させることで得たp-トルイル酸エステルを合成し、これを酸化反応でジメチルテレフタル酸に変換させさらに高純度に精製した上でテレフタル酸を取得することができる。 工程3a〜3dについては、各工程を、各反応を触媒する酵素、または各反応を触媒する酵素の活性を有する微生物を用いて別々に行ってもよいが、各反応を触媒する酵素全て、または各反応を触媒する全ての酵素の活性を有する微生物を用い、同一反応系で、出発物質であるフェニルアラニンからp-トルイル酸への変換反応を行うことが好ましい。 すなわち、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する活性、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する活性、フェニル酢酸をトルエンに変換する活性、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する活性を有する微生物の菌体もしくはその処理物を、フェニルアラニンを含む反応液中に加え、通常20〜40℃で反応させることによりp-トルイル酸を生成させることができる。必要に応じて、補酵素等を加えることが好ましい。 なお、微生物は微生物の処理物を用いてもよい。処理物としては、アセトン、トルエン等で処理した菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物等が挙げられる。また、常法により担体に固定化した菌体、該処理物、酵素等を用いることもできる。 そして、得られたp-トルイル酸をテレフタル酸に変換することで、テレフタル酸を得ることができる。 一方、p−トルイル酸生産能を有し、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素活性、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素活性、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素活性、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する酵素活性を有する微生物を用い、グルコースなどの炭素源から発酵法によりp−トルイル酸を製造し、得られたp−トルイル酸をテレフタル酸に変換することによってテレフタル酸を製造することもできる。この場合、微生物の培養に用いる培地及び培養条件は、使用する微生物の種類に応じて適宜設定することができるが、炭素源、窒素源、無機塩及び必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができる。培養は、用いる微生物の生育に好適な条件で行われる。通常、培養温度10℃〜45℃で12〜96時間実施する。pHは微生物の生育および物質生産に好ましい範囲に適宜調節することが好ましい。なお、「p−トルイル酸生産能を有し」とは炭素源を含む培地中で培養したときに、該炭素源を資化して培地または菌体内にp−トルイル酸を蓄積しうる能力を有することをいう。例えば、公知のフェニルアラニン生産菌において、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素活性、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素活性、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素活性、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する酵素活性を高めることで、p−トルイル酸生産能を付与することができる。 なお、培地成分やテレフタル酸の精製方法は上述したとおりである。p−トルイル酸も当該技術分野において周知の方法、例えば、有機溶媒を用いる抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより、培地から回収および精製することができる。参考例 以下、本発明においてテレフタル酸の合成経路を見い出すために使用した合成経路作成装置について、図面に基づいて説明する。〈合成経路作成装置1の構成〉 図1は、合成経路作成装置1の構成図である。図1に示すように、合成経路作成装置1は、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、ハードディスク駆動装置4、可搬媒体駆動装置5、入力装置6、表示装置7及び外部インターフェース8を有している。 CPU2は、メモリ3に格納されているコンピュータプログラムを実行するとともに、メモリ3に格納されているデータを処理することにより、合成経路作成装置1を制御する。メモリ3は、CPU2で実行されるプログラムやCPU2で処理されるデータを記憶する。メモリ3は、揮発性のRAM(Random Access Memory)と、不揮発性のROM(Read Only Memory)とを含む。 ハードディスク駆動装置4は、メモリ3にロードされるプログラムを記憶する。また、ハードディスク駆動装置4は、CPU2で処理されるデータを記憶する。可搬媒体駆動装置5は、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、HD−DVD(High Definition−DVD)、ブルーレイディスク等の可搬媒体の駆動装置である。また、可搬媒体駆動装置5は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを有するカード媒体の入出力装置であってもよい。可搬媒体駆動装置5によって駆動される可搬媒体は、例えば、ハードディスク駆動装置4にインストールされるコンピュータプログラム、入力データ等を保持する。入力装置6は、例えば、キーボード、マウス、ポインティングデバイス、ワイヤレスリモコン等である。 表示装置7は、CPU2で処理されるデータやメモリ3に記憶されるデータを表示する。表示装置7は、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、CRT(Cathode Ray Tube)、エレクトロルミネッセンスパネル等である。 外部インターフェース8は、合成経路作成装置1を外部ネットワークに接続する。外部インターフェース8は、例えば、モデム、ターミナルアダプタ等の通信装置を備えており、合成経路作成装置1と外部ネットワーク上の機器との通信の制御を行う。外部ネットワークは、例えば、インターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)である。また、電話線、専用線、光通信網、通信衛生などの通信回線により外部ネットワークを構成してもよい。 合成経路作成装置1は、出発化合物から目的化合物までの化合物合成経路を作成する。化合物合成経路の作成は、仮想反応法及び最適化法の2種類がある。仮想反応法及び最適化法では、化合物を独自の表現方法によって定義する。〈化合物を独自の表現方法によって定義する手順の一例〉 まず、化合物を独自の表現方法によって定義する手順の一例について説明する。この手順においては、化合物の化学構造式に含まれている部分構造を所定の基準に従って分類し、化合物の化学構造式に含まれている部分構造を文字列として定義する。所定の基準は、化合物構造について厳密に定義した基準であってもよいし、化合物構造の類似性を考慮した基準であってもよい。また、所定の基準は、官能基別(alkane、alkeneなど)に基づいた基準であってもよい。例えば、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)のデータベースに登録されているatom typesに従って、化合物の化学構造式に含まれている部分構造を分類してもよい。また、例えば、KEGGのデータベースに登録されているatom typesをグループ化し、グループ化されたatom typesに従って、化合物の化学構造式に含まれている部分構造を分類してもよい。 KEGGのデータベースに登録されている炭素(C)を有する化合物についてのatom typesをグループ化した場合の例を図2に示す。図2では、化学反応類似性に基づいて、atom typesのグループ化が行われているが、官能基別(alkane、alkeneなど)に基づいて、atom typesのグループ化を行ってもよい。図2のC1a、C1b、C1c及びC1dは、KEGGのデータベースに登録されているatom typesに割り当てられた識別番号である。図2のC2aやC3a等についても同様である。図2のC01は、C1a、C1b、C1c及びC1dをグループ化したデータ(情報)に割り当てられた識別番号である。図2のC02やC03等についても同様である。 図3は、KEGGのデータベースに登録されている化合物についてのatom typesをグループ化した場合の例である。図3の識別番号Aのフィールドには、KEGGのデータベースに登録されている化合物についてのatom typesに割り当てられた識別番号が入力されている。図3の識別番号Bのフィールドには、KEGGのデータベースに登録されている化合物についてのatom typesをグループ化したデータに割り当てられた識別番号が入力されている。 図4は、化合物(3-Hydroxypropionate)の化学構造式に含まれている部分構造の個数及び部分構造の結合状態の個数をカウントした場合の例である。図4では、化合物(3-Hydroxypropionate)の化学構造式に含まれている部分構造の個数が、部分構造の種類毎にカウントされ、また、化合物(3-Hydroxypropionate)の化学構造式に含まれている部分構造の結合状態の個数が、部分構造の種類及び結合状態の種類毎にカウントされている。 図4の符号101で示すフィールドには、KEGGのデータベースに登録されている化合物についてのatom typesをグループ化したデータに割り当てられた識別番号が入力されている。図4の符号102で示すフィールドには、化合物の化学構造式に含まれている部分構造の個数を、部分構造の種類毎にカウントした後の数値が入力されている。また、図4の符号102で示すフィールドには、化合物の化学構造式に含まれている部分構造の結合状態の個数を、部分構造の種類及び結合状態の種類毎にカウントした後の数値が入力されている。なお、図4において、一重結合は−で表記され、二重結合は=で表記され、三重結合は%で表記されている。図4の符号102で示すフィールドに入力されている数値を連続的に並べたものを、UF(Universal Feature)と表記する。図4に示すように、化合物のUFは、化合物の化学構造式に含まれている部分構造の個数を示す原子情報と、化合物の化学構造式に含まれている部分構造の結合状態の個数を示す結合情報とから構成されている。〈合成経路作成装置1の機能構成〉 図5は、合成経路作成装置1の機能構成図である。図5に示す合成経路作成装置1は、ユーザの操作を受け付けて合成経路作成装置1を操作する操作部10と、化合物データベース11、既知反応データベース12、部分構造データベース13、共通構造データベース14、UFデータベース15、差分データベース16、17及び仮想反応データベース18を有する記憶部20と、各種の処理を実行する制御部21と、各種の情報を表示する表示部22とを備える。これらの各機能部は、CPU2、メモリ3等やCPU2で実行されるコンピュータプログラムによって実現される。〈化合物データベース11〉 化合物データベース11には、化合物の名称と、化合物の化学構造式のデータとが関連付けて格納される。例えば、KEGGのデータベースに登録されている化合物の名称及び化合物の化学構造式のデータを関連付けて、化合物データベース11に格納してもよい。また、化合物データベース11には、KEGGのデータベースに登録されている化合物に加えて目的化合物(非天然化合物を含む)の化合物の名称と、化合物の化学構造式のデータとが関連付けて格納されてもよい。また、例えば、PubChem、BRENDA、MetaCycなどの代謝物データベースに登録されている化合物の名称と、化合物の化学構造式のデータとを関連付けて、化合物データベース11に格納してもよい。これに限らず、種々の化学物質データベースに登録されている化合物の名称と、化合物の化学構造式のデータとを関連付けて、化合物データベース11に格納してもよい。 化合物データベース11に格納されている化合物について、化合物(例えば、化合物A)から化合物(例えば、化合物B)が合成されることが知られている化合物ペアにおける反応を、既知反応と表記する。既知反応であるか否かについては、ユーザが設定することが可能であるが、例えば、KEGGのデータベースに登録されている反応については、既知反応であるとしてもよい。 化合物データベース11に格納されている化合物について、化合物(例えば、化合物A)から化合物(例えば、化合物B)が合成されることが知られている化合物ペアを、既知化合物ペアと表記する。この時、化合物Aと化合物Bとの間に中間体である化合物A’が存在していてもよい。 化合物データベース11に格納されている化合物について、或る化合物(例えば、化合物C)から或る化合物(例えば、化合物D)が合成されることが知られていない化合物ペアにおける反応を、未知反応と表記する。化合物データベース11に格納されている化合物について、或る化合物(例えば、化合物C)から或る化合物(例えば、化合物D)が合成されることが知られていない化合物ペアを、未知化合物ペアと表記する。〈既知反応データベース12〉 既知反応データベース12には、既知化合物ペアにおける各化合物の名称と、既知化合物ペアにおける反応方向と、既知反応酵素とが、関連付けて格納される。既知反応酵素は、複数であってもよい。 例えば、KEGGのデータベースに登録されている化合物ペアにおける各化合物の名称と、化合物ペアの反応における反応方向と、化合物ペアにおける反応に用いられる酵素とを関連付けて、既知反応データベース12に格納してもよい。また、例えば、PubChem、BRENDA、MetaCycなどの代謝物データベースに登録されている化合物ペアにおける各化合物の名称と、化合物ペアにおける反応方向と、化合物ペアにおける反応に用いられる酵素とを関連付けて、既知反応データベース12に格納してもよい。また、大腸菌の代謝反応データベースに登録されている化合物ペアにおける各化合物の名称と、化合物ペアにおける反応方向と、化合物ペアにおける反応に用いられる酵素とを関連付けて、既知反応データベース12に格納してもよい。これに限らず、種々の化学物質データベースに登録されている化合物ペアにおける各化合物の名称と、化合物ペアにおける反応方向と、化合物ペアにおける反応に用いられる酵素とを関連付けて、既知反応データベース12に格納してもよい。〈部分構造データベース13〉 部分構造データベース13には、化合物の化学構造式の部分データと、化合物の化学構造式の部分データに割り当てられた識別番号とが格納される。化合物の化学構造式の部分データは、所定の基準に従い、化合物の化学構造式から一部分の化学構造を抽出することによって作成されたデータである。例えば、KEGGのデータベースに登録されているatom typesに基づいて、化合物データベース11に登録されている化合物の化学構造式から一部分の化学構造を抽出することによって、化合物の化学構造式の部分データを作成してもよい。化合物の化学構造式の部分データに割り当てられた識別番号を、構造番号と表記する。例えば、図2の例であれば、C1a、C1b、C1c及びC1dが、構造番号に相当する。〈共通構造データベース14〉 共通構造データベース14には、化合物の化学構造式の部分データをグループ化したデータと、グループ化したデータに割り当てられた識別番号とが格納される。化合物の化学構造式の部分データをグループ化したデータに割り当てられた識別番号を、共通構造番号と表記する。例えば、図2の例であれば、C01が共通構造番号に相当する。〈UFデータベース15〉 UFデータベース15には、化合物のUFが、化合物の名称と関連付けて格納される。〈化合物のUFの作成〉 制御部21は、化合物データベース11に格納されている化合物のUFを作成する。そして、制御部21は、作成した化合物のUFを、化合物の名称と関連付けてUFデータベース15に格納する。 なお、UFデータベース15に格納されている化合物のUF及び化合物の名称については、化合物のUFが同一であるが、化合物の名称が異なる場合がある。例えば、図2の例を用いて化合物A及び化合物Bが分類され、化合物Aについては、C1aが2個、化合物Bについては、C1aが1個、C1bが1個であったとする。C1a及びC1bは、グループ化されているので、化合物A及び化合物Bは、共にC01が2個あるとして、化合物のUFが作成される。そのため、化合物のUFが同一であるが、化合物の名称が異なる場合がある。この場合、UFデータベース15には、化合物のUFに対して、複数の化合物の名称が関連付けて格納されている。 上記では、制御部21は、共通構造データベース14を参照して、化合物のUFを作成している。すなわち、制御部21は、化合物の化学構造式の部分データをグループ化したデータと、共通構造番号とを参照して、化合物のUFを作成している。しかし、これに限定されず、制御部21は、部分構造データベース13を参照して、化合物のUFを作成してもよい。すなわち、制御部21は、化合物の化学構造式の部分データと、構造番号とを参照して、化合物のUFを作成してもよい。〈差分データベース16〉 差分データベース16には、化合物ペアのUFの差分と、化合物ペアにおける各化合物の名称とが、関連付けて格納される。例えば、化合物AのUFから化合物BのUFを減算した値が、化合物ペアのUFの差分である。なお、差分データベース16には、化合物ペアにおける各化合物の名称に代えて、化合物ペアにおける各化合物のUFを格納してもよい。〈差分データベース16に格納されるDFの作成〉 制御部21は、UFデータベース15に格納されている全ての化合物についてペアを作成し、作成した化合物ペアのUFの差分を算出する。化合物ペアのUFの差分を、DF(Difference Feature)と表記する。 制御部21は、UFデータベース15に格納されている全ての化合物ペアで反応が生じると仮定して、UFデータベース15に格納されている全ての化合物についてペアを作成する。例えば、UFデータベース15に化合物A、B及びCが格納されている場合、制御部21は、化合物Aと化合物Bとのペア、化合物Aと化合物Cとのペア、化合物Bと化合物Cとのペアを作成する。また、例えば、化合物Aと化合物BとのペアについてのDFを算出する場合、制御部21は、化合物AのUFから化合物BのUFを減算した値と、化合物BのUFから化合物AのUFを減算した値とを算出する。そして、制御部21は、DFと化合物ペアにおける各化合物の名称とを関連付けて差分データベース16に格納する。〈差分データベース17〉 差分データベース17には、既知化合物ペアのUFの差分と、既知化合物ペアにおける各化合物の名称と、既知反応酵素とが、関連付けて格納される。なお、差分データベース17には、既知化合物ペアにおける各化合物の名称に代えて、既知化合物ペアにおける各化合物のUFを格納してもよい。〈差分データベース17に格納されるDFの作成〉 制御部21は、UFデータベース15に格納されている化合物のうち既知化合物ペアのUFの差分を算出する。既知化合物ペアのUFの差分を、既知DFと表記する。例えば、化合物Aから化合物Bを合成する反応が既知反応である場合、制御部21は、化合物BのUFから化合物AのUFを減算することにより、既知DFを算出する。そして、制御部21は、既知DFと、既知化合物ペアにおける各化合物の名称と、既知反応酵素とを関連付けて差分データベース17に格納する。制御部21は、既知化合物ペアにおける各化合物の名称、既知反応酵素については、既知反応データベース12に格納されているデータを用いる。〈仮想反応法による化合物合成経路の作成〉 図6を参照して、仮想反応法による化合物合成経路の作成のフローを説明する。図6のフローは、操作部10を介してユーザから仮想反応法による化合物合成経路の作成の指示を受け付けることにより開始される。この際、操作部10を介してユーザから出発化合物及び目的化合物の指定を受け付けるようにしてもよい。 図6のS601の処理において、制御部21は、化合物データベース11に格納されている化合物のUFを作成する。すなわち、制御部21は、化合物データベース11に格納されている化合物の化学構造式に含まれている部分構造の個数を、部分構造の種類毎にカウントするとともに、化合物の化学構造式に含まれている部分構造の結合状態の個数を、部分構造の種類及び結合状態の種類毎にカウントすることにより、化合物の化学構造式を数値に変換する。また、図6のS601の処理において、制御部21は、作成したUFと、化合物の名称とを関連付けてUFデータベース15に格納する。図6のS601の処理を実行する制御部21が、変換部として機能する。 次に、図6のS602の処理において、制御部21は、UFデータベース15に格納されている全ての化合物についてペアを作成し、作成した化合物ペアのDFを算出する。制御部21は、算出したDFと、化合物ペアにおける各化合物の名称とを関連付けて差分データベース16に格納する。 また、図6のS602の処理において、制御部21は、UFデータベース15に格納されている化合物ペアのうち既知化合物ペアについての既知DFを算出する。制御部21は、算出した既知DFと、既知化合物ペアにおける各化合物の名称と、既知反応酵素とを関連付けて差分データベース17に格納する。図6のS602の処理を実行する制御部21が、算出部として機能する。 そして、図6のS603の処理において、制御部21は、差分データベース16に格納されているDFと、差分データベース17に格納されている既知DFとを比較する。 次いで、図6のS604の処理において、制御部21は、差分データベース16に格納されているDFのうち、差分データベース17に格納されている既知DFと一致するDFについての未知化合物ペアにおける未知反応を仮想反応として決定する。既知DFと一致するDFについての未知化合物ペアにおける未知反応は、起こり得ると予測される。なお、制御部21は、差分データベース16に格納されているDFのうち、差分データベース17に格納されている既知DFと一致するDFについての既知化合物ペアにおける既知反応については、仮想反応として決定しない。 また、図6のS604の処理において、制御部21は、差分データベース16に格納されているDFと差分データベース17に格納されている既知DFとが一致する場合、一致する既知DFと関連付けられている既知反応酵素を、仮想反応に用いられる酵素として決定する。制御部21は、既知DFと関連付けられている既知反応酵素が複数ある場合、複数の既知反応酵素を仮想反応に用いられる酵素として決定する。図6のS603及びS604の処理を実行する制御部21が、決定部として機能する。 次に、図6のS605の処理において、制御部21は、仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物の名称と、仮想反応に用いられる酵素とを関連付けて、仮想反応データベース18に格納する。 そして、図6のS606の処理において、制御部21は、既知反応データベース12及び仮想反応データベース18に基づいて、化合物の合成経路を作成する。この場合、制御部21は、既知化合物ペアの各化合物及び仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物を示すノード(頂点)と、既知反応及び仮想反応を示すエッジ(辺)とによって、化合物の合成経路を作成する。すなわち、制御部21は、既知化合物ペアの各化合物及び仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物をノード、既知反応及び仮想反応をエッジとして、全ての反応を含むグラフ(ネットワーク)を構築することにより、化合物の合成経路を作成する。制御部21は、既知化合物ペアの各化合物及び既知反応については、既知反応データベース12を参照し、仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物及び仮想反応については、仮想反応データベース18を参照する。図6のS606の処理を実行する制御部21が、作成部として機能する。 グラフは、形式的にノードの集合Vと、ノード同士を結ぶエッジの集合Eからなる順序対G=(V,E)として定義される。順序対Gは、グラフに含まれる化合物が、各反応を通してどのように隣接しているか(ネットワークを形成しているか)を表現するものである。グラフは、図形によって表現してもよいし、配列の各要素をノードとした配列処理によって表現してもよい。 グラフを図形によって表現した場合の例を図7に示す。図7では、既知化合物ペアの各化合物及び仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物が、ノード201−207によって示され、既知反応及び仮想反応が、エッジ301−307によって示されている。また、図7では、実線のエッジが既知反応を示しており、破線のエッジが仮想反応を示している。 次いで、図6のS607の処理において、制御部21は、出発化合物から目的化合物までの合成経路を、図6のS606の処理で作成された化合物の合成経路から探索する。制御部21は、所定数以下の反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を、図6のS606の処理で作成された化合物の合成経路から探索してもよい。制御部21は、深さ優先探索又は幅優先探索等により、出発化合物から目的化合物までの合成経路を、図6のS606の処理で作成された化合物の合成経路から探索してもよい。制御部21は、出発化合物又は原料化合物を開始点、目的化合物を終点とする方法(順方向探索法)、又は、目的化合物を開始点、出発化合物又は原料化合物を終点として経路探索を行う方法(逆方向探索)を実施してもよい。原料化合物は、目的化合物を合成する場合において原料となる化合物である。経路探索の目的に応じて、順方向探索法又は逆方向探索法の何れの方法を実施するかを決定してもよい。原料化合物の指定は、操作部10を介してユーザから受け付けることにより行ってもよい。 次に、図6のS608の処理において、制御部21は、出発化合物から目的化合物までの合成経路を、図6のS606の処理で作成された化合物の合成経路から選択する(手順1)。図6のS608の処理において、手順1に代えて、制御部21は、所定の数以下の反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を、図6のS606の処理で作成された化合物の合成経路から選択してもよい(手順2)。図6のS608の処理において、手順1に代えて、制御部21は、所定の数又は所定の範囲数の反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を、図6のS606の処理で作成された化合物の合成経路から選択してもよい(手順3)。図6のS608の処理を実行する制御部21が、選択部として機能する。 例えば、図7において、ノード201を原料化合物、ノード203を出発化合物、ノード205を目的化合物とする場合、ノード203、204、205と、エッジ303、304とから構成される合成経路、及び、ノード203、207、205と、エッジ306、307とから構成される合成経路が、出発化合物から目的化合物までの合成経路として選択される。ノード204及び207は、中間化合物である。 そして、図6のS609の処理において、制御部21は、図6のS608の処理で選択された出発化合物から目的化合物までの合成経路のうち、所定の数以下の仮想反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を抽出する(手順A)。図6のS609の処理において、手順Aに代えて、制御部21は、図6のS608の処理で選択された出発化合物から目的化合物までの合成経路のうち、所定の数又は所定の範囲数の仮想反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を抽出してもよい(手順B)。 次いで、図6のS610の処理において、制御部21は、図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路について、熱力学的な実行可能性を判定する。 熱力学的な実行可能性の判定は、図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路に含まれる各反応における自由エネルギー変化を、例えば、Biophys. J. Vol.92, No.7, pp1792-1805(2007)に記載された方法により計算し、計算結果に基づいて各反応の向きを決定することにより行われる。図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路に含まれる各反応が、正方向の反応及び可逆反応である場合、制御部21は、図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路について熱力学的な実行可能性があると判定する。また、図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路に含まれる各反応に逆反応が存在する場合、制御部21は、図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路について熱力学的な実行可能性がないと判定する。 次に、図6のS611の処理において、制御部21は、図6のS609の処理で抽出された出発化合物から目的化合物までの合成経路のうち、熱力学的に実行可能性のある合成経路を抽出する。図6のS610及びS611の処理を実行する制御部21が、熱力学判定部として機能する。 そして、図6のS612の処理において、制御部21は、図6のS611の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物のモル理論収率(%)を算出する。この場合、制御部21は、図6のS611の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)を算出してもよい。制御部21は、図6のS611の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)を算出する場合、既知反応データベース12を参照して、原料化合物から出発化合物までの合成経路を作成する。そして、制御部21は、原料化合物から出発化合物までの合成経路及び図6のS611の処理で抽出された合成経路を用いて、図6のS611の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)を算出する。原料化合物の指定は、操作部10を介してユーザから受け付けることにより行ってもよい。この場合、制御部21は、既知反応データベース12に格納されている大腸菌の代謝反応に関するデータを参照して、原料化合物から出発化合物までの合成経路を作成してもよい。モル理論収率の計算は、例えば、Biotechnology and Bioengineering, Volume 42, p.59-73 (1993)に記載の方法により実施することができる。 次いで、図6のS613の処理において、制御部21は、図6のS612の処理で算出されたモル理論収率(%)が閾値以上であるか(又は閾値より大きいか)否かを判定する。閾値は、例えば、0%や100%や200%等の任意の値を設定することが可能である。 次に、図6のS614の処理において、制御部21は、図6のS611の処理で抽出された合成経路のうち、図6のS612の処理で算出されたモル理論収率(%)が閾値以上である(又は閾値より大きい)目的化合物を合成する合成経路を抽出する。図6のS612、S613及びS614の処理を実行する制御部21が、モル理論収率判定部として機能する。 そして、図6のS615の処理において、制御部21は、図6のS614の処理で抽出された合成経路について、実用的な合成経路を抽出する。実用的な合成経路の抽出は、合成経路に含まれる各反応の炭素数の変化や炭素数の大小を評価すること、個別の仮想反応酵素の改変の難易度などを考慮して行ってもよい。 また、制御部21は、図6のS608の処理で選択された出発化合物から目的化合物までの合成経路における仮想反応を、事前に得られる情報等を参考にして、改変の実績のある酵素反応に予め限定するようにしてもよい。更に、制御部21は、図6のS608の処理で選択された出発化合物から目的化合物までの合成経路における仮想反応の実現有無を評価して、合成経路を絞り込むようにしてもよい。この場合、化合物の部分構造の比較を取り入れて、仮想反応の実現有無の評価を行ってもよい。 なお、制御部21は、図6のS609の処理を省略してもよいし、図6のS610及びS611の処理を省略してもよいし、図6のS612からS614の処理を省略してもよいし、図6のS615の処理を省略してもよい。また、制御部21は、図6のS609の処理と、図6のS610及びS611の処理と、図6のS612からS614の処理と、図6のS615の処理と、を実行する順番を変更してもよい。例えば、制御部21は、図6のS610及びS611の処理を実行した後に、図6のS609の処理を実行するようにしてもよい。 次に、図6のS616の処理において、制御部21は、図6のS615の処理で抽出された合成経路と、合成経路に含まれる出発化合物、中間化合物及び目的化合物の各名称と、合成経路における各反応で用いられる酵素とを、含む情報を出力する。この場合、制御部21は、図6のS615の処理で抽出された合成経路における各反応について、既知反応であるか又は仮想反応であるかを特定して、図6のS615の処理で抽出された合成経路の情報を出力する。制御部21は、合成経路における各反応で用いられる酵素として、酵素EC番号を用いてもよい。 例えば、制御部21は、図8に示すグラフ80及び表81によって、図6のS615の処理で抽出された合成経路の情報を出力してもよい。図8に示すように、出発化合物(化合物A)から中間化合物(化合物B)を合成する反応が既知反応であることが特定され、中間化合物(化合物B)から目的化合物(化合物C)を合成する反応が仮想反応であることが特定されている。また、図8では、既知反応に用いられる酵素として既知反応酵素A、Bが割り当てられ、仮想反応に用いられる酵素として既知反応酵素B、Cが割り当てられている。 制御部21は、図6のS614の処理で抽出された合成経路について、図6のS612の処理で算出されたモル理論収率(%)が大きい順に順位付けを行ってもよい。更に、制御部21は、図6のS616の処理で出力される情報に、図6のS612の処理で算出されたモル理論収率(%)が大きい順に順位付けを行った合成経路についての情報を追加してもよい。 制御部21は、図6のS616の処理で出力した情報を、データベース化して記憶部20に記憶するようにしてもよい。また、図6のS616の処理で出力した情報を、表示部22に表示するようにしてもよい。 制御部21が、化合物の化学構造を所定の基準に従ってUFに変換するとともに、化合物ペアの一方の化合物についてのUFから他方の化合物についてのUFを減算することによりDFを算出する。制御部21が、既知化合物ペアの既知DFと、未知化合物ペアのDFとを比較し、既知化合物ペアの既知DFと一致するDFについての未知化合物ペアの未知反応を仮想反応と決定する。制御部21が、既知化合物ペアの各化合物及び仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物を示すノードと、既知反応及び仮想反応を示すエッジとによって、化合物の合成経路を作成する。制御部21が、出発化合物から目的化合物までの合成経路を、既知化合物ペアの各化合物及び仮想反応に関しての化合物ペアの各化合物を示すノードと、既知反応及び仮想反応を示すエッジとから構成される化合物の合成経路から選択する。化合物を示すノード、既知反応及び仮想反応を示すエッジによって作成された化合物の合成経路から、出発化合物から目的化合物までの新規の化合物の合成経路を選択することが可能となる。 制御部21が、既知化合物ペアの既知DFと、未知化合物ペアのDFとを比較し、未知化合物ペアのDFと一致する既知化合物ペアの既知DFと関連付けられている既知反応酵素を、仮想反応に用いられる酵素として決定する。選択された出発化合物から目的化合物までの化合物の合成経路に含まれる仮想反応に既知反応酵素を用いることが可能となる。〈最適化法による化合物合成経路の作成〉 図9を参照して、最適化法による化合物合成経路の作成のフローを説明する。図9のフローは、操作部10を介してユーザから最適化法による化合物合成経路の作成の指示を受け付けることにより開始される。この際、操作部10を介してユーザから出発化合物及び目的化合物の指定を受け付けるようにしてもよい。 図9のS901の処理において、制御部21は、化合物データベース11に格納されている化合物のUFを作成する。すなわち、制御部21は、化合物データベース11に格納されている化合物の化学構造式に含まれている部分構造の個数を、部分構造の種類毎にカウントするとともに、化合物の化学構造式に含まれている部分構造の結合状態の個数を、部分構造の種類及び結合状態の種類毎にカウントすることにより、化合物の化学構造式を数値に変換する。また、図9のS901の処理において、制御部21は、作成したUFと、化合物の名称とを関連付けてUFデータベース15に格納する。図9のS901の処理を実行する制御部21が、変換部として機能する。 次に、図9のS902の処理において、制御部21は、UFデータベース15に格納されている化合物ペアのうち既知化合物ペアについての既知DFを算出する。制御部21は、算出した既知DFと、既知化合物ペアにおける各化合物の名称と、既知反応酵素とを関連付けて差分データベース17に格納する。図9のS902の処理を実行する制御部21が、第1算出部として機能する。 そして、図9のS903の処理において、制御部21は、目的化合物についてのUFから出発化合物についてのUFを減算することにより、出発化合物と目的化合物との化合物ペアのUFの差分を算出する。出発化合物と目的化合物との化合物ペアのUFの差分を、Difference Totalと表記する。出発化合物及び目的化合物の指定は、操作部10を介してユーザから受け付けることにより行われる。図9のS903の処理を実行する制御部21が、第2算出部として機能する。 次いで、図9のS904の処理において、制御部21は、整数計画法を用いて、複数の既知DFの合計値とDifference Totalの値とが一致するように、差分データベース17から複数の既知DFを抽出する。この場合、制御部21は、既知DFの個数を限定して、差分データベース17から複数の既知DFを抽出するようにしてもよい。例えば、制御部21は、差分データベース17から所定数以下又は所定数の既知DFを抽出するようにしてもよい。整数計画法を用いて、適切な条件を指定することにより、短い計算時間で幅広い組み合わせの中から探索を実施することができる。ただし、制御部21は、整数計画法に代えて、他の方法を用いてもよい。 制御部21は、図9のS904の処理を所定回数繰り返すことにより、複数の既知DFを含む組(グループ)を作成する。複数の既知DFを含む組を、DF組合せ群と表記する。制御部21は、図9のS904の処理を繰り返すごとに、差分データベース17から、複数の既知DFをランダムに抽出することにより、1種類又は複数種類のDF組合せ群を作成する。 図9のS904の処理において、制御部21は、差分データベース17から、複数の既知DFを抽出し、抽出した複数の既知DFを用いてDF組合せ群を作成するようにしてもよい。そして、制御部21は、図9のS904の処理を所定回数繰り返すことにより、1種類又は複数種類のDF組合せ群を作成するようにしてもよい。この場合、制御部21は、図9のS904の処理を繰り返すごとに、差分データベース17から、複数の既知DFをランダムに抽出するようにしてもよい。 次に、図9のS905の処理において、制御部21は、図9のS904の処理で作成されたDF組合せ群について、出発化合物及び目的化合物と、DF組合せ群に含まれる複数の既知DFとによって、化合物の合成経路を作成する。制御部21は、図9のS904の処理で複数種類のDF組合せ群が作成されている場合、各DF組合せ群について、化合物の合成経路を作成する。図9のS904及びS905の処理を実行する制御部21が、作成部として機能する。 出発化合物及び目的化合物と、DF組合せ群に含まれる複数の既知DFとからなる化合物の合成経路の例を、図10に示す。図10に示すように、DF組合せ群に含まれる複数の既知DFの組合せは6通りである。 そして、図9のS906の処理において、制御部21は、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFを算出する。制御部21は、中間化合物のUFを、以下の手順によって算出する。 例として、図10のDF組合せ群における“出発化合物,既知DF1,既知DF2,既知DF3,目的化合物”の化合物の合成経路について説明する。また、出発化合物から中間化合物Aが合成され、中間化合物Aから中間化合物Bが合成され、中間化合物Bから目的化合物が合成される場合について説明する。まず、制御部21は、目的化合物のUFから既知DF3を減算することにより、中間化合物BのUFを算出する。次に、制御部21は、中間化合物BのUFから既知DF2を減算することにより、中間化合物AのUFを算出する。このように、制御部21は、目的化合物のUFから各既知DFを逐次減算することにより、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFを算出する。 図9のS906の処理において、制御部21は、図9のS904の処理で作成されたDF組合せ群に含まれる複数の既知DFの全組合せについて、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFを算出する。制御部21は、図9のS904の処理で複数種類のDF組合せ群が作成されている場合、各DF組合せ群について、化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFを算出する。図9のS906の処理を実行する制御部21が、第3算出部として機能する。 次いで、図9のS907の処理において、制御部21は、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路について、出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立するか否かを判定する。制御部21は、図9のS905の処理で複数の化合物の合成経路が作成されている場合、各合成経路について、出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立するか否かを判定する。 出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立するか否かの判定の例を説明する。 〔判定例1〕図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFがマイナスの値を有する場合、制御部21は、その中間化合物を含む化合物の合成経路については、出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立しないと判定する。中間化合物のUFがマイナスの値を有する場合、その中間化合物は化合物として成立しないので、制御部21は、その中間化合物を含む化合物の合成経路については、出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立しないと判定する。 〔判定例2〕制御部21は、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFの原子情報と結合情報とを比較する。そして、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFの原子情報と結合情報との間で矛盾がある場合、制御部21は、その中間化合物を含む化合物の合成経路については、出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立しないと判定する。すなわち、中間化合物の化学構造式に含まれている部分構造の個数と、中間化合物の化学構造式に含まれている部分構造の結合状態の個数とが整合しない場合、制御部21は、その中間化合物を含む化合物の合成経路については、出発化合物から目的化合物までの化合物の合成経路として成立しないと判定する。 次に、図9のS908の処理において、制御部21は、図9のS905の処理で作成された化合物の合成経路のうち、図9のS907の処理で出発化合物から目的化合物までの合成経路として成立すると判定された化合物の合成経路を抽出する。 そして、図9のS909の処理において、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路について、化合物の合成経路に含まれる化合物の合成で用いられる酵素を決定する。この場合、制御部21は、差分データベース17を参照して、化合物の合成経路に含まれる化合物の合成で用いられる酵素を決定する。差分データベース17には、既知DFと既知反応酵素とが関連付けて格納されている。したがって、制御部21は、差分データベース17に格納されている既知DFと関連付けて格納されている既知反応酵素を、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる各既知DFに対して割り当てることにより、化合物の合成経路に含まれる化合物の合成で用いられる酵素を決定する。制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる各既知DFに対して、差分データベース17に格納されている複数の既知反応酵素を割り当てるようにしてもよい。 次いで、図9のS910の処理において、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路のそれぞれについて、化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFに基づいて、化合物の合成経路に含まれる中間化合物の名称を決定する。この場合、制御部21は、UFデータベース15を参照して、化合物の合成経路に含まれる中間化合物の名称を決定する。制御部21は、化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFと、UFデータベース15に格納されている化合物のUFとが一致する場合、UFデータベース15に格納されている化合物のUFと関連付けられている化合物の名称を、化合物の合成経路に含まれる中間化合物の名称として決定する。化合物のUFに対して複数の化合物の名称が関連付けられてUFデータベース15に格納されている場合、制御部21は、化合物の合成経路に含まれる中間化合物について、複数の名称を決定する。 制御部21は、化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFと、UFデータベース15に格納されている化合物のUFとが一致しない場合、化合物の合成経路に含まれる中間化合物の名称を決定せずに、その中間化合物に所定の番号を割り当てる。化合物の合成経路に含まれる中間化合物の名称を決定せずに、所定の番号が割り当てられた中間化合物を、仮想化合物と表記する。 例えば、化合物データベース11に、KEGGのデータベースに登録されている化合物の名称及び化合物の化学構造式のデータを関連付けて格納する場合がある。この場合、UFデータベース15には、KEGGのデータベースに登録されている化合物のUFのみが格納される。UFデータベース15に、KEGGのデータベースに登録されている化合物のUFのみが格納される場合、化合物の合成経路に含まれる中間化合物のUFと、UFデータベース15に格納されている化合物のUFとが一致しない可能性がある。 また、図9のS910の処理において、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路のそれぞれについて、化合物の合成経路に含まれる各反応が、既知反応であるか仮想反応であるかを決定する。化合物の合成経路に含まれる各反応が、既知反応であるか仮想反応であるかは、以下の処理によって決定される。 制御部21は、差分データベース17から、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる中間化合物の既知DFと関連付けられている既知化合物ペアを抽出する。制御部21は、抽出した既知化合物ペアの各化合物の名称と、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる化合物ペアの各化合物の名称とが一致する場合、一致する化合物ペアの反応を既知反応と決定する。制御部21は、抽出した既知化合物ペアの各化合物の名称と、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる化合物ペアの各化合物の名称とが一致しない場合、一致しない化合物ペアの反応を仮想反応と決定する。また、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に仮想化合物が含まれている場合、仮想化合物から他の化合物を合成する反応、及び、仮想化合物を合成する反応を仮想反応と決定する。 次に、図9のS911の処理において、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物までの合成経路について、熱力学的な実行可能性を判定する。 熱力学的な実行可能性の判定は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる各反応における自由エネルギー変化を計算し、計算結果に基づいて各反応の向きを決定することにより行われる。図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる各反応が、正方向の反応及び可逆反応である場合、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路について熱力学的な実行可能性があると判定する。また、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる各反応に逆反応が存在する場合、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路について熱力学的な実行可能性がないと判定する。 そして、図9のS912の処理において、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路のうち、熱力学的に実行可能性のある合成経路を抽出する。図9のS911及びS912の処理を実行する制御部21が、熱力学判定部として機能する。 図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に仮想化合物が含まれている場合、制御部21は、仮想化合物の名称を決定した後に、図9のS911及びS912の処理を実行する。制御部21は、外部ネットワーク上の機器が備えるデータベースを参照することにより仮想化合物の名称を決定してもよい。例えば、UFデータベース15に、KEGGのデータベースに登録されている化合物のUFのみが格納される場合、制御部21は、PubChem、BRENDA、MetaCycなどの代謝物データベースを参照することにより仮想化合物の名称を決定してもよい。また、制御部21は、表示部22を介して仮想化合物の名称をユーザに問い合わせ、操作部10を介してユーザから仮想化合物の名称の入力を受け付けることにより、仮想化合物の名称を決定してもよい。 熱力学的に実行可能性のある合成経路であるか否かは、化合物の化学構造を把握する必要がある。そのため、制御部21は、図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に含まれる化合物の名称を決定し、化合物の名称から化合物の化学構造を把握して、熱力学的に実行可能性のある合成経路の判定を行っている。制御部21は、化合物データベース11を参照することにより、化合物の化学構造を把握してもよい。制御部21は、外部ネットワーク上の機器が備えるデータベースを参照することにより、化合物の化学構造を把握してもよい。制御部21は、表示部22を介して化合物の化学構造をユーザに問い合わせ、操作部10を介してユーザから化合物の化学構造データの入力を受け付けることにより、化合物の化学構造を把握してもよい。 次いで、図9のS913の処理において、制御部21は、図9のS912の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物のモル理論収率(%)を算出する。この場合、制御部21は、図9のS912の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)を算出してもよい。制御部21は、図9のS912の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)を算出する場合、既知反応データベース12を参照して、原料化合物から出発化合物までの合成経路を作成する。そして、制御部21は、原料化合物から出発化合物までの合成経路及び図9のS912の処理で抽出された合成経路を用いて、図9のS911の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)を算出する。原料化合物の指定は、操作部10を介してユーザから受け付けることにより行ってもよい。この場合、制御部21は、既知反応データベース12に格納されている大腸菌の代謝反応に関するデータを参照して、原料化合物から出発化合物までの合成経路を作成してもよい。モル理論収率の計算は、例えば、Biotechnology and Bioengineering, Volume 42, p.59-73 (1993)に記載の方法により実施することができる。 次に、図9のS914の処理において、制御部21は、図9のS913の処理で算出されたモル理論収率(%)が閾値以上であるか(又は閾値より大きいか)否かを判定する。閾値は、例えば、0%や100%や200%等の任意の値を設定することが可能である。 そして、図9のS915の処理において、制御部21は、図9のS912の処理で抽出された合成経路のうち、図9のS913の処理で算出されたモル理論収率(%)が閾値以上である(又は閾値より大きい)目的化合物を合成する化合物の合成経路を抽出する。図9のS913、S914及びS915の処理を実行する制御部21が、モル理論収率判定部として機能する。図9のS908の処理で抽出された化合物の合成経路に仮想化合物が含まれている場合であっても、制御部21は、図9のS913、S914及びS915の処理を実行することは可能である。未知の仮想化合物を基質または生産物とする変換反応が合成経路に含まれる場合でも、仮想化合物のUFには仮想化合物を構成する部分構造(原子)の数情報が含まれるため、変換反応に伴う変化(分子数の増減)を把握することできる。 次いで、図9のS916の処理において、制御部21は、図9のS915の処理で抽出された合成経路について、実用的な合成経路を抽出する。実用的な合成経路の抽出は、合成経路に含まれる各反応の炭素数の変化や炭素数の大小を評価すること、個別の仮想反応酵素の改変の難易度などを考慮して行ってもよい。 なお、制御部21は、図9のS911及びS912の処理を省略してもよいし、図9のS913からS915の処理を省略してもよいし、図9のS916の処理を省略してもよい。また、制御部21は、図9のS911及びS912の処理と、図9のS913からS915の処理と、図9のS916の処理と、を実行する順番を変更してもよい。例えば、制御部21は、図9のS913からS915の処理を実行した後に、図9のS911及びS912の処理を実行するようにしてもよい。 次に、図9のS917の処理において、制御部21は、図9のS916の処理で抽出された合成経路と、合成経路に含まれる出発化合物、中間化合物及び目的化合物の各名称及び各UFと、合成経路における各反応で用いられる酵素と、を含む情報を出力する。この場合、制御部21は、図9のS916の処理で抽出された合成経路における各反応について、既知反応であるか又は仮想反応であるかを特定して、図9のS916の処理で抽出された合成経路の情報を出力する。制御部21は、合成経路における各反応で用いられる酵素として、酵素EC番号を用いてもよい。図9のS916の処理で抽出された合成経路に仮想化合物が含まれている場合、制御部21は、中間化合物の名称に代えて、中間化合物に割り当てられた所定の番号を、図9のS917の処理で出力される情報に追加する。 例えば、制御部21は、図11に示す表121及び122によって、図9のS916の処理で抽出された合成経路と、合成経路に含まれる出発化合物、中間化合物及び目的化合物の各名称及び各UFと、合成経路における各反応で用いられる酵素と、を出力してもよい。図11は、2つの合成経路が出力された場合の例である。 表121及び表122では、化合物A、B、C及びDが化合物の名称であり、VC00001が仮想化合物に割り当てられた所定の番号である。表121において、出発化合物から中間化合物Aを合成する反応、及び、中間化合物Aから中間化合物Bを合成する反応が既知反応であることが特定されている。また、表121において、中間化合物Bから目的化合物を合成する反応が仮想反応であることが特定されている。表122において、出発化合物から中間化合物Aを合成する反応が既知反応であることが特定されている。また、表122において、中間化合物Aから中間化合物Cを合成する反応、及び、中間化合物Cから目的化合物を合成する反応が仮想反応であることが特定されている。 表121及び122の既知反応酵素A及びBは、UF3によって特定される化合物とUF4によって特定される化合物とのペアの反応に用いられる酵素である。表121及び121の既知反応酵素C及びDは、UF5によって特定される化合物とUF6によって特定される化合物とのペアの反応に用いられる酵素である。表121及び122の既知DF1は、UF3からUF4を減算した値、及び、UF5からUF6を減算した値の2つのパターンがある。すなわち、UF3からUF4を減算した値と、UF5からUF6を減算した値とは、同一の値である。したがって、表121及び122では、出発化合物から中間化合物Aを合成する反応で用いられる酵素として、既知反応酵素A、B、C及びDが割り当てられている。 表121の既知反応酵素E及びFは、UF7によって特定される化合物とUF8によって特定される化合物とのペアにおける反応に用いられる酵素である。表121の既知DF2は、UF7からUF8を減算した値である。したがって、表121では、中間化合物Aから中間化合物Bを合成する反応で用いられる酵素として、既知反応酵素E及びFが割り当てられている。 表121の既知反応酵素G及びHは、UF9によって特定される化合物とUF10によって特定される化合物とのペアの反応に用いられる酵素である。既知反応酵素I及びJは、UF11によって特定される化合物とUF12によって特定される化合物とのペアの反応に用いられる酵素である。表121の既知DF3は、UF9からUF10を減算した値、及び、UF11からUF12を減算した値の2つのパターンがある。すなわち、UF9からUF10を減算した値と、UF11からUF12を減算した値とは、同一の値である。したがって、表121では、中間化合物Bから目的化合物を合成する反応で用いられる酵素として、既知反応酵素G、H、I及びJが割り当てられている。 表122の既知反応酵素K及びLは、UF15によって特定される化合物とUF16によって特定される化合物とのペアにおける反応に用いられる酵素である。表122の既知DF4は、UF15からUF16を減算した値である。したがって、表122では、中間化合物Aから中間化合物Cを合成する反応で用いられる酵素として、既知反応酵素K及びLが割り当てられている。 表122の既知反応酵素M及びNは、UF17によって特定される化合物とUF18によって特定される化合物とのペアの反応に用いられる酵素である。既知反応酵素O及びPは、UF19によって特定される化合物とUF20によって特定される化合物とのペアの反応に用いられる酵素である。表122の既知DF5は、UF17からUF18を減算した値、及び、UF19からUF20を減算した値の2つのパターンがある。すなわち、UF17からUF18を減算した値と、UF19からUF20を減算した値とは、同一の値である。したがって、表122では、中間化合物Cから目的化合物を合成する反応で用いられる酵素として、既知反応酵素M、N、O及びPが割り当てられている。 制御部21は、図9のS915の処理で抽出された合成経路について、図9のS913の処理で算出されたモル理論収率(%)が大きい順に順位付けを行ってもよい。更に、制御部21は、図9のS917の処理で出力される情報に、図9のS913の処理で算出されたモル理論収率(%)が大きい順に順位付けを行った合成経路についての情報を追加してもよい。 制御部21は、図9のS917の処理で出力した情報を、データベース化して記憶部20に記憶するようにしてもよい。また、制御部21は、図9のS917の処理で出力した情報を、表示部22に表示するようにしてもよい。 制御部21が、化合物の化学構造を所定の基準に従ってUFに変換するとともに、化合物ペアの一方の化合物についてのUFから他方の化合物についてのUFを減算することによりDF(第1差分値)を算出する。制御部21が、目的化合物についてのUFから出発化合物についてのUFを減算することにより出発化合物と目的化合物とのペアのDF(第2差分値)を算出する。制御部21が、出発化合物から目的化合物までの合成経路における第1差分値の合計値と、第2差分値とが一致するように化合物の合成経路を作成する。化合物の合成経路は、出発化合物及び目的化合物と、複数の第1差分値とから構成される。 出発化合物及び目的化合物と、複数の第1差分値とから構成される化合物の合成経路を作成することにより、出発化合物から目的化合物までの新規の化合物の合成経路を作成することが可能となる。作成された出発化合物から目的化合物までの合成経路に含まれる化合物は、既知化合物であってもよいし、仮想化合物(未知化合物)であってもよい。したがって、仮想化合物を含む合成経路を作成することが可能となる。作成された出発化合物から目的化合物までの合成経路に含まれる化合物ペアにおける反応は、既知反応であってもよいし、仮想反応(未知反応)であってもよい。したがって、仮想反応を含む合成経路を作成することができる。 作成された出発化合物から目的化合物までの合成経路に含まれる第1差分値に対して既知反応酵素が割り当てられている。出発化合物から目的化合物までの化合物の合成経路に含まれる仮想反応に既知反応酵素を用いることができる。 以下、実施例について説明する。ただし、本発明の実施形態は、以下の実施例に限定されない。1.合成経路作成プログラムを利用したテレフタル酸(TPA)合成経路の作成法 合成経路作成プログラム(上記参考例記載)を利用したTPA合成経路の作成の具体例を説明する。 KEGGのデータベースに登録されている化合物の名称及び化合物の化学構造式のデータと、KEGGのデータベースに登録されている化合物に加えて目的化合物(非天然化合物を含む)の化合物の名称及び化合物の化学構造式のデータとを使用して、13213個の化合物の名称及び化合物の化学構造式のデータを化合物データベース11に格納した。KEGGのデータベースの全化合物についてKEGG ATOM TYPEで表記されたKC F フォーマットデータをKEGGデータベースからダウンロードすることにより、化合物データベース11に化合物の名称及び化合物の化学構造式のデータを格納した。KEGGデータベースに登録されていない化合物は、KegDrawツールを使用してKCFフォーマットに変換した。 上記条件において、出発化合物としてフェニルアラニンを指定し、目的化合物としてTPAを指定して、化合物の合成経路の作成を開始した。制御部21が、図6のS901の処理を行うことにより、化合物のUFが作成され、UFデータベース15に格納された。制御部21が、図6のS902の処理を行うことにより、約1億7400万個の既知DFが算出され、差分データベース16に格納された。 制御部21が図6のS603及びS604の処理を行うことにより、約13万4000個の未知反応が仮想反応として決定され、制御部21により図6のS605の処理が行われた。制御部21が、図6のS606の処理を行うことにより、既知反応および仮想反応を含むグラフ(ネットワーク)が作成された。 制御部21が図6のS607の処理を行うことにより、出発化合物を開始点、目的化合物を終点とする順方向探索法により、作成された合成経路の探索が行われた。 4以下の反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を選択するという条件下で、制御部21が図6のS608の処理を行うことにより、4以下の反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路が選択された。3以下の仮想反応ステップを含む出発化合物から目的化合物までの合成経路を抽出するという条件下で、制御部21が図6のS609の処理を行うことにより、7847個の化合物の合成経路が、出発化合物から目的化合物までの合成経路として抽出された。 制御部21が図6のS610及びS611の処理を行うことにより、7847個の化合物の合成経路のうち196個の化合物の合成経路が、熱力学的に実行可能性のある合成経路として抽出された。原料化合物としてグルコースが指定され、制御部21が図6のS612の処理を行うことにより、原料化合物から出発化合物までの合成経路が作成された。この場合、制御部21は、既知反応データベース12に格納されている大腸菌の代謝反応に関するデータを参照する。そして、制御部21が図6のS612の処理を行うことにより、図6のS611の処理で抽出された合成経路によって合成される目的化合物について、原料化合物からのモル理論収率(%)が算出された。原料化合物としてグルコースが指定され、原料化合物からのモル理論収率(%)が0%以上である目的化合物を合成する化合物の合成経路を抽出するという条件下で、制御部21が図6のS613、S614および、S615の処理を行うことにより、2個の化合物の合成経路が実用的な合成経路として抽出された(図12)。2.合成経路作成プログラムを利用したp−トルイル酸合成経路の作成法 目的化合物をp−トルイル酸と指定すること以外は上記実施例と同様の操作により、p−トルイル酸の合成経路の探索を実施した。制御部21が図6のS609の処理を行うことにより、4944個の化合物の合成経路が、出発化合物から目的化合物までの合成経路として抽出された。制御部21が図6のS610及びS611の処理を行うことにより、4944個の化合物の合成経路のうち493個の化合物の合成経路が、熱力学的に実行可能性のある合成経路として抽出された。さらに、制御部21が図6のS613、S614および、S615の処理を行うことにより、1個の化合物の合成経路が実用的な合成経路として抽出された(図12)。3.テレフタル酸をバイオ法で合成する微生物を作成する具体例1(R7−R3−R4) テレフタル酸を生産する能力を有する大腸菌株は一般的な分子生物学的手法(Ausubel et al, Current Protocol in Molecular Biology (2003); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition (2001) など)を用いることにより、次の手順で作成することができる。 Anabaena variabilis由来PAL遺伝子(GenBank受入番号FW572332.1)とClostrida bacterium由来AbcDAオペロン(GenBank受入番号: GU357991.1 GU357992.1 )を連結した上で、この連結遺伝子を大腸菌プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)のlacプロモーター下流側に組み込んだプラスミドpPAL−AbcDAを構築する。さらに、このプラスミドDNAで大腸菌JM109株を形質転換することによりPALとAbcDAを保持する組み換え大腸菌株を作製し、この大腸菌株をJM109/pPAL−AbcDAと命名する。R3のベータ酸化反応は大腸菌が保有する一連の酵素群(fadBA)により実施される。 JM109/pPAL−AbcDAは当業者に周知の方法(日本生物工学会編,生物工学実験書(2002); Vogel H. et al, Fermentation and Biochemical Engineering Handbook, 2nd Ed.(2007) など)により培養することができる。例えば、20g/Lのグルコース、50μg/mlアンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加した最小合成培地100mlに大腸菌JM109/pPAL−AbcDAを播種し、フラスコを用いることで、37℃で24時間以上培養することができる。ジャーファーメンターを使用して培養を実施する際は、基質の供給速度、攪拌回転数、通気量、pHなどを適正な範囲で制御することができる。必要に応じて、嫌気条件、微好気条件、好気条件を選択することができる。また、回分培養、半回分培養、連続培養などの形態を自由に選択することができる。 培養液中のTPAの濃度は、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS)、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC−MS)などにより測定することができる。 また、PALおよびAbcDA遺伝子が発現していることの確認は、ノーザンブロット法、リアルタイムPCR法、免疫ブロット法などの当業者に周知の方法により調べることができる。 一般的な分子生物学的手法(Ausubel et al, Current Protocol in Molecular Biology (2003); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition (2001) など)により、大腸菌株JM109/pPAL−AbcDAは改良することができ、TPAの生産性を改善することができる。例えば、TPA生産経路の律速反応となっている酵素に関して、遺伝子コピー数を増やすこと、コドン最適化、または酵素活性部位近辺のアミノ酸置換により酵素活性を増加させ、TPAの生産性を改善することができる。また、副生成物を生産する反応を触媒する酵素の遺伝子を破壊することなどでTPAの生産性を改善することもできる。また、NTGや紫外線による変異処理を行いTPA生産性が向上した菌体を選抜することを繰り返し行う方法を利用することもできる。4.テレフタル酸をバイオ法で合成する微生物を作成する具体例2(R5−R6−R4) テレフタル酸(以下TPA)を生産する能力を有する大腸菌株は一般的な分子生物学的手法(Ausubel et al, Current Protocol in Molecular Biology (2003); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition (2001) など)を用いることにより、次の手順で作成することができる。 Amycolatopsis orientalis由来HMS遺伝子(GenBank受入番号AJ223998.1)、Pseudomonas putida由来mdlBCD遺伝子(GenBank受入番号: AY143338.1)、Clostrida bacterium由来AbcDA遺伝子(GenBank受入番号: GU357991.1 GU357992.1 )を連結した上で、この連結遺伝子を大腸菌プラスミドベクターpHSG299(タカラバイオ社製)のlacプロモーター下流側に組み込んだプラスミドpHMS−mdlBCD−AbcDAを構築する。3種類のDNA配列を1つのベクターに組み込むことが困難な場合には、pUC系のプラスミドと和合性をもつプラスミド、例えばpMV119にうち1つのDNA断片を導入してもよい。例えば、AbcDA遺伝子のみpMV119に導入してpMV−AbcDAを構築、残りのHMS遺伝子、mdlBCD遺伝子をpUC19に導入したpHMS−mdlBCDをそれぞれ構築することも可能である。さらに、作製したプラスミドDNAで大腸菌JM109株を形質転換することによりHMS、mdlBCD、AbcDAを保持する組換え大腸菌株を作製し、この大腸菌株をJM109/pHMS−mdlBCD−AbcDAと命名する。 JM109/pHMS−mdlBCD−AbcDAは当業者に周知の方法(日本生物工学会編,生物工学実験書(2002); Vogel H. et al, Fermentation and Biochemical Engineering Handbook, 2nd Ed.(2007) など)により培養することができる。例えば、20g/Lのグルコース、50μg/mlカナマイシン、0.2mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)、必要あれば50μg/mlアンピシリンを添加した最小合成培地100mlに大腸菌JM109/pHMS−mdlBCD−AbcDAを播種し、フラスコを用いることで、37℃で24時間以上培養することができる。ジャーファーメンターを使用して培養を実施する際は、基質の供給速度、攪拌回転数、通気量、pHなどを適正な範囲で制御することができる。必要に応じて、嫌気条件、微好気条件、好気条件を選択することができる。また、回分培養、半回分培養、連続培養などの形態を自由に選択することができる。 培養液中のTPAの濃度は、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS)、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC−MS)などにより測定することができる。 また、HMS、mdlBCDおよびAbcDA遺伝子が発現していることの確認は、ノーザンブロット法、リアルタイムPCR法、免疫ブロット法などの当業者に周知の方法により調べることができる。 一般的な分子生物学的手法(Ausubel et al, Current Protocol in Molecular Biology (2003); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition (2001) など)により、大腸菌株JM109/pHMS−mdlBCD−AbcDAは改良することができ、TPAの生産性を改善することができる。例えば、TPA生産経路の律速反応となっている酵素に関して、遺伝子コピー数を増やすこと、コドン最適化、または酵素活性部位近辺のアミノ酸置換により酵素活性を増加させ、TPAの生産性を改善することできる。また、副生成物を生産する反応を触媒する酵素の遺伝子を破壊することなどでTPAの生産性を改善することもできる。また、NTGや紫外線による変異処理を行いTPA生産性が向上した菌体を選抜することを繰り返し行う方法を利用することもできる。5.微生物で合成したp-トルイル酸を化学変換することによりTPAを合成する具体例(R8−R9−R1−R2−化学変換) p-トルイル酸を生産する能力を有する大腸菌株は一般的な分子生物学的手法(Ausubel et al, Current Protocol in Molecular Biology (2003); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition (2001) など)を用いることにより、次の手順で作成することができる。 Pseudomonas sp.由来Propao遺伝子(GenBank受入番号: AB167410.1) , Rhodococcus erythropolis.由来のアミダーゼをコードするDNA配列(GenBank受入番号: EU022986.1)の連結遺伝子を大腸菌プラスミドベクターpHSG299(タカラバイオ社製)のlacプロモーター下流側に組み込んだプラスミドpOxy−Amiを構築する。一方、Clostridium difficle由来HpdABCオペロン(GenBank受入番号NC013316.1)及びClostrida bacterium由来AbcDA遺伝子(GenBank受入番号: GU357991.1 GU357992.1)の連結遺伝子を大腸菌プラスミドベクターpMW119(ニッポンジーン社製)に組み込んだプラスミドpHsdABC−AbcDAを構築する。導入する遺伝子とプラスミドの組み合わせはこれ以外にも実施が可能であり最適な条件を見出すことが肝要である。さらにこれらのプラスミドDNAで大腸菌JM109株を形質転換することにより大腸菌株JM109/pOxy−Ami−HsdABC−AbcDAを作製する。 JM109/pOxy−Ami−HsdABC−AbcDAは当業者に周知の方法(日本生物工学会編,生物工学実験書(2002); Vogel H. et al, Fermentation and Biochemical Engineering Handbook, 2nd Ed.(2007) など)により培養することができる。例えば、20g/Lのグルコース、50μg/mlアンピシリン、50μg/mlカナマイシン、0.2mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加した最小合成培地100mlに大腸菌JM109/pOxy−Ami−HsdABC−AbcDAを播種し、フラスコを用いることで、37℃で24時間以上培養することができる。ジャーファーメンターを使用して培養を実施する際は、基質の供給速度、攪拌回転数、通気量、pHなどを適正な範囲で制御することができる。必要に応じて、嫌気条件、微好気条件、好気条件を選択することができる。また、回分培養、半回分培養、連続培養などの形態を自由に選択することができる。 培養液中のp-トルイル酸の濃度は、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS)、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC−MS)などにより測定することができる。 また、各遺伝子が発現していることの確認は、ノーザンブロット法、リアルタイムPCR法、免疫ブロット法などの当業者に周知の方法により調べることができる。 一般的な分子生物学的手法(Ausubel et al, Current Protocol in Molecular Biology (2003); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition (2001) など)により、大腸菌株JM109/pOxy−Ami−HsdABC−AbcDAは改良することができ、p-トルイル酸の生産性を改善することができる。例えば、p-トルイル酸生産経路の律速反応となっている酵素に関して、遺伝子コピー数を増やすこと、コドン最適化、または酵素活性部位近辺のアミノ酸置換により酵素活性を増加させ、p-トルイル酸の生産性を改善することできる。また、副生成物を生産する反応を触媒する酵素の遺伝子を破壊することなどでp-トルイル酸の生産性を改善することもできる。また、NTGや紫外線による変異処理を行いp-トルイル酸の生産性が向上した菌体を選抜することを繰り返し行う方法を利用することもできる。 p-トルイル酸からTPAへの変換は、例えば、米国特許第3,089,906号(1963)などに記載の方法が知られている。メタノール等を反応系に共存させることで得たp-トルイル酸エステルを合成し、これを酸化反応でジメチルテレフタル酸に変換させさらに高純度に精製した上でテレフタル酸を取得することができる。1 合成経路作成装置2 CPU(Central Processing Unit)3 メモリ4 ハードディスク駆動装置5 可搬媒体駆動装置6 入力装置7 表示装置8 外部インターフェース10 操作部11 化合物データベース12 既知反応データベース13 部分構造データベース14 共通構造データベース15 UFデータベース16、17 差分データベース18 仮想反応データベース20 記憶部21 制御部22 表示部 フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する工程、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する工程、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。 テレフタル酸生産能を有し、フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する酵素、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する酵素、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を炭素源を含む培地中で培養してテレフタル酸を培地または菌体内に蓄積させ、テレフタル酸を培地または菌体内から回収することを特徴とする、テレフタル酸の製造方法。 フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する工程、マンデル酸を安息香酸に変換する工程、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。 テレフタル酸生産能を有し、フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する酵素、マンデル酸を安息香酸に変換する酵素、および安息香酸をテレフタル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を炭素源を含む培地中で培養してテレフタル酸を培地または菌体内に蓄積させ、テレフタル酸を培地または菌体内から回収することを特徴とする、テレフタル酸の製造方法。 フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する工程、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する工程、フェニル酢酸をトルエンに変換する工程、トルエンをp−トルイル酸に変換する工程、およびp−トルイル酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。 p−トルイル酸生産能を有し、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を、炭素源を含む培地中で培養してp−トルイル酸を製造し、得られたp−トルイル酸をテレフタル酸に変換することを特徴とする、テレフタル酸の製造方法。 フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する工程、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する工程、フェニル酢酸をトルエンに変換する工程、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する工程を含む、p−トルイル酸の製造方法。 p−トルイル酸生産能を有し、フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する酵素、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する酵素、フェニル酢酸をトルエンに変換する酵素、およびトルエンをp−トルイル酸に変換する酵素の活性を有する微生物を、炭素源を含む培地中で培養してp−トルイル酸を製造することを特徴とする、p−トルイル酸の製造方法。 【課題】テレフタル酸の新規合成方法を提供すること。【解決手段】フェニルアラニンをフェニルアセトアミドに変換する工程、フェニルアセトアミドをフェニル酢酸に変換する工程、フェニル酢酸をトルエンに変換する工程、トルエンをp−トルイル酸に変換する工程、およびp−トルイル酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。フェニルアラニンをトランス桂皮酸に変換する工程、トランス桂皮酸を安息香酸に変換する工程、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。フェニルピルビン酸をマンデル酸に変換する工程、マンデル酸を安息香酸に変換する工程、および安息香酸をテレフタル酸に変換する工程を含む、テレフタル酸の製造方法。【選択図】図12配列表