タイトル: | 公開特許公報(A)_フロロタンニン類の簡易な調製方法とその利用 |
出願番号: | 2011280203 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | A61K 31/357,A61K 31/336,A61K 31/737,A61P 3/10,A61K 36/02 |
大石 一二三 谷 久典 服部 隆史 大石 聡 JP 2013129627 公開特許公報(A) 20130704 2011280203 20111221 フロロタンニン類の簡易な調製方法とその利用 ハイドロックス株式会社 506177796 神和産業株式会社 511311129 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 野▲崎▼ 久子 100113309 大石 一二三 谷 久典 服部 隆史 大石 聡 A61K 31/357 20060101AFI20130607BHJP A61K 31/336 20060101ALI20130607BHJP A61K 31/737 20060101ALI20130607BHJP A61P 3/10 20060101ALI20130607BHJP A61K 36/02 20060101ALN20130607BHJP JPA61K31/357A61K31/336A61K31/737A61P3/10A61K35/80 4 OL 13 4C086 4C088 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA02 4C086BA15 4C086EA24 4C086MA01 4C086MA03 4C086MA04 4C086NA05 4C086NA14 4C086ZC35 4C086ZC75 4C088AA13 4C088BA10 4C088CA06 4C088NA14 4C088ZC35 本発明は、褐藻類ポリフェノールに含まれるフロロタンニン類の簡易な調製法、及び得られたフロロタンニン類を含む組成物に関する。本発明の組成物は、糖尿病の処置のために有用である。 褐藻類ポリフェノール類に含まれる、フロロタンニン類として、フロログルシノール、エコール、フロロフコフロエコールA、ダイエコール、8,8’-バイエコール等が知られている。これらは、フロログルシノールが重合した構造を有している。フロロタンニン類の機能としては、酸化障害の抑制(非特許文献1及び2)、AGEs(終末糖化産物、Advanced Glycation End-products )形成阻害(非特許文献3)、アセチルコリンエステラーゼ阻害(非特許文献4)、アルドースレダクターゼ阻害活性(非特許文献5)が知られている。 一方、褐藻類由来のカロチノイド画分には、レチノール結合蛋白質とトランスサイレチンとの複合体形成を阻害することができ、インスリン非依存性の糖尿病の処置に役立つことが知られている(特許文献1)。また、褐藻類由来のマグネシウムを含有する分子量250〜500の画分は、COX-2 を選択的に阻害し、免疫賦活剤又は抗炎症剤として有用であることが知られている(特許文献2)。 他方、糖尿病はインスリンの作用不足による高血糖状態と定義される。糖尿病は、先進国や発展途上国を問わず非常な勢いで増加してきており、我が国でも糖尿病患者数は890万人にのぼると推定されている。この糖尿病患者のほとんどは、インスリン抵抗性及び/又はインスリン分泌不全が原因である2型糖尿病に分類される。糖尿病で留意すべきなのは合併症であり、代表的なものとして、AGEsによる腎症及び網膜症リスクの増加や、神経障害が知られている。糖尿病は初期にはほとんど自覚症状がない。しかしながら、ゆっくり、しかし確実に進行し、重篤な合併症を引き起こすことがある。生活習慣を改善し、血中のヘモグロビンA1C (HbA1c)値を6.5以下に保つことが合併症を回避するためには重要だといわれる。特開2007-314451特開2008-120738Hwangら、Int. J. Cancer, 119, 2742-2749,2006.Zhangら、Eur. J. Pharm., 591, 114-123, 2008.Okadaら、J. Nat. Prod., 67, 103-105, 2004)Yoon Na Y.ら、Fisheries Sci., 74, 200-207, 2008.H. Nakamuraら, Natural Medicines, 51(2), 162-169, 1997. フロロタンニン類には様々な機能が見いだされてきており、簡易に調製する方法があれば、より一層、利用が進むと期待される。 一方、食経験豊富な天然物由来の有効成分を含む剤により、糖尿病患者又はそのリスクのある者の健康を回復させることができれば、大変望ましいことはいうまでもない。 発明者らは長年褐藻類の研究に従事してきた中で、褐藻類のポリフェノールであるフロロタンニン類の種々の機能に着目した。従来のインスリン分泌を促す医薬のほとんどが膵島のβ細胞をターゲットとしているが、膵島のα細胞は、β細胞の機能をプライミングする物質としてアセチルコリンを分泌する。フロロタンニン類はアセチルコリンエステラーゼやアルドースレダクターゼ阻害活性を有する上、抗酸化作用及びAGEs形成抑制作用等を有し、糖尿病の処置において利用すれば、これまでにない機序により、効果を発揮しうることが期待される。 本発明は、以下を提供する。[1] 褐藻類原料の乾燥物1重量部相当に対し、2〜10重量部のエタノール含有溶媒を用いて抽出し、フロロタンニン類を含む抽出液を得る工程; 抽出液に、褐藻類原料の乾燥物100重量部相当に対し、1.6〜2.9重量部(好ましくは1.8〜2.7重量部、さらに好ましくは2.0〜2.5重量部)の活性炭を加えて、夾雑物を吸着除去する工程;を含む、フロロタンニン類の製造方法。[2] フロロタンニン類が、フロログルシノール、エコール、フロロフコフロエコールA、ダイエコール、及び8,8’-バイエコールからなる群より選択される、少なくとも一の物質を含有する、[1]に記載の製造方法。[3] [1]又は[2]の製造方法により得られたフロロタンニン類、フコキサンチン、マグジサリシレート及びフコイダンを含む、糖尿病の処置剤。[4] フロロタンニン類を、0.1〜500mg/day、好ましくは50〜100mg/dayで接種するための、[3]に記載の剤。 本発明でフロロタンニン類というときは、特に記載した場合を除き、下記の物質からなる群より選択される、少なくとも一つを含む。 本明細書で「褐藻類」というときは、特別な場合を除き、褐藻綱(Phaeophyceae)に分類される藻類をいう。褐藻類には、ナガマツモ目(Chordariales)、コンブ目(Laminariales)、ウイキョウモ目(Dictyosiphonales)、アミジグサ目(Dictyotales)、ヒバマタ目(Fucales)、イソガワラ目(Ralfsiales)、カヤモノリ目(Scytosiphonales)、シオミドロ目(Ectocarpales)、クロガシラ目(Sphacelariales)、ウルシグサ目(Desmarestiales)、ムチモ目(Cutleriales)、ケヤリ目(Sporochnales)、ウスバオウギ目(Syringodermatales)に属する藻類が含まれ、またチガイソ科、ダービリア属、モズク属、マツモ属、レッソニア属、カジメ属、マクロシスティス属、ヒバマタ属、又はアスコフィラム属に属する藻類が含まれる。学名:Undaria pinnatifida)とは、褐藻綱コンブ目の海藻褐藻類には、具体的には、チガイソ科ではワカメ(Undaria pinnatifida)、ダービリア属ではダービリア アンタークティカ(Durvillea antarctica)、モズク属ではモズク(Cladoshiphon caredoniae)、マツモ属ではマツモ(Nemacystis decipiens)、レッソニア属ではレッソニア ニグレッセンス(Lessonia nigrescens)、カジメ属ではカジメ(Ecklonia cava)、マクロシスティス属ではジャイアントケルプ(Macrocystis pyrifera)、ヒバマタ属ではヒバマタ(Fucus evanescens)やフカス ベシキュロサス(Fucus vesiculosus)、アスコフィラム属ではアスコフィラム ノードスム(Ascophyllum nodosum)等を挙げることができる。本発明に用いられるフロロタンニン類の原料としては、特にワカメを好適に用いることができる。 原料褐藻類は、採取したものそのものを用いてもよいが、乾燥させてから、抽出ステップに供することが好ましい。重量当りの固形分は、生の状体よりも乾燥物のほうが高く、その結果、抽出効率も高まるからである。 本発明のフロロタンニン類の調製方法は、褐藻類原料の乾燥物1重量部相当に対し、2〜10重量部のエタノール含有溶媒を用いて抽出し、フロロタンニン類を含む抽出液を得る工程;抽出液に、褐藻類原料の乾燥物100重量部相当に対し、1.6〜2.9重量部(好ましくは1.8〜2.7重量部、さらに好ましくは2.0〜2.5重量部)の活性炭を加えて、夾雑物を吸着除去する工程を含む。従来、フロロタンニン類の調製は、藻体からエタノール溶液により必要な画分を抽出し、その後ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びブタノール等の有機溶媒を用いていた。このような有機溶媒の使用は、経口組成物を製造するに際しては、適切でない場合がある。本発明の方法によれば、医薬又は食品として許容される溶媒のみを用いて、より簡易にフロロタンニン類を調製することができる。 本発明で「乾燥物(1重量部)相当」というときは、特に記載した場合を除き、乾燥物の重量を基準とすることを指す。例えば、原料褐藻類が天然から採取したままの水分を多く含む場合であっても、基準となるのは、乾燥物の重量(「固形量」ということもある。)である。なお、本発明で成分等の量比をいうときは、特に記載した場合を除き、重量に基づく。 本発明で「エタノール含有溶媒」というときは、特に記載した場合を除き、その典型例は、80%以上のエタノールと水とからなる溶媒を指す。なお、フロロタンニン類は、80%以上のエタノール、メチルアルコール、酢酸エチルには溶解するが、水には溶解しない。 本発明においては、褐藻類原料の乾燥物1重量部相当に対し、2〜10重量部、好ましくは3〜8重量部、より好ましくは、4〜6重量部のエタノール含有溶媒を用いて抽出ステップが実施される。 本発明の製造方法においては、エタノール含有溶媒を用いて抽出することにより得られたフロロタンニン類を含む抽出液は、活性炭処理ステップに供される。本発明の製造方法に使用できる活性炭は、原料、製法、形状(例えば、繊維状、ハニカム状、円柱状、破砕状、粒状、粉末状であり得る。)に制限はなく、医薬品製造、化学品製造、又は食品製造の分野で用いられている活性炭を適用することができる。 本発明の製造方法において、活性炭は、抽出液と接触するが、必要な活性炭の量は、褐藻類原料の乾燥物100重量部相当に対して決定することができる。通常、藻類原料の乾燥物100重量部相当に対して、活性炭量は1.6〜2.9重量部であり、好ましくは1.8〜2.7重量部であり、さらに好ましくは2.0〜2.5重量部である。 本発明においては、特定量の活性炭を用いることにより、褐藻類のエタノール含有溶媒抽出物から、効率よく、色素その他の夾雑物を除去することができる。 本発明は、フロロタンニン類を含む剤(組成物)を提供する。フロロタンニン類は、酸化障害の抑制(前掲非特許文献1及び2)、AGEs(終末糖化産物、Advanced Glycation End-products )形成阻害(前掲非特許文献3)、アセチルコリンエステラーゼ阻害(前掲非特許文献4)、アルドースレダクターゼ阻害活性(前掲非特許文献5)が知られており、したがって、糖尿病の処置、糖尿病合併症発症のリスクの低減において有効である。 本発明の剤は、有効成分としてフロロタンニン類のほか、フコイダン、フコキサンチン又はその類縁体、マグジサリシレートを含む。 本発明でフコイダンというときは、特に記載した場合を除き、フコース、キシロース、ガラクトース、ウロン酸等(原料褐藻類によってはマンノースを含むことがある。)で構成される褐藻類由来の硫酸化多糖体をいう。構成糖にフコースのみを持つものを「フコイダン」 フコース以外の糖を含むものを「フコイダン様多糖体」と称することもあるが、ここでいうフコイダンには、双方が含まれる。フコイダンの原料としては、天然又は養殖されたモズク、特にオキナワモズク(Cladoshiphon okamuranus Tokida)、Cladoshiphon novae-caledoniaeKylin)、又はCladoshiphon caledoniaeKylinを好適に用いることができる。ミネラルを豊富に含み、重金属類の有害物質が検出されないという観点からは、トンガ産の天然のCladoshiphon caledoniae Kylinを用いることが好ましい。 本発明でフコキサンチン又はその類縁体というときは、特に記載した場合を除き、下式で表されるフコキサンチン(分子量658.88)又はその種々の立体異性体(シス−トランス異性体、光学異性体)をいう(前掲特許文献1)。フコキサンチン は、 (3S,5R,6S,3'S,5'R,6'R)-3'-acetoxy-5,6-epoxy-3,5'-dihydroxy-6',7'-didehydro-5,6,7,8,5',6'-hexahydro-β,β-caroten-8-one(IUPAC)、又は (3S,3'S,5R,5'R,6S,6'R)-3'-(acetyloxy)-6',7'-didehydro-5,6-epoxy-5,5',6,6',7,8-hexahydro-3,5'-dihydroxy-8-oxo-β,β-carotene(CAS)と表されることもある。本発明においては、フコキサンチン又はその類縁体のうち、フコキサンチンを例に説明することがあるが、特に記載した場合を除き、その説明は、フコキサンチンの類縁体にも当てはまる。 本発明でマグジサリシレートというときは、特に記載した場合を除き、褐藻類に属する海藻由来の、マグネシウムを含有する分子量250〜500のシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害物質をいう(前掲特許文献2参照)。マグジサリシレートは、より特定すると、ダービリア属の海藻の抽出物に含まれ、かつCOX-2を選択的に阻害するものである。 本発明の剤は、糖尿病の処置、糖尿病合併症発症のリスクの低減において有効である。 本発明の剤が、意図した目的において有効であるか否かは、投与した対象における血糖(GLU)や、ヘモグロビンA1C(HbA1c)値を測定することにより、確認することができる。これらの値の測定法は、当業者にはよく知られている。 本発明者らの検討により、本発明の剤は、血糖値を下げる作用がある。したがって、本発明の剤は糖尿病のほか、血糖(GLU)が高いことにより特徴づけられ、かつ血糖値を下げることにより改善する疾患又は病気の処置のためにも用いうる。本発明の剤はまた、血中のヘモグロビンA1C(HbA1c)値を改善しうる。したがって、本発明の剤は糖尿病のほか、HbA1c値が高いことにより特徴づけられ、かつHbA1c値を下げることにより改善する疾患又は病気の処置のためにも用いうる。 本発明の剤は、驚くべきことに、種々の医薬でもヘモグロビンA1cと空腹時血糖値が殆ど改善しない糖尿病患者に対しても有効である。空腹時血糖値が高い場合、インスリンの効果が現れておらずその結果ヘモグロビンA1cの高値が継続することになる。この状態が続くと合併症(腎障害、網膜症及び神経障害)発症のリスクが高くなることが分かっている。腎障害、網膜症及び神経障害は、糖尿病の三大合併ともいわれている。本発明の剤は、糖尿病の治療・予防に加えて、糖尿病の三大合併症の発症のリスクを低減したり、三大合併症を予防することができる。糖尿病の合併症の発症リスクの低減するための剤は、本願によって初めて提供されるものである。 本発明の剤に含まれる、フコイダン、フコキサンチン、及びマグジサリシレートはいずれも、糖尿病の処置において、主として血糖値改善に関わる成分である。また、フロロタンニン類はAGEs形成阻害作用があること、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用が認められている(前掲非特許文献3及び4)。しかしながら、AGEs形成阻害作用を有する成分による糖尿病合併症の予防や、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用による膵島α細胞によるβ細胞プライミングを介したβ細胞活性化による血糖値改善作用に関しては、本発明が初めての試みであろう。また、フコイダン、フコキサンチン、マグジサリシレート、及びフロロタンニン類の組み合わせにより、三大合併症の発症リスクの低減も含めた糖尿病治療剤は、本発明が初めて提供するものである。 本明細書において疾患又は状態について「処置」というときは、特別な場合を除き、その疾患又は状態について、治療すること、予防すること、進行を遅延又は停止すること、良好な状態を維持することが含まれ、治療には、症状を抑える対処的治療と、根本的な治療とが含まれる。 フロロタンニン類の急性毒性は2,000mg/kg体重の単回投与急性毒性試験において毒性が認められない。また、本発明のフロロタンニン類は、100℃、15分の加熱で安定であり、pH3.0〜8.5の範囲で安定であった。 フロロタンニン類用量は、例えば、成人一日当たり、好ましくは0.1〜500mg、より好ましくは100〜200mg、さらに好ましくは30〜150mgとすることができる。予防、維持の目的では、より少ない量で効果的な場合もありうる。投与は一日分の量を、単回で投与してもよく、複数回(例えば、一日2回又は3回)に分割して投与してもよい。 本発明の剤の成分比は、目的の効果が得られる限り、適宜とすることができるが、目安としては、フロロタンニン類の約2.5〜20倍のフコイダンと、マグジサリシレートの約2.5〜20倍のフロロタンニン類とを用いることができる。また、マグジサリシレートの約2〜10倍のフロロタンニン類を用いることができる。 本発明の剤は、経口的に投与することができる。本発明の医薬組成物は、当業者であれば、投与経路に応じた種々の製剤形態とすることができる。例えば、本発明の低分子化合物は溶液又は凍結乾燥や噴霧乾燥等により乾燥粉末物としたり、ペースト状に調製してもよい。より具体的には、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、注射剤とすることができる。経口投与製剤は、好ましい例の一つである。 本発明の剤(組成物)は、食品又は医薬として許容される添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、安定剤、保存剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、溶解剤、緩衝剤を用いることができる。また、本発明の低分子化合物又は本発明の医薬組成物は、目的とする疾患又は状態の処置のために有効な他の成分と組み合わせて用いることができる。 1.フロロタンニン類の調製 1kgの微粉末化乾燥ワカメに5Lの95%(v/v)エタノールを加え、攪拌しながら24時間室温に放置した。抽出液を濾過により清澄化し、1〜30gの活性炭(商品名:活性炭素、試薬特級、製造者:和光純薬株式会社、形状:粉末)を加え、攪拌混合した後、濾過にて活性炭を除去した。減圧濃縮(エバポレーター)でエタノールを除去し、乾燥物を得た。 ワカメのエタノール溶出画分には、フロロタンニン類の他に、クロロフィル、フコキサンチン等のカロテノイド類、若干の油脂類等が含まれる。これらを簡易に効率よく除去する方法として、食品加工助剤としても認められている活性炭を用いることとし、その使用量を検討した。 各成分の確認は薄層クロマトグラムで行った。AとBは各特徴的な色を有することから目視で、Cは薄層クロマトグラフィー展開後、呈色液としてバニリン-硫酸を用いて確認した。活性炭の使用量が原料藻体の0.5%以下であると、得た抽出物の海藻臭は強く、色は黒褐色で、食品原料としては適さなかった。また、1.5%以下ではクロロフィル類の緑色は除去されるが、フコキサンチン等のカロテノイド類が残存し、橙赤色であった。フコキサンチンは酸化されやすく、酸性下で青色に変化し、保存・安定性が悪く、これも食品原料として適さないと思われた。2.0〜2.5%の使用では、クロロフィル類やカロテノイド類が除去されており、フロロタンニン類の損失は5%以下であった。しかしながら、3.0%以上では、大部分のフロロタンニン類が活性炭に吸着されていた。 したがって、褐藻類由来のフロロタンニン類の製造法を次の如く確立した。最終濃度が85%(v/v)以上のエタノールで抽出した後、清澄液に原藻体(乾燥物相当)に対して2.0〜2.5%の活性炭を加え、夾雑物を除去する。 本法により1kgの微粉末化乾燥ワカメを処理し、約5gのフロロタンニン類を得た。 本画分の各成分を、長山ら(特許第146146号:フロロタンニン類を主成分とする抗菌剤、特許第4105535号:抗ウイルス性物質)の方法に基づいて調べた。その結果、主要成分はダイエコールとフロロフコフロエコールAであり、またフロログルシノール、エコール及び8,8’-バイエコールも含まれていた。本法で得た褐藻類ポリフェノールの主にフロロタンニン類の特徴を次表にまとめた。 本法で調製したフロロタンニン類を、以下の実験に用いた。 2. ヒトボランティア試験 アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がムスカリン受容体を刺激してインスリン分泌を促すことは知られている(R. Rodriguez-Diaz et. al., Alpha cells secrete acetylcholine as a nonneuronal paracrine signal priming beta cell function in humans. Nature Medicine, 17, 888-892, 2011)。また糖尿病で最も留意されるのは合併症であり、代表的なものに、AGEs (終末糖化産物、Advanced Glycation End-products )による腎症リスクや網膜症リスクの増加や、神経障害がある。特に神経障害は重篤であり、この原因としてはアルドースレダクターゼによるポリオール(主にソルビトール)の細胞内濃度が上昇し、これにより細胞が障害されることにある。フロロタンニン類のアルドースレダクターゼ阻害作用は、中村弘ら(Natural Medicines, 51 (2), 162-169, 1997)によって見出されており、糖尿病の合併症予防・治療に有望であると指摘されている。 一方、フロロタンニン類には直接的なインスリン抵抗性の改善作用は認められていないので、インスリン抵抗性の改善作用が認められているフコキサンチン(糖尿病治療剤;特開2007-314451)とフロロタンニン類をフコイダンに混合したもの(下表)を作成した。具体的には、下表の粉末混合物を250mgずつカプセルに充填し、1日あたり4カプセル(粉末混合物1g/日)を摂取させた。カプセルには、担体等の添加剤は加えなかった。 1日1gを摂取させ、1ヶ月毎のヘモグロビンA1cと空腹時血糖値を測定した。ボランティアは2型糖尿病治療中で、種々の薬剤でもヘモグロビンA1cと空腹時血糖値が殆ど改善しない患者の協力を得た。 各ボランティア背景を下表に示した。 結果を下表に示した。 被験食品の1日の摂取量0.5gと1gでは、1gの方がより効果的に血糖値及びヘモグロビンA1c共に低下していた。 これらの結果より、フコイダン、フコキサンチン、フロロタンニン類及びマグジサリシレートを配合した被験食品の抗糖尿病作用は明らかである。さらにはボランティアBとCに付いては、血糖値降下薬にても改善しなかった血糖値とヘモグロビンA1c値が共に改善した。薬剤抵抗性を有する糖尿病患者においても被験食品の改善効果が認められたといえる。各ボランティアの感想からは、糖尿病は完治しないのではなく、改善可能であるとの意識が高まり、積極的にライフスタイルを改善しようとする意欲も認められた。 褐藻類原料の乾燥物1重量部相当に対し、2〜10重量部のエタノール含有溶媒を用いて抽出し、フロロタンニン類を含む抽出液を得る工程; 抽出液に、褐藻類原料の乾燥物100重量部相当に対し、1.6〜2.9重量部(好ましくは1.8〜2.7重量部、さらに好ましくは2.0〜2.5重量部)の活性炭を加えて、夾雑物を吸着除去する工程;を含む、フロロタンニン類の製造方法。フロロタンニン類が、フロログルシノール、エコール、フロロフコフロエコールA、ダイエコール、及び8,8’-バイエコールからなる群より選択される、少なくとも一の物質を含有する、請求項1に記載の製造方法。請求項1又は2の製造方法により得られたフロロタンニン類、フコキサンチン、マグジサリシレート及びフコイダンを含む、糖尿病の処置剤。フロロタンニン類を、0.1〜500mg/day、好ましくは50〜100mg/dayで接種するための、請求項3に記載の剤。 【課題】フロロタンニン類には様々な機能が見いだされてきており、簡易に調製する方法があれば、より一層、利用が進むと期待される一方、食経験豊富な天然物由来の剤により、糖尿病患者又はそのリスクのある者の健康を回復させることができれば、大変望ましく、そのフロロタンニン類の簡単に調製する方法を提供する。【解決手段】褐藻類原料の乾燥物1重量部相当に対し、2〜10重量部のエタノール含有溶媒を用いて抽出し、フロロタンニン類を含む抽出液を得る工程;抽出液に、褐藻類原料の乾燥物100重量部相当に対し、1.6〜2.9重量部(好ましくは1.8〜2.7重量部、さらに好ましくは2.0〜2.5重量部)の活性炭を加えて、夾雑物を吸着除去する工程;を含む、フロロタンニン類の製造方法。また、フロロタンニン類、フコキサンチン、マグジサリシレート及びフコイダンを含む、糖尿病の処置剤。【選択図】なし