タイトル: | 公開特許公報(A)_カチオン化キサンタンガム及びそれを含有する乳化組成物 |
出願番号: | 2011276343 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C08B 37/00,A61K 8/73,A61K 8/99,A61K 8/06,A61Q 1/00,A61K 47/36,A61K 8/19 |
北條 沙苗 白川 真由美 JP 2013127019 公開特許公報(A) 20130627 2011276343 20111216 カチオン化キサンタンガム及びそれを含有する乳化組成物 DSP五協フード&ケミカル株式会社 501360821 藤本 昇 100074332 中谷 寛昭 100114432 北條 沙苗 白川 真由美 C08B 37/00 20060101AFI20130531BHJP A61K 8/73 20060101ALI20130531BHJP A61K 8/99 20060101ALI20130531BHJP A61K 8/06 20060101ALI20130531BHJP A61Q 1/00 20060101ALI20130531BHJP A61K 47/36 20060101ALI20130531BHJP A61K 8/19 20060101ALI20130531BHJP JPC08B37/00 BA61K8/73A61K8/99A61K8/06A61Q1/00A61K47/36A61K8/19 2 OL 13 4C076 4C083 4C090 4C076EE30A 4C076EE30P 4C076EE30Q 4C083AB051 4C083AD351 4C083BB11 4C083DD31 4C090AA05 4C090BA93 4C090BC23 4C090CA34 4C090DA23 4C090DA26 本発明は、カチオン化キサンタンガム及びそれを含有する乳化組成物に関する。 従来、医薬品、化粧品等の基剤として、水溶性及び油溶性のいずれの有効成分をも配合できるように、乳化組成物が用いられている。このような乳化組成物では、通常、界面活性剤が乳化剤として添加されることによって、乳化及び乳化の安定化が図られている。しかし、近年、界面活性剤の使用量の低減が要望されており、界面活性剤に代わる乳化剤として、水溶性の天然高分子を用いる試みがなされている。 かかる天然高分子の1つとして、キサンタンガムが知られている。該キサンタンガムは、医薬品添加剤、化粧品添加剤や工業用添加剤として汎用されており、主として粘性の付与等を目的として医薬品や化粧品等に添加されている。 しかし、キサンタンガムは界面活性剤よりも界面張力低下(界面活性)能が低く、粒子径の小さな乳化物を形成する力(乳化力)が低いため、水と油成分とを用い、これらにキサンタンガムを乳化剤として添加して乳化組成物を調製した場合、得られた乳化組成物は、比較的乳化粒子径が大きく、乳化安定性が劣るといった問題があった。 そこで、キサンタンガムの水酸基の一部をカチオン化してカチオン化キサンタンガムとすることが提案されている(特許文献1、2参照)。特許第2914751号特開2007−63446号公報 しかし、キサンタンガムを単にカチオン化してカチオン化キサンタンガムを生成させ、得られたカチオン化キサンタンガムを乳化剤として用いたとき、乳化粒子が大きくなる現象や、乳化粒子が経時的に不安定となる現象(例えば、乳化粒子径が経時的に増大したり、乳化層と水層に分離したりする現象)が見られる場合がある。すなわち、乳化力や乳化安定性が十分に向上されていない場合がある。 本発明は、上記問題点に鑑み、優れた乳化力のみならず優れた乳化物の安定性をも、より確実に発揮し得るカチオン化キサンタンガム及びそれを含有する乳化組成物を提供することを課題とする。 本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、キサンタンガムとカチオン化剤を反応させてカチオン化キサンタンガムを製造したとき、生成したカチオン化キサンタンガムの有するカチオン電荷量によって、カチオン化キサンタンガムを乳化剤として用いて乳化させた際の乳化力や乳化物の安定性(以下、乳化安定性という場合がある)が大きく異なることが判明した。 また、カチオン化キサンタンガムの製造時に用いたカチオン化剤が残存している場合があり、この場合には、カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量を測定したとき、該電荷量に、キサンタンガムにおける水酸基と置換されたカチオン化基に由来するカチオン電荷量だけでなく、残存カチオン化剤に由来するカチオン電荷量(残存カチオン電荷量)が含まれることが判明した。 さらに、測定されたカチオン電荷量が、残存カチオン電荷量を含んでいると、この分については、キサンタンガムの乳化力や乳化安定性の発揮に寄与し得ないため、カチオン化キサンタンガムが特性として有する乳化力及び乳化安定性を適切に把握することができず、カチオン電荷量が適切であるにもかかわらず乳化力や乳化安定性が不十分な場合が不意に生じる場合があることが判明した。 そして、カチオン化キサンタンガムにおける、残存カチオン電荷量の分を除いた、乳化力や乳化安定性に寄与し得る有効カチオン電荷量が特定の範囲である場合に、優れた乳化力及び乳化安定性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明に係るカチオン化キサンタンガムは、キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムであって、有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下であることを特徴とする。 ここで、有効カチオン電荷量とは、カチオン化キサンタンガムが官能基として有するカチオン化基に由来するカチオン電荷量、すなわち、カチオン化キサンタンガムのカチオン電荷量からカチオン化キサンタンガムに残存しているカチオン化剤に由来するカチオン電荷量の分を除いたカチオン電荷量をいう。 かかる構成によれば、有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下であることによって、カチオン化キサンタンガムを乳化剤として乳化させた際、優れた乳化力のみならず優れた乳化物の安定性をも、より確実に発揮することが可能となる。 また、本発明に係る乳化組成物は、前記カチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを含有していることを特徴とする。 かかる構成によれば、上記カチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを含有していることにより、該カチオン化キサンタンガムの上記乳化力及び乳化安定性に起因して、優れた乳化力と優れた乳化安定性とを発揮することができる。従って、経時的に安定な乳化組成物を提供することができる。また、乳化に際して、界面活性剤等の乳化剤を用いないか、または、用いる場合であってもその使用量を減らすことができる。 以上の通り、本発明によれば、優れた乳化力のみならず優れた乳化物の安定性をも、より確実に発揮し得るカチオン化キサンタンガム及びそれを含有している乳化組成物を提供することが可能となる。有効カチオン電荷量と乳化粒子径との関係を示すグラフ有効カチオン電荷量と分離率との関係を示すグラフ分離率の評価における液面の高さA及び水層の高さBを模式的に示す図 以下に、本発明に係るカチオン化キサンタンガムの実施形態について説明する。 本実施形態に係るカチオン化キサンタンガムは、キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムであって、有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下である。 また、上記カチオン化は、好ましくは第4級窒素含有基での置換によるものであり、上記カチオン化キサンタンガムは、好ましくはキサンタンガムの水酸基の一部が第4級窒素含有基で置換されたキサンタンガムである。第4級窒素含有基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられるが、該第4級窒素含有基は、これらに特に限定されない。[式中、R1およびR2は、各々独立して、炭素原子数1〜3個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基など)であり、R3は、炭素原子数1〜24のアルキル基、またはアルケニル基である。] 上記キサンタンガムは、純粋培養された微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomanas Campestris)の醗酵過程で菌体外に蓄積された陰イオン性の高分子多糖類である。かかるキサンタンガムは、主鎖たる2個のグルコースと、側鎖たる2個のマンノース及び1個のグルクロン酸とからなる構成単位を主成分として含有している。このようなキサンタンガムは、例えば市場で入手することができ、かかる市場で入手可能なキサンタンガムとしては、エコーガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、モナートガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、ラボールガム(登録商標)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)等が挙げられる。 上記カチオン化剤は、キサンタンガムに含まれる水酸基の一部を例えば第4級窒素含有基等のカチオン化基により置換するための試薬である。かかるカチオン化剤は、例えば、2,3−エポキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩、または3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。これらの塩としては例えば、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。また、上記カチオン化剤としては、その他例えば、塩化ヘキサメトニウム、塩化デカメトニウム、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。 かかるカチオン化剤の添加量は、キサンタンガム1質量部に対して、例えば、0.05〜1.5質量部とすることができる。 上記カチオン化キサンタンガムの有効カチオン電荷量は、0.62meq/g以上1.13meq/g以下である。 かかる有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下であることによって、界面張力の低下能が向上するため、乳化力が向上する。これにより、水と油成分とを用い、これらにカチオン化キサンタンガムを乳化剤として乳化した際、乳化粒子を小さくすることができ、良好な乳化物を作ることができる。また、水と油成分の界面に吸着して強力な界面膜を形成することができるため、乳化粒子の凝集・合一を防ぎ、乳化粒子の経時的な増大や乳化物の分離の程度を小さくすることができる。従って、乳化力及び乳化物の安定性を確実に向上させることができる。 また、上記を考慮すると、上記有効カチオン電荷量が0.64meq/g以上1.09meq/g以下であることが好ましく、0.64meq/g以上0.94meq/g以下であることがより好ましく、0.72meq/g以上0.94meq/g以下であることが一層好ましい。 有効カチオン電荷量は、下記の手順に従って測定することができる。 すなわち、カチオン化キサンタンガムの全窒素含量Mtと、該カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maとを、セミケルダール法(食品添加物公定書第8版、一般試験法)に基づいて測定する。 まず、カチオン化キサンタンガムを含水アルコール(具体的には90質量%メタノール)で洗浄し、洗浄液中のカチオン化剤の対イオンとして塩素の質量を、Fajans法に基づいて測定する。なお、塩素の質量とカチオン化剤の質量との関係を示す検量線を予め作成し、この検量線に塩素の質量の測定結果をあてはめることによって、残存カチオン化剤の質量を得ることができる。 次に、得られた残存カチオン化剤の質量の、測定に用いたカチオン化キサンタンガムの質量に対する百分率を算出することによって、カチオン化キサンタンガム中の残存カチオン化剤含有量R(質量%)を算出する。 さらに、得られた残存カチオン化剤含有量Rから、以下の計算式に従って、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mr(質量%)を算出する。 Mr=R×窒素の原子量/カチオン化剤の分子量 例えば、窒素の原子量を14.0とし、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドを用いた場合、該カチオン化剤の分子量は151であるため、Mr=R×14.0/151となる。 そして、このようにして測定した全窒素含量Mtと、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mrと、キサンタンガムの窒素含量Maとから、下記式に従って、有効カチオン電荷量を算出することができる。 有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Mr―Ma)×1000/[(窒素の原子量)×100] また、上記カチオン化キサンタンガムに含有されている残存カチオン化剤含有量は、1.0質量%以下であることが好ましい。かかる残存カチオン化剤含有量が1.0質量%以下であることによって、残存カチオン化剤に起因して水に難溶化または不溶化し、乳化力や乳化安定性が低下することをより回避することができる。 続いて、本実施形態のカチオン化キサンタンガムの製造方法について説明する。 本実施形態に係るカチオン化キサンタンガムの製造方法は、下記(1)〜(4)の工程によって実施し得る。すなわち、工程(1):イソプロピルアルコール濃度が35質量%以上70質量%以下となるように水及びイソプロピルアルコールを準備し、該水、該イソプロピルアルコール、アルカリ剤、キサンタンガム及びカチオン剤を混合する工程、工程(2):工程1で得られた混合液を、室温以上の温度下で攪拌して、キサンタンガムとカチオン化剤とを反応させる工程(反応工程)、工程(3):工程(2)で得られた反応生成物を含む液から反応生成物を分離する工程、及び工程(4):工程(3)で分離された反応生成物を、アルコールまたは該アルコールを含む含水アルコールで洗浄する工程、を備えており、工程(1)〜(4)を行うことによって、カチオン化キサンタンガムを製造し得る。 工程(1)では、最終的に全成分を混合することができれば良く、各成分の混合順序は特に限定されるものではない。例えば、水にアルカリ剤を添加して溶解させ、該溶解液にイソプロピルアルコールの一部をさらに溶解させて第1混合物とし、残りのイソプロピルアルコールにキサンタンガムを溶解させて第2混合物とし、第1混合物と第2混合物を混合して得られた混合物に、カチオン化剤を添加することができる。 工程(2)では、上記反応を室温以上の温度下で行うことにより、上記水酸基の一部を第4級窒素含有基に、より置換し易くすることができる。また、かかる温度が高いほど反応が早く進む傾向にある一方、上記温度が高すぎると、反応よりもカチオン化剤の分解が進む傾向にある。かかる観点を考慮して、上記温度は、室温〜70℃であることが好ましく、50〜55℃であることがより好ましい。なお、上記水酸基の一部を第4級窒素含有基により置換する方法は、このように上記温度下で攪拌する方法に特に限定されるものではなく、その他、従来公知の方法を用いることができる。 工程(3)では、通常当業者が行う方法により実施することができ、例えば、ろ過や遠心分離等によって実施することができる。 工程(4)では、上記洗浄を行うことにより、反応生成物を精製することができる。かかる洗浄に用いられるアルコールまたは含水アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールおよび第三ブタノールからなる群から選択される1種類のアルコール、2種類以上のアルコールの混合物、または該アルコールを含む含水アルコールが挙げられる。また、これらのうち、イソプロピルアルコールまたはメタノールの少なくとも1つを用いることが好ましい。 かかる洗浄の回数は、特に限定されないが、2〜5回であることが好ましい。 また、かかる洗浄後、当該洗浄に用いたのとは異なるアルコールまたは含水アルコールを用いて、さらに洗浄を行うことがより好ましい。例えば、イソプロピルアルコールまたは含水イソプロピルアルコールを用いて洗浄した後、メタノールまたは含水メタノールを用いてさらに洗浄したり、メタノールまたは含水メタノールを用いて洗浄した後、イソプロピルアルコールまたは含水イソプロピルアルコールを用いてさらに洗浄したりすることが好ましい。また、かかる異なるアルコールまたは含水アルコールを用いた洗浄の回数は、特に限定されないが、1〜3回であることが好ましい。 このように、アルコールまたは含水アルコールを2種類用いて2段階の洗浄を行うことによって、残存カチオン化剤を充分に取り除くことができる。 なお、上記したようなイソプロピルアルコールまたは含水イソプロピルアルコールを用いた洗浄と、メタノールまたは含水メタノールを用いた洗浄とを、交互に繰り返し行うこともできる。 このように洗浄工程を実施することによって、残存カチオン化剤を減少させることができ、上記したように水に難溶化または不溶化することをより回避することが可能となるが、かかる洗浄工程は、必ずしも必要ではない。 また、上記のように、本実施形態のカチオン化キサンタンガムは、乳化力及び乳化安定性に優れているため、かかるカチオン化キサンタンガムを用いて乳化組成物を調製する場合には、界面活性剤の使用量を低減させることができる。 上記反応に用いる溶媒は、水とイソプロピルアルコールとを含有し、該イソプロピルアルコールの濃度が35質量%以上70質量%以下であることが好ましい。なお、かかるイソプロピルアルコールの濃度は、キサンタンガムとカチオン化剤とが添加され、反応が開始される際の溶媒の質量と、該溶媒中に含有されているイソプロピルアルコールの質量とから算出される濃度である。 また、かかるイソプロピルアルコールの濃度が35質量%以上70質量%以下である溶媒を用いて反応を行うことによって、反応時の様態が均一となるため、キサンタンガム中における乳化力の向上に寄与し得る所定の位置に配置された水酸基を、カチオン化し易くなり、これにより、上記のように、カチオン化キサンタンガムの乳化力を向上させることが可能になる、と推察される。 なお、反応時の様態が均一か否かは、反応時の粒子の膨潤度合い(粒子の大きさ)や粒子同士の付着状態を目視で観察することによって判断することができる。例えば、粒子の膨潤度合いが異なっていたり、粒子同士が付着して均一でない状態となっていたりした場合を、不均一と判断することができる。 上記した本実施形態のカチオン化キサンタンガムは、乳化組成物に適用されることが好ましい。 かかる乳化組成物は、例えば、カチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを混合し、通常当業者が用いる方法で乳化することによって得られる。かかる油成分としては、通常、化粧品、医薬品、一般工業用途に使用される油成分を用いることができ、例えば、炭化水素類、天然油脂類、脂肪酸類、高級アルコール類、アルキルグリセルエーテル類、エステル類、シリコーン油類が挙げられる。また、上記乳化組成物は、乳化組成物に通常添加されている添加剤等を含有していても良い。 かかる乳化組成物は、上記乳化力が向上しているため、界面活性剤の使用量を抑制しつつ比較的乳化粒子径の小さな乳化物を含有することができる。 また、このような乳化組成物は、好ましくは、化粧料、または、外用の医薬品もしくは医薬部外品(外用剤)や、これらの基剤に適用される。また、かかる乳化組成物は、さらに、多価アルコール等の保湿剤、保存料、香料、薬効成分等の有効成分といった通常化粧料や医薬品もしくは医薬部外品に含まれる原料を含んでいても良い。上記乳化組成物は、界面活性剤の使用量を抑制することができるため、界面活性剤の使用を低減したいという顧客ニーズに答えることができる。また、一般工業用剤にも使用することができる。 上記した化粧料としては、例えば、乳液、美容液、クリーム、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム、乳液状ファンデーション、クリーム状ファンデーション、クリーム状アイカラー、クリーム状チークカラー、パック、マッサージクリーム、マッサージローション等のスキンケア用化粧料、メイクアップ用化粧料、ボディローション、ボディ用クリーム、ハンドクリーム等のボディ用化粧料、ヘアリンス、ヘアセットローション、ヘアワックス、ヘアトリートメント等のヘア用化粧料、染毛用剤、パーマネントウエーブ用剤、入浴剤、洗浄剤等が挙げられる。 また、上記した外用剤としては、従来、外用剤として慣用されている剤型、例えばクリーム剤、ゲル剤、ローション剤、乳剤、液剤、スプレー剤、パップ剤、テープ剤またはパッチ剤等、任意の剤型を有する外用剤が挙げられる。 また、上記した一般工業用剤としては、塗料、コーティング剤、接着剤、製紙用剤、インク、香料、農薬、床用ワックス等のハウスホールド製品、家庭用や工業用に用いられる洗浄剤、ワックスや油膜取り剤等のカーケア製品、離型剤、芳香剤等が挙げられる。 以下、本発明について実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。<カチオン化キサンタンガムの製造>製造例1、2、4〜12 水172.8gにアルカリ剤たる水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)5.76gを添加して均一に溶解させ、得られた水溶液にさらにイソプロピルアルコール(ナカライテスク株式会社製)265.5gとキサンタンガムたるラボールガムGS−C(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)100gとを添加して均一に溶解させた。次いで、得られた溶液に、下記表1に示す配合量でカチオン化剤たるグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(阪本薬品工業株式会社製)を加え、得られた混合物を、50〜55℃の温度下で攪拌しつつ5時間反応させた。 このようにして、キサンタンガムとカチオン化剤とを反応させてカチオン化キサンタンガムを生成させた。 ここで、上記カチオン化剤を加えて得られた混合物に含まれているイソプロピルアルコールの質量は265.6g、水及びイソプロピルアルコールの合計質量は438.4gであっため、かかる混合物中のイソプロピルアルコール濃度は、60.6質量%と算出された。 反応終了後、反応液を49.2%硫酸6gで中和した後、得られた反応生成物を濾過(濾手)し、60質量%イソプロピルアルコール438.4gで洗浄及び濾過を行った。次いで、反応生成物を75%イソプロピルアルコール339.2gで洗浄及び濾過し、さらに、90質量%メタノール(ナカライテスク株式会社社製)240gで洗浄し、余剰のカチオン化剤を除去してカチオン化キサンタンガムを得た。製造例3 また、下記表1に示すように、水、イソプロピルアルコール、カチオン化剤及びアルカリ剤の配合量を変えること以外は上記製造例1、2、4〜12と同様にして、製造例3のカチオン化キサンタンガムを得た。<有効カチオン電荷量の測定> 製造例1〜12で得られたカチオン化キサンタンガムの全窒素含量Mtと、該カチオン化キサンタンガムの製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maとを、セミケルダール法(食品添加物公定書第8版、一般試験法)に基づいて測定した。 まず、得られたカチオン化キサンタンガムを含水アルコール(具体的には90質量%メタノール)で洗浄し、洗浄液中のカチオン化剤(グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド:分子量151)の対イオンとして塩素の質量を、Fajans法に基づいて測定した。なお、塩素の質量とカチオン化剤の質量との関係を示す検量線を予め作成し、この検量線に塩素の質量の測定結果をあてはめることによって、残存カチオン化剤の質量を得た。 次に、得られた残存カチオン化剤の質量の、測定に用いたカチオン化キサンタンガムの質量に対する百分率を算出することによって、カチオン化キサンタンガム中の残存カチオン化剤含有量R(質量%)を算出した。 そして、得られた残存カチオン化剤含有量Rから、以下の計算式に従って、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mr(重量%)を算出した。なお、窒素の原子量を14.0とした。 Mr=R×窒素の原子量(14.0)/カチオン化剤の分子量(151)このようにして測定した全窒素含量Mtと、残存カチオン化剤に由来する窒素含量Mrと、キサンタンガムの窒素含量Maとから、下記式に従って、有効カチオン電荷量を算出した。結果を表1に示す。なお、上記製造に用いたキサンタンガムの窒素含量Maは、0.40であった。 有効カチオン電荷量(meq/g)=(Mt―Mr―Ma)×1000/[(窒素の原子量(14.0))×100] 上記のようにして得られた各カチオン化キサンタンガムを、濃度が0.25質量%となるように水に溶解させた後、得られた溶液に濃度が40質量%となるように炭化水素類(油成分)としての流動パラフィン、及び、濃度が0.1質量%となるように防腐剤としてのメチルパラベンを加え、TKホモミキサー(TK ROBO MICS、特殊機化工業社製)で8000rpm、5分間攪拌することによって乳化を行った。得られた乳化物における乳化粒子の平均粒子径及び乳化粒子の安定性と、乳化物の分離率とを評価した。各評価方法及び評価結果を以下に示す。<乳化力の評価> 乳化物における乳化粒子の調整直後の粒子径(平均粒子径)を、粒子径分布測定装置(レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置、HORIBA製LA−300)を用い、25℃の恒温槽(TAITEC社製、THEMO MINDER SP−12R)に1時間静置下した後、メジアン径(d50)として測定した。また、原料として用いたキサンタンガムを上記と同様にして乳化させて得られた乳化物における乳化粒子の調製直後(乳化直後)の粒子径を測定した。そして、下記のように、カチオン化キサンタンガムの乳化物における乳化粒子の粒子径を、キサンタンガムの乳化物における乳化粒子の粒子径と比較することにより、カチオン化キサンタンガムの乳化物の乳化力を評価した。結果を表2、図1に示す。なお、以下、乳化粒子の粒子径を乳化粒子径という場合がある。 乳化粒子径が、原料たるキサンタンガムでの乳化粒子径未満の場合・・・○ 乳化粒子径が、原料たるキサンタンガムでの乳化粒子径以上の場合・・・×<乳化物の安定性の評価>・乳化粒子の粒子径の経時安定性評価 50℃で7日及び28日保存した乳化物における乳化粒子の粒子径を、上記と同様にして25℃の恒温槽に1時間静置した後に測定し、調整直後からの乳化粒子径の変化率を下記式に基づいて算出した。得られた算出結果を下記のように判定することによって、乳化物の安定性を評価した。なお、調整直後の乳化粒子径は、上記<乳化力の評価>で得られた値を用いた。結果を表2、図1に示す。なお、表2、図1には、原料たるキサンタンガムを用い、上記製造例1〜12と同様にして乳化させて得られた乳化物における乳化粒子径の経時安定性評価結果も併せて示す。 乳化粒子径の変化率(%)=(28日後の乳化粒子径−調製直後の乳化粒子径)/(28日後の乳化粒子径)×100 乳化粒子径の変化率が±10%未満・・・○ 乳化粒子径の変化率が±10%以上・・・×・分離率の評価 得られた乳化物80gをキャップ付のビンに移し、50℃で保存した。保存後、一定時間ごとに、図3に示すように、ビン内に収容された全成分の表面までの高さ(液面の高さA)と、ビン内に収容された全成分のうち下方に存在している水層の上面までの高さ(水槽の高さB)を測定した。そして、得られた液面の高さA及び水層の高さBから下記式により分離率を算出し、下記のように乳化安定性を判定することによって、分離率を評価した。なお、上記水層は、全成分のうち、上方に存在している乳化層(乳化粒子が存在している層)と分離して該乳化層の下方に存在している層とした。結果を表3、図2に示す。なお、表3、図2には、原料たるキサンタンガムを上記と同様にして乳化させて得られた乳化物の分離率を併せて示す。 分離率=水層の高さB/液面の高さA×100(%) 28日後の分離率が0である・・・・○ 28日後の分離率が0を超える・・・× 表2及び図1に示すように、有効カチオン電荷量が、0.62meq/g以上1.13meq/g以下である場合、乳化力あるいは、乳化物の安定性の向上が認められた。また、有効カチオン電荷量が、0.64meq/g以上1.09meq/g以下では、より優れた乳化力あるいは乳化安定性が発揮され、0.72meq/g以上0.94meq/g以下では、一層優れた乳化力及び乳化安定性が発揮されることが示された。 また、有効カチオン電荷量が1.30meq/gを超える場合、乳化力や乳化安定性は良好であるものの、経時的に増粘やゲル化するといったように経時的に物性の変化が起こるため、長時間安定に保存される必要があるものへの使用には適さないことがわかった。 表3、図2に示すように、有効カチオン電荷量が、0.64meq/g以上0.94meq/g以下では、28日目まで分離が認められず、優れた乳化安定性が発揮されることが示された。 キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムであって、 有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下であることを特徴とするカチオン化キサンタンガム。 請求項1に記載されたカチオン化キサンタンガムと、水と、油成分とを含有していることを特徴とする乳化組成物。 【課題】優れた乳化力のみならず優れた乳化物の安定性をも、より確実に発揮し得るカチオン化キサンタンガム及びそれを含有する乳化組成物を提供する。 【解決手段】キサンタンガムの水酸基の一部がカチオン化されてなるカチオン化キサンタンガムであって、有効カチオン電荷量が0.62meq/g以上1.13meq/g以下であることを特徴とするカチオン化キサンタンガム。【選択図】 なし