生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_イソフムロン類を含む自律神経調節剤
出願番号:2011274229
年次:2013
IPC分類:A61K 31/122,A61P 25/00,A61K 36/60,A61P 25/18,A61P 9/12,A61P 3/10


特許情報キャッシュ

小 原 一 朗 形 山 幹 生 JP 2013124237 公開特許公報(A) 20130624 2011274229 20111215 イソフムロン類を含む自律神経調節剤 キリンホールディングス株式会社 000253503 勝沼 宏仁 100117787 中村 行孝 100091487 横田 修孝 100107342 伊藤 武泰 100111730 小 原 一 朗 形 山 幹 生 A61K 31/122 20060101AFI20130528BHJP A61P 25/00 20060101ALI20130528BHJP A61K 36/60 20060101ALI20130528BHJP A61P 25/18 20060101ALI20130528BHJP A61P 9/12 20060101ALI20130528BHJP A61P 3/10 20060101ALI20130528BHJP JPA61K31/122A61P25/00A61K35/78 DA61P25/18A61P9/12A61P3/10 5 1 OL 11 4C088 4C206 4C088AB34 4C088CA03 4C088NA14 4C088ZA02 4C088ZA42 4C088ZC35 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB15 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA11 4C206NA14 4C206ZA02 4C206ZA42 4C206ZC35 本発明は、自律神経調節剤に関する。 現代社会においては、ストレスが大きな問題になっている。生体は、ストレスを含むさまざまな外部変化に対して生体の恒常性(ホメオスタシス)を一定に保つため、自律神経系、内分泌系、免疫系等が相互に作用しあってバランスをとっている。これらの中でも、生体で最も重要なシステムは自律神経系であるといえる。 自律神経系は、意識的な制御とは無関係に、無意識下で臓器の活動を外部環境や内部環境に対応するように調節している。この自律神経系は、緊張状態で活動が上昇する交感神経系と、リラックス時などの弛緩状態に活動が上昇する副交感神経系とから構成される。この2種類の自律神経系は、気温や心的ストレスのような外部環境変化や栄養状態などの内部環境変化に対応して、それぞれが拮抗的に働き、それらの変化に身体を対応させている。このとき過度なストレスにさらされ続けると、自律神経バランスが崩れ、交感神経が過剰に活動上昇することにより緊張状態が継続し、不眠のような体調不良に代表される自律神経失調症が引き起こされるとされている。ストレスを感じることが多い現代社会では、自律神経バランスを正常に保ち、過度な交感神経の興奮を抑制できる安全で簡便な方法の提供が望まれている。 現状での解決手段として、アロマセラピーのような香りによるストレス低減方法が汎用されている。アロマテラピーとは、交感神経の緊張状態を緩和あるいは鎮静化するために、精油等に含まれる香気成分を吸引あるいは塗布することにより、それらの症状を改善する方法である。これは、鼻あるいは肺を通して吸収された香気成分が、大脳の視床下部を経て自律神経に作用することによるものである。しかしながら、香りによるストレス低減方法を用いることができる場面は、周囲に香りが広がるその性質から、社会的に極めて限定的であるため、様々な場面で簡便にリラックスできるような他手段が求められている。 例えば、使用場面が限定されない食品や飲料などに自律神経調節効果をもつ成分を含ませ、それを経口摂取することが考えられる。このとき、アロマセラピーで交感神経活動低下効果の報告がなされているような揮発性成分を飲料に含ませる方法が考えうる。しかし、アロマセラピーに用いる成分は、一般的に揮発性が高いために、効果を持たせるほどの濃度を食品や飲料中に含ませると、香りが強すぎて著しく飲料の香味を損ねてしまうか、あるいは香味設計上極めて限られた種類の食品や飲料しか提供できないという問題がある。また、アロマセラピーの様に香りを提示した場合に効果が認められた成分であっても、食用や飲用時にも効果があるとは限らないという問題がある。また、アロマセラピーに用いる成分は、必ずしも経口摂取できるような食品用途の成分であるとは限らない。 以上のような背景から、安全性が高い食品に由来し、有効な濃度を添加しても飲料や食品の香味を損ねず、経口摂取時に高い自律神経調節効果を発揮する成分の開発が望まれている。 一方で、特開2010−209022号公報(特許文献1)は、イソα酸または還元型イソα酸を有効成分として含有する心理状態改善剤に関するものであり、この文献には、イソα酸をエタノールとともに摂取した場合の効果について記載されている。特開2010−209022号公報 本発明は、効果的に自律神経の調節をすることができ、かつ、日常的に摂取することのできる新規な自律神経調節剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、ビールに含まれるホップ由来の成分であるイソフムロン類を、飲料の香味を著しく損ねることのない濃度で含む水溶液を経口投与することにより、副腎交感神経活動が顕著に抑制されることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。 よって、本発明によれば、イソフムロン類、またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分として含んでなる、自律神経調節剤が提供される。 本発明によれば、日常的に摂取して自律神経活動を好適に調節することができる新規の自律神経調節剤が提供される。特に、本発明による自律神経調節剤は、副腎交感神経の活動を抑制することができる。自律神経の中でも、副腎交感神経が興奮すると、副腎髄質からアドレナリンが分泌されるため、血圧上昇や血糖値上昇をもたらすことが知られている。血圧上昇や血糖値上昇は、ストレス応答による代表的な生理変化であり、副腎交感神経の興奮を抑制することにより、これらの生理変化を軽減することが可能となる。図1は、ラットにイソフムロン類20ppm(w/v)水溶液を、1ml/300g体重の用量で胃内投与したときの、副腎交感神経活動(adrenal sympathetic nerve activity、ASNA)の経時変化を示すグラフである。縦軸は、サンプル投与前(0分)のASNAの神経活動を100%とした場合のパーセンテージを示す。横軸はサンプル投与後の経過時間(分)を示す。黒丸はイソフムロン類を投与した場合のグラフであり、黒三角は、対照として水を用いた場合のグラフである。 本発明による自律神経調節剤は、イソフムロン類、またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分として含む。 イソフムロン類は、既にビール系飲料において苦味成分として利用され、生体に対する安全性が確立されている。そのため、本発明の自律神経調節剤は、生体に対する安全性が高く、日常的かつ継続的に摂取可能であり、飲食品(飲料および食品)、飲食品添加物、飼料、飼料添加物等の成分として使用するのに好適である。 本発明による自律神経調節剤は、好ましくはホップの植物体またはホップエキスを含むものとされる。このホップの植物体およびホップエキスは、それぞれイソフムロン類の供給源となることができる。本発明による自律神経調節剤に含まれるイソフムロン類は、これらのホップ植物体またはホップエキスに由来するものであってもよいし、ホップ植物体およびホップエキスとは別に添加されるものであってもよいし、あるいはこれらの混合物であってもよい。前記ホップエキスは、異性化ホップエキスであることが好ましい。また、本発明による自律神経調節剤は、イソフムロン類の供給源として異性化ホップエキスのみを含むものとすることが好ましい。 本発明において「ホップエキス」とは、ホップ毬花の抽出物を意味し、ホップエキスを異性化処理に付すことにより得られた異性化ホップエキスを含む意味で用いられる。ホップエキスの抽出手法や異性化処理については後述する。本発明に用いられるホップエキスは、イソフムロン、イソコフムロンおよびイソアドフムロンを主成分として含有することが好ましい。 ホップエキスにはα酸(フムロン化合物)、β酸(ルプロン化合物)などの酸性樹脂成分が含まれている。また、異性化されたホップエキスにはイソα酸(イソフムロン類)などの酸性樹脂成分が含まれている。本発明において「フムロン化合物」は、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンを含む意味で用いられる。また、本発明において「ルプロン化合物」はルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン及びプレルプロンを含む意味で用いられる。さらに、本発明において「イソフムロン類」は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、及びテトラハイドロイソポストフムロンを含む意味で用いられる。なお、イソフムロン類にはシスおよびトランス立体異性体が存在するが、特に断りがない限りその両者を含む意味で用いられる。 本発明の好ましい実施態様によれば、イソフムロン類は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、およびテトラハイドロイソポストフムロン、ならびにこれらの2以上の混合物からなる群から選択されるものとされる。 ホップエキスは、例えば、毬花やその圧縮物をそのままもしくは粉砕後、抽出操作に供することによって調製したものを用いることができる。抽出方法としては、例えば、ビール醸造に用いられるホップエキスの調製法として用いられるエタノール溶媒による抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法などがある。このうち超臨界二酸化炭素抽出はポリフェノール成分が少なく、苦味質と精油成分がより高く濃縮されるなどの特徴を有する。また、ホップ抽出法として、その他一般に用いられる方法を採用することができ、例えば、溶媒中にホップの毬花、その粉砕物などを冷浸、温浸等によって浸漬する方法;加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法;またはパーコレーション法等を挙げられる。得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使用の態様により、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮若しくは乾燥して用いてもよい。また濃縮乃至は乾燥後、さらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いることもできる。更に、上記のようにして得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段により乾燥させて得られたホップ抽出エキス乾燥物を使用してもよい。 上記の抽出に用いられる溶媒としては、例えば、水;メタノール,エタノール,プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類;その他アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼンやヘキサン等の炭化水素;エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒を挙げることができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用することもできる。 異性化ホップエキスは、ホップエキスを異性化処理することにより得ることができる。異性化処理の方法は公知であり、いずれの方法を用いてもよいが、典型的には、ホップエキスをpH8〜9の弱アルカリ条件下で、あるいは酸化マグネシウム存在下で加熱することで実施することができる。ホップエキスをそのまま異性化処理に付してもよいが、異性化処理に先立って、ホップエキスを加温アルカリ水に添加し(ホップエキス添加後にpH8〜9)、溶解したα酸と不溶のβ酸を分離し、得られたα酸画分を異性化処理に付してもよい。 ホップエキスはビール添加物として市販されており、本発明では市販品を使用することができる。例えば、ホップ毬花粉砕物から主にフムロン類とルプロン類を超臨界二酸化炭素抽出したホップエキス(例えば、CO2 Pure Resin Extract(Hopsteiner社))、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化したエキス(例えば、Isomerized Kettle Extract (SS. Steiner社))、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化した後、さらにカリウム塩化して粘性の低い液体とした水溶性エキス(例えば、ISOHOPCO2N(English Hop Products社)、Iso-Extract30%(Hopsteiner社))などを用いることができる。 イソフムロン類の薬理学的に許容される塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、好ましくはカリウム塩またはナトリウム塩、より好ましくはカリウム塩とされる。また、イソフムロン類の薬理学的に許容される溶媒和物としては、ホップエキスの製造に用いられる溶媒に由来する溶媒和物、例えば、水和物、アルコール和物(例えば、メタノール和物、エタノール和物)、およびエーテル和物(例えば、ジエチルエーテル和物)が挙げられる。 本明細書において、イソフムロン類は、副腎交感神経活動を抑制することが実証されている。よって、本発明による自律神経調節剤は、好ましくは副腎交感神経活動の抑制に用いられる。より具体的には、本発明による自律神経調節剤は、例えば、ストレスの緩和、リラックス効果、リフレッシュ効果、血圧降下および血糖値低減からなる群から選択される効果を得るために用いられる。 本明細書において「ストレスの緩和」とは、ストレスによって自律神経バランスが崩れ、交感神経が過剰に活動上昇することにより緊張状態が継続している状態を緩和することをいう。本明細書において「リラックス」とは、緊張が解かれている状態、より詳細には、交感神経の興奮が抑えられ、副交感神経の働きが優位になっている状態をいう。本明細書において「リフレッシュ効果」とは、感覚を刺激して気分を切り替え、これにより活力や元気を回復する効果をいう。 本発明による自律神経調節剤を医薬品として提供する場合には、そのような医薬品は、本発明による自律神経調節剤を薬学上許容される添加物と混合することにより製造できる。 本発明による自律神経調節剤は、有効成分として経口投与または非経口投与することができ、好ましくは経口投与される。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターを担体として使用できる。 製剤は、例えば、下記のようにして製造できる。 経口剤は、有効成分に、例えば賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)または滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などを用いることができる。 注射剤は、有効成分を分散剤(例えば、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などと共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。 外用剤は、有効成分を固状、半固状または液状の組成物とすることにより製造することができる。例えば、上記固状の組成物は、有効成分をそのまま、あるいは賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、白糖)、増粘剤(例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体)などを添加、混合して粉状とすることにより製造できる。上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様にして製造できる。半固状の組成物は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟骨状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれもpH調節剤(例えば、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム)などを含んでいてもよい。坐剤は、有効成分を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造できる。該組成物に用いる油性基剤としては、高級脂肪酸のグリセリド〔例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)〕、中級脂肪酸〔例えば、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製)〕、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油)が挙げられる。水性基剤としては、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコールが挙げられる。また、水性ゲル基剤としては、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体が挙げられる。 本発明による自律神経調節剤は、食品添加剤として利用することもできる。従って、本発明の他の態様によれば、本発明による自律神経調節剤と同じ成分を含んでなる食品添加剤が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、本発明による自律神経調節剤、または本発明による自律神経調節剤と同じ成分を含んでなる食品が提供される。 イソフムロン類は、前記のように自律神経の調節、特に副腎交感神経活動の抑制という生理的作用を発揮する。従って、本発明による食品添加剤には、この生理的作用を期待した食品への添加が意図されたものも含まれる。添加対象や添加態様は本発明による食品に関する記載に従うことができる。 本発明による食品は、本発明による自律神経調節剤、または本発明による自律神経調節剤と同じ成分を有効量含有した飲食品である。ここで「有効量含有した」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲でイソフムロン類が摂取されるような含有量をいう。 本発明による自律神経調節剤を食品として提供する場合には、本発明による自律神経調節剤、または本発明による自律神経調節剤と同じ成分をそのまま食品に配合することができる。より具体的には、本発明による食品は、本発明による自律神経調節剤をそのまま飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を更に配合したもの、液状、半液体状若しくは固体状にしたもの、カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶液状にしたもの、一般の飲食品へ添加したものであってもよい。 本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品を含む意味で用いられる。 また、「食品」の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは食品(飲料を除く)または非アルコール性飲料とされる。本明細書において「非アルコール性飲料」とは、飲料中のエタノール濃度が1重量%未満の飲料であればよいが、好ましくは0.5重量%未満のもの、より好ましくは0.05重量%未満のもの、さらに好ましくは0.005重量%未満のものをいう。エタノールが含まれていない(0重量%)飲料であってもよい。 イソフムロン類は、前記のように自律神経の調節、特に副腎交感神経活動の抑制という生理的作用を有する。よって、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する健康食品や機能性食品等に、本発明による自律神経調節剤、または本発明による自律神経調節剤と同じ成分を配合することにより、健康の維持・増進に役立つ食品、具体的には、自律神経の調節、特に副腎交感神経活動の抑制といった機能を併せ持つ食品として提供することができる。より具体的には、本発明による食品は、ストレス緩和作用、リラックス効果、リフレッシュ効果、血圧降下または血糖値低減といった機能を併せ持つ食品として提供することができる。すなわち、本発明による食品は、過度なストレスなどに起因して、自律神経バランスが崩れ、交感神経が過剰に活動上昇することにより緊張状態が継続している、またはしやすい消費者に適した食品、特に特定保健用食品、として提供することができる。 飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。 本発明による食品は、当該分野で通常使用される添加物を、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で更に含有していてもよい。そのような添加物としては、例えば、甘味料、酸味料、香料、酸化防止剤、苦味料、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂;グルテン等のタンパク質;アミノ酸;ペプチド;グルコース、フルクトース等の単糖類;スクロース等の二糖類;デキストロース、デンプン等の多糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;ビタミンC等のビタミン類;亜鉛、銅、マグネシウム等のミネラル類;CoQ10、α−リポ酸、カルニチン、カプサイシン、ポリフェノール類等の機能性素材;果汁;乳、乳成分などが挙げられる。これらの添加物は、各々を単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。 本発明による自律神経調節剤、医薬品および食品は、人類が飲食品として長年摂取してきたホップエキスを利用することから、毒性も低く、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いられる。本発明による分解産物の投与量または摂取量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明による自律神経調節剤を経口投与または経口摂取する場合、その用量は、体重60kgの成人では、1回当たりイソフムロン類換算で、1〜15mg、好ましくは2〜10mg、より好ましくは4〜8mgの範囲とすることができ、これを、必要に応じて1日あたり1回または複数回投与または摂取することができる。食品として摂取する場合には、このような用量を摂取できるように、本発明による自律神経調節剤を食品に配合することができるが、例えば、イソフムロン類換算で、10〜60ppm(w/v)、好ましくは15〜50ppm(w/v)、より好ましくは20〜40ppm(w/v)の範囲の濃度とすることができる。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による自律神経調節剤は、イソフムロン類換算で20ppm(w/v)以上となるように食品に配合される。 本発明の他の態様によれば、本発明による自律神経調節剤、または本発明による自律神経調節剤と同じ成分を、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含んでなる、自律神経を調節する方法、副腎交感神経活動を抑制する方法、ならびにストレスの緩和、リラックス効果、リフレッシュ効果、血圧降下および血糖値低減からなる群から選択される効果を得る方法が提供される。 本発明のさらに別の態様によれば、自律神経調節剤の製造のための、イソフムロン類、またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用が提供される。 以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例1:イソフムロン類による副腎交感神経活動の抑制効果 実験には、12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下に24℃の恒温動物室にて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を使用した。実験当日は、3時間絶食させた後にウレタン麻酔し、胃内投与用のカニューレを挿入し、その後、副腎交感神経遠心枝を銀電極で吊り上げ、(Shen J, et al. Neurosci. Lett. 383188-193, 2005;Tanida M, et al., Neurosci. Lett. 389: 109-114, 2005)に記載の方法に準じてそれら神経の電気活動を測定した。 これらの測定値が落ち着いた時期(13時頃)に、イソフムロン類20ppm水溶液を1.0ml/300g体重の用量で胃内投与して、その際に生じるこれらの副腎交感神経遠心枝の電気活動の変化を90分間にわたって電気生理学的に測定した。ここで用いたイソフムロン類20ppm水溶液は、イソフムロン、イソアドフムロンおよびイソコフムロンを主成分とする異性化ホップエキス(商品名:Iso-Extract 30%、Hopsteiner社製、ホップの毬花粉砕物を炭酸ガス抽出し、異性化して得られたエキスであり、イソフムロン類が約30重量%の濃度で含まれる)を、イソフムロン類が20ppm(w/v)の濃度となるように水で希釈したものである。対照実験としては、水を1.0ml/300g体重の用量で胃内投与して、その際に生じる副腎交感神経遠心枝の電気活動の変化を90分間にわたって電気生理学的に測定した。 なお、手術開始から測定終了まで、ラットの気管にチューブを挿入して気道を確保するとともに、保温装置にて体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保つようにした。 得られた神経活動のデータは、5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5 s)の平均値として解析し、刺激開始(サンプル投与)前5分間の平均値(0分値)を100%とした百分率で表した。なお、データから平均値+標準誤差を計算するとともに、群としての統計学的有意差の検定はanalysis of variance (ANOVA) with repeated measuresにより行ない、胃内投与開始前(0分)の神経活動の絶対値間の統計学的有意差の検定はMann-Whitney U-testにより行なった。 図1は、ラットにイソフムロン類20ppm(w/v)水溶液を、1ml/300g体重の用量で胃内投与したときの、副腎交感神経活動(adrenal sympathetic nerve activity、ASNA)の経時変化を示すグラフである。縦軸は、サンプル投与前(0分)のASNAの神経活動を100%とした場合のパーセンテージを示す。横軸はサンプル投与後の経過時間(分)を示す。黒丸はイソフムロン類を投与した場合のグラフであり、黒三角は、対照として水を用いた場合のグラフである。図1から明らかなように、対照実験として行った水の投与によれば、ASNAはやや低下し、投与35分後にASNAの最低値91.6%、投与60分後にASNAの最高値98.5%が観察された。これに対して、イソフムロン類20ppm水溶液の投与によれば、ASNAは顕著に低下し、投与90分後には17.5%という低いASNA値が観察された。 胃内投与開始5分後から90分後までの間のASNA値をイソフムロン類20ppm水溶液投与群、と水投与群の2群で統計学的検討により比較すると、イソフムロン類20ppm水溶液投与群のASNA値は水投与群のASNA値よりも有意(P<0.0005, F=60.6 by ANOVA with repeated measures)に低いことが明らかになった。胃内投与開始前(0分)のASNAの絶対値は、群間でMann-Whitney U-testによる有意差が認められなかった。 イソフムロン類、またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分として含んでなる、自律神経調節剤。 ホップの植物体またはホップエキスを含んでなる、請求項1に記載の自律神経調節剤。 ホップエキスが異性化ホップエキスである、請求項2に記載の自律神経調節剤。 副腎交感神経活動の抑制に用いるための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自律神経調節剤。 ストレスの緩和、リラックス効果、リフレッシュ効果、血圧降下および血糖値低減からなる群から選択される効果を得るための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自律神経調節剤。 【課題】効果的に自律神経の調節をすることができ、かつ、日常的に摂取することのできる新規な自律神経調節剤の提供。【解決手段】イソフムロン類、またはその薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効成分として含んでなる自律神経調節剤。【選択図】図1


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