タイトル: | 公開特許公報(A)_センサチップ |
出願番号: | 2011271903 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | G01N 27/28,G01N 27/327,G01N 27/416 |
岡 卓也 中野 悠介 中谷 将也 JP 2013124861 公開特許公報(A) 20130624 2011271903 20111213 センサチップ パナソニック株式会社 000005821 内藤 浩樹 100109667 永野 大介 100109151 藤井 兼太郎 100120156 岡 卓也 中野 悠介 中谷 将也 G01N 27/28 20060101AFI20130528BHJP G01N 27/327 20060101ALI20130528BHJP G01N 27/416 20060101ALI20130528BHJP JPG01N27/28 PG01N27/30 351G01N27/46 386Z 5 1 OL 9 本発明は、例えば細胞やリポソームなどの脂質膜上に発生するイオン流を計測検知することによって細胞活性を測定し、薬物の評価を行うための細胞電気生理センサチップに関するものである。 従来の、細胞の電気的活動を指標にして細胞膜に存在するイオンチャネルの機能を解明したり、薬品をスクリーニング(検査)したりする方法として、パッチクランプ法が挙げられる。 このパッチクランプ法は、マイクロピペットの先端部分で細胞膜の微小部分(パッチという)を軽く吸引し、マイクロピペットに設けた微小電極プローブを用いて、パッチを横切る電流を、固定(クランプ)した膜電位のもとで測定するものである。そして、これにより、パッチに存在する1個または少数個のイオンチャネルの開閉の様子を電気的に記録することができるものである。そして、これは細胞の生理機能をリアルタイムで調べることのできる数少ない方法の一つである。 しかしながら、パッチクランプ法はマイクロピペットの作成および操作に特殊な技術・技能を必要とし、一つの試料の測定に多くの時間を要することから、大量の薬品候補化合物を高速でスクリーニングする用途には適していない。 これに対して、近年、微細加工技術を利用した平板型の微小電極プローブの開発がなされており、この方法は個々の細胞についてマイクロピペットの挿入を必要としない自動化システムに適している。 例えば、図6に示すように、細胞保持基板101に貫通孔104を設け、この貫通孔104の開口部に被検体細胞115を接着させ、貫通孔104の下方に配置した電極116、117で、被検体細胞115の電位依存性のイオンチャネル活性を測定する技術を開示している(例えば、特許文献1参照)。 また、シリコン酸化物製の細胞保持基板(membrane)の内部に2.5μmの貫通孔(hole)を形成し、この貫通孔にヒト培養細胞株の一種であるHEK293細胞を保持させて高い密着性を確保して高精度に細胞外電位を測定する技術を開示している(例えば、非特許文献1参照)。特開2009−291135号公報T.Sordel et al, Micro Total Analysis Systems 2004,P521−522 従来の細胞外電位を測定する方法として、細胞保持基板に貫通孔を設けた細胞電気生理センサチップが開発されている。しかしながら、これら細胞電気生理センサチップを用いて高精度に細胞外電流を計測するためには、センサチップと被検体細胞との密着性を高める必要があるが、高い密着性は短時間で崩壊してしまうため、薬理評価に十分な測定データを得るために被検体細胞の高い密着性を長時間維持するという課題があった。 本発明は、被検体細胞とセンサチップとの密着性を長時間安定にすることによって薬理評価に十分な測定データを得ることのできる細胞電気生理センサチップを提供することを目的とする。 上記課題を解決するための本発明は、第一の面と第二の面とを持つ基板であって、前記基板には第一の面と第二の面とを貫通する少なくとも一つ以上の貫通孔が設けられており、前記基板の第一の面と第二の面の少なくとも一部に炭化水素膜あるいは有機ケイ素膜が結合されていることを特徴とするセンサチップを提供する。 本発明のセンサチップによれば、炭化水素の膜で覆われた基板と貫通孔の一部の親水性が減少し、貫通孔に捕捉された被検体細胞の細胞膜との親和性が悪くなり、貫通孔内を細胞膜が通過しにくくなる。このため、貫通孔内壁上の炭化水素膜が結合されていないところに細胞膜が固定され、被検体細胞の細胞膜が貫通孔内を滑って細胞が通過することを防止することができる。このため、細胞膜が貫通孔内に過剰に入り込むことによる細胞膜の崩壊を防止することができるようになり、細胞膜の崩壊による細胞の破壊を防止することができるようになり、被検体細胞とセンサチップとの密着性を長時間維持することができるようになる。 さらに、細胞捕捉部を形成する貫通孔に炭化水素による絶縁膜が形成されるため、電気容量を下げることができるようになり、センサチップの電気容量が小さくなることによって、細胞外電位の測定の際の電気ノイズを低減することができるようになり、微弱な細胞外電位の変化であっても高感度に検出することができるセンサチップを提供することができるようになる。本発明の実施の形態1におけるセンサチップを示す断面図本発明の実施の形態1におけるセンサチップの上面図本発明の実施の形態1における成膜方法を示す図本発明の実施の形態1における成膜装置を示す図本発明の実施の形態1におけるセンサチップの測定方法を示す図本発明の実施の形態1における従来の測定方法を示す図 以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。 (実施の形態1) 以下、本発明の実施の形態1におけるバイオチップについて図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態1におけるセンサチップの構成を示す断面図であり、図2は図1の上面図である。図1及び図2において、本実施の形態1における細胞電気生理センサの基本的な構成は、少なくとも第一の面1と第二の面2とを有する基板3と、この基板3の第一の面1と第二の面2とを貫通する貫通孔4と、基板3の第二の面2上と貫通孔4の内壁の一部に連続して有機膜5(炭化水素膜5a)が成膜されている。基板3上には、被検体を捕捉しやすくなるようにフレーム6が形成されており、センサチップ7を構成している。 例えば、基板3は、少なくとも第一の平面と第二の平面を有した平板を用いることができ、シリコン基板などの入手性、加工性に優れたウエハーを準備し、フォトリソ技術を用いたエッチング加工などによって、一括して作製することができるとともに、高寸法精度で微小な形状を有するセンサチップを効率よく作製することができる。 例えば、シリコン基板をC2F4やCHF3、CH2F2などの活性化ガスを用いて異方性エッチングすることによって、シリコン基板からフレーム6をおよび貫通孔4を形成することができるが、これに限定されるものではない。 特に、シリコンと二酸化シリコンの積層構造を有したSOI基板を用いることが好ましい。このSOI基板は、半導体デバイスを作製する際に良く用いられ、入手は容易であり、二酸化シリコンの厚みは所定の厚みを指定することによって容易に作製することができるものである。また、二酸化シリコン表面は様々な官能基で化学修飾することが容易であり、表面性を所望の親水性に制御することができるため、センサチップの表面状態をコントロールする上で高いポテンシャルを有しており、センサチップ、特にバイオセンサチップ素子としてよく用いられている。 図3に、炭化水素膜5aを成膜する方法を示す。炭化水素膜5aの成膜には例えば真空蒸着、化学蒸着(CVD)、あるいはスパッタリングなどを用いることができ、また、炭化水素ガスに暴露することでも成膜することができる。図3が示すように、蒸着源8を貫通孔4に対して斜めに配置することによって、第二の面2および、第一の面1と第二の面2とを導通する貫通孔4の内壁一部に炭化水素膜5aが蒸着される。蒸着源8の貫通孔4に対する角度を変えることによって、炭化水素膜5aが成膜される貫通孔4の内壁深さを調節することができる。 炭化水素膜5aを成膜する方法としては、これらに限定されるものではなく、基板3上に成膜することのできる方法であればいずれの方法も用いることができる。 なお、炭化水素膜5aの種類としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンデカン、などのアルカン分子を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、例えば分子内に分岐を持ったものや芳香族炭化水素やシクロデキストリンなど炭化水素であればいずれの場合であっても用いることができる。 なお、有機膜5として有機ケイ素膜を用いた場合でも、炭化水素膜5aと同様の効果を奏することができる。有機ケイ素膜は、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどシランカップリング剤を用いることができるが、これらに限定されるものでは無く、シラノール基を有するものであればいずれの化合物も用いることができる。 図4は実施の形態1における炭化水素膜5aの蒸着装置の一例を示したものであるが、この構成に限定するものではなく、炭化水素の成膜を行うことのできる装置であればいずれの装置も用いることができる。 例えば、真空槽9内には、センサチップ7を固定したチップホルダ10とその近傍に配された膜厚計11があり、蒸着源8とセンサチップ7の間には、炭化水素の飛来方向を一定にするためのガイド12を有しており、真空槽9は真空槽9内を真空にするための真空ポンプ13に接続されている。 上記構成において、真空ポンプ13で真空槽9内の真空度を、例えば10E-3Paまで高めた後、加熱などの方法を用いて蒸着源8から炭化水素を蒸発させる。蒸発した炭化水素分子のうち、ガイド12に遮蔽されない蒸発分子のみ、センサチップ7方向に移動することができるため、蒸着分子を一定方向に飛ばすことができる。こうして、蒸着分子を一定方向に飛ばすことによって、所望の平面のみに炭化水素膜5aを成膜することができる。 膜厚計11を用いて成膜時間を制御することによって所望の炭化水素膜5aの膜厚を得ることができるようになる。そして、蒸着中にローテーターなどの駆動機構を用いてチップホルダを回転させることによって、貫通孔4の内壁に均等に炭化水素膜5aを成膜することができる。 また、貫通孔4と蒸着分子の方向軸との角度を45度になるように配置することによって、貫通孔4の内壁の炭化水素膜5aを貫通孔から垂直方向に対して貫通孔4の直径に等しい深度まで形成することができ、この角度を調節することによって、成膜深度を制御することができる。 図5は実施の形態1における本発明のセンサチップ7を用いた細胞電気生理測定方法を示している。図6は従来の炭化水素膜を成膜させていないセンサチップを用いた場合の細胞電気生理測定方法を示している。 図5において、第一の面1の上方、及び第二の面2の下方には電解液14が満たされており、貫通孔4を介して導通している。第一の面1側の貫通孔4上には被検体細胞15が捕捉されており、被検体細胞15はセンサチップ7上に密着している。フレーム6の内部には液体などを貯留することができるキャビティが形成されており、このキャビティ内に細胞などを含んだ液体などを貯留させることができる。そして、例えば、貫通孔4の下部から吸引などの手段を用いて、電解液14中に浮遊している被検体細胞15を貫通孔4上に捕捉することができる。電解液14にはそれぞれ測定電極16と参照電極17が接続されており、貫通孔4上に捕捉された被検体細胞15に所望の電圧を印加し電流を計測することができる。 上記構成において、この被検体細胞15に化合物などを含有した薬液を反応させ、薬液に対する細胞膜電位の変化などを測定電極16で連続的に記録するものである。なお、貫通孔4を複数個設けることによって、複数の浮遊細胞を貫通孔4上に捕捉し、被検体細胞15の応答を平均値として計測することも可能であり、この場合、被検体細胞15の固体差によるバラツキを抑えることができるため、精度の高い計測結果を得ることができるようになる。 被検体細胞15としては、特定のイオンチャネル遺伝子を強制発現させた動物細胞を用いることができ、例えばCHO_hERG細胞やHEK_hERG細胞株、あるいは、脂質二重膜上に創薬ターゲットとなるイオンチャネルタンパク質を導入したリポソームなどを用いることもできる。なお、これらに限定されるものではなく、電気生理測定に供せられる検体であればいずれの細胞も用いることができる。 被検体細胞15の貫通孔4上への密着性が低いと、リーク電流が発生することで、微弱な電流を計測できなくなってしまう。イオンチャネルによって細胞膜上に発生する電流は通常数十pA〜数nAと微弱であるため、メガΩ以上の高い絶縁性が要求される。したがって、測定中にメガΩ以上の絶縁性を維持するために、被検体細胞15を吸引などの手段によって貫通孔4上に捕捉しておく必要がある。 被検体細胞15とセンサチップ7上の密着性を高めるためにはセンサチップ7上の親水性が重要である。センサチップ7上の親水性が高いと、被検体細胞15の細胞膜上の親水性と親和性が高まり、水素結合などを介して密着性が高まる。しかしながら、図6に示すように、従来では貫通孔4の内壁および、第二の面2表面上も高い親水性の場合、被検体細胞15の細胞膜が吸引によって過剰に引き込まれ、第二の面2上に通り抜けてしまうために、被検体細胞15の細胞膜が傷害され、その結果、測定ができなくなってしまうというエラーが発生する。 図5に示すように、本実施の形態では、基板の第一の面1上と貫通孔4内壁の一部には炭化水素膜5aが成膜されていないため、容易に被検体細胞15が捕捉される。そして、第二の面2上および、貫通孔4内壁の一部には炭化水素膜5aが成膜されているために、親水性が低下しており、被検体細胞15の細胞膜との親和性が低下する。そのために、被検体細胞15膜が吸引などの手段によって過剰に吸引された場合であっても、細胞膜のすべりが抑制され、貫通孔4を通り抜けてしまうというエラーが防止でき、結果として、吸引し続けても長時間高い密着性を維持することができるようになる。貫通孔4内壁に形成される炭化水素膜5aの領域としては、例えば、第一の面1から10μm離れた箇所から第二の面2に至る領域とすることができ、貫通孔4の長さが20μmの場合は、貫通孔4の内壁半分に炭化水素膜5aが形成されることとなる。上記形成によって、第一の面1上で被検体細胞15を捕捉する場合、吸引によって細胞膜の一部が貫通孔4内部に吸引されることによって、密着性を高めることができる。例えば貫通孔4の孔径が2μmの場合、細胞膜が吸引されることによって貫通孔4内に引き込まれる容積は被検体細胞15の容積の約5%以下に抑えることができ、細胞への機械的なストレスを軽減することができる。 また、上記10μmは一例を示したものであった、限定されるものではなく、被検体細胞15の大きさに応じて調節することができ、卵細胞などの大きな細胞を被検体細胞15として用いる場合には炭化水素膜5aが形成されていない貫通孔4の内壁部分を長くすることによって、細胞の捕捉性能を改善させることができる。 なお、本実施の形態では、炭化水素膜5aは基板3の第二の面2上と貫通孔4の内壁の一部に連続して成膜されているとしたが、少なくとも、被検体細胞15が捕捉されない面の第二の面2上の貫通孔4開口部に隣接していれば、同様に密着性の維持効果を得ることができる。このため、炭化水素膜5aが、基板3の第二の面2上と貫通孔4の内壁の一部に形成されている際、必ずしも連続していなくてもよい。 また、被検体細胞15の細胞膜を吸引によって引き込ませることによって、細胞の密着性を高めることができるため、第一の面1に接する貫通孔4内壁には炭化水素膜5aは形成されていないほうが望ましい。 なお、フレーム6は形成されていなくても構わないが、フレーム6が形成されていることにより、被検体細胞の捕捉効率を向上させることができる。 また、形成される炭化水素膜5aの膜厚としては、例えばヘプタンを炭化水素として用いて蒸着し、垂直方向に配勾させた場合、約0.89nmになり、疎水的な炭化水素鎖を露出させることができるため、膜厚は1nm以上が望ましいが、これに限定されるものではない。 以上のように、本発明にかかるセンサチップは、創薬研究や診断分野における細胞電気生理計測に用いるデバイスとして利用される。 1 第一の面 2 第二の面 3 基板 4 貫通孔 5 有機膜 5a 炭化水素膜 6 フレーム 7 センサチップ 8 蒸着源 9 真空槽 10 チップホルダ 11 膜厚計 12 ガイド 13 真空ポンプ 14 電解液 15 被検体細胞 16 測定電極 17 参照電極第一の面と第二の面とを持つ基板であって、前記基板には第一の面と第二の面とを貫通する少なくとも一つ以上の貫通孔が設けられており、前記基板の第一の面と第二の面の少なくとも一部に炭化水素膜あるいは有機ケイ素膜が結合されていることを特徴とするセンサチップ。前記炭化水素膜が少なくとも前記貫通孔の内壁の一部に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサチップ。前記貫通孔の内壁の前記炭化水素膜が結合されている領域が、前記炭化水素膜が結合されている面と連続していることを特徴とする請求項2に記載のセンサチップ。前記貫通孔の内壁の前記炭化水素が結合されていない領域が、前記炭化水素膜が結合されていない面と連続していることを特徴とする請求項2に記載のセンサチップ。前記炭化水素膜がアルカンあるいはシクロアルカンの少なくとも1種類以上から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のセンサチップ。 【課題】本発明では、従来用いられるセンサチップに比べて長時間検体細胞を密着性高くセンサチップ上に捕捉しておくことができ、電気ノイズが小さいためにより微弱な電気信号であっても精度良く測定することのできるセンサチップを提供することを目的とする。【解決手段】そして上記問題を解決するために本発明のセンサチップは、基板の一部あるいは貫通孔の一部に炭化水素膜あるいは有機ケイ素膜が成膜されている。これにより、本発明は貫通孔を被検体細胞が通過することによって被検体細胞が破壊されることを防止することができ、センサチップの電気容量が小さいために電気ノイズが極めて低くなり、高精度な細胞電気生理測定を長時間行うことができるようになるため、薬理効果の評価を効率的に実施することが容易になる。【選択図】図1