| タイトル: | 公開特許公報(A)_冷感強度評価方法 |
| 出願番号: | 2011269109 |
| 年次: | 2013 |
| IPC分類: | G01N 30/88 |
▲杉▼本 大介 矢口 善博 済間 俊昇 JP 2013120149 公開特許公報(A) 20130617 2011269109 20111208 冷感強度評価方法 高砂香料工業株式会社 000169466 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 ▲杉▼本 大介 矢口 善博 済間 俊昇 G01N 30/88 20060101AFI20130521BHJP JPG01N30/88 CG01N30/88 201X 4 OL 13 本発明は、被験成分の冷感強度の評価方法に関し、より具体的には、被験成分の皮膚や口腔内等に対する冷感強度を評価する方法に関する。 従来、皮膚外用剤や口腔用組成物等が使用者に与える冷感成分の評価は、主として人の感覚に頼った官能統計評価により行われてきた。 また、他の評価方法としては、角質水分量、経皮水分蒸散量の測定による方法、電療知覚閾値(CPT)の測定による方法、血中IgEの測定による方法、マウスの引っ掻き行動に基づく評価方法、in vitroカルシウムイオン濃度の測定による方法(特許文献1)、心電図及び皮膚電気反射を測定する方法(特許文献2)、TRPA1による活性物質を評価する方法(特許文献3)等が知られている。 一方、分子インプリントポリマー(moleculary imprinted polymer)(以下、「MIP」と記載する場合もある)は、種々の高官能化又は高分子量分子を認識するため、且つプラスチック抗体を製造するために、非常に注目されている。香料化合物についても、ポリマー中に分子インプリントをし得ることが知られている(特許文献4、非特許文献1)。 また、味覚(苦味)成分である高分子化合物のキニーネについて、キニーネ類似化合物のシンコニジンを鋳型(テンプレート)として作製したMIPによる苦味の評価方法は報告されている(非特許文献2)。特開2002−372530号公報特開2006−75364号公報米国特許出願公開第2009/148938号明細書特開平11−240916号公報Analytical Chemistry,Vol.73,2001,pp.4225−4228Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.94,2005,pp.353〜362 上記のように従来、冷感成分の評価は、主として人の感覚検知部位の中でも最も敏感な口腔内における官能統計評価により行われてきた。しかしながら、人による官能評価方法は客観性に乏しく、冷感強度の差異を具体的に絶対的な数値で比較することが困難であった。また、他の評価方法も十分な方法であるとは言えなかった。また、感覚刺激成分である冷感成分を鋳型としたMIPを用いて冷感強度を評価する方法は、これまでに報告はされていない。 本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、冷感強度の差異を客観的かつ具体的に評価することができる冷感刺激成分強度の評価方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研鑽を積んだ結果、冷感成分であるメントールを鋳型としたMIPを含むカラム充填剤を用いた高速液体クロマトグラフィーを用いて、被験成分の冷感強度を客観的に評価できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下に関するものである。<1> 被験成分の冷感強度を高速液体クロマトグラフィーによって評価する方法であって、 メントールをテンプレートとして製造された分子インプリントポリマーを含む充填剤を固定相に用いて被験成分の高速液体クロマトグラフィー測定を行い、 得られた測定データを指標として、前記被験成分の冷感強度を評価する方法。<2> 前記メントールがl−メントールである上記<1>記載の評価方法。<3> 前記測定データが、被験成分の高速液体クロマトグラフィーにおける保持時間tR又は保持係数kである上記<1>又は<2>記載の評価方法。(ただしk=(tR−t0)/t0であり、tRは被験成分の保持時間を示し、t0は固定相に保持されない物質の保持時間を示す。)<4> 前記被験成分が、p−メンタン骨格を有する化合物である上記<1>乃至<3>のいずれか1に記載の評価方法。 本発明の評価方法により、冷感成分が皮膚や口腔内において冷たいと感じる感覚刺激の強度の評価を、的確、且つ、簡便に行うことが可能である。 本発明の評価方法により、被験成分の皮膚や口腔内における感覚刺激強度が最大値に到達するまでの時間についての優れた評価方法が提供される。すなわち、従来、人や動物で行っていた感覚に頼った皮膚や口腔内に関連する冷感強度の評価を、客観的かつ簡便に行うことが可能となる。さらに、本発明の評価方法を利用すれば、冷感成分の各種の冷感強度のスクリーニーングや、更には、皮膚や口腔内の状態の評価が可能となる。図1はメントールテンプレートのMIPポリマーをカラム充填剤として用いた実施例1の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定結果である。図2はブランクMIPをカラム充填剤として用いた比較例1の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定結果である。 本発明は、冷感成分の皮膚や口腔内への冷感刺激の強さを評価する方法(以下、「本発明の評価方法」ともいう)に関する。本発明の評価方法では、メントールを鋳型(テンプレート)としたMIPを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)固定相のカラムに充填して、被験成分のHPLC評価データを冷感強度の指標とする。 本評価方法を用いることによって皮膚や口腔内における冷感成分の強度を、官能評価によらず数値化することが可能になり、冷感強度を的確かつ簡便に、客観的に評価することが可能である。 本発明において「冷感」とは、皮膚外用剤や口腔用組成物等に含まれる化学成分、その他の環境因子によって惹起される、皮膚や口腔内において冷たいと感じる感覚刺激を意味する。 また、「冷感強度」とは皮膚や口腔内において冷たいと感じる感覚刺激の強度を意味するものである。 本発明で評価可能な被験成分としては冷感成分が挙げられる。冷感成分としては、例えば; メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、キュベボール、酢酸メンチル、酢酸プレギル、酢酸イソプレギル、サルチル酸メンチル、サルチル酸プレギル、サルチル酸イソプレギル、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(l−メントキシ)エタン−1−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1−オール、4−(l−メントキシ)ブタン−1−オール、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、グリオキシル酸メンチル、p−メンタン−3,8−ジオール、1−(2−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)エタノン、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、メンチル2−ピロリドン−5−カルボキシラート、モノメンチルスクシナート、モノメンチルスクシナートのアルカリ金属塩、モノメンチルスクシナートのアルカリ土類金属塩、モノメンチルグルタラート、モノメンチルグルタラートのアルカリ金属塩、モノメンチルグルタラートのアルカリ土類金属塩、N−[[5−メチル−2−(1−メチルエチル)シクロヘキシル]カルボニル]グリシン、p−メンタン−3−カルボン酸グリセロールエステル、メントールプロピレングリコールカルボナート、メントールエチレングリコールカルボナート、p−メンタン−2,3−ジオール、2−イソプロピル−N,2,3−トリメチルブタンアミド、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)酢酸エチル、N−(4−メトキシフェニル)−p−メンタンカルボキサミド、N−エチル−2,2−ジイソプロピルブタンアミド、N−シクロプロピル−p−メンタンカルボキサミド、N−(4−シアノメチルフェニル)−p−メンタンカルボキサミド、N−(2−ピリジン−2−イル)−3−p−メンタンカルボキサミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−イソプロイル−2,3−ジメチルブタンアミド、N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,2−ジエチルブタンアミド、シクロプロパンカルボン酸(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アミド、N−エチル−2,2−ジイソプロピルブタンアミド、N−[4−(2−アミノ−2−オキソエチル)フェニル]−p−メンタンカルボキサミド、2−[(2−p−メントキシ)エトキシ]エタノール、2,6−ジエチル−5−イソプロピル−2−メチルテトラヒドロピラン、トランス−4−tert−ブチルシクロヘキサノールなどの化合物およびこれらのラセミ体及び光学活性体; 和種ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイルなどの天然物; 特開2001−294546号公報、特開2005−343915号公報、特開2007−002005号公報、特開2009−263664号公報、特開2010−254621号公報、特開2010−254622号公報、特開2011−079953号公報、米国特許第4136163号明細書、米国特許第4150052号明細書、米国特許第4178459号明細書、米国特許第4190643号明細書、米国特許第4193936号明細書、米国特許第4226988号明細書、米国特許第4230688号明細書、米国特許第4032661号明細書、米国特許第4153679号明細書、米国特許第4296255号明細書、米国特許第4459425号明細書、米国特許第5009893号明細書、米国特許第5266592号明細書、米国特許第5698181号明細書、米国特許第5725865号明細書、米国特許第5843466号明細書、米国特許第6231900号明細書、米国特許第6277385号明細書、米国特許第6280762号明細書、米国特許第6306429号明細書、米国特許第6432441号明細書、米国特許第6455080号明細書、米国特許第6627233号明細書、米国特許第7078066号明細書、米国特許第6783783号明細書、米国特許第6884906号明細書、米国特許第7030273号明細書、米国特許第7090832号明細書、米国特許出願公開第2004/0175489号明細書、米国特許出願公開第2004/0191402号明細書、米国特許出願公開第2005/0019445号明細書、米国特許出願公開第2005/0222256号明細書、米国特許出願公開第2005/0265930号明細書、米国特許出願公開第2006/015819号明細書、米国特許出願公開第2006/0249167号明細書、欧州特許出願公開第1689256号明細書、国際公開第2005/082154号、国際公開第2005/099473号、国際公開第2006/058600号、国際公開第2006/092076号、国際公開第2006/125334号に記載の化合物;等を例示することができる。 特に、メントール、メントン、プレゴール、イソプレゴール、酢酸メンチル、酢酸プレギル、酢酸イソプレギル、サルチル酸メンチル、サルチル酸プレギル、サルチル酸イソプレギル、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(l−メントキシ)エタン−1−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1−オール、4−(l−メントキシ)ブタン−1−オール、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、グリオキシル酸メンチル、p−メンタン−3,8−ジオール、1−(2−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)エタノン、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、メンチル2−ピロリドン−5−カルボキシラート、モノメンチルスクシナート、モノメンチルスクシナートのアルカリ金属塩、モノメンチルスクシナートのアルカリ土類金属塩、モノメンチルグルタラート、モノメンチルグルタラートのアルカリ金属塩、モノメンチルグルタラートのアルカリ土類金属塩、N−[[5−メチル−2−(1−メチルエチル)シクロヘキシル]カルボニル]グリシン、p−メンタン−3−カルボン酸グリセロールエステル、メントールプロピレングリコールカルボナート、メントールエチレングリコールカルボナート、p−メンタン−2,3−ジオール、2−イソプロピル−N,2,3−トリメチルブタンアミド、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)酢酸エチル、N−(4−メトキシフェニル)−p−メンタンカルボキサミド、N−エチル−2,2−ジイソプロピルブタンアミド、N−シクロプロピル−p−メンタンカルボキサミド、N−(4−シアノメチルフェニル)−p−メンタンカルボキサミド、N−(2−ピリジン−2−イル)−3−p−メンタンカルボキサミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−イソプロピル−2,3−ジメチルブタンアミド、シクロプロパンカルボン酸(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アミド、N−[4−(2−アミノ−2−オキソエチル)フェニル]−p−メンタンカルボキサミド、2−[(2−p−メントキシ)エトキシ]エタノール等の、p−メンタン骨格を有する化合物であれば好ましい評価が得られる。 中でもメントール、酢酸メンチル、サルチル酸メンチル、3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、2−(l−メントキシ)エタン−1−オール、3−(l−メントキシ)プロパン−1−オール、4−(l−メントキシ)ブタン−1−オール、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、グリオキシル酸メンチル、p−メンタン−3,8−ジオール、1−(2−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)エタノン、乳酸メンチル、モノメンチルスクシナート、モノメンチルスクシナートのアルカリ金属塩、モノメンチルスクシナートのアルカリ土類金属塩、モノメンチルグルタラート、モノメンチルグルタラートのアルカリ金属塩、モノメンチルグルタラートのアルカリ土類金属塩、p−メンタン−2,3−ジオール等のメントール誘導体であればさらに好ましい評価が得られる。 (高速液体クロマトグラフィー充填剤) 本発明の評価方法において使用する高速液体クロマトグラフィーのカラム充填剤は、メントールをテンプレートとして分子インプリント法により製造したポリマーを含む。 この分子インプリント法は、分離、分析の対象となる特定の化合物をテンプレート分子(いわゆる、鋳型分子)とし、このテンプレート分子と相補的な空隙や表面構造(これらを「サイト」と称する場合もある)を有するポリマー、いわゆる、分子インプリントポリマーを合成する方法である。本発明の評価方法においてはこの分子インプリントポリマー(MIPポリマー)が、分割剤としてカラムに充填される。 この方法で得られる分子インプリントポリマーを被験成分の冷感強度の評価に応用した場合、そのテンプレート分子に対応する対掌体分子は強く保持されるが、他方の対掌体分子は殆ど保持されずに溶出される傾向がある。これは、担体中に形成されたサイトの形状が、テンプレート分子(すなわち、対掌体のうち一方)の構造と相補的に適合し、なおかつ分子インプリントポリマーの官能基とテンプレート分子に対応する対掌体分子の官能基間に結合力が生じるためである。本発明の評価方法では、テンプレート分子に冷感成分であるメントールを、好ましくはl−メントールを用いる。 (分子インプリント法により製造する充填剤) 分子インプリント法においては、例えば、冷感物質としてメントール、好ましくはl−メントールをテンプレートとしてモノマーを鋳型重合することにより担体を得るか、または溶解若しくは溶融したポリマーにテンプレートを溶解させて固化した後、該テンプレートを除去して担体を得ることができる。このようにして製造した分子インプリントポリマーを用いることにより、高速液体クロマトグラフィー充填剤は容易に製造され、低コスト化が可能となる。 本発明において使用可能な分子インプリントポリマーを鋳型重合して得る方法としては、例えば、 共有結合によりテンプレートと機能性モノマーの複合体を形成した後、架橋性モノマーを混合して重合し、得られたポリマーから加水分解等によりテンプレートを除去する共有結合型(G.Wulff,W.Vesper,R.Grobe−Eisler,and A.Sarhan,Makromol.Chem.,178,2799(1977))の方法; イオン結合、水素結合等の非共有結合によりテンプレートと機能性モノマーの複合体を形成し、架橋性モノマーを混合して重合し、得られたポリマーから抽出、蒸発等によりテンプレートを除去する非共有結合型(K.Mosbach,Trends Biochem.Sci.,19,9〜14(1994))の方法;等がある。 一方、重合過程を経ずに分子インプリントする方法としては、例えば、 溶解または溶融したポリマーにテンプレートを溶解させてポリマーの官能基と共有または非共有結合させて固化した後、該テンプレートを除去する簡易分子インプリント法(H.Y.Wang,Langmuir,Vol.13,No.20,5396〜5400(1997)、及び、Yoshikawa M: “Molecular and Ionic Recognition with Inprinted Polymers (ACS Symposium Series 703)”,Bartsch RA,Maeda M ed.,Chap.12,ACS,Washington D.C.(1998))等が挙げられる。 上記したいずれの方法も、本発明において利用可能であるが、メントールをテンプレートとする本発明の評価方法においては、非特許文献1に記載の方法がより好ましい。 (鋳型重合法) 重合溶媒は系内で不活性な溶媒を用いることができ、具体的にはクロロホルム、トルエン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、各種アルコール等の有機溶媒、または水を用いることができる。 重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム等の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤を用いることができ、必要に応じて、該重合開始剤に紫外線を併用することもできる。 重合温度は溶媒の沸点を超えない温度であれば良く、好ましくは0℃〜60℃であるが、非共有結合型の場合は機能性モノマーとテンプレートとの複合体の安定性のために低温であるほうが良い。 重合時間は通常1〜24時間、好ましくは6〜12時間である。 以上のように重合(例えばバルク重合)して得たポリマーを、必要に応じて粉砕してもよい。または、モノマー種にポリビニルアルコール等の分散安定剤を添加して、懸濁重合または乳化重合により球状ポリマーを得ても良い。いずれの場合にも、得られるポリマーの形状は、必ずしも粒子状である必要はなく、カラム内で鋳型重合を行う、いわゆるin situ分子インプリント法を適用しても良い(J.Matsui,T.Katou,T.Takeuchi,K.Yokoyama,M.Suzuki,E.Tamiya,I.Karube,Anal.Chem.,65,2223(1993))。 (簡易分子インプリント法) 一方、重合過程を経ない簡易分子インプリント法の場合は、ポリマーとしてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、また先に挙げた機能性モノマーの重合体や共重合体であって、溶剤に溶解または溶融できるものである限り、特に制限されない。 この簡易分子インプリント法においては、例えば、上記ポリマーを溶剤に溶解させるか、または該ポリマー自体を溶融させ、テンプレート(すなわち、冷感物質、例えば、l−メントール)を溶解させてモノマーの官能基と共有または非共有的に結合させたまま、溶剤の蒸発または冷却により固化させればよい。 (テンプレート除去法) 以上のように鋳型重合又は簡易分子インプリント法により得られた複合体からテンプレートを除去することにより、分子インプリント法によるポリマー担体を得ることができる。 テンプレート除去方法としては、例えば、ソックスレー抽出器を用いたり、カラムに充填して通液することにより抽出する方法、加熱や減圧によりテンプレートを蒸発除去する方法が使用可能である。 抽出溶媒は、共有結合型の場合は水溶液、または酸若しくはアルカリを添加した水溶液が使用可能であり、非共有結合型の場合はテンプレートに対する良溶媒、例えば無機充填剤においては水やアルコール、有機充填剤においては酢酸を添加したアルコール等が使用可能である。 (担体) 上記分割剤であるMIPポリマーをカラムに充填するにあたり、担体と組み合わせて使用することができる。かかる担体は、必要に応じて、粒子状のものでも、多孔質な柱状のものでも良い。粒子状の担体の場合、粒子の大きさは使用するカラムの大きさにより変わる可能性があるが、一般に1μm〜10mmであり、好ましくは1μm〜300μmである。 この担体は多孔質であることが好ましく、その平均孔径は、通常10Å〜100μmであり、好ましくは10Å〜10,000Åである。 上記担体としては、有機担体又は無機担体のいずれも使用可能である。本発明において、有機担体として適当なものとしては、例えば、テンプレートと複合体を形成する機能性モノマーとして不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、ビニルエステル、アリルアルコール誘導体、その他ビニル化合物等の高分子物質が挙げられ、好ましくはポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレートが挙げられる。 上記複合体が共有結合型の場合は、冷感物質、例えば、l−メントールのp−メンタン骨格または水酸基と反応し、鋳型重合後に分解可能な官能基を有するモノマーが好ましく、より具体的には例えば、不飽和カルボン酸、アリルアルコール誘導体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。 機能性モノマーに混合すべき架橋性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジメチルアクリレートやN,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等の脂肪族または芳香族ポリビニルモノマーを使用できる。 他方、複合体が共有結合型の場合は、テンプレートを除去する際に容易に分解されないモノマーが好ましく、より具体的には例えば、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。 テンプレートと複合体を形成すべき機能性モノマーと、該機能性モノマーを架橋すべき架橋性モノマーのモル比は、通常は架橋性モノマー/機能性モノマーの比が0.5〜10、好ましくは2〜5である。モノマーとテンプレートのモル比は、通常はモノマー/テンプレートの比が5〜100、好ましくは10〜80である。 機能性モノマーとテンプレートの共有結合は塩酸、硫酸、燐酸、またはp−トルエンスルホン酸等により、エステル化、エーテル化、またはアミド化することができる。 無機担体として適当なものとしては、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、ガラス、ケイ酸塩、カオリン、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、ゼオライト、活性炭、グラファイト等のような合成または天然の物質が挙げられる。 担体と被験成分(冷感物質)との親和性を向上させるために、必要に応じてオクタデシル基やオクチル基などを用いて、担体に表面処理を施しても良い。 テンプレートと形成すべき複合体が共有結合型の場合は、例えば、種々のカップリング剤(例えばシランカップリング剤)によりテンプレートと無機充填剤とを共有結合させた後、水の存在下でカップリング剤を重合させることにより複合体が得られる。シランカップリング剤としては、イソシアネート基を有するものが使用可能である。 テンプレートと形成すべき複合体が非共有結合型の場合は、例えば、種々のカップリング剤(例えばシランカップリング剤)、水ガラス、アルミナゾル等にテンプレートを添加し、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸等により重合を行うことにより、複合体を得ることができる。 (担体への担持) 分割剤であるMIPポリマーを担体に担持させる量は、担体に対し、(分割剤の質量/担体の質量)の割合で、通常は1〜100質量%、好ましくは5〜50質量%である。 分割剤を担体に担持させる方法としては、化学的方法または物理的方法のいずれも使用可能である。 化学的方法としては、例えば、上記分割剤を種々のカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を用いて担体(例えばシリカゲル)と化学結合させる方法が挙げられる。 物理的方法としては、例えば、分割剤を可溶性の溶剤に溶解させ、得られた溶液を担体と良く混和し、得られた混合物から、減圧下、加温下、又は気流下において溶剤を留去させる方法などが挙げられる。 (溶離液) 高速液体クロマトグラフィーの充填剤から、被験成分を溶離すべき溶離液としては、上記被験成分を溶解するか、又は該被験成分と反応する液体でない限り、特に制限されない。分割剤を担体に化学的に結合した場合には、反応性液体(すなわち、該分割剤と反応または該分割剤−担体の結合に影響する反応を生ずる可能性がある液体)でない限り、特に制限されない。溶離液としては、好ましくはn−ヘキサン等の炭化水素類、各種アルコール、テトラヒドロフラン、若しくは水、またはこれらの溶剤の2以上の混合液を用いることができる。この溶離液に、必要に応じて、鉱酸や金属塩などを添加してもよい。 (高速液体クロマトグラフィー) 本発明において、高速液体クロマトグラフィーを行う系は特に制限されない。また、測定条件も特に制限されず、通常行われる条件にて行うことができる。 (分子インプリント法担体を用いる冷感強度の評価) 上記したようにテンプレート除去が完了した後、得られたインプリントポリマー充填剤をカラムに充填して、被験成分の高速液体クロマトグラフィー測定により被験成分の冷感強度の評価を行うことができる。 具体的には、HPLC測定によって得られた被験成分の保持時間tR、又は保持係数k(ただしk=(tR−t0)/t0であり、tRは被験成分の保持時間を示し、t0は固定相に保持されない物質の保持時間を示す)を冷感強度の指標とする。保持時間tRまたは保持係数kが大きいほど、被験成分の分子構造がMIPテンプレートであるメントールと類似することを意味する。すなわち、被験成分の冷感強度は保持時間tRまたは保持係数kが大きいほどメントールの冷感強度に近づくことを意味する。したがって、HPLC測定を行うことで、被験成分の冷感強度を、従来の官能評価による抽象的評価から、冷感強度の数値による評価への具現化が可能となる。 以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。 なお、合成例、実施例中での測定は、次の機器装置類を用いて行った。液体クロマトグラフ(LC):島津Class vp/ LCMS 2010 EV 実施例中における次の記載が意味する各化合物を以下に示す。CA38D: p−メンタン−3,8−ジオールCAP: l−イソプレゴールCA5: 2−(l−メントキシ)エタノールCA10: 3−(l−メントキシ)−1,2−プロパンジオールCA20: 3−ヒドロキシブタン酸−l−メンチルエステル [合成例](分子インプリントされた充填剤の製造方法) クロロホルム8.8gに機能性モノマーとしてメタクリル酸(MAA)0.52g、架橋性モノマーとしてジメタクリル酸エチレングリコール(EDMA)5.9g、テンプレートとしてl−メントール0.23g、アゾ系重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.031gを加えて溶解させ、60℃で24時間重合を行った。 乳鉢を用いて上記で合成したポリマーを破砕し、ふるいを用いてポリマー粒径8〜45μmのフラクションをメタノールにより湿式分級し、充填剤とした。次いで、この充填剤にメタノールを加え、超音波洗浄機(カイジョー(株)製SONO CLEANER 50D)を用いて洗浄によりテンプレートを除去した後、パッカーによりステンレスカラム(内径4.6mm、長さ250mm)へ導入し、湿式充填した。次にメタノールを流速5ml/minで、60分間流した。 パッカーを外した後、メタノールを流速0.5ml/minで12時間流して通液洗浄によりテンプレートを除去した後、20%メタノール(流速0.5ml/min)で置換した。 [実施例1] (分子インプリントされた充填剤による高速液体クロマトグラフィー) 上記で得たMIP充填剤を詰めたカラムを用い、HPLCで冷感化合物CA38D、CAP、CA5、CA10、CA20の測定を行った。 試料は、冷感化合物1w/v%メタノール水溶液を用い、10μl注入した。溶離液は、水/メタノール(8:2v/v〜1:9v/v)とし、室温で流速0.5ml/min、検出は質量分析計で行い、各々の冷感成分の保持時間tRを算出した。 (冷感成分の官能評価による冷感強度評価) 冷感成分CA38D、CAP、CA5、CA10、CA20については以下の方法により官能評価を行った。 官能評価は、冷感成分をエタノールで10%に希釈し、活性炭で脱臭した水に添加し最終的に100ppmになるように調製した。官能評価は、専門パネラー4名で行った。 (保持時間tRと官能評価による冷感強度の比較) 以上、HPLCにより得られた保持時間tRと、官能評価によって得られた冷感強度の比較を行った。結果を表1に示す。また、HPLC測定結果を図1に示す。 [比較例1] メントールを鋳型としないブランクのMIP充填剤を詰めたカラムを用いてHPLC測定を行った。カラム充填剤以外の測定条件は実施例1と同様である。 冷感化合物はCA5、CA10、CA20を用いた。 HPLCにより得られた保持時間tRと、官能評価によって得られた冷感成分の冷感強度との比較を行った。結果を表1に示す。また、HPLC測定結果を図2に示す。 表1及び図1より、メントールを鋳型としたMIP充填カラムを用いた実施例1のHPLC測定の結果、冷感成分とメントールMIPとの親和性によって保持時間が異なり、分子認識サイトの識別能が機能していることが分かる。このことにより、各冷感成分のメントール構造類似性が評価でき、保持時間tRが長いほど、冷感強度が強いことを示す。この冷感強度の強さの順序は、官能評価による冷感強度と整合性が得られることが分かる。 なお、官能評価の結果は、公知の報告(Perfumer&Flavorist,Vol.29.pp.34〜50,2004)に記載の冷感強度の評価結果と一致するものである。 一方、表1及び図2より、メントールを鋳型としないブランクMIP充填カラムを用いた比較例1のHPLC測定の結果、HPLCのピーク形状はシャープになり、充填剤と試料の相互作用が低いことを示す。また、表1より明らかなように、CA5とCA20の流出順序が逆転し、HPLCの保持時間から、その冷感成分の冷感強度を的確に推定することはできなかった。 上記より明らかなように、メントールを鋳型にしたMIP充填カラムを用いたHPLCによる冷感強度の再現を試みた結果、官能評価による冷感強度と近い評価結果が得られ、冷感強度を客観的に数値化することに成功した。 HPLCカラムにターゲット分子と類似した構造の分子を鋳型としたMIP充填剤を用いることで、その保持時間または保持係数の違いから、ターゲット分子を選択的に認識できる。感覚刺激成分とMIPの親和性をみることで各成分の構造類似性を評価し、ひいては、冷感強度のみならず、様々な感覚刺激成分の強度を具体的に評価する方法にも適用できる。 またこのMIPの特徴を利用して、センサー用チップ、人工抗体、選択性膜など広い応用分野への適用も可能となる。 被験成分の冷感強度を高速液体クロマトグラフィーによって評価する方法であって、 メントールをテンプレートとして製造された分子インプリントポリマーを含む充填剤を固定相に用いて被験成分の高速液体クロマトグラフィー測定を行い、 得られた測定データを指標として、前記被験成分の冷感強度を評価する方法。 前記メントールがl−メントールである請求項1記載の評価方法。 前記測定データが、被験成分の高速液体クロマトグラフィーにおける保持時間tR又は保持係数kである請求項1又は2記載の評価方法。(ただしk=(tR−t0)/t0であり、tRは被験成分の保持時間を示し、t0は固定相に保持されない物質の保持時間を示す。) 前記被験成分が、p−メンタン骨格を有する化合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の評価方法。 【課題】感覚刺激のひとつである冷感刺激成分の冷感強度の差異を、客観性に乏しい人による官能統計評価方法に代えて、客観的かつ具体的に評価することができる冷感刺激成分強度の評価方法を提供する。【解決手段】被験成分の冷感強度を高速液体クロマトグラフィーによって評価する方法であって、メントールをテンプレートとして製造された分子インプリントポリマーを含む充填剤を固定相に用いて被験成分の高速液体クロマトグラフィー測定を行い、得られた測定データを指標として、前記被験成分の冷感強度を評価する方法。【選択図】なし