タイトル: | 公開特許公報(A)_結腸直腸癌のためのマーカーとしてのタンパク質SATB2の使用 |
出願番号: | 2011237699 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 33/574,G01N 33/536,C12N 15/09 |
マティアス・ウーレン フレデリック・ポンテン JP 2012073260 公開特許公報(A) 20120412 2011237699 20111028 結腸直腸癌のためのマーカーとしてのタンパク質SATB2の使用 アトラス・アンティボディーズ・アクチボラゲット 508178490 Atlas Antibodies AB 青山 葆 100062144 山田 卓二 100101454 松谷 道子 100106518 櫻井 陽子 100138911 マティアス・ウーレン フレデリック・ポンテン EP 06114954.8 20060602 US 60/816,613 20060627 G01N 33/574 20060101AFI20120316BHJP G01N 33/536 20060101ALI20120316BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120316BHJP JPG01N33/574 AG01N33/536 BC12N15/00 A 53 2009512511 20070604 OL 103 4B024 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA20 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 本発明は、癌の診断および予後の分野に関する。特に本発明は、SATB2タンパク質をこの癌タイプ用のマーカーとして同定することによる結腸直腸癌の検出および特徴づけにおいて用いられる新たな手段を提供する。SATB2 特定のATリッチの配列に結合するタンパク質2(SATB2)をコードする遺伝子がヒトゲノムの配列決定に多大な努力が払われた期間中の1999年に同定された(キクノ R.(Kikuno R.)ら(1999年)DNA Res.6:197−205頁)。それ以来、SATB2遺伝子は主に神経組織内に発現されるものと考えられている。 SATB2は、核マトリックスの一部を形成する転写因子であり、かつ、マトリックス結合領域(MAR)とも称されるATリッチの配列との相互作用を通じて高次クロマチン構造を調節することにより、組織特異的な様式で遺伝子の発現を組織化する(ディッキンソン L.A.(Dickinson L.A.)ら(1992年)Cell 70、631−45頁;フィッツパトリック D.R.(FitzPatrick D.R.)ら(2003年)Hum.Mol.Genet.12、2491−501頁;ヤスイ D.(Yasui D.)、(2002年)Nature 419、641−5頁;ボード J.(Bode J.)(2000年)Crit.Rev.Eukaryot.Gene.Expr.10、73−90頁)。 この遺伝子およびそのタンパク質産物すなわちSATB2タンパク質に関する試験によると、神経組織内の転写因子としての遺伝子発現の調節への関与が指摘大まかに示されている(ドブレバ G.(Dobreva G.)ら(2003年)Genes Dev.17:3048−3061頁;ブリタノバ O.(Britanova O.)ら(2005年)Eur.J.Neurosci.21:658−668頁)。SATB2遺伝子については、口蓋の発生および口蓋裂における役割を有するとの記載もなされている(フィッツパトリック D.R.(FitzPatrick D.R.)ら(2003年)Human Mol.Genet.12:2491−2501頁;ヴァン・ブヒェンハウト G.(van Buggenhout G.)ら(2005年)Eur.J.Med.Genet.48:276−289頁)。 サラショア(Salahshor)らは、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)の遺伝子突然変異を有する患者について試験を行った(サラショア(Salahshor)ら(2005年)BMC cancer 5:66頁)。APC患者は、若年で異常な量の大腸腺腫を発症し、それは最終的には未治療である場合に結腸直腸癌に進行することになる。グローバルな遺伝子発現プロファイリングによると、SATB2を含む84遺伝子の群が腺腫においては正常な粘膜と比べて有意に改変された発現を有することが示された。SATB2は、有意に下方制御されることが見出されたが、任意のさらなる分析において選択されることはなかった。同様に、Int J Cancerにおける結腸直腸癌に関する最近の発現プロファイリング試験によると、SATB2においてはmRNAレベルで発現状態が改変されることが示された(グローン J.(Groene J.)ら(2006年)Int J Cancer 119、1829−1836頁)。 PCT公開の国際公開第03/022126号パンフレットおよび国際公開第2006/015742号パンフレットでは、癌細胞の発現プロファイリングを目的とした他の類似試験についての記載がある。SATB2を含む多数の遺伝子の発現が分析され、全体的な発現パターンから結論が得られている。 重要なこととして、上記で述べた試験は、SATB2タンパク質の特異的な結腸直腸マーカーとしての使用またはSATB2の結腸直腸癌に対する予後ツールとしての使用に関し、全く示唆を与えていない。癌 癌は西洋世界では疾患および死亡の最も一般的な原因の1つである。一般に、発生率が癌の大部分の形態において年齢とともに上昇する。ヒト集団において全般的な健康状態の増進により寿命が伸び続けるにつれ、癌はますます多くの個人に影響を与えることになる。最も一般的な癌タイプの原因は概して未知であるが、環境因子(食事、喫煙、UV放射など)および遺伝因子(例えばp53、APC、BRCA1、XPなどの「癌遺伝子」における生殖細胞系突然変異)と癌の発生に対するリスクとの間の関連性をもたらす一連の知識は増えつつある。 癌については、癌が本質的に細胞性疾患でありかつ正味の細胞成長および利己的な挙動を伴う形質転換された細胞集団として定義されるという事実はあるが、細胞生物学的観点からすると全体として満足のいく定義は全く存在しない。悪性の形質転換は、不可逆的な遺伝子改変に基づく悪性の表現型への遷移を表す。これは正式には証明されていないが、悪性の形質転換は1つの細胞内に生じ、次いで細胞から発達した腫瘍が生じると考えられている(「癌のクローン性」のドグマ)。発癌は、癌が生成されるプロセスであり、最終的に悪性腫瘍の成長に至る複数の事象を含むと一般に理解されている。この多段階プロセスは、いくつかの律速ステップ、例えば突然変異の付加や場合により後成的事象も含み、前癌性増殖のステージ後に癌の形成をもたらす。最も一般的な形態の癌が体細胞内で発生し、それは主に上皮(皮膚、前立腺、胸部、結腸および肺)由来の癌と、次いで造血系由来の癌(白血病およびリンパ腫)および間葉細胞由来の癌(肉腫)である。段階的変化は、細胞分裂、利己的挙動および細胞死を決定づける、重要な調節経路におけるエラー(突然変異)の蓄積を含む。これらの各変化は、周囲の細胞に対して選択的なダーウィン的成長の有利性を提供し、腫瘍細胞集団の正味の成長をもたらす。悪性腫瘍が形質転換された腫瘍細胞自体だけでなく支持的な間質として作用する周囲の正常細胞からもなることを強調することは重要である。この動員された癌間質は結合組織、血管および様々な他の正常細胞、例えば炎症性細胞からなり、それらは協調し、形質転換された腫瘍細胞に持続的な腫瘍成長にとって必要なシグナルを供給する。癌の診断 腫瘍から採取された組織切片の顕微鏡検査は、依然として癌の診断を確定するためのゴールドスタンダードである。ゲノムDNA、転写遺伝子および発現タンパク質の分析は全て、顕微鏡で検出される組織学的特徴に重要な情報を加える。将来の診断、予後情報および治療の選択は、ほとんどの場合、核酸およびタンパク質の分析とともに形態の全体評価に基づくことになる。既に今日ではヒトゲノム配列および組織内の細胞内および細胞間でのシグナル伝達を含む生化学的経路に基づく知識が高度化していることから、腫瘍形成における異なるステージならびに表現型のバリエーション(異なるタイプの癌を規定する)に内在する機序の一部を解析することが可能である。 分子生物学における目覚しい進歩にもかかわらず、癌の診断は依然として光学顕微鏡の使用に依存する。分子ツールの発達はまだ発展途上であるが、癌細胞を正常細胞から識別するための重要な役割を果たしている。組織切片の組織化学的染色に加えて最も一般的に用いられる方法が免疫組織化学である。免疫組織化学により、特異的抗体を用いて組織や細胞内でのタンパク質の発現パターンが検出可能になる。臨床診断において免疫組織化学を用いることで、組織構造や細胞形態を分析するだけでなく異なる細胞集団内での免疫反応性を検出するという可能性が提供されている。これは、異なる一次腫瘍の正確なグレーディングおよび分類をサポートすることに加え、未知の発生源の転移に関する診断において重要とされている。今日の臨床において最も一般的に用いられる抗体は、細胞タイプマーカー、例えばPSA、MelanA、サイログロブリンに対する抗体、ならびに中間径フィラメント、クラスター分化(cluster of differentiation)(CD)抗原などや悪性度についてのマーカー、例えばKi67、p53、HER−2を認識する抗体を含む。免疫組織化学に加え、突然変異分析において遺伝子増幅を検出しかつ遺伝子の配列決定を行うためのインサイチュ・ハイブリダイゼーションの使用は、癌の診断において進化途上の技術である。結腸直腸癌 結腸直腸癌は、世界中でヒト癌の最も一般的な形態の1つである。パーキン(Parkin)らにより提示されたGLOBOCAM2002データベースからのデータによると、結腸直腸癌における約100万の新たな症例が毎年見出されることが示されている(パーキン(Parkin)ら(2007年)CA Cancer J Clin 55、74−108頁)。さらに、世界における結腸直腸癌の発生率はすべての癌の約9.4%であり、結腸直腸癌は西洋世界における一般的な死亡原因としては2番目である。結腸直腸癌の5年生存率は西洋世界では約60%であるが、東欧やインドでは30%の低さである。 腫瘍の早期検出および切除を伴う手術は、現在、好ましい予後にとって極めて重要である。徴候については、遠位胃腸管内での腫瘍が位置する場所に依存し、腸の苦痛、下痢、便秘、疼痛および貧血(腫瘍から腸への出血に続発)を含む。悪性腫瘍については、異なる分類スキーム、例えばTNM/UICC分類I−IVまたはデュークス(Dukes)ステージA〜Cによるいくつかのステージに分類されうる。最小の悪性腫瘍(デュークスステージAおよびB)が適度に好ましい転帰を有する一方、その対極では転移を伴う一部の極めて悪性の腫瘍(デュークスステージC)の生存率は低い。現行の診断は、患者の病歴、診察および内視鏡検査(直腸鏡検査および結腸鏡検査)と、場合によりその後の腫瘍成長の広がりを判定するための放射線マッピングに基づくものである。内視鏡検査とともに、疑わしい病変から組織生検が行われる。 顕微鏡診断においては、疑わしい腫瘍に由来する生検材料が採取されかつ顕微鏡下で検査される。確定診断を得るため、次いで腫瘍組織がホルマリンに固定され、組織処理され、かつパラフィン包埋される。得られたパラフィンブロックから組織切片が生成され、組織化学的方法および免疫組織化学的方法の双方を用いて染色されうる。 限局された腫瘍、すなわち転移性疾患に進行していない腫瘍においては、腫瘍および周囲の腸および組織の根本的切除を伴う手術的介入がなされる。次いで、手術標本を巨視的分析および微視的分析のために病理学者に送る。この分析は腫瘍のステージングのための基礎を形成する。結腸直腸癌の群を抜いて最も一般的な形態は腺由来の腫瘍を表す腺癌であり、その識別の可能性は高いか、中程度であるかまたは低い。 一次腫瘍においては、ヘマトキシリン−エオシン染色された組織切片が、異なる結腸直腸癌の分類に準じた正確な診断および分類を可能にするのに十分である。しかし、結腸直腸癌は極めて一般的であり、検出前にかなりの大きさに成長していることが多いことから、転移は稀ではない。腫瘍は典型的には局所リンパ節に転移するが、肝臓および肺への遠隔転移は稀ではない。癌に伴う一般的な臨床的問題が未知の発生源の転移を示す患者である。転移が腺癌である症例では、いくつかの考えられる一次腫瘍が、例えば乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌および結腸直腸癌であることが疑われうる。鑑別診断においては、発生源の細胞内に固有の特徴を認識する免疫組織化学的マーカーが用いられうる。現在では、サイトケラチン20(CK20)、胃腸管の腺細胞内に豊む中間フィラメントマーカーを用い、結腸直腸癌の特徴づけが行われる。しかし、いくつかの他の腺癌もCK20抗体に対して陽性でありうる一方、すべての結腸直腸癌が陽性であるとは限らない。さらに今日、生存の見込みが低下した極めて悪性の腫瘍からの転移に対し、悪性グレードが低くかつリスクが低い腫瘍を識別可能な利用可能なマーカーは全く存在しない。 医師が癌の正確なタイプに対する特定の治療をできるだけ早期に提供するため、結腸直腸癌のみに特異的でありかつ患者を異なるリスクのカテゴリーに区別する可能性を与える新たな分子マーカーを提供することが重要である。要するに、結腸直腸癌の診断およびスクリーニングを向上させるための新たな手段に対する大きな需要が存在する。 対象における結腸直腸癌の診断および/または予後にとって有用なマーカーの提供を通じてこの要求を満たすことが本発明の目的である。 結腸直腸癌と他のタイプの癌を識別するのに有用なマーカーを提供することが本発明に関連した目的である。 結腸直腸癌の診断、予後および/または治療における新たな方法を提供することが本発明の別の目的である。 結腸直腸癌の診断、予後および/または治療における方法と併用可能なキットを提供することが本発明に関連した目的である。 本発明の別の目的は、結腸直腸癌の診断、予後および/または治療にとって有用な新規化合物を提供することである。追加の94の異なるヒトタンパク質を2通りに有するタンパク質マイクロチップ上でのSATB2断片(配列番号1)に対して産生される抗体の特異性を図示する。精製された単一特異性抗体における組織のウエスタンブロット分析を示す。全タンパク質抽出物は、ヒト細胞系のRT−4(レーン1)、EFO−21(レーン2)およびA−431(レーン3)、ならびに正常なヒト肝臓(レーン4)および正常なヒト扁桃腺(レーン5)に由来するものである。正常な大脳皮質および海馬における細胞核内でのSATB2の免疫組織化学的染色を示す。正常な睾丸における細胞核内でのSATB2の免疫組織化学的染色を示す。虫垂における粘膜内の腺細胞(正常な対象由来)内でのSATB2の染色を示す。結腸における粘膜内の腺細胞(正常な対象由来)内でのSATB2の染色を示す。直腸における粘膜内の腺細胞(正常な対象由来)内でのSATB2の染色を示す。結腸粘膜内での染色をより高い倍率で示す。11の試験対象の結腸直腸癌試料の全部(2通り)におけるSATB2の免疫組織化学的染色を示す。図4Aに示される癌試料のうちの6つをより高い倍率で示す。中間的に識別された結腸直腸腺癌の免疫組織化学的染色を示す。図5AはSATB2の発現が存在する場合の切片を示し(左)、図5BはSATB2の発現が不在である場合の切片を示す(右)。腫瘍試料は2通りに示される。結腸直腸癌であると診断された122の対象の免疫組織化学的染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアが、低いかまたは高いSATB2レベルに対してスコア化された。実線は25%を超える核の画分である。点線は25%未満の核の画分である。組織は、全患者に由来するものである。結腸直腸癌であると診断された122の対象の免疫組織化学的染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアが、低いかまたは高いSATB2レベルに対してスコア化された。実線は25%を超える核の画分である。点線は25%未満の核の画分である。組織は、女性のみに由来するものである。結腸直腸癌であると診断された122の対象の免疫組織化学的染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアが、低いかまたは高いSATB2レベルに対してスコア化された。実線は25%を超える核の画分である。点線は25%未満の核の画分である。組織は、リンパ節陰性の全患者に由来するものである。結腸直腸癌であると診断された122の対象の免疫組織化学的染色に基づく生存分析の結果を示す。組織コアが、低いかまたは高いSATB2レベルに対してスコア化された。実線は25%を超える核の画分である。点線は25%未満の核の画分である。組織は、リンパ節陰性の女性に由来するものである。SATB2の発現および従来の結腸癌マーカーであるCEA、CK20、CDX2、p53、Ki67およびサイクリンB1(CCNB1)の発現のために免疫組織化学的に染色された216の癌組織から得られた発現データの階層的クラスタリングの結果を示す。結腸直腸癌であると診断された122の対象由来の組織の免疫組織化学的染色に基づくCK20およびSATB2の発現の詳細な比較を示す。組織コアが、低いかまたは高いSATB2レベルと低いかまたは高いCK20レベルに対してスコア化された。結腸直腸癌であると診断された17の対象由来のリンパ節転移の免疫組織化学的染色に基づくCK20およびSATB2の発現の比較を示す。組織コアが、SATB2の核の画分およびCK20の染色に対してスコア化された。 本発明は、その種々の態様で、これらの目的や当業者にとっては本開示から明白である他の目的において、結腸直腸癌の状態および予後を判定するための、かつそれを治療するための新たな手段を提供する。 したがって第1の態様では、本発明は、結腸直腸癌を有するかまたは有すると疑われる哺乳類対象での結腸直腸癌における予後が不良であるか否かを判定するための方法であって、 a)対象由来の試料を提供するステップと、 b)前記試料中に存在するSATB2タンパク質の量を定量して標本値を得るステップと、 c)ステップb)で得られた標本値を参照値と比較するステップと、前記標本値が前記参照値よりも低い場合、 d)前記対象での結腸直腸癌における予後が不良であることを結論づけるステップと、を含む、方法を提供する。 本発明のこの第1の態様は、結腸直腸癌を有するかまたは有すると疑われる対象由来の試料中のSATB2タンパク質の発現が対象における病状の指標として機能しうるという従来認識されていなかった事実に基づくものである。より詳細には、本発明は、最初に、一方でのSATB2の発現の低い値と他方での結腸直腸癌の侵襲性が高まるかまたは高リスクの形態との間の相関について同定する。結腸直腸癌の予後の指標としてのSATB2の発現に基づく本発明は多くの利点を有する。一般に癌においては、侵襲性が高い形態の早期検出は治癒を可能にすることから極めて重要である。これは特に結腸直腸癌に当てはまり、それについてはいくつかの大規模試験で、早期癌、すなわちステージ1およびステージ2の腫瘍(本質的にデュークスAおよびB)を表す癌を有する対象が後期ステージの腫瘍を有する対象よりも実質的に良好な予後を有することが示されている。あらゆるタイプの結腸直腸癌に対して根本的切除がなされることから、この差異は治療の様式に依存しない。それどころか、生存における大きな差異は、明らかに早期検出、正確な診断および適切な外科治療に関連する。特定のレベルの発現が疾患の進行の特定のパターンと相関する場合のマーカーとしてのSATB2タンパク質は、例えば一連の転移の鑑別診断において大きな可能性を有する。 本発明の実施形態では、不良な予後のステップd)における結論は、前記対象が低いSATB2の発現値を示さなかった場合に仮定される状況よりも短い予想寿命を有することを立証するステップを含みうる。その代わりまたはそれに加え、不良な予後という結論は、対象が低いSATB2の発現値を示さなかった場合に仮定される状況よりも低い5年生存率の可能性を立証するステップを含みうる。例えば、結論は、前記対象が65%もしくはそれ未満、例えば60%もしくはそれ未満、50%もしくはそれ未満、40%もしくはそれ未満または30%もしくはそれ未満の5年生存率の可能性を有することでありうる。 さらに、リンパ節陰性腫瘍を有するかまたは有すると疑われる対象に関しては、結論は前記対象が73%もしくはそれ未満、例えば70%もしくはそれ未満、例えば60%もしくはそれ未満、50%もしくはそれ未満、40%もしくはそれ未満または30%もしくはそれ未満の5年生存率の可能性を有することでありうる。女性対象に関しては、結論は、前記対象が74%もしくはそれ未満、例えば70%もしくはそれ未満、例えば60%もしくはそれ未満、50%もしくはそれ未満、40%もしくはそれ未満または30%もしくはそれ未満の5年生存率の可能性を有することでありうる。リンパ節陰性腫瘍を有するかまたは有すると疑われる女性患者に関しては、結論は、前記対象が80%もしくはそれ未満、例えば75%もしくはそれ未満、例えば70%もしくはそれ未満、例えば60%もしくはそれ未満、50%もしくはそれ未満、40%もしくはそれ未満または30%もしくはそれ未満の5年生存率の可能性を有することでありうる。 結腸直腸癌の低いSATB2の発現と高リスクの形態との間の同定された相関はまた、対象の治療において、対象が低いSATB2の発現値を示さなかった場合に仮定される状況とは異なるレジメンを適用するための決定を行う上での基礎を形成しうる。したがって第2の態様では、本発明は、治療を必要とする対象における結腸直腸癌の治療の方法であって、 a)対象由来の試料を提供するステップと、 b)前記試料中に存在するSATB2タンパク質の量を定量して標本値を得るステップと、 c)ステップb)で得られた前記標本値を参照値と比較するステップと、前記標本値が前記参照値よりも低い場合、 d)前記対象を結腸直腸癌の不良な予後に適した治療法で治療するステップと、を含む、方法を提供する。 本発明の一実施形態では、治療法は、化学療法、ネオアジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択される。 したがって、治療法はネオアジュバント療法でありうる。かかるネオアジュバント療法は、放射線療法単独または化学療法と併用した放射線療法からなりうる。 上記の本発明の方法の態様では、対象は異なる形態および/またはステージの結腸直腸癌を有するかまたは有すると疑われる場合がある。 これらの態様のいくつかの実施形態では、問題の結腸直腸癌は、リンパ節陰性の結腸直腸癌、すなわちリンパ節転移ステージまで進行していない結腸直腸癌である。他の類似の実施形態では、問題の結腸直腸癌は、デュークスステージAもしくはBのいずれかにあるものとして特徴づけられる。さらに他の実施形態では、問題の結腸直腸癌は結腸直腸腺腫または結腸直腸癌腫である。これらの実施形態では、対象が低いSATB2の発現を示すことを判定することは、疾患の将来の進行における予後にとって極めて重要であることから、将来の疾患管理に関して十分な情報を得た上での決定にとっての基礎を形成しうる。かかる比較的早期のステージの疾患を患う対象の群内では、低いSATB2の発現を有する対象がより高い侵襲性の疾患を発症するリスクが比較的高い傾向がある。したがって、リンパ節陰性の結腸直腸癌またはデュークスステージAもしくはBの結腸直腸癌を有する対象の中での低いSATB2の発現は、これらの対象が低いSATB2の発現を示さない対象より綿密に監視されおよび/または異なる治療がなされるべきであることを示しうる。したがって、本発明に記載の方法は、SATB2マーカーによって与えられる追加の予後情報のおかげで、かかる対象における特定の期間を超える生存および/またはより長い寿命といった機会が高まる可能性をもたらす。 他の実施形態では、問題の結腸直腸癌は転移性の結腸直腸癌である。他の類似の実施形態では、問題の結腸直腸癌はデュークスステージCにあるものとして特徴づけられる。 本発明の実施形態では、対象はヒト、例えば女性である。添付の実施例に示されるように、SATB2マーカーの予後値は、結腸直腸癌のリンパ節陰性の形態を有するヒト、女性対象の群内で特に顕著である。 SATB2タンパク質の発現の標本値が参照値よりも低いことの判定が、本明細書中で「低いSATB2の発現」の判定と称される場合がある。 本発明の方法では、対象における標本値との比較として用いられる参照値は様々な方法で確定されうる。一非限定例として、参照値は、予後または治療の段階の対象の健常組織内でのSATB2の発現量に対応しうる。別の例として、参照値は、別の比較可能な対象由来の正常組織の標準試料中で測定されるSATB2の発現量により提供可能である。別の例として、参照値は、腫瘍組織、例えばデュークスステージAもしくはBの癌由来の組織の標準試料中で測定されるSATB2の発現量により提供可能である。 参照値は、本発明の上記の態様に記載の方法を実施する過程で得られうる。あるいは、参照値は参照試料から得られる規定値であり、前記参照試料中でのSATB2の発現量に対応している。 試料中でのSATB2の発現の定量のための1つの代替案が、特定のレベルを超えるSATB2の発現を示す試料中での細胞の画分の測定である。この測定は、例えば下記の実施例、4項の「画分スコア(fraction score)」の定義に記載のように実施可能である。本発明の上記の態様の方法の実施形態では、ステップd)での結論における基準は、SATB2陽性細胞の核の画分における標本値、すなわち「画分スコア」であり、それは50%の参照値よりも低く、例えば40%よりも低く、例えば30%よりも低く、例えば25%よりも低く、例えば20%よりも低く、例えば15%よりも低く、例えば10%よりも低く、例えば5%よりも低く、例えば1%よりも低い。さらに、不良な予後の判定は、試料中での本質的に存在しないSATB2陽性細胞の検出、すなわち本質的にゼロの「画分スコア」に対応しうる。 試料中でのSATB2の発現の定量のための別の代替案が、自動スキャナーおよび画像処理ソフトウェアを用いる、SATB2の発現におけるオートスコア(autoscore)の自動測定である。この測定は、例えば下記の実施例、5項の「オートスコア」の定義に記載のように実施可能である。本発明の上記の態様の方法の実施形態では、ステップd)での結論における基準は、試料細胞内でのSATB2の発現における標本値、すなわち「オートスコア」であり、それは70の参照値よりも低く、例えば60よりも低く、例えば50よりも低く、例えば40よりも低く、例えば30よりも低く、例えば25よりも低く、例えば20よりも低く、例えば15よりも低く、例えば10よりも低く、例えば5よりも低い。 本発明のいくつかの実施形態では、標本値および/または参照値の測定は、画分スコアであってもオートスコアであっても、上記の変数またはいくつかの他の既知の変数もしくは適合変数として、対象由来の遠位胃腸管、すなわち虫垂、結腸および/もしくは直腸から得られる腺細胞上でかつ/または結腸直腸癌細胞上で行われる。 本発明の別の実施形態では、不良な予後の判定が、対象由来の遠位胃腸管から得られる腺細胞内でSATB2の発現が検出不可であることに対応する。 本発明との関連では、「標本値」および「参照値」という用語は広義に解釈されるべきである。上記のように、これらの値を得るためのSATB2の発現の定量は、自動的手段または試料の目視もしくは顕微鏡検査に基づくスコアリングシステムを介して実施可能である。しかし、当業者、例えば組織病理学の当業者が、単なる例えばSATB2の発現を対象に染色されている組織スライドの検査により試料および参照値を判定することも可能である。したがって、参照値よりも低い標本値についての判定は、目視または顕微鏡検査時に、試料組織スライドが参照の組織スライドの場合と比べ、低い密度に染色されかつ/または少ない染色細胞を呈するという判定に対応しうる。この場合、標本値および参照値は当業者が検査時および比較時に判定するメンタルな値(mental values)と考えられる。したがって、本発明は自動分析の使用に限定されない。 本発明の方法におけるSATB2タンパク質の発現の検出に用いられる特定の手順は、任意の特定の方法に限定されない。本発明に記載の方法のいくつかの実施形態では、ステップb)は、 b1)試料に対し、定量されるべきSATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な定量可能な親和性リガンドを適用するステップであって、前記適用は親和性リガンドと試料中に存在するSATB2タンパク質との結合を可能にする条件下で行われる、ステップと、 b2)結合されていない親和性リガンドを除去するステップと、 b3)試料との会合状態を維持する親和性リガンドを定量するステップと、を含む。 本発明のかかる実施形態では、対象由来の試料は、体液試料、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出液の試料でありうる。あるいは、本発明に記載の方法では、試料は、排泄物試料、細胞試料または組織試料、例えば結腸直腸組織の試料でありうる。 好ましい実施形態では、本発明に記載の方法はインビトロで実施される。 当業者は、本発明の有用性が、SATB2タンパク質が関連遺伝子によってコードされかつ発現の関連パターンを提示する限り、問題の対象内に存在するSATB2タンパク質の任意の特定の変異体の定量に限定されないことを理解するであろう。非限定例として、SATB2タンパク質は、 i)配列番号1、および ii)配列番号1に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含むアミノ酸配列を有する。 いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に対して少なくとも90%同一であるか、少なくとも91%同一であるか、少なくとも92%同一であるか、少なくとも93%同一であるか、少なくとも94%同一であるか、少なくとも95%同一であるか、少なくとも96%同一であるか、少なくとも97%同一であるか、少なくとも98%同一であるかまたは少なくとも99%同一である。 別の非限定例として、SATB2タンパク質は、 i)配列番号2、および ii)配列番号2に対して少なくとも85%同一である配列から選択される配列を含むアミノ酸配列を有する。 いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に対して少なくとも90%同一であるか、少なくとも91%同一であるか、少なくとも92%同一であるか、少なくとも93%同一であるか、少なくとも94%同一であるか、少なくとも95%同一であるか、少なくとも96%同一であるか、少なくとも97%同一であるか、少なくとも98%同一であるかまたは少なくとも99%同一である。 本発明に記載の方法の実施形態では、SATB2タンパク質は、SATB2タンパク質との特異的または選択的な相互作用が可能である、検出可能でかつ/または定量可能な親和性リガンドの試料に対する適用を通じて検出および/または定量がなされる。親和性リガンドの適用は、試料中での親和性リガンドとSATB2タンパク質の結合を可能にする条件下で行われる。一旦、SATB2と結腸直腸癌との間の関連性が本開示の教示内容を通して認知されると、適切な親和性リガンドに対する選択または作製や、検出および/または定量に適する形式および条件に対する選択については当業者が有する能力の範囲内であると見なされる。そうであっても、有用であると判明しうる親和性リガンドの例、ならびに検出および/または定量のための形式および条件の例が、例示目的で下記に示される。 したがって、本発明のいくつかの実施形態では、抗体、その断片およびその誘導体からなる群から選択される親和性リガンド、すなわち免疫グロブリンの足場に基づく親和性リガンドが用いられる。抗体は、マウス、ヒトおよび他の抗体を含む任意の供給源のモノクローナルおよびポリクローナル抗体、ならびに異なる種由来の配列を含むキメラ抗体、例えば部分的なヒト化マウス抗体を含む。ポリクローナル抗体は選択される抗原による動物の免疫により産生される一方、限定された特異性を有するモノクローナル抗体はケラー(Koehler)およびミルスタイン(Milstein)により開発されたハイブリドーマ技術を用いて産生可能である(ケラー G.(Koehler G.)およびミルスタイン C.(Milstein C.)(1976年)Eur.J.Immunol.6:511−519頁)。抗体の断片および誘導体は、無傷免疫グロブリンタンパク質の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)、軽鎖の定常ドメイン(CL)、重鎖の可変ドメイン(VH)および軽鎖の可変ドメイン(VL)からなるFab断片;2つの可変抗体ドメインのVHおよびVLからなるFv断片(スケラ A.(Skerra A.)およびプリュックタン A.(Plueckthun A.)(1988年)Science 240:1038−1041頁)、柔軟なペプチドリンカーにより互いに連結された2つのVHおよびVLドメインからなる一本鎖Fv断片(scFv)(バード R.E.(Bird R.E.)およびウォーカー B.W.(Walker B.W.)(1991年)Trends Biotechnol.9:132−137頁)、ベンスジョーンズ(Bence Jones)二量体(スティーブンス F.J.(Stevens F.J.)ら(1991年)Biochemistry 30:6803−6805頁)、カメリド(camelid)重鎖二量体(ハマーズ−カステルマン C.(Hamers−Casterman C.)ら(1993年) Nature 363:446−448頁)および単一可変ドメイン(カイ X.(Cai X.)およびガレン A.(Garen A.)(1996年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:6280−6285頁;マサト L.(Masat L.)ら(1994年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:893−896頁)、ならびに例えばテンジクザメ由来のニュー・アンティジェン・レセプター(New Antigen Receptor)(NAR)のような単一ドメイン足場(ドゥーレイ H.(Dooley H.)ら(2003年)Mol.Immunol.40:25−33頁)および可変重鎖ドメインに基づくミニボディ(minibody)(スケラ A.(Skerra A.)およびプリュックタン A.(Plueckthun A.)(1988年)Science 240:1038−1041頁)を含む。 ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびにそれらの断片および誘導体は、例えば本発明に記載のSATB2タンパク質の検出および/または定量における、選択的な生体分子の認識を必要とする用途における従来の選択される親和性リガンドを表す。しかし、当業者は、特異的な結合リガンドの高スループットでの産生および低コストでの産生系に対する需要の高まりを受けて、ここ10年間で新しい生体分子のダイバーシティー(diversity)技術が開発されていることを認知している。これは免疫グロブリンおよび非免疫グロブリンの双方に由来する新たなタイプの親和性リガンドの産生を可能にしており、それらは生体分子認識用途における結合リガンドとして等しく有用であることが判明しており、かつ免疫グロブリンの代替使用またはその併用が可能である。 親和性リガンドの選択にとって必要とされる生体分子のダイバーシティーが複数の有望な足場分子のうちの1つのコンビナトリアルエンジニアリングにより得られる場合があり、次いで特異的かつ/または選択的な親和性リガンドが適切な選択プラットフォームを用いて選択される。足場分子は、免疫グロブリンタンパク質由来(ブラッドベリー A.R.(Bradbury A.R.)およびマークス J.D.(Marks J.D.)(2004年)J.Immunol.Meths.290:29−49頁)、非免疫グロブリンタンパク質由来(ニグレン P.A.(Nygren P.A.)およびスケラ A.(Skerra A.)(2004年)J.Immunol.Meths.290:3−28頁)、またはオリゴヌクレオチド由来(ゴールド L.(Gold L.)ら(1995年)Annu.Rev.Biochem.64:763−797頁)でありうる。 多数の非免疫グロブリンタンパク質足場が、新規の結合タンパク質の開発における支持構造として用いられている。本発明で用いられるSATB2に対する親和性リガンドの産生に有用なかかる構造の非限定例として、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメインおよびこれらのドメインの誘導体、例えば、プロテインZ(ノード K.(Nord K.)ら(1997年)Nat.Biotechnol.15:772−777頁)、リポカリン(ベステ G.(Beste G.)ら(1999年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:1898−1903頁)、アンキリン反復ドメイン(ビンズ H.K.(Binz H.K.)ら(2003年)J.Mol.Biol.332:489−503頁)、セルロース結合ドメイン(CBD)(スミス G.P.(Smith G.P.)ら(1998年)J.Mol.Biol.277:317−332頁;レーティオ J.(Lehtioe J.)ら(2000年)Proteins 41:316−322頁)、γクリスタリン(フィードラー U.(Fiedler U.)およびルドルフ R.(Rudolph R.)、国際公開第01/04144号パンフレット)、緑色蛍光タンパク質(GFP)(ピーレ B.(Peelle B.)ら(2001年)Chem.Biol.8:521−534頁)、ヒト細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)(ハフトン S.E.(Hufton S.E.)ら(2000年)FEBS Lett.475:225−231頁;アービング R.A.(Irving R.A.)ら(2001年)J.Immunol.Meth.248:31−45頁)、プロテアーゼ阻害剤、例えばKnottinタンパク質(ウェンツェル A.(Wentzel A.)ら(2001年)J.Bacteriol.183:7273−7284頁;バッジオ R.(Baggio R.)ら(2002年)J.Mol.Recognit.15:126−134頁)およびクニッツ(Kunitz)ドメイン(ロバーツ B.L.(Roberts B.L.)ら(1992年)Gene 121:9−15頁;デニス M.S.(Dennis M.S.)およびラザラス R.A.(Lazarus R.A.)(1994年)J.Biol.Chem.269:22137−22144頁)、PDZドメイン(シュナイダー S.(Schneider S.)ら(1999年)Nat.Biotechnol.17:170−175頁)、ペプチドアプタマー、例えばチオレドキシン(ル Z.(Lu Z.)ら(1995年)Biotechnology 13:366−372頁;クレベンツ B.(Klevenz B.)ら(2002年)Cell.Mol.Life Sci.59:1993−1998頁)、ブドウ球菌ヌクレアーゼ(ノルマン T.C.(Norman T.C.)ら(1999年)Science 285:591−595頁)、テンダミスタット(tendamistat)(マッコーネル S.J.(McConell S.J.)およびヘス R.H.(Hoess R.H.)(1995年)J.Mol.Biol.250:460−479頁;リ R.(Li R.)ら(2003年)Protein Eng.16:65−72頁)、フィブロネクチンIII型ドメインに基づくトリネクチン(trinectin)(コイデ A.(Koide A.)ら(1998年)J.Mol.Biol.284:1141−1151頁;クス L.(Xu L.)ら(2002年)Chem.Biol.9:933−942頁)、およびジンクフィンガー(ビアンキ E.(Bianchi E.)ら(1995年)J.Mol.Biol.247:154−160頁;クルーグ A.(Klug A.)(1999年)J.Mol.Biol.293:215−218頁;セガル D.J.(Segal D.J.)ら(2003年)Biochemistry 42:2137−2148頁)が挙げられる。 非免疫グロブリンタンパク質足場の上記の例は、新規の結合特異性の生成のために用いられる単一のランダム化されたループを提示する足場タンパク質、タンパク質表面から突出する側鎖が新規の結合特異性の生成のためにランダム化される場合に堅い二次構造を有するタンパク質足場、および新規の結合特異性の生成のために用いられる隣接していない超可変ループ領域を提示する足場を含む。 非免疫グロブリンタンパク質に加え、オリゴヌクレオチドも親和性リガンドとして使用可能である。アプタマーまたはデコイ(decoy)と称される一本鎖核酸が、明瞭な三次元構造に折り畳み、その標的に高い親和性および特異性で結合する(エリングトン A.D.(Ellington A.D.)およびスゾスタク J.W.(Szostak J.W.)(1990年)Nature 346:818−822頁;ブロディ E.N.(Brody E.N.)およびゴールド L.(Gold L.)(2000年)J.Biotechnol.74:5−13頁;メイヤー G.(Mayer G.)およびジェニー A.(Jenne A.)(2004年)BioDrugs 18:351−359頁)。オリゴヌクレオチドリガンドは、RNAまたはDNAのいずれかであり、広範囲の標的分子のクラスに結合する可能性がある。 上記の足場構造のいずれかの変異体プールからの所望の親和性リガンドの選択においては、多数の選択プラットフォームが、選択される標的タンパク質に対して特異的な新規のリガンドを単離するために使用可能である。選択プラットフォームは、限定はされないが、ファージディスプレイ(スミス G.P.(Smith G.P.)(1985年)Science 228:1315−1317頁)、リボソームディスプレイ(ハネス J.(Hanes J.)およびプリュックタン A.(Plueckthun A.)(1997年) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:4937−4942頁)、酵母ツーハイブリッド(two−hybrid)システム(フィールズ S.(Fields S.)およびソング O.(Song O.)(1989年)Nature 340:245−246頁)、mRNAディスプレイ(ロバーツ R.W.(Roberts R.W.)およびスゾスタク J.W.(Szostak J.W.)(1997年) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12297−12302頁)、SELEX(System Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)(チュエルク C.(Tuerk C.)およびゴールド L.(Gold L.)(1990年)Science 249:505−510頁)およびタンパク質断片相補性アッセイ(PCA)(レミー I.(Remy I.)およびミシュニック S.W.(Michnick S.W.)(1999年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:5394−5399頁)を含む。 したがって、本発明の実施形態では、親和性リガンドが使用可能であり、それは上掲のタンパク質足場のいずれかに由来する非免疫グロブリンの親和性リガンド、またはオリゴヌクレオチド分子である。 本発明に記載の方法のいくつかの実施形態では、SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な親和性リガンドが検出可能でありかつ/または定量可能である。かかる親和性リガンドの検出および/または定量は、生物学的相互作用に基づくアッセイにおける結合試薬の検出および/または定量のための当業者に既知の任意の方法で行われうる。したがって、前項で記載のように、任意の親和性リガンドを量的または質的に用いることでSATB2タンパク質の存在の検出が可能である。これらの「第一」親和性リガンドは、様々なマーカーでそれ自体の標識が可能であるか、または次いで第二の標識された親和性リガンドにより検出されることで検出、画像化および/または定量が可能である。これは、当業者に既知の多数の技術のうちの任意の1つもしくは複数を用い、SATB2と相互作用を行うことが可能な親和性リガンドまたは任意の第二の親和性リガンドに複合可能な多数の標識のうちの任意の1つもしくは複数を用いて実施可能であり、それ故にいかなる必要以上の実験も要しない。 第一および/または第二の親和性リガンドに複合可能な標識の非限定例として、蛍光色素もしくは金属(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、フルオレサミン)、発色色素(例えばロドプシン)、化学発光化合物(例えば、ルミナール、イミダゾール)および生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ハプテン(例えばビオチン)が挙げられる。種々の他の有用な蛍光剤および発色団が、ストライヤー L.(Stryer L.)(1968年)Science 162:526−533頁およびブランド L.(Brand L.)およびゴールケ J.R.(Gohlke J.R.)(1972年)Annu.Rev.Biochem.41:843−868頁において記載されている。親和性リガンドはまた、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ラクタマーゼ)、放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、35Sもしくは125I)および粒子(例えば金)で標識可能である。異なるタイプの標識が、様々な化学反応、例えばアミン反応またはチオール反応を用いて親和性リガンドに複合可能である。また一方、アミンおよびチオール以外の反応基、例えばアルデヒド、カルボキシル酸およびグルタミンの使用が可能である。 本発明の方法の態様はいくつかの既知の形式および設定のいずれかにおいて利用される場合があり、その非限定的な選択が以下に考察される。 組織学に基づく設定では、標識された親和性リガンドとそのSATB2標的との結合についての検出、局在化および/または定量は、可視的技術、例えば光学顕微鏡検査または免疫蛍光顕微鏡検査を含みうる。他の方法としては、フローサイトメトリーまたはルミノメトリー(luminometry)を介した検出を含みうる。 上で説明したように、対象におけるSATB2タンパク質の検出および/または定量は、対象由来の生物学的試料、例えば組織試料(生検)を、例えば結腸直腸組織、血液試料、脳脊髄液、尿または排泄物から取り出すことにより行われうる。親和性リガンドは、SATB2マーカータンパク質の検出および/または定量のために生物学的試料に適用される。この手順によると、SATB2タンパク質の検出が可能になるだけでなく、その発現の分布および相対レベルが示されうる。 親和性リガンド上での標識の可視化の方法は、限定はされないが、蛍光、ルミノメトリーおよび/または酵素技術を含みうる。蛍光標識を特定の波長の光に暴露し、その後に特定の波長の放射光を検出しかつ/または定量することにより、蛍光の検出および/または定量がなされる。発光標識された親和性リガンドの存在は、化学反応の間に生じる発光により検出および/または定量がなされうる。酵素反応の検出は、化学反応から生じる試料中での色ずれによるものである。当業者は、種々の異なるプロトコルが適切な検出および/または定量を目的に改良可能であることを理解している。 本発明に記載の方法では、生物学的試料が、固相支持体または担体、例えばニトロセルロースまたはそれに適用される生物学的試料中に存在する任意のSATB2タンパク質を固定化可能な任意の他の固体支持体マトリックスの上部に固定化されうる。本発明で有用ないくつかの周知の固相支持体材料が、ガラス、炭水化物(例えばSepharose)、ナイロン、プラスチック、ウール、ポリスチレン、ポリエテン(polyethene)、ポリプロピレン、デキストラン、アミラーゼ、フィルム、樹脂、セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、アルミナ、斑糲岩およびマグネタイトを含む。第一の親和性リガンドが本質的に標識されない場合、その後に支持マトリックスは当該技術分野で既知の様々な緩衝液で洗浄され、次いで第二の標識された親和性リガンドに暴露され、再度緩衝液で洗浄されることで未結合の親和性リガンドが除去可能であり、その後、従来の方法を用い、選択的な親和性リガンドの検出および/または定量がなされうる。親和性リガンドにおける結合特性が固相支持体の一方から他方へ変化することになるが、当業者は通常の実験による各測定における有効かつ最適なアッセイ条件を決定できるであろう。 本発明で必要とされるSATB2タンパク質を検出しかつ/または定量するための方法は、親和性リガンドを後に酵素イムノアッセイ(EIAまたはELISAなど)で検出および/または定量が可能な酵素に連結することによるものである。かかる技術は十分に確立されており、そうした認識から当業者が何らかの過度に困難な状況に置かれることはない。かかる方法では、生物学的試料は、固体材料またはSATB2タンパク質に対する親和性リガンドに複合された固体材料との接触状態に至り、次いで酵素標識された第二の親和性リガンドによる検出および/または定量がなされる。この後、適切な緩衝液中で適切な基質と酵素標識との反応がもたらされることで化学的部分(chemical moiety)が生成され、例えば、分光光度計、蛍光計、照度計の使用かまたは目視手段による検出および/または定量がなされる。 上記のように、第一および任意の第二の親和性リガンドが放射性同位体で標識されることで検出および/または定量が可能になる。本発明において適切な放射性標識の非限定例が、3H、14C、32P、35Sまたは125Iである。標識された親和性リガンドの比活性は、放射性標識の半減期、同位体純度、および標識が親和性リガンドにいかに取り込まれているかに依存する。親和性リガンドは、好ましくは周知の技術(ヴェンゼル T.G.(Wensel T.G.)およびメアレス C.F.(Meares C.F.)(1983年)「Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy」(バーキエル S.W.(Burchiel S.W.)およびローデス B.A.(Rhodes B.A.)編)ニューヨーク(New York)のエルゼビア(Elsevier)、185−196頁)を用いて標識される。このように放射性標識された親和性リガンドを用い、インビボまたはインビトロでの放射能の検出によりSATB2タンパク質を画像化することが可能である。インビボおよびインビトロでの検出における、例えばγカメラ、磁気共鳴分光学またはエミッショントモグラフィーの機能による放射性核(radionuclear)の走査の一方で、γ/βカウンター、シンチレーションカウンターおよびラジオグラフィーのインビトロでの使用も可能である。 本発明のさらなる態様は、上記の本発明の方法の態様に記載の方法を実施するためのキットを提供し、キットは、 a)SATB2タンパク質と選択的相互作用を行うことが可能な定量可能な親和性リガンド、および b)前記親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬を含む。 本発明に記載のキットの様々な成分は、本発明の方法の態様と関連して上記のように選択されかつ特定される。 したがって、本発明に記載のキットは、SATB2に対する親和性リガンド、ならびにそれが特異的かつ/または選択的にSATB2に結合した後での特異的かつ/または選択的な親和性リガンドの定量に役立つ他の手段を含む。例えば、本発明のキットは、任意のSATB2タンパク質により形成された複合体の検出および/または定量のための第二の親和性リガンド、ならびにSATB2タンパク質と選択的相互作用を行うことが可能な親和性リガンドを有しうる。本発明のキットは親和性リガンド以外の様々な補助剤も有する場合があり、それによりキットの容易かつ効率的な使用が可能になる。補助剤の例として、キットの凍結乾燥されたタンパク質成分を溶解または再構成するための溶媒、洗浄緩衝液、酵素が標識として用いられる場合に酵素活性を測定するための物質、およびイムノアッセイ試薬キットにおいて一般に用いられる反応停止剤などの物質が挙げられる。 本発明に記載のキットはまた、有利には標本値との比較において用いられるべき参照値を提供するための参照試料も含みうる。かかる参照試料は、例えば所定量のSATB2タンパク質を有する組織の試料により構成される場合があり、そこで病理学の当業者がそれを用い、試料中でのSATB2の発現状態を、参照試料中および対象試料中での発現レベルの目視または自動的な比較による試験で判定できる。 本発明のさらなる態様として、予後マーカーとしてのSATB2タンパク質の使用が提供される。また、結腸直腸癌に対する予後マーカーとしてのSATB2タンパク質の使用が提供される。 本発明に関連する態様として、結腸直腸癌の予後用の予後剤の製造における、SATB2タンパク質または抗原活性を示すその断片の使用が提供される。SATB2タンパク質の抗原活性を示す断片は、断片を含むSATB2タンパク質と相互作用することになる親和性リガンド、例えば抗体の産生において有効な、十分なサイズの断片である。 本発明のこれらの使用についての態様の実施形態では、SATB2タンパク質は、非限定例として、 i)配列番号1、および ii)配列番号1に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含むアミノ酸配列を有しうる。 いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号1に対し、少なくとも90%同一であるか、少なくとも91%同一であるか、少なくとも92%同一であるか、少なくとも93%同一であるか、少なくとも94%同一であるか、少なくとも95%同一であるか、少なくとも96%同一であるか、少なくとも97%同一であるか、少なくとも98%同一であるかまたは少なくとも99%同一である。 別の非限定例として、SATB2タンパク質は、 i)配列番号2、および ii)配列番号2に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含むアミノ酸配列を有する。 いくつかの実施形態では、上記の配列ii)は、配列番号2に対し、少なくとも90%同一であるか、少なくとも91%同一であるか、少なくとも92%同一であるか、少なくとも93%同一であるか、少なくとも94%同一であるか、少なくとも95%同一であるか、少なくとも96%同一であるか、少なくとも97%同一であるか、少なくとも98%同一であるかまたは少なくとも99%同一である。 本発明は、そのさらなる態様として、SATB2タンパク質と選択的相互作用を行うことが可能な親和性リガンドを提供し、それは抗体またはその断片もしくは誘導体である。かかる抗体またはその断片もしくは誘導体は、例えばアミノ酸配列が配列番号1の配列を含むタンパク質で動物を免疫するステップを含むプロセスにより得られうるものでありうる。所定の標的に対する抗体またはその断片もしくは誘導体を産生するためのプロセスは当該技術分野で既知であり、本発明のこの態様と関連して適用可能である。上で考察されたSATB2タンパク質(配列番号2)の変異体のいずれかまたは抗原活性を示すその断片(配列番号1)については、当然のことながら抗体またはその断片もしくは誘導体を産生するためのかかるプロセスにおいて使用可能である。 本発明は、そのさらなる態様として、予後剤としての本発明に記載の親和性リガンドの使用を提供する。この使用の好ましい実施形態は、結腸直腸癌の予後用の予後剤としての親和性リガンドの使用である。本発明はまた、結腸直腸癌の予後用の親和性リガンドの使用を提供する。それに関連した態様として、本発明は、結腸直腸癌の予後用の予後剤の製造における、本発明に記載の親和性リガンドの使用を提供する。 本発明は、その別の態様では、結腸直腸癌を診断するための方法であって、SATB2タンパク質を検出するステップを含む、方法も提供する。本発明のこの態様は、SATB2が一般に結腸直腸組織、特に結腸直腸癌に対するタンパク質マーカーとして作用しうるという発見に基づくものである。さらに下記に詳述のように、SATB2タンパク質の断片に対して産生される抗体が、遠位胃腸管、すなわち虫垂、結腸および直腸から得られる腺細胞内や結腸直腸癌内の核で強力かつ選択的な免疫反応性を示す。最も顕著な発見は、結腸直腸癌の11の内の11において明白である。結腸直腸癌以外の他の腫瘍においては、弱陽性または中程度の陽性であるものは極めてわずかに過ぎなかった。 さらに、SATB2は他のタイプの癌内に存在することが比較的少ない一方で、SATB2に特異的な親和性リガンドが結腸直腸癌を他の癌から特異的に識別するための極めて興味深いツールとなる。大部分の結腸直腸癌が腺由来であることから、腺癌として分類される。これは典型的な癌タイプであり、同様に様々な他の器官から発生しうる。したがって、本発明の発見は、器官における腫瘍の発生源が未知であることが多い場合、腫瘍の転移をタイプ分けするのに用いられる場合に極めて興味深いものである。現在、結腸直腸癌において使用可能な分子マーカーは他の腺癌に対して交差反応性を示し、それ故に腫瘍の位置を確認し、かつ転移の発生源を同定することは困難である。本発明に記載の特異的な結腸直腸癌マーカーにより、医師が癌の位置を効率的に確認し、より効率的な治療を提供し、最終的に患者へのより信頼できる予後の提供を促進することが可能になろう。 本発明の別の態様は、癌試料のSATB2およびCK20マーカーに対する同時試験を含む。実施例の6項にて詳述されるように、結腸直腸癌の識別におけるSATB2およびCK20の発現の双方に対する試験の組み合わせにおける予測値は、単独で行われた各マーカーに対する試験における予測値を上回る。したがって、本発明は、この態様では、結腸直腸癌を診断する方法であって、SATB2タンパク質を検出するステップと、CK20タンパク質を検出するステップと、を含む、方法を提供する。さらに、本発明は、SATB2タンパク質および/またはCK20タンパク質の存在を検出することによる、転移が結腸直腸癌に由来するか否かを検出するための方法を提供する。患者は、CK20およびSATB2の双方から得られる情報を組み合わせれば結腸直腸疾患に対する正確な診断をより容易に得ることになる。当業者であれば、本発明のこの態様に記載の方法に対するSATB2の検出に関する本明細書中の教示内容に適応できることになり、かつ、本明細書中の記載内容および例えば免疫組織化学の分野における知識のおかげで過度な負荷をかけることなく、SATB2およびCK20の同時的または連続的な検出および/または定量を行うことができる。 本発明の態様では、癌患者においてSATB2タンパク質が血漿中および排泄物中に漏れることが予測される点が興味深い。比較として、健康な患者であっても周知の前立腺癌マーカーであるPSA(正常な前立腺内にも発現される)が前立腺から血漿へ漏れる。しかし、多数の前立腺癌患者がその血漿中のPSAレベルが上昇することから、血中で上昇したPSAレベルのスクリーニングが、前立腺癌の発生リスク群内での男性に対するについての一般的な早期スクリーニング手順である。同じことがSATB2と結腸直腸癌との間の関連性にも該当することが予測される。したがって、SATB2は、本発明における試料としてヒト血漿または他の体液または排泄物を用いることによる、結腸直腸癌のスクリーニング用のツールとしても有用である。これに関し、本発明は、あまりに不快であることから多くの人々が米国癌協会(American Cancer Institute)が結腸癌のリスク群に対して定期検査を推奨しているという事実に反してスキップするという、ここでの結腸直腸癌のスクリーニング、例えば結腸直腸鏡検査またはS状結腸鏡検査における有意義な拡張に対応するだけでなく可能性としては交換にも対応する。SATB2を結腸直腸癌におけるマーカータンパク質として用いる、本発明に基づくスクリーニング方法が、このタイプの癌に苦しんでいる患者のスクリーニング、早期検出および治療に対して有意な効果をもたらす。 「予後」は、本発明との関連では、疾患の経過または転帰およびその治療の予測を示す。予後はまた、疾患からの生存または回復の見込みの判定ならびに対象の予想される生存時間の予測を示しうる。予後は、詳細には、将来にかけてのある期間、例えば3年、5年、10年もしくは任意の他の期間にわたる対象の生存における可能性を明確にすることを含む。 「診断」は、本発明との関連では、疾患もしくは障害の存在の判定または疾患もしくは障害の同定を示す。診断はまた、そのプロセスを通じて到達する結論を示す。これに関連し、「診断」は疾患の存在または性質の判定に関係しかつそれに役立つことを意味する。本発明との関連では、「診断(diagnosis)」および「診断の(diagnostic)」は、疾患における経時的な任意の自然発生的変化または治療に起因する任意の変化を監視することも意味する。 上記の定義から明白なように、「予後」および「診断」という用語は重複した意味を有し、互いに排他的なものでない。 本発明との関連で、例えば親和性リガンドのその標的または抗原との「特異的」または「選択的」相互作用とは、特異的相互作用と非特異的相互作用との間または選択的相互作用と非選択的相互作用との間の区別が重要になるような相互作用であることを意味する。2つのタンパク質の間の相互作用は解離定数により測定される場合がある。解離定数は2分子間の結合(または親和性)の強さを記述する。典型的には、抗体とその抗原の間の解離定数は10−7〜10−11Mである。しかし、高い特異性は必ずしも高い親和性を必要としない。対応物に対して(モル範囲内で)低い親和性を有する分子が、はるかに高めの親和性を有する分子と同程度に特異的であることが示されている。本発明の場合、特異的または選択的な相互作用は、特定の方法を用い、天然体液または処理体液の試料中、他のタンパク質の存在下での所定の条件下で、特定のタンパク質、標的タンパク質またはその断片における存在および/または量を測定可能である範囲を示す。換言すれば、特異性または選択性は関連タンパク質間を識別する能力である。特異的と選択的とは、本明細書中で同義的に用いられる場合がある。 本発明との関連で、「単一特異性抗体」は、それ自体の抗原上で親和性精製されているポリクローナル抗体の集団の1つであり、それによりかかる単一特異性抗体は他の抗血清タンパク質および非特異的抗体から分離される。この親和性精製の結果、その抗原に選択的に結合する抗体が得られる。本発明の場合、ポリクローナル抗血清は2ステップの免疫親和性に基づくプロトコルにより精製され、標的タンパク質に対して選択的な単一特異性抗体が得られる。抗原断片の一般の親和性タグに特異的な抗体が、固定化されたタグタンパク質を捕捉剤として用いる第1の減少ステップで除去される。抗原に対して特異的な抗体について濃縮するため、第1の減少ステップ後、血清は抗原を捕捉剤として用い、第2の親和性カラム上に負荷される(ニルソン P.(Nilsson P.)ら(2005年)Proteomics 5:4327−4337頁も参照)。正常および癌試料中でSATB2を検出するためのSATB2に対する単一特異性抗体の産生およびその使用1)抗原の産生a.材料および方法 EnsEMBL Gene ID ENSG00000119042によってコードされる標的タンパク質の適切な断片を、鋳型としてヒトゲノム配列を用いるバイオインフォマティクスツールを用いて設計した(リンドスコグ M.(Lindskog M.)ら(2005年)Biotechniques 38:723−727頁、EnsEMBL、www.ensembl.org)。タンパク質SATB2(配列番号2;EnsEMBL登録番号ENSP00000260926)のアミノ酸377−499に対応する123のアミノ酸(配列番号1)からなる断片を設計した。標的タンパク質をコードする、長いSATB2遺伝子転写産物のヌクレオチド1542−1910(配列番号3;EnsEMBL登録番号ENST00000260926)を有するポリヌクレオチドを、Platinum(登録商標)Taq(インビトロジェン(Invitrogen))および鋳型としてのヒト全RNAプールパネル(Human Total RNA Panel IV、BDバイオサイエンシーズ・クローンテック(BD Biosciences Clontech)を有するSuperscript(商標)One−Step RT−PCR増幅キットにより単離した。フランキング制限部位NotIおよびAscIをPCR増幅プライマーを通じて断片に導入し、発現ベクターへのインフレームでのクローニングを可能にした(フォワードプライマー:GTGTCCCAAGCTGTCTTTG、リバースプライマー:CTTGGCCCTTTTCATCTCC)。次いで、下流プライマーをビオチン化し、上記の固相クローニングを可能にし、得られたビオチン化PCR産物をDynabeads M280 Streptavidin(ダイナル・バイオテック(Dynal Biotech))上に固定化した(ラーソン M.(Larsson M.)ら(2000年)J.Biotechnol.80:143−157頁)。断片を、NotI−AscI消化(ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs))により固体支持体から放出し、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)精製におけるヘキサヒスチジル(hexahistidyl)タグおよび連鎖球菌(streptococcal)プロテインG由来の免疫増強性のアルブミン結合タンパク質(ABP)からなる二重親和性タグを用いてインフレームでpAff8cベクター(ラーソン M.(Larsson M.)ら、上記)にライゲートし(シャーランダー A.(Sjolander A.)ら(1997年)J.Immunol.Methods 201:115−123頁;スタール S.(Stahl S.)ら(1999年)「Encyclopedia of Bioprocess Technology:Fermentation,Biocatalysis and Bioseparation」(フレキンガー M.C.(Fleckinger M.C.)およびドリュー S.W.(Drew S.W.)編) ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons Inc.)、ニューヨーク(New York)、49−63頁)、大腸菌(E.coli)のBL21(DE3)細胞(ノバゲン(Novagen))に形質転換した。クローンの配列を、製造業者の推奨に従い、TempliPhi DNA配列決定増幅キット(スウェーデン、ウップサーラ(Uppsala)のGEヘルスケア(GE Healthcare))を用いて増幅されたプラスミドDNAの色素−ターミネーターサイクル配列決定により検証した。 発現ベクターを保有するBL21(DE3)細胞を、5g/lの酵母抽出物(メルク(Merck KGaA))および50mg/lのカナマイシン(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を補充した30g/lのトリプシンソイブロス(soy broth)(メルク(Merck KGaA))100ml中に同培地内への一晩培養物1mlの添加により接種した。細胞培養物を、1リットルの振とうフラスコ内、37℃および150rpmで600nmでの光学濃度が0.5〜1.5に達するまでインキュベートした。次いで、タンパク質の発現を、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(アポロ・サイエンティフィック(Apollo Scientific))を1mMの最終濃度まで添加することにより誘発し、インキュベーションを25℃および150rpmで一晩継続した。細胞を2400gでの遠心分離により収穫し、ペレットを溶解緩衝液(7M塩酸グアニジン、47mM Na2HPO4、2.65mM NaH2PO4、10mMトリス−HCl、100mM NaCl、20mM β−メルカプトエタノール;pH=8.0)5ml中に再懸濁し、37℃および150rpmで2時間インキュベートした。35300gで遠心分離後、変性され可溶化された遺伝子産物を含有する上清を回収した。 His6でタグ化された融合タンパク質を、ASPEC XL4(商標)(ギルソン(Gilson))上での自動タンパク質精製手順(スティーン J.(Steen J.)ら(2006年)Protein Expr.Purif.46:173−178頁)を用いる、Talon(登録商標)金属(Co2+)親和性樹脂(BDバイオサイエンシーズ・クローンテック(BD Biosciences Clontech))1mlを有するカラム上での固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)により精製した。樹脂を、変性用洗浄緩衝液(6M塩酸グアニジン、46.6mM Na2HPO4、3.4mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH8.0〜8.2)20mlで平衡化した。次いで樹脂を、溶出緩衝液(6M尿素、50mM NaH2PO4、100mM NaCl、30mM酢酸、70mM酢酸ナトリウム、pH5.0)2.5ml中への溶出に先立ち、最小限の洗浄緩衝液31.5mlで洗浄した。溶出した材料を500μl、700μlおよび1300μlの3つのプールに分画した。抗原を含有する700μlの画分およびプールされた500μlおよび1300μlの画分をさらなる使用のために保存した。 抗原画分をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;1.9mM NaH2PO4、8.1mM Na2HPO4、154mM NaCl)で1M尿素の最終濃度まで希釈した後、7500Daでの分子量カットオフを有するVivaporeの10/20mlの濃縮器(ビバサイエンス(Vivascience AG))を用いる、タンパク質濃度を増加させるための濃縮ステップを行った。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンの標準を用いるビシンコニン酸(BCA)のミクロアッセイプロトコル(ピアス(Pierce))を用い、製造業者の推奨に従って測定した。タンパク質の品質を、Protein50もしくは200アッセイ(アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies))を用いるBioanalyzer機器上で分析した。b)結果 SATB2遺伝子の長い転写産物のヌクレオチド1542〜1910(配列番号3)に対応しかつ標的タンパク質SATB2(配列番号2)のアミノ酸377〜499からなるペプチド(配列番号1)をコードする遺伝子断片を、タンパク質断片に対して特異的なプライマーを用いるヒトRNAプールからのRT−PCRによって単離することに成功した。しかし、EnsEMBLからのENSG00000119042の配列と比べて、配列内に1つの単一のサイレントヌクレオチド突然変異が存在した。標的タンパク質(配列番号2)の123のアミノ酸断片(配列番号1)の設計においては、膜透過領域を欠如させることで大腸菌(E.coli)内での十分な発現を保証し、かつ任意のシグナルペプチドを欠如させたが、これは、それらが成熟タンパク質内で切断されることが理由である。さらに、タンパク質断片を他のヒトタンパク質との相同性が低い固有の配列からなり、産生された親和性試薬との交差反応性を最小限にし、立体エピトープの形成やさらには細菌系での効率的なクローニングおよび発現を可能にするのに適切な大きさであるように設計した。 正確なアミノ酸配列をコードするクローンを同定し、大腸菌(E.coli)内での発現時に正確な大きさの単一のタンパク質を生成し、次いで固定化金属イオンクロマトグラフィーを用いて精製した。溶出された試料を1M尿素の最終濃度および1mlまでの試料の濃度に希釈した後、タンパク質断片の濃度は7.4mg/mlであると判定し、純度分析によると98%の純度であった。2)抗体の産生a)材料および方法 上記のようにして得られた精製SATB2断片を抗原として用い、国の指針(スウェーデンの許可番号A84−02)に従ってウサギを免疫した。ウサギを、一次免疫としてフロインドの(Freund)完全アジュバント中の200μgの抗原で筋肉内に免疫し、フロインドの不完全アジュバント中の100μgの抗原で4週間の間隔で3回免疫増強した。 免疫した動物由来の抗血清を3つのステップの免疫親和性に基づくプロトコルにより精製した(アガトン C.(Agaton C.)ら(2004年)J.Chromatogr.A1043:33−40頁;ニルソン P.(Nilsson P.)ら(2005年)Proteomics 5:4327−4337頁)。第1ステップでは、全抗血清10mlを、1×PBS(1.9mM NaH2PO4、8.1mM Na2HPO4、154mM NaCl)の最終濃度にまで10×PBSで緩衝化し、0.46μmの孔サイズのフィルタ(Acrodisc(登録商標)、ライフ・サイエンス(Life Science))を用いて濾過し、pAff8cベクターから発現された二重親和性タグタンパク質His6−ABP(ヘキサヒスチジルタグおよびアルブミン結合タンパク質タグ)に共役されたN−ヒドロキシサクシンイミド−活性化Sepharose(商標)4 Fast Flow(GEヘルスケア(GE Healthcare))5mlを含有する親和性カラムに適用し、抗原タンパク質断片に対する上記と同様の方法で精製した。第2のステップでは、二重親和性タグHis6−ABPに対する貫流するわずかな抗体を、免疫における抗原として用いられるSATB2タンパク質断片(配列番号1)に共役された1mlのHi−Trap NHS−活性化HPカラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))上に0.5ml/分の流速で負荷した。His6−ABPタンパク質およびタンパク質断片抗原は、製造業者による推奨に従い、NHSで活性化されたマトリックスに共役させていた。未結合の材料を1×PBST(1×PBS、0.1%トゥイーン20、pH7.25)で洗い流し、捕捉された抗体を低いpHのグリシン緩衝液(0.2Mグリシン、1mM EGTA、pH2.5)を用いて溶出させた。第3のステップで、溶出された抗体画分を、自動的に回収し、効率的な緩衝液交換のために直列的に接続された2つの5mlのHiTrap(商標)脱塩カラム(GEヘルスケア(GE Healthcare))上に負荷した。第2および第3の精製ステップを、AKTAxpress(商標)プラットフォーム(GEヘルスケア(GE Healthcare))上で実施した。抗原選択的(単一特異的)抗体(msAb)を、−20℃での長期保存のため、グリセロールおよびNaN3を各最終濃度が50%および0.02%になるまで補充したPBS緩衝液で溶出させた(ニルソン P.(Nilsson P.)ら(2005年)Proteomics 5:4327−4337頁)。 タンパク質アレイの設定では、親和性精製された抗体画分の特異性および選択性を抗原自体および94の他のヒトタンパク質断片に対する結合分析により分析した(ニルソン P.(Nilsson P.)ら(2005年)Proteomics 5:4327−4337頁)。タンパク質断片を0.1M尿素および1×PBS(pH7.4)中で40μg/mlに希釈し、各50μlを96ウェルのスポッティングプレートのウェルに移した。ピン・アンド・リング(pin−and−ring)のアレイヤー(Affymetrix 427)を用い、タンパク質断片をスポットしてエポキシ製スライド(SuperEpoxy、テレケム(TeleChem))上に固定化した。スライドを1×PBSで洗浄し(5分)、次いで表面を30分間ブロックした(SuperBlock(登録商標)、ピアス(Pierce))。接着性の16ウェルのシリコーンマスク(シュライヒャー(Schleicher)およびシュエル(Schuell))を、単一特異性抗体を添加する(1×PBST中で1:2000に希釈して約50ng/mlにする)前にスライドグラスに適用し、振とう器上で60分間インキュベートした。各スポット内でタンパク質の量を定量するため、親和性タグに特異的なIgY抗体を単一特異性抗体とともにインキュベートした。スライドを1×PBSTおよび1×PBSで各々10分間、2回洗浄した。二次抗体(Alexa647と複合されたヤギ抗ウサギ抗体およびAlexa555と複合されたヤギ抗ニワトリ抗体、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes))を1×PBST中で1:60000に希釈して30ng/mlにし、60分間インキュベートした。第1のインキュベーションについて同じ洗浄手順を行った後、スライドを脱水し、走査し(G2565BAアレイスキャナー、アジレント(Agilent))、画像を画像解析ソフトウェア(GenePix 5.1、アクソン・インスツルメンツ(Axon Instruments))を用いて定量した。結果を下記で考察し、図1に示す。 さらに、親和性精製された抗体の特異性および選択性をウエスタンブロットにより分析した。還元条件下で、予め成形された10〜20%のCriterion(商標)SDS−PAGE勾配ゲル(バイオ−ラッド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories))上で選択されたヒト細胞系および組織から全タンパク質抽出物を分離してから、製造業者の推奨に従ってPVDF膜(バイオ−ラッド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories))に電子転写することにより、ウエスタンブロットを行った。膜を室温で1時間ブロックし(5%ドライミルク、1×TBST;0.1Mトリス−HCl、0.5M NaCl、0.5%トゥイーン20)、ブロッキング緩衝液中で1:500に希釈した、親和性精製された一次抗体とともにインキュベートし、TBST中で洗浄した。HRPと複合された二次抗体(ブタ抗ウサギ免疫グロブリン/HRP、ダコ・サイトメーション(DakoCytomation))をブロッキング緩衝液中で1:3000に希釈し、Chemidoc(商標)CCDカメラ(バイオ−ラッド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories))およびSuperSignal(登録商標)West Dura Extended Duration基質(ピアス(Pierce))を用い、製造業者のプロトコルに従って化学発光検出を行った。結果を下記で考察し、図2に示す。b)結果 ポリクローナル抗体製剤の品質は抗体精製におけるストリンジェンシーの程度に依存することが判明し、標的タンパク質に由来するものではないエピトープに特異的な抗体の減少が他のタンパク質との交差反応およびバックグラウンド結合を回避するのに必要であることが過去に示されている(アガトン C.(Agaton C.)ら(2004年)J.Chromatogr.A 1043:33−40頁)。 したがって、タンパク質マイクロアレイ分析を行うことで、特異性が高い単一特異性ポリクローナル抗体がHis6−タグに特異的な抗体ならびにABP−タグに特異的な抗体の減少により産生されたことを確認した。この後に固定化抗原を有する親和性カラム上で抗原選択的な抗体の親和性捕捉を行った。 タンパク質アレイの各スポット内でタンパク質の量を定量するため、一次および二次抗体を併用して2色の色素標識系を用いた。ニワトリにて産生されたタグ特異的なIgY抗体をAlexa555蛍光色素で標識した二次ヤギ抗ニワトリ抗体で検出した。ウサギmsAbとアレイ上のその抗原との特異的結合を、蛍光的にAlexa647で標識したヤギ抗ウサギ抗体で検出した。図1では、アレイの結果をアレイの各スポットから検出されたAlexa647の蛍光強度の量に対応する棒(y軸)として示す。各タンパク質断片を2通りにスポットし、図面のx軸上の各棒は1つのタンパク質スポットを表す。タンパク質アレイ分析によると、SATB2に対する親和性精製された単一特異性抗体が正確なタンパク質断片に対して高度に選択的であることが示され、かつアレイ上で分析される他のすべてのタンパク質断片に対するバックグラウンドが極めて低いことが示される。 ウエスタンブロット分析の結果(図2)は、抗体が膀胱腫瘍細胞系(RT−4)、卵巣嚢胞腺癌細胞系(EFO−21)および類表皮細胞系(A−431)(レーン1〜3)において約100kDaの単一バンドを特異的に検出することを示している。さらに、特異性が低下したバンドが肝臓および扁桃腺組織試料(レーン4〜5)において見られる。SATB2の理論分子量は(SATB2のアミノ酸配列、配列番号2からの計算によると)82kDaであり、分析対象のタンパク質がグリコシル化されるかまたはそれ以外では分析の条件下で修飾される場合があるという事実を考慮して得られた結果に十分に対応している。3)免疫組織化学による組織プロファイリングa)材料および方法 ヒト組織を含有する全部で576のパラフィンコアを単一特異性抗体試料を用いて分析した。組織マイクロアレイ(TMA)の作製のためのドナーブロックとして用いられる全組織を、地方倫理委員会(local ethical committee)からの認可に従う、ウップサラ(Uppsala)の大学病院(University Hospital)、病理学教室(Department of Pathology)のアーカイブから選択した。対応する組織切片を検査し、診断を確定しかつドナーブロック内の代表的領域を選択した。正常組織を、顕微鏡的に正常(非腫瘍性)と定義し、外科的に摘出された腫瘍周辺から採取された標本から選択することが最も多かった。癌組織を診断および分類のために精査した。診断目的で、全組織をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切断した。 TMAの作製を本質的には過去に記載のように行った(コノネン J.(Kononen J.)ら(1998年)Nature Med.4:844−847頁;カリオニエミ O.P.(Kallioniemi O.P.)ら(2001年)Hum.Mol.Genet.10:657−662頁)。つまり、レシピエントのTMAブロック内に孔を作製した。ドナーブロックから円筒状のコア組織試料を取得し、レシピエントのTMAブロック内に置いた。これをビーチャー・インスツルメント(Beecher Instrument)から入手した自動化された組織アレイヤー(ATA−27、米国カリフォルニア州サンプレーリー(Sun Prairie)のビーチャー・インスツルメント(Beecher Instruments))内で完全なTMAのデザインが作製されるまで繰り返した。TMAのレシピエントブロックを切断の2時間前に42℃でベーキングした。 TMAの設計では、広範囲の代表的な正常組織由来の試料を得て、代表的な癌組織を含めることに重点を置いた。これについては過去にカンプ C.(Kampf C.)ら(2004年)Clin.Proteomics 1:285−300頁において詳細な記載がなされている。つまり、48の正常組織由来の試料および20のヒトに作用する最も一般的な癌タイプ由来の試料を選択した。合計で、TMAブロックの8つの異なるデザイン(各々が1mmの直径を有する72の組織コアを有する)を作製した。TMAのうちの2つは正常組織を表し、異なる個体由来の3通りの48の異なる正常組織に対応するものであった。残りの6つのTMAは20の異なる癌タイプ由来の癌組織を表すものであった。癌タイプの20のうちの17については12の個別に異なる腫瘍をサンプリングし、残りの3つの癌タイプについては4つの個別に異なる腫瘍をサンプリングした(すべてを同じ腫瘍から2通りに)。免疫組織化学的分析のため、TMAブロックをウォーターフォール・ミクロトーム(waterfall microtome)(ライカ(Leica))を用いて4μmの厚みで切断し、SuperFrost(登録商標)(ロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science))のスライドグラス上に置いた。 自動化された免疫組織化学分析を上記のように行った(カンプ C.(Kampf C.)ら(2004年)Clin.Proteomics 1:285−300頁)。つまり、スライドグラスを60℃で45分間インキュベートし、キシレン中で脱パラフィン処理し(2×15分)、等級化したアルコールに水和した。抗原の回復(retrieval)においては、スライドをTRS(ターゲットリトリーバル溶液(Target Retrieval Solution)、pH6.0、ダコ・サイトメーション(DakoCytomation))中に浸漬し、Decloaking chamber(登録商標)(バイオケア・メディカル(Biocare Medical))内、125℃で4分間沸騰させた。スライドをAutostainer(登録商標)(ダコ・サイトメーション(DakoCytomation))内に置き、内因性ペルオキシダーゼを最初にH2O2でブロックした(ダコ・サイトメーション(DakoCytomation))。一次抗体およびヤギ抗ウサギペルオキシダーゼと複合させたEnvision(登録商標)を各々、室温で30分間インキュベートした。全ステップの間、スライドを洗浄緩衝液(ダコ・サイトメーション(DakoCytomation))中ですすいだ。最後に、ジアミノベンジジン(ダコ・サイトメーション(DakoCytomation))を色素原として用い、Harrisヘマトキシリン(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を対比染色用に用いた。スライドにPertex(登録商標)(ヒストラブ(Histolab))を載せた。 8つの異なるTMAから得た免疫組織化学的に染色した全切片を、ScanScope T2の自動スライド走査システム(アペリオ・テクノロジーズ(Aperio Technologies))を用いて走査した。8つのTMAの中身全体を現すため、576枚のデジタル画像を生成した。走査を20倍の倍率で行った。元データを保存するため、デジタル画像を別々のタグ画像ファイルフォーマット(TIFF)ファイルとして分離し抽出した。ウェブベースのアノテーションシステム内での画像処理を可能にするため、各画像をTIFFフォーマットからJPEGフォーマットに圧縮した。免疫組織化学的に染色した組織の全画像を顕微鏡下でマニュアルで評価し、認定病理専門医(board certified pathologist)または専門教育を受けた人員(specially educated personnel)(その後、病理学者が検証した)によりアノテートした。異なる正常組織および癌組織の各々のアノテーションを、免疫組織化学的転帰の分類のための簡素化されたスキームを用いて行った。各組織における代表性(representativity)および免疫反応性について検査した。各正常組織タイプ内に含まれる異なる組織特異的な細胞タイプをアノテートした。各癌においては、腫瘍細胞および間質をアノテートした。基本的なアノテーションパラメータは、i)染色強度、ii)染色細胞の画分およびiii)細胞内局在化(核および/または細胞質/膜)の評価を含んだ。染色強度を臨床組織病理学的診断で用いられる基準に従って主観的に評価し、転帰を、陰性=免疫反応性なし、弱い=わずかな免疫反応性あり、中程度=中程度の免疫反応性あり、または強力=明確かつ強力な免疫反応性ありとして分類した。染色細胞の画分を、代表的な細胞集団に対し、<2%、2〜25%、26〜75%または>75%の免疫応答性細胞として分類した。免疫応答性細胞の強度および画分の双方に基づき、各組織試料に対し、0=陰性、1=弱い、2=中程度、および3=強いという「染色スコア」を与えた。b)結果 ヒト標的タンパク質SATB2の組換えタンパク質断片に対して産生された単一特異性抗体の場合の組織プロファイリングからの結果は、いくつかの正常組織内および結腸直腸癌内で特定の免疫反応性(暗灰色)を示す(表1〜4および図3〜4)。 表1は、正常なヒト組織内でのSATB2タンパク質の発現パターンを示す。免疫組織化学およびTMA技術を用い、48の異なるタイプの正常組織を表す144のスポット(直径1mm)におけるSATB2の発現についてスクリーニングした。表1は、異なる組織内での発現レベルを示す。強力な発現(染色スコア3)が、遠位胃腸管由来の組織内および脳の2つの領域内で見出された。発現の中程度(染色スコア2)レベルが睾丸および副睾丸において検出された。巣状リンパ球様細胞が、中程度のまたは弱い(染色スコア1)発現を示した。すべての他の細胞および組織が陰性(染色スコア0)であった。N.R.は代表的な組織が全く存在しなかったことを意味する。SATB2は一部の神経組織および睾丸においても発現される。 図3Aは、顕微鏡拡大像を示し、大脳皮質および海馬に由来するニューロン内の核が陽性であること(暗灰色)を示す。周囲組織およびグリア細胞は陰性(明灰色)であった。睾丸由来の組織切片は、舌下腺管において主に核が中程度に陽性であること(暗灰色)を示した(図3B)。 本発明を含む組織学的アレイにおける具体的発見が、虫垂(図3C)、結腸(図3D)および直腸(図3E)における粘膜の腺細胞内で見出された明瞭かつ強い陽性(暗灰色)の核であった。粘膜内にも存在する他の細胞タイプ、例えば炎症性細胞、内皮細胞における陰性の染色(明灰色)に着目すること。図3Fは結腸粘膜の2つの高出力の拡大像を示し、それはすべての腺細胞が有する核におけるSATB2タンパク質の発現が強力であること(暗灰色)を示している。 表2は、216の異なる癌組織内でのSATB2の発現レベルを示す。表される全部で11の結腸直腸癌が陽性を示し、これらのうちの8つにおける発現は強力であった。分析対象の11の症例での結腸直腸癌を示す免疫組織化学的に染色された組織切片の場合での低出力の顕微鏡拡大像を図4Aに示す一方、結腸直腸癌のうちの6つに由来する代表的領域の高出力の拡大像を図4Bに示す。正常細胞を有する周囲組織が陰性(明灰色)であったのと比べて、大多数の癌細胞が核では強力な染色(暗灰色)を示し、それは高レベルのSATB2の発現を示した。4)結腸直腸癌TMAa)材料および方法 1999年〜2002年の間に結腸直腸癌と診断された患者122名(女性63名および男性59名)由来のホルマリン固定されたパラフィン包埋組織のアーカイブをスウェーデンのマルメ大学病院(Malmo University Hospital)、病理学教室(Department of Pathology)から収集した。患者の中央年齢が75(32〜88)歳であった。39の腫瘍がデュークスステージAであり、42がデュークスステージBであり、かつ41がデュークスステージCであった。死亡日に関する情報を全患者に対する死亡原因における地方登録所から得た。倫理的認可を地方倫理委員会(Local Ethics Committee)から得た。 全部で122の結腸直腸癌の症例を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色されたスライド上で組織病理学的に再評価した。次いでTMAを、1症例当たり2×1.0mmのコアを非侵襲性癌を代表する領域からサンプリングすることにより作製した。上記の2項に記載のように調製したSATB2抗体を用い、上記の3項に記載のようにTMAを調製し、自動化された免疫組織化学的分析を行った。 組織アノテーションを、染色強度が陰性(免疫反応性が全くないかもしくはわずか)または陽性(反応性が中程度もしくは強力)のいずれかであると考えられる場合を除いて本質的には上記の3項に記載のように行った。次いで、細胞核内で陽性の染色強度を示す細胞の画分について計算を行い、試料における「画分スコア」と称される値を生成した。したがって、「画分スコア」は、この項における定義により陽性の染色強度を示す試料中での細胞の百分率に対応する。 あらゆる異なる層における生存傾向に基づき、さらなる統計分析のために二分変数を作成し、高い/陽性のSATB2の発現を25%を超える陽性の核としてかつ低い/陰性SATB2の発現を25%未満の陽性の核として定義した。次いで、試料を、分割の基準として25%の画分スコアを用い、画分スコアに基づいて2群に分類した。したがって、組織試料(コア)中の25%未満の細胞内で全くシグナルがないかまたは染色強度が陽性であることによりその試料が「25%未満」の群内に分類される一方、コア中の25%を超える細胞内で染色強度が陽性であることによりその試料が「25%を超える」群内に分類される。 試料における上記の分類を、カプラン−メイアー(Kaplan−Meier)評価による全体的な生存分析に用い、対数順位検定を用い、異なる層内で生存を比較した。すべての統計的検定は両側でありかつ0.05%未満のp値を有意と考えた。すべての計算を統計パッケージSPSS12.0(米国イリノイ州のSPSS Inc.)を用いて行った。b)結果 122の結腸直腸癌についての組織マイクロアレイに基づく分析によると、99の腫瘍(81%)がSATB2に対して陽性であることが示された。驚くべきことに、図5で見られるように、SATB2の発現が低いかまたは全くないことを通常の切断および組織化学的染色によっては予測できなかった。両方の腫瘍試料(2通りに示される切片)を中間的に識別された結腸直腸腺癌として診断した。図5Aは強力なSATB2の発現を伴う切片を示し、図5Bにおける試料ではSATB2の発現が欠如している。 生存分析の結果を図6に示し、ここで図面は患者の異なる集団における経時的な累積的生存(cumulative survival)について示す。コホート全体に基づく生存分析によると、SATB2の発現が低い腫瘍を有する患者において全生存(OS)が短縮される傾向(p=0.14)が示された(図6A)。SATB2の発現と臨床病理学的変数である性別およびデュークスステージとの関係についても検討した。SATB2の発現が低い腫瘍を有する女性患者(n=63)は、全コホートと比べてOSがさらに短縮されるという傾向が高まること(p=0.11)が示された(図6B)。図6Cは、リンパ節陰性(デュークスステージAおよびB)患者(n=80)において同様の傾向(p=0.10)が観察されることを示す。リンパ節陰性の女性(n=44)のサブグループでは、この傾向は有意であった(p=0.04)(図6D)。 生存分析データを提示するための別の方法としては、上記の3項に記載の「染色スコア」の使用によるものでありうる。次いで、0および1としてスコア化された試料であれば低いSATB2の発現として定義され、2および3としてスコア化された試料であれば高いSATB2の発現として定義されることになる。図6に見られる結果と同様の結果が予想される。5)TMAデータの定量的画像分析 発現の定量的測定値を得るため、Aperio ScanScope CS Slide Scanner(米国カリフォルニア州ビスタ(Vista)のアペリオ・テクノロジーズ(Aperio Technologies))システムを用い、上記の4項に記載のように調製したハイブリダイズされたTMAスライドのデジタル画像を捕捉する。走査を20倍の倍率で行い、画像をマルチレイヤーTIFFとして保存する。これらのデジタル画像をImageScope(アペリオ(Aperio))を用いて閲覧し、分析に適するものと判断する。画像をばらし(de−arrayed)、各組織コアをTMA Lab(アペリオ(Aperio))を用いて画像化する。最初に、Color Deconvolutionアルゴリズム(アペリオ(Aperio))を用い、各画像を3つのチャネル、すなわち赤、緑および青(RGB)に分離する。これにより各染色の測定が別々に可能になることから、ジアミノベンジジン色原体(chromogene)染色からヘマトキシリン対比染色を差し引くことが可能になる。 次いで、多数の異なるアルゴリズムを用い、核、細胞質または膜の染色を定量する。IHC Nuclearアルゴリズム(アペリオ(Aperio))を用い、SATB2の核染色を定量する。核を強度に基づいて同定した。核の縁部を、エッジ画素の平均により自動的に閾値を調節するエッジ閾値手法を用いて同定する。全部のアルゴリズムの完全な記述がアペリオ・テクノロジーズ(Aperio Technologies)から入手可能である。TMA上の各コアの擬似色のマークアップ画像を生成し、評価し、各アルゴリズムの正確さを確認する。 Nuclearアルゴリズムからの出力値は、TMAスライド上の各コアにおける陽性の核の百分率および核のRGB強度値である。各組織コア上でのSATB2の発現レベルについては、オートスコア(AS)を、各コアについて陽性の核の百分率と核のRGB強度を掛け合わせることにより計算する。AS分析を癌のTMA試料、例えば上記の4項に記載の試料について行い、全生存をカプラン−メイアー(Kaplan−Meier)の方法により評価する。対数順位検定を用い、異なる層内で生存を比較する。統計計算を統計パッケージSPSS12.0(米国イリノイ州のSPSS Inc.)を用いて行う。6)クラスタリング分析a)材料および方法 結腸癌における既知のマーカーとSATB2との間のタンパク質の発現における整合性を検討するため、階層的クラスタリングを行った。クラスタリングは、初期マイニングステップでデータにおける傾向および構造を評価するのに適した方法である。階層的クラスタリングのような教師なしの方法の使用により、データセットのブラウジングだけでは明白でない集団およびカテゴリーが容易に検出可能である。ライフサイエンスでは、クラスタリングはRNA転写分析、例えばマイクロアレイデータにおいてかなり幅広く用いられている。 3項に記載の6つの癌のTMAを再度、すなわち全部で216の癌組織試料中で用いた。上記の2項のように調製したSATB2を認識する抗体に加え、従来のマーカーであるCEA(デンマーク、グロストラップ(Glostrup)のダコ(DAKO))、CK20(デンマーク、グロストラップ(Glostrup)のダコ(DAKO))、CDX2(英国ニューキャッスル・アポン・タイン(Newcastle upon Tyne)のノボカストラ(Novocastra))、p53(デンマーク、グロストラップ(Glostrup)のダコ(DAKO))、Ki67(デンマーク、グロストラップ(Glostrup)のダコ(DAKO))およびサイクリンB1(米国レキシントン(Lexington)のトランスダクション・ラボラトリーズ(Transduction laboratories))に対する抗体を3項に記載のような自動化された免疫組織化学法を用いて試験した。 病理学者が、TMAを3項に示されるようにアノテートし、0〜3のスケール(3は強力な染色(黒)であり、0は染色なし(白)である)を用いて各コアに対して染色スコアを与えた。クラスタリングを、統計コンピューティング言語Rを用いて行った。クラスタリングアルゴリズムを二次元のデータマトリックス、組織および抗体に対して用いた。クラスタリング法では全部で7つの抗体および216の組織を用いた。8つの組織を発現レベルを定量可能と思われる画像を全く有しないことから除去した。クラスタリングを、クラスター間の距離が各ステージで平均連鎖に基づきランス−ウィリアムズ(Lance−Williams)の非類似性における新たな式により再計算される、ユークリッド距離計量に基づく平均集積を用いるトップダウンの階層的方法を用いて行った。アルゴリズムでは、より緊密なクラスターが各ノードの左側に提示されるように、クラスタリング順序においてサブツリーを用いた。 SATB2とCK20との間の差異および類似性をさらに試験するため、免疫組織化学分析を4項に記載の122の癌コアを有する癌のTMAを用いて行った。TMAを、2項のように調製したSATB2抗体およびダコ(DAKO)(グロストラップ(Glostrup)、デンマーク)から入手したCK20抗体で染色した。2つのTMAを、4項で定義した「画分スコア」に従ってアノテートした後、比較した。b)結果 SATB2の結腸直腸癌に対するマーカーとしての、従来のマーカーCEA、CK20、CDX2、p53、Ki67およびサイクリンB1と比べた場合の特異性について、216の異なる腫瘍において検討した。これら7つの異なるタンパク質の発現プロファイルからのデータの階層的クラスタリングの結果としてヒートマップが得られ、それに伴う樹状図を図7に示す。腫瘍のヒートマップおよび樹状図から、大部分の結腸直腸癌がSATB2、CK20、CDX2およびCEAの高い発現レベルに基づき最高レベルで分離されたクラスターを形成することは明白である。さらに分析によると、CK20およびCDX2クラスターとともにSATB2クラスターのすべてがより一般的な発現パターンを示した他の試験対象のマーカーよりも特異的な発現を有することが示される。8つの結腸直腸癌のクラスターでは、1つの子宮頚部腺癌および胆管細胞肝癌の1症例についてもSATB2に対して強い陽性を示した。このクラスター以外では、3つの結腸直腸癌がSATB2に対して陰性であった。興味深いことに、SATB2の発現パターンにおけるCK20の発現との相関が明確でないことから、SATB2の発現パターンは結腸直腸癌の特徴づけの過程ではCK20に対する補体として機能しうると思われる。 SATB2およびCK20における4項に記載の122の癌のTMAについてより詳細に分析した。25%を超える画分スコアを有する122の結腸直腸癌において、CK20単独で86%(105/122)、SATB2単独で81%(99/122)が確認された(図8)。興味深いことに、両マーカーにおける染色から得たデータを組み合わせることにより、結腸直腸癌の93%(113/122)がマーカーの一方または両方において明らかに陽性であった。CK20またはSATB2のいずれの発現も全くなかった患者は5名に過ぎなかった。癌に伴う一般的な臨床的問題が未知の発生源の転移を示す患者であることから、癌を診断する場合、より具体的には転移の同定を試みる場合、この情報は興味深い。したがって、患者が、CK20およびSATB2の双方からの情報を組み合わせるのであれば結腸直腸腺癌に対する正確な診断をより容易に得ることになる。 さらに、結腸直腸癌を有する患者17名からのリンパ節転移におけるSATB2およびCK20の発現を分析した。CK20単独で、2もしくは3の染色スコアで転移の88%(15/17)の発生源が確認された。SATB2単独で、25%を超える画分スコアで転移の82%(14/17)の発生源が確認された(図9)。両マーカーにおける染色から得たデータを組み合わせることにより、転移の94%(16/17)の発生源が確認された。これはさらに、転移が結腸直腸癌から生じるか否かを判定する場合、SATB2およびCK20の双方における発現に関する情報が望ましいという点を支持している。 本発明の実施形態の項目別リスト 以下は、本発明の実施形態の非限定的な項目別リストであり、本発明により提供される特定のその態様における様々な特徴および組み合わせに関するさらなる情報を提供するために示されるものである。1.結腸直腸癌を診断するための方法であって、SATB2タンパク質を検出するステップを含む、方法。2.前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号1、および ii)配列番号1に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、項目1に記載の方法。3.前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号2、および ii)配列番号2に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、項目1または2に記載の方法。4.a)結腸直腸癌を有すると疑われる患者由来の試料を提供するステップと、 b)前記試料に検出されるべき前記SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な検出可能な親和性リガンドを適用するステップであって、前記適用は前記親和性リガンドと前記試料中に存在するSATB2タンパク質とを結合可能な条件下で行われる、ステップと、 c)結合されていない親和性リガンドを除去するステップと、 d)前記試料との会合状態を維持する親和性リガンドを検出するステップと、を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。5.前記試料が体液試料である、項目4に記載の方法。6.前記体液が、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出液からなる群から選択される、項目5に記載の方法。7.前記試料が排泄物試料である、項目4に記載の方法。8.前記試料が組織試料である、項目4に記載の方法。9.前記試料が細胞学的試料である、項目4に記載の方法。10.前記検出可能な親和性リガンドが、抗体、その断片およびその誘導体からなる群から選択される、項目4〜9のいずれか一項に記載の方法。11.前記検出可能な親和性リガンドが、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリン反復ドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞毒性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインならびにジンクフィンガーからなる群から選択される足場に由来するタンパク質リガンドである、項目4〜9のいずれか一項に記載の方法。12.前記検出可能な親和性リガンドがオリゴヌクレオチド分子である、項目4〜9のいずれか一項に記載の方法。13.前記検出可能な親和性リガンドが、蛍光色素および金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、項目4〜12のいずれか一項に記載の方法。14.前記検出可能な親和性リガンドが、前記検出可能な親和性リガンドを認識可能な第二の親和性リガンドを用いて検出される、項目4〜12のいずれか一項に記載の方法。15.前記検出可能な親和性リガンドを認識可能な前記第二の親和性リガンドが、蛍光色素および金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、項目14に記載の方法。16.項目1〜15のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、 a)SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な検出可能な親和性リガンドと、 b)前記親和性リガンドの存在を検出するのに必要な試薬と、を含む、キット。17.前記検出可能な親和性リガンドが、抗体、その断片およびその誘導体からなる群から選択される、項目16に記載のキット。18.前記検出可能な親和性リガンドが、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリン反復ドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞毒性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインならびにジンクフィンガーからなる群から選択される足場に由来するタンパク質リガンドである、項目16に記載のキット。19.前記検出可能な親和性リガンドがオリゴヌクレオチド分子である、項目16に記載のキット。20.前記検出可能な親和性リガンドが、蛍光色素および金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、項目16〜19のいずれか一項に記載のキット。21.前記親和性リガンドの存在を検出するのに必要な前記試薬が、前記検出可能な親和性リガンドを認識可能な第二の親和性リガンドを含む、項目16〜19のいずれか一項に記載のキット。22.前記検出可能な親和性リガンドを認識可能な前記第二の親和性リガンドが、蛍光色素または金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、項目21に記載のキット。23.結腸直腸癌に対する診断マーカーとしてのSATB2タンパク質の使用。24.結腸直腸癌の診断用の診断剤の製造における、SATB2タンパク質または抗原活性を示すその断片の使用。25.前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号1、および ii)配列番号1に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、項目23および24のいずれか一項に記載の使用。26.前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号2、および ii)配列番号2に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、項目23および24のいずれか一項に記載の使用。27.抗体またはその断片もしくは誘導体である、SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な親和性リガンド。28.アミノ酸配列が配列番号1の配列を含むタンパク質で動物を免疫するステップを含むプロセスにより得られうる、項目27に記載の親和性リガンド。29.診断剤としての、項目27〜28のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。30.結腸直腸癌の診断用の診断剤の製造における、項目27〜28のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。 結腸直腸癌を有するかまたは有すると疑われる哺乳類対象での結腸直腸癌における予後が不良であるか否かを判定するための方法であって、 a)前記対象由来の試料を提供するステップと、 b)前記試料中に存在するSATB2タンパク質の量を定量して標本値を得るステップと、 c)ステップb)で得られた前記標本値を参照値と比較するステップと、前記標本値が前記参照値よりも低い場合、 d)前記対象での結腸直腸癌における予後が不良であることを結論づけるステップと、を含む、方法。 ステップd)における前記不良な予後が65%もしくはそれ未満の5年生存率の可能性に対応する、請求項1に記載の方法。 ステップd)における前記不良な予後が60%もしくはそれ未満の5年生存率の可能性に対応する、請求項2に記載の方法。 治療を必要とする対象における結腸直腸癌の治療の方法であって、 a)前記対象由来の試料を提供するステップと、 b)前記試料中に存在するSATB2タンパク質の量を定量して標本値を得るステップと、 c)ステップb)で得られた前記標本値を参照値と比較するステップと、前記標本値が前記参照値よりも低い場合、 d)前記対象を結腸直腸癌の不良な予後に適した治療法で治療するステップと、を含む、方法。 前記治療法が、化学療法、ネオアジュバント療法およびそれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の方法。 前記治療法がネオアジュバント療法である、請求項5に記載の方法。 前記ネオアジュバント療法が、i)放射線療法単独およびii)化学療法を併用した放射線療法から選択される、請求項6に記載の方法。 前記結腸直腸癌がリンパ節陰性である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 前記結腸直腸癌がデュークスステージAもしくはBにある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 前記結腸直腸癌が結腸直腸腺腫である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 前記結腸直腸癌が結腸直腸癌腫である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。 前記結腸直腸癌が転移しつつある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 前記結腸直腸癌がデュークスステージCにある、請求項1〜7および12のいずれか一項に記載の方法。 前記対象がヒトである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。 前記対象が女性である、請求項14に記載の方法。 前記参照値が参照試料中のSATB2の発現量に対応する規定値である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。 前記参照値が50%のSATB2陽性細胞の画分スコアである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。 前記参照値が25%のSATB2陽性細胞の画分スコアである、請求項17に記載の方法。 前記参照値が70のSATB2の発現のオートスコア値である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。 前記参照値が50のSATB2の発現のオートスコア値である、請求項19に記載の方法。 前記試料が体液試料である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。 前記体液が、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液および滲出液からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。 前記試料が排泄物試料である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。 前記試料が組織試料である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。 前記組織試料が結腸直腸組織試料である、請求項24に記載の方法。 前記試料が細胞学的試料である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。 前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号1、および ii)配列番号1に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。 前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号2、および ii)配列番号2に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。 ステップb)が、 b1)前記試料に定量されるべき前記SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な定量可能な親和性リガンドを適用するステップであって、前記適用は前記親和性リガンドと前記試料中に存在するSATB2タンパク質との結合を可能にする条件下で行われる、ステップと、 b2)結合されていない親和性リガンドを除去するステップと、 b3)前記試料との会合状態を維持する親和性リガンドを定量するステップと、を含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。 前記定量可能な親和性リガンドが、抗体、その断片およびその誘導体からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。 前記定量可能な親和性リガンドが、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリン反復ドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞毒性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインならびにジンクフィンガーからなる群から選択される足場に由来するタンパク質リガンドである、請求項29に記載の方法。 前記定量可能な親和性リガンドがオリゴヌクレオチド分子である、請求項29に記載の方法。 前記定量可能な親和性リガンドが、蛍光色素および金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、請求項29に記載の方法。 前記定量可能な親和性リガンドが、前記定量可能な親和性リガンドを認識可能な第二の親和性リガンドを用いて検出される、請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法。 前記定量可能な親和性リガンドを認識可能な前記第二の親和性リガンドが、蛍光色素および金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、請求項34に記載の方法。 請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、 a)SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な定量可能な親和性リガンドと、 b)前記親和性リガンドの量を定量するのに必要な試薬と、を含む、キット。 前記定量可能な親和性リガンドが、抗体、その断片およびその誘導体からなる群から選択される、請求項36に記載のキット。 前記定量可能な親和性リガンドが、ブドウ球菌プロテインAおよびそのドメイン、リポカリン、アンキリン反復ドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞毒性Tリンパ球関連抗原4、プロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、ペプチドアプタマー、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンIII型ドメインならびにジンクフィンガーからなる群から選択される足場に由来するタンパク質リガンドである、請求項36に記載のキット。 前記定量可能な親和性リガンドがオリゴヌクレオチド分子である、請求項36に記載のキット。 前記検出可能な親和性リガンドが、蛍光色素および金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、請求項36〜39のいずれか一項に記載のキット。 前記親和性リガンドの量を定量するのに必要な前記試薬が、前記定量可能な親和性リガンドを認識可能な第二の親和性リガンドを含む、請求項36〜39のいずれか一項に記載のキット。 前記定量可能な親和性リガンドを認識可能な前記第二の親和性リガンドが、蛍光色素または金属、発色色素、化学発光化合物および生物発光タンパク質、酵素、放射性同位体および粒子からなる群から選択される標識を含む、請求項41に記載のキット。 前記参照値を提供するために参照試料をさらに含む、請求項36〜42のいずれか一項に記載のキット。 予後マーカーとしてのSATB2タンパク質の使用。 結腸直腸癌に対する予後マーカーとしてのSATB2タンパク質の使用。 結腸直腸癌の予後用の予後剤の製造における、SATB2タンパク質または抗原活性を示すその断片の使用。 前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号1、および ii)配列番号1に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、請求項44〜46のいずれか一項に記載の使用。 前記SATB2タンパク質の前記アミノ酸配列が、 i)配列番号2、および ii)配列番号2に対して少なくとも85%同一の配列から選択される配列を含む、請求項44〜46のいずれか一項に記載の使用。 抗体またはその断片もしくは誘導体である、SATB2タンパク質との選択的相互作用を行うことが可能な親和性リガンド。 アミノ酸配列が配列番号1の配列を含むタンパク質で動物を免疫するステップを含むプロセスにより得られうる、請求項49に記載の親和性リガンド。 予後剤としての、請求項49および50のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。 結腸直腸癌の予後のための、請求項49および50のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。 結腸直腸癌の予後用の予後剤の製造における、請求項49および50のいずれか一項に記載の親和性リガンドの使用。 【課題】結腸直腸癌の診断および/または予後にとって有用なマーカーとなるSATB2転写因子タンパク質を提供する。【解決手段】SATB2タンパク質の結腸直腸癌タイプ用のマーカーとしての同定を介した結腸直腸癌の検出、特徴づけおよび予後に関連する新たな方法、手段および使用を提供する。患者におけるSATB2の発現の低い値と結腸直腸癌の侵襲性が高まるかまたは高リスクの形態との間に相関が認められる。【選択図】なし配列表