生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_選択的脱ベンジル化方法およびこれに用いる選択水素化触媒
出願番号:2011221848
年次:2013
IPC分類:C07C 51/09,B01J 29/74,C07C 63/70,C07C 65/32,C07C 57/58,C07B 61/00


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佐治木 弘尚 門口 泰也 澤間 善成 高橋 徹 伊藤 良 JP 2013082637 公開特許公報(A) 20130509 2011221848 20111006 選択的脱ベンジル化方法およびこれに用いる選択水素化触媒 エヌ・イーケムキャット株式会社 000228198 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 佐治木 弘尚 門口 泰也 澤間 善成 高橋 徹 伊藤 良 C07C 51/09 20060101AFI20130412BHJP B01J 29/74 20060101ALI20130412BHJP C07C 63/70 20060101ALI20130412BHJP C07C 65/32 20060101ALI20130412BHJP C07C 57/58 20060101ALI20130412BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130412BHJP JPC07C51/09B01J29/74 ZC07C63/70C07C65/32 AC07C57/58C07B61/00 300 11 OL 12 特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼ホームページのアドレス http://shibu.pharm.or.jp/tokai/2011/img/s9d.pdf ▲2▼掲載日 平成23年6月27日 4G169 4H006 4H039 4G169AA03 4G169BA07A 4G169BA07B 4G169BB02A 4G169BB04A 4G169BB20A 4G169BC72A 4G169BC72B 4G169BD01A 4G169BD06A 4G169CB02 4G169CB66 4G169CB70 4G169CB74 4G169DA08 4G169FA02 4G169FB14 4G169FB18 4G169FB27 4G169FB57 4G169ZA19A 4G169ZD01 4H006AA02 4H006AC46 4H006BA25 4H006BA71 4H006BB17 4H006BE20 4H006BJ50 4H006BM30 4H006BM72 4H006BR30 4H006BS30 4H039CA65 4H039CB20 本発明は、選択的脱ベンジル方法およびこれに使用する選択水素化触媒に関し、更に詳細には、例えば、芳香族ハロゲンや、芳香族ケトン等の化合物中の保護基であるベンジル基を、ハロゲン原子や、ケトン基等の他の官能基に影響を与えることなく、高い効率で水素化し、除去することのできる選択脱ベンジル化方法およびこれに使用する選択的水素化触媒に関する。 ある化学反応ステップにおいて、有機化合物中の官能基が反応に関与することが望ましくない場合、この官能基を保護基により保護し、反応に関与しないようにすることは良く行われていることである。例えば、有機化合物中のカルボキシル基は、反応性が高いため、ベンジル基により保護することが一般的である。そして、このベンジル基は、所定の反応が終了した後、元のカルボキシ基に戻すのであるが、その脱ベンジル化反応としては、水素雰囲気下で、Pd担持カーボン触媒を用いておこなう水素化反応が汎用さている。 しかし、従来知られている水素化反応では、例えば、有機化合物中の芳香環−ハロゲン原子の結合を切断するなど、水素化したくない他の官能基や結合に影響を与えてしまうという問題があった。そこで、脱保護反応だけを選択的に行うことのできる触媒反応が求められていた。 本発明者らは既に、被毒物質による修飾により、Pd担持カーボン触媒の活性をコントロールするコンセプトでエチレンジアミン修飾Pd担持カーボン触媒(非特許文献1)や、ジフェニルスルフィド修飾Pd担持カーボン触媒(特許文献1)などを開発した。 しかし上記の技術でも、ハロゲン原子を有する芳香族ハロゲン化合物や、ケトン基を有する芳香族ケトン化合物を含む有機化合物の水素化において、前者の触媒を用いた方法では、脱ベンジル反応は進行するが、同時に、芳香族ハロゲン化合物あるいは芳香族ケトン化合物を分解あるいは水素化してしまうという問題があった。また、後者の触媒を用いた方法では、芳香族ハロゲン化合物や、芳香族ケトン化合物のいずれの官能基も変換しないが、脱ベンジル反応も進行しないという問題があった。 更に、従来の選択的脱ベンジル反応として、芳香族ハロゲン存在下での脱ベンジル反応に関して下記の非特許文献2および非特許文献3の技術が知られている。このうち、非特許文献2では、硝酸セリウムアンモニウム((NH4)2[Ce(NO3)6])を用いた酸化よる4−クロロ安息香酸ベンジルの脱ベンジル反応であるが、その収率は、65%程度と低く、さらに有機化合物に対して4倍モル使用される硝酸セリウムアンモニウムは、反応により全量消費されてしまうという問題もある。 一方、非特許文献3では、触媒として塩化ニッケル(NiCl2)と水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を利用し、これを系中に添加し、生成するホウ酸ニッケルを用いて芳香族ハロゲン存在下での脱ベンジル反応を行なう方法が記載されている。そして、この方法による、芳香族ハロゲン2−クロロ安息香酸ベンジル、3−クロロ安息香酸ベンジル、4−クロロ安息香酸ベンジルの脱ベンジル反応の収率は、それぞれ収率83、89および87%となっており、相応の結果を得ているが、使用するNiCl2およびNaBH4は、有機化合物に対してそれぞれ3倍モル、9倍モルであり、多量の触媒を必要とする。しかも、新しく反応を行うためには、添加したこれらの試薬のうち少なくともNaBH4は毎回新しく添加する必要があり、触媒の再利用が難しいという問題や、コスト面での問題があるため、実用的な手法ではなかった。特開2007−152199号公報J.Org. Chem., 1998, 63, 7990Ind.J. Chem., 1986, 25B, 433Synthesis,2009, 117, 1127 上記の脱ベンジル化反応においてのみならず、目的とする基のみを水素化する選択的水素化および水素化分解反応は、有機化合物中の複数の官能基のうち、特定の官能基のみを水素化でき、合成ステップを減らすことができるため、医薬品、農薬やそれら中間体合成において非常に重要な反応である。 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、芳香族ハロゲン化合物あるいは芳香族ケトン化合物中のハロゲン原子やアシル基を分解あるいは水素化することなく、また、これら化合物の有するハロゲンや、アシル基等の官能基も変換することなく、効率の良く、保護基であるベンジル基のみを水素化し、脱ベンジルする技術およびにこれに用いることのできる触媒の提供をその課題とするものである。 本発明者らは、芳香族ハロゲン化合物や、芳香族ケトン化合物での脱ベンジル反応について鋭意検討した結果、エステル系溶媒中、触媒活性種としてのパラジウムをベータゼオライト(NH4+型など)に担持させた触媒を用いることにより、上記化合物の他の官能基を分解あるいは水素化することなく、効率良く脱ベンジル反応を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、式(I)(式中、Arは、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させ、式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物とすることを特徴とする脱ベンジル化方法を提供するものである。 また本発明は、前記式(I)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させることを特徴とする前記式(II)で表されるカルボン酸化合物の製造方法を提供するものである。 更に本発明は、パラジウム成分をβ型ゼオライトに担持せしめてなる選択水素化触媒を提供するものである。 本発明方法によれば、芳香族ハロゲン化合物のベンゼン環−ハロゲン原子結合や、芳香族ケトン化合物のアシル基を、切断あるいは水素化することなく、また、いずれの官能基も変換することなく、保護基であるベンジル基を選択的に部分水素化し、高い効率で芳香族カルボン酸(II)を製造することが可能である。 また、本発明方法で触媒として使用するパラジウム成分(Pd成分)を担持したβ型ゼオライトは、リサイクル使用が可能であり、これを用いた反応は、廃棄物が少なく、コストが低減されたプロセスとなるという利点もある。 本発明方法は、下式で示すように、式(I)で表されるカルボン酸ベンジルエステル(I)のベンジル基を水素ガスを用いて水素化、除去し、カルボキシル基を有するカルボン酸化合物(II)とすることにより行われる。 上記式中、Arで示される、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基を有する芳香環式基または複素環式基としては、塩素、臭素、よう素等のハロゲン原子や、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等のアシル基を有する、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基等の芳香環式基や、ピリジル基、ピリミジル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、インダニル基、 インデニル基、ジベンゾフラニル基またはメチレンジオキシフェニル基等の複素環式基が挙げられる。 また、本発明方法は、基本的に選択的にベンジル基を水素化し、これを除去するが、一般の水素化反応では水素化され、分解あるいは構造変化が予想される置換基、例えば、ハロゲン原子、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の置換基には、何ら影響を与えない。しかし、側鎖部分に存在する二重結合(−CH=CH−)は、これも水素化する。 本発明の脱ベンジル化反応において使用される溶媒は、エステル系溶媒であり、その例としては、低級アルコールと低級カルボン酸のエステル反応により得られる、例えば、酢酸エチルや酢酸ブチル等が挙げられる。このものは高純度のものが望ましいが、コスト低減を目的として、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒との混合溶媒を使用してもよい。 また、本発明の脱ベンジル化反応において、触媒として用いるPd成分を担持したβ型ゼオライト(Pd担持βゼオライト)は、Pd成分を活性金属とし、このPdを担持するための担体としてβ型ゼオライトを使用したものである。このPd成分としては、金属としてのPdのほか、酸化パラジウムとして担持されていても良いが、良好な水素化分解活性を示すためには金属の状態であることが好ましい。 一方触媒の担体であるβ型ゼオライトは、単位胞組成Nan[AlnSi64−nO128]・xH2Oで表される正方晶系の合成ゼオライトであり、c軸方向に正方形に近い12員環(0.55×0.55nm)断面のジグザグな細孔を、a軸およびb軸方向に12員環(0.76×0.64nm)で直線状の細孔を有している。このβ型ゼオライトでは、上記の細孔が交差して3次元細孔を形成し、細孔の交差点には大きな空間を有している。なお、合成ゼオライトは、通常、Na型として得られるが、本発明に使用されるβ型ゼオライトは、特に限定されるものでは無く各種遷移金属や希土類の少なくとも一つでイオン交換したβ型ゼオライトを用いても良いが、Na型をイオン交換したNH4型が好ましい。Na型ゼオライトをイオン交換し、NH4型のゼオライトとするには、液相中、既知の方法により実施すればよい。 本発明で触媒として用いるPd担持β型ゼオライトにおいて、β型ゼオライトあたりに担持されるPd成分量は、Pd金属換算で0.01〜20wt%であることが好ましく、1〜10wt%であることがより好ましい。このPd成分量が少なすぎると反応速度が遅くなり、反応を完結させるためには多量の触媒が必要となる。また、Pd成分量が多すぎるとPd成分の分散が悪くなり、Pd単位重量当たりの活性が下がるため、高価なPdが非効率的に使用されることになる。 本発明に使用されるPd担持β型ゼオライトの製造方法は特に限定されないが、その製造方法の例として、次の方法を挙げることができる。すなわち、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を満たしたフラスコに酢酸パラジウムを量り取り、メタノールに溶解する。この溶液中にNH4型ベータゼオライト(Si/Alモル比=25)を、金属パラジウムの含有量が5質量%になるように添加し、アルゴン雰囲気下に室温で、上澄みが透明になるまで攪拌を続ける。そして、得られた黒色の粉末を吸引濾過した後、メタノール及び水で洗浄し、次いでデシケータ中で減圧下、室温にて乾燥することにより得られる。 本発明の脱ベンジル化方法では、還元成分として水素ガスが使用される。この水素ガスは、上記したエステル系溶媒、Pd担持β型ゼオライトおよびカルボン酸ベンジルエステル(I)の混合物中に供給される。より具体的には、密閉容器内の反応液上部の空間に水素を満たすことにより、水素ガスが供給される。 本発明方法における、水素ガス、エステル系溶媒およびカルボン酸ベンジルエステル(I)の量は特に限定されないが、水素ガスの供給量はカルボン酸ベンジルエステル(I)のベンジル基を選択的水素化するのに必要な理論量以上であることが必要であり、理論量対し等倍〜1000倍モル程度、一般には、1倍〜10倍モル程度供給されることが好ましい。また、溶媒であるエステル系溶媒は、基質であるカルボン酸ベンジルエステル(I)に対し、その重量で0.1〜100倍添加することが好ましく、カルボン酸ベンジルエステル(I)が完全に溶解している状態となることが望ましい。 本発明方法における、選択的水素化反応の条件は特に限定されないが、その反応温度は、0〜200℃であることが好ましく、10〜100℃であることがより好ましい。また、水素圧力は、0.01〜10MPaであることが好ましく、0.1〜1MPaであることがより好ましい。反応温度が低いあるいは水素分圧が低い場合には、反応の進行が遅く、原料の転化が十分に進まない。また、反応温度が高いあるいは水素分圧が高い場合には、十分な選択性が得られない。 以下、実施例および参考例により、本発明方法をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。参 考 例 1 選択的接触還元反応用パラジウム触媒の製造は以下のようにして実施した。すなわち、NH4型ベータゼオライト(Si/Alモル比=25、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を用意した。そして、不活性ガスとしてアルゴンを満たしたフラスコに、酢酸パラジウムを527mg(2.35mmol)を量り取り、メタノール50mlに溶解した。この溶液中にNH4型ベータゼオライトを、金属パラジウムの含有量が5質量%になるように5g添加し、アルゴン雰囲気下に室温で、上澄みが透明になるまで6日間攪拌を続けた。そして、得られた黒色の粉末を吸引濾過した後、メタノール(30mlずつ2回)及び水(30mlずつ2回)の順に洗浄し、次いでデシケーター中で減圧下、室温にて3日間乾燥した。実 施 例 1 基質としての4−クロロ安息香酸ベンジル123.3mg(0.5mmol)および還元触媒としての、参考例1で得た5%Pd/ベータゼオライト 10.6mg(基質に対して金属パラジウムとして1mol%)を試験管に取り、これに酢酸エチル1mLを加え懸濁させた後、水素ガスを満たした風船を取り付けた針を試験管上部のセプタムに刺し、セプタムに刺した別の針から系内のガスを抜く操作を3回繰り返し、系内を水素ガスで置換した後、試験管内を水素ガスで満たした。 基質としての4−クロロ安息香酸ベンジル123.3mg(0.5mmol)および還元触媒としての5%Pd/ベータゼオライト10.6mg(基質に対して金属パラジウムとして1mol%)を試験管に取り、これに酢酸エチル1mLを加え懸濁させた後、水素ガスを満たした風船を取り付けた針を試験管上部のセプタムに刺し、セプタムに刺した別の針から系内のガスを抜く操作を3回繰り返し、系内を水素ガスで置換した後、試験管内を水素ガスで満たした。 60℃で24時間激しく攪拌した後、得られた反応液をメンブランフィルター(Millipore製、Millex−LH、孔径0.45μm)を用いてろ過し、更にメンブランフィルターを酢酸エチル(15mL)で洗浄した。得られたろ液を濃縮し、得られた濃縮物を1H−NMRにかけた。 得られたスペクトルから、原料の回収率ならびに、生成物として得られた4−クロロ安息香酸(ベンジルエステルが水素化分解された)の収率を算出したところ、原料の転化率は100%で、4−クロロ安息香酸の収率は100%(77.6mg)であった。実 施 例 2 実施例1において、4−クロロ安息香酸ベンジルに代えて4−クロロけい皮酸ベンジルを136.4mg(0.5mmol)、5%Pd/ベータゼオライトを 21.2mg(基質に対して金属パラジウムとして2mol%)を使用し、40℃で1.5時間反応を行なう以外は実施例1と同様に、反応、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は100%で、3−(4−クロロフェニル)プロピオン酸が収率98%(89.5mgで得られた。実 施 例 3 実施例1において、4−クロロ安息香酸ベンジルに代えて4−アセチル安息香酸ベンジルを126.6mg(0.5mmol)、5%Pd/ベータゼオライトを21.2mg(基質に対して金属パラジウムとして2mol%)を使用し、60℃で7時間反応を行う以外は実施例1と同様に、反応、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は100%であり、4−アセチル安息香酸が収率100%(81.6mg)で得られた。実 施 例 4 実施例1において、4−クロロ安息香酸ベンジルに代えて3−アセチル安息香酸ベンジル136.4mg(0.5mmol)を、5%Pd/ベータゼオライト42.4mg(基質に対して金属パラジウムとして4mol%)を使用し、40℃で22時間反応を行った以外は実施例1と同様に、反応、反応後の処理および生成物の分析を実施した。原料の転化率は100%であり、3−アセチル安息香酸が収率95%(77.5mg)で得られた。比 較 例 1 実施例1において、5%Pd/ベータゼオライトに代えて、5%Pd/ZSM−5(NH4型、Si/Alモル比=30)10.6mg(基質に対して金属パラジウムとして1mol%)を使用した以外は、実施例1と同様に4−クロロ安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は29%で、4−クロロ安息香酸が収率28%(22.5mg)で得られた。比 較 例 2 実施例1において、溶媒として酢酸エチルに代えてメタノールを使用した以外は、実施例1と同様に4−クロロ安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は100%で、4−クロロ安息香酸が収率68%(22.5mg)で得られた。また、この他に副生成物として、原料のベンジルがメチルに置き換わった4−クロロ安息香酸メチルが収率23%(19.6mg)で得られた。比 較 例 3 実施例3において、5%Pd/ベータゼオライトに代えて、5%Pd/ZSM−5(NH4型、Si/Alモル比=30)21.2mg(基質に対して金属パラジウムとして2mol%)を使用し、60℃で24時間反応を行った以外は実施例3と同様に4−アセチル安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は99.9%以上であり、4−アセチル安息香酸が収率72%(58.8mg)で得られた。また、この他にアセチル基が水素化された副生成物4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸ベンジルおよび4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸が、それぞれ収率8%(10.3mg)および収率20%(16.6mg)で得られた。比 較 例 4 実施例3において、溶媒として酢酸エチルに代えてメタノールを使用し、室温で12時間反応を行った以外は、実施例3と同様に4−アセチル安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は93%であり、4−アセチル安息香酸が収率53%(43.2mg)で得られた。また、この他にアセチル基が水素化された副生成物4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸ベンジルおよび4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸が、それぞれ収率27%(34.6mg)および収率13%(10.8mg)で得られた。 以上、実施例1〜4および比較例1〜4の結果をまとめて表1に示す。 本発明方法によれば、芳香族ハロゲン化合物のベンゼン環−ハロゲン原子結合や、芳香族ケトン化合物のアシル基を、切断あるいは水素化することなく、また、いずれの官能基も変換することなく、保護基であるベンジル基を選択的に部分水素化し、高い効率で芳香族カルボン酸を製造することが可能である。 従って本発明方法は、カルボキシル基をベンジル基で保護する必要がある反応において、極めて有利に利用することができ、化学物質製造の際の収率向上や経済性の向上に役立つものである。 式(I)(式中、Arは、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させ、式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物とすることを特徴とする脱ベンジル化方法。 エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトンであるである請求項1記載の脱ベンジル化方法。 パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトが、金属パラジウムを担持したβ型ゼオライトまたは金属パラジウムと酸化パラジウムを担持したβ型ゼオライトである請求項1または2記載の脱ベンジル化方法。 β型ゼオライトが、NH4型のβ型ゼオライトである請求項1ないし3の何れかの項記載の脱ベンジル化方法。 式(I)(式中、Arは、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウムを担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させることを特徴とする式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物の製造方法。 エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトンである請求項5記載のカルボン酸化合物の製造方法。 パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトが、金属パラジウムを担持したβ型ゼオライトまたは金属パラジウムと酸化パラジウムを担持したβ型ゼオライトである請求項5または6記載のカルボン酸化合物の製造方法。 β型ゼオライトが、NH4型のβ型ゼオライトである請求項5ないし7の何れかの項記載のカルボン酸化合物の製造方法。 パラジウム成分をβ型ゼオライトに担持せしめてなる選択水素化触媒。 パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトが、金属パラジウムを担持したβ型ゼオライトまたは金属パラジウムと酸化パラジウムを担持したβ型ゼオライトである請求項9記載の選択水素化触媒。 β型ゼオライトが、NH4型のβ型ゼオライトである請求項9または10記載の選択水素化触媒。 【課題】芳香族ハロゲン化合物あるいは芳香族ケトン化合物中のハロゲン原子やアシル基を、分解あるいは水素化など変換することなく、効率良く、保護基であるベンジル基を水素化し、脱ベンジルする技術の提供。【解決手段】式(I)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させ、式(II)で表されるカルボン酸化合物とすることを特徴とする脱ベンジル化方法。(式中、Arは、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を、Z2は、単結合または−CH2CH2−をそれぞれ示し、Bnはベンジル基を示す)【選択図】なし


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特許公報(B2)_選択的脱ベンジル化方法およびこれに用いる選択水素化触媒

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タイトル:特許公報(B2)_選択的脱ベンジル化方法およびこれに用いる選択水素化触媒
出願番号:2011221848
年次:2015
IPC分類:C07C 51/09,B01J 29/74,C07C 63/70,C07C 65/32,C07C 57/58,C07B 61/00


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佐治木 弘尚 門口 泰也 澤間 善成 高橋 徹 伊藤 良 JP 5785045 特許公報(B2) 20150731 2011221848 20111006 選択的脱ベンジル化方法およびこれに用いる選択水素化触媒 エヌ・イーケムキャット株式会社 000228198 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 佐治木 弘尚 門口 泰也 澤間 善成 高橋 徹 伊藤 良 20150924 C07C 51/09 20060101AFI20150907BHJP B01J 29/74 20060101ALI20150907BHJP C07C 63/70 20060101ALI20150907BHJP C07C 65/32 20060101ALI20150907BHJP C07C 57/58 20060101ALI20150907BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150907BHJP JPC07C51/09B01J29/74 ZC07C63/70C07C65/32 AC07C57/58C07B61/00 300 C07C 51/09 C07C 57/58 C07C 63/70 C07C 65/32 C07B 51/00 C07B 61/00 特開平07−155612(JP,A) 特表2008−525372(JP,A) 特開平09−013049(JP,A) 特開昭56−046850(JP,A) 特開平01−110651(JP,A) 特開昭63−201156(JP,A) 特表2010−521435(JP,A) 国際公開第2006/028146(WO,A1) 特開平07−010803(JP,A) 特開2004−261751(JP,A) 特開2001−149758(JP,A) 特表平09−511686(JP,A) 特開2000−300994(JP,A) TANG,T. et al,Good sulfur tolerance of a mesoporous Beta zeolite-supported palladium catalyst in the deep hydrogenation of aromatics,Journal of Catalysis,2008年,Vol.257, No.1,p.125-133 PROCHAZKOVA,D. et al,Hydrodeoxygenation of aldehydes catalyzed by supported palladium catalysts,Applied Catalysis, A: General,2007年,Vol.332, No.1,p.56-64 11 2013082637 20130509 12 20140520 特許法第30条第1項適用 ▲1▼ホームページのアドレス http://shibu.pharm.or.jp/tokai/2011/img/s9d.pdf ▲2▼掲載日 平成23年6月27日 品川 陽子 本発明は、選択的脱ベンジル方法およびこれに使用する選択水素化触媒に関し、更に詳細には、例えば、芳香族ハロゲンや、芳香族ケトン等の化合物中の保護基であるベンジル基を、ハロゲン原子や、ケトン基等の他の官能基に影響を与えることなく、高い効率で水素化し、除去することのできる選択脱ベンジル化方法およびこれに使用する選択的水素化触媒に関する。 ある化学反応ステップにおいて、有機化合物中の官能基が反応に関与することが望ましくない場合、この官能基を保護基により保護し、反応に関与しないようにすることは良く行われていることである。例えば、有機化合物中のカルボキシル基は、反応性が高いため、ベンジル基により保護することが一般的である。そして、このベンジル基は、所定の反応が終了した後、元のカルボキシ基に戻すのであるが、その脱ベンジル化反応としては、水素雰囲気下で、Pd担持カーボン触媒を用いておこなう水素化反応が汎用さている。 しかし、従来知られている水素化反応では、例えば、有機化合物中の芳香環−ハロゲン原子の結合を切断するなど、水素化したくない他の官能基や結合に影響を与えてしまうという問題があった。そこで、脱保護反応だけを選択的に行うことのできる触媒反応が求められていた。 本発明者らは既に、被毒物質による修飾により、Pd担持カーボン触媒の活性をコントロールするコンセプトでエチレンジアミン修飾Pd担持カーボン触媒(非特許文献1)や、ジフェニルスルフィド修飾Pd担持カーボン触媒(特許文献1)などを開発した。 しかし上記の技術でも、ハロゲン原子を有する芳香族ハロゲン化合物や、ケトン基を有する芳香族ケトン化合物を含む有機化合物の水素化において、前者の触媒を用いた方法では、脱ベンジル反応は進行するが、同時に、芳香族ハロゲン化合物あるいは芳香族ケトン化合物を分解あるいは水素化してしまうという問題があった。また、後者の触媒を用いた方法では、芳香族ハロゲン化合物や、芳香族ケトン化合物のいずれの官能基も変換しないが、脱ベンジル反応も進行しないという問題があった。 更に、従来の選択的脱ベンジル反応として、芳香族ハロゲン存在下での脱ベンジル反応に関して下記の非特許文献2および非特許文献3の技術が知られている。このうち、非特許文献2では、硝酸セリウムアンモニウム((NH4)2[Ce(NO3)6])を用いた酸化よる4−クロロ安息香酸ベンジルの脱ベンジル反応であるが、その収率は、65%程度と低く、さらに有機化合物に対して4倍モル使用される硝酸セリウムアンモニウムは、反応により全量消費されてしまうという問題もある。 一方、非特許文献3では、触媒として塩化ニッケル(NiCl2)と水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を利用し、これを系中に添加し、生成するホウ酸ニッケルを用いて芳香族ハロゲン存在下での脱ベンジル反応を行なう方法が記載されている。そして、この方法による、芳香族ハロゲン2−クロロ安息香酸ベンジル、3−クロロ安息香酸ベンジル、4−クロロ安息香酸ベンジルの脱ベンジル反応の収率は、それぞれ収率83、89および87%となっており、相応の結果を得ているが、使用するNiCl2およびNaBH4は、有機化合物に対してそれぞれ3倍モル、9倍モルであり、多量の触媒を必要とする。しかも、新しく反応を行うためには、添加したこれらの試薬のうち少なくともNaBH4は毎回新しく添加する必要があり、触媒の再利用が難しいという問題や、コスト面での問題があるため、実用的な手法ではなかった。特開2007−152199号公報J.Org. Chem., 1998, 63, 7990Ind.J. Chem., 1986, 25B, 433Synthesis,2009, 117, 1127 上記の脱ベンジル化反応においてのみならず、目的とする基のみを水素化する選択的水素化および水素化分解反応は、有機化合物中の複数の官能基のうち、特定の官能基のみを水素化でき、合成ステップを減らすことができるため、医薬品、農薬やそれら中間体合成において非常に重要な反応である。 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、芳香族ハロゲン化合物あるいは芳香族ケトン化合物中のハロゲン原子やアシル基を分解あるいは水素化することなく、また、これら化合物の有するハロゲンや、アシル基等の官能基も変換することなく、効率の良く、保護基であるベンジル基のみを水素化し、脱ベンジルする技術およびにこれに用いることのできる触媒の提供をその課題とするものである。 本発明者らは、芳香族ハロゲン化合物や、芳香族ケトン化合物での脱ベンジル反応について鋭意検討した結果、エステル系溶媒中、触媒活性種としてのパラジウムをベータゼオライト(NH4+型など)に担持させた触媒を用いることにより、上記化合物の他の官能基を分解あるいは水素化することなく、効率良く脱ベンジル反応を行うことが可能であることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、式(I)(式中、Arは、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させ、式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物とすることを特徴とする脱ベンジル化方法を提供するものである。 また本発明は、前記式(I)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させることを特徴とする前記式(II)で表されるカルボン酸化合物の製造方法を提供するものである。 更に本発明は、パラジウム成分をβ型ゼオライトに担持せしめてなる選択水素化触媒を提供するものである。 本発明方法によれば、芳香族ハロゲン化合物のベンゼン環−ハロゲン原子結合や、芳香族ケトン化合物のアシル基を、切断あるいは水素化することなく、また、いずれの官能基も変換することなく、保護基であるベンジル基を選択的に部分水素化し、高い効率で芳香族カルボン酸(II)を製造することが可能である。 また、本発明方法で触媒として使用するパラジウム成分(Pd成分)を担持したβ型ゼオライトは、リサイクル使用が可能であり、これを用いた反応は、廃棄物が少なく、コストが低減されたプロセスとなるという利点もある。 本発明方法は、下式で示すように、式(I)で表されるカルボン酸ベンジルエステル(I)のベンジル基を水素ガスを用いて水素化、除去し、カルボキシル基を有するカルボン酸化合物(II)とすることにより行われる。 上記式中、Arで示される、1またはそれ以上の水素化される可能性のある置換基を有する芳香環式基または複素環式基としては、塩素、臭素、よう素等のハロゲン原子や、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等のアシル基を有する、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基等の芳香環式基や、ピリジル基、ピリミジル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、インダニル基、 インデニル基、ジベンゾフラニル基またはメチレンジオキシフェニル基等の複素環式基が挙げられる。 また、本発明方法は、基本的に選択的にベンジル基を水素化し、これを除去するが、一般の水素化反応では水素化され、分解あるいは構造変化が予想される置換基、例えば、ハロゲン原子、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の置換基には、何ら影響を与えない。しかし、側鎖部分に存在する二重結合(−CH=CH−)は、これも水素化する。 本発明の脱ベンジル化反応において使用される溶媒は、エステル系溶媒であり、その例としては、低級アルコールと低級カルボン酸のエステル反応により得られる、例えば、酢酸エチルや酢酸ブチル等が挙げられる。このものは高純度のものが望ましいが、コスト低減を目的として、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒との混合溶媒を使用してもよい。 また、本発明の脱ベンジル化反応において、触媒として用いるPd成分を担持したβ型ゼオライト(Pd担持βゼオライト)は、Pd成分を活性金属とし、このPdを担持するための担体としてβ型ゼオライトを使用したものである。このPd成分としては、金属としてのPdのほか、酸化パラジウムとして担持されていても良いが、良好な水素化分解活性を示すためには金属の状態であることが好ましい。 一方触媒の担体であるβ型ゼオライトは、単位胞組成Nan[AlnSi64−nO128]・xH2Oで表される正方晶系の合成ゼオライトであり、c軸方向に正方形に近い12員環(0.55×0.55nm)断面のジグザグな細孔を、a軸およびb軸方向に12員環(0.76×0.64nm)で直線状の細孔を有している。このβ型ゼオライトでは、上記の細孔が交差して3次元細孔を形成し、細孔の交差点には大きな空間を有している。なお、合成ゼオライトは、通常、Na型として得られるが、本発明に使用されるβ型ゼオライトは、特に限定されるものでは無く各種遷移金属や希土類の少なくとも一つでイオン交換したβ型ゼオライトを用いても良いが、Na型をイオン交換したNH4型が好ましい。Na型ゼオライトをイオン交換し、NH4型のゼオライトとするには、液相中、既知の方法により実施すればよい。 本発明で触媒として用いるPd担持β型ゼオライトにおいて、β型ゼオライトあたりに担持されるPd成分量は、Pd金属換算で0.01〜20wt%であることが好ましく、1〜10wt%であることがより好ましい。このPd成分量が少なすぎると反応速度が遅くなり、反応を完結させるためには多量の触媒が必要となる。また、Pd成分量が多すぎるとPd成分の分散が悪くなり、Pd単位重量当たりの活性が下がるため、高価なPdが非効率的に使用されることになる。 本発明に使用されるPd担持β型ゼオライトの製造方法は特に限定されないが、その製造方法の例として、次の方法を挙げることができる。すなわち、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を満たしたフラスコに酢酸パラジウムを量り取り、メタノールに溶解する。この溶液中にNH4型ベータゼオライト(Si/Alモル比=25)を、金属パラジウムの含有量が5質量%になるように添加し、アルゴン雰囲気下に室温で、上澄みが透明になるまで攪拌を続ける。そして、得られた黒色の粉末を吸引濾過した後、メタノール及び水で洗浄し、次いでデシケータ中で減圧下、室温にて乾燥することにより得られる。 本発明の脱ベンジル化方法では、還元成分として水素ガスが使用される。この水素ガスは、上記したエステル系溶媒、Pd担持β型ゼオライトおよびカルボン酸ベンジルエステル(I)の混合物中に供給される。より具体的には、密閉容器内の反応液上部の空間に水素を満たすことにより、水素ガスが供給される。 本発明方法における、水素ガス、エステル系溶媒およびカルボン酸ベンジルエステル(I)の量は特に限定されないが、水素ガスの供給量はカルボン酸ベンジルエステル(I)のベンジル基を選択的水素化するのに必要な理論量以上であることが必要であり、理論量対し等倍〜1000倍モル程度、一般には、1倍〜10倍モル程度供給されることが好ましい。また、溶媒であるエステル系溶媒は、基質であるカルボン酸ベンジルエステル(I)に対し、その重量で0.1〜100倍添加することが好ましく、カルボン酸ベンジルエステル(I)が完全に溶解している状態となることが望ましい。 本発明方法における、選択的水素化反応の条件は特に限定されないが、その反応温度は、0〜200℃であることが好ましく、10〜100℃であることがより好ましい。また、水素圧力は、0.01〜10MPaであることが好ましく、0.1〜1MPaであることがより好ましい。反応温度が低いあるいは水素分圧が低い場合には、反応の進行が遅く、原料の転化が十分に進まない。また、反応温度が高いあるいは水素分圧が高い場合には、十分な選択性が得られない。 以下、実施例および参考例により、本発明方法をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。参 考 例 1 選択的接触還元反応用パラジウム触媒の製造は以下のようにして実施した。すなわち、NH4型ベータゼオライト(Si/Alモル比=25、エヌ・イー ケムキャット(株)製)を用意した。そして、不活性ガスとしてアルゴンを満たしたフラスコに、酢酸パラジウムを527mg(2.35mmol)を量り取り、メタノール50mlに溶解した。この溶液中にNH4型ベータゼオライトを、金属パラジウムの含有量が5質量%になるように5g添加し、アルゴン雰囲気下に室温で、上澄みが透明になるまで6日間攪拌を続けた。そして、得られた黒色の粉末を吸引濾過した後、メタノール(30mlずつ2回)及び水(30mlずつ2回)の順に洗浄し、次いでデシケーター中で減圧下、室温にて3日間乾燥した。実 施 例 1 基質としての4−クロロ安息香酸ベンジル123.3mg(0.5mmol)および還元触媒としての、参考例1で得た5%Pd/ベータゼオライト 10.6mg(基質に対して金属パラジウムとして1mol%)を試験管に取り、これに酢酸エチル1mLを加え懸濁させた後、水素ガスを満たした風船を取り付けた針を試験管上部のセプタムに刺し、セプタムに刺した別の針から系内のガスを抜く操作を3回繰り返し、系内を水素ガスで置換した後、試験管内を水素ガスで満たした。 基質としての4−クロロ安息香酸ベンジル123.3mg(0.5mmol)および還元触媒としての5%Pd/ベータゼオライト10.6mg(基質に対して金属パラジウムとして1mol%)を試験管に取り、これに酢酸エチル1mLを加え懸濁させた後、水素ガスを満たした風船を取り付けた針を試験管上部のセプタムに刺し、セプタムに刺した別の針から系内のガスを抜く操作を3回繰り返し、系内を水素ガスで置換した後、試験管内を水素ガスで満たした。 60℃で24時間激しく攪拌した後、得られた反応液をメンブランフィルター(Millipore製、Millex−LH、孔径0.45μm)を用いてろ過し、更にメンブランフィルターを酢酸エチル(15mL)で洗浄した。得られたろ液を濃縮し、得られた濃縮物を1H−NMRにかけた。 得られたスペクトルから、原料の回収率ならびに、生成物として得られた4−クロロ安息香酸(ベンジルエステルが水素化分解された)の収率を算出したところ、原料の転化率は100%で、4−クロロ安息香酸の収率は100%(77.6mg)であった。実 施 例 2 実施例1において、4−クロロ安息香酸ベンジルに代えて4−クロロけい皮酸ベンジルを136.4mg(0.5mmol)、5%Pd/ベータゼオライトを 21.2mg(基質に対して金属パラジウムとして2mol%)を使用し、40℃で1.5時間反応を行なう以外は実施例1と同様に、反応、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は100%で、3−(4−クロロフェニル)プロピオン酸が収率98%(89.5mgで得られた。実 施 例 3 実施例1において、4−クロロ安息香酸ベンジルに代えて4−アセチル安息香酸ベンジルを126.6mg(0.5mmol)、5%Pd/ベータゼオライトを21.2mg(基質に対して金属パラジウムとして2mol%)を使用し、60℃で7時間反応を行う以外は実施例1と同様に、反応、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は100%であり、4−アセチル安息香酸が収率100%(81.6mg)で得られた。実 施 例 4 実施例1において、4−クロロ安息香酸ベンジルに代えて3−アセチル安息香酸ベンジル136.4mg(0.5mmol)を、5%Pd/ベータゼオライト42.4mg(基質に対して金属パラジウムとして4mol%)を使用し、40℃で22時間反応を行った以外は実施例1と同様に、反応、反応後の処理および生成物の分析を実施した。原料の転化率は100%であり、3−アセチル安息香酸が収率95%(77.5mg)で得られた。比 較 例 1 実施例1において、5%Pd/ベータゼオライトに代えて、5%Pd/ZSM−5(NH4型、Si/Alモル比=30)10.6mg(基質に対して金属パラジウムとして1mol%)を使用した以外は、実施例1と同様に4−クロロ安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は29%で、4−クロロ安息香酸が収率28%(22.5mg)で得られた。比 較 例 2 実施例1において、溶媒として酢酸エチルに代えてメタノールを使用した以外は、実施例1と同様に4−クロロ安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は100%で、4−クロロ安息香酸が収率68%(22.5mg)で得られた。また、この他に副生成物として、原料のベンジルがメチルに置き換わった4−クロロ安息香酸メチルが収率23%(19.6mg)で得られた。比 較 例 3 実施例3において、5%Pd/ベータゼオライトに代えて、5%Pd/ZSM−5(NH4型、Si/Alモル比=30)21.2mg(基質に対して金属パラジウムとして2mol%)を使用し、60℃で24時間反応を行った以外は実施例3と同様に4−アセチル安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は99.9%以上であり、4−アセチル安息香酸が収率72%(58.8mg)で得られた。また、この他にアセチル基が水素化された副生成物4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸ベンジルおよび4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸が、それぞれ収率8%(10.3mg)および収率20%(16.6mg)で得られた。比 較 例 4 実施例3において、溶媒として酢酸エチルに代えてメタノールを使用し、室温で12時間反応を行った以外は、実施例3と同様に4−アセチル安息香酸ベンジルの水素化反応を行い、反応後の処理および生成物の分析を実施した。この結果、原料の転化率は93%であり、4−アセチル安息香酸が収率53%(43.2mg)で得られた。また、この他にアセチル基が水素化された副生成物4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸ベンジルおよび4−(1−ヒドロキシエチル)安息香酸が、それぞれ収率27%(34.6mg)および収率13%(10.8mg)で得られた。 以上、実施例1〜4および比較例1〜4の結果をまとめて表1に示す。 本発明方法によれば、芳香族ハロゲン化合物のベンゼン環−ハロゲン原子結合や、芳香族ケトン化合物のアシル基を、切断あるいは水素化することなく、また、いずれの官能基も変換することなく、保護基であるベンジル基を選択的に部分水素化し、高い効率で芳香族カルボン酸を製造することが可能である。 従って本発明方法は、カルボキシル基をベンジル基で保護する必要がある反応において、極めて有利に利用することができ、化学物質製造の際の収率向上や経済性の向上に役立つものである。 式(I)(式中、Arは塩素およびアセチル基よりなる群から選ばれる置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させ、式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物とすることを特徴とする脱ベンジル化方法。 エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトンである請求項1記載の脱ベンジル化方法。 パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトが、金属パラジウムを担持したβ型ゼオライトまたは金属パラジウムと酸化パラジウムを担持したβ型ゼオライトである請求項1または2記載の脱ベンジル化方法。 β型ゼオライトが、NH4型のβ型ゼオライトである請求項1ないし3の何れかの項記載の脱ベンジル化方法。 式(I)(式中、Arは塩素およびアセチル基よりなる群から選ばれる置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中、パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトの存在下で水素ガスを作用させることを特徴とする式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物の製造方法。 エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトンである請求項5記載のカルボン酸化合物の製造方法。 パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトが、金属パラジウムを担持したβ型ゼオライトまたは金属パラジウムと酸化パラジウムを担持したβ型ゼオライトである請求項5または6記載のカルボン酸化合物の製造方法。 β型ゼオライトが、NH4型のβ型ゼオライトである請求項5ないし7の何れかの項記載のカルボン酸化合物の製造方法。 パラジウム成分をβ型ゼオライトに担持せしめてなる選択水素化触媒であって、式(I)(式中、Arは塩素およびアセチル基よりなる群から選ばれる置換基を有する芳香環式基または複素環式基を、Z1は、単結合、−CH2CH2−または−CH=CH−を示し、Bnはベンジル基を示す)で表されるカルボン酸ベンジルエステルに、エステル系溶媒中水素ガスを作用させ、式(II)(式中、Arは前記した意味を有し、Z2は、単結合または−CH2CH2−を示す)で表されるカルボン酸化合物とする脱ベンジル化反応用選択水素化触媒。 パラジウム成分を担持したβ型ゼオライトが、金属パラジウムを担持したβ型ゼオライトまたは金属パラジウムと酸化パラジウムを担持したβ型ゼオライトである請求項9記載の選択水素化触媒。 β型ゼオライトが、NH4型のβ型ゼオライトである請求項9または10記載の選択水素化触媒。


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