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タイトル:公開特許公報(A)_イオン交換樹脂の製造方法
出願番号:2011216299
年次:2013
IPC分類:A61K 9/70


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大田 光郎 中尾 裕史 鈴木 健一 金箱 眞 福田 憲二 山口 真男 JP 2013075855 公開特許公報(A) 20130425 2011216299 20110930 イオン交換樹脂の製造方法 株式会社トクヤマ 000003182 興和株式会社 000163006 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 大田 光郎 中尾 裕史 鈴木 健一 金箱 眞 福田 憲二 山口 真男 A61K 9/70 20060101AFI20130329BHJP JPA61K9/70 401 10 OL 16 4C076 4C076AA74 4C076BB31 4C076CC04 4C076DD37 4C076EE56A 4C076FF63 本発明は、イオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂の製造方法、並びに該製法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂を備えた貼付剤及びその製造方法に関する。 経口投与方法は薬物投与法の代表的なものであるが、これには生体内における薬物代謝の問題(肝初回通過効果)があり、斯かる問題を回避するために、経皮治療システム(Transdermal therapeutic system(TTS))を利用した種々の製剤が開発されている。 TTSとしては、例えば、電気泳動を利用したイオン性薬物のイオントフォレシス法が知られているが、これは、通常電圧を印加するための電極や電源を備えた複雑な構造の投与装置を必要とする。このため、携帯性、小型化が難しく、また、装置が高価なものとなるという問題があった。 これらの問題を解決した製剤として、電圧を印加することのないイオン交換膜を用いた製剤が知られているが(特許文献1)、イオン交換膜の優れた機能を活かしきれているとはいいがたい。特開2004−292438号公報 斯様な背景の下、本発明者らが水系溶媒を用いてイオン交換樹脂にイオン性薬物を担持させたところ、イオン性薬物の担持量が経時的に減少することが判明した。 したがって、本発明の課題は、イオン性薬物が安定に担持されているイオン交換樹脂の製造方法を提供することにある。 そこで、斯かる課題を解決すべく鋭意研究したところ、本発明者らは、イオン交換樹脂とイオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることにより、イオン性薬物が安定に担持されているイオン交換樹脂が製造できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、1)本発明は、イオン交換樹脂と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることを特徴とするイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂の製造方法を提供するものである。 また、2)本発明は、上記1)の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂を、粘着基剤層に積層することを特徴とする貼付剤の製造方法を提供するものである。 また、3)本発明は、上記1)の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂が、粘着基剤層に積層されている貼付剤を提供するものである。 また、4)本発明は、イオン交換膜と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることを特徴とするイオン性薬物が担持されているイオン交換膜の製造方法を提供するものである。 また、5)本発明は、上記4)の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換膜を、粘着基剤層の面上に積層することを特徴とする貼付剤の製造方法を提供するものである。 また、6)本発明は、上記4)の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換膜が、粘着基剤層の面上に積層されている貼付剤を提供するものである。 本発明によれば、イオン性薬物が安定に担持されているイオン交換樹脂が製造できる。したがって、本発明の貼付剤の製造方法によれば、イオン性薬物が安定に担持されているイオン交換樹脂を用いた貼付剤を提供できる。 また、本発明の貼付剤は、優れた薬物透過量を示し、また、イオン交換樹脂に担持させたイオン性薬物が粘着基剤を介して生体の皮膚等へ透過するため、薬物投与が簡便である。試験例2の結果を示す図である。 本発明のイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂の製造方法は、イオン交換樹脂と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることを特徴とするものである。 本発明で用いるイオン性薬物とは、何らかの溶媒(例えば水等)に溶解させたときにイオン化する薬物をいう。斯様なイオン性薬物としては、例えば、バルプロ酸(pKa値:4.6)、レボドパ(pKa値:2.1、8.9、9.9、12.2)、ビタミンB2(pKa値:1.12、3.25)、ビタミンC(pKa値:4.17、11.57)、アンフェナクナトリウム(pKa値:6.1)、インドメタシン(pKa値:4.5)、エトドラク(pKa値:4.5)、ケトプロフェン(pKa値:3.9)、ザルトプロフェン(pKa値:3.8)、ジクロフェナクナトリウム(pKa値:4)、スリンダク(pKa値:4.5)、チアプロフェン酸(pKa値:3)、ナプロキセン(pKa値:4.9)、プラノプロフェン(pKa値:3.5、2.4)、フルルビプロフェン(pKa値:3.78)、メフェナム酸(pKa値:4.2)、モフェゾラク(pKa値:3.3)、ロキソプロフェンナトリウム水和物(pKa値:4.2)、ロベンザリット二ナトリウム(pKa値:3.2、5.1)、トラネキサム酸(pKa値:4.33、10.65)、レボフロキサシン(pKa値:5.5、8.0)、スマトリプタンコハク酸塩(pKa値:9.63)、ゾルミトリプタン(pKa値:9.51)、エレトリプタン臭化水素塩(pKa値:9.82)、リザトリプタン安息香酸塩(pKa値:9.54)、ナラトリプタン(pKa値:9.7)、カルバマゼピン(pKa値:7)、ブロモクリプチンメシル酸塩(pKa値:4.86)、ペルゴリドメシル酸塩(pKa値:7.8)、カベルゴリン(pKa値:6.9、8.9)、ブラミペキゾール塩酸塩水和物(pKa値:5.0、9.6)、タリペキソール塩酸塩(pKa値:4.5、8.2)、ロペニロール塩酸塩(pKa値:10.2、12)、ビペリデン塩酸塩(pKa値:9.74)、ドネペジル塩酸塩(pKa値:8.9)、ガランタミン臭化水素酸塩(pKa値:7.97)、オンダンセトロン塩酸塩(pKa値:7.4)、アザセトロン塩酸塩(pKa値:8.9)、ラモセトロン塩酸塩(pKa値:7.4)、トロピセトロン(pKa値:9.46)、アプレピタント(pKa値:9.7)、モルヒネ塩酸塩(pKa値:8.21)、モルヒネ硫酸塩(pKa値:8.21)、フェンタニルクエン酸塩(pKa値:8.6)、フェンタニル(pKa値:8.6)、プロカイン(pKa値:8.8)、リドカイン(pKa値:7.9)、ジブカイン(pKa値:8.5)等が挙げられる。なお、上記pKa値はいずれも25℃で測定した値である。 上述のようなイオン性薬物の中でも、塩基性で不安定な酸性イオン性薬物(カルボン酸等の酸性官能基をもち、かつ塩基性で不安定であるイオン性薬物)、酸性で不安定な塩基性イオン性薬物(アミン等の塩基性官能基をもち、かつ酸性に不安定であるイオン性薬物)が好ましい。 また、イオン性薬物とイオン交換樹脂との使用量の比率としては、イオン交換樹脂1質量部に対して、イオン性薬物が0.01〜5質量部であるのが好ましく、0.05〜3質量部であるのがより好ましい。 また、本発明で用いる非水系溶媒は、上記イオン性薬物を溶解可能なものであればよい。例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が挙げられる。 上記アルコール系溶媒としては、イソプロパノール、エタノール、オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、ラウロマクロゴール等の1価のアルコール;グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400等の多価アルコールが挙げられる。 これらの中でも、1価のアルコールが好ましい。斯かる1価のアルコールの炭素数は好ましくは1〜25であり、より好ましくは2〜18であり、更に好ましくは2〜11であり、特に好ましくは2〜4である。 また、上記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。 また、上記エステル系溶媒としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、グリセリン脂肪酸エステル、酢酸n−ブチル、サリチル酸エチレングリコール等が挙げられる。 本発明で用いるイオン交換樹脂は、イオン性薬物のイオンの荷電と同荷電のイオンを交換可能な樹脂を用いればよい。薬物のイオンが正の電荷を有する場合はカチオン(陽イオン)交換基を有するイオン交換樹脂を用いればよく、薬物のイオンが負の電荷を有する場合はアニオン(陰イオン)交換基を有するイオン交換樹脂を用いればよい。 ここで、イオン交換基とは、水溶液中で正又は負に荷電し得る官能基を意味し、上記カチオン(陽イオン)交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、スルホン酸基が好ましい。また、アニオン(陰イオン)交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基等が挙げられ、3級アミノ基、4級アンモニウム基、4級ピリジニウム基が好ましく、3級アミノ基がより好ましい。 また、イオン性薬物が塩基性で不安定な酸性イオン性薬物の場合は、カルボン酸基などの弱酸性イオン交換基、1〜3級アミノ基などの弱塩基性のイオン交換基を用いることが好ましい。 また、イオン交換基の対イオンとしては、イオン交換樹脂がカチオン交換樹脂の場合は、例えば、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等のカチオン性のものであれば特に限定されないが、薬物との交換反応が容易な点や生体への影響などを考慮すると、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等が好ましい。 一方、イオン交換樹脂がアニオン交換樹脂の場合は、ハロゲン化物イオン、無機オキソ酸アニオン、有機酸アニオン、有機スルホン酸アニオン、水酸化物イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン等アニオン性のものであれば特に限定されないが、薬物との交換反応が容易な点や取扱いの容易さ、生体への影響などを考慮すると、塩化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオン等の無機アニオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、クエン酸イオン、アスコルビン酸アニオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン等薬学的に許容されるアニオンが好適である。 また、イオン交換基として強酸性イオン交換基や強塩基性イオン交換基を用いる場合、イオン性薬物の担持量の増大化やイオン交換樹脂内のpH制御による薬物の安定化の観点から、水素イオンや水酸化物イオン以外の対イオンを用いるのが好ましい。 以上のような対イオンを持つイオン交換樹脂は、所望の対イオンを持つ塩の水溶液にイオン交換樹脂を接触させて、必要に応じて複数回、イオン交換を行なうことで得ることができる。 また、イオン交換樹脂の具体例としては、スチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の芳香族ビニル化合物を重合させた重合体(以下、これらを芳香族ビニル系(の樹脂)と称することもある);ポリ(メタ)アクリル酸系のもの;パーフルオロスルホン酸樹脂(例えば、Nafion(デュポン社));ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド等のいわゆるエンジニアリングプラスチック類;ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体などのエラストマー類に、上述のイオン交換基を導入した樹脂が挙げられる。 なお、芳香族ビニル系のイオン交換樹脂は、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、ビニルナフタレン等のカチオン(陽イオン)交換基が導入可能な官能基を有する芳香族ビニル化合物、又はスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等のアニオン(陰イオン)交換基が導入可能な官能基を有する芳香族ビニル化合物を重合させ、次いで公知の方法でイオン交換基を導入することにより製造することができる。 また、高い薬物担持(投与)効率を得る観点から、イオン交換樹脂としては、架橋型のイオン交換樹脂を用いることが好ましい。中でも、製造工程の簡便さや、化学的安定性、各種イオン交換基の導入が簡単である等の観点から、ポリスチレン系の架橋型イオン交換樹脂がより好ましい。 また、架橋型イオン交換樹脂としては、イオン交換基の導入可能な官能基を有する芳香族ビニル化合物を重合させる際に、架橋性単量体を用いて得たものが好ましい。架橋性単量体は特に限定されるものではなく、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;トリメチロールメタントリメタクリル酸エステル、メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンジメタクリルアミド等の多官能性(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。 また、必要に応じ、架橋性単量体に加えて、さらにイオン交換基を導入可能な官能基を有する単量体や架橋性単量体と共重合可能な他の炭化水素系単量体や可塑剤類を用いることができる。他の炭化水素系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン等が挙げられる。また、可塑剤類としては、特に限定されるものではなく、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等が挙げられる。 なお、これら単量体を重合させる際に用いる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、オクタノイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。この他、イオン交換樹脂(膜)を製造するために用いられる公知の添加剤を用いることもできる。 上述のイオン交換基を導入可能な官能基を有する単量体、架橋性単量体、重合開始剤及び共重合可能な他の炭化水素系単量体で構成される組成物中の含有割合は、一般には、イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体100質量部に対して、架橋性単量体を0.1〜50質量部含有するのが好ましく、1〜40質量部含有するのがより好ましい。また、これらの単量体と共重合可能な他の炭化水素系単量体を0〜100質量部使用してもよい。また、重合開始剤は、イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部使用するのが好ましく、0.5〜10質量部使用するのがより好ましい。 本発明におけるイオン交換樹脂としては、イオン性薬物を充分に担持させ生体への投与量を大きくする観点から、固定イオン濃度が0.3〜15.0mmol/g−水であることが好ましく、0.6〜12.0mmol/g−水であることがより好ましい。 このような固定イオン濃度を有するイオン交換樹脂を得るためには、イオン交換容量を調整すればよく、また、イオン交換膜を得るためには、イオン交換容量及び含水率を調整すればよい。固定イオン濃度は、イオン交換容量/含水率であるから、イオン交換容量が大きいほど固定イオン濃度も大きくなる。イオン交換容量は一般に、イオン交換基の量を多くするほど大きくなる。 上述の固定イオン濃度のイオン交換膜を得るには、イオン交換容量で0.1〜6.0mmol/g−乾燥膜、特に0.3〜4.0mmol/g−乾燥膜であるものを用いることが好ましい。また、膜中の含水率が低いほど、固定イオン濃度は高くなる。しかしながら、含水率があまりに低いとイオン性薬物のイオン交換膜内での移動抵抗が増大する傾向がある。したがって、イオン交換膜の含水率(25℃)は、イオン交換膜の乾燥質量に対して5質量%以上、好適には10質量%以上であるのが好ましい。一般的には含水率が5〜90質量%、好ましくは10〜50質量%のイオン交換膜を用いることが好ましい。このような範囲の含水率を得るためには、イオン交換樹脂におけるイオン交換基の種類、イオン交換容量及び架橋度等を適宜選択することにより制御することができる。 また、イオン交換樹脂の形状としては、膜状が好ましい。膜厚としては、5〜150μmが好ましく、8〜120μmがより好ましい。斯様な範囲とすることにより、イオン交換樹脂の物理的な強度と生体への追随性とを両立できる。 上記のようなイオン交換膜を用いる場合、その表面粗さは特に限定されるものではないが、電圧を印加せずとも生体の皮膚等への薬物透過可能な観点から、表面粗さ(Rz;JIS B0601(1994)に規定される十点平均粗さ)が小さい平滑なものが好ましく、より具体的には、表面粗さ(Rz)が7μm以下に調製したものが好ましく、5μm以下に調製したものがより好ましく、3μm以下に調製したものがさらに好ましく、1μm以下に調製したものが特に好ましい。 イオン交換膜の製造方法は何ら限定されるものではなく、公知の方法によればよい。例えば、多孔質フィルムや不織布等の多孔質膜を基材(補強材、支持材とも称される)とし、当該多孔質膜の空隙内にイオン交換樹脂を充填することによって得られるものであることが好ましい。この方法によれば、表面粗さ(Rz)が7μm以下のものを容易に製造できる。多孔質膜を基材とすることにより、織布を基材とするよりも遙かに容易に表面が平滑なものを製造することができ、また基材を用いない方法(キャスト法など)よりも極めて容易な製造工程で膜の製造が可能であり、また強度に優れたイオン交換膜の製造が可能である。このようなイオン交換膜におけるイオン交換樹脂の充填率は、後述の多孔質膜の空孔率とも関係するが、一般的には5〜95重量%であり、薬物イオンの透過を容易にして、かつイオン交換膜の強度を高めるために10〜90重量%であることが好ましい。 多孔質膜を基材とするイオン交換膜は、例えば、多孔質膜に、スチレン等のイオン交換基を導入可能な重合性単量体を浸透させた後、表面をポリエステルフィルム等の平滑な材料で覆った状態で重合させて重合体とし、さらにそこへイオン交換基を導入することにより、製造できる。 多孔質膜は、表裏を連通する細孔を多数有するフィルム又はシート状のものであれば特に制限されるものではないが、上述のような物性のイオン交換膜へのしやすさ、物理的強度に優れたものとすることが容易に可能な点で、孔の平均孔径は0.005〜5.0μmであるのが好ましく、0.01〜2.0μmであるのがより好ましい。空隙率(気孔率とも称される)は20〜95%であるのが好ましく、30〜90%であるのがより好ましい。透気度(JIS P8117)は1000秒以下であるのが好ましく、500秒以下であるのがより好ましい。また、用いる多孔質膜の厚みは、イオン交換膜が前記した厚さに調整できるように5〜150μmであるものが好ましく、10〜120μmであるものがより好ましい。 また、多孔質膜の材質は特に制限されるものではないが、イオン交換膜の製造の容易性の点で、熱可塑性樹脂からなる多孔質フィルムであるのが好ましい。 多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフロオロエチレン−ペルフロオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂等からなるものが制限なく採用できる。機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、後述するポリスチレン系のイオン交換樹脂との馴染みがよいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。 多孔質フィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば、熱可塑性樹脂組成物及び有機液体よりなる樹脂組成物をシート又はフィルム状に成形した後に有機液体を溶剤によって抽出することや、無機フィラー及び/又は有機フィラーを充填したシートを延伸すること等により容易に得ることができ、その他、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできる。また、多孔質フィルムとしては、市販品(例えば、旭化成株式会社製「ハイポア(登録商標)」、宇部興産株式会社製「ユーポア」、三菱樹脂株式会社製「エクセポール(登録商標)」、三井化学「ハイレッツ」等)を用いることもできる。 イオン交換膜を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、多孔質膜内にイオン交換基を有する重合体を含浸せしめる、イオン交換基を有する重合性単量体を含浸せしめ、重合性単量体を重合させる等の膜内に含有せしめるイオン交換樹脂の重合及びイオン交換基の導入を多孔質フィルム内に充填する前に行う方法や、イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体、架橋性単量体、重合開始剤及び必要に応じて含有される他の成分からなる単量体組成物(以下、単量体組成物)を、多孔質フィルムの有する空隙内に含浸させた後、単量体組成物を重合し、次いで生成した重合体にイオン交換基を導入する方法が挙げられる。高性能の膜を効率よく製造できるという観点から、後者の方法が好ましい。 多孔質フィルムの有する空隙内への単量体組成物の含浸(充填)方法は、特に限定されるものではなく、例えば、単量体組成物を多孔質フィルムに塗布、噴霧、又は単量体組成物中に多孔質フィルムを浸漬すること等によって行うことができる。単量体組成物の塗布等に際しては、多孔質フィルムの空隙に単量体組成物が良好に充填されるように減圧下で両者を接触、又は接触後に加圧処理を行なう等の方法を用いることができる。また、基材となる多孔質フィルムに充填された単量体組成物を重合する場合には、ポリエステル等のフィルムに挟んで加圧しながら常温から昇温してすることができる。加圧条件としては、0.01〜1.0MPaが好ましい。その他重合条件は、使用した重合開始剤の種類や単量体組成物の組成等に応じて適宜決定すればよい。 多孔質フィルムに充填、重合せしめて得た重合体に対して、公知のイオン交換基導入処理を施すことにより、イオン交換膜を製造することができる。イオン交換基導入処理方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法を適宜選択して採用すればよい。例えば、陽イオン交換膜を得る場合にはスルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理を行なえばよく、また陰イオン交換膜を得る場合にはクロロメチル化−アミノ化、アルキル化(四級化)等の処理を行なえばよい。 また、上述のようなイオン交換樹脂と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒との接触としては、イオン交換樹脂に上記非水系溶媒を浸透させ又は塗布若しくは噴霧する方法等が挙げられる。 また、イオン性薬物が塩基性で不安定な酸性イオン性薬物の場合は、イオン交換樹脂内で過不足なく中和が起き、安定に担持させることができる観点から、イオン交換樹脂として炭酸水素イオン型のアニオン交換樹脂を用い、イオン性薬物の酸性官能基を予め中和することなく炭酸水素イオン型アニオン交換樹脂と非水系溶媒中で接触させるのが好ましい。一方、酸性に不安定な塩基性イオン性薬物の場合は、イオン交換樹脂内で過不足なく中和が起き、安定に担持させることができる観点から、イオン交換樹脂としてアンモニウム塩型のカチオン交換樹脂を用い、イオン性薬物の塩基性官能基を予め中和することなくアンモニウム塩型カチオン交換樹脂と非水系溶媒中で接触させるのが好ましい。 また、本発明の貼付剤は、上述のようにして得られるイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂が、粘着基剤層に積層されているものである。 上記粘着基剤は、貼付剤(プラスター剤や硬膏剤等のテープ剤、パップ剤等)に用いられるものであれば限定されず、感圧性粘着基剤とパップ剤基剤の2つに大別される。 上記感圧性粘着基剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらはエマルジョン化されていてもよい。 上記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸又はその塩や(メタ)アクリル酸エステルに由来する(共)重合体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、N−ビニル−2−ピロリドン等のビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体((メタ)アクリル酸エステル−ビニル化合物共重合体)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 上記(メタ)アクリル酸又はその塩としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸等が挙げられる。 また、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸オクチルエステル、アクリル酸イソノニルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸ドデシルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。 また、斯様なアクリル系粘着剤の具体例としては、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体溶液、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン溶液、メタクリル酸・アクリル酸n−ブチルコポリマー、アクリル酸シルクフィブロイン共重合樹脂、アクリル酸デンプン300、アクリル酸デンプン1000、アクリル酸ブチル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸イソノニル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリル酸ブチル・アクリル酸エチル・メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル・ジアセトンアクリルアミド共重合体等が挙げられる。 また、上記合成ゴム系粘着剤としては、シスイソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、シスポリイソプレンゴム、ハイシスポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、クロロプレンゴム、ポリブテン、天然ゴムラテックス、SBR合成ラテックス等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 また、上記パップ剤基剤としては、公知のものを用いればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N−ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム等に加えて、これらをアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属塩で架橋したものが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上用いてもよい。 粘着基剤の含有量は特に限定されないが、粘着基剤層中、1〜25質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。 また、粘着基剤とイオン性薬物との使用量の比率としては、イオン性薬物1質量部に対して、粘着基剤が0.01〜2500質量部であるのが好ましく、0.1〜250質量部であるのがより好ましい。 また、本発明の貼付剤は、上記粘着基剤とともに、放出促進剤、テルペン及び/又はテルペンを含む精油、可塑剤、粘着付与樹脂、充填剤、紫外線吸収剤、経皮吸収促進剤、抗酸化剤、水溶性・水膨潤性高分子、高級アルコール等の添加物を含んでいてもよい。また、これら添加物は、粘着基剤層に含有せしめるのが好ましい。 放出促進剤としては、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸水和物、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、無水クエン酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸等の有機酸;塩酸、ホウ酸、リン酸、硫酸等の無機酸;塩酸トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモール、メグルミン、モノエタノールアミン等の塩基;安息香酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸二水素ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、乳酸カルシウム水和物、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂、無水酢酸ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリム、無水リン酸二水素ナトリウム、硫酸亜鉛水和物、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム水和物、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の電解質が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。斯様な放出促進剤を用いることにより、イオン交換樹脂に担持されたイオン性薬物の放出に必要なイオン交換に要するイオンを安定に供給することできる。 また、放出促進剤の含有量は特に限定されないが、イオン性薬剤の十分な放出促進作用を発揮させる観点から、粘着基剤層中、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。 また、放出促進剤と粘着基剤との使用量の比率としては、イオン性薬剤の十分な放出促進作用を発揮させる観点から、粘着基剤1質量部に対して、放出促進剤が0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。 上記テルペン及び/又はテルペンを含む精油において、テルペンとしては、例えば、カンフル、ゲラニオール、シトロネラール、テルピネオール、ボルネオール、メントール、リモネン等が挙げられる。また、テルペンを含む精油としては、例えば、イランイラン油、ウイキョウ油、オレンジ油、カミツレ油、ケイヒ油、シソ油、シトロネラ油、ショウキョウ油、樟脳油、セイヨウハッカ油、ゼラニウム油、チョウジ油、テレビン油、トウヒ油、ネロリ油、ハッカ油、パルマローザ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ラベンダー油、リナロエ油、レモン油、ローズ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油等が挙げられる。 なお、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 上記可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジオクチル、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 また、可塑剤と粘着基剤との使用量の比率としては、粘着基剤1質量部に対して、可塑剤が0.1〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。 上記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、マレイン化ロジングリセリンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 上記充填剤としては、例えば、カオリン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、ステアリン酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 上記経皮吸収促進剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリソルベート60、ポリソルベート80等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 上記水溶性・水膨潤性高分子としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール(完全けん化物)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルスターチナトリウム、キサンタンガム、デキストラン、デキストリン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 また、水溶性・水膨潤性高分子と粘着基剤との使用量の比率としては、粘着基剤1質量部に対して、水溶性・水膨潤性高分子が0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.05〜5質量部であるのがより好ましく、0.1〜1質量部であるのが更に好ましい。 上記高級アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。 また、本発明の貼付剤としては、薬物透過量のバラツキを少なくし、安定に薬物を生体の皮膚等へ透過させ、効果的に薬効を発揮させる観点から、前述のイオン性薬物が担持されているイオン交換膜が、粘着基剤層の面上に積層されているものが好ましい。なお、この他の形態としては、イオン性薬物を担持させたイオン交換樹脂を粘着基剤に含有せしめたものが挙げられる。 上述の粘着基剤層が積層されている貼付剤の中でも、上記イオン交換膜が粘着基剤層の略全面(好ましくは、粘着基剤層の表面積に対し90%以上)に積層されているものが特に好ましい。これによって、薬物透過量が向上する。なお、上記略全面は、全面を含む概念である。 また、上記貼付剤におけるイオン性薬物の含有量としては、貼付剤1cm2あたり、0.01mg/cm2〜10mg/cm2となる量が好ましく、0.03mg/cm2〜7mg/cm2となる量がより好ましく、0.05mg/cm2〜5mg/cm2となる量がさらに好ましく、0.1mg/cm2〜3mg/cm2となる量が特に好ましい。 また、本発明の貼付剤は、支持体を備えていてもよく、斯様な貼付剤としては、支持体、イオン性薬物を担持させたイオン交換膜、粘着基剤層が順次積層されている貼付剤が挙げられる。 また、支持体としては、公知のものを用いればよく、特に限定されるものではないが、例えば、紙、布、不織布や、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等の単層フィルムやこれらの素材の積層体等から構成される繊維シートが挙げられる。 また、本発明の貼付剤は、イオン性薬物を担持させたイオン交換樹脂を粘着基剤に混和し均質として、支持体又はライナー(剥離体ともいう)に展延して成形することにより、イオン交換膜に粘着基剤層を積層させることで製造できる。また、粘着基剤層をライナーに展延し、ライナーとは反対側の粘着基剤層の面上に、イオン性薬物を担持させたイオン交換膜を積層し成形することによっても製造できる。なお、積層に関しては、使用前に予め積層した貼付剤の形態でもよく、また用時調製して貼付剤の形態とするものでもよい。 ライナーは公知のものを用いればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、セロファン等のフィルムが挙げられる。 ライナーの大きさは、粘着基剤の大きさと略同一(同一を含む)であることが好ましい。また、ライナーの膜厚は特に限定されるものではないが、10〜200μmのものが好ましく、20〜100μmのものがより好ましい。 以下に、実施例等を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1.薬物担持イオン交換膜の調製 イオン交換基として4級アンモニウム基を有し、膜厚が10μm、イオン交換容量が1.8mmol・g-1、対イオンが炭酸水素イオンであるイオン交換膜((株)トクヤマ製)を適当な大きさに裁断した。薬物としてインドメタシンを担持させるべく、インドメタシンの飽和イソプロパノール溶液を調製し、これに上述のイオン交換膜を40℃で24時間浸漬した。浸漬後、イオン交換膜をイソプロパノールで洗浄、乾燥して、薬物担持イオン交換膜を得た。インドメタシンの含有量は417mg/g(0.7mg/cm2)であった。比較例1.薬物担持イオン交換膜の調製 イオン交換基として4級アンモニウム基を有し、膜厚が10μm、イオン交換容量が1.8mmol・g-1、対イオンが塩素イオンであるイオン交換膜((株)トクヤマ製)を適当な大きさに裁断した。薬物としてインドメタシンを担持させるべく、インドメタシンの飽和水溶液(pH8)を調製し、これに上述のイオン交換膜を室温で3時間浸漬した。浸漬後、イオン交換膜をイソプロパノールで洗浄し、乾燥して、薬物担持イオン交換膜を得た。インドメタシンの含有量は0.53mg/cm2であった。比較例2.薬物担持イオン交換膜の調製 薬物としてインドメタシンを担持させるべく、インドメタシンの飽和水溶液(pH8)を実施例1と同様のイオン交換膜((株)トクヤマ製)に40℃で24時間浸漬した。浸漬後、イオン交換膜をイソプロパノールで洗浄し、乾燥して、薬物担持イオン交換膜を得た。インドメタシンの含有量は382mg/g(0.59mg/cm2)であった。試験例1.イオン交換膜に担持させた薬物の安定性 イオン交換膜に担持させた薬物の安定性を評価すべく、モデル薬物として塩基性で不安定なインドメタシンを採用して、実施例1並びに比較例1及び2で得たイオン交換膜に担持させた薬物の経時的安定性を評価した。すなわち、各薬物担持イオン交換膜を40℃及び60℃で保存し、イオン交換膜に担持された薬物の含有量を測定した。また、参考例として、インドメタシン2.17質量部、塩化ナトリウム0.5質量部、クエン酸水和物0.4質量部、ジイソプロパノールアミン1.5質量部、カルメロースナトリウム1.5質量部、濃グリセリン25質量部、25質量部のマクロゴール400及び適量の精製水を混合し、ゲル剤を製し、同様にして測定した。結果を表1に示す。 上記表1から明らかなように、インドメタシンの飽和イソプロパノール溶液を用いて得た実施例1の薬物担持イオン交換膜は、インドメタシンを安定に担持していることが判明した。実施例2.貼付剤の製造 ポリアクリル酸部分中和物7質量部、乾燥水酸化アルミニウムゲル0.1質量部、カルメロースナトリウム3.5質量部、濃グリセリン15質量部、5質量部のマクロゴール400を混合した。別途、D−ソルビトール液(70%)25質量部、酒石酸2質量部、塩化ナトリウム2質量部、ジイソプロパノールアミン5質量部及び適量の精製水を混合し、得られた2つの混合物を練合して、貼付剤における粘着剤を製した。 実施例1で得た薬物担持イオン交換膜を2cmφに切断したものを、ポリエステル製のライナーに展延、塗工した粘着剤の上の全面に積層して、貼付剤(パップ剤)を得た。得られた貼付剤におけるインドメタシンの含有量は、0.65mg/cm2であった。実施例3.貼付剤の製造 N−ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム6質量部、乾燥水酸化アルミニウムゲル0.35質量部、カルメロースナトリウム1.5質量部、濃グリセリン25質量部、25質量部のマクロゴール400を混合した。別途、クエン酸水和物0.4質量部、塩化ナトリウム1質量部及び適量の精製水を混合し、得られた2つの混合物を練合して、貼付剤における粘着剤を製した。 実施例1で得た薬物担持イオン交換膜を2cmφに切断したものを、ポリエステル製のライナーに展延、塗工した粘着剤の上の全面に積層して、貼付剤(パップ剤)を得た。得られた貼付剤におけるインドメタシンの含有量は、0.65mg/cm2であった。試験例2.皮膚透過性試験(2) 本発明に係る貼付剤の有用性を示すべくモデル薬物としてインドメタシンを採用し、実施例3で製造した貼付剤につき、皮膚透過性試験を実施した。 すなわち、Wistar系ラット(雄、8週齢)の腹部を脱毛処理し、皮膚を摘出した。摘出皮膚に実施例3で得た貼付剤を貼付した。次いで、これを縦型フランツセルに装着してレセプター液(マクロゴール400:生理食塩水=2:8)30mLで満たし、レセプター液を32℃に維持させた。経時的にサンプリングを行い、0、2、4、6及び8時間後における薬物の累積透過量(μg/cm2)を測定した。また、比較対照として、インドメタシンの含有量が0.5mg/cm2である市販の外皮用インドメタシン貼付剤を用いて同様にして試験を実施した。結果を図1に示す(n=6)。 図1から明らかなように、実施例3の貼付剤は、市販の外皮用インドメタシン貼付剤と比較して、インドメタシンを単位面積当たり1.3倍(0.65mg/cm2)含有するものであるが、斯かるインドメタシンの含有量からは想像することができない透過量を示し、高い薬効発現が期待された。 イオン交換樹脂と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることを特徴とするイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂の製造方法。 イオン性薬物として、塩基性で不安定な酸性イオン性薬物又は酸性で不安定な塩基性イオン性薬物を用いる請求項1に記載の製造方法。 非水系溶媒として、アルコール系溶媒を用いる請求項1又は2に記載の製造方法。 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂を、粘着基剤層に積層することを特徴とする貼付剤の製造方法。 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂が、粘着基剤層に積層されている貼付剤。 イオン交換膜と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることを特徴とするイオン性薬物が担持されているイオン交換膜の製造方法。 イオン性薬物として、塩基性で不安定な酸性イオン性薬物又は酸性で不安定な塩基性イオン性薬物を用いる請求項6に記載の製造方法。 非水系溶媒として、アルコール系溶媒を用いる請求項6又は7に記載の製造方法。 請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換膜を、粘着基剤層の面上に積層することを特徴とする貼付剤の製造方法。 請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得られたイオン性薬物が担持されているイオン交換膜が、粘着基剤層の面上に積層されている貼付剤。 【課題】イオン性薬物が安定に担持されているイオン交換樹脂の製造方法の提供。【解決手段】イオン交換樹脂と、イオン性薬物が溶解している非水系溶媒とを接触させることを特徴とするイオン性薬物が担持されているイオン交換樹脂の製造方法。【選択図】なし


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