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タイトル:公開特許公報(A)_ナノファイバーフィルム、およびこれを用いた電子素子用樹脂基板
出願番号:2011201078
年次:2013
IPC分類:C08J 5/18,C08L 1/00,C07D 309/08


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伊原 一仁 JP 2013064029 公開特許公報(A) 20130411 2011201078 20110914 ナノファイバーフィルム、およびこれを用いた電子素子用樹脂基板 コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 303000408 八田国際特許業務法人 110000671 伊原 一仁 JP 2011189742 20110831 C08J 5/18 20060101AFI20130315BHJP C08L 1/00 20060101ALI20130315BHJP C07D 309/08 20060101ALI20130315BHJP JPC08J5/18C08L1/00C07D309/08 12 OL 70 4C062 4F071 4J002 4C062AA18 4C062AA19 4F071AA09 4F071AF30 4F071AF61 4F071AF62 4F071BB02 4F071BB04 4F071BB06 4F071BB07 4F071BC01 4J002AA012 4J002AA022 4J002AB011 4J002AB012 4J002FD020 4J002FD050 4J002FD070 4J002FD140 4J002FD200 本発明は、透明性および耐熱性に優れるナノファイバーフィルムおよびその製造方法に関する。 樹脂に各種繊維状強化材を配合することで強度および剛性を向上させた繊維強化複合材料が、電気・電子、機械、自動車、建材等の産業分野で広く用いられている。この繊維強化複合材料に配合される繊維状強化材としては、優れた強度と軽量性を有するガラス繊維が主に用いられている。しかし、ガラス繊維強化材では、高剛性化は達成されるが比重が大きくなる為、軽量化に限界があった。 これに対し、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維といった有機材料からなる繊維強化材が検討されてきた。しかし、これらの繊維強化材は軽量性やサーマルリサイクル性を確保できるものの、機械的強度が十分でないという問題があった。 これらの問題を改善する方法として、近年、カーボンニュートラルの観点からバイオマス材料の中でも植物由来材料を利用した高機能材料が注目されている。この植物繊維を解繊してフィブリル化したセルロース繊維をマトリックス樹脂に混合または含浸した電子デバイス用の透明な繊維複合材料が提案されている。 例えば、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」とも称する)とアセチル化セルロースとを溶融混錬してフィルム化したもの(特許文献1)、部分的にエステル化した疎水性のCNFと疎水性のポリエステル樹脂とを溶融混錬してフィルム化したもの(特許文献2)、CNFをシート化した後、樹脂に含浸させて複合フィルムとしたもの(特許文献3,4)、カルボジイミドのような架橋剤をCNFに添加し、PET基材に塗布してガスバリア材料としたもの(特許文献5)などがある。特開2008−208231号公報特開2010−221622号公報特開2007−51266号公報特開2005−60680号公報特開2010−168572号公報 しかし、特許文献1の方法では、親水性のCNFと疎水性のマトリックス樹脂との相溶性が悪いためフィルムの透明性が悪化する。また、マトリックス樹脂との混合を伴うために耐熱性が不十分である。 また、特許文献2の方法では、CNFを疎水化することによりフィルムの透明性は向上するものの、依然としてマトリックス樹脂との混合を伴うために耐熱性が不十分である。 特許文献3および4の方法では、樹脂全体にCNFが均一に分散されていないため、透明性、耐熱性の均一性が不十分である。 特許文献5の方法では、透明性は良好なものの、耐熱性が不十分であった。 このように、上記特許文献の方法によっては、フィルムの透明性と耐熱性とを両立が困難であった。 本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ナノファイバーフィルムにおいて、透明性および耐熱性を両立する手段を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた。その結果、特定のピラノース構造を有するナノファイバーにおいて、該ピラノース構造のC6位にアミド構造を導入し、これを用いてフィルムを構成することにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。 (1)下記構成単位1を繰り返し単位として含むナノファイバーを含む、ナノファイバーフィルム。 式中、X1は、下記構造A: ただし、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、この際、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R1およびR2において、置換基は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数4〜8の環状アミノ基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、であり、 X2は、水酸基、−OY1、−NH2、またはであり、この際、Y1は炭素数1〜12のアシル基であり、 X3は、水酸基または−OY2であり、この際、Y2は炭素数1〜12のアシル基である。 (2)前記ナノファイバーがセルロース由来のナノファイバーである、(1)に記載のナノファイバーフィルム。 (3)下記数式(1)で定義される置換度が0.5以上1.5以下である、(1)または(2)に記載のナノファイバーフィルム。 (4)マトリックス樹脂の含有量が、前記ナノファイバーと前記マトリックス樹脂との合計量に対して10質量%以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のナノファイバーフィルム。 (5)ピラノース構造を有する原料バイオマスを解繊して解繊繊維を得る工程Aと、前記解繊繊維のピラノース構造のC6位のヒドロキシメチル(−CH2OH)の少なくとも一部を下記式で表される構造Aで置換して表面修飾ナノファイバーを得る工程Bと、前記表面修飾ナノファイバーを溶融押出法または溶液キャスト法で製膜する工程Cと、を有するナノファイバーフィルムの製造方法。 ただし、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、この際、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R1およびR2において、置換基は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数4〜8の環状アミノ基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される。 (6)前記工程Aは、前記原料バイオマスを2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルで酸化処理する工程を含む、(5)に記載の製造方法。 (7)前記工程Bは、前記解繊された繊維とアミノ基含有化合物とをカルボジイミド化合物の存在下で反応させる工程を含む、(5)または(6)に記載の製造方法。 (8)前記工程Aおよび前記工程Bを水溶液中で行う、(5)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。 (9)前記工程Cを水溶液中で行う、(8)に記載の製造方法。 (10)製膜後にカレンダー処理および/または延伸処理を行う、(5)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。 (11)(1)〜(4)のいずれかに記載のナノファイバーフィルムまたは(5)〜(10)のいずれかに記載の製造方法により製造されるナノファイバーフィルムを用いた電子素子用基板。 (12)電子素子が有機発光素子である、(11)に記載の電子素子用基板。 本発明によれば、優れた透明性および耐熱性を備えるナノファイバーフィルム、および電子素子用基板が提供される。 本発明の一形態によれば、下記構成単位1を繰り返し単位として含むナノファイバーを含む、ナノファイバーフィルムが提供される。 式中、X1は、下記構造A: ただし、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、この際、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R1およびR2において、置換基は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数4〜8の環状アミノ基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、であり、 X2は、水酸基、−OY1、−NH2、またはであり、この際、Y1は炭素数1〜12のアシル基であり、 X3は、水酸基または−OY2であり、この際、Y2は炭素数1〜12のアシル基である。 本発明で用いられる表面修飾ナノファイバーは、結晶性のナノファイバー成分(水酸基成分)がコアに、非晶性の修飾した樹脂成分(アミド構造部分、アシル基成分、アミン基成分)がシェルになったコアシェル形の断面を有するファイバーになっていると考えられる。これにより、ナノファイバー成分の絡み合いを維持しつつ、結晶性のセルロースナノファイバーに柔軟性が付与され、均一な製膜が可能となるとともに、優れた透明性が実現されうる。特に、本発明の表面修飾ナノファイバーはピラノース構造のC6位のアミド結合とC2、3位の水酸基との間に水素結合が生じうる。これにより、繊維の絡み合い構造がより強固なものとなり、高い耐熱性が達成されうる。また、本発明では、後述する表面修飾方法により、C6位のみに選択的にアミド結合を導入しつつ、C2、C3位の水酸基を非修飾の状態で保持することが可能であり、表面の樹脂化レベルの制御(反応制御)が容易であり、これにより、結晶性成分(耐熱性)と非晶性成分(透明性)との両方を高いレベルに調整することができるという利点も有する。 上記表面修飾ナノファイバーは製膜性に優れ、マトリックス樹脂と混合しない場合であっても、成形加工性に優れ、均一な製膜が可能である。したがって、本発明のナノファイバーフィルムは、マトリックス樹脂の含有量が小さい(マトリックス樹脂を実質的に含有しない)ことが好ましい。詳細なメカニズムは明らかになっていないが、マトリックス樹脂を実質的に含有せず、ピラノース構造を有するナノファイバーのC6位にアミド構造を導入した表面修飾ナノファイバーを成膜することで、ナノファイバーの絡み合いが維持されつつ、表層の非晶の樹脂成分(アミド構造部分)が均一に広がるため、マトリックス樹脂を混合する系に比べて、屈折率差が少なく、膜内のナノファイバーの均一性も良好となる。このため、優れた透明性および耐熱性の両立が図られる。 以下、本発明を詳細に説明する。 (ナノファイバーフィルム) 本発明のナノファイバーフィルムは、上記構成単位1を含むナノファイバー、ならびに必要に応じて、微量のマトリックス樹脂、および、炭素ラジカル捕捉剤、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤、可塑剤、マット剤、光学異方性コントロール剤、架橋剤等の添加剤を含んで構成される。 (a)ナノファイバー 本明細書において、「ナノファイバー」は、平均繊維径1〜1000nmである繊維をいう。好ましくは2〜400nmの繊維径の繊維である。繊維の平均繊維径が400nm以下であれば、可視光の波長よりも小さいため透明性の低下が抑制されうる。平均繊維径2nm以上であれば製造が容易である。より好ましくは、フィルムの強度を向上させるために、4〜200nm、特に好ましくは4〜100nmの繊維径の繊維である。 上記ナノファイバーは、単繊維が、引き揃えられることなく、相互間に入り込むように十分に離隔して存在するものより成ってもよい。この場合、繊維径は単繊維の径となる。あるいは、複数本の単繊維が束状に集合して1本の糸条を構成しているものであってもよく、この場合、繊維径は1本の糸条の径として定義される。 なお、本発明で用いるナノファイバーは、平均繊維径が上記範囲内であればよく、上記範囲外の繊維径のファイバーが含まれていてもよい。ただし、上記範囲外の繊維径のファイバーの、ナノファイバー全体に対する割合は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは全てのナノファイバーの繊維径が上記範囲内である。 ナノファイバーの長さについては特に限定されないが、平均繊維長で50nm以上が好ましく、更に好ましくは100nm以上が好ましい。かような範囲であれば、繊維の絡み合いが良好で補強効果が高く、熱膨張の増大が抑制されうる。 本発明において、「平均繊維径」、「平均繊維長」は、ナノファイバーを透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、H−1700FA型(日立製作所社製))を用いて10000倍の倍率で観察した画像から無作為に繊維を100本選び、画像処理ソフト(例えば、WINROOF)を用いて一本毎の繊維径(直径)および繊維長を解析し、これらの単純な数平均値として算出される。 本発明で用いられるナノファイバーは下記構成単位1を繰り返し単位として含む。 本発明のナノファイバーは、上記構成単位1を含んで構成されていれば特に制限されず、天然由来のものであっても、重合によって得られたものであってもよい。好ましくは、バイオマス由来の繊維(バイオマス繊維)を表面修飾したナノファイバーである。 「バイオマス繊維」とは、生物由来の高分子、特に水に難溶性の天然高分子の繊維を意味する。具体的にはセルロース、キチン、キトサンなどのピラノース構造を有する多糖類のミクロフィブリルまたはこの構成繊維をいう。 セルロース、キチン、キトサンは多糖類の一種であり、セルロースはポリ−β1−4−グルコースであり、C2位、C3位、C6位に水酸基を有する。すなわち、セルロースは、構成単位1においてX1、X2、X3が水酸基である繰り返し単位からなる高分子に相当する。キチンは、ポリ−β1−4−N−アセチルグルコサミンであり、C3位およびC6位に水酸基を有する。すなわち、キチンは、X1、X3が水酸基であり、X2がである繰り返し単位からなる高分子に相当する。キトサンは、ポリ−β1−4−グルコサミンであり、C3位およびC6位に水酸基を有する。すなわち、キトサンは、X1、X3が水酸基であり、X2が−NH2である繰り返し単位からなる高分子に相当する。 本発明で用いられるバイオマス繊維は、キトサン、キチン、セルロースのいずれでもよいが、中でも、セルロースは、生産量が多く安価であり、かつ、植物由来のセルロースの方が動物由来のキチン、キトサンに比較して不純物が少なく、精製が容易であるため、好ましい。かかる観点から、本発明のナノファイバーはセルロース由来のバイオマス繊維であることが好ましい。 これらのバイオマス繊維は、通常、繊維径4nm程度の単繊維(セルロース、キチン、またはキトサンの分子鎖が数十本水素結合で結合した結晶性の繊維)からなる集合体である。これらのバイオマス繊維は、結晶構造を40%以上含有するものが、高い強度と低い熱膨張を得る上で好ましい。 本発明のナノファイバーは、特定のピラノース構造(グルコース、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン)のC6位にアミド結合を有する点を特徴の一つとする。すなわち、上記構成単位1において、X1は、下記構造Aである。すなわち、本発明のナノファイバーは、バイオマス繊維(セルロース、キチン、またはキトサン)のピラノース構造のC6位のヒドロキシメチル(−CH2OH)の少なくとも一部が上記式で表される構造Aで変換(置換)された構造を有するともいえる。ここでC6位のヒドロキシメチル(−CH2OH)中の炭素原子は、上記構造A中の炭素原子に相当する。 このように、ナノファイバーのピラノース構造のC6位にアミド構造を導入することにより、ファイバーの表層を非晶化(樹脂化)して、ナノファイバー成分の絡み合いを維持しつつ、結晶性のナノファイバーに柔軟性が付与されうる。これにより、マトリックス樹脂と混合しない場合であっても、成形加工性に優れ、均一な製膜が可能となり、さらに、製膜されたフィルムの透明性が有意に向上する。 ここで、上記X1中のR1は、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基である。この際、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよい。なお、R1およびR2は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。 炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基は、特に制限されない。例えば、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基、炭素数3〜9のシクロアルキル基、などが挙げられる。 炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基としては特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。 炭素数2〜24の直鎖もしくは分岐状のアルケニル基としては特に制限されず、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、1−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。 R1およびR2が互いに結合して環構造を形成する場合、−NR1R2の構造としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数4〜8の環状アミノ基が挙げられる。 炭素数4〜8の環状アミノ基としては、特に制限されず、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基が挙げられる。 R1およびR2において、置換基は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数4〜8の環状アミノ基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される。 炭素数1〜24のアルキルアミノ基は、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基に対応するアルキル鎖(R3、R4)を有するアルキルアミノ基(−NHR3、−NR3R4)である。炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基は、炭素数1〜23の直鎖もしくは分岐状のアルキル基に対応するアルキル鎖(R5)を有するアルコキシカルボニル基(−COOR5)である。炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基は、水酸基で置換された炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基である。炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、炭素数4〜8の環状アミノ基としては、上記で例示したアルキル基または環状アミノ基が同様に挙げられる。 これらのうち、ファイバーの表層を非晶化(樹脂化)する面で、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基であり、特に好ましくは、R1がエチル基で、かつ、R2がn−プロピル基である。 上記構成単位1において、X2は、水酸基、−OY1、−NH2、またはであり、Y1は炭素数1〜12のアシル基である。また、X3は、水酸基または−OY2であり、Y2は炭素数1〜12のアシル基である。 上記、Y1またはY2としての、炭素数1〜12のアシル基としては特に制限されず、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、バレリル基、イソバレリル基、2−メチルバレリル基、3−メチルバレリル基、4−メチルバレリル基、t−ブチルアセチル基、ピバロイル基、カプロイル基、2−エチルヘキサノイル基、2−メチルヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜8のアシル基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましく、プロピオニル基が特に好ましい。プロピネート成分は他のアシル基成分に比べて流動性等が良好であるため、透明性および平滑性が向上しうる。 本発明で用いられるナノファイバーは上記構成単位1および他の構成単位から形成されていてもよいし、上記構成単位1のみから形成されていてもよい。この際、ナノファイバーは、上記構成単位1で表される単一種の繰り返し構造のみから形成されていてもよいし、上記構成単位1で表される複数種の繰り返し構造から形成されていてもよい。 ナノファイバーフィルムを構成する他の構成単位としては、本発明に係るナノファイバーの特性を阻害しないものであれば特に制限されず、多様な構成単位が使用できる。ただし、ナノファイバーの結晶性および製膜性(相溶性)を確保する上で、ピラノース構造を有するものが好ましく、例えば、下記構成単位2がある。 上記式中、X2およびX3は、上記構成単位1における定義と同様である。 X4は水酸基または−OY3であり、この際、Y3は炭素数1〜12のアシル基である。Y3としての、炭素数1〜12のアシル基としては特に制限されず、Y1またはY2として例示した炭素数1〜12のアシル基と同様のものが挙げられる。好ましくは、X4は、ファイバーの表層を非晶化(樹脂化)する点で、水酸基、または、−OY3(ただし、Y3は、プロパノイル基、アセチル基、ブタノイル基からなる群から選択される)を含む。 好ましくは、ナノファイバーフィルムは上記構成単位1および上記構成単位2から構成され、ナノファイバーを構成する全構成単位中、上記構成単位1および上記構成単位2の割合が、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。なお、ナノファイバーは、上記構成単位1または構成単位2で表される単一種の繰り返し構造のみから形成されていてもよいし、上記構成単位1または構成単位2で表される複数種の繰り返し構造から形成されていてもよい。 上記構成単位1と上記構成単位2および他の構成単位との比率は本発明に係るナノファイバーの特性を阻害しないものであれば特に制限されない。好ましくは、後述するナノファイバーの置換度を考慮して適宜決定する。 ナノファイバーの末端は、特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水酸基または水素原子である。 ナノファイバーの重合度(重量平均分子量)は特に制限されないが、重合度が1,000〜3,000(分子量で数万〜数百万)の範囲である。したがって、重合度(重量平均分子量)がこの範囲にある不溶性の天然繊維(天然のセルロース繊維など)を原料として使用すればよい。 本発明において「重量平均分子量」は、高速液体クロマトグラフィーを用いて下記の測定条件で測定した値を採用する。 溶媒:メチレンクロライド カラム:Shodex K806、K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用) カラム温度:25℃ 試料濃度:0.1重量% 検知器:RI Model 504(GLサイエンス社製) ポンプ:L6000(日立製作所(株)製) 流量:1.0ml/min 校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株))製)重量平均分子量1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用 製膜性、透明性、および耐熱性を両立させる観点から、ナノファイバーは、下記数式(1)で定義される置換度が0.5以上1.5以下であることが好ましい。 ナノファイバーを構成する構成単位1や構成単位2はβ−1,4結合しているピラノース構造を有している。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、C2位、C3位およびC6位に遊離の水酸基を、キチンを構成するN−アセチルグルコサミン単位およびキトサンを構成するグルコサミン単位は、C3位およびC6位に遊離の水酸基を有している。上記置換度は、1ピラノース単位当たりの修飾基(水酸基以外の置換基)の平均数を示し、1ピラノース単位のC2位、C3位およびC6位の水酸基のいずれかが水酸基以外の置換基に置換されている割合を示す。 例えば、セルロースのC2位、C3位およびC6位の水酸基がすべて水酸基以外の修飾基で置換されたとき、あるいは、キチン、キトサンのC3位およびC6位がすべて水酸基以外の修飾基で置換されたとき、置換度(最大の置換度)は3.0となる。 この際、ピラノース単位のC2位、C3位、C6位に平均的に置換されてもよいし、分布をもって置換していてもよい。置換度は、特開平9−286801の段落[0033]に記載の方法に基づき、13C−NMRスペクトルの測定結果から求められる。 ナノファイバーの表層(シェル部)にある非晶性樹脂成分(アミド構造部分、アシル基成分、アミン基成分)が多いほど、製膜性および透明性が向上する。一方、内部(コア部)の結晶性成分(水酸基成分)が多いほど、ナノファイバーの絡み合いが増大して、熱線膨張性が優れる。 上記置換度が0.5以上であればファイバー表面の樹脂成分が多くなり、製膜性および透明性が向上し、さらに欠陥を低減できるため好ましい。置換度が1.5以下であれば、結晶性ナノファイバー部分(コア部)が多くなり、ナノファイバーの絡み合いが増大して、熱線膨張性が優れるため好ましい。より好ましくは、置換度が0.7〜1.2である。 また、C6位における置換度は0.5以上1.0以下が好ましく、C6位における構造Aへの置換度が0.5以上1.0以下であることが好ましい。C2位、C3位における置換度は、それぞれ、0.01以上0.5以下であることが好ましい。なお、C6位、C2位、またはC3位における置換度とは、C6位、C2位、またはC3位の水酸基が水酸基以外の置換基に置換されている割合を指し、最大の置換度はそれぞれ1.0である。 特に好ましくは、C6位の水酸基に選択的にアミド構造が導入され、C2位、C3位には遊離の水酸基が存在するナノファイバーであり、C2位、C3位、C6位全体の置換度は1.0が好ましい。 表面修飾ナノファイバーの結晶化度は、30〜90%であることが好ましい。結晶化度が30%以上であれば、ナノファイバーの熱線膨張特性の劣化およびこれに伴うフィルムの熱線膨張特性の劣化が抑制されうる。一方、90%以下であれば、製膜性、透明性および表面平滑性の低下が抑制されうる。透明性と耐熱性の観点から、より好ましくは、結晶化度は50〜90%であり、さらに好ましくは、60〜90%である。 結晶化度は以下に記載の方法にて算出できる。 [結晶化度の算出方法] X線回折強度を測定し、下記数式(2)に基づき結晶化度CrIを算出した。なお、I8は2θ=8°の回折ピーク強度を、I18は2θ=18°の回折ピーク強度を示す。 回折ピーク強度は樹脂により異なるが、各スペクトルのピークの強度からベースラインの強度を差し引くことにより算出することができる。 (b)マトリックス樹脂 ナノファイバーフィルムは、必要に応じてマトリックス樹脂を含んでもよい。マトリックス樹脂を添加することにより、成形加工性を向上させることができる。 本明細書において、「マトリックス樹脂」とは、分子量が10,000以上の無機高分子または有機高分子をいう。具体的には、無機高分子としては、ガラス、シリケート材料、チタネート材料等のセラミックス等が挙げられ、有機高分子としては、セルロース樹脂、セルロースエステル樹脂などのセルロース系樹脂、ビニル系樹脂、重縮合系樹脂、重付加系樹脂、付加縮合系樹脂、開環重合系樹脂等が挙げられる。 ただし、マトリックス樹脂の含有量が多い場合には、ナノファイバーとマトリックス樹脂との界面の層分離や微小な表面性状の不均一を引き起こし、表面平滑性や透明性が低下する恐れがある。かような観点から、マトリックス樹脂の含有量がナノファイバーと前記マトリックス樹脂との合計量に対して10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、すなわち、マトリックス樹脂を含有しない。 (c)その他の添加剤 ナノファイバーフィルムは、ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性フィルムを用いて作製した電子素子用基板の性能を更に向上させる目的で、(1)炭素ラジカル捕捉剤、(2)一次酸化防止剤、(3)二次酸化防止剤、(4)酸捕捉剤、(5)紫外線吸収剤、(6)可塑剤、(7)マット剤、(8)光学異方性コントロール剤、(9)架橋剤等の添加剤を添加することが好ましい。中でも、後述する溶融押出法を用いる場合には(2)一次酸化防止剤、(3)二次酸化防止剤、(6)可塑剤の添加剤のうち少なくとも1種以上を添加することが好ましく、特に好ましくは(2)、(3)、(6)の全てを添加する。 (1)炭素ラジカル捕捉剤 ナノファイバーフィルムは、炭素ラジカル捕捉剤を少なくとも1種以上含有することが好ましい。「炭素ラジカル捕捉剤」とは、炭素ラジカルが速やかに付加反応しうる基(例えば2重結合、3重結合等の不飽和基)を有し、かつ炭素ラジカル付加後に重合等の後続反応が起こらない安定な生成物を与える化合物を意味する。 上記炭素ラジカル捕捉剤としては分子内に速やかに炭素ラジカルと反応する基((メタ)アクリロイル基、アリール基等の不飽和基)およびフェノール系、ラクトン系化合物等のラジカル重合禁止能を有する化合物が有用であり、特に下記一般式(1)または一般式(2)で表わされる化合物が好ましい。 一般式(1)において、R11は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。 R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、直鎖でも、分岐構造または環構造を有してもよい。 R12およびR13は、好ましくは4級炭素を含む「*−C(CH3)2−R’」で表される構造(*は芳香環への連結部位を表し、R’は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)である。 R12は、より好ましくはtert−ブチル基、tert−アミル基またはtert−オクチル基である。R13は、より好ましくはtert−ブチル基、tert−アミル基である。上記一般式(1)で表される化合物として、市販のものでは「SumilizerGM、SumilizerGS」(共に商品名、住友化学(株)製)等が挙げられる。 以下に上記一般式(1)で表される化合物の具体例(I−1〜I−18)を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 前記一般式(2)において、R22〜R25はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、R22〜R25で表される置換基としては特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によって更に置換されていてもよい。 前記一般式(2)において、R26は水素原子または置換基を表し、R26で表される置換基は、前記R22〜R25で表される置換基と同様な基を挙げることができる。 前記一般式(2)において、nは1または2を表す。 前記一般式(2)において、nが1であるとき、R21は置換基を表し、nが2であるとき、R21は2価の連結基を表す。R21が置換基を表すとき、置換基としては、前記R22〜R25で表される置換基と同様な基を挙げることができる。 R21は2価の連結基を表すとき、2価の連結基として例えば、置換基を有しても良いアルキレン基、置換基を有しても良いアリーレン基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、或いはこれらの連結基の組み合わせを挙げることができる。 前記一般式(2)において、nは1が好ましい。 次に、本発明における前記一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって限定されるものではない。 上記、炭素ラジカル捕捉剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.01〜5.0質量部、特に好ましくは、0.1〜1.0質量部である。 (2)一次酸化防止剤 ナノファイバーフィルムは、パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤を少なくとも1種以上含有することが好ましい。 「パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤」とは、パーオキシラジカルによって速やかに引き抜かれる水素原子を分子内に少なくとも1つ以上有する化合物であり、水酸基あるいは1級または2級のアミノ基によって置換された芳香族化合物または立体障害性基を有する複素環化合物であることが好ましく、より好ましくは、オルト位にアルキル基を有するフェノール系化合物あるいはヒンダードアミン系化合物である。 (フェノール系化合物) 本発明に好ましく用いられるフェノール化合物は、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されているもの等の、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物には、下記一般式(3)で表される化合物が含まれる。 式中、R31〜R36は水素原子または置換基を表す。置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。 また、R31は水素原子、R32、R36はt−ブチル基である化合物が好ましい。フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミド−N,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス−{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、BASFジャパン社から、「Irganox1076」および「Irganox1010」という商品名で市販されている。 上記、フェノール化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.1〜2.0質量部である。 (ヒンダードアミン系化合物) ヒンダードアミン系化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。 式中、R41〜R47は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。R44は水素原子、メチル基、R47は水素原子、R42、R43、R45、R46はメチル基が好ましい。ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。 また、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、高分子タイプのヒンダードアミン系化合物の数平均分子量(Mn)は500〜10,000である。 これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等で、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。 上記タイプのヒンダードアミン化合物は、例えば、BASFジャパン社から、“Tinuvin144”及び“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“アデカスタブ LA−52”という商品名で市販されている。 上記、ヒンダードアミン化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.1〜2.0質量部である。 (3)二次酸化防止剤 ナノファイバーフィルムは、パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤を少なくとも1種以上含有することが好ましい。 「パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤」とは、パーオキサイドを速やかに還元して水酸基に変換する還元剤を意味する。 パーオキサイドに対する還元能を有する二次酸化防止剤としてはリン系化合物または硫黄系化合物が好ましい。 (リン系化合物) リン系化合物としては、ホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、ホスフィナイト(phosphinite)、または第3級ホスファン(phosphane)からなる群より選ばれるリン系化合物が好ましく、具体的には下記一般式(5−1)、(5−2)、(5−3)、(5−4)、(C−5)で表される部分構造を分子内に有する化合物が好ましい。 式中、Ph1及びPh1′は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph1及びPh1′はフェニレン基を表し、当該フェニレン基の水素原子はフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph1及びPh1′は互いに同一でもよく、異なってもよい。Xは単結合、硫黄原子または−CHR−基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。また、これらは前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。 式中、Ph2及びPh2′は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph2及びPh2′はフェニル基またはビフェニル基を表し、当該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph2及びPh2′は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、これらは前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。 式中、Ph3は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph3はフェニル基またはビフェニル基を表し、当該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。また、これらは前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。 式中、Ph4は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph4は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、当該アルキル基またはフェニル基は前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。 式中、Ph5、Ph5′及びPh5″は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph5、Ph5′及びPh5″は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、当該アルキル基またはフェニル基は前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。 リン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;トリフェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト等のホスホナイト系化合物;トリフェニルホスフィナイト、2,6−ジメチルフェニルジフェニルホスフィナイト等のホスフィナイト系化合物;トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン系化合物;等が挙げられる。 上記タイプのリン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“アデカスタブ PEP−24G”、“アデカスタブ PEP−36”及び“アデカスタブ 3010”、BASFジャパン社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されている。 上記、リン系化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.05〜2.0質量部である。 (硫黄系化合物) 硫黄系化合物としては、下記一般式(6)で表される硫黄系化合物が好ましい。 式中、R61及びR62は置換基を表す。置換基としては前記一般式(3)のR31〜R36で表される置換基と同義である。 硫黄系化合物の具体例としては、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。 上記タイプの硫黄系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”及び“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されている。 上記硫黄系化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.05〜2.0質量部である。 (4)酸捕捉剤 溶融製膜が行われるような高温環境下では酸によっても分解が促進されるため、シート用基材は安定化剤として酸捕捉剤を含有することが好ましい。 酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815C、及び下記一般式(7)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることができる。 式中、nは0〜12の整数である。用いることができるその他の酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。 酸捕捉剤は、1種或いは2種以上組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.001〜10.0質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.05〜5.0質量部、特に好ましくは、0.05〜2.0質量部である。 なお酸捕捉剤は、樹脂に対して酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。 (5)紫外線吸収剤 ナノファイバーフィルムは、紫外線吸収剤を含みうる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。さらに、液晶表示装置用途では、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない好ましい。 前記紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物である。 ベンゾトリアゾール系化合物の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。 また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもBASFジャパン社製)、LA31(株式会社ADEKA社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。 ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 なお、ベンゾトリアゾール構造やトリアジン構造を、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入させることにより、紫外線吸収剤としての機能を付与してもよい。 上記紫外線吸収剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。 紫外線吸収剤の配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、通常0.1〜5質量部添加することが好ましく、更に好ましくは0.2〜3質量部であり、特に好ましくは0.5〜2質量部である。 (6)可塑剤 ナノファイバーフィルムは可塑剤を含みうる。本発明において、可塑剤とは、分子量が500〜10,000である、脆弱性を改善したり、柔軟性を付与したりすることができる化合物をいう。本発明において、可塑剤は、表面修飾ナノファイバーの親水性を改善し、ガスバリア性フィルムの透湿度を改善することができ、透湿防止剤としての機能を有する。 また、本発明の好ましい実施形態においては、溶融押出時のフィルム構成材料の溶融温度や溶融粘度を低下させるために、可塑剤が添加される。ここで、溶融温度とは、材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。高分子材料を溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率や粘度が低下し、流動性が発現する。ただし、高温下では、溶融と同時に熱分解によって表面修飾ナノファイバーの分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあり、低い温度で樹脂を溶融させる必要がある。したがって、フィルム構成材料の溶融温度を低下させるべく、表面修飾ナノファイバーのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤が添加されうる。 可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤が好ましい。 (多価アルコールエステル系可塑剤) エステル系可塑剤の原料である多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等を挙げることができる。特に、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。 多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤としては、具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。 多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤としては、具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。 その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤、特開2006−188663号公報の段落64〜74記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。 これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。 上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落31記載例示化合物16、特開2006−188663号公報の段落71記載例示化合物48が挙げられる。 (多価カルボン酸エステル系可塑剤) 多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的には、ジドデシルマロネート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。 またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、または規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。 また、1価のアルコール由来のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の水素原子は、アルコキシカルボニル基で置換されていてもよい。かような可塑剤としては、例えば、エチルフタリルエチルグリコレートが挙げられる。 その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。 上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、アルキルジカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペートが挙げられる。 (その他の可塑剤) 本発明に用いられるその他の可塑剤としては、燐酸エステル系可塑剤、炭水化物エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。 (燐酸エステル系可塑剤) 燐酸エステル系可塑剤としては、具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の燐酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等の燐酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等の燐酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。 また、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等の燐酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。 更に燐酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、燐酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。 (炭水化物エステル系可塑剤) 炭水化物とは、糖類がピラノースまたはフラノース(6員環または5員環)の形態で存在する単糖類、二糖類または三糖類を意味する。炭水化物の非限定的例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マンノース、キシロース、リボース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、ソルボース、セロトリオース及びラフィノース等が挙げられる。炭水化物エステルとは、炭水化物の水酸基とカルボン酸が脱水縮合してエステル化合物を形成したものを指し、詳しくは、炭水化物の脂肪族カルボン酸エステル、或いは芳香族カルボン酸エステルを意味する。脂肪族カルボン酸として、例えば酢酸、プロピオン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、例えば安息香酸、トルイル酸、アニス酸等を挙げることができる。炭水化物は、その種類に応じた水酸基の数を有するが、水酸基の一部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成しても、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成してもよい。本発明においては、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成するのが好ましい。 炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエートがより好ましく、サッカロースオクタベンゾエートが特に好ましい。 これらの化合物の一例を下記に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。 モノペットSB :第一工業製薬社製 モノペットSOA:第一工業製薬社製 (ポリマー可塑剤) ポリマー可塑剤としては、具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体(例えば、共重合比1:99〜99:1の間の任意の比率)等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1,000〜10,000程度が好ましく、特に好ましくは、5,000〜10,000である。1,000以下では揮発性に問題が生じ、10,000を超えると可塑化能力が低下し、光学フィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。 上記可塑剤は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができるが、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。 可塑剤の配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に好ましくは0.2〜10質量部である。 (7)マット剤 ナノファイバーフィルムは、滑り性や光学的、機械的機能を付与するためにマット剤を含みうる。 マット剤としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。 マット剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。 これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理は、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等で行うことが好ましい。 微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。通常、微粒子の一次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子は、基材表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させるために好ましく用いられる。 かような二酸化ケイ素の微粒子は、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600、NAX50等、日本触媒(株)製のKE−P10、KE−P30、KE−P100、KE−P150等の商品名で市販されており、使用することができる。 中でも、フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため、好ましくはアエロジル200V、R972V、NAX50、KE−P30、KE−P100である。 これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。 マット剤を添加するほど、得られるフィルムの滑り性は向上するが、添加するほどヘイズが上昇するため、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。一例をあげると、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、0.001〜5質量部添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜1質量部であり、更に好ましくは0.01〜0.5質量部である。 (8)光学異方性コントロール剤 光学異方性をコントロールするためのリターデーション上昇剤が、場合により添加されうる。これらは、フィルムのリターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、0.01〜20質量部の範囲で使用する。さらには、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。これらについては、特開2004−109410号、特開2003−344655号、特開2000−275434号、特開2000−111914号、特開平12−275434号公報などに詳細が記載されている。 (9)架橋剤 ナノファイバーフィルムは、架橋剤を含有することができる。架橋剤を添加することで、ナノファイバー間の絡み合いを密にでき、透明性および熱膨張性が向上するので好ましい。 架橋剤としては、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、ホウ酸、酸化コバルト等が好ましい。また、メタキシレンビニルスルホン酸等のビニルスルホン基を有する化合物、ビスフェノールグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、ブロックドイソシアネート基を有する化合物、2−メトキシ−4,6−ジクロルトリアジン、2−ソディウムオキシ−4,6−ジクロルトリアジン等の活性ハロゲン基を有する化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール等のアルデヒド基を有する化合物、ムコクロル酸、テトラメチレン−1,4−ビス(エチレンウレア)、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)等のエチレンイミン基を有する化合物および活性エステル生成基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。これらの架橋剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、金属酸化物、ビニルスルホン基を有する化合物、エチレンイミン基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物が特に好ましい。 本発明において、ビニルスルホン基を有する化合物とは、スルホニル基に結合したビニル基あるいはビニル基を形成しうる基を有する化合物であり、好ましくはスルホニル基に結合したビニル基またはビニル基を形成しうる基を少なくとも2つ有しており、下記一般式(8)で表されるものが好ましい。 式中、Aはn価の連結基であり、例えばアルキレン基、置換アルキレン基、フェニレン基、置換フェニレン基であり、間にアミド連結部分、アミノ連結部分、エーテル連結部分あるいはチオエーテル連結部分を有していても良い。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、スルホン酸基、硫酸エステル基等が挙げられる。nは1、2、3又は4である。 以下にビニルスルホン系架橋剤の代表的具体例を挙げる。 エポキシ基を有する化合物としては、特にエポキシ基を2つ以上有し1つの官能基当たりの分子量が300以下のものが好ましい。以下にエポキシ基を有する架橋剤の具体例を挙げる。 エチレンイミン基を有する化合物としては、特に2官能、3官能で分子量が700以下のものが好ましく用いられる。以下にエチレンイミン基を有する架橋剤の具体例を挙げる。 架橋剤の使用量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、表面修飾ナノファイバーの総質量(100質量部)に対し、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。 (ナノファイバーフィルムの製造方法) 上記ナノファイバーフィルムの製造方法は特に制限されず、従来公知の方法を適宜参照して作製することができる。 本発明の他の一形態によればナノファイバーフィルムの製造方法が提供される。本形態の製造方法は、(1)ピラノース構造を有する原料バイオマスを解繊して解繊繊維を得る工程Aと、(2)前記解繊繊維のピラノース構造のC6位のヒドロキシメチル(−CH2OH)の少なくとも一部を下記式で表される構造Aで置換して表面修飾ナノファイバーを得る工程Bと、(3)前記表面修飾ナノファイバーを溶融押出法または溶液キャスト法で製膜する工程Cと、を有する。 (1)工程A:解繊工程 まず、ピラノース構造を有する原料バイオマスを解繊して、微細化したミクロフィブリル状の解繊繊維を得る。従来、セルロース、キチン、キトサンは、酵素分解されにくく、加工も難しい材料であった。本発明によれば、セルロース、キチン、キトサンなどの結晶性ないし水難溶性の天然高分子を後述する分散方法でナノファイバーとすることができる。 原料バイオマスとしてセルロースを使用した場合には、上記構成単位1においてX1がヒドロキシメチル(−CH2OH)であり、X2、X3が水酸基である繰り返し単位からなる解繊繊維が得られ、キチンを使用した場合には、X1がヒドロキシメチル(−CH2OH)であり、X3が水酸基であり、X2がである繰り返し単位からなる解繊繊維が得られ、キトサンを使用した場合には、X1がヒドロキシメチル(−CH2OH)であり、X3が水酸基であり、X2が−NH2である繰り返し単位からなる解繊繊維が得られる。 具体的には、セルロースの解繊繊維を得る場合には、原料バイオマスとして、植物由来のパルプ、稲わら、籾殻、麦わら、コーンコブ、木材、林地残材、製材工場等残材、建設発生木材、古紙などの廃材、コットン、麻、竹、綿、ケナフ、ヘンプ、ジュート、バナナ、ココナッツ、海草等の植物繊維から分離した繊維、海産動物であるホヤが産生する動物繊維から分離した繊維、または酢酸菌より産生させたバクテリアセルロース等を使用できる。中でも、植物繊維から分離した繊維が好ましく、より好ましくはパルプ、コットンから得られる繊維である。当該原料セルロース繊維はリグニンやヘミセルロースを除去した結晶セルロース繊維であることが好ましい。 キチンやキトサンの解繊繊維を得る場合には、エビ、カニなどの甲殻類の殻などを直接原料バイオマスとして使用できる。好ましくは、一般的に知られている方法で除タンパク質・脱カルシウム処理された精製キチン・キトサンが原料として使用される。 なお、これらの原料バイオマス(セルロース、キチン・キトサン)としては、市販の原料を使用してもよい。 原料バイオマスの解繊処理の方法としては、解繊繊維(ナノファイバー)が繊維状態を保持している限り何ら制限はないが、ホモジナイザーやグラインダー等を用いた機械的解繊処理、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)等の酸化触媒を用いた化学的解繊処理が挙げられる。木材のような硬いもののようにホモジナイザーで直接処理できない場合には、プレ解砕として乾式粉砕機で粉体化すればよい。また、解繊処理を促進するために酵素等を利用して、ミクロフィブリル状に微細化してもよい。 機械的解繊処理の具体的な方法としては、例えば、まず、パルプ等の原料セルロース繊維などの原料バイオマスを、水を入れた分散容器に0.1〜3質量%となるように投入し、これを高圧ホモジナイザーで解繊処理して、平均繊維径0.1〜10μm程度のミクロフィブリルに解繊された繊維の水分散液を得る。次いで、グラインダー等で繰り返し磨砕処理することで、平均繊維径2〜数百nm程度の解繊繊維(ナノファイバー)を得ることができる。上記磨砕処理に用いられるグラインダーとしては、例えば、ピュアファインミル(栗田機械製作所社製)等が挙げられる。 また、別の方法として、原料バイオマスの分散液を一対のノズルから250MPa程度の高圧でそれぞれ噴射させ、その噴射流を互いに高速で衝突させることによってセルロース繊維を粉砕する、高圧ホモジナイザーを用いる方法が知られている。用いられる装置としては、例えば、三和機械社製の「ホモジナイザー」、スギノマシン(株)製の「アルテマイザーシステム」、等が挙げられる。 化学的解繊処理の具体的な方法としては、例えば、酸化触媒および必要に応じて強酸化剤を使用し、原料バイオマスを酸化処理する方法が挙げられる。これにより、ピラノース単位のC6位に存在する一級水酸基がカルボキシルへと酸化され、フィブリル相互の静電反発により化学的に解繊される。なお、酸化反応処理を経ることにより、原料バイオマスの分子にはカルボキシル基が導入されるが、部分的に、酸化処理の進行度合いによっては、アルデヒド基が導入される場合もある。したがって、酸化処理後の解繊繊維の水酸基は、アルデヒド基およびカルボキシル基の少なくとも一方で置換されていることになる。 酸化触媒としては、N−オキシル化合物が使用できる。例えば、2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO、2−アザアダマンタン−N−オキシル、1−メチル−2−アザアダマンタン−N−オキシル、および1,3−ジメチル−2−アザアダマンタン−N−オキシル(DMAO)からなる群から選択される少なくとも1つが、常温での反応速度が良好な点において好ましい。 中でも、フィルムの高い透明性と耐熱性を実現するために、TEMPOを用いた方法が好ましい。すなわち、本工程Aは、前記繊維を2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)で酸化処理する工程を含むことが好ましい。 共酸化剤としては、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、および過有機酸からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。上記の共酸化剤のうち塩であるものについてはアルカリ金属、マグネシウムおよびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの塩が好ましく、中でもアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩、例えば、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムがより好ましい。次亜塩素酸ナトリウムのような次亜ハロゲン酸塩を使用する場合、臭化アルカリ金属、例えば臭化ナトリウムの存在下で反応を進めることが反応速度を高めるにおいて特に好ましい。共酸化剤を酸化触媒と共に作用させて酸化反応を進行させた場合には、ピラノース単位から構成される高分子鎖が分子鎖レベルで、しかもC6位の一級水酸基のみが選択的に酸化され、アルデヒドを経由してカルボキシル基にまで酸化されるため好ましい。 上記酸化反応は、原料バイオマスを溶媒中に分散させて行うのが好ましい。溶媒としては原料バイオマス、酸化触媒、および共酸化剤と、酸化反応や取り扱いの条件下で顕著な反応性を示さず、かつ解繊繊維とカルボキシル基導入後の繊維が良好に分散するものであることが必要である。中でも、安価で扱い易いなどの点で水が最も好ましい。すなわち、工程Aを水溶液中で行うことが好ましい。この際、溶媒である水に対する原料バイオマスの濃度を、0.1質量%以上3質量%以下とすることが好ましい。 解繊繊維に、上記酸化触媒、および、必要に応じて共酸化剤を作用させ、カルボキシル基が導入された修飾解繊繊維を得る際の具体的な方法、条件については、特開2008−1728号公報に開示されたものを好適に使用することができる。 このようなC6位のカルボキシル基の静電反発に基づく化学的解繊は、機械的解繊に比べて、均一でより小さな繊維径を得ることができる。 (2)工程B:表面修飾工程 (C6位の置換) 次に、上記解繊繊維のピラノース構造のC6位のヒドロキシメチル基(−CH2OH)の少なくとも一部を下記式で表される構造A(R1およびR2の定義は上記と同様である)で置換する。これにより、C6位にアミド構造(下記構造A)が導入された表面修飾ナノファイバーが得られる。 上記ヒドロキシメチルを構造Aに置換する方法は特に制限されない。例えば、C6位の水酸基をカルボキシル基に置換(酸化)し、アミノ基含有化合物(NHR1R2)と反応させる方法が挙げられる。 (2−1)カルボキシル基の導入 C6位の水酸基をカルボキシル基に置換(酸化)する方法は特に制限されず、従来公知の方法を使用すればよい。好ましくは、上記工程A(解繊工程)において、TEMPOなどを使用した化学的解繊を行うことにより、原料バイオマスを解繊処理するとともに、C6位の水酸基を選択的にカルボキシル基へ酸化することが好ましい。 なお、当該TEMPOなどを使用した化学的解繊では、C2位、C3位の二級水酸基がそのままの状態で維持されうる。かような選択的にカルボキシル基に酸化された解繊繊維のC6位に、続く工程において選択的にアミド結合を導入することで、本来のナノファイバーの結晶性を維持しつつ、C6位のアミド結合とC2、C3位の2つの水酸基との間に水素結合が生じるため、繊維の絡み合い構造がより強固なものとなり、これにより、高い透明性および耐熱性が達成されると推定される。 (2−2)アミノ基含有化合物との反応 続いて、上記C6位にカルボキシル基を導入した解繊繊維とアミノ基含有化合物(NHR1R2)とを縮合剤の存在下で反応させ、C6位にアミド構造を導入する。 アミノ基含有化合物は、C6位のカルボキシル基と反応してアミド結合を形成しうるものであれば特に制限されず、第一級アミン(NH2R1)であっても第二級アミン(NHR1R2)であってもよい。第一級アミン(NH2R1)を使用した場合には、上記構造AにおいてR2が水素原子である構造が導入される。一方、第二級アミン(NHR1R2)を使用した場合には、上記構造AにおいてR2が水素原子ではない構造が導入される。 使用しうるアミノ基含有化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−ブチルエチルアミン、N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、または1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。これらのアミノ基含有化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。 中でも、好ましくは、ファイバーの表層を非晶化(樹脂化)する点で、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−メチルブチルアミンであり、より好ましくは、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−メチルブチルアミンである。 縮合剤としては、カルボジイミド化合物を使用することが好ましい。好ましい実施形態において、工程Bは、前記解繊された繊維とアミノ基含有化合物とをカルボジイミド化合物の存在下で反応させる工程を含む。アミド結合を形成する際に用いるカルボキシル基の脱水縮合反応は可逆反応であるため、通常、脱水条件下でのアミド結合形成が好まれる。しかし、カルボジイミド化合物を使用する場合には、温和な条件下で反応を進行させることができる。 カルボジイミド化合物の具体例としては、同一分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミドとして、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジブチルカルボジイミド、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tertブチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−トリルカルボジイミド、N−トリル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。 また、同一分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドとしては、脂肪族(脂環族)ポリカルボジイミド(例えば日清紡績株式会社“カルボジライトLA−1”、“HMV−8CA”など)、芳香族ポリカルボジイミド(例えばラインヘミー社製“スタバックゾールP”、“スタバックゾールP−100”など)が挙げられ、好ましくは“カルボジライトHMV−8CA”が用いられる。 中でも水溶性カルボジイミド(WSC;Water Soluble Carbodiimide)が、アミド化反応を水溶液中で行うことができる点で好ましい。水溶性カルボジイミドとしては、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1−シクロへキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホネート(Morpho−CDI)が挙げられる。 ただし、上記カルボジイミド化合物に代えて、または加えて、4−ジメチルアミノピリジン、1,1−カルボニルジイミダゾール、ジフェニルホスホリルアジド、1−(ジメチルカルボモイル)−4−(2−スルホエチル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩、ジフェニルホスホリルアジド、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等の縮合剤を使用してもよい。 反応溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類等が使用できる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。 好ましい溶媒は水溶性の溶媒である。特に、縮合剤として水溶性カルボジイミドを用いる場合、反応溶媒として、水または水およびアルコール(例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール)の混合溶液を使用することが好ましく、水を使用することがさらに好ましい。すなわち、工程Bを水溶液中で行うことが好ましい。上記工程A(解繊工程)は水溶液中で行われることが多い。工程Bを水溶液中で行う場合には、大量の溶媒を使用する溶媒置換処理が不要となり、生産効率の面で有利である。 水以外の溶媒を使用する場合には、以下の方法で溶媒置換を行う。 溶媒置換とは、ある溶媒から異なった溶媒に置換することである。本発明においては、元にあった溶媒の残存率が1質量%以下になった時点で溶媒置換が終了したとする。好ましい残存率としては、0.5質量%である。 置換方法としては、限外濾過方法、減圧蒸留方法、デカンテーション方法、共沸方法による水の除去、エバポレーター、膜分離方法が挙げられる。 また、解繊繊維が凝集しないように一度、水溶性の溶媒を凍結乾燥した後、溶媒置換を行ってもよい。好ましくは、膜分離方法で溶媒置換するのがよい。 反応温度は、縮合剤やアミノ基含有化合物の種類に応じて設定すればよい。 一例として、縮合剤として水溶性カルボジイミドを用いてアミド構造を導入する場合について説明すると、まず、カルボキシル基を導入した解繊繊維およびアミノ基含有化合物を純水に溶解させ、混合水溶液を調製する。この際、混合水溶液中のカルボキシル基を有する解繊繊維の濃度は、1〜30質量%が好ましく、特に好ましくは1〜10質量%である。また、混合水溶液中のアミノ基含有化合物の濃度は、0.01〜30質量%が好ましく、特に好ましくは0.05〜10質量%である。また、水溶性カルボジイミドを用いる場合には、水溶性カルボジイミドの安定性を考慮し、水溶性カルボジイミドが安定に存在するpH4〜8の範囲内で反応を行うことが好ましい。 そして、1〜30時間混合させた後、残存する水溶性カルボジイミドを除去することにより、C6位(構成単位1のX1)にアミド構造が導入された表面修飾ナノファイバーが得られる。 (その他の置換) 続いて、必要に応じて、上記解繊繊維のピラノース構造のC2位もしくはC3位、または、上記アミド構造が導入されていないC6位の水酸基(の水素原子)を、アシル基などの他の置換基で置換する。当該置換方法は特に制限されず、従来公知の方法に従って行うことができる。 例えば、ピラノース構造の水酸基の水素原子の一部をアシル基で置換する場合には、上記C6位にアミド構造が導入されたナノファイバーを、水、または適当な溶媒に添加して分散させた後、これにカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、カルボン酸、またはアルデヒドを添加して適当な反応条件下で反応させれば良い。 この際、必要に応じて、反応触媒を添加することができ、例えば、ピリジンやN,N−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒や酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることができるが、反応速度や重合度の低下を防止するため、ピリジン等の塩基性触媒を用いることが好ましい。反応温度としては、セルロース繊維の黄変や重合度の低下等の変質を抑制し、反応速度を確保する観点で、40〜100℃程度が好ましい。反応時間については用いるアシル化剤や処理条件により適宜選定すればよい。 なお、場合によっては、上記C6位にアミド構造を導入する前に、これらの置換を行ってもよい。当業者であれば、置換の順序や置換の条件を、合成するナノファイバーの置換度や置換基の種類を考慮して、容易に決定することができる。 (3)工程C:製膜工程 次いで、上記で得た表面修飾ナノファイバーを溶融押出法または溶液キャスト法で製膜する。 (a)溶融押出法 溶融押出法(溶融流延法)を使用する場合には、表面修飾ナノファイバーおよび必要に応じて、微量のマトリックス樹脂、添加剤を含むナノファイバー組成物を高温で溶融して得た溶融物を加圧ダイ等から押出して、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に流延し製膜する方法でナノファイバーフィルムを製造することができる。 溶融製膜の場合、混練機を用いて一度ペレットを作製してから、再度、混練機に入れて溶融製膜してもよく、日本製鋼製TEXのような2軸押し出し機+多段ベント方式による脱水しながら溶融製膜できるような混練機を用いて一度に製膜してもよい。 (a―1)ナノファイバー組成物の調製 まず、ナノファイバーおよび必要に応じて添加されるマトリックス樹脂、添加剤を含むナノファイバー組成物を調製する。当該組成物の調製は、ナノファイバーの解繊処理後から溶融前のいかなる工程において行ってもよい。好ましくは、当該組成物は、溶融する前に混合され、さらに好ましくは、加熱前に混合される。あるいは、添加剤を樹脂溶融物の製造過程で添加してもよい。この際、複数の添加剤を使用する場合には、予め溶媒にこれらを混合分散させた後、溶媒を揮発または沈殿させた固形物を得て、これを樹脂溶融物の製造過程で添加することができる。 混合手段は特に制限されないが、例えば、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、伸長流動分散機等の一般的な混合機を用いることができる。 さらに、ナノファイバー組成物は溶融前に、熱風乾燥または真空乾燥することが好ましい。 (a−2)溶融押出 上記で得たナノファイバー組成物を、押出し機を用いて溶融して製膜する。この際、ナノファイバー組成物を調製した後、該組成物を押出し機を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよし、または、ナノファイバー組成物をペレット化した後、該ペレットを押出し機で溶融して製膜するようにしてもよい。 また、ナノファイバー組成物が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機に投入して製膜することも可能である。 ナノファイバー組成物に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。 押出し機は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。フィルム組成物からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。 溶融温度は、ナノファイバー組成物(フィルム構成材料)の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。 本発明においては、ナノファイバーのアミド構造(構造A)やアシル基で修飾された部分のTgが目安となる。ただし、高温下においてはナノファイバーの熱分解も懸念されるので、具体的には、溶融押出し時の温度は、好ましくは150〜300℃であり、より好ましくは180〜270℃の範囲であり、さらに好ましくは200〜250℃の範囲である。 押出し時の溶融粘度は、好ましくは10〜100000ポイズ(1〜10000Pa・s)であり、より好ましくは100〜10000ポイズ(10〜1000Pa・s)である。 押出し機内でのナノファイバー組成物の滞留時間は短い方が好ましく、好ましくは5分以内、より好ましくは3分以内、さらに好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押出す条件にも左右されるが、組成物の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。 (a−3)冷却 溶融押出は、T型ダイよりフィルム状に押出すことが好ましい。さらに、押出後、フィルム状の押出物を、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得ることが好ましい。この際、冷却ドラムの温度は50〜150℃に維持されていることが好ましい。 押出し機内及び押出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。 上記工程により、未延伸フィルム(ナノファイバーフィルム)が得られる。 (b)溶液キャスト法 溶液キャスト法を使用する場合には、工程Cは、表面修飾ナノファイバーおよび必要に応じて、微量のマトリックス樹脂、添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、前記ウェブを金属支持体から剥離する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程を含む。 (b−1)ドープ調製工程 まず、表面修飾ナノファイバーおよび必要に応じて、微量のマトリックス樹脂、添加剤を溶剤に溶解させ、ドープを得る。 ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、水、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。好ましくは、溶解性に優れる点で、水、メチルエチルケトンであり、より好ましくは、安価で扱い易い点で、水を使用することが好ましい。 上記で例示した表面修飾ナノファイバーを単独で溶解する溶剤(良溶剤)に、単独では表面修飾ナノファイバーを膨潤するかまたは溶解しない溶剤(貧溶剤)を混合して使用してもよい。貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。かような場合には生産効率の点で好ましく、良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。表面修飾ナノファイバーの溶剤への溶解性は、構造Aやアシル基などの置換基の置換度や結晶化度によって変化するので、これらに合わせて溶剤を選択すればよい。 ドープ中の表面修飾ナノファイバー濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、表面修飾ナノファイバーの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。したがって、溶剤として、水を使用する場合には、0.1〜15質量%が好ましく、更に好ましくは1〜10質量%である。溶剤として、良溶剤と貧溶剤との混合溶液を使用する場合には、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。 上記記載のドープを調製する時の、表面修飾ナノファイバーの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。構造Aが導入された本発明の表面修飾ナノファイバーは通常、水溶性であるため、表面修飾ナノファイバーと水とを混合することにより容易にドープが得られる。例えば、先述の工程Bにおいて、表面修飾の際の反応溶媒として水を使用している場合には、表面修飾ナノファイバーを含む水溶液を、そのまま、あるいは、純水で希釈または水を蒸発させることによって濃度を調製して、使用してもよい。一方、先述の工程Bと異なる溶媒を使用する場合には、工程Bにおいて説明した方法で溶媒置換を行えばよい。 表面修飾ナノファイバーの溶剤への溶解性が悪い場合には、ナノファイバーおよび溶剤の混合溶液を、加熱と加圧を組み合わせて常圧における沸点以上に加熱することが好ましい。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。 また、表面修飾ナノファイバーを貧溶剤と混合して湿潤または膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を発現させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。 溶剤添加後の加熱温度は、高い方がセルロースナノファイバーの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。もしくは冷却溶解法も好ましく用いられる。 各種添加剤は製膜前のドープにバッチ添加してもよいし、添加剤をメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に溶解させた溶液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。インライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。 表面修飾ナノファイバーを溶解させたドープは、濾過により、原料のセルロースナノファイバーに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。 濾過の方法は特に制限されず、通常の方法で行うことができ、濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。 濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。 濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。 濾過条件としては特に制限されないが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の発現が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。 (b−2)ドープ流延工程 続いて、ドープを金属支持体上に流延(キャスト)する。 金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。 (b−3)乾燥工程 続いて、流延したドープをウェブとして乾燥させる。 金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度である。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。 金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。 なお、乾燥工程において除去される溶媒を回収し、上記(b−1)ドープ調製工程における上記表面修飾ナノファイバーの溶解に用いられる溶媒として再利用して用いることができる。なお、回収溶剤中に、添加剤(例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分等)が微量含有される場合もあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。 (b−4)剥離工程 次いで、ウェブを金属支持体から剥離する。 製膜後のフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。 本発明においては、残留溶媒量は下記数式(3)で定義される。 式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nは前記採取した試料(質量Mの試料)を115℃で1時間の加熱した後の質量である。 ただし、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。 なお、剥離したウェブはさらに乾燥し、残留溶媒量を好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0〜0.01質量%以下とすることが望ましい。 当該乾燥は、一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。 (b−5)フィルム巻き取り工程 最後に、得られたウェブ(仕上がったフィルム)を巻取ることにより、未延伸フィルム(ナノファイバーフィルム)が得られる。 (c)多層化 上記ナノファイバーフィルムを、共流延法によって多層構成としてもよい。多層構成にすることで、製造工程の熱処理での反りや歪み等を調整したり、透明性や熱膨張性を調整したりできるので、有効である。例えば、置換度が小さく結晶化度が高いファイバーをセンターに配置し、置換度が大きく結晶化度が小さいファイバーを両面に配置した構成とすることにより、熱処理での反りや歪み等を改善できる。共流延法によって多層構成にする場合の膜厚構成は、適宜調整することができる。 (d)延伸処理 上記で得たナノファイバーフィルムは、製膜後、少なくとも一方向に延伸することができる。延伸処理することでフィルムのリタデーションを調整することができ、光学特性が向上しうる。 延伸方法としては、前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群および/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介してナノファイバーのアシル基で修飾された部分のガラス転移温度(Tg)−50℃からTg+100℃の範囲内に加熱し、フィルム搬送方向(長手方向ともいう)に、一段または多段縦延伸することが好ましい。次に、上記のようにして得られた延伸された表面修飾フィルムを、フィルム搬送方向に直交する方向(幅手方向ともいう)に延伸することも好ましい。フィルムを幅手方向に延伸するには、テンター装置を用いることが好ましい。 フィルム搬送方向またはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸する場合は、2.5倍以下の倍率で延伸することが好ましく、より好ましくは1.1〜2.0倍の範囲である。2.5倍より大きいと、ナノファイバー周辺に空隙ができて、透明性が劣化するので好ましくない。 また、延伸に引き続き熱処理することもできる。熱処理は、Tg−100℃〜Tg+50℃の範囲内で通常0.5〜300秒間搬送しながら行うことが好ましい。 熱処理手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。フィルムの加熱は段階的に高くしていくことが好ましい。 熱処理されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。また冷却は、最終熱処理温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。 冷却する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱処理温度をT1、フィルムが最終熱処理温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。 (e)カレンダー処理 上記で得たナノファイバーフィルムは、製膜後、加熱カレンダー処理で透明、平滑化することができる。製膜後、延伸処理およびカレンダー処理の両方を行う場合、その順序は特に制限されず、どちらを先に行ってもよい。 加熱カレンダー処理により、ナノファイバーの修飾した樹脂成分(構造A、アシル基成分)をフィルム中に拡散させることができ、これにより、透明性、生産性、熱膨張、平滑性が向上する。 加熱カレンダー処理としては、単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、およびカレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定することができる。 本発明に係る原料バイオマスや表面修飾ナノファイバーは、安価で扱い易い、水に分散しうる。したがって、上記工程A、工程B、または工程C(溶液キャスト)を水溶液中で行うことが好ましい。さらに、溶媒置換等が不要となることから、工程Aおよび前記工程Bを水溶液中で行うことがより好ましく、工程Aおよび前記工程Bおよび前記工程Cを水溶液中で行うことが特に好ましい。 (ナノファイバーフィルムの物性) ナノファイバーフィルムの透明性は、特に、光学フィルム用途において、可視光線透過率が85%以上、特に90%以上の高い透明性を有することが好ましい。85%未満では、適用用途の幅が狭まり、特に画像の乱れが発生したり、鮮鋭性が劣化したりするおそれがある。また上記の高い透明性は製造工程での熱加工後においても必要とされる。光線透過率は、分光光度計により測定することができる。 ヘイズ値は1%未満、より好ましくは0.5%未満であることが好ましい。ヘイズは濁度計を用いて測定することができる。 20〜200℃における線熱膨張係数は、好ましくは15ppm/K以下であり、より好ましくは10ppm/K以下であり、さらに好ましくは5ppm/K以下である。15ppm/Kより大きいと、電子素子を形成する際に使用される導電膜やバリア膜等の無機膜やガラスとの線熱膨張係数との違いから、製造工程時の熱加工等の際に、膜が割れて機能を発揮できなくなったり、フィルムにたわみや歪みが発生したり、素子用部品としての結像性能や屈折率が狂う等の問題が発生したりする場合がある。 ナノファイバーフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に膜厚は50〜150μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは75〜125μmである。 (光学フィルム) 上記ナノファイバーフィルムは、透明性および耐熱性に優れることから、光学フィルムとして好適に使用することができる。 (電子素子用基板] 上記ナノファイバーフィルムは、透明性および耐熱性に優れていることから、電子素子用の透明基板として使用することができる。特に、液晶や有機素子デバイス用基板に適用でき、有機素子デバイスとしては、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機光電変換素子等が挙げられる。 上記ナノファイバーフィルムを電子素子用の透明基板として使用する場合には、必要に応じて、ナノファイバーフィルムの上部または下部に、透明導電膜、ガスバリア層、ハードコート層を設置することができる。 (透明導電膜) 本発明の電子素子用基板に用いることができる透明導電膜は特に限定なく、素子構成により選択することができる。例えば、透明電極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ用いることができる。また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて使用することもできる。 (ガスバリア層) ガスバリア層は、水蒸気と酸素に対するガスバリア性の高い層を意味する。ガスバリア性は、JIS−K7129:1992に準拠した方法により測定することができる。酸素透過度は、JIS−K7126:1987に準拠した方法により測定することができる。本発明では、水蒸気透過度(60±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m2・24h)以下であればよい。一般に、水蒸気透過度より酸素透過度の方が小さいため、上記水蒸気透過度をみたすものであれば、有機素子デバイスとして、問題になることは少ない。 ガスバリア層を設けることにより、樹脂基材および当該樹脂基材で保護される各種機能素子等の高湿度による劣化を防止することができる。本発明の電子素子用基板に用いることができるガスバリア層は特に限定なく、電子素子の構成により選択することができる。 ガスバリア層としては、透明性を有する無機膜を使用することが好ましい。特にこれに限定されるわけではないが、透明性、ガスバリア性の観点から酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、SiAlONなどが使用できる。さらに耐酸性、耐アルカリ性の観点から、ケイ素の酸化物、窒化物又は酸化窒素化物を主成分とすることが好ましい。ガスバリア層は、単層でも複数の同様な膜を積層してもよく、複数の層で、さらにガスバリア性を向上させることもできる。 ガスバリア層の形成方法は特に制限されない。例えば、スプレー法、スピンコート法、スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成することができる。中でも、プラズマCVD法、無機酸化物膜のセラミック前駆体を塗布した後に塗布膜を加熱および/または紫外線照射する方法により、無機酸化物膜を形成する方法が好ましく、塗布膜を紫外線照射して無機酸化物膜を形成する方法が特に好ましい。この際、塗布膜としては、ゾル状の有機金属化合物またはポリシラザンなどの無機酸化物前駆体が好ましい。有機金属化合物としては、加水分解が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい有機金属化合物としては、金属アルコキシドが挙げられる。 (ハードコート層) 本発明の電子素子用基板に用いることができるハードコート層は特に限定なく、素子構成により選択することができる。ハードコート層を設置することで、基材に硬度、平滑性、透明性、耐熱性が付与することができる。 適用可能なハードコート樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成するものであれば、特に制限なく使用でき、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。特に好ましくは、できる点でアクリル系樹脂を用いることができる。硬化方法は光、熱いずれも可能であるが、生産性の点から光、特にUV光による硬化が好ましい。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。 [工程A:解繊工程] [製造例1:セルロースAの作製] 針葉樹から得られた亜硫酸漂白パルプ(セルロース繊維)を、純水に1.0質量%となるように添加し、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)を用いて3000回転/分で15分処理することにより、セルロース繊維を解繊した。この水分散液をセルロースAとした。 得られたセルロースAの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)観察結果より、平均繊維径250nmに解繊されており、ミクロフィブリル化していることを確認した。 [製造例2:CNF−Aの作製] 製造例1で作製したセルロースA(乾燥質量で1g相当分)、0.0125gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)および0.125gの臭化ナトリウムを水100mlに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなる量)を添加して反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pH変化が確認されなくなった時点で反応終了と見なした。反応物をガラスフィルターにて濾過した後、十分な量の水による水洗および濾過を5回繰り返し、その後、セルロースナノファイバーが0.1質量%になるよう水で希釈した。さらに超音波分散機にて1時間処理をし、CNF−Aを得た。 CNF−Aの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径4nmであった。 [製造例3.キチン−A、キトサン−Aの作製] セルロースAを乾燥キチン粉末(ナカライテクス社製)に変更したこと以外は、製造例2と同様にして、キチン−Aを得た。 キチン−Aの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径5nmであった。 また、セルロースAを生成キトサン(生化学バイオビジネス株式会社製)に変更したこと以外は、製造例2と同様にして、キトサン−Aを得た。 キトサン−Aの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径5nmであった。 [製造例4.CNF−Bの作製] 製造例1で作製したセルロースAをグラインダー(増幸産業製)で2回処理した。セルロースナノファイバーが1質量%となるよう水で調整し、CNF−Bを得た。 CNF−Bの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径50nmであった。 [製造例5.キチン−B、キトサン−Bの作製] セルロースAを乾燥キチン粉末(ナカライテクス社製)に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、キチン−Bを得た。 キチン−Bの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径70nmであった。 また、セルロースAを生成キトサン(生化学バイオビジネス株式会社製)に変更したこと以外は、製造例4と同様にして、キトサン−Bを得た。 キトサン−Bの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径80nmであった。 [製造例6.CNF−Cの作製] TEMPOを1,3−ジメチル−2−アザアダマンタン−N−オキシル(DMAO)に変更したこと、および、セルロースナノファイバーが1質量%となるよう水で調整したこと以外は、製造例2と同様にして、CNF−Cを得た。 CNF−Cの一部を取り出し、水を蒸発させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均繊維径10nmであった。 [製造例7.CNF−Dの作製] 粉末セルロース(株式会社日本製紙ケミカル製 NPファイバーW−10MG2(平均粒子径10μm))を高圧ホモジナイザーで平均繊維径1μm以下になるまで粉砕処理した。その後、グラインダー(栗田機械製作所製、KM1−10)にて、この水懸濁液を、ほぼ接触させた状態の1200rpmで回転するディスク間に、中央から外に向かって通過させる操作を30回(30pass)行った。その後、乾燥することにより、綿状のセルロースナノファイバーであるCNF−Dを得た。 乾燥前の縣濁液の一部を取り出し、水を蒸発させた後、電子顕微鏡にて観察したところ、平均繊維径150nm、平均繊維長450nmと測定された。 [工程B:表面修飾工程] [製造例8.CNF−A1の作製(C6位の置換)] 製造例2で得たCNF−Aをセルロースナノファイバーの最終濃度が2質量%となるように濃縮する。これに、2質量%のN−エチルプロピルアミンを含む1mol/LのHCl水溶液(pH7)を混合した。 続いて、縮合剤としての1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の濃度が2質量%となるように調製した水溶液を添加した。24時間撹拌した後、水洗いにて残存したWSC(水溶性カルボジイミド)を除去した。固形分濃度が2質量%になるように純水で調整することにより、C6位をアミド化したセルロースナノファイバーであるCNF−A1(ゲル状)を得た。 [製造例9.CNF−A2の作製(C6位の置換)] 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を4−ジメチルアミノピリジンに変更したこと以外は、製造例8と同様にして、C6位をアミド化したCNF−A2(ゲル状)を得た。 [製造例10.CNF−A3の作製(C2位,C3位の置換)] 製造例8で得たCNF−A1を凍結乾燥により乾燥した。この乾燥ファイバー10質量部を、無水プロピオン酸/ピリジン(モル比1/1)溶液500質量部に添加して分散させ、室温で3時間攪拌した。 続いて、分散した繊維を濾過し、500質量部の水で3回水洗した後、200質量部のエタノールで2回洗浄した。さらに、500質量部の水で2回水洗を行った後、固形分濃度が2質量%になるように純水で調整した。 これにより、C2,C3位の水酸基の水素原子をプロパノイル基で置換したCNF−A3(ゲル状)を得た。 [製造例11.キチン−A1、キトサン−A1の作製(C6位の置換)] CNF−Aを製造例3で得たキチン−Aまたはキトサン−Aに変更したこと以外は、製造例8と同様にして、C6位をアミド化したキチン−A1(ゲル状)またはC6位をアミド化したキトサン−A1(ゲル状)を得た。 [製造例12.CNF−B1の作製(C2位,C3位の置換)] CNF−A1を製造例4で得たCNF−Bに変更したこと以外は、製造例10と同様にして、C2,C3,C6位の水酸基の水素原子をプロパノイル基で置換したCNF−B1(ゲル状)を得た。 [製造例13.キチン−B1、キトサン−B1の作製(C3位、C6位の置換)] CNF−A1を製造例5で得たキチン−Bまたはキトサン−Bに変更したこと以外は、製造例10と同様にして、C3位、C6位の水酸基の水素原子をプロパノイル基で置換したキチン−B1(ゲル状)またはC3位、C6位の水酸基の水素原子をプロパノイル基で置換したキトサン−B1(ゲル状)を作製した。 [製造例14.CNF−C1の作製(C6位の置換)] CNF−Aを製造例6で得たCNF−Cに変更したこと以外は、製造例8と同様にして、C6位をアミド化したCNF−C1(ゲル状)を作製した。 [製造例15.CNF−E1の作製(C2位、C3位、C6位の置換)] 針葉樹から得られた亜硫酸漂白パルプを純水に0.1質量%となるように添加し、石臼式粉砕機(ピュアファインミルKMG1−10;栗田機械製作所社製)を用いて50回、磨砕処理(回転数:1500回転/分)してセルロース繊維を解繊した。この水分散液を濾過後、純水で洗浄し、70℃で乾燥させることにより、CNF−Eを得た。 得られたセルロースEは走査型電子顕微鏡(STM)観察結果より、平均繊維径4nmに解繊されており、ミクロフィブリル化していることを確認した。 無水プロピオン酸/ピリジン(モル比1/1)溶液500質量部に、上記で得られたミクロフィブリル化したセルロース繊維の10質量部を添加して分散させ、室温で3時間攪拌した。次に分散した繊維を濾過し、500質量部の水で3回水洗した後、200質量部のエタノールで2回洗浄した。さらに、500質量部の水で2回水洗を行った後、70℃にて乾燥させ、C2、C3位、C6位の水酸基の水素原子をプロパノイル基で置換したCNF−E1を得た。 走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、CNF−E1は平均繊維径が4nmに保たれていることを確認した。 (置換度、結晶化度の測定) 上記で得たナノファイバーについて、ピラノース単位C2位,C3位,C6位の置換度および結晶化度を測定した。結果を表1に示す。 なお、置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により測定した。また、結晶化度は下記装置を用いて、X線回折法により測定した回折ピーク強度から上記数式(2)に基づいて算出した。 X線発生装置 :理学電機製RINT TTR2 X線源 :CuKα 出力 :50kV/300mA 1stスリット:0.04mm 2ndスリット:0.03mm 受光スリット:0.1mm 〈計数記録装置〉 2θ/θ :連続スキャン 測定範囲 :2θ=2〜45° サンプリング :0.02° 積算時間 :1.2秒 [工程C:製膜工程] [実施例1.フィルム試料1の作製] (溶液キャスト) 製造例8で得たCNF−A1 100質量部(固形分)を純水で1質量%になるように希釈し、ドープを調製した。 これを、ベルト流延装置を用い、温度35℃で30℃のステンレスベルト支持体上に均一に流延した。その後、剥離可能な範囲まで乾燥させた後、ステンレスベルト支持体上からウェブを剥離した。このときのウェブの残留溶媒量は80質量%であった。 上記で得たウェブを、85℃の乾燥ゾーンをロール搬送しながら乾燥させ、フィルム(膜厚:125μm)を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.1質量%未満であった。 (カレンダー処理) 上記で得たフィルムに、ロールプレス装置(由利ロール社製)を用いて、カレンダー処理を施した。カレンダー処理は、上部下部ともに金属ロールを使用し、ロール温度として200℃に設定して、線圧0.5トンで2m/分の走行速度で行った。 上記工程により、フィルム試料1を得た。 [実施例2.フィルム試料2の作製] 実施例1と同様にして、溶液キャストによりフィルムを得た。これを用いて、カレンダー処理を行う代わりに、下記の延伸処理を行った。 (延伸処理) 溶液キャストにより得られたフィルムを、残留溶媒量が35質量%未満となったところで、予熱後、ロール速度差によりフィルム搬送方向に延伸(長手延伸)し、次いでテンター式延伸機に導き、フィルム搬送方向に直交する方向に延伸(幅手延伸)した。延伸倍率は長手延伸1.5倍、幅手延伸1.5倍とした。 上記工程により、フィルム試料2を得た。 [実施例3.フィルム試料3の作製] CNF−A1 100質量部(固形分)を純水で希釈する代わりに、メチルエチルケトン(MEK)に分散させたこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料3を得た。 この際、MEKへの溶媒置換は、膜分離方法により、メチルエチルケトン溶媒へ徐々に置換してセルロースナノファイバーの濃度が2質量%になるようにした。 [実施例4.フィルム試料4の作製] CNF−A1を製造例9で得たCNF−A2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料4を得た。 [実施例5.フィルム試料5の作製] CNF−A1を製造例10で得たCNF−A3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料5を得た。 [実施例6.フィルム試料6の作製] (溶融押出) 製造例8で得たCNF−A1:100質量部(固形分)を、除湿熱風式乾燥機(株式会社松井製作所製)により熱風温度150℃、露点−36℃で乾燥した後、可塑剤P−1:8質量部、酸化防止剤A−1:1質量部、A−2:0.5質量部と一緒にV型タンブラーで30分間混合した。 可塑剤P−1:トリメチロールプロパントリベンゾエート 一次酸化防止剤A−1:IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 二次酸化防止剤A−2:スミライザーGP(住友化学株式会社製) 次いで、混合物を二軸押出し機(テクノベル株式会社製)に120kg/hrで供給した。スクリューデザインはニーディングディスクを少なめにして、混練発熱を抑えるようにした。バレルの温度設定は200℃から250℃とし、先端近傍にはベント口を設け、揮発分を除去した。押出し機下流にフィルター、ギヤポンプ、フィルターを配置し、コートハンガー型Tダイから押出し、120℃に温調した2本のクロムメッキ鏡面ロールの間に落として引き取り、3本ロール間を通して、エッヂをスリットした後、ワインダーに巻き取った。押出し機内でのナノファイバー組成物の滞留時間は1分30秒であった。巻き取ったフィルムの厚みが125μmになるように、押出し量と引取りロールの回転速度とを調整した。 (カレンダー処理) 上記で得たフィルムに、ロールプレス装置(由利ロール社製)を用いて、カレンダー処理を施した。カレンダー処理は、上部下部ともに金属ロールを使用し、ロール温度として200℃に設定して、線圧0.5トンで2m/分の走行速度で行った。 上記工程により、フィルム試料6を得た。 [実施例7.フィルム試料7の作製] 実施例6と同様にして、溶融押出によりフィルムを得た。これを用いて、カレンダー処理を行う代わりに、下記の延伸処理を行った。 (延伸処理) 溶融押出により得られたフィルムを予熱後、ロール速度差によりフィルム搬送方向に延伸(長手延伸)し、次いでテンター式延伸機に導き、フィルム搬送方向に直交する方向に延伸(幅手延伸)した。延伸倍率は長手延伸1.5倍、幅手延伸1.5倍とした。 上記工程により、フィルム試料7を得た。 [実施例8.フィルム試料8の作製] CNF−A1を製造例11で得たキチン−A1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料8を得た。 [実施例9.フィルム試料9の作製] CNF−A1を製造例11で得たキトサン−A1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料9を得た。 [実施例10.フィルム試料10の作製] CNF−A1を製造例14で得たCNF−C1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料10を得た。 [比較例1.フィルム試料11の作製] CNF−A1を製造例2で得たCNF−Aに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料11を得た。 [比較例2.フィルム試料12の作製] CNF−A1を製造例12で得たCNF−B1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料12を得た。 [比較例3.フィルム試料13の作製] CNF−A1を製造例12で得たCNF−B1に変更したこと以外は、実施例7と同様にして、フィルム試料13を得た [比較例4.フィルム試料14の作製] CNF−A1を製造例13で得たキチン−B1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料14を得た。 [比較例5.フィルム試料15の作製] CNF−A1を製造例13で得たキトサン−B1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フィルム試料15を得た。 [比較例6.フィルム試料16の作製] マトリックス樹脂としてのアセチル化セルロースC−1:100質量部、可塑剤P−1:8質量部、酸化防止剤A−1:1質量部、A−2:0.5質量部をV型タンブラーで30分間混合した。この際、アセチル化セルロースC−1は130℃で12時間真空乾燥した後に使用した。 アセチル化セルロースC−1:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.2、分子量Mn=70000、分子量Mw=220000、Mw/Mn=3) 可塑剤P−1:トリメチロールプロパントリベンゾエート 一次酸化防止剤A−1:IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 二次酸化防止剤A−2:スミライザーGP(住友化学株式会社製) 次いで、混合物を二軸スクリュー混練押出し機(オートマチック社製、ZCM53/60)の第1供給口から100kg/hrで供給した。 続いて、製造例7で得たCNF−Dを、同混練押出し機の第2供給口(第1供給口より下流側にある)から23kg/hrで供給した。スクリューデザインはニーディングディスクを多めにして混練効果が強く出るようにした。スクリュー回転数は500rpm、バレルからダイまでの温度設定は180℃から250℃で、先端近傍にはベント口を設け、揮発分を除去した。ダイはストランドダイで、吐出したストランドは冷却水中に誘導し、ペレタイザーでカットして、径3mm、長さ3mm程度のペレットに成形した。 このペレットを実施例6と同条件で二軸押し出し機を用いて溶融製膜方法により製膜することにより、フィルム試料16を得た。 [比較例7.フィルム試料17の作製] マトリックス樹脂としてのアセチル化セルロースC−1をポリエステル系樹脂C−2であるポリ乳酸(レイシアH−400、三井化学社製)に変更し、かつ、CNF−DをCNF−E1に変更したこと以外は、比較例6と同様にして、フィルム試料17を得た。 [比較例8.フィルム試料18の作製] (ホットプレス) 製造例12で得られたCNF−B1を、120℃、2MPaで3分ホットプレスし、厚さ約50μmの、BCシート(含水率0重量%)を得た。 このBCシートを、透明エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、セロサイド2021)に減圧下(0.08MPa)で12時間浸漬処理した。フィルム材料(樹脂+ナノファイバー)中の繊維含有率は50質量%であった。 その後、120℃、2MPaで3分間ホットプレスすることにより、マトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂を硬化させ、直径50mm、厚さ125μmのフィルム試料18を得た。 [比較例9.フィルム試料19の作製] (PET上に塗布) 製造例12で得られたCNF−B1を100g採取し、架橋剤として、5質量%に希釈されたPAE水溶液(ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、製品名WS4030、星光PMC社製)を1.3g(セルロース繊維固形分100質量部に対する架橋剤量が5質量部)添加して十分に攪拌し、混合した。 基材シートとしてポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名:ルミラー、東レ社製、シート厚み25μm)の片側面上に、上記混合物をバーコーター(#50)で塗布した後、23℃で120分間乾燥することにより、フィルム試料19を得た。 [評価] フィルム試料1〜19の光線透過率、ヘイズ、熱線膨張係数、熱収縮を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。 (1)光線透過率 分光光度計(島津製作所製、UV−2500PC)を用いて可視光線の入射光量に対する全透過光量を測定した。 (2)ヘイズ 積分球式濁度計(三菱化学社製、SEP−PT−706D)を用いてヘイズを測定した (3)線膨張係数 40〜200℃の範囲内で温度を変化させ、線膨張係数を測定した。測定装置としてSII(セイコーインスツルメンツ)社製、EXSTAR6000 TMA/SS6100を用いた。測定は、長さ2cm、幅2mm、厚み80μmの試験片について行った。 (4)熱収縮率(単位:%) あらかじめ正確な長さを測定して、長さ15cm四方に切断したフィルム試料を準備した。このフィルム試料に縦方向および横方向をマーキングし、温度200℃に設定されたオーブン中に無荷重状態で投入した。10分間保持処理した後に取り出し、室温に戻してからその寸法の変化を読み取った。熱処理前の長さ(L0)および熱処理による寸法変化量(ΔL)から、下記式に基づいて縦方向および横方向の熱収縮率をそれぞれ算出し、その平均値を熱収縮率(単位:%)とした。 表2から、本発明に係るナノファイバーの表面のセルロースの水酸基の一部がアミド結合を有する構造Aで置換された実施例のナノファイバーフィルムは、透明性および耐熱性に優れることが確認される。 特に、上記数式(1)で定義されるC2位、C3位、C6位の置換度が0.5〜1.5であるナノファイバーフィルムCNF−A1(製造例8)、CNF−A2(製造例9)を用いた実施例1〜4、6、7においては、透明性および耐熱性が有意に向上している。 これに対して、非置換のセルロースナノファイバーであるCNF−A(製造例1)、CNF−D(製造例7)を使用した比較例1、6や、ピラノース構造のC6位にアミド構造を有さない表面修飾ナノファイバーを用いた比較例2〜5、7〜9のナノファイバーフィルムは、実施例に比べて、透明性および耐熱性の面で劣っている。 特に、マトリックス樹脂を含有する比較例6、7、9のナノファイバーフィルムは耐熱性が有意に悪化していることが確認される。 下記構成単位1を繰り返し単位として含むナノファイバーを含む、ナノファイバーフィルム。 式中、X1は、下記構造A: ただし、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、この際、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R1およびR2において、置換基は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数4〜8の環状アミノ基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、であり、 X2は、水酸基、−OY1、−NH2、またはであり、この際、Y1は炭素数1〜12のアシル基であり、 X3は、水酸基または−OY2であり、この際、Y2は炭素数1〜12のアシル基である。 前記ナノファイバーがセルロース由来のナノファイバーである、請求項1に記載のナノファイバーフィルム。 下記数式(1)で定義される置換度が0.5以上1.5以下である、請求項1または2に記載のナノファイバーフィルム。 マトリックス樹脂の含有量が、前記ナノファイバーと前記マトリックス樹脂との合計量に対して10質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノファイバーフィルム。 ピラノース構造を有する原料バイオマスを解繊して解繊繊維を得る工程Aと、 前記解繊繊維のピラノース構造のC6位のヒドロキシメチル(−CH2OH)の少なくとも一部を下記式で表される構造Aで置換して表面修飾ナノファイバーを得る工程Bと、 前記表面修飾ナノファイバーを溶融押出法または溶液キャスト法で製膜する工程Cと、を有するナノファイバーフィルムの製造方法。 ただし、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、R2は、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基であり、この際、R1およびR2は互いに結合して環構造を形成していてもよく、R1およびR2において、置換基は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数4〜8の環状アミノ基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される。 前記工程Aは、前記原料バイオマスを2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルで酸化処理する工程を含む、請求項5に記載の製造方法。 前記工程Bは、前記解繊された繊維とアミノ基含有化合物とをカルボジイミド化合物の存在下で反応させる工程を含む、請求項5または6に記載の製造方法。 前記工程Aおよび前記工程Bを水溶液中で行う、請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法。 前記工程Cを水溶液中で行う、請求項8に記載の製造方法。 製膜後にカレンダー処理および/または延伸処理を行う、請求項5〜9のいずれか1項に記載の製造方法。 請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノファイバーフィルムまたは請求項5〜10のいずれか1項に記載の製造方法により製造されるナノファイバーフィルムを用いた電子素子用基板。 電子素子が有機発光素子である、請求項11に記載の電子素子用基板。 【課題】ナノファイバーフィルムにおいて、透明性および耐熱性を両立する手段を提供する。【解決手段】下記構成単位1を繰り返し単位として含むナノファイバーを含む、ナノファイバーフィルムである。【選択図】なし


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