タイトル: | 公開特許公報(A)_芳香族カルボン酸の精製方法 |
出願番号: | 2011192632 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C07C 51/487,C07C 63/307 |
井出野 隆次 倉島 秀治 水舩 裕介 JP 2013053101 公開特許公報(A) 20130321 2011192632 20110905 芳香族カルボン酸の精製方法 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 井出野 隆次 倉島 秀治 水舩 裕介 C07C 51/487 20060101AFI20130222BHJP C07C 63/307 20060101ALI20130222BHJP JPC07C51/487C07C63/307 4 OL 5 4H006 4H006AA02 4H006AD30 4H006BB44 4H006BE01この発明は、機能性高分子の製造原料として有用な芳香族カルボン酸を精製する方法に係り、特に芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル等の機能性高分子を製造する上で不可欠な酸化金属触媒含有量の少ない高純度の芳香族カルボン酸類を得るための精製方法に関するものである。芳香族カルボン酸の製造方法としては、芳香族アルキルをコバルトやマンガン等の金属酸化触媒を用いて酸化する方法が挙げられるが、この方法では金属触媒が不純物として残存してしまう。このような金属酸化触媒といった不純物を含む芳香族カルボン酸でポリマー等を製造した場合には、十分満足な高分子量のポリマーが得られなかったり、機械物性や耐熱性の低下、着色による品質の低下等の弊害が避けられない。 金属を含有するカルボン酸から金属を除去して高純度のカルボン酸を得るための方法は、各種提案されている。ピリジンカルボン酸(複素環式ジカルボン酸)中の金属を除去する方法(特許文献1)では、一旦、アンモニア水溶液により塩を形成させて溶解し、その後無機酸によりカルボン酸を再生・析出させることによってナトリウム、鉄、ニッケル、銅を除去することが例示されていた。 しかしながら多工程にわたる複雑な作業を要するため、煩雑である。また、コバルトおよびマンガンに関しての除去効果に関する例示は記載されていなかった。特許文献2では、溶剤類への溶解度が極めて低い粗ナフタレンジカルボン酸の精製にあたり、粗ナフタレンジカルボン酸を、脂肪族アミン類を含む水溶液に溶解し、ナフタレンジカルボン酸に対して不純物として含まれる重金属成分をろ過により100ppmに以下することが記載されている。しかしながら、特許文献1と同様に、一旦アミン塩生成後、溶解、ろ過、そして分解させるなどの工程が必要となり大変に煩雑であった。また、実施例3では、1μmという細孔のフィルターを用いて除去効率高いが、作業時間がかかり工業的な手法ではなかった。 また、ポリヒドロキシカルボン酸(脂肪族カルボン酸)中のスズを除去する方法が提案されている(特許文献3および特許文献4)。特許文献3ではポリヒドロキシカルボン酸の嵩密度を調整してから酸洗浄することが必要で、嵩密度を調整しなければいけないことから非常に煩雑である。特許文献4では、水に不混和のフェノール類にポリマーを溶解させ、酸で洗浄した後、フェノール類を除去しなければならず、工程数が多く煩雑である。 さらに、特許文献3および4では、スズの除去についてしか例示されていなかった。 さらには、2,6−ナフタレンジカルボン酸(芳香族カルボン酸)中の重金属(コバルト、マンガン)を除去する方法が提案されている(特許文献5)。この方法では高温・高圧下の、超臨界または亜超臨界の水に2,6−ナフタレンジカルボン酸を溶解させた後、冷却させて2,6−ナフタレンジカルボン酸を析出させる方法であり、一般的な方法とは言えない。特許文献6には、ピロメリット酸粗生成物は水あるいは含水酢酸でリスラリー洗浄あるいはリンスされ、結晶に含有する有機不純物、金属等が除去される旨の記載あるが、どの程度の金属除去効果があるかは記載なく不明であった。特開2004−91416号公報特開平9−208518号公報特開平6−116381号公報特開平8−109250号公報特開平7−173100号公報特開2000−319220号公報 本発明の課題は、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリエステル等の機能性高分子の製造原料として有用な芳香族カルボン酸の精製において、不純物である酸化金属触媒の含有量を大幅に低減する簡易な方法を提供することである。 本発明者は鋭意検討した結果、芳香族ポリカルボン酸を、特定の酸を含有した水中に分散して洗浄するという簡便な方法で、芳香族カルボン酸中の各種金属酸化触媒残存量を低減できることを見いだした。すなわち本発明は、以下(1)〜(4)からなる。(1)製造の際に用いられた金属酸化触媒を含有する芳香族カルボン酸を、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸および臭化水素酸から選ばれる少なくとも一つの酸を含有した水中に分散して、40〜150℃で洗浄する芳香族カルボン酸の精製方法。(2)芳香族カルボン酸が安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸およびこれらの芳香族カルボン酸に炭素数1〜4のアルキル基が置換した誘導体から選ばれる少なくとも一つである(1)記載の芳香族カルボン酸の精製方法。(3)酸が臭化水素酸である(1)または(2)記載の芳香族カルボン酸の精製方法。(4)金属酸化触媒が、少なくともコバルトおよびマンガンから選ばれる1種以上である、(1)〜(3)記載のいずれかに芳香族カルボン酸の精製方法。 本発明により、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリエステル等の機能性高分子の製造原料として有用な芳香族カルボン酸の精製において、不純物である酸化金属触媒の含有量を簡易な方法で大幅に低減できる。 本発明は、芳香族カルボン酸を、特定の酸を含有する水中に分散し洗浄することで金属酸化触媒含有量の少ない高純度の芳香族カルボン酸類を得るための精製方法に関する。 本発明で精製原料として用いられる芳香族カルボン酸としては、芳香環上に1個以上のカルボン酸が置換基として存在していればよく、芳香環としてはベンゼン環、ナフタレン環、および3環以上の多環芳香族炭化水素などが例示できる。具体的には、安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸およびこれらの芳香族カルボン酸に炭素数1〜4のアルキル基が置換した誘導体、から選ばれる1種以上が挙げられる。 これらの中でも、水への溶解度が高い1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸が好ましく、より好ましくは、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸である。 精製原料として用いられる芳香族カルボン酸は不純物として該芳香族カルボン酸製造で用いられる金属酸化触媒を含有する。含有する金属酸化触媒としてはコバルトやマンガンなどの一般的な金属酸化触媒が例示されるが、これらが2種以上混合して含有していても良い。 該芳香族カルボン酸は、金属酸化触媒であるコバルトまたはマンガンをそれぞれ500〜5000ppmの範囲で含有する。 水中に含有する酸としては、水に溶解する酸が好ましい。塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、または臭化水素酸といった無機酸が挙げられ、これらを組み合わせて使用しても良い。中でも臭化水素酸が好ましい。 水中の酸濃度は、1%以下が好ましい。1%以下であれば、芳香族ポリカルボン酸中に残存する酸が多くなることがなく好ましい。また、装置の腐食の観点からも好ましい。 洗浄方法としては、酸を含有した水中で洗浄すれば良く、酸を含有した水との効果的な接触を伴う洗浄方法であればその方法は特に規定されないが、たとえば、酸を含有した水の通液により洗浄する方法、酸を含有した水中での攪拌による洗浄方法などが挙げられる。例えば、酸を含有した水中での攪拌による洗浄の場合には、洗浄時間は、0.01〜24時間が好ましい。 酸を含有した水の量は、限定されるものではないが、芳香族カルボン酸に対し1〜10質量倍が好ましい。また、洗浄回数としては、所望の金属含有量以下になるまで何回行っても良く、その回数は規定されない。 酸を含有した水に、金属酸化触媒を効果的に除去する添加剤を加えてもよい。添加剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール;アセトンなどのケトン;ジオキサンなどのエーテル;トルエン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸、;ゼオライト、珪藻土、活性炭などが挙げられ、これらを組み合わせて使用しても良い。酸を含有した水中での洗浄時の水温は40〜150℃であることが好ましく、より好ましくは70〜120℃、さらに好ましくは90〜100℃である。40〜150℃であれば、相当の加熱が不要でありで好ましい。 洗浄後の芳香族カルボン酸中の金属酸化触媒含有量はそれぞれ100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。金属酸化触媒含有量が100ppmを超えていると、ポリマー等を製造した場合には、十分満足な高分子量のポリマーが得られなかったり、機械物性や耐熱性の低下、着色による品質の低下等の弊害が避けられないため、好ましくない。以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。<金属含有量測定>装置:株式会社リガク製蛍光X線分析装置ZSX100<実施例1>攪拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた500mlフラスコに、コバルト含有量3549ppm、マンガン含有量1867ppmの粗トリメシン酸50g、水250g、酸として48%臭化水素酸2.5gを入れ、95℃で3時間攪拌し、濾過を行い、水250gで2回リンス洗浄した後、乾燥することでトリメシン酸46gを得た。このトリメシン酸中のコバルト含有量は6ppm、マンガン含有量4ppmだった。<比較例1>酸を入れず、水250gだけとした以外は実施例1の方法で行った。トリメシン酸48gを得た。このトリメシン酸中のコバルト含有量は2144ppm、マンガン含有量1464ppmだった。<比較例2>水225g、酸として酢酸25gとした以外は実施例1の方法で行った。トリメシン酸47gを得た。このトリメシン酸中のコバルト含有量は432ppm、マンガン含有量286ppmだった。<比較例3>温度を25℃にした以外は実施例1の方法で行った。トリメシン酸47gを得た。このトリメシン酸中のコバルト含有量は178ppm、マンガン含有量72ppmだった。 本発明は、機能性高分子の製造原料として有用な芳香族カルボン酸を精製する方法に係り、特に芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル等の機能性高分子を製造する上で不可欠な酸化金属触媒含有量の少ない高純度の芳香族カルボン酸類を得るための精製方法として利用可能である。製造の際に用いられた金属酸化触媒を含有する芳香族カルボン酸を、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸および臭化水素酸から選ばれる少なくとも一つの酸を含有した水中に分散して、40〜150℃で洗浄する芳香族カルボン酸の精製方法。芳香族カルボン酸が安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸およびこれらの芳香族カルボン酸に炭素数1〜4のアルキル基が置換した誘導体から選ばれる少なくとも一つである請求項1記載の芳香族カルボン酸の精製方法。酸が臭化水素酸である請求項1または2記載の芳香族カルボン酸の精製方法。金属酸化触媒が、少なくともコバルトおよびマンガンから選ばれる1種以上である、請求項1〜3記載のいずれかに芳香族カルボン酸の精製方法。 【課題】芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリエステル等の機能性高分子の製造原料として有用な芳香族カルボン酸の精製において、不純物である酸化金属触媒の含有量を大幅に低減する簡易な方法を提供する。【解決手段】芳香族ポリカルボン酸を、特定の酸(中でも臭化水素酸が好ましい)を含有した水中に分散して、特定の温度(40〜150℃)で洗浄することにより、コバルトおよびマンガンなどの金属酸化触媒を低減することができる。【選択図】なし