生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アリシクロバチルス・アシドテレストリス菌検出用培地
出願番号:2011177160
年次:2013
IPC分類:C12N 1/20,C12Q 1/04


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内田 将文 及川 正之 寺村 哉 JP 2013039062 公開特許公報(A) 20130228 2011177160 20110812 アリシクロバチルス・アシドテレストリス菌検出用培地 日水製薬株式会社 000226862 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 内田 将文 及川 正之 寺村 哉 C12N 1/20 20060101AFI20130201BHJP C12Q 1/04 20060101ALI20130201BHJP JPC12N1/20 AC12Q1/04 5 OL 17 4B063 4B065 4B063QA01 4B063QQ06 4B063QR43 4B063QR47 4B063QR57 4B063QR69 4B063QS36 4B063QX02 4B065AA01X 4B065BB09 4B065BB15 4B065BB18 4B065BB29 4B065BC03 4B065CA46 本発明は、果汁飲料等において変敗の原因となるアリシクロバチルス・アシドテレストリス菌の検出用培地及び検出法に関する。 アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属細菌は、土壌中に広く分布する高温、好酸性の芽胞形成グラム陽性細菌である。この耐熱性好酸性菌は、果汁飲料などの酸性溶液に通常用いられるパスツール殺菌では死滅しないことが知られている。中でもアリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)は臭気成分(グアイヤコールやハロゲン化フェノール類)を発生させることから、果汁入りの飲食物やその原料などに混入した場合、変敗を引き起こし、商品価値をなくしてしまう原因となるため、迅速に検査、検出されることが求められている(非特許文献1)。 日本果汁協会において制定された耐熱性好酸性菌検査法によると、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(A.acidoterrestris)の鑑別検査はYSG培地で45℃、3〜5日間培養の後に発育してきたコロニーを温度差法又はペルオキシダーゼ法によってA.アシドテレストリスを鑑別する方法とYSG培地で45℃、3〜5日間培養の後に発育したコロニーをもう一度YSG培地で30℃、5日間培養して発育したコロニーをA.アシドテレストリスと判定する方法がある(非特許文献2、特許文献1)。また、この他にYSG培地で45℃、3〜5日培養の後に発育してきたコロニーについてPCR検査する方法も行われている。これらの方法では、初めにYSG培地を45℃で培養した際に発育したコロニーを全て鑑別検査しなければならないが、YSG培地を45℃で培養した場合、A.アシドテレストリス以外の多くの、例えばアリシクロバチルス・アシドカルダリウスやアリシクロバチルス・シクロヘプタニカス等のアリシクロバチルス属も発育するため、膨大な量のコロニーを検査することになり多大なコストと労力を要する。特開平8−140697号公報Heat Resistance of Alicyclobacillus acidoterrestris Spores as Affected by Various pH Values and Organic Acids, J. Food Prot., Vol.61, No.1, p. 41-46.社団法人日本果汁協会 耐熱好酸性菌 統一検査法 ホームページhttp://www.kaju-kyo.ecnet.jp/MyPage/handbook/index.html 本発明の課題は、アリシクロバチルス属に属する耐熱性好酸性菌のうち、A.アシドテレストリスを選択的かつ簡便に検出する手段を提供することにある。 そこで本発明者は、A.アシドテレストリスだけを選択的に検出できる培地について種々検討した結果、検出可能な発色又は蛍光性の遊離性基を有するβ−セロビオシダーゼ基質とポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルとを組み合わせて用いれば、アリシクロバチルス属に属する他の種と区別してA.アシドテレストリスのみが検出可能な遊離性基に依存した明確なコロニーとして検出できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、以下に係るものである。[1](A)検出可能な発色又は蛍光性の遊離性基を有するβ−セロビオシダーゼ基質、及び(B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを含有するアリシクロバチルス・アシドテレストリス菌検出用培地。[2]さらに(C)糖類を含有する[1]記載の培地。[3](B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである[1]又は[2]記載の培地。[4]検出時の培地のpHが4.0以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の培地。[5][1]〜[4]のいずれかに記載の培地に検体を接種して45℃以上で培養し、培地に形成されるコロニーの呈色又は蛍光を検出することを特徴とするアリシクロバチルス・アシドテレストリスの検出法。 本発明の培地を用いれば、検体を接種して45℃以上で培養するだけで、アリシクロバチルス属に属する他の種と区別して、A.アシドテレストリスのみのコロニーを選択的に検出することができる。 本発明のA.アシドテレストリス菌(以下、単にアシドテレストリスともいう)検出用培地は、(A)検出可能な発色又は蛍光性の遊離性基を有するβ−セロビオシダーゼ基質、及び(B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを含有する。 (A)検出可能な発色又は蛍光性の遊離性基を有するβ−セロビオシダーゼ基質としては、発色及び蛍光を生じる遊離性基、例えば5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル基(青)、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル基(赤紫)、5−ブロモ−3−インドキシル基(青)、6−クロロ−3−インドキシル基(ピンク)、N−メチルインドキシル基(緑)、4−メチル−ウンベリフェリル−α−D−グルコピラノシド(蛍光)等を有する基質が挙げられる。具体的な基質としては5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−セロビオシド、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−β−D−セロビオシド、5−ブロモ−3−インドキシル−β−D−セロビオシド、6−クロロ−3−インドキシル−β−D−セロビオシド、N−メチルインドキシル−β−D−セロビオシド、4−メチル−ウンベリフェリル−β−D−セロビオシド等が挙げられる。アリシクロバチルス属に属する細菌は、セロビオシダーゼを産生するので、この基質を分解し、検出可能な色原体化合物を遊離させ、コロニーが遊離性基に依存した色又は蛍光を呈する。 (A)当該基質の含有量はアシドテレストリスのころにーの呈色性、検出性の点から、本発明培地中に検出時の濃度として0.01〜1g/Lが好ましく、0.03g/L〜0.07g/Lがより好ましい。 本発明の培地には、(B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルが用いられる。(B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの添加により、アリシクロバチルス属に属するアシドテレストリス以外の種の菌、例えばアシドカルダリウスやシクロヘプタニカスの発育が抑制され、アシドテレストリスのコロニーだけが選択的に形成され、呈色する。 (B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等が挙げられるが、このうちポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。 ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルにおけるポリオキシエチレン数は、5〜500が好ましく、5〜200がより好ましく、5〜100がさらに好ましい。また脂肪酸エステルとしては、炭素数8〜24の飽和又は不飽和の脂肪酸エステルが好ましく、炭素数8〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸エステルがより好ましい。 さらに好ましいポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられ、このうち、ポリオキシエチレン(5〜100)ソルビタンC8−C20脂肪酸エステルが特に好ましい。 (B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルの含有量は、アシドテレストリスの選択性及び呈色性の点から、本発明培地中に検出時の濃度として0.5〜10g/Lが好ましく、0.5〜8g/Lがより好ましく、1〜5g/Lがさらに好ましい。 本発明の培地には、アシドテレストリスのコロニーの形成及び選択性の点から、(C)糖類を含有させるのが好ましい。(C)糖類としてはグルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、アラビノース、キシルロース、グルクロニド、グルクロン酸、グルコサミン、ソルボース、タガトース、フコース、プシコース、フルクトース、マンノース、メリビオース、リボース等の単糖類、スクロース、ラクトース、ゲンチアノース、セロトリオース、トレハロース、マルトース、メレチトース、ラフィノース等の2〜20糖類(オリゴ糖)、溶性でんぷん、グリコーゲン等の多糖類が挙げられる。(C)糖類の含有量は、アシドテレストリスのコロニーの形成性の点から、本発明培地中に検出時の濃度として0.1〜20g/L含有するのが好ましく、1〜10g/L含有するのがさらに好ましい。 本発明の培地には、上記成分の他、栄養成分、無機塩、pH調整剤等を配合することができる。 栄養成分としては、ペプトン、酵母エキス、獣肉エキス、魚肉エキス等が好ましい。無機塩類としては、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の無機酸金属塩;クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸金属塩等が挙げられる。 また、本発明培地は、アシドテレストリスの選択性の点から、検出時のpHが4.0以下であるのが好ましく、pH3.5〜3.9であるのがより好ましい。 本発明培地の形態は特に限定されず、通常の寒天培地の他、シート状簡易培地((特開昭57−502200号)(特開平6−181741号)例えばメッシュを有する繊維状吸水シートに担持させた構造(特開平9−19282号、特開2000−325072))とすることもできる。 本発明培地を用いて、被検体中のアシドテレストリスを検出するには、当該培地に検体を接種して42〜55℃、2〜5日間培養した後に、コロニーの呈色又は蛍光を観察すればよい。なお、検出時には、所定量の水及び/又は検体液を添加して、本発明培地中の各成分の濃度が前記検出時の濃度になるように調整することができる。 本発明培地に適用される検体としては、果汁入りの飲食品、果汁、環境ふき取り材料などの検体等が挙げられるが、これらの検体を予めトリプトソーヤブイヨン培地やYSGブイヨン培地で培養した培養液やさらにこれを増菌用培地で培養した培養液も用いることができる。 次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例1(1)培地の作製 培地組成を表1に示した。 本発明培地は1L使用量を1Lの精製水に加え、121℃、15分間高圧蒸気滅菌後、約50℃になるまで冷却し、塩酸にてpH3.7に調整した後、プラスチックシャーレ(90φmm)に20mLずつ分注して培地が固まるまで静置して作製した。また対照品として本発明培地より5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−セロビオシドを抜いたもの、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)を抜いたものも同様に作製した。 陽性コントロールとしてのYSG寒天培地も同様にして作製した。(2)菌株の供試 供試菌株のうちアリシクロバチルス属の菌株はYSG培地で45℃、72時間前培養した後にマクファーランド#1の菌液を作成し菌原液とした。アリシクロバチルス属以外の菌株は、羊血液寒天培地で35℃、24時間前培養後にマクファーランド#1の菌液を作成し菌原液とした。各菌原液を滅菌0.05%寒天加生理食塩水で10倍段階希釈しMiles−Misra法(新 細菌培地学講座−上−<第二販>182−192頁 株式会社近代出版 1986年)により本発明培地と対照培地に接種し、45℃で72時間培養した後に菌数確認とコロニー色調を確認した。 Miles−Misra法により各菌株を供試し45℃で、72時間培養した後に菌数確認とコロニー色調を観察したところ、本発明培地ではアシドテレストリスの良好な発育及び青色の発色を認めた。また、アシドカルダリウスやAlicyclobacillus genomic species 1はYSG培地に比べ大幅に抑制されていること、シクロヘプタニカスは白色コロニーとして検出されることを認めた。一方、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−β−D−セロビオシドを抜いたものを用いた場合、アシドテレストリスの他にシクロヘプタニカスも同様に白色コロニーとして発育するため、鑑別することが出来無いことが認められた。ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)を抜いたものを用いた場合、培養時間が長くなるとアシドテレストリスの他にアシドカルダリウスも同様に青色コロニーとして発育するため、鑑別することが出来無いことが認められた。実施例2(1)培地の作製 各種の界面活性剤を用いた培地組成を表4に示した。 各培地は1L使用量を1Lの精製水に加え、121℃、15分間高圧蒸気滅菌後、約50℃になるまで冷却し、塩酸にてpH3.7に調整した後、プラスチックシャーレ(90φmm)に20mLずつ分注して培地が固まるまで静置して作製した。 陽性コントロールとしてのYSG寒天培地も同様にして作製した。(2)菌株の供試 供試菌株のうちアリシクロバチルス属の菌株はYSG培地で45℃、72時間前培養した後にマクファーランド#1の菌液を作成し菌原液とした。アリシクロバチルス属以外の菌株は、羊血液寒天培地で35℃、24時間前培養後にマクファーランド#1の菌液を作成し菌原液とした。各菌原液を滅菌0.05%寒天加生理食塩水で10倍段階希釈しMiles−Misra法により本発明培地と対照培地に接種し、45℃で72時間培養した後に菌数確認とコロニー色調を確認した。 Miles−Misra法により各菌株を供試し45℃で、72時間培養した後に菌数確認とコロニー色調を観察したところ、各種の界面活性剤のうちポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、特にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)又はポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween80)を加えたときにアシドテレストリスの良好な発育及び青色の発色を認めた。また、特にポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween80)よりもポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)を加えた方がアシドカルダリウスやAlicyclobacillus genomic species 1の発育が抑制出来ることが確認された。実施例3(1)培地の作製 ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)の濃度を加減した培地組成を表8に示した。 各培地は1L使用量を1Lの精製水に加え、121℃、15分間高圧蒸気滅菌後、約50℃になるまで冷却し、塩酸にてpH3.7に調整した後、プラスチックシャーレ(90φmm)に20mLずつ分注して培地が固まるまで静置して作製した。 陽性コントロールとしてのYSG寒天培地も同様にして作製した。(2)菌株の供試 供試菌株のうちAlicyclobacillus属の菌株はYSG培地で45℃、72時間前培養した後にマクファーランド#1の菌液を作成し菌原液とした。Alicyclobacillus属以外の菌株は、羊血液寒天培地で35℃、24時間前培養後にマクファーランド#1の菌液を作成し菌原液とした。各菌原液を滅菌0.05%寒天加生理食塩水で10倍段階希釈しMiles−Misra法により本発明培地と対照培地に接種し、45℃で72時間培養した後に菌数確認とコロニー色調を確認した。 Miles−Misra法により各菌株を供試し45℃で、72時間培養した後に菌数確認とコロニー色調を観察したところ、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(Tween40)を0.5〜2.0g/L濃度加えた際にアシドテレストリスの良好な発育及び青色の発色とアシドカルダリウスやAlicyclobacillus genomic species 1の良好な抑制を確認することができた。 (A)検出可能な発色又は蛍光性の遊離性基を有するβ−セロビオシダーゼ基質、及び(B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを含有するアリシクロバチルス・アシドテレストリス菌検出用培地。 さらに(C)糖類を含有する請求項1記載の培地。 (B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである請求項1又は2記載の培地。 検出時の培地のpHが4.0以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の培地。 請求項1〜4のいずれか1項記載の培地に検体を接種して45℃以上で培養し、培地に形成されるコロニーの呈色又は蛍光を検出することを特徴とするアリシクロバチルス・アシドテレストリスの検出法。 【課題】アリシクロバチルス属に属する耐熱性好酸性菌のうち、A.アシドテレストリスを選択的から簡便に検出する手段を提供する。【解決手段】(A)検出可能な発色又は蛍光性の遊離性基を有するβ−セロビオシダーゼ基質、及び(B)ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルを含有するアリシクロバチルス・アシドテレストリス菌検出用培地。【選択図】なし


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