タイトル: | 公開特許公報(A)_遊離ホウ酸の定量方法 |
出願番号: | 2011165197 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | G01N 31/00,G01N 31/22,G01N 21/73 |
國政 誠也 田崎 誠 山田 公美 JP 2011209306 公開特許公報(A) 20111020 2011165197 20110728 遊離ホウ酸の定量方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 坂元 徹 100151909 國政 誠也 田崎 誠 山田 公美 JP 2010173443 20100802 JP 2010269050 20101202 G01N 31/00 20060101AFI20110922BHJP G01N 31/22 20060101ALI20110922BHJP G01N 21/73 20060101ALI20110922BHJP JPG01N31/00 AG01N31/00 YG01N31/22 122G01N21/73 12 OL 10 2G042 2G043 2G042AA01 2G042BB15 2G042CA07 2G042CB06 2G042DA06 2G042EA03 2G042FA06 2G042FA20 2G042FB02 2G043AA01 2G043BA07 2G043CA04 2G043DA01 2G043EA08 本発明は、遊離ホウ酸の定量方法に関する。 従来、高分子組成物に含まれるホウ酸の定量方法として、フィルム状の高分子組成物を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法に供することにより、該高分子組成物中のホウ素含量を分析し、該ホウ素含量をホウ酸含量に換算することによる方法が知られていた(特許文献1)。特開2009−104062号公報 しかしながら、かかる定量方法では、高分子組成物中の高分子物質と架橋構造を形成しているホウ酸と、高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸とを区別できない。高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸を選択的に定量する方法が求められていた。 本発明は、以下の発明を含むものである。〔1〕以下の工程(A)〜(D)を含むことを特徴とする、高分子物質と遊離ホウ酸とを含む高分子組成物中の遊離ホウ酸の定量方法;(A):高分子組成物を粉砕する工程(B):工程(A)で粉砕された高分子組成物と、遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物とを混合する工程(C):工程(B)で得られた混合物から高分子物質を除去する工程(D):工程(C)で高分子物質が除去された混合物に含まれるホウ酸を定量する工程〔2〕遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物が、水酸基を2以上有するアルコール化合物である〔1〕記載の方法;〔3〕水酸基を2以上有するアルコール化合物が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールである〔2〕記載の方法;〔4〕工程(D)の定量が、ICP発光分光分析を用いる定量である〔1〕〜〔3〕のいずれか一項記載の方法;〔5〕高分子物質が、ポリビニルアルコールである〔1〕〜〔4〕のいずれか一項記載の方法;〔6〕工程(B)において、さらに、実質的に高分子物質を溶解しない有機溶媒を混合する〔1〕〜〔4〕のいずれか一項記載の方法;〔7〕工程(B)において、さらに、芳香族溶媒又はハロゲン化炭化水素溶媒を混合する〔5〕記載の方法;〔8〕工程(B)において、さらに、クロロホルムを混合する〔5〕記載の方法;〔9〕工程(B)で得られた混合物が、実質的に水を含まない〔1〕〜〔8〕のいずれか一項記載の方法;〔10〕工程(A)で粉砕される高分子組成物が、その他の高分子フィルムとの積層体を形成している〔1〕〜〔9〕のいずれか一項記載の方法;〔11〕工程(A)の粉砕が、凍結粉砕である〔1〕〜〔10〕のいずれか一項記載の方法。〔12〕工程(A)で粉砕された高分子組成物の累積粒度分布の微粒側からの累積90%の粒径が0.1〜500μmである〔1〕〜〔11〕のいずれか一項記載の方法。 本発明によれば、高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸を選択的に定量できる。 以下、本発明を詳細に説明する。 まず、工程(A)について説明する。工程(A)は、高分子組成物を粉砕する工程である。 高分子組成物(以下、「本高分子組成物」と記載することもある。)は、通常、高分子物質と遊離ホウ酸とを含んでおり、さらに、高分子物質と架橋構造を形成しているホウ酸を含んでいることが好ましい。以下、本高分子組成物中の高分子物質を「本高分子物質」と、本高分子物質と架橋構造を形成しているホウ酸を「架橋ホウ酸」と、それぞれ記載することもある。また、本発明において「遊離ホウ酸」とは、本高分子組成物に含まれるホウ酸のうち、架橋ホウ酸以外のものをいい、通常、高分子物質と反応していない「未反応のホウ酸」である。 高分子物質は、ホモポリマーであってもよいし、主モノマーとは別の共重合可能なモノマーと共重合させた、ランダムコポリマーであっても、ブロックコポリマーであってもよい。官能基が部分的にエステル化されていてもよい。高分子物質のうちホモポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。なかでも水溶性高分子が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、ポリオキシエチレンビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;ビニルエチルカーボネート等のビニルカーボネート;3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジエトキシ−1−ブテン等のジヒドロキシブテン誘導体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩もしくはエステル;イタコン酸またはその塩もしくはエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸などを挙げることができる 本高分子組成物は、板状であることが好ましい。また、板状の本高分子組成物が、その他の高分子フィルムと積層体を形成していてもよい。かかる本高分子組成物と積層体を形成していてもよい高分子フィルムの材料としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの高分子フィルムは、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散を目的とした処理、アンチグレアを目的とした処理等の処理を施したものであってもよい。また、これらの高分子フィルムと本高分子組成物とを含む積層体は、さらにガラス基板や接着層を含んでいてもよい。 本高分子組成物は、市販のものであってもよいし、任意の公知の方法により得たものであってもよい。 本高分子組成物を粉砕する方法としては、例えば、凍結粉砕装置を用いる凍結粉砕や、ボールミル、ミキサーミル、カッティングミル、乳鉢等を用いる粉砕等が挙げられる。なかでも、凍結粉砕が好ましい。凍結温度は、0℃以下で行われることが好ましく、−273℃〜−100℃の範囲がより好ましく、液体窒素温度の−196℃程度がさらに好ましい。最終的に得られる遊離ホウ酸の濃度の値のばらつきを小さくするために、不活性ガス雰囲気下で粉砕を実施することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスが好適に用いられる。冷凍粉砕の場合、窒素ガスを充満させたドライボックスの中で、粉砕容器に本高分子組成物と粉砕用ボールを入れて容器を密閉し、該容器をドライボックスから取り出して大気中で冷凍粉砕装置にセットし、粉砕操作を行った後、粉砕容器を再び窒素ガスを充満させたドライボックスの中で開封することが、作業スペースを広く取りすぎないという観点から好ましい。 かかる粉砕には、本高分子組成物として、上記の積層体をそのまま用いることができる。 かかる粉砕により得られる本高分子組成物の累積粒度分布の微粒側からの累積90%の粒径(以下、「90%D」と記載することもある。)は、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは10〜100μmである。本高分子組成物として、上記の積層体をそのまま用いた場合、該積層体中の本高分子組成物の90%Dが0.1〜500μmの範囲であれば好ましい。 本高分子組成物の90%Dの測定は、通常市販されている粒径測定装置を用いて行うことができる。 次に、工程(B)について説明する。工程(B)は、工程(A)で粉砕された高分子組成物と、遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物とを混合する工程である。 工程(B)に用いる遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物(以下、「本配位性化合物」と記載することもある。)としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の水酸基を2以上有するアルコール化合物;メタノール、サリチル酸、クエン酸等が挙げられる。なかでも、水酸基を2以上有するアルコール化合物が好ましく、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールがより好ましい。 本配位性化合物の使用量は、理論的には遊離ホウ酸1モルに対し、本配位性化合物2モル以上であればよい。遊離ホウ酸の含量が判明していない場合、本高分子組成物1質量部に対し、本配位性化合物を1質量部〜50質量部の範囲で使用することが好ましい。 工程(B)において、さらに、実質的に本高分子物質を溶解しない有機溶媒(以下、「本有機溶媒」と記載することある。)を混合することが好ましい。ここで、「実質的に本高分子物質を溶解しない」とは、有機溶媒が、一般的に不溶と呼ばれる程度にしか本高分子物質を溶解しないという意味を表し、本明細書中の「実質的に溶解しない」は同義である。本有機溶媒として、本配位性化合物を用いることもできる。また、例えば、本高分子物質がポリビニルアルコールである場合、本有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族溶媒や、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素溶媒が好ましく、なかでもクロロホルムがより好ましい。 本有機溶媒を用いる場合、その使用量は、本高分子物質1質量部に対し、10質量部〜500質量部の範囲が好ましい。 本高分子組成物と本配位性化合物との混合方法は、特に限定されない。混合温度の上限は、用いる本配位性化合物及び本有機溶媒のうち沸点が低い方の沸点である。混合温度の下限は、混合物中で本配位性化合物が液体として存在し得る最低温度である。したがって、用いる本配位性化合物、本有機溶媒及びそれらの使用量により混合温度の範囲は異なるが、0℃〜40℃の範囲が好ましい。 工程(B)により得られる混合物は、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで、実質的に水を含まないとは、該混合物中の水分量が通常1%以下、好ましくは0.1%以下であることをいう。該混合物が実質的に水を含まないことにより、遊離ホウ酸を選択的に定量しやすくなる傾向がある。 次に、工程(C)について説明する。工程(C)は、工程(B)で得られた混合物から本高分子物質を除去する工程である。 工程(B)で得られた混合物は、通常、本高分子物質を含む固相と、本配位性化合物と遊離ホウ酸とを含む液相とからなる。この場合、工程(B)で得られた混合物から本高分子物質を除去するとは、上記の固相と液相とを分離して液相を取得する操作をいう。 かかる操作としては、例えば、濾過やデカンテーション等、通常の固液分離操作が挙げられ、濾過が好ましい。濾過に用いるフィルターは、本高分子組成物の粒子を通さない範囲で、特に限定されない。濾過温度は、工程(B)の混合温度に準ずる。濾過により液相を取得した後、フィルター上の固相を本有機溶媒で洗浄してもよい。かかる洗浄により得られる洗浄液は、前記液相とともに次の工程(D)に用いることができる。 最後に、工程(D)について説明する。工程(D)は、工程(C)で本高分子物質が除去された混合物に含まれるホウ酸を定量する工程である。 工程(C)で本高分子物質が除去された混合物としては、前記液相をそのまま工程(D)に供してもよいし、前記液相と前記洗浄液とを混合して工程(D)に供してもよい。 かかる混合物中のホウ酸を定量する方法としては、例えば、メチレンブルー吸光光度法、アゾメチンH吸光光度法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法(以上、JIS K 0102参照)、中和滴定法、クルクミン−シュウ酸法(以上、日本分析化学会編「新実験科学講座9 分析化学」丸善、第1巻(1976)、p.76〜80参照)、蛍光X線分析(例えば、特開2007−334307号公報参照)等を用いる方法が挙げられる。好ましくは、ICP発光分光分析法を用いる方法である。 このようにして工程(D)で定量したホウ酸は、全て本高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸と見なすことができる。したがって、工程(A)〜(D)を実施すれば、本高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸を定量することができる。 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの限定されるものではない。<粒径測定条件1>装置名 :SALD−2000J(株式会社島津製作所製)使用セル :回分セル分散溶媒・分散剤:ヘキサン+10%スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム分散方法 :(スターラー撹拌+超音波照射)1分屈折率 :1.70−0.20i測定開始時間 :回分セル投入直後<粒径測定条件2>装置名 :MT−3300EX II(日機装株式会社製)使用セル :ステンレスセル分散溶媒・分散剤:なし(乾式)屈折率 :1.50測定開始時間 :セル投入直後<ホウ酸の定量条件1>装置名 :ICP発光分析装置 ICPS−8100(株式会社島津製作所製)測定波長 :B 249.773nm検量線作成に用いた標準品:原子吸光分析用:ホウ素標準原液(1000ppm) 関東化学製測定試料:濾液0.6g相当を量り取り、エタノールで10mLに定容した。得られたホウ素含量は全てホウ酸に由来するものと見なし、ホウ酸含量に換算した。<ホウ酸の定量条件2>装置名 :ICP 発光分析装置 SPS5520 (エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)測定波長 :B 249.678nm検量線作成に用いた標準品:溶媒用混合標準液(500ppm)得られたホウ素含量は全てホウ酸に由来するものと見なし、ホウ酸含量に換算した。<測定試料1> 測定試料1として、テレビ、パソコン、携帯電話等の各種液晶表示装置に用いられる偏光子を用いた。前記偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを染色・一軸延伸することにより作製され、ホウ酸を含む水溶液にフィルムを浸漬して延伸を行い、架橋による耐水化処理が行われる。該耐水化処理後には、水洗浄を行う。ポリビニルアルコールの構造式は下式(I)で示される。<測定試料2> 測定試料2として、測定試料1より耐水化処理後の水洗浄を弱くした偏光子を用いた。<測定試料3> 測定試料3として、測定試料2の片面に、予めケン化処理が施されたトリアセチルセルロース製のフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタオプト(株)製、厚み:80μm)を、他方の面には予めコロナ処理が施されたシクロオレフィン系樹脂フィルム(ゼオノアフィルム、(株)オプテス製、厚み:60μm)を、それぞれ接着剤層を介して積層して得られた偏光板を用いた。<測定試料4> 測定試料4として、測定試料1の片面に、予めケン化処理が施されたトリアセチルセルロース製のフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタオプト(株)製、厚み:80μm)を、他方の面には予めケン化処理が施されたトリアセチルセルロース製のフィルム(KC4FR−1、コニカミノルタオプト(株)製、厚み:42μm)を、それぞれ接着剤層を介して積層して得られた偏光板を用いた。<測定試料5> 測定試料5として、測定試料4の片面に、粘着剤層を設けた偏光板を用いた。実施例1 上記測定試料1をハサミで約1cm角に裁断したもの50mgを、鋼球とともに試料容器に充填した。その後、凍結粉砕装置JFC−300(日本分析工業株式会社製)を用い、冷媒としては液体窒素を用いて予冷7分、振動5分の条件で測定試料を凍結粉砕した。粉砕された測定試料を室温にて約30分放置した。得られた粉体の重量は50mgであった。この操作を2回繰り返し、粉砕された測定試料を100mg得た。得られた測定試料の粒径を上記の測定条件1にて求めたところ、90%Dは47.8μmであった。なお、同様に10%D及び50%Dは、それぞれ3.36μm、14.0μmであった(以上、工程(A’))。 得られた100mgの測定試料を、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール/クロロホルム(体積比:10/90)混合溶液3.5mLと混合し、室温で24時間放置した(以上、工程(A))。得られた混合物を、0.2μmのフィルターを用いて濾過した(以上、工程(B))。得られた濾液を、上記ホウ酸の定量条件1により分析した(以上、工程(C))。測定試料中のホウ素含量は0.03質量%であり、ホウ酸含量が0.20質量%であった。 実施例1において、測定試料は混合溶媒中に実質的に溶解しておらず、遊離ホウ酸を選択的に定量できたことが分かる。実施例2 実施例1において、上記測定試料1をハサミで約1cm角に裁断したものに代えて、上記測定試料2をハサミで約2〜5mm角に裁断したものを用いる以外は、実施例1と同様にして凍結粉砕した。得られた測定試料の粒径を上記の測定条件2にて求めたところ、90%Dは26.0μmであった。なお、同様に10%D及び50%Dは、それぞれ1.32μm、5.39μmであった。また、実施例1と同様にして得られた濾液を上記ホウ酸の定量条件2により分析したところ、測定試料中のホウ素含量は0.054質量%であり、ホウ酸含量が0.37質量%であった。 実施例1及び2から、耐水化処理後の水洗浄が測定試料1よりも弱い測定試料2には、遊離ホウ酸がより多く残存していたことが分かる。実施例3 実施例1において、上記測定試料1をハサミで約1cm角に裁断したものに代えて、上記測定試料3をハサミで約2〜5mm角に裁断したものを用いる以外は、実施例1と同様にして凍結粉砕した。得られた測定試料の粒径を上記の測定条件2にて求めたところ、90%Dは269μmであった。なお、同様に10%D及び50%Dは、それぞれ22.6μm、206μmであった。また、実施例1と同様にして得られた濾液を上記ホウ酸の定量条件2により分析したところ、測定試料中のホウ素含量は0.009質量%であり、ホウ酸含量が0.054質量%であった。 実施例3において、測定試料中の偏光子は混合溶媒中に実質的に溶解しておらず、該偏光子に含まれていた遊離ホウ酸を選択的に定量できたことが分かる。実施例4 実施例1において、上記測定試料1をハサミで約1cm角に裁断したものに代えて、上記測定試料4をハサミで約2〜5mm角に裁断したものを用いる以外は、実施例1と同様にして凍結粉砕した。得られた測定試料の粒径を上記の測定条件1にて求めたところ、90%Dは58.5μmであった。なお、同様に10%D及び50%Dは、それぞれ1.32μm、13.2μmであった。また、実施例1と同様にして得られた濾液を上記ホウ酸の定量条件2にて分析したところ、測定試料中のホウ素含量は0.007質量%であり、ホウ酸含量が0.040質量%であった。実施例4において、測定試料中の偏光子は混合溶媒中に実質的に溶解しておらず、該偏光子に含まれていた遊離ホウ酸を選択的に定量できたことが分かる。実施例5 実施例1において、上記測定試料1をハサミで約1cm角に裁断したものに代えて、上記測定試料5をハサミで約2〜5mm角に裁断したものを用いる以外は、実施例1と同様にして凍結粉砕した。実施例1と同様にして得られた濾液を上記ホウ酸の定量条件1により分析したところ、測定試料中のホウ素含量は0.006質量%であり、ホウ酸含量が0.034質量%であった。 実施例5において、測定試料中の偏光子は混合溶媒中に実質的に溶解しておらず、該偏光子に含まれていた遊離ホウ酸を選択的に定量できたことが分かる。参考例1 上記測定試料1をハサミで2mm角に裁断したもの35mgを、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール/クロロホルム(体積比:10/90)混合溶液3.5mLと混合し、室温で168時間放置した。得られた混合物のうち溶液を上記ホウ酸の定量条件1により分析した。測定試料中のホウ素含量は0.01質量%未満(検出下限未満)であった。 参考例1の結果から、測定試料を微粉化(90%Dを0.1〜500μmとすること)しなければ遊離ホウ素が定量できないことが分かる。参考例2 参考例1において、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール/クロロホルム(体積比:10/90)混合溶液に代えて重水を用いる以外は、参考例1と同様にして分析したところ、測定試料中のホウ素含量は1.5質量%であり、ホウ酸含量が8.7質量%であった。参考例3 参考例2において、室温で168時間放置する代わりに80℃で1時間放置した以外は、参考例1と同様にして分析したところ、測定試料中のホウ素含量は3.9質量%であり、ホウ酸含量が22質量%であった。 参考例2及び3において目視で確認したところ、測定試料が一部、重水に溶解してきていることが観測された。即ち、参考例2及び3の結果は、架橋ホウ酸と遊離ホウ酸とを区別せずに測定したものであることが分かる。 本発明によれば、高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸を選択的に定量できる。以下の工程(A)〜(D)を含むことを特徴とする、高分子物質と遊離ホウ酸とを含む高分子組成物中の遊離ホウ酸の定量方法。(A):高分子組成物を粉砕する工程(B):工程(A)で粉砕された高分子組成物と、遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物とを混合する工程(C):工程(B)で得られた混合物から高分子物質を除去する工程(D):工程(C)で高分子物質が除去された混合物に含まれるホウ酸を定量する工程遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物が、水酸基を2以上有するアルコール化合物である請求項1記載の方法。水酸基を2以上有するアルコール化合物が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールである請求項2記載の方法。工程(D)の定量が、ICP発光分光分析を用いる定量である請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。高分子物質が、ポリビニルアルコールである請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。工程(B)において、さらに、実質的に高分子物質を溶解しない有機溶媒を混合する請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。工程(B)において、さらに、芳香族溶媒又はハロゲン化炭化水素溶媒を混合する請求項5記載の方法。工程(B)において、さらに、クロロホルムを混合する請求項5記載の方法。工程(B)で得られた混合物が、実質的に水を含まない請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。工程(A)で粉砕される高分子組成物が、その他の高分子フィルムとの積層体を形成している請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。工程(A)の粉砕が、凍結粉砕である請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。工程(A)で粉砕された高分子組成物の累積粒度分布の微粒側からの累積90%の粒径が0.1〜500μmである請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。 【課題】高分子組成物に含まれる遊離ホウ酸を選択的に定量する方法が求められていた。【解決手段】以下の工程(A)〜(D)を含むことを特徴とする、高分子物質と遊離ホウ酸とを含む高分子組成物中の遊離ホウ酸の定量方法。(A):高分子組成物を粉砕する工程(B):工程(A)で粉砕された高分子組成物と、遊離ホウ酸と錯イオンを形成し得る配位性化合物とを混合する工程(C):工程(B)で得られた混合物から高分子物質を除去する工程(D):工程(C)で高分子物質が除去された混合物に含まれるホウ酸を定量する工程【選択図】なし