タイトル: | 公開特許公報(A)_リン修飾ゼオライト触媒 |
出願番号: | 2011119020 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | B01J 29/40,C07C 1/20,C07C 11/06,C07B 61/00 |
宮崎 洋平 JP 2012245465 公開特許公報(A) 20121213 2011119020 20110527 リン修飾ゼオライト触媒 トヨタ自動車株式会社 000003207 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 島村 直己 100101904 岩崎 正路 100168893 宮崎 洋平 B01J 29/40 20060101AFI20121116BHJP C07C 1/20 20060101ALI20121116BHJP C07C 11/06 20060101ALI20121116BHJP C07B 61/00 20060101ALN20121116BHJP JPB01J29/40 ZC07C1/20C07C11/06C07B61/00 300 5 1 OL 9 4G169 4H006 4H039 4G169AA03 4G169BA07A 4G169BA07B 4G169BA42A 4G169BD07A 4G169BD07B 4G169CB02 4G169DA05 4G169FA01 4G169FB14 4G169ZA11B 4G169ZC08 4G169ZD07 4H006AA02 4H006AC13 4H006AC21 4H006AC29 4H006BA09 4H006BA33 4H006BA35 4H006BA71 4H006BA85 4H006BB61 4H006BC13 4H006BC35 4H006DA70 4H039CA29 4H039CF10 4H039CG10 4H039CL25 本発明はリン修飾ゼオライト触媒及び前記触媒を用いてエタノールをプロピレンに変換する方法に関する。 プロピレンは、アクロレイン、アクリロニトリル、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、クメン、プロピレンオキシド、アリルアルコールなどの合成原料として大量に使用されている。また、プロピレンを重合することにより得られるポリプロピレンは、建築資材や食品容器などの幅広い分野で使用されている。 従来からプロピレンを製造する方法は数多く知られており、触媒を使用してエタノールやエチレンからプロピレンを製造する方法が報告されている。例えば、特許文献1では、希土類元素を含有した結晶性アルミノシリケートを使用して、n−ブタンをエチレン及びプロピレンに変換する方法を開示している。また、特許文献2では、アルカリ土類金属、希土類元素、及びリンを担持した結晶性アルミノシリケートを使用して、n−ヘキサンをエチレン及びプロピレンに変換する方法を開示している。特開平11−253807号公報特開2010−104878号公報 エタノールやエチレンからプロピレンを製造するための触媒は数多く知られているが、プロピレンの生成効率は未だ十分ではない。例えば、特許文献1における、ランタン及びリンを順に担持させたZSM−5型ゼオライト触媒を使用した場合、n−ブタン転化率は93.7%、エチレン収率は28.1%、プロピレン収率は20.9%である(実施例5)。n−ブタンの供給量に対する触媒の量は0.178g・cc−butane/minであり、この値とプロピレン収率から、単位触媒量及び単位時間当たりにプロピレンを生成できる量(STY)は174g−propylene/kg−cat/hとなる。この生成効率では工業的プロセスに利用することは困難である。また、供給ガス中のn−ブタン濃度が13.4%と低いため、反応に無関係なガス成分の分離精製コストが増加してしまう。 また、特許文献2における、マグネシウム又はカルシウムと、ランタンと、リンとを担持させたZSM−5型ゼオライト触媒を使用した場合、n−ヘキサン転化率は約95%、エチレン+プロピレン収率は約55%である(実施例1〜4)。プロピレンのSTYは高く見積もっても1043g−propylene/kg−cat/hにすぎない。また、供給ガス中のn−ヘキサン濃度が27%と低いため、反応に無関係なガス成分の分離精製コストが増加する。 特許文献1及び2のいずれにおいても、原料の供給量に対して触媒量が多く、また、原料以外のガス成分濃度が高い。そのため、前記特許文献に開示されている触媒を工業的に利用することは困難である。また、工業的に利用するためには、原料を高濃度で供給する必要があるが、その場合には一般的に原料転化率が低下してしまう。 そのため、本発明は、高濃度の原料を効率的且つ選択的に変換することができる触媒を提供することを目的とする。 本発明者らが鋭意検討した結果、ゼオライト触媒をリンで修飾し、触媒の酸量を一定の範囲内に調節することによって、上述の課題を解決できることを見出した。 即ち、本発明は以下を包含する。(1)酸量が0.4〜0.7mmol/g−catである、エタノールをプロピレンに変換するためのリン修飾ゼオライト触媒。(2)酸量が0.45〜0.65mmol/g−catである、(1)に記載のリン修飾ゼオライト触媒。(3)酸量が0.6〜0.65mmol/g−catである、(2)に記載のリン修飾ゼオライト触媒。(4)エタノールを(1)〜(3)のいずれかに記載のリン修飾ゼオライト触媒に接触させることを含む、プロピレンの製造方法。(5)エタノールがエタノール濃度90%以上の混合ガスとして供給される、(4)に記載の方法。 本発明によれば、原料のエタノールを効率的且つ選択的にプロピレンに変換することができる。酸量とプロピレン収率との関係を示す。 以下、本発明を詳細に説明する。1.リン修飾ゼオライト触媒 本発明において「リン修飾ゼオライト触媒」とは、リンで修飾したゼオライト触媒である。 リンで修飾する前のゼオライト触媒としては特に限定されず、一般的なゼオライト触媒を使用することができる。例えば、MFI型ゼオライト触媒、MEL型ゼオライト触媒、FER型ゼオライト触媒、MOR型ゼオライト触媒、CHA型ゼオライト触媒、TON型ゼオライト触媒などを挙げることができる。特に限定するものではないが、MFI型ゼオライト触媒を使用することが好ましく、ZSM−5型ゼオライト触媒を使用することが特に好ましい。 ゼオライト触媒におけるSiとAlとの比率は特に限定されないが、触媒の活性を維持する観点などから、SiO2/Al2O3(モル比)が20〜1000であることが好ましく、30〜400であることが特に好ましい。SiO2/Al2O3(モル比)は公知の方法を使用して測定することができる。例えば、ゼオライト触媒をアルカリ水溶液に溶解し、プラズマ発光分光分析法により分析する方法などを挙げることができる。 ゼオライト触媒の細孔径は特に限定されないが、反応性やプロピレン選択性を向上させる観点から0.2〜1.2nmであることが好ましく、0.3〜0.7nmであることが特に好ましい。 ゼオライト触媒をリンで修飾するために使用するリン化合物は、リンを含むものであれば特に限定されず、無機リン化合物及び有機リン化合物のいずれも使用することができる。特に、無機リン酸塩が好ましく、例えば、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸3アンモニウム、第一リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、ピロリン水素ナトリウム、ピロリン酸水素カリウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸アンモニウムなどを挙げることができる。リン化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 本発明において「修飾」とは、リンをゼオライト触媒の表面に担持させることや、リンをゼオライト触媒の細孔中に含有させることなどを意味するものであって、ゼオライト骨格中にリンを組み込ませることを意味するわけではない。リンとゼオライト触媒とは単に接触していてもよいし、化学的な結合を形成していてもよい。リンをゼオライト触媒に修飾する方法としては特に限定されず、イオン交換法、含浸法、水熱合成法などの公知の様々な方法を挙げることができる。例えば、リン化合物の水溶液とゼオライト触媒とを混合した後に水を蒸発させることによってゼオライト触媒をリンで修飾することができる。 ゼオライト触媒をリンで修飾することによって触媒の酸量を調節することができる。ゼオライト触媒の酸量はリンの修飾量が増加するにつれて低下する。本発明のリン修飾ゼオライト触媒の酸量は0.4〜0.7mmol/g−catであり、好ましくは0.45〜0.65mmol/g−cat、特に好ましくは0.6〜0.65mmol/g−catである。ゼオライト触媒がリンで修飾されており、且つ上記範囲内の酸量を有することによって、エタノールを効率的且つ選択的にプロピレンに変換することが可能となる。 酸量の測定方法としては公知の様々な方法を使用することができるが、本発明においてはアンモニア昇温脱離法(NH3−TPD)により測定する。NH3−TPDにおける測定条件は以下の実施例に記載する条件を採用する。2.プロピレンの製造方法 本発明は、エタノールをリン修飾ゼオライト触媒に接触させることによって、プロピレンを製造する方法にも関する。 エタノールはそのまま供給してもよいし、希釈ガスとの混合ガスとして供給してもよい。希釈ガスとしてはエタノールが気体で存在する条件下において気体で存在し、エタノールからプロピレンへの変換に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。例えば、不活性ガスの窒素やアルゴンなどを使用することができる。しかしながら、工業的に利用するためにはエタノールを高濃度で使用することが好ましい。例えば、エタノール濃度(モル比)が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。 エタノールの供給速度は使用する触媒の活性に基づいて決定することができる。本発明のリン修飾ゼオライト触媒は効率的にエタノールをプロピレンに変換することができるため、エタノールと触媒との接触時間(W/F)を、例えば、0.01〜10g−cat・h・mol−1とすることができ、好ましくは0.05〜5g−cat・h・mol−1とすることができ、特に好ましくは0.1〜1g−cat・h・mol−1とすることができる。 反応温度は、エタノールが効率的且つ選択的にプロピレンに変換されれば特に限定されないが、例えば、300〜700℃が好ましく、400〜600℃が特に好ましい。 エタノールからプロピレンへの変換は生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析することにより確認することができる。 以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。実施例1 0.056gのリン酸水素2アンモニウム(ナカライテスク製、99%)を20mlの水に溶解した。5gのNH4−ZSM−5型ゼオライト触媒(東ソー製、SiO2/Al2O3モル比 40)を前記水溶液に添加し、80℃で1時間攪拌した。その後、1時間かけて水を蒸発させ、105℃で6時間乾燥し、リン修飾ゼオライト触媒を得た。 酸量評価 日本ベル社製のBELCAT−Aを用い、前記触媒のNH3昇温脱離挙動(NH3−TPD)を測定した。1)触媒をHe気流中、550℃で30分間焼成後、100℃に降温;2)1%NH3と99%Heの混合ガスを100ml/minの流速で10分間、触媒に供給;3)水蒸気をHeガスバブリングにより60分間供給し、酸点以外に吸着したNH3を除去;4)Heガスを100ml/minで30分間パージ;5)100℃から600℃まで10℃/minで昇温。 5)の昇温中に発生したガスを四重極型質量分析計で分析した。酸量は昇温脱離ガス分析開始時点の点と昇温完了時点の点を結んだ線より上のピーク面積で求めた。 エタノール変換活性評価 固定床の流通型反応装置を用い、前記触媒のエタノール接触分解反応を測定した。気化エタノール+窒素混合ガス(EtOH:N2=50:50)の全流量(278ml)を、W/Fが0.67g−cat・h・mol−1となるように、0.5gの触媒に500℃で接触させた。生成したガスをガスクロマトグラフィーで分析した。実施例2 リン酸水素2アンモニウムを0.138g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例3 リン酸水素2アンモニウムを0.2165g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例4 リン酸水素2アンモニウムを0.275g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例5 リン酸水素2アンモニウムを0.407g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。比較例1 触媒をリンで修飾しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例6 エタノール変換活性評価において、気化エタノール+窒素混合ガスの比率をEtOH:N2=95:5とした以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例7 エタノール変換活性評価において、気化エタノール+窒素混合ガスの比率をEtOH:N2=95:5とした以外は実施例2と同様の操作を行った。実施例8 エタノール変換活性評価において、気化エタノール+窒素混合ガスの比率をEtOH:N2=95:5とした以外は実施例3と同様の操作を行った。実施例9 エタノール変換活性評価において、気化エタノール+窒素混合ガスの比率をEtOH:N2=95:5とした以外は実施例4と同様の操作を行った。実施例10 エタノール変換活性評価において、気化エタノール+窒素混合ガスの比率をEtOH:N2=95:5とした以外は実施例5と同様の操作を行った。比較例2 エタノール変換活性評価において、気化エタノール+窒素混合ガスの比率をEtOH:N2=95:5とした以外は比較例1と同様の操作を行った。 実施例1〜5で得られたリン修飾ゼオライト触媒、及び比較例1のゼオライト触媒の酸量を表1に示す(実施例6〜10及び比較例2における酸量は、それぞれ実施例1〜5及び比較例1における酸量と同一である)。 実施例1〜5及び比較例1で分析した各生成ガスの炭素収率を表2に示し、実施例6〜10及び比較例2で分析した各生成ガスの炭素収率を表3に示す。また、各実施例及び各比較例における酸量とプロピレン収率との関係を図1に示す。 炭素収率は以下の式により算出した。 炭素収率(%)=[生成ガスのモル数×各成分1モル当たりの炭素数/(供給エタノールのモル数×2)]×100 各実施例及び各比較例におけるSTYを表4に示す。 ゼオライト触媒をリンで修飾し、酸量を一定範囲内に調節することによって、リンで修飾されていないゼオライト触媒と比較して、大幅にSTYが改善された。特に、実施例6におけるエタノール濃度が95%である場合には9618g−propylene/kg−cat/hの非常に高いSTYが得られた。 酸量が0.4〜0.7mmol/g−catである、エタノールをプロピレンに変換するためのリン修飾ゼオライト触媒。 酸量が0.45〜0.65mmol/g−catである、請求項1に記載のリン修飾ゼオライト触媒。 酸量が0.6〜0.65mmol/g−catである、請求項2に記載のリン修飾ゼオライト触媒。 エタノールを請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン修飾ゼオライト触媒に接触させることを含む、プロピレンの製造方法。 エタノールがエタノール濃度90%以上の混合ガスとして供給される、請求項4に記載の方法。 【課題】エタノールを効率的且つ選択的にプロピレンに変換することができる触媒を提供する。【解決手段】酸量が0.4〜0.7mmol/g−catであるリン修飾ゼオライト触媒により上記課題を達成することができる。リンで修飾する前のゼオライト触媒は、特に限定されず、一般的なゼオライトを使用することができる。特に限定するものではないが、MFI型ゼオライト触媒を使用することが好ましく、ZSM−5型ゼオライト触媒を使用することが特に好ましい。【選択図】図1