生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_眼科用剤
出願番号:2011105016
年次:2011
IPC分類:A61K 31/5377,A61K 47/36,A61K 47/38,A61K 47/34,A61K 9/06


特許情報キャッシュ

島谷 隆夫 老田 一志 荒木 貴司 JP 2011256163 公開特許公報(A) 20111222 2011105016 20110510 眼科用剤 テイカ製薬株式会社 390031093 岩谷 龍 100077012 島谷 隆夫 老田 一志 荒木 貴司 JP 2010110573 20100512 A61K 31/5377 20060101AFI20111125BHJP A61K 47/36 20060101ALI20111125BHJP A61K 47/38 20060101ALI20111125BHJP A61K 47/34 20060101ALI20111125BHJP A61K 9/06 20060101ALI20111125BHJP JPA61K31/5377A61K47/36A61K47/38A61K47/34A61K9/06 6 OL 16 4C076 4C086 4C076AA09 4C076BB24 4C076CC10 4C076DD09F 4C076EE30P 4C076EE32P 4C076EE36P 4C076FF34 4C076FF67 4C086AA10 4C086BC85 4C086GA10 4C086GA12 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA28 4C086MA58 4C086NA06 4C086NA10 4C086NA11 4C086ZA33 本発明は、眼科用剤に関する。 緑内障とは、その眼が耐え得る以上の眼内圧上昇によって視機能が障害を受ける難治性の疾患であり、その治療法としては主に薬物によるものと、手術によるものとがある。また、高眼圧症とは、正常値を超える高眼圧が認められるものの、視野異常を伴わない病態をいい、長期的には緑内障に発展する可能性が高いとされているものである。高眼圧症の治療法として、薬物治療を行うことが一般的に推奨されている。 これらの疾患における薬物治療としては、αβ遮断薬、α遮断薬、β遮断薬、プロスタグランジン系薬等を配合する点眼薬を用いる方法が一般的で、近年、これらの薬物の中でも、プロスタグランジン系薬が主流ではあるが、β遮断薬であるチモロールマレイン酸塩も、高い有効性の面から、広く治療に用いられている。 このチモロールマレイン酸塩点眼剤は、過去には1日2回の投与が必要であったが、ジェランガム、メチルセルロース等の、眼内でゲル化するゲル化剤を添加するという製剤的な工夫により、1日1回型の同成分の徐放型点眼剤が提供されている。例えば日本では、「リズモンTG点眼液」(商品名、わかもと製薬)、「チモプトール(登録商標)XE点眼液」(商品名、万有製薬)が市販されている。 これらのチモロール徐放型製剤では、先述のとおり、眼内で薬液がゲル化する技術を用いているが、ゲル化によって霧視が発生するという問題点があった。 例えば、チモプトール(登録商標)XE(商品名、万有製薬)の添付文書には「点眼直後、製剤の特徴として眼の表面で涙液と接触することにより点眼液がゲル化するため、霧視又はべたつきが数分間持続することがあるので、このことを患者に十分説明し、注意させること。」との記載がある。 この霧視を防止するためにはゲル強度を低くすれば良いが、一般に、ゲル強度は、眼内組織への有効成分の移行性に大きな影響を与える(例えば、特許文献1)ため、霧視の発生を回避しつつ、充分な眼組織内への成分移行性を得ることは困難であった。特許第3725783号 本発明は、上記現状に鑑み、点眼時の霧視の発生が抑制され、しかも有効成分であるチモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性(移行率)が高い眼科用剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題、すなわち点眼時の霧視の発生を回避又は軽減しつつ、チモロールマレイン酸塩(以下、「有効成分」と記載することがある)を充分に眼組織内に移行させる(有効成分の眼組織内への移行性(移行率)を高くする)という両立しがたい両要素を満足させるために鋭意検討し、予想外にも、眼科用剤においてゲル化剤及び非イオン界面活性剤をチモロールマレイン酸塩と共に配合すると、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性が相乗的又は相加的に高められるため、点眼時の霧視を軽減しつつ有効成分を高い濃度で眼組織内に移行させることができることを見出した。この高い有効成分眼内移行性によって、従来得られなかった高い眼圧降下作用が得られ、しかも、薬効を持続させることができるため、種々のチモロールマレイン酸塩含有点眼剤を提供することができる。具体的には、例えば、薬理作用を優先するのであれば、多少の霧視が発生しても高粘度ゲル化剤を用いて、その薬効を既存製剤に比べ大幅に高めることができる。また、例えば、使用時の快適性を優先するのであれば、低粘度ゲル化剤を用いて、患者の負担となる点眼時の霧視の発生を抑えつつ、治療に有効な薬効を得ることができる。 本発明者らはさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、以下の(1)〜(6)に関する。(1)チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であって、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする眼科用剤。(2)ゲル化剤が、ジェランガム、アルギン酸、及びヒプロメロースから選択される少なくとも1種である前記(1)に記載の眼科用剤。(3)非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載の眼科用剤。(4)チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の眼科用剤。(5)(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することにより、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする前記(1)に記載の眼科用剤。(6)チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤に、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性を高める方法。 本発明によれば、点眼時の霧視の発生が抑制され、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性が相乗的又は相加的に高められた眼科用剤を得ることができる。また、高い有効成分眼内移行性によって、従来得られなかった高い眼圧降下作用が得られ、しかも、薬効を持続させることができるため、目的に応じた種々のチモロールマレイン酸塩含有点眼剤を提供することができる。 本発明の眼科用剤は、チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であり、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有するものである。 本発明の眼科用剤は、通常、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたものである。具体的には、房水、角膜、虹彩・毛様体等の眼組織へのチモロールマレイン酸塩の移行性が高められたものであることが好ましい。 さらに、チモロールマレイン酸塩以外の有効成分を含有する場合には、他の有効成分の眼組織内移行にも影響を与えるおそれがあるため、他の有効成分の眼組織内移行を確認していない場合等には、チモロールマレイン酸塩を唯一の有効成分として含有する眼科用剤であることが好ましい。 本発明の眼科用剤は、(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することにより、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたものであることが好ましい。 本発明において、ゲル化剤として任意のものが使用でき、具体的には、ジェランガム、アルギン酸又はその塩、ヒプロメロース、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ペクチン、ゼラチン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。中でも、投与前の製剤中ではゲル化せず、投与時の条件変化によって眼内でゲル化する成分であることが、投与時の容器押圧力が小さいため好ましい。具体的には、ジェランガム、アルギン酸、ヒプロメロース等が好ましく、中でも、ジェランガム、アルギン酸等がより好ましく、特にジェランガムが好ましい。 ゲル化剤には、上記の化合物の1種又は2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。ゲル化剤の配合量は、成分により適宜選択することができるが、眼科用剤中に通常0.001〜10w/v%であり、好ましくは0.01〜5w/v%であり、より好ましくは0.1〜3w/v%である。 ゲル化剤の配合量が上記範囲内であると、良好なゲル化性能を発揮することができるため、眼科用剤が良好な徐放性能を有するものとなる。また、上記範囲内であると、患者の負担となる点眼時の霧視の発生を効果的に抑制することができるため、眼科用剤投与時の使用感が快適なものとなる。 本発明において、非イオン界面活性剤として任意のものが使用でき、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート(ポリソルベート60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート(ポリソルベート80)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF68)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックP123)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(プルロニックP85)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックF127)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(プルロニックL−44)などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。中でも、特にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が好ましく、さらに、中でもポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40等がより好ましく、特にポリソルベート80が最も好ましい。 非イオン界面活性剤として、上記の化合物の1種又は2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。非イオン界面活性剤の配合量は、眼科用剤中に通常0.001〜10w/v%であり、好ましくは0.005〜5w/v%であり、より好ましくは0.01〜0.5w/v%である。 非イオン界面活性剤の配合量が上記範囲内であると、充分な有効成分の眼組織内移行性が得られるため好ましい。さらに、上記範囲内であると、眼刺激性が少なく、細胞毒性等も少ないことから好ましい。 本発明における上記(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤の組み合わせは、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されないが、例えば、(A)ゲル化剤としてジェランガムを用いる場合には、(B)非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等を用いることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80等が好ましい。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が好ましく、中でも、ステアリン酸ポリオキシル40等がより好ましい。 また、例えば(A)ゲル化剤としてアルギン酸を用いる場合には、(B)非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を用いることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80等がより好ましい。 本発明の眼科用剤には、上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で、他の薬物、薬学上許容される各種添加剤(安定化剤、pH調整剤・緩衝剤、防腐剤、溶解補助剤、酸化防止剤、溶剤、可溶化剤、懸濁剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、緩衝剤等)等を添加することができる。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。 本発明の眼科用剤は常法により調製でき、その方法は特に制限されない。例えば、各成分を規定量以下の精製水にて混合及び撹拌し、その後精製水で規定量に容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理等を行なうことにより得られる。本発明の眼科用剤は、点眼に通常使用されるpH範囲内に調整して用いることが好ましく、通常pHは5〜9であり、好ましくは6〜8である。 本発明の眼科用剤は、眼局所投与用の形態で用いられることが好ましく、具体的には、点眼剤、軟膏剤などが挙げられる。 本発明の眼科用剤における有効成分であるチモロールマレイン酸塩の配合量は特に限定されないが、通常眼科用剤中にチモロールとして0.01〜5w/v%であり、好ましくは0.1〜1w/v%である。また、本発明の眼科用剤の投与量及び投与回数は、投与対象の年齢、体重、投与形態等により異なるが、成人に対し点眼剤として使用する場合には、通常1日あたり数回、好ましくは1〜6回、通常1回あたり数滴、好ましくは1〜3滴投与する。 本発明の眼科用剤の投与対象としては、緑内障や高眼圧症を発症した又は発症する可能性がある哺乳動物が好ましく、中でも、ヒトがより好ましい。 眼科用剤において、チモロールマレイン酸塩と共に(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性を向上させることができる。また、点眼時の霧視の発生を抑制することもできる。 チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤に、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性を高める方法も、本発明に包含される。 本発明の方法における(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤、並びにその好ましい態様は、上述した眼科用剤におけるものと同様である。チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性が高められることにより、チモロールマレイン酸の眼圧降下作用等の薬効が効率よく発揮される。また、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性が高くなることで、薬効の持続性が向上するという効果も得られる。本発明の方法は、房水、角膜、虹彩・毛様体等の眼組織内へのチモロールマレイン酸塩の移行性を高めるために好適に使用される。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。実施例1 ジェランガム及びD−マンニトールを、加温した約60mLの精製水に溶解し、冷却した後、さらにチモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを加え、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びポリソルベート80を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、眼科用剤を調製した。眼科用剤中の各成分の配合量は、各成分が表1に示す濃度(w/v%)となるようにした。実施例2及び比較例1〜2 実施例2及び比較例1〜2についても、添加しない成分を除き、表1に示す処方にて、実施例1と同様の手順で調製した。 なお、表1中の各成分の配合量の単位は、w/v%である。比較例3〜4 D−マンニトール、チモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを約60mLの精製水に溶解させた後、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びポリソルベート80を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、表1に示す処方の眼科用剤を調製した。比較例4についても添加しない成分を除き、表1に示す処方にて、比較例3と同様に調製した。 実施例及び比較例で調製した各眼科溶剤のpH及び浸透圧比は、それぞれ「pH METER F-52」(製品名、堀場製作所社製)及び「Model 3250 Osmometer」(製品名、アドバンス社製)により測定したものである。実施例3 ジェランガム及びD−マンニトールを、加温した約60mLの精製水に溶解し、冷却した後、さらにチモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを加え、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びステアリン酸ポリオキシル40を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、眼科用剤を調製した。眼科用剤中の各成分の配合量は、各成分が表2に示す濃度(w/v%)となるようにした。比較例5 D−マンニトール、チモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを約60mLの精製水に溶解させた後、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びステアリン酸ポリオキシル40を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、表2に示す処方の眼科用剤を調製した。 なお、表2中の各成分の配合量の単位は、w/v%である。実施例4 約60mLの精製水に、アルギン酸、塩化ナトリウム、チモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを加え、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びポリソルベート80を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、眼科用剤を調製した。眼科用剤中の各成分の配合量は、各成分が表3に示す濃度(w/v%)となるようにした。比較例6 比較例6についても、添加しない成分を除き、表3に示す処方にて、実施例4と同様の手順で眼科用剤を調製した。 なお、表3中の各成分の配合量の単位は、w/v%である。参考例1 参考製剤1として、チモロールマレイン酸塩(0.5w/v%)を有効成分とする市販の製剤(商品名チモプトール(登録商標)点眼液、参天製薬)を使用した。チモプトール(登録商標)点眼液は、添加物としてベンザルコニウム塩化物液(防腐剤)、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物(緩衝剤)、水酸化ナトリウム(pH調整剤)を含有するものである。チモプトール(登録商標)点眼液のpHは7.0であった。参考例2 参考製剤2として、チモロールマレイン酸塩(0.5w/v%)を有効成分とする市販の製剤(商品名チモプトール(登録商標)XE点眼液、万有製薬)を使用した。チモプトール(登録商標)XE点眼液は、添加物としてジェランガム(ゲル化剤)、トロメタモール(緩衝剤)、ベンゾドデシニウム臭化物(保存剤)、D−マンニトール(等張化剤)を含有するものである。チモプトール(登録商標)EX点眼液のpHは7.0であった。試験例1有効成分組織内濃度測定試験 実施例1〜2及び比較例1〜4でそれぞれ調製した製剤、並びに参考例1〜2の製剤それぞれを動物に点眼投与し、房水、角膜、虹彩・毛様体の各組織における、有効成分組織内濃度を測定した。詳細な手順は以下のとおりである。1.試験手順 家兎(雄性日本白色種、2kg〜3kg)に実施例、比較例及び参考例の各製剤(0.5%チモロール点眼液)50μLを両眼に点眼投与し(各2眼×3匹:n=6)、30秒間強制的に閉眼させた。点眼2時間後にペントバルビタールナトリウムにより麻酔死させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗浄後、房水、角膜及び虹彩・毛様体を採取した。各組織は分析時まで−20℃で凍結保存した。2.定量手順(房水) 採取した房水100μLを正確に量り、移動相100μLを正確に加えて混合した後、4℃以下に保存しながら、14800rpmで10分間遠心分離し、上澄液を試料溶液とした。また、試料溶液は、測定する直前まで4℃以下で保存した。試験条件検出器:紫外吸光光度計(測定波長:294nm)カラム:内径3.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。カラム温度:40℃付近の一定温度移動相:ラウリル硫酸ナトリウム1gを水600mLに溶かし、アセトニトリル400mL及びリン酸1mLを加えた。流量:チモロールの保持時間が約10分になるように調整した。(角膜、及び虹彩・毛様体) 採取した角膜又は虹彩・毛様体1個をとり、鋏で細かく切断し、0.1mol/L塩酸含エタノール3mLを正確に加えた後、氷冷下で1分間ホモジナイズし、4℃以下に保存しながら、2500rpmで10分間遠心分離した。上澄液2.5mLを正確に量り、減圧下で濃縮乾固した後、残留物に水0.25mLを正確に加えて溶かし、4℃以下に保存しながら、14800rpmで10分間遠心分離した。更に、上澄液を分画分子量10,000のフィルターを用いて、14800rpmで30分間遠心分離した後、ろ液を試料溶液とした。また、試料溶液は、測定する直前まで4℃以下で保存した。試験条件検出器:紫外吸光光度計(測定波長:294nm)カラム:内径3.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。カラム温度:40℃付近の一定温度移動相:ラウリル硫酸ナトリウム1gを水600mLに溶かし、アセトニトリル400mL及びリン酸1mLを加えた。流量:チモロールの保持時間が約10分になるように調整した。 本試験の結果(製剤投与後2時間時点における房水中、角膜中及び虹彩・毛様体中のチモロール濃度)を、表4及び表5に示す。表4及び表5に示す数値は、平均値(n=6)である。 また、表4と同一データについて、界面活性剤の配合有無、及びゲル化剤の配合有無の観点から並び替えたものを表6、8及び10に示す。また、各成分の添加効果、併用時の効果、及び併用時の相乗効果率を表7、9及び11に示す。表7、9及び11に示される各成分の添加効果及び併用時の効果は、製剤投与後2時間の時点での各眼組織中のチモロール濃度から計算した。 なお、相乗効果率は、下式により計算される。相乗効果率=併用時効果/(非イオン界面活性剤による効果+ゲル化剤による効果) 表6は、製剤投与後2時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)である。表7は、房水へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後2時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表8は、製剤投与後2時間の時点での角膜中のチモロール濃度(μg/g)である。表9は、角膜へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後2時間の時点での角膜中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表10は、製剤投与後2時間の時点での虹彩・毛様体中のチモロール濃度(μg/g)である。表11は、虹彩・毛様体へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後2時間の時点での虹彩・毛様体中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表6〜11中のジェランガム濃度(%)は、w/v%を意味する。 例えば、表7を例に挙げて説明すると、ジェランガム及びポリソルベートを含有しない眼科用剤(比較例4)にポリソルベート80を添加すると(比較例3)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.18μg/g増加した(ポリソルベート80添加による効果)。また、比較例4の眼科用剤を用いた場合の房水中チモロール濃度を100%とすると、ポリソルベート80を添加した眼科用剤(比較例3)を用いた場合の房水中チモロール濃度は、142%であった。また、比較例4の眼科用剤にジェランガムを0.6w/v%添加すると(比較例1)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が1.34μg/g増加した(ジェランガム添加による効果)。さらに、比較例4の眼科用剤にポリソルベート80及ジェランガム0.6w/v%を添加すると(実施例1)、これらを添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が4.05μg/g増加した(併用時効果)。試験例2有効成分組織内濃度測定試験1.試験手順 家兎(雄性日本白色種、2kg〜3kg)に実施例3、並びに比較例2、4及び5でそれぞれ調製した各製剤(0.5%チモロール点眼液)50μLを両眼に点眼投与し(各2眼×3匹:n=6)、30秒間強制的に閉眼させた。点眼1時間後にペントバルビタールナトリウムにより麻酔死させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗浄後、房水を採取した。各組織は分析時まで−20℃で凍結保存した。2.定量手順 試験例1と同様の方法で、房水における、有効成分組織内濃度を測定した。 本試験の結果(製剤投与後1時間時点における房水中のチモロール濃度(μg/g))を、表12に示す。表12に示す数値は、平均値(n=6)である。 また、表12と同一データについて、界面活性剤の配合有無、及びゲル化剤の配合有無の観点から並び替えたものを表13に示す。表14は、房水へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果である。 表14から、比較例4の眼科用剤にステアリン酸ポリオキシル40を添加すると(比較例5)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.53μg/g増加した(ステアリン酸ポリオキシル40添加による効果)。また、比較例4の眼科用剤にジェランガムを添加すると(比較例2)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.45μg/g増加した(ジェランガム添加による効果)。さらに、比較例4の眼科用剤にステアリン酸ポリオキシル40及ジェランガムを添加すると(実施例3)、これらを添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.62μg/g増加した(併用時効果)。試験例3有効成分組織内濃度測定試験1.試験手順 家兎(雄性日本白色種、2kg〜3kg)に実施例4、並びに比較例3〜4及び6でそれぞれ調製した各製剤(0.5%チモロール点眼液)50μLを両眼に点眼投与し(各2眼×3匹:n=6)、30秒間強制的に閉眼させた。点眼1時間後にペントバルビタールナトリウムにより麻酔死させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗浄後、房水及び角膜を採取した。各組織は分析時まで−20℃で凍結保存した。2.定量手順 試験例1と同様の方法で、房水、角膜の各組織における、有効成分組織内濃度を測定した。 本試験の結果(製剤投与後1時間時点における房水中、及び角膜中のチモロール濃度(μg/g))を、表15に示す。表15に示す数値は、平均値(n=6)である。 また、表15と同一データについて、界面活性剤の配合有無、及びゲル化剤の配合有無の観点から並び替えたものを表16及び表18に示す。 表16は、製剤投与後1時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)である。表17は、房水へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後1時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表18は、製剤投与後1時間の時点での角膜中のチモロール濃度(μg/g)である。表19は、角膜へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果である。 上記結果から、チモロールマレイン酸塩を含む眼科用剤に非イオン界面活性剤を配合した場合、及びゲル化剤を配合した場合と比較して、チモロールマレイン酸塩と共に非イオン界面活性剤及びゲル化剤を配合すると、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性が相加的、又は相乗的に高くなった。その結果、例えば、ジェランガムを0.3w/v%しか配合しない実施例2の組織内濃度は、ジェランガムを0.6w/v%配合した比較例1のそれに匹敵するほどの値であった。また、例えば実施例1及び2の眼科用剤を使用した場合のチモロールマレイン酸塩の組織内濃度は、参考例の市販製剤1及び2と比較して、同等〜約8倍と著しく高く、本製剤を患者に投与すれば、より強い眼圧降下作用が期待される。また、本願発明によれば、高い組織内移行性を得ることが可能であるから、仮に、薬効を参考例の市販製剤1及び2と同等とする場合には、市販製剤よりも、大幅にゲル化剤の配合量を減らすことが可能であり、ゲル化剤配合の副作用による霧視が軽減できる効果がある。 本発明は、医療分野、製薬分野等において有用である。 チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であって、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする眼科用剤。 ゲル化剤が、ジェランガム、アルギン酸及びヒプロメロースから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の眼科用剤。 非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の眼科用剤。 チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼科用剤。 (A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することにより、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする請求項1に記載の眼科用剤。 チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤に、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性を高める方法。 【課題】点眼時の霧視の発生が抑制され、しかも有効成分であるチモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性(移行率)が高い眼科用剤を提供する。【解決手段】チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であって、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする眼科用剤。ゲル化剤はジェランガム、アルギン酸及びヒプロメロースから好ましくは選択され、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から好ましくは選択される。【選択図】なし


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特許公報(B2)_眼科用剤

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_眼科用剤
出願番号:2011105016
年次:2015
IPC分類:A61K 31/5377,A61K 47/36,A61K 47/38,A61K 47/34,A61K 9/06


特許情報キャッシュ

島谷 隆夫 老田 一志 荒木 貴司 JP 5713791 特許公報(B2) 20150320 2011105016 20110510 眼科用剤 テイカ製薬株式会社 390031093 岩谷 龍 100077012 島谷 隆夫 老田 一志 荒木 貴司 JP 2010110573 20100512 20150507 A61K 31/5377 20060101AFI20150416BHJP A61K 47/36 20060101ALI20150416BHJP A61K 47/38 20060101ALI20150416BHJP A61K 47/34 20060101ALI20150416BHJP A61K 9/06 20060101ALI20150416BHJP JPA61K31/5377A61K47/36A61K47/38A61K47/34A61K9/06 A61K 31/5377 A61K 9/06 A61K 47/34 A61K 47/36 A61K 47/38 特表2002−510654(JP,A) 特開2010−090052(JP,A) 特公平06−067853(JP,B2) 5 2011256163 20111222 15 20131122 近藤 政克 本発明は、眼科用剤に関する。 緑内障とは、その眼が耐え得る以上の眼内圧上昇によって視機能が障害を受ける難治性の疾患であり、その治療法としては主に薬物によるものと、手術によるものとがある。また、高眼圧症とは、正常値を超える高眼圧が認められるものの、視野異常を伴わない病態をいい、長期的には緑内障に発展する可能性が高いとされているものである。高眼圧症の治療法として、薬物治療を行うことが一般的に推奨されている。 これらの疾患における薬物治療としては、αβ遮断薬、α遮断薬、β遮断薬、プロスタグランジン系薬等を配合する点眼薬を用いる方法が一般的で、近年、これらの薬物の中でも、プロスタグランジン系薬が主流ではあるが、β遮断薬であるチモロールマレイン酸塩も、高い有効性の面から、広く治療に用いられている。 このチモロールマレイン酸塩点眼剤は、過去には1日2回の投与が必要であったが、ジェランガム、メチルセルロース等の、眼内でゲル化するゲル化剤を添加するという製剤的な工夫により、1日1回型の同成分の徐放型点眼剤が提供されている。例えば日本では、「リズモンTG点眼液」(商品名、わかもと製薬)、「チモプトール(登録商標)XE点眼液」(商品名、万有製薬)が市販されている。 これらのチモロール徐放型製剤では、先述のとおり、眼内で薬液がゲル化する技術を用いているが、ゲル化によって霧視が発生するという問題点があった。 例えば、チモプトール(登録商標)XE(商品名、万有製薬)の添付文書には「点眼直後、製剤の特徴として眼の表面で涙液と接触することにより点眼液がゲル化するため、霧視又はべたつきが数分間持続することがあるので、このことを患者に十分説明し、注意させること。」との記載がある。 この霧視を防止するためにはゲル強度を低くすれば良いが、一般に、ゲル強度は、眼内組織への有効成分の移行性に大きな影響を与える(例えば、特許文献1)ため、霧視の発生を回避しつつ、充分な眼組織内への成分移行性を得ることは困難であった。特許第3725783号 本発明は、上記現状に鑑み、点眼時の霧視の発生が抑制され、しかも有効成分であるチモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性(移行率)が高い眼科用剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題、すなわち点眼時の霧視の発生を回避又は軽減しつつ、チモロールマレイン酸塩(以下、「有効成分」と記載することがある)を充分に眼組織内に移行させる(有効成分の眼組織内への移行性(移行率)を高くする)という両立しがたい両要素を満足させるために鋭意検討し、予想外にも、眼科用剤においてゲル化剤及び非イオン界面活性剤をチモロールマレイン酸塩と共に配合すると、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性が相乗的又は相加的に高められるため、点眼時の霧視を軽減しつつ有効成分を高い濃度で眼組織内に移行させることができることを見出した。この高い有効成分眼内移行性によって、従来得られなかった高い眼圧降下作用が得られ、しかも、薬効を持続させることができるため、種々のチモロールマレイン酸塩含有点眼剤を提供することができる。具体的には、例えば、薬理作用を優先するのであれば、多少の霧視が発生しても高粘度ゲル化剤を用いて、その薬効を既存製剤に比べ大幅に高めることができる。また、例えば、使用時の快適性を優先するのであれば、低粘度ゲル化剤を用いて、患者の負担となる点眼時の霧視の発生を抑えつつ、治療に有効な薬効を得ることができる。 本発明者らはさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、以下の(1)〜(6)に関する。(1)チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であって、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする眼科用剤。(2)ゲル化剤が、ジェランガム、アルギン酸、及びヒプロメロースから選択される少なくとも1種である前記(1)に記載の眼科用剤。(3)非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載の眼科用剤。(4)チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の眼科用剤。(5)(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することにより、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする前記(1)に記載の眼科用剤。(6)チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤に、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性を高める方法。 本発明によれば、点眼時の霧視の発生が抑制され、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性が相乗的又は相加的に高められた眼科用剤を得ることができる。また、高い有効成分眼内移行性によって、従来得られなかった高い眼圧降下作用が得られ、しかも、薬効を持続させることができるため、目的に応じた種々のチモロールマレイン酸塩含有点眼剤を提供することができる。 本発明の眼科用剤は、チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であり、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有するものである。 本発明の眼科用剤は、通常、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたものである。具体的には、房水、角膜、虹彩・毛様体等の眼組織へのチモロールマレイン酸塩の移行性が高められたものであることが好ましい。 さらに、チモロールマレイン酸塩以外の有効成分を含有する場合には、他の有効成分の眼組織内移行にも影響を与えるおそれがあるため、他の有効成分の眼組織内移行を確認していない場合等には、チモロールマレイン酸塩を唯一の有効成分として含有する眼科用剤であることが好ましい。 本発明の眼科用剤は、(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することにより、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたものであることが好ましい。 本発明において、ゲル化剤として任意のものが使用でき、具体的には、ジェランガム、アルギン酸又はその塩、ヒプロメロース、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ペクチン、ゼラチン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。中でも、投与前の製剤中ではゲル化せず、投与時の条件変化によって眼内でゲル化する成分であることが、投与時の容器押圧力が小さいため好ましい。具体的には、ジェランガム、アルギン酸、ヒプロメロース等が好ましく、中でも、ジェランガム、アルギン酸等がより好ましく、特にジェランガムが好ましい。 ゲル化剤には、上記の化合物の1種又は2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。ゲル化剤の配合量は、成分により適宜選択することができるが、眼科用剤中に通常0.001〜10w/v%であり、好ましくは0.01〜5w/v%であり、より好ましくは0.1〜3w/v%である。 ゲル化剤の配合量が上記範囲内であると、良好なゲル化性能を発揮することができるため、眼科用剤が良好な徐放性能を有するものとなる。また、上記範囲内であると、患者の負担となる点眼時の霧視の発生を効果的に抑制することができるため、眼科用剤投与時の使用感が快適なものとなる。 本発明において、非イオン界面活性剤として任意のものが使用でき、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート(ポリソルベート60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート(ポリソルベート80)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF68)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックP123)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(プルロニックP85)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックF127)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(プルロニックL−44)などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。中でも、特にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が好ましく、さらに、中でもポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40等がより好ましく、特にポリソルベート80が最も好ましい。 非イオン界面活性剤として、上記の化合物の1種又は2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。非イオン界面活性剤の配合量は、眼科用剤中に通常0.001〜10w/v%であり、好ましくは0.005〜5w/v%であり、より好ましくは0.01〜0.5w/v%である。 非イオン界面活性剤の配合量が上記範囲内であると、充分な有効成分の眼組織内移行性が得られるため好ましい。さらに、上記範囲内であると、眼刺激性が少なく、細胞毒性等も少ないことから好ましい。 本発明における上記(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤の組み合わせは、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されないが、例えば、(A)ゲル化剤としてジェランガムを用いる場合には、(B)非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等を用いることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80等が好ましい。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が好ましく、中でも、ステアリン酸ポリオキシル40等がより好ましい。 また、例えば(A)ゲル化剤としてアルギン酸を用いる場合には、(B)非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を用いることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80等がより好ましい。 本発明の眼科用剤には、上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で、他の薬物、薬学上許容される各種添加剤(安定化剤、pH調整剤・緩衝剤、防腐剤、溶解補助剤、酸化防止剤、溶剤、可溶化剤、懸濁剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、緩衝剤等)等を添加することができる。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。 本発明の眼科用剤は常法により調製でき、その方法は特に制限されない。例えば、各成分を規定量以下の精製水にて混合及び撹拌し、その後精製水で規定量に容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理等を行なうことにより得られる。本発明の眼科用剤は、点眼に通常使用されるpH範囲内に調整して用いることが好ましく、通常pHは5〜9であり、好ましくは6〜8である。 本発明の眼科用剤は、眼局所投与用の形態で用いられることが好ましく、具体的には、点眼剤、軟膏剤などが挙げられる。 本発明の眼科用剤における有効成分であるチモロールマレイン酸塩の配合量は特に限定されないが、通常眼科用剤中にチモロールとして0.01〜5w/v%であり、好ましくは0.1〜1w/v%である。また、本発明の眼科用剤の投与量及び投与回数は、投与対象の年齢、体重、投与形態等により異なるが、成人に対し点眼剤として使用する場合には、通常1日あたり数回、好ましくは1〜6回、通常1回あたり数滴、好ましくは1〜3滴投与する。 本発明の眼科用剤の投与対象としては、緑内障や高眼圧症を発症した又は発症する可能性がある哺乳動物が好ましく、中でも、ヒトがより好ましい。 眼科用剤において、チモロールマレイン酸塩と共に(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性を向上させることができる。また、点眼時の霧視の発生を抑制することもできる。 チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤に、さらに(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を配合することにより、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性を高める方法も、本発明に包含される。 本発明の方法における(A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤、並びにその好ましい態様は、上述した眼科用剤におけるものと同様である。チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性が高められることにより、チモロールマレイン酸の眼圧降下作用等の薬効が効率よく発揮される。また、チモロールマレイン酸の眼組織内への移行性が高くなることで、薬効の持続性が向上するという効果も得られる。本発明の方法は、房水、角膜、虹彩・毛様体等の眼組織内へのチモロールマレイン酸塩の移行性を高めるために好適に使用される。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。実施例1 ジェランガム及びD−マンニトールを、加温した約60mLの精製水に溶解し、冷却した後、さらにチモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを加え、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びポリソルベート80を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、眼科用剤を調製した。眼科用剤中の各成分の配合量は、各成分が表1に示す濃度(w/v%)となるようにした。実施例2及び比較例1〜2 実施例2及び比較例1〜2についても、添加しない成分を除き、表1に示す処方にて、実施例1と同様の手順で調製した。 なお、表1中の各成分の配合量の単位は、w/v%である。比較例3〜4 D−マンニトール、チモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを約60mLの精製水に溶解させた後、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びポリソルベート80を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、表1に示す処方の眼科用剤を調製した。比較例4についても添加しない成分を除き、表1に示す処方にて、比較例3と同様に調製した。 実施例及び比較例で調製した各眼科溶剤のpH及び浸透圧比は、それぞれ「pH METER F-52」(製品名、堀場製作所社製)及び「Model 3250 Osmometer」(製品名、アドバンス社製)により測定したものである。実施例3 ジェランガム及びD−マンニトールを、加温した約60mLの精製水に溶解し、冷却した後、さらにチモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを加え、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びステアリン酸ポリオキシル40を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、眼科用剤を調製した。眼科用剤中の各成分の配合量は、各成分が表2に示す濃度(w/v%)となるようにした。比較例5 D−マンニトール、チモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを約60mLの精製水に溶解させた後、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びステアリン酸ポリオキシル40を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、表2に示す処方の眼科用剤を調製した。 なお、表2中の各成分の配合量の単位は、w/v%である。実施例4 約60mLの精製水に、アルギン酸、塩化ナトリウム、チモロールマレイン酸塩、及びトロメタモールを加え、ここへ、予め混合しておいたベンザルコニウム塩化物及びポリソルベート80を加え、精製水にて全量を100mLに調整して、眼科用剤を調製した。眼科用剤中の各成分の配合量は、各成分が表3に示す濃度(w/v%)となるようにした。比較例6 比較例6についても、添加しない成分を除き、表3に示す処方にて、実施例4と同様の手順で眼科用剤を調製した。 なお、表3中の各成分の配合量の単位は、w/v%である。参考例1 参考製剤1として、チモロールマレイン酸塩(0.5w/v%)を有効成分とする市販の製剤(商品名チモプトール(登録商標)点眼液、参天製薬)を使用した。チモプトール(登録商標)点眼液は、添加物としてベンザルコニウム塩化物液(防腐剤)、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物(緩衝剤)、水酸化ナトリウム(pH調整剤)を含有するものである。チモプトール(登録商標)点眼液のpHは7.0であった。参考例2 参考製剤2として、チモロールマレイン酸塩(0.5w/v%)を有効成分とする市販の製剤(商品名チモプトール(登録商標)XE点眼液、万有製薬)を使用した。チモプトール(登録商標)XE点眼液は、添加物としてジェランガム(ゲル化剤)、トロメタモール(緩衝剤)、ベンゾドデシニウム臭化物(保存剤)、D−マンニトール(等張化剤)を含有するものである。チモプトール(登録商標)EX点眼液のpHは7.0であった。試験例1有効成分組織内濃度測定試験 実施例1〜2及び比較例1〜4でそれぞれ調製した製剤、並びに参考例1〜2の製剤それぞれを動物に点眼投与し、房水、角膜、虹彩・毛様体の各組織における、有効成分組織内濃度を測定した。詳細な手順は以下のとおりである。1.試験手順 家兎(雄性日本白色種、2kg〜3kg)に実施例、比較例及び参考例の各製剤(0.5%チモロール点眼液)50μLを両眼に点眼投与し(各2眼×3匹:n=6)、30秒間強制的に閉眼させた。点眼2時間後にペントバルビタールナトリウムにより麻酔死させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗浄後、房水、角膜及び虹彩・毛様体を採取した。各組織は分析時まで−20℃で凍結保存した。2.定量手順(房水) 採取した房水100μLを正確に量り、移動相100μLを正確に加えて混合した後、4℃以下に保存しながら、14800rpmで10分間遠心分離し、上澄液を試料溶液とした。また、試料溶液は、測定する直前まで4℃以下で保存した。試験条件検出器:紫外吸光光度計(測定波長:294nm)カラム:内径3.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。カラム温度:40℃付近の一定温度移動相:ラウリル硫酸ナトリウム1gを水600mLに溶かし、アセトニトリル400mL及びリン酸1mLを加えた。流量:チモロールの保持時間が約10分になるように調整した。(角膜、及び虹彩・毛様体) 採取した角膜又は虹彩・毛様体1個をとり、鋏で細かく切断し、0.1mol/L塩酸含エタノール3mLを正確に加えた後、氷冷下で1分間ホモジナイズし、4℃以下に保存しながら、2500rpmで10分間遠心分離した。上澄液2.5mLを正確に量り、減圧下で濃縮乾固した後、残留物に水0.25mLを正確に加えて溶かし、4℃以下に保存しながら、14800rpmで10分間遠心分離した。更に、上澄液を分画分子量10,000のフィルターを用いて、14800rpmで30分間遠心分離した後、ろ液を試料溶液とした。また、試料溶液は、測定する直前まで4℃以下で保存した。試験条件検出器:紫外吸光光度計(測定波長:294nm)カラム:内径3.0mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんした。カラム温度:40℃付近の一定温度移動相:ラウリル硫酸ナトリウム1gを水600mLに溶かし、アセトニトリル400mL及びリン酸1mLを加えた。流量:チモロールの保持時間が約10分になるように調整した。 本試験の結果(製剤投与後2時間時点における房水中、角膜中及び虹彩・毛様体中のチモロール濃度)を、表4及び表5に示す。表4及び表5に示す数値は、平均値(n=6)である。 また、表4と同一データについて、界面活性剤の配合有無、及びゲル化剤の配合有無の観点から並び替えたものを表6、8及び10に示す。また、各成分の添加効果、併用時の効果、及び併用時の相乗効果率を表7、9及び11に示す。表7、9及び11に示される各成分の添加効果及び併用時の効果は、製剤投与後2時間の時点での各眼組織中のチモロール濃度から計算した。 なお、相乗効果率は、下式により計算される。相乗効果率=併用時効果/(非イオン界面活性剤による効果+ゲル化剤による効果) 表6は、製剤投与後2時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)である。表7は、房水へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後2時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表8は、製剤投与後2時間の時点での角膜中のチモロール濃度(μg/g)である。表9は、角膜へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後2時間の時点での角膜中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表10は、製剤投与後2時間の時点での虹彩・毛様体中のチモロール濃度(μg/g)である。表11は、虹彩・毛様体へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後2時間の時点での虹彩・毛様体中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表6〜11中のジェランガム濃度(%)は、w/v%を意味する。 例えば、表7を例に挙げて説明すると、ジェランガム及びポリソルベートを含有しない眼科用剤(比較例4)にポリソルベート80を添加すると(比較例3)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.18μg/g増加した(ポリソルベート80添加による効果)。また、比較例4の眼科用剤を用いた場合の房水中チモロール濃度を100%とすると、ポリソルベート80を添加した眼科用剤(比較例3)を用いた場合の房水中チモロール濃度は、142%であった。また、比較例4の眼科用剤にジェランガムを0.6w/v%添加すると(比較例1)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が1.34μg/g増加した(ジェランガム添加による効果)。さらに、比較例4の眼科用剤にポリソルベート80及ジェランガム0.6w/v%を添加すると(実施例1)、これらを添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が4.05μg/g増加した(併用時効果)。試験例2有効成分組織内濃度測定試験1.試験手順 家兎(雄性日本白色種、2kg〜3kg)に実施例3、並びに比較例2、4及び5でそれぞれ調製した各製剤(0.5%チモロール点眼液)50μLを両眼に点眼投与し(各2眼×3匹:n=6)、30秒間強制的に閉眼させた。点眼1時間後にペントバルビタールナトリウムにより麻酔死させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗浄後、房水を採取した。各組織は分析時まで−20℃で凍結保存した。2.定量手順 試験例1と同様の方法で、房水における、有効成分組織内濃度を測定した。 本試験の結果(製剤投与後1時間時点における房水中のチモロール濃度(μg/g))を、表12に示す。表12に示す数値は、平均値(n=6)である。 また、表12と同一データについて、界面活性剤の配合有無、及びゲル化剤の配合有無の観点から並び替えたものを表13に示す。表14は、房水へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果である。 表14から、比較例4の眼科用剤にステアリン酸ポリオキシル40を添加すると(比較例5)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.53μg/g増加した(ステアリン酸ポリオキシル40添加による効果)。また、比較例4の眼科用剤にジェランガムを添加すると(比較例2)、添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.45μg/g増加した(ジェランガム添加による効果)。さらに、比較例4の眼科用剤にステアリン酸ポリオキシル40及ジェランガムを添加すると(実施例3)、これらを添加しない場合(比較例4)と比較して、房水中チモロール濃度が0.62μg/g増加した(併用時効果)。試験例3有効成分組織内濃度測定試験1.試験手順 家兎(雄性日本白色種、2kg〜3kg)に実施例4、並びに比較例3〜4及び6でそれぞれ調製した各製剤(0.5%チモロール点眼液)50μLを両眼に点眼投与し(各2眼×3匹:n=6)、30秒間強制的に閉眼させた。点眼1時間後にペントバルビタールナトリウムにより麻酔死させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗浄後、房水及び角膜を採取した。各組織は分析時まで−20℃で凍結保存した。2.定量手順 試験例1と同様の方法で、房水、角膜の各組織における、有効成分組織内濃度を測定した。 本試験の結果(製剤投与後1時間時点における房水中、及び角膜中のチモロール濃度(μg/g))を、表15に示す。表15に示す数値は、平均値(n=6)である。 また、表15と同一データについて、界面活性剤の配合有無、及びゲル化剤の配合有無の観点から並び替えたものを表16及び表18に示す。 表16は、製剤投与後1時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)である。表17は、房水へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果、並びに製剤投与後1時間の時点での房水中のチモロール濃度(μg/g)から計算される相乗効果率である。 表18は、製剤投与後1時間の時点での角膜中のチモロール濃度(μg/g)である。表19は、角膜へのチモロールの移行に対する各成分の添加効果及び併用時の効果である。 上記結果から、チモロールマレイン酸塩を含む眼科用剤に非イオン界面活性剤を配合した場合、及びゲル化剤を配合した場合と比較して、チモロールマレイン酸塩と共に非イオン界面活性剤及びゲル化剤を配合すると、チモロールマレイン酸塩の眼組織内への移行性が相加的、又は相乗的に高くなった。その結果、例えば、ジェランガムを0.3w/v%しか配合しない実施例2の組織内濃度は、ジェランガムを0.6w/v%配合した比較例1のそれに匹敵するほどの値であった。また、例えば実施例1及び2の眼科用剤を使用した場合のチモロールマレイン酸塩の組織内濃度は、参考例の市販製剤1及び2と比較して、同等〜約8倍と著しく高く、本製剤を患者に投与すれば、より強い眼圧降下作用が期待される。また、本願発明によれば、高い組織内移行性を得ることが可能であるから、仮に、薬効を参考例の市販製剤1及び2と同等とする場合には、市販製剤よりも、大幅にゲル化剤の配合量を減らすことが可能であり、ゲル化剤配合の副作用による霧視が軽減できる効果がある。 本発明は、医療分野、製薬分野等において有用である。 チモロールマレイン酸塩を含有する眼科用剤であって、さらに(A)ゲル化剤として、ジェランガム、アルギン酸及びヒプロメロースから選択される少なくとも1種及び(B)非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする眼科用剤。 非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の眼科用剤。 チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科用剤。 (A)ゲル化剤及び(B)非イオン界面活性剤を含有することにより、チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められたことを特徴とする請求項1に記載の眼科用剤。 チモロールマレイン酸塩の、眼組織内への移行性が高められ、かつ点眼時の霧視の発生を回避又は軽減する眼科用剤の製造のための、チモロールマレイン酸塩と、(A)ゲル化剤として、ジェランガム、アルギン酸及びヒプロメロースから選択される少なくとも1種及び(B)非イオン界面活性剤の使用。


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