タイトル: | 公開特許公報(A)_経口用Nrf2活性化剤 |
出願番号: | 2011077669 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 36/81,A61P 43/00,A61P 17/18,A61P 39/00,A23L 1/30 |
桑鶴 祥子 出田 立郎 JP 2012211107 公開特許公報(A) 20121101 2011077669 20110331 経口用Nrf2活性化剤 株式会社 資生堂 000001959 岩橋 祐司 100092901 桑鶴 祥子 出田 立郎 A61K 36/81 20060101AFI20121005BHJP A61P 43/00 20060101ALI20121005BHJP A61P 17/18 20060101ALI20121005BHJP A61P 39/00 20060101ALI20121005BHJP A23L 1/30 20060101ALN20121005BHJP JPA61K35/78 RA61P43/00 111A61P17/18A61P39/00A61P43/00 105A23L1/30 B 3 1 OL 11 4B018 4C088 4B018MD61 4B018ME06 4B018MF01 4C088AB48 4C088AC04 4C088BA08 4C088CA08 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZC21 4C088ZC37 4C088ZC41 本発明は、Nrf2活性化剤、さらに詳しくは、天然成分を有効成分とする経口用生体防御剤に関する。 生体は酸化−抗酸化のバランスを調節し、細胞内酸化還元状態を一定に維持することで機能している。紫外線照射や酸素呼吸の副産物として細胞内に発生する活性酸素種は、DNA、タンパク質、脂質等といった生体構成成分に修飾や障害を与え、細胞機能障害や細胞死を引き起こすことが知られている。そして、上記活性酸素種に慢性的に曝露されることにより、光老化、ガン、狭心症、糖尿病、眼疾患、及び神経変性疾患等の発症リスクが上昇することが近年報告されている(非特許文献1)。 生体は、酸化ストレス状態に応じて発動する防御機構を備えている(非特許文献2)。 転写因子であるNrf2は、哺乳類の上記防御機構において中心的役割を果たすものである(非特許文献2)。Nrf2(NF−E2 related factor 2)は、グルタチオン還元酵素、ヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)などの抗酸化酵素群、及び親電子性物質を解毒するグルタチオンS−転移酵素(GST)、NAD(P)Hキノン還元酵素(NQO1)などの異物代謝酵素群の遺伝子発現を誘導する転写因子である。Nrf2は、定常状態(酸化ストレスのない状態)では細胞質内でKeap1(Kelch−like ECH associated protein 1)と複合体を形成し不活性状態にあるが、活性酸素種や親電子性物質に暴露されるとKeap1から解離して核へ移行する。核に移行したNrf2は、上述した酵素群の遺伝子のプロモーター領域にある抗酸化剤応答配列(ARE:antioxidant responsive element)に結合して、下流の遺伝子、すなわち上記酵素群の発現を誘導する。その結果、活性酸素種の消去及び親電子性物質の解毒が促進され、生体は酸化ストレス状態から定常状態へと復帰することができる。 Nrf2の活性化は、生体の抗酸化防御、解毒能力を高め、酸化ストレスが関与する種々の疾患の予防及び/又は改善に非常に有効と考えられている。このことは、少なくとも動物実験においては一部確認されており、例えば、Nrf2を活性化する物質として知られるオルチプラズやスルフォラファンがベンツピレンによる前胃部発ガンを抑制すること、オルチプラズがニトロサミンによる膀胱発ガンを抑制すること(非特許文献3)、及び、Nrf2活性化物質であるクルクミンがガラクトース誘発性白内障を抑制すること(非特許文献4)が報告されている。また、特許文献には、Nrf2活性化物質を用いた加齢黄斑変性のドールセン形成、糖尿病性網膜症、及び緑内障に伴う網膜症・視神経症の治療方法(特許文献1、2)、及び、角結膜障害の予防又は治療方法が記載されている(特許文献3)。 従って、Nrf2を活性化することができ、且つ、生体にとって安全で日常的に摂取できる医薬品及び/又は食品の開発が強く望まれている。 上記のニーズを受けて、天然の植物に由来するNrf2活性化物質の探索が広く行われた。その結果、現在までに、植物由来のNrf2活性化物質として、アブラナ科の野菜に多く含まれるイソチオシアネート系化合物(特にスルフォアラン)、ホップに含まれるキサントフモール、ローズマリーに含まれるジテルペノイド類、ショウガに含まれるショウガオール類、クルクミン、ブナハリ茸エキス等(特許文献4)が報告されている(非特許文献5)。食材植物を多く含むナス科植物においても、最近、ナス属に属するイヌホオズキ(Solanum nigrum)の抽出物中にNrf2活性化作用があることが報告された(非特許文献6)。しかし、イヌホオズキはソラニン等を全草に含む有毒植物であり、安全性に対する不安は払拭し難い。従って、より安全な植物、理想的には食材として長きに渡り食されてきた植物から、効果の高いNrf2活性化剤が得られることが切望されている。国際公開2005/063249号国際公開2005/063295号特開2008−110962特開2008−208038生物試料分析、第32巻第4号第247−56(2009)生化学、第81巻第6号第447−455頁(2009)別冊「医学のあゆみ」レドックス−ストレス防御の医学、46−9(2005)Mol.Vis.,9,223−30(2003)Planta.Med.,74,1526−39(2008)J.Agric.Food Chem.,57,8628−34(2009)Biochem.J.,365,405−16(2002)Mol.Cancer Ther.,5,39−51(2006) 本発明は、上記の事情に鑑み、安全性の高い食材に由来し日常的に摂取可能な経口用Nrf2活性化剤を提供することを課題とする。 本発明者は、食材として知られる各種植物からの抽出物におけるNrf2活性化能を鋭意探索した結果、ナス科クコ属に属するクコ(Lycium rhombifolium)の子実体であるクコシからの抽出物に優れたNrf2活性化作用を見出し、本発明を完成させるに至った。 クコは中国原産の植物で、日本には奈良時代に伝来したとされている。子実体であるクコシは、中国及び日本の双方において、生色、クコ酒、ドライフルーツとして長きに渡り食されてきた。クコシには血圧や血糖の低下作用、脂肪肝の抑制作用があることが知られており、大変美味であることから、中国では薬膳料理の食材として広く摂取されている。さらに、近年欧米においては、栄養価が高く抗酸化作用に優れた果物(スーパーフルーツ)として、goji berryの名で注目を集めている。 このように、クコシは種々の効用が知られていた食材であるが、転写因子であるNrf2の活性化作用を有することは報告されていなかった。 すなわち、本発明によって、食材として長く食されてきたクコシの抽出物を有効成分とする、安全性の高い経口用Nrf2活性化剤が提供される。 上記クコシからの抽出は、水又は水とエタノールの混合溶媒を用いて行うことができる。そして、本願における好ましいNrf2活性化剤の一例は水−エタノール混合溶媒抽出物である。 本願のNrf2活性化剤の経口摂取により、Nrf2の標的遺伝子がコードする抗酸化、解毒酵素群の発現が恒常的に上昇する。従って、本発明に係るNrf2活性化剤を配合することにより、生体の抗酸化防御、解毒、代謝、異物排泄、ストレス応答能力の亢進が期待され、生体防御剤として有用である。 本発明によるNrf2活性化剤は、長期にわたり食されてきたクコシからの抽出物を有効成分としているので安全性が極めて高く、且つ、経口摂取により十分なNrf2活性化作用、すなわち、Nrf2標的遺伝子がコードする抗酸化、解毒酵素、代謝、異物排泄トランスポーター、ストレス応答性タンパク群の発現促進効果を奏するものである。 よって、本発明に係るNrf2活性化剤を日常的に摂取することで、生体の抗酸化防御、解毒、代謝、異物排泄、ストレス応答能力の向上による生体防御が期待できる。ヒト培養細胞において、ルシフェラーゼ活性によって可視化されたNrf2転写活性が、クコシ抽出物の投与により亢進することを示す図である。 本発明の経口用Nrf2活性化剤の有効成分であるクコシ抽出物は、クコシを水性溶媒又は有機溶媒を用いて抽出したものである。抽出溶媒としては、通常抽出に用いる溶媒であれば任意に用いることができるが、例えば水性溶媒(例えば、水、生理的食塩水、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等)、あるいは有機溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、含水アルコール類、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等)をそれぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。 本発明において、好ましい抽出溶媒の例は水もしくは水とエタノールの混合溶媒であり、より好ましくは水とエタノールの混合溶媒である。エタノール−水混合溶媒中のエタノール濃度としては10〜90質量%、さらには20〜80質量%が好ましい。 抽出は常法により行うことができ、例えばクコシを上記抽出溶媒とともに常温又は加熱して浸漬又は加熱還流すればよい。抽出液は、ろ過などにより分離し、必要に応じて濃縮及び/又は乾燥してもよい。 得られた抽出物は、そのまま、あるいは減圧留去、凍結乾燥などにより濃縮又は乾燥したエキスとして使用できる。必要であれば、吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えば、アンバーライトXAD2)のカラムに吸着させた後、所望の溶媒で溶出し、さらに濃縮したもの等を使用することもできる。 このようにして得られクコシ抽出物を経口摂取することにより、転写因子であるNrf2を活性化し、Nrf2によって制御される抗酸化防御、解毒、代謝、異物排泄、ストレス応答機構に関わる酵素群の発現を誘導することができる。上記クコシ抽出物の摂取量は、少なすぎるとその効果が十分に得られないことがあるので、乾燥重量(抽出物の固形分重量)に換算して一日当たり0.2g/60kg体重以上、さらには0.5g/60kg以上を経口摂取することが好ましい。なお、クコシの30%エタノール抽出液5ml中には、乾燥重量にして0.5〜1.5gの固形分が含まれ、抽出液1gはクコシ原生薬対比0.5gに相当する。一方、過剰に摂取してもそれに見合った効果の増大は期待できず、製造上の問題を生じることもあるので、クコシ抽出物の摂取量は一日当たり上記乾燥重量が45g/60kg体重以下、さらには5g/60kg体重以下であることが好ましい。また、本発明に係るクコシ抽出物は、一日一回あるいは数回に分けて摂取することができる。 さらに、本発明に係るNrf2活性化剤を、飲食品、サプリメント等の経口摂取用組成物に配合することにより、生体の抗酸化防御能、解毒、代謝、異物排泄、ストレス応答能力の亢進を目的とした経口製剤とすることもできる。上記経口摂取用組成物は、クコシ抽出物を配合する以外は常法に従って製造することができ、必要に応じて医薬品、飲料品、サプリメント等に配合可能な成分、例えば賦形剤、呈味剤、着色剤、保存剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸化防止剤、機能性素材等を添加することができる。 機能性素材としては、各種ビタミン類、パントテン酸、葉酸、ビオチン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アミノ酸、オリゴ糖、プロポリス、ローヤルゼリー、EPA、DHA、コエンザイムQ10、コンドロイチン、乳酸菌、ラクトフェリン、イソフラボン、プルーンエキス、キチン、キトサン、グルコサミン、コラーゲン等が挙げられる。 賦形剤としては、通常用いられるものであれば限定されず、例えば、微粒子二酸化ケイ素のような粉末類、ショ糖脂肪酸エステル、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。 呈味剤としては、果汁エキスであるボンタンエキス、ライチエキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、ゆずエキス、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、甘味剤であるアセスルファムK、エリスリトール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類、ヨーグルトフレーバー等が挙げられる。 その他、着色剤、保存剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸化防止剤については、飲食品に使用される公知のものを適宜選択して使用できる。また、緑茶、ウーロン茶、紅茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶等の茶やその抽出物を配合することもできる 上記経口摂取用組成物の形態としては、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、固形、液体、ゼリー、ムース、クリーム等、任意とすることができる。 具体的には、例えば、美容・保健補助用飲食品(サプリメント)の他、洋菓子類、和菓子類、ガム、キャンデー、キャラメル等の一般菓子類、果実ジュース等の一般清涼飲料水、かまぼこ、ちくわ等の加工水産ねり製品、ソーセージ、ハム等の畜産製品、生めん、ゆでめん、ソバ等のめん類、ソース、醤油、タレ、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレー粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、チーズ、バター、ヨーグルト等の乳製品などが挙げられる。 以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。試験例1 クコシ抽出物の投与によるNrf2転写活性の亢進1.披験試料 クコシ抽出液R(クコシの30%エタノール抽出液、固形分(成分)含量0.5〜1.5g/5ml[規格値];0.9g/5ml[試験値]、抽出液1gはクコシ原生薬対比0.5gに相当、松浦薬業株式会社)38.83g(37.30ml)から溶媒を蒸留除去して、7.64gのクコシエタノール抽出物粉末を得た。よって、前記クコシエタノール抽出物粉末1gはクコシ原生薬2.54gに由来する。この粉末を、エタノールに溶解したものを披験試料として用いた。2.試験方法 細胞内におけるNrf2転写活性を定量的且つ高感度に測定するために、ヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2細胞を用いたレポーターアッセイを行った。 HepG2細胞は、6ウェルプレートに播種し、DMEM(10%FBS、2mM L−グルタミン添加)培地で1日培養した。Nrf2の標的配列の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を連結したレポータープラスミド(pGSTA−Luc、Promega社製)及び内部標準用としてウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流に構成的発現プロモーターを連結した内部標準プラスミド(pRL−SV40、Promega社製)を混合し、トランスフェクションした(FuGENA、ロシュ社製)。 トランスフェクションから6時間後に、上記HepG2細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)/DMEM培地を含む96ウェルプレートに播種した。そして、上記披験試料を上記培地中に添加し、CO2インキュベーター内で48時間培養した(37℃、5%CO2)。添加したクコシ抽出液Rの成分濃度(終濃度)は9×10−3%(w/v)で、エタノールの終濃度は5%である。陽性対照には、Nrf2の活性化剤として知られるt−ブチルヒドロキノン(tBHQ)を20μmol/lとなるように添加した。 上記細胞におけるルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼ定量システム(Dual−Luciferase Reporter Assay System、Promega社製)、及び化学発光測定装置(ルミノメーター ARVO MX、Perkin Elmer社製)を用いて発光強度として測定した(測定時間:Firefly(ホタル)2秒、Renilla(ウミシイタケ)1秒)。各試料を添加した上記細胞における上記蛍光強度を、tBHQ陽性コントロールの活性を100%とした相対値で示す(表1)。なお、表1における%は質量/体積比である。3.結果 表1の結果から明らかなように、本発明のクコシ抽出液を添加した細胞では、陽性コントロールであるtBHQよりも高いルシフェラーゼが検出された。上述した通り、本解析系におけるルシフェラーゼ活性はNrf2活性に相関しているので、上記結果は本発明のクコシ抽出物が非常に高いNfr2活性化作用を有していることを示している。 なお、上記表1の結果をグラフ化したものを図1として示す。試験例2 クコシ抽出物の経口投与によるNrf2標的遺伝子の転写誘導1.披験試料 試験例1において調整したクコシエタノール抽出物粉末を、媒体(0.5%w/v メチルセルロース400溶液)に溶解したものを披験試料とした。2.試験方法 本発明のクコシ抽出物の経口投与によって、マウスにおいて転写が亢進する遺伝子群を把握するために、マイクロアレイ法を用いた網羅的な解析を行った。 マウス(DBA/2系統、雄性、5週齢、日本チャールズ・リーバー社より入手)は、標準精製飼料(AIN−93G、オリエンタル酵母工業社製)の自由摂餌環境下で1週間馴化飼育した。馴化後、クコシ抽出物投与群には、上記披験試料を10ml/kg体重、一日一回強制的に9日間経口投与した(投与数2)。非投与コントロール群には、同量の媒体を同様に9日間経口投与した(投与数3)。投与から10日目に、両群のマウスから耳介組織(耳介皮膚全層)を採取し、液体窒素中にて凍結後、−80℃に保存した。 上記−80℃保存していた組織から、全RNAを抽出した。上記耳介組織を液体窒素中で凍結プレス破砕装置(クライオプレス、マイクロテック・ニチオン社製)を用いて破砕し、RNA抽出用試薬(Isogen、ニッポン・ジーン社製)及び全RNA抽出・精製キット(RNeasy Mini Kit、キアゲン社製)を用いて全RNAを精製した。 上記全RNAから、遺伝子発現マイクロアレイ用ラベル化キット(Low Input Quick Amp Labeling Kit、2カラー用、アジレント・テクノロジー社製)を用いてcRNAを合成した。クコシ抽出物投与群及び非投与群由来のcRNAは、それぞれ異なる蛍光物質で標識した。 上記2種類のcRNAを、DNAマイクロアレイ(マウスオリゴマイクロアレイ、G4121A、アジレント・テクノロジー社製)にハイブリダイズした。マイクロアレイ上の蛍光シグナルは、マイクロアレイ・スキャナー(2565BA、アジレント・テクノロジー社製)を用いて定量化及び画像化した。そして、非投与群に対するクコシ抽出物投与群における各遺伝子の相対的発現量比、すなわち倍率変化(フォールド・チェンジ)を、Feature Extractionソフトウェア(アジレント・テクノロジー社製)を用いて算出した。3.結果 上記解析において倍率変化が+1.2以上であった遺伝子のリストを表2に示す。これらの遺伝子は、非投与群と比べて、クコシ抽出物投与群において有意に発現量が増加していた遺伝子である(倍率変化の値が大きいほど、発現量の増加が大きいことを示す)。 表2の最左欄に数字(1−3)を記入した下記の遺伝子は、Nrf2の標的遺伝子であり、抗酸化及び解毒に関わる代表的な酵素をコードしている。このうち、ミュー1及びミュー3遺伝子にコードされるグルタチオンS−転移酵素は、Nrf2遺伝子欠損マウスにおいて最も顕著に発現が低下することが報告されている(非特許文献8)。1、グルタチオンS−転移酵素(ミュー3遺伝子)2、グルタチオン還元酵素3、グルタチオンS−転移酵素(ミュー1遺伝子)そして、第三相解毒酵素に属する異物排泄トランスポーターをコードする次の遺伝子も、Nrf2によって転写制御されることが報告されている(非特許文献9)。4、溶質輸送担体ファミリー(UDP−ガラクトース輸送体)、メンバーA2 さらに表2には、他の第三相解毒酵素/異物排泄トランスポーターをコードする遺伝子も挙がっている(遺伝子記号:Slc6a9、Slc1a4、Slc7a11)。また、第一相代謝酵素に分類されるFmol(フラビン含有モノオキシゲナーゼ)、及び、分子シャペロンであるHsp90の補助因子としてストレス応答に働くFkbp5も上記リストに名前を連ねている。 従って、上記表2の結果は、本発明に係るNrf2活性化剤の経口投与によって、定常時であるにも関わらず、グルタチオンS−転移酵素及びグルタチオン還元酵素といった抗酸化及び解毒酵素、代謝、異物排泄トランスポーター、ストレス応答性タンパク群の発現が有意に上昇することを示している。このことは、上記Nrf2活性化剤の日常的な摂取により、生体の抗酸化防御、解毒、代謝、異物排泄、ストレス応答能力が高く維持されることを強く示唆している。 以下に本発明に係る経口用Nrf2活性化剤の配合例を挙げるが、本発明はこれにより限定されるものではない。配合例1 顆粒 (配合成分) (mg) Nrf2活性化剤:クコシの30%エタノール抽出物粉末 200 (本願試験例1披験試料中のクコシエタノール抽出物粉末に相当) ハトムギエキス(固形分) 25 ビタミンC 25 還元乳頭 805 大豆オリゴ糖 36 エリスリトール 36 デキストリン 25 クエン酸 24 香料 24配合例2 錠剤 (配合成分) (mg) Nrf2活性化剤:クコシの30%エタノール抽出物粉末 1200 (本願試験例1披験試料中のクコシエタノール抽出物粉末に相当) ショ糖エステル 70 結晶セルロース 74 メチルセルロース 36 グリセリン 20 グルコシルヘスペリジン 30 アスタキサンチン 50 クコシ抽出物を有効成分として含む経口用Nrf2活性化剤。 請求項1の経口用Nrf2活性化剤において、クコシ抽出物がエタノール−水混合溶媒の抽出物であることを特徴とする経口用Nrf2活性化剤。 請求項1又は2に記載の活性化剤を配合したことを特徴とする経口用生体防御剤。 【課題】酸化ストレスに対する生体の抗酸化防御能力の亢進を目的した、安全で恒常的に経口摂取できる成分を提供する。【解決手段】クコの子実体からの抽出物を有効成分とする、Nrf2転写因子の活性化剤を提供する。該活性化剤の経口摂取により、Nrf2の標的遺伝子にコードされる抗酸化及び解毒、代謝酵素群、異物排泄トランスポーター、ストレス応答性タンパクの発現が恒常的に亢進することから、該活性化剤を配合した経口用生体防御も提供する。【選択図】 図1