タイトル: | 公開特許公報(A)_油脂含有排水の処理方法およびその排水処理材 |
出願番号: | 2011075789 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C02F 1/00,C02F 1/28,C12N 11/14 |
稲川 顕嗣 川瀬 千晶 JP 2012206084 公開特許公報(A) 20121025 2011075789 20110330 油脂含有排水の処理方法およびその排水処理材 シーシーアイ株式会社 000106771 八田国際特許業務法人 110000671 稲川 顕嗣 川瀬 千晶 C02F 1/00 20060101AFI20120928BHJP C02F 1/28 20060101ALI20120928BHJP C12N 11/14 20060101ALI20120928BHJP JPC02F1/00 PC02F1/28 NC12N11/14 5 OL 9 4B033 4D624 4B033NA27 4B033NB24 4B033NB26 4B033NB27 4B033NB62 4B033NB68 4B033NC12 4B033ND04 4B033ND08 4D624AA04 4D624AB06 4D624BA05 4D624BB01 4D624DA03 4D624DB15 本発明は、油脂含有排水を、油脂分解微生物で分解処理する油脂含有排水の処理方法およびその排水処理材に関する。 厨房や食品工場からの排水には、通常、生ゴミや調理用油が含まれている。生ゴミ等の固形物は、排水口にカゴ等を設けることによって容易に排水から除去することが可能であるが、調理油のように液状のものを除去することは容易ではない。したがって、多量の油脂分が混入した排水を排出する厨房や食品工場などの施設において、油脂分を集積し上層部に浮上した油脂を分離して廃棄するためのグリーストラップが設けられている。 しかしながら、グリーストラップ内で集積した油脂分が固形化し、グリーストラップの水面にスカム(油の塊)として残留したり、グリーストラップの内壁面や配管内部に集積・付着して配管を閉塞したりすることがある。このとき、集積した油脂分は、酸化・腐敗して、悪臭・害虫の発生原因となることがある。また、集積した油脂分を放置すると、グリーストラップの油脂除去能力が低下し、下水や河川に油脂を流出させてしまう。そのため、グリーストラップ内で油脂分が集積した場合、専門の業者に依頼してバキューム処理や高圧洗浄処理などで油脂の除去を行う必要があるためコストがかかってしまう。 そこで、グリーストラップにおいて、効率よく油脂を分解するさまざまな方法が検討されている。たとえば特許文献1には、グリーストラップ内にリパーゼ分泌微生物を添加し、油脂をグリセロールと脂肪酸とに分解させる方法が開示されている。しかしながら、微生物を用いる場合、微生物を増殖させるために、曝気や攪拌を行うことが必要となる。また、特許文献2には、リパーゼと乳化剤とを用いて、排水中の油脂を乳化剤で乳化させることで、リパーゼが効率的に油脂を分解する方法が開示されている。リパーゼを用いる場合、撹拌を行って水と油脂を混ぜたり、界面活性剤を用いて油脂を乳化したりなど、リパーゼと油脂の接触面積を増加させる操作が必要である。したがって、これらの方法では、曝気や撹拌をグリーストラップ内で行うため、グリーストラップから油脂を流出させてしまうリスクがある。 そこで、撹拌を必要としない方法として、特許文献3には、多孔質担体であるスポンジに油脂分解能を有する微生物(酵母)を担持させて、排水中の油脂を分解する方法が開示されている。この方法では、微生物がスポンジに担持されているため、微生物と油脂との接触を多くすることができ、グリーストラップ内で曝気や攪拌を行わなくても、効率よく油脂が分解できる。特開2010−227849号公報特開2000−93938号公報特表2008−075678号公報 しかしながら、スポンジを微生物の担体とする場合、ポリウレタン、ポリエチレン、メラニンなどの樹脂から構成されるスポンジは、排水中でさまざまな環境変化(さまざまな種類の界面活性剤との接触やpH変化)を受けて、劣化することが懸念される。さらに、劣化したスポンジが細かく分解してゴミとなってしまうおそれもある。また、微生物を用いる場合、グリーストラップ内の環境(pH、洗剤など)によって微生物が生育しにくい場合もある。したがって、これまでに、油脂含有排水の処理方法で十分なものは開示されていない。 そこで本発明は、油脂を効率よく分解する油脂含有排水の処理方法およびその排水処理材を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、上記課題は、排水に含まれる油脂を、リパーゼと反応させて油脂を分解するに際し、シラスバルーンの存在下で行うことによって解決されることを見出し、本発明の完成に至った。 すなわち、本発明は、シラスバルーンの存在下、排水に含まれる油脂を、リパーゼと反応させることにより油脂を分解することを有する、油脂含有排水の処理方法によって、解決される。 本発明によれば、油脂を効率よく分解する油脂含有排水の処理方法およびその排水処理材が提供される。図1は、本発明の処理方法による油脂の分解率を示すグラフである。 以下に、本発明の排水の処理方法について説明する。 本発明の第1によると、油脂含有排水の処理方法は、油脂含有排水中の油脂を、シラスバルーンの存在下で、リパーゼと反応させて分解することを特徴とする。 本発明の第2によると、排水処理材はリパーゼとシラスバルーンとを含むことを特徴とする。 (シラスバルーン) 本発明で用いられるシラスバルーンとは、シラスの粉砕物を加熱発泡して得られる多孔質性中空微粒子を意味する。原料となるシラスは、火山噴出物およびこれに由来する2次堆積物の総称であり、その化学組成は採取場所により多少の相違があるものの、通常、SiO2(64〜75重量%)、Al2O3(11〜16重量%)、Fe2O3(1〜4重量%)、CaO(1〜4重量%)、Na2O(1〜4重量%)、K2O(1〜4重量%)、MgO(0.1〜1重量%)、TiO2(0.1〜1重量%)等からなる。 本発明で用いられるシラスバルーンは、油脂含有排水中で排水、特に油脂をシラスバルーン表面に吸着、好ましくはシラスバルーン孔内にも吸着する。そして、油脂を分解するリパーゼの担持体としての役割も果たす。すなわち、リパーゼと油脂との反応場として作用する。また、グリーストラップ内で、油脂は水に比べて密度が低いことが多いため、排水中、油脂は浮いた状態となりやすい。そのため、シラスバルーンは排水中、排水の高さの上部、すなわち排水の高さの半分より上に存在するのが好ましく、排水に浮いた状態で存在するのがより好ましい。 本発明で用いられるシラスバルーンは、上述のように、シラスの粉砕物を加熱発泡して得られる多孔質性中空微粒子であれば特に制限されないが、シラスバルーンの平均粒径(体積換算)が、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜120μmがさらに好ましく、40〜100μmが特に好ましく、40〜90μmがもっとも好ましい。平均粒径が10μm未満であると、細かい粒子であるため排水からシラスバルーンを回収する際の作業性が悪い。平均粒径が200μmを超えると、シラスバルーンの表面積が小さくなり、リパーゼと油脂との反応が効率的でない。なお、シラスバルーンの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置などの粒度分布計で測定することができる。 また、シラスバルーンのかさ比重が、0.01〜0.8が好ましく、0.05〜0.6がより好ましく、0.07〜0.5がさらに好ましく、0.09〜0.4が特に好ましく、0.1〜0.3がもっとも好ましい。かさ比重が0.01〜0.8の範囲であると、排水中でシラスバルーンがリパーゼと油脂との反応が効率的に進行する。 市場で入手できるシラスバルーンとしては、トワナライトSKBおよびトワナライトSYB(豊和直(株));サンキライトYO2、サンキライトYO4およびサンキライトBO3(三機工業(株));テラバルーン(宇部マテリアルズ(株));ならびにウインライトMSB、ウインライトWBおよびウインライトSC((株)アクシーズケミカル);超微粒シラスバルーンSFBおよび超微粒シラスバルーンPB(シラックスウ社製)等が挙げられる。これらのうち、トワナライトが好ましく、特にトワナライトSYB1000HやトワナライトSKB5000が好ましい。 本発明で用いられるシラスバルーンの量は、リパーゼと油脂との接触面積を増加させることができれば特に制限されないが、油脂含有排水に含まれる油脂100重量部に対して、1〜20重量部で用いることが好ましい。より好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは5〜10重量部である。 また、本発明において、シラスバルーンは、1種類のシラスバルーンを用いても、2以上のシラスバルーンを組み合わせて用いてもよい。また、リパーゼや排水中の油脂の種類によっても、適宜最適なものを選択することが好ましい。 (リパーゼ) 本発明で用いられるリパーゼは、油脂をグリセロールと脂肪酸に分解することができれば特に制限されず、たとえば、動物性、植物性、微生物由来など種々の起源のものを用いることができる。好ましくは微生物由来、特に細菌、真菌または酵母由来のものである。本発明の油脂分解に使用するリパーゼとしては、エステル結合に対して特異性を持たず、モノグリセライドやジグリセライドなどの分解中間生成物を蓄積しないものが好ましい。 リパーゼによる油脂の分解率は、油脂の種類によって異なる。また、リパーゼの種類によっても、油脂に対する分解性が異なることが知られている。対象とする油脂含有排水の種類により、最も分解率の高いリパーゼを選択することが好ましい。リパーゼは、単独のリパーゼを用いても、2以上のリパーゼを組み合わせて用いてもよい。 また、厨房からの排水のように、様々な油脂(植物油、動物油、魚油)を含む排水においては、分解特異性の低いリパーゼを選択するか、複数のリパーゼを組み合わせて添加することが好ましい。pH条件や温度条件も、リパーゼによる油脂の分解に大きく影響する因子であり、それぞれの油脂の性状および運転条件によって、最適なものを選択することが好ましい。厨房からの排水の場合には、pH弱酸性から中性付近に至適反応pH条件を有すること、温度条件としては20〜70℃に至適温度条件を有するリパーゼが好ましい。 リパーゼとしては、たとえば、カンジダ(Candida)、特にカンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・パラリポリティカ(Candida paralipolytica)およびカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)の菌株、シュードモナス(Pseudomonas)、特にシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)〔ブルコルデリア・セパシア(Burkolderia cepacia)〕、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi)、シュードモナス・マルトフィリア(Pseudomonas maltophilia)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、シュードモナス・メフィチカ・リポリティカ(Pseudomonas mephitica lipolytica)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonasalcaligenes)、シュードモナス・プランタリイ(Pseudomonas plantari)、シュードモナス・シュードアルカリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびシュードモナス・ウィスコンシネンシス(Pseudomonas wisconsinensis)の菌株、アスペルギルス(Aspergillus)、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)およびアスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)の菌株、バチルス(Bacillus)、特にバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・ピュミルス(Bacillus pumilus)およびバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)の菌株、ペニシリウム(Penicillium)、特にペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclopium)、ペニシリウム・クルストサム(Penicillium crustosum)およびペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)の菌株、リゾプス(Rhizopus)、特にリゾプス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾプス・ミクロスポルス(Rhizopus microsporus)およびリゾプス・ノドサス(Rhizopus nodosus)の菌株、リゾムコール(Rhizomucor)、特にリゾムーコル・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)の菌株、ムコール(Mucor)の菌株、ペシロマイセス(Paecilomyces)の菌株、リゾクトニア(Rhizoctonia)、特にリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の菌株、アブシディア(Absidia)、特にアブシディア・ブラケスレーナ(Absidia blakesleena)およびアブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)の菌株、アクロモバクター(Achromobacter)、特にアクロモバクター・イオファグス(Achromobacter iophagus)の菌株、エロモナス(Aeromonas)の菌株、アルテルナリア(Alternaria)、特にアルテルナリア・ブラシッシオラ(Alternaria brassiciola)の菌株、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、特にアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の菌株、ボーベリア(Beauveria)の菌株、クロモバクター(Chromobacter)、特にクロモバクター・ビスコサム(Chromobacter viscosum )の菌株、コプリヌス(Coprinus)、特にコプリヌス・シネリウス(Coprinus cinerius)の菌株、フザリウム(Fusarium)、特にフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム・ソラニ・ピシィ(Fusarium solani pisi)およびフザリウム・ロセウム・クルモルム(Fusarium roseum culmorum)の菌株、ゲオトリクム(Geotricum)、特にゲオトリクム・ペニシラタム(Geotricum penicillatum)の菌株、ハンセヌラ(Hansenula )、特にハンセヌラ・アノーマラ(Hansenula anomala)の菌株、フミコラ(Humicola)、特にフミコラ・ブレビスポラ(Humicola brevispora)、フミコラ・ブレビス変種テルモイデ(Himicola brevis var.thermoidea)およびフミコラ・インソレンス(Humicola insolens )の菌株、ハイホジーマ(Hyphozyma)の菌株、ラクトバチルス(Lactobacillus)、特にラクトバチルス・クルバタス(Lactobacillus curbatus)の菌株、メタリジウム(Metarhizium)の菌株、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、特にロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)の菌株、ロドトルラ(Rhodotorula)、特にロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)の菌株、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、特にスポロボロマイセス・シバタナス(Sporobolomyces shibatanus)の菌株、テルモマイセス(Thermomyces)、特にテルモマイセス・ラヌジノサス(Thermomyces lanuginosus)〔正式にはフミコラ・ラヌジノーサ(Humicola lanuginosa)〕の菌株、チアロスポレラ(Thiarosporella)、特にチアロスポレラ・ファセオリナ(Thiarosporella phaseolina)の菌株、トリコデルマ(Trichoderma)、特にトリコデルマ・ハージアナム(Trichoderma harzianum)およびトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)の菌株、および/またはベルティシリウム(Verticillium)の菌株から得ることができる。 本発明で用いられるリパーゼとして、好ましくは、カンジダ(Candida)の菌株、シュードモナス(Pseudomonas)の菌株、アスペルギルス(Aspergillus)の菌株、バチルス(Bacillus)の菌株、ペニシリウム(Penicillium)の菌株、リゾプス(Rhizopus)の菌株、リゾムコール(Rhizomucor)の菌株またはムコール(Mucor)の菌株から得られる。また、より好ましくは、リパーゼはカンジダ(Candida)の菌株から得られる。 市場から入手できるリパーゼとしては、リパーゼMYおよびリパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼQLM(名糖産業(株));リパーゼA「アマノ」6、リパーゼM「アマノ」10、リパーゼG「アマノ50、リパーゼF−AP15、リパーゼAY「アマノ」30G、リパーゼR「アマノ」GおよびリパーゼT「アマノ」(アマノエンザイム(株));スミチームNLS、スミチームRLS(新日本化学工業(株));ならびにリリパーゼA−10D、リリパーゼAF−5(ナガセケムテックス(株));エンチロンAKG−2000、エンチロンLP、エンチロンLPG(洛東化成工業(株));Lipolase100L、Platase20000L、Lipex100L(ノボザイムズ社製)等が挙げられる。これらのうち、リパーゼMY、リパーゼPL、リパーゼQLM、Lipex100Lが好ましく用いることができ、特に、カンジダ・シリンドラセア(Candidacylindracea)の菌株から得られるリパーゼMY(名糖産業(株))が好ましく用いられる。 本発明で用いられるリパーゼの量は、リパーゼが油脂と反応できれば特に制限されないが、油脂含有排水に含まれる油脂1gに対して、10〜1,000Uで用いることが好ましい。より好ましくは50〜500U、さらに好ましくは100〜200Uである。なお、リパーゼの活性単位(U)は、37℃、pH7の条件で1分間に1μモルの脂肪酸を遊離する酵素量である。 (油脂含有排水) 本発明の方法において、油脂含有排水とは油脂を含む排水を意味する。したがって、油脂を含有する排水であれば特に制限されないが、たとえば、レストランや家庭の厨房、食品工場などから排出される排水が挙げられる。このとき、排水には、油脂として、サラダオイル、ごま油、オリーブオイル、バターなどの調理油や、魚や肉に含まれる油などの食物由来の油などが含まれている。本発明の方法において、排水に含まれる油脂、すなわち、リパーゼで分解される油脂は、特に制限されず、動物性、植物性、魚油、合成油のどれでもよい。 排水中の油脂の含有量は、特に制限されず、油脂の量に応じて、適宜、シラスバルーンやリパーゼの量を選択することができる。また、上述したように、排水に含まれる油脂の種類によってリパーゼの反応性が異なるため、油脂の性質によってリパーゼを最適なものを選択することが好ましい。また、厨房からの排水のように、様々な油脂(植物油、動物油、魚油)を含む排水においては、分解特異性の低いリパーゼを選択するか、複数のリパーゼを組み合わせて添加することが好ましい。 (処理方法) 本発明の方法において、油脂含有排水と、シラスバルーンと、リパーゼとの混合順序は特に制限されず、シラスバルーンにリパーゼを含ませてから、リパーゼ担持シラスバルーンを油脂含有排水(グリーストラップ)に添加してもよい。また、シラスバルーンとリパーゼとを別々に油脂含有排水(グリーストラップ)に添加してもよいし、シラスバルーンとリパーゼとを一括して油脂含有排水(グリーストラップ)に添加してもよい。さらには、シラスバルーンをあらかじめグリーストラップ内に添加しておき、油脂含有排水とリパーゼとを添加してもよいし、リパーゼを何回かにわけてグリーストラップ内に添加してもよい。なお、シラスバルーンにリパーゼを含ませる方法としては、リパーゼを分散させた水溶液にシラスバルーンを浸すことで得られる。このときの水溶液としては、種々の塩化合物を含む緩衝溶液や水溶液などでよく、リパーゼの活性を消失させるものでなければ特に制限されない。 また、リパーゼおよび/またはシラスバルーンを、適当な液体に分散・懸濁して添加してもよい。用いられうる液体としては、リパーゼ活性を阻害しなければよく、水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。 本発明の方法は、シラスバルーンにより、排水中の油脂とリパーゼとの接触面積が増加するため、排水を撹拌する必要はない。したがって、本発明の方法は、乳化剤などの他の添加剤を使用しなくとも、シラスバルーンとリパーゼとで、排水を効果的に処理できる。また、微生物ではなくリパーゼを用いているため、曝気や攪拌を行う必要がなく、空気との接触が少なくなるため、排水中の油脂の酸化・腐敗が抑制される。 また、本発明の方法において、リパーゼが油脂を分解する際の温度、すなわちグリーストラップ内の温度としては、用いられるリパーゼにより異なるため適宜選択することができる。また、リパーゼが油脂を分解する際のpH、すなわちグリーストラップ内のpHとしても、用いられるリパーゼにより異なるため適宜選択することができる。また、用いるリパーゼだけでなく、リパーゼを生産する微生物により至適温度、至適pHは適宜選択される。たとえば、一般的には、温度は、10〜60℃が好ましく、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましく、pHは、pH4〜10が好ましく、pH5〜9がより好ましく、pH6〜8がさらに好ましく、pH6.5〜7.5が特に好ましい。 本発明の方法において、シラスバルーンとリパーゼとで排水を効果的に処理できるが、シラスバルーンと、リパーゼと、油脂含有排水と、に加えて、他の成分が混合されていてもよい。他の成分としては、たとえば、乳化剤、pH調整剤、微生物などが挙げられる。 乳化剤としては、リパーゼ活性を阻害しなければよく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸(NaDDBS)などの陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤、カルボン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、N−ドデシル−N,N−ジメチルベタイン、ベタインなどの両性界面活性剤などが用いられうる。なお、界面活性剤の使用量は、特に制限されず、排水の重量に対して、0.001〜10重量%である。 pH調整剤としては、酸やアルカリが挙げられる。排水のpHが、用いたリパーゼの至適pHの範囲にない場合、酸やアルカリなどを添加して、至適なpHになるようpHを調整するのが好ましい。この際、酸やアルカリとしては、特に制限されないが、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリが用いられる。pH調整剤の含有量は特に制限されず、所望のpHが実現される量を用いればよい。 微生物としては、リパーゼ活性を阻害しなければよく、特にリパーゼを分泌する微生物や、油脂の分解により生じる脂肪酸やグリセロールを分解する能力を有する微生物が好ましい。 (排水処理材) 本発明の排水処理材は、リパーゼとシラスバルーンとを含む。本発明の排水処理材は、上述したリパーゼとシラスバルーンとに加えて、他の成分を含んでいてもよいが、リパーゼとシラスバルーンとで構成されることが好ましい。 次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。 <試料> (1)擬似排水:ポリペプトン(日本製薬社製)1.8g、細菌用魚エキス(極東製薬工業社製)1.2g、炭酸水素ナトリウム0.7g、塩化ナトリウム45mg、塩化カリウム21mg、塩化カルシウム二水和物27mg、硫酸マグネシウム七水和物31mgを、水道水1Lにそれぞれ溶かし、HClを添加してpH5に調整したもの。 (2)油脂混合物:ナタネ油(和光純薬工業社製)、大豆油(和光純薬工業社製)、牛脂(和光純薬工業社製)を2:2:1(重量比)の割合で混合したもの。 (3)試験液:擬似排水5mLと油脂混合物50mgとをそれぞれ量り取り、試験管で混合したもの。 <評価> リパーゼMY(32U/mg、名糖産業株式会社製)を8U、シラスバルーンSYB1000H(平均粒径50μm、かさ比重0.18〜0.23)またはシラスバルーンSKB5000(平均粒径70μm、かさ比重0.17〜0.20)(豊和直株式会社製)を、試験液に5mg添加し、試験管を16〜72時間、40℃の恒温槽に静置した。 試験管を16時間、40時間、72時間の静置後、試験管に抽出溶媒(クロロホルム:メタノール=3:1(体積比))を5mL添加し、30秒間ボルテックスで攪拌した。攪拌後、遠心分離をして、クロロホルム層を分取した。 分取したクロロホルム溶液8μLを薄層クロマトグラフィ(TLC)にスポットし、展開溶媒(ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸=80:20:1(体積比))で展開した。展開したTLCを硫酸で染色後、LAS−4000(富士フイルム社製)で画像解析を行い、油脂に相当するスポット(Rf値0.45)の濃さと面積から、油脂の存在量を定量することで、油脂分解率を算出した。結果を図1に示す。 シラスバルーンの存在下、 排水に含まれる油脂を、リパーゼと反応させることにより油脂を分解することを有する、油脂含有排水の処理方法。 前記シラスバルーンが、平均粒径10〜200μmである、請求項1に記載の方法。 前記シラスバルーンが、前記油脂100重量部に対して1〜20重量部で用いられる請求項1または2に記載の方法。 前記リパーゼが、微生物由来である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 シラスバルーンとリパーゼとを含む排水処理材。 【課題】油脂を効率よく分解する油脂含有排水の処理方法およびその排水処理材を提供する。【解決手段】シラスバルーンの存在下、排水に含まれる油脂を、リパーゼと反応させることにより油脂を分解することを有する、油脂含有排水の処理方法であって、シラスバルーンは、油脂含有排水中で排水、特に油脂をシラスバルーン表面に吸着、好ましくはシラスバルーン孔内にも吸着させ、リパーゼと油脂との反応場として作用させるとともに、油脂を分解するリパーゼの担持体としての役割も果たす。【選択図】なし