| タイトル: | 再公表特許(A1)_液体クロマトグラフィー用充填剤、分離カラム及び液体クロマトグラフィー装置 |
| 出願番号: | 2011069261 |
| 年次: | 2013 |
| IPC分類: | G01N 30/88 |
河原井 雅子 伊藤 正人 源 法雅 JP WO2012026569 20120301 JP2011069261 20110826 液体クロマトグラフィー用充填剤、分離カラム及び液体クロマトグラフィー装置 株式会社日立ハイテクノロジーズ 501387839 ポレール特許業務法人 110000350 河原井 雅子 伊藤 正人 源 法雅 JP 2010189446 20100826 G01N 30/88 20060101AFI20131001BHJP JPG01N30/88 201GG01N30/88 FG01N30/88 101MG01N30/88 201X AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM 再公表特許(A1) 20131028 2012530729 19 本発明は、液体クロマトグラフィー特に高速アミノ酸分析に用いるクロマトグラフィー用充填剤、その充填剤を充填した分離カラム、及びその分離カラムを用いた分析装置に関する。 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の高速化はボイド時間t0(s)を短縮することで達成できる。分離能を損なうことなくt0を最小にするためには、高い線速度u(mm/s)で最小の理論段高さHETP(μm)を得、さらに圧力損失ΔP(MPa)を最小にすることが必要である。すなわちカラムの流動抵抗が最小、カラム・パーミアビリティKV(m2)が最大になることが必要である。高速なアミノ酸分析用カラムを実現するには、このようなカイネティック・プロット・アナリシス[非特許文献1]に基づく議論が必要である。 現状のHPLCの高速化は逆相系充填剤の微粒子化により実現されてきた。しかし充填剤粒子径が小さいほどカラムにおける圧力損失が大きくなる[非特許文献1]。全多孔性充填剤として例えばシリカゲル充填剤の粒子径は1.2〜1.8μmのものが市販されている。これらはvan Deemter plotをとると線速度を上げてもHETPが低下しにくいが、カラム背圧が上昇してしまう。[非特許文献2]。 圧力損失を抑え、高い線速度域で良好なHETPを得ることのできる構造の充填剤にコアシェル型充填剤がある[特許文献1]。全多孔性充填剤は、試料分子の充填剤粒子内拡散距離は直径となる。しかしコアシェル型充填剤は、コア部(特許文献1ではFused−Core(登録商標))には試料分子は拡散しないため、粒子内拡散距離は短くなる。たとえば直径1.7μmのコア部の表面に厚さ0.5μmの多孔性シリカ層を形成した、粒子径2.7μmのコアシェル型充填剤の場合、2.7μmの全多孔性シリカ充填剤の背圧でありながら、1.8μmの全多孔性シリカ充填剤と同等の分離性能が得られる[特許文献1]。しかし骨格がフューズドシリカであるため、使用する溶離液はpH3〜8に限定され、強酸・強塩基性の緩衝液は使用できない。また表面の残存シラノール基の影響により塩基性物質が吸着されてしまう。そのため、一部の酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸を溶出させにくくする。 一方、ポリマー系コアシェル型充填剤として、疎水性架橋重合体粒子の表面部分に親水性重合体の層が形成された被覆重合体粒子から成る充填剤がある。コア部に架橋度の高い重合体を用いているので、機械的強度が極めて大きく、耐圧性に優れた液体クロマトグラフィー用充填剤を得ることができる[特許文献2]。しかしこの充填剤は高分子のタンパク質を分析対象としており、コア部は多孔性の架橋重合体粒子となっている。このためコア部に分子量1,000以下の低分子化合物は比較的自由に浸透可能であり、サンプル溶質の拡散、すなわちクロマトグラフィーのピーク拡がりを抑制することはできず、理論段数は低いままである。 またタンパク質との親和性を良くするために疎水性コア粒子とは異なる材質を外表面に用いる。外表面には親水性重合体を被覆し、おもに使用される親水性単量体はアクリル酸、メタクリル酸などである。結局、このため重合化過程を疎水性および親水性のモノマーの重合と二重の重合が必要であり、工程が複雑化してしまい、更に保持時間の差異など充填剤品質のバラツキを生じやすい。さらに充填剤の粒子径は数百μmと大きいものを意図しており、これらの条件を備えた充填剤は分子量が数百であるアミノ酸の多成分分析には適さない。US2007/0189944A1特開平3−73848号公報Analytical Chemistry,77,4058−4070 (2005)LCGC north America,12,124−162 (2001) 高速液体クロマトグラフに求められる基本性能は、より短時間で分析すること、つまり高速化、複数の成分を精度よく定性・定量できること、つまり、高分離化である。しかし、これら2点は相反する関係にある性能である。高速液体クロマトグラムでは高速化を実現するために移動相速度を上げると理論段数が低下し、一方、高分離化を実現するためには分析時間を長くとって十分な理論段数を確保しなければならないからである。高分離分析と高速分析との両立を困難にさせている要因として、分離カラムの性能(理論段高さ、通液性・カラムパーミアビリティ)に影響を与えるカラム充填剤の性質が大きく寄与している。 本発明は、液体クロマトグラフィー用充填剤に係り、基本的には、特定の試料分子に対して或る浸透性のシェルがあって、核心部に前記特定試料分子に対して前記シェルより低い浸透性(非浸透性を含む)を有するコアを有し、前記コアに前記シェルをポリマー被覆したことを特徴とする。 ここで、充填剤のコアやシェルの浸透性は、コア又はシェルに試料が浸透する様を意味する。一方、カラムパーミアビリティは、カラムの性能を表す指標であって、充填剤の浸透性とは意味を異にする。 好ましくは、例えば、前記コアは、ポリマーのコアの表面部分にポリマーのシェルを被覆した粒子からなる。 さらに、好ましくは、前記コアとシェルは、いずれもスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であって、前記或る浸透性及びそれより低い浸透性をそれぞれ与えるために架橋度が異なる。また、前記シェルは、官能基(例えば強酸性陽イオン交換基)を導入したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。 さらに、好ましくは、充填剤は、例えば、架橋度50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の表面部分に強酸性陽イオン交換基を導入した架橋度20%以下(0%を含む)のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を被覆した粒子からなる。また、上記充填剤を用いた分離カラム、液体クロマトグラフィー分析装置及び液体クロマトグラフィー分析方法を提供する。 さらに充填剤のコア材質およびシェル母材として次のようなものを提案する。[コア材質について] コア部としては、上記したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体以外にも、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメタアクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、(メタ)アクリーレート系、ビニルアルコール系、アクリルアミド系、メタクリル酸系、アクリル酸系などを使用することができる。 スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレートなどポリマー系プラスチックは移動相にアルカリ性溶液が使われるときに耐薬品性が高い。 これらの材質はイオン交換にてタンパク質やアミノ酸などを分析する際に、カラム洗浄時に強アルカリを使用するときなどに適している。ポリマー種が多様であることにより、移動相の選択肢の幅が広がり、酸性、アルカリ性、極性有機溶媒から非極性有機溶媒まで広く適用可能となる。また、試料分子に対しても、親水性ポリマーから疎水性ポリマーまで広く適用することができる。 その他、コア部に使用できる材質としてハイドロキシアパタイト、アルミナ、カーボン、シリカゲルなど無機材質、チタン、ステンレス鋼、白金など金属、アルミナ、チタニアなどセラミックス、PEEK材(ポリエーテルエーテルケトン)など(スーパー)エンジニアリングプラスチック、PTFE、PFEなどフッ素樹脂、ダイアモンド、サファイアなど人工宝石…を用いることが可能である。 チタン、ステンレス鋼、白金などの金属やPEEK材は多くの有機化合物に対して耐薬品性を持っているため、様々な移動相に対応可能である。但し、濃硝酸や濃酢酸に対しては不適合であることが知られている。 金属材質をコアの材質として用いる場合は、好ましくは試料分子が吸着しないように表面に不活性化処理を施し、さらに好ましくは不活性化処理を多層的に処理するとよい場合がある。 シリカゲルをコアの材質として用いる場合は、好ましくは表面不活性を高めるためにシリル化処理を施すか、あるいはシラン処理を施すと良い場合がある。[シェル官能基] 別の実施形態として、弱陽イオン交換基として、カルボン酸基(-COOH)がある。また陰イオン交換クロマトグラフィー用充填剤がある。 架橋度50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の表面部分を被覆するものとして陰イオン交換基を導入した架橋度20%以下(0%を含む)のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体でも良い。 トリメチルアンモニウム基R-N+(CH3)3が強陰イオン交換樹脂、ジメチルエタノールアンモニウム基R-N+(CH3)2・CH2CH2OHが弱陰イオン交換樹脂である。ここまでは所謂イオン交換クロマトグラフィー用の官能基である。 また、逆相クロマトグラフィー用充填剤がある。代表的なものはC18、C8、C4があり、C30やC1(トリメチルシラン:TMS)もある。フェニル基、シアノ基、アミノ基、PFP(ペンタフルオロフェニル)基も使用される。 順相クロマトグラフィー用充填剤として、ジオール、グリセロプロピル基、アミノプロピル基、シアノプロピル基、シラノール基がある。 また、両性イオンを官能基として有するZIC-HILIC用充填剤(四級アミン−スルホン酸)もある。 イオンペアクロマトグラフィーの場合、逆相クロマトグラフィー用充填剤を用いてイオン対試薬を移動相に添加する。配位子交換クロマトグラフィーの場合は、イオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いて、金属イオンと競合配位子を移動相に添加する。疎水性相互作用クロマトグラフィーの場合、フェニル基、オクチル基、ブチル基、ヘキシル基、オリゴエチレングリコール基、プロピル基、メチル基などの官能基をシェルに結合させる。 アフィニティクロマトグラフィーの場合、ボロネート、ヘパリン、アミノベンズアミジン、チバクロンブルーF3G-A、イミノジ酢酸、トレシル基、抗体などの官能基をシェルに固定化させる。 ケモアフィニティクロマトグラフィーの場合、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シクロデキストリン、トリプトファン残基、エチレンジアミン四酢酸の類縁物質などの官能基をシェルに固定化させる。 キラル分離クロマトグラフィーの場合、キラルなクラウンエーテルなどキラルセレクターをシェルに化学結合させる。 サイズ排除クロマトグラフィーの場合は、コア部は非浸透性にしておいて、シェル部には官能基ではなく、一定のポア(細孔)を持たせることになる。 本発明によれば、カラム充填剤の特性を改善してカラムの機能(理論段高さ、通液性、カラムパーミアビリティ)を向上させて、高分離分析と高速分析との両立を可能にする。 特に、好ましい一例に示すように、コア部に架橋度の高い重合体を用いる場合には、機械的強度が極めて大きく、かつコア部にイオン交換基(例えばスルホン基)が存在しないので、膨潤・収縮を生じず、耐圧性に優れた液体クロマトグラフィー用充填剤を得ることができる。また、シェル部は分析対象の試料に対して浸透可能な薄い多孔質であるので、高速分析が可能となる。本発明が適用される高速液体クロマトグラフのシステム構成図。本発明が適用される高速液体クロマトグラフのシステムの流路構成図。本発明による充填剤の断面摸式図。本発明の充填剤を充填した分離カラムと従来の充填剤を充填したカラムのHETPと線速度の関係を示すグラフ。ニンヒドリン試薬の組成。たん白質加水分解物分析法に用いた緩衝液組成。たん白質加水分解物分析法の分析条件。本発明の分離カラムを用いたたん白質加水分解物分析法によるクロマトグラム。生体液分析に用いた緩衝液組成。生体液分析に用いた分析条件。本発明の分離カラムを用いた生体液分析法によるクロマトグラム。 本発明の好ましい実施形態において、充填剤のコア部にはスルホン基などのイオン交換基を形成しないが、シェル部には所望のイオン交換基を形成する。コア部はシェル部に比べて緻密で高強度であるので、充填剤の機械的強度を高めることができる。コア部では試料分子が拡散しないため、イオン交換基であるスルホン酸を導入しなくてよい。シェル部にはアミノ酸を分離するためのイオン交換樹脂を化学修飾する。粒子径はたとえば、2〜4μm、特に3μm程度、シェルの厚さは0.5〜1.0μmが望ましい。これは極端に言えば、シェルの厚さが0μmである場合、即ちコア部のみの充填剤の場合、所謂、固定相の体積がなく試料分子の負荷量が確保できないためである。固定相の相比をある程度、確保するためにシェルの厚さは0.5〜1.0μmが望ましい。 本発明の充填剤は、液体クロマトグラフィー用分離カラムに適用でき、その分離カラムを用いた液体クロマトグラフィー分析方法および分析装置に適用できる。この液体クロマトグラフィー分析方法は、多成分アミノ酸を一斉分離し濃度を測定するための分析方法である。 液体クロマトグラフィー用充填剤であって、該充填剤のシェル層に、特にスルホン基(−SO3H)を化学修飾し、強イオン交換基として導入した充填剤が好ましい。 本発明により、前記充填剤を充填した分離カラムに酸性溶離液を塩濃度のグラジエント溶離法により送液し、液体クロマトグラフィーの分離場として利用する液体クロマトグラフィー分析方法が提供される。 また、本発明により、前記充填剤に溶離液を水素イオン指数(pH)のグラジエント溶離法により送液し、液体クロマトグラフィーの分離場として利用する液体クロマトグラフィー分析方法が提供される。 更に、本発明により、分離カラム、ポンプ、注入器、カラムオーブン及び検出器を備え、少なくとも前記ポンプ及び検出器を制御し、並びにデータ処理を行う中央演算処理装置を備えた複数のアミノ酸成分を一斉分離し濃度を測定するための分析装置に用いる液体クロマトグラフィー装置であって、前記カラムオーブンは、架橋度50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体のコアの表面部分に強酸性陽イオン交換基を導入した架橋度20%以下(0%を含む)のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体シェルを被覆した粒子からなる充填剤を充填した分離カラムを備える分析液体クロマトグラフィー装置が提供される。好ましくは、この液体クロマトグラフィー装置の分離カラムは、平均シェル厚dS(μm)を用いて理論段高H(μm)が10×dS以下である。 本発明により、上記充填剤に送液する溶離液に有機溶剤を1%以上添加し、液体クロマトグラフィーの分離場として利用する液体クロマトグラフィー分析方法が提供される。 前記スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の液体クロマトグラフィー用充填剤は、コア部とシェル部の二重構造を呈し、コア部は分子量75以上の分子(例:グリシン)を浸透させず、シェル部は分子量75よりも小さな分子を浸透させるものであることが特に好ましい。ここで「分子を浸透する」とは、液体クロマトグラフィー条件下で、分子が透過することである。本発明において、ここでは、一例としてコア部は分子量75以上の分子を浸透させず、シェル部は分子量75よりも小さな分子を透過するが、これは、充填剤を構成するコア部及びシェル部のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の架橋密度が異なるためである。なお、本発明は、特定の分子量を有する試料分子(いわゆる特定試料分子)に対して、コア部が低浸透性(非浸透性を含む)であり、シェル部が浸透性を有するものであるが、これについては、浸透の許容基準となる分子量は、上記のような75に限定するものではなく、コア及びシェルの架橋密度を任意に調整することで任意に設定することが可能となる。 また、上記スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の液体クロマトグラフィー用充填剤であって、コア部とシェル部の二重構造を呈し、コア部はアミノ酸の分子を浸透させず、シェル部はアミノ酸分子を浸透させるものが好ましい。このようにコア部とシェル部を構成することができるのはそれぞれの架橋密度を変えるからである。 本発明において、コア部は低浸透性であることが好ましい。即ち、上記スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の液体クロマトグラフィー用充填剤のコア部が占める体積Vcが充填剤全(球)体積の10%以上であり、且つコア部の細孔総体積はVcの10%以下であることが好ましい。 また、上記スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の液体クロマトグラフィー用球状充填剤はコア部と表面シェル部の二重構造を呈し、粒子直径dPが4μm以下であり、コア部の直径がdPの1/2倍以上であることが好ましい。平均粒子直径dPが3〜4μmという要件がKV>5×10−15を実現し、シェル厚dS〜1μmがH<5μm以下であるための要件であるが、それぞれのパラメータdPとdSが、独立に圧力損失と理論段高に作用するかどうか明らかではない。 ちなみに、球状充填剤は、平均粒子直径dP(μm)を用いてカラム・パーミアビリティKV(m2)が1×10−15×(dP/3)2以上であることが好ましい。また、球状充填剤は、平均シェル厚dS(μm)を用いて理論段高H(μm)が10×dS以下であることが好ましい。 本発明のカラム充填剤は、液体クロマトグラフィーの分離カラムのカラム充填剤であり、コアである高架橋度疎水性重合体粒子の外周表面部分にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの多孔性シェルの層が形成された被覆重合体粒子(コア・シェル型充填剤)から成る充填剤である。 具体的には、コア部には架橋度50〜80%のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体即ち高架橋度重合体を用いることにより機械的強度を高める。また、シェル部は架橋度20%以下のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を用いる。ここで架橋度とは、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体におけるジビニルベンゼンのモル%である。 本発明によるカラム充填剤においては、コア部には試料分子が拡散しないため、イオン交換基であるスルホン酸を導入しなくてよい。シェル部はアミノ酸を分離するためのイオン交換基を有する低架橋密度のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体で構成する。 アミノ酸分析用イオン交換樹脂の構造パラメータついて、従来の全多孔性イオン交換樹脂と本発明の実施例によるコアシェル型充填剤(イオン交換樹脂)のパラメータを表1に示す。 本発明の実施例によるコア部は架橋度が高く細孔径が小さいため試料の拡散がおこらない。そのため粒子内拡散経路が短く、カラム(クロマトグラフィー装置)の線速度を上げても理論段高さHETPが変化しにくい。 本実施例の粒径は3μm程度であり、従来同様のカラム・パーミアビリティとなる。一方で厚さ1μm程度のシェル部は、物質移動が速やかに行えるため、従来よりも優れた理論段高さHETPが得られる。 アミノ酸分析において、流速を上げても分離性能が悪化しないため、従来の分析所要時間を1/3程度に短縮できる。たとえば、アミノ酸分析計による標準アミノ酸19成分の分析では、30分(サイクル時間53分)かかっていたものが、10分(サイクル時間20分)で分析できるようになる。 次に、図面を参照して実施例を詳細に説明する。 図1は、本発明が適用される液体クロマトグラフのシステム構成例である。液体クロマトグラフ装置1は、分析機器モジュールのポンプ2、オートサンプラ(試料注入装置)3、分離カラムを収容したカラムオーブン4、検出器5、およびデータ処理装置10からなる。データ処理装置10はシステム制御部6とデータ処理部7から構成され、システム制御部6は分析機器制御部8とパラメータ記憶部9からなる。分析時には、データ処理装置10のシステム制御部6から命令が発せられ、各モジュールのポンプ2、オートサンプラ3、カラムオーブン4、検出器5に分析シーケンスの一連のパラメータ群が送信(ダウンロード)される。試料注入ごとにデータ処理部7は検出器5からの検出信号をデジタル受信し、クロマトグラム波形として一旦形成し、データ解析する。 図2は、本実施例のアミノ酸分析計の装置構成及び流路構成例である。11〜14はそれぞれ第1〜第4緩衝液、15はカラム再生液である。この中から電磁弁シリーズ16によって溶離液として用いる何れかの緩衝液が選ばれ、緩衝液ポンプ17によってアンモニアフィルタカラム18,オートサンプラ19を介して導入されたアミノ酸試料は分離カラム20で分離される。ここで分離したアミノ酸は、ニンヒドリンポンプ22によって送られてきたニンヒドリン試薬21とミキサ23で混合され、加熱された反応カラム24で反応する。 ニンヒドリン試薬の組成を図5に示す。ニンヒドリン試薬は、ニンヒドリンとニンヒドリン緩衝液を1:1で流して混合する。反応によって発色したアミノ酸(ルーエマン パープル)は検出器25で連続的に検知され、データ処理装置26によってクロマトグラム及びデータとして出力され、記録,保存される。 図2に示す装置を用いてアミノ酸高速分析を行う場合、図3に示すコアシェル型イオン交換樹脂27を充填した分離カラムを使用する。コアシェル型イオン交換樹脂27は、直径2μm程度の50%架橋度ジビニルベンゼンーポリスチレン共重合体をコア28とし、その表面に厚さ1μm程度の多孔質シェル29を形成した、粒子径3μm程度の充填剤である。シェルはイオン交換基としてスルホン酸を導入したイオン交換樹脂である。 図4は上記システムを用いて本発明のコアシェル型イオン交換樹脂を用いたときと、従来の粒子径3μmのイオン交換樹脂を用いたときのカラムの理論段高さHETP(μm)と線速度u(mm/s)の関係である。コアシェル型イオン交換樹脂を用いた場合は、従来の同一粒子径のイオン交換樹脂と比べ、線速度を上げてもHETPが上昇することがなく、分離が悪化しにくいことがわかる。 アミノ酸の分離に使用されるイオン交換樹脂はスルホン酸基を化学修飾した強イオン交換樹脂である。一般にアミノ酸分析は、タンパク質の加水分解物として得られるアミノ酸約20成分を分離定量する方法と、血清や尿など生体液中の遊離アミノ酸およびその類縁物質約40成分を分離定量する方法が広く行われている。このように多成分を分離するには、各アミノ酸の物性(解離定数:pK1(COOH)、等電点:pI)と、イオン交換樹脂のベンゼン核とアミノ酸のアルキル基との間の疎水性相互作用などを考慮し分離条件パラメータを最適化しなければならない。 分離に影響を及ぼす条件パラメータには、移動相である溶離液の組成(塩濃度、pH、有機溶媒濃度)、カラム温度、溶離液流量などがある。タンパク加水分解物アミノ酸分析法の溶離液には、クエン酸ナトリウム系緩衝液、生体液アミノ酸分析法の溶離液には、クエン酸リチウム系緩衝液を用いるのが一般的である。いずれの分析法も多くの成分を溶出するために、pH、塩濃度、有機溶媒濃度の異なる数種類の緩衝液を切り替えながら分析する。 緩衝液を切り替える際、ステップワイズ溶出法とグラジエント溶出法がある。前者は瞬時に切り替えを行い、後者は特定の濃度勾配となるよう一定時間をかけて切り替える方法である。後者においては数種類の緩衝液を混合することにより、溶離液のpH、塩濃度、有機溶媒濃度を変化させることができる。溶離液のpHを変化させることは、アミノ酸各成分の解離を変化させる。塩濃度を高くすると、シスチンなど特別の成分を除いて各アミノ酸の保持時間を短くすることができる。溶離液に有機溶媒を加えると、疎水性相互作用の影響を抑制することができる。 上記の条件パラメータを最適化し、本発明の実施例に係るコアシェル型カラム充填剤を充填した分離カラムを使用してたん白加水分解物アミノ酸標準試料19成分を測定した。使用した緩衝液組成を図6に示す。これらを単独または混合することにより溶離液の組成を最適化したところ、図7の分析条件で緩衝液を切り換えると各成分を分離することができた。緩衝液の切り換えはステップワイズ溶出法により切り換え、温度、流量(mL/min)は一定で分析した。11min以降はカラムの洗浄と再生のためのプロセスである。図5の緩衝液と、本発明によるコアシェル型カラム充填剤を内径4.6mm、長さ60mmのステンレス製空カラムに充填した分離カラムと、図7の分析条件を使用して測定したクロマトグラムを図8に示す。図8のピークには各アミノ酸の略称を記載しており、それぞれの成分は以下のとおりである。 即ち、アスパラギン酸(Asp)、スレオニン(Thr)、セリン(Ser)、グルタミン酸(Glu)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、シスチン(Cys)、バリン(Val)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、リジン(Lys)、アンモニア(NH3)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、アルギニン(Arg)である。 従来の粒子径3μmのイオン交換樹脂を用いた分析法において、分析時間の高速化が試みられてきた。分析時間は全ピークが溶出するまでの時間で、サイクル時間は流路の洗浄およびイオン交換樹脂を再生する時間を分析時間に加えた時間である。流路洗浄・カラム再生のためには、最後の成分がカラムから溶出後、緩衝液を分析初期のものに戻し、ニンヒドリン試薬の代わりに図5に示すような再生液R3を流し、従来の全多孔性イオン交換樹脂を充填した同様の大きさの分離カラムを使用したとき、分析時間は30分、サイクル時間は53分かかっていた。本発明のコアシェル型イオン交換樹脂を充填した分離カラムを使用した結果、分析時間は10分、サイクル時間は18分に短縮された。 表2に従来の粒子径3μmの全多孔性イオン交換樹脂を用いたときと、本発明の実施例に係るコアシェル型イオン交換樹脂を分離カラムに用いたときの特性パラメータを示す。表2において、各特性パラメータの比較(耐圧:20MPa上限)を示す。本実施例によれば、従来と同様のカラム・パーミアビリティKV(m2)でありながら、コアシェル型充填剤を分離カラムに用いた時は、カラムの線速度uが2倍、理論段高さHETPが2倍、ボイド時間t0が6倍に向上した。 カラム・パーミアビリティKV(m2)は、コアシェル型充填剤のほぼ粒径dpに支配される。一方、カラムの高い線速度域(4 mm/s以上)で良好な(小さな)理論段高さHETPを得るためには、極力、コアシェル型の薄いシェル厚dsが必要なわけである。実際は粒径dp=3μm程度で、0.5〜1.0μmのシェル厚dsが望ましい。 アミノ酸分析における分離度は、最も分離の困難なイソロイシン(Ile)とロイシン(Leu)の分離度を指標とする。従来の陽イオン交換カラムを用いたポストカラム法全自動アミノ酸分析計によるたん白加水分解物アミノ酸19成分の分析時間は、Ile/Leuの分離度が1.2以上のとき、30分(カラム再生を含むサイクル時間は53分)、Ile/Leuの分離度が1.5以上のとき、80分(カラム再生を含むサイクル時間は130分)であった。これに対し、本発明におけるコアシェル型イオン交換カラムを使用したときの分析時間は、Ile/Leuの分離度が1.2以上のとき、10分、Ile/Leuの分離度が1.5以上のとき、約27分に短縮された。 本実施例のコアシェル型イオン交換樹脂を内径4.6mm、長さ60mmのステンレス製空カラムに充填した分離カラムを使用し、生体液アミノ酸42成分の分析を行った。使用した緩衝液組成を図9に示す。緩衝液は図10のとおりのグラジエント溶出法で切り換えた。すなわち、7.3minにPF−1/PF−2=80/20であった混合比を11.2minまでに70/30になるように直線的に変化させた。他の緩衝液切り換えはステップワイズ溶出法である。 カラム温度条件は、ステップワイズ法により切り換えた。流量(mL/min)は一定とした。37.6min以降はカラムの洗浄と再生のためのプロセスである。クロマトグラムを図11に示す。分析時間は従来のカラムでは115分(サイクル時間は148分)であったが、本発明のカラムを使用すると40分(サイクル時間は49.3分)に短縮された。このようにコアシェル型イオン交換カラムを使用すると、分析時間を約1/3に短縮できる。 図11のピークには各アミノ酸の略称を記載しており、それぞれの成分は以下のとおりである。即ち、ホスホセリン(P−Ser)、タウリン(Tau)、ホスホエタノールアミン(PEA)、ウレア(Urea)、アスパラギン酸(Asp)、ハイドロキシプロリン(Hypro)、スレオニン(Thr)、セリン(Ser)、アスパラギン(AspNH2)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(GluNH2)、サルコシン(Sar)、α−アミノアジピン酸(α−AAA)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、シトルリン(Cit)、α−アミノ−n−酪酸(α−ABA)、バリン(Val)、シスチン(Cys)、メチオニン(Met)、シスタチオニン(Cysthi)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、β−アラニン(β−Ala)、β−アミノイソ酪酸(β−AiBA)、γ−アミノ−n−酪酸(γ−ABA)、エタノールアミン(EOHNH2)、アンモニア(NH3)、ハイドロキシリジン(Hylys)、オルニチン(Orn)、1−メチルヒスチジン(1Mehis)、ヒスチジン(His)、3−メチルヒスチジン(3Mehis)、リジン(Lys)、トリプトファン(Trp)、アンセリン(Ans)、カルノシン(Car)、アルギニン(Arg)である。 本発明は、液体クロマトグラフィー特に高速アミノ酸分析に用いる液体クロマトグラフィー用充填剤、その充填剤を充填した分離カラム、その分離カラムを用いた分析装置及び分析方法に適用できる。1…高速液体クロマトグラフ、2…ポンプ、3…オートサンプラ、4…カラムオーブン、5…検出器、6…システム制御部、7…データ処理部、8…分析機器制御部、9…パラメータ記憶部、10…データ処理装置、11〜14…緩衝液、15…再生液、16A〜16E…電磁弁シリーズ、17…緩衝液ポンプ、18…アンモニアフィルタカラム、19…オートサンプラ、20…分離カラム、21…ニンヒドリン試薬、22…ニンヒドリンポンプ、23…ミキサ、24…反応カラム、25…検出器、26…データ処理装置およびシステム制御装置、27…コアシェル型イオン交換樹脂、28…コア、29…多孔性シェル 液体クロマトグラフィー用充填剤であり、特定の試料分子に対して或る浸透性のシェルがあって、核心部に前記特定試料分子に対して前記シェルより低い浸透性を有するコアを有し、前記コアに前記シェルをポリマー被覆したことを特徴とする充填剤。 前記コアは、ポリマーからなることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記シェルとコアは、いずれもスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であって前記或る浸透性及びそれより低い浸透性をそれぞれ与えるために架橋度が異なることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記コアは、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体コアであり、前記シェルは、官能基を導入したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体シェルであることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記コアは、架橋度が50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記シェルは、架橋度20%以下のスチレンージビニルベンゼン共重合体のシェルからなることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記シェルは、強酸性陽イオン交換基を保持したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であり、前記コアは前記強酸性陽イオン交換基を保持しないスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記強酸性陽イオン交換基は、スルホン基(−SO3H)であることを特徴とする請求項7記載の充填剤。 前記コアと前記シェルは、いずれもがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であって、前記シェルは分子量75よりも小さな分子に対して浸透性を有し、前記コアは分子量75以上の分子に対して前記シェルよりも低い浸透性であることを特徴とする請求項1記載の充填剤。 前記コアと前記シェルは、いずれもがスチレン−ジビニルベンゼン共重合体であって、前記コアはアミノ酸の分子を浸透させず、前記シェルはアミノ酸分子を浸透させる架橋密度を構成することを特徴とする請求項9記載の充填剤。 前記充填剤は、球状であって、前記コアが占める体積Vcが充填剤全体積の10%以上であり、且つ前記コア部の細孔総体積はVcの10%以下であることを特徴とする請求項9記載の充填剤。 前記充填剤は、球状の粒子であって、粒子直径dPが4μm以下であり、前記コアの直径がdPの1/2倍以上であることを特徴とする請求項9記載の充填剤。 前記充填剤は、球状の粒子であって、平均粒子直径dP(μm)を用いて、分離カラムに充填した時のカラム・パーミアビリティKV(m2)が1×10−15×(dP/3)2以上になるようにしたことを特徴とする請求項9記載の充填剤。 前記充填剤は、球状であって、平均シェル厚dS(μm)を用いて理論段高H(μm)が10×dS以下であることを特徴とする請求項9記載の充填剤。 液体クロマトグラフィー用充填剤であり、架橋度50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体コアの表面部分に架橋度20%以下のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体シェルを被覆した粒子からなることを特徴とする充填剤。 前記シェルに官能基を導入したことを特徴とする請求項15記載の充填剤。 前記官能基がイオン交換基であることを特徴とする請求項16記載の充填剤。 分離カラムに請求項15〜17のいずれかに記載の充填剤を充填したことを特徴とする分離カラム。 液体クロマトグラフィー用の分離カラムであって、固定相として充填される充填剤がコアにシェルをポリマー被覆してなり、前記シェルは、特定の試料分子に対して浸透性を有し、前記コアは前記シェルに比べて低浸透性であることを特徴とする分離カラム。 複数のアミノ酸成分を分離し濃度を測定するためのアミノ酸分析装置に用いる液体クロマトグラフィー装置であって、緩衝液の送液用のポンプ、試料の注入器、カラムオーブン及び検出器が順次配置され、かつ前記ポンプ及び検出器を制御し、ならびにデータ処理を行う中央演算処理装置を有し、 前記カラムオーブン内に実装される分離カラムには、充填剤として、架橋度50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体コアの表面部に架橋度20%以下(0%を含む)のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体シェルを被覆した粒子が充填されていることを特徴とする液体クロマトグフラフィー装置。 多成分アミノ酸の分離を損なうことなく、分析時間を短縮するためのカラム充填剤、分離カラム、分析装置、分析方法を提供する。コア部は架橋度50%以上のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなり、シェル部は架橋度20%以下のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる充填剤、及びそれを用いた分離カラム、それを用い高速液体クロマトグラフィー分析装置及び分析方法を開示する。