生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_糖尿病性脂肪肝の予防・改善・治療用組成物
出願番号:2011064390
年次:2012
IPC分類:A61K 36/18,A61P 3/10,A61P 1/16,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

吉積 一真 加藤 千尋 落合 優 奥田 千晶 山田 昌良 JP 2012201593 公開特許公報(A) 20121022 2011064390 20110323 糖尿病性脂肪肝の予防・改善・治療用組成物 株式会社ファンケル 593106918 長谷部 善太郎 100122954 佐藤 荘助 100150681 山田 泰之 100162396 児玉 喜博 100105061 吉積 一真 加藤 千尋 落合 優 奥田 千晶 山田 昌良 A61K 36/18 20060101AFI20120925BHJP A61P 3/10 20060101ALI20120925BHJP A61P 1/16 20060101ALI20120925BHJP A23L 1/30 20060101ALI20120925BHJP JPA61K35/78 CA61P3/10A61P1/16A23L1/30 B 4 1 OL 10 4B018 4C088 4B018LB10 4B018MD52 4B018MD61 4B018ME03 4B018ME14 4B018MF01 4C088AB12 4C088AC04 4C088CA03 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA75 4C088ZC35 本発明は、糖尿病性脂肪肝の予防、改善、または治療用組成物に関する。 一般的な脂肪肝を始め、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、過栄養性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール性脂肪肝または中毒性脂肪肝などの、肝臓中に脂肪が異常に蓄積する疾患を呈する患者は年々増加しており、なかでも非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、重篤な病状を示すとして特に問題視されている(非特許文献1)。さらに、肝臓への異常な脂肪蓄積は、肝臓の炎症や肝臓の繊維化(肝硬変)を引き起こしたり、肝癌等の重篤な疾患へ移行することが指摘されており、この脂肪蓄積を抑制することは極めて重要である。 肝臓への脂肪蓄積は、近年の生活様式の変化をはじめとする様々な要因が相互に重なり合い、肝臓におけるエネルギー代謝に異常をきたした結果引き起こされると考えられており、そのためその治療方法は一様ではない。現在、肝臓への脂肪蓄積を改善する方法としては、食餌療法、運動療法、薬物療法などが試行されているが、これらの方法は、コントロールや継続的な実施が困難であるために、必ずしも満足のいく治療効果が得られない場合も多い。一方、薬物療法においてはポリエンフォスファチジルコリン製剤が脂肪肝に対して保険適用となっているのみである。以上のように、肝臓への脂肪蓄積に対してはまだ十分な処置方法が確立されておらず、脂肪蓄積に対してより有効性の高い薬剤の開発が嘱望されている。 糖尿病は、多飲、多尿、体重減少などの症状、慢性の高血糖を主な特徴とし、一般的に、網膜症、腎症、末梢神経障害などの合併症を伴う疾患である。糖尿病は、その病因により、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病)、インスリン非依存性糖尿病(II型糖尿病)、二次性糖尿病(膵臓性糖尿病、膵外性/内分泌性糖尿病、薬剤誘発性糖尿病)などに分類されている。糖尿病は、血糖値の上昇を伴い、これにより血管系の脆弱性をもたらし、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患、失明や抹消血管の塞栓など種々の疾患の危険因子となることが知られている。さらに糖尿病では、インスリンの分泌の低下により、肝臓で中性脂肪が多く生みだされることで、脂肪肝が発生しやすくなるといわれている。更に脂肪肝は耐糖能を低下させ、糖尿病を悪化させる。この悪循環により患者の症状は悪化してゆく。糖尿病性脂肪肝の治療においては、血糖降下剤の使用が検討されている。しかしながら、血糖低下作用を有する糖尿病治療薬、例えばトルブタミドは、肝臓への脂肪蓄積を抑制する効果を発揮しないこと(非特許文献2を参照)や、逆に肝臓への脂肪蓄積を増悪させるおそれがあることも指摘されており、脂肪肝に対する有用性は確認されていない。 また、高脂血症治療剤であるクロフィブレートは、血中の中性脂肪やコレステロールを低下させる一方、肝臓への脂肪蓄積という副作用を引き起こすことが報告されている(特許文献1)。更に、高脂血症治療剤であるミクロソームトリグリセライド転送蛋白阻害薬においても、血中の中性脂肪やコレステロールを低下させるものの、肝臓への脂肪蓄積を誘発することが報告されている(特許文献2を参照)。以上の通り、これらの高脂血症治療薬においては、血中と肝臓での中性脂肪やコレステロールの量には相間が認められない上に、脂肪肝を誘発する場合も観察されている。このような観点から糖尿病性脂肪肝の予防治療に有効な化合物が多数提案されている(特許文献3)が、副作用の問題などが必ずしも解決できていない。 セイヨウニンジンボク(学名 Vitex agnus-castus)はチェストツリーとも呼ばれている地中海や中央アジアに広く自生している植物で、この植物の果実はチェストベリーとよばれており、黄体ホルモン様の作用を有しており、そのまま、或いは水やアルコール抽出物が女性の月経不順などの治療に広く用いられている。また安全性が高く、副作用の心配が殆どないとも言われている(非特許文献3参照)。特開平8−119860号公報特開2002−220345号公報国際公開第2006/002237号石井裕正,「医学のあゆみ」,2003年,第206巻,第5号,p.323−325岩村健一郎,「最新医学」,1978年,第33巻,第3号,p.524−531キャサリン・E・ウルブリヒト他編、渡邊昌 他監修、ハーブ&サプリメント486−493ページ(2007年1月10日発行)産調出版 本発明は、副作用などの問題が生じにくく、安全性の高い糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療用組成物を提供することにある。 本発明者らは糖尿病の治療方法を研究する過程で、上記のセイヨウニンジンボクに強い糖尿病性脂肪肝の予防、改善又は治療効果を有することを発見し、本発明を完成するに至った。 従って、本発明は、(1)セイヨウニンジンボクエキスを含有する糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療用組成物。(2)セイヨウニンジンボクエキスがセイヨウニンジンボク果実エキスである(1)記載の組成物。(3)上記(1)又は(2)記載の組成物を含有する医薬。(4)上記(1)又は(2)記載の組成物を含有する健康食品。を提供するところにある。 本発明により、投与による副作用などの問題が生じにくく、安全性の高い糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療用組成物を提供することができる。本発明組成物を投与又は非投与の糖尿病性脂肪肝モデル動物の血漿GOTを測定した結果を示す図である。なお、図面中のVAはセイヨウニンジンボクエキスの学名からの略称である。本発明組成物を投与又は非投与の糖尿病性脂肪肝モデル動物の血漿GPTを測定した結果を示すグラフである。本発明組成物を投与又は非投与の糖尿病性脂肪肝モデル動物の肝臓トリグリセリド測定結果を示すグラフである。本発明組成物を投与又は非投与の糖尿病性脂肪肝モデル動物の肝臓コレステロールの測定結果を示すグラフである。 本発明者らは、上述のとおり、セイヨウニンジンボクエキスに顕著な糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療作用を有することを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明の組成物は、セイヨウニンジンボクエキスを含有することを一つの特徴とする。また本発明においては、セイヨウニンジンボクエキスの別名としてチェストツリーエキス、チェストベリーエキス、アグニエキスを使用することがある。 本発明の組成物は、I型糖尿病またはII型糖尿病のいずれの糖尿病由来の脂肪肝の予防、改善または治療に利用可能である。 本発明に用いられるセイヨウニンジンボクエキスは上述したとおり、古くから食経験があり、また月経不順の治療に使用され、さらに安全性が明らかにされている水又はアルコール抽出物が好ましい。したがって服用に際して副作用のリスクが少ない。 本発明において、セイヨウニンジンボクエキスとしては、市販のエキスであっても使用可能であり、また本発明の目的で水又は50%エタノールなどの溶媒で抽出しても良い。抽出液は、加熱乾燥や噴霧乾燥など公知の方法で乾燥させることができる。また乾燥工程においてデキストリンなどの粉末化助剤を併用することができる。市販のセイヨウニンジンボクエキスはアグヌサイド、アウクビン、カスチシンなどのプロラクチン様活性成分を含有している。 本発明の実施例においては、セイヨウニンジンボクの乾燥果実から50%エタノール水溶液で抽出し、水分およびエタノールを蒸発させた濃縮物に40%重量のマルトデキストリンを添加し噴霧乾燥させたものをセイヨウニンジンボクエキスとして用いた。 本発明においては必要に応じて食品添加物、食品として使用される他の添加剤、例えば乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、ショ糖、還元麦芽糖、還元乳糖、澱粉、セルロース、セルロース誘導体、デキストリンなどの賦形剤、吸着剤、着色料、香料等を使用してもよい。 本発明の組成物を製造するには、例えば錠剤とする場合は、セイヨウニンジンボクの果実若しくはその抽出物、或いはその他の活性成分若しくはその誘導体及び必要に応じて添加剤を混合し、アルコール水溶液を加え、混合、乾燥、粉砕したものに滑沢剤を添加して打錠すればよい。本発明の組成物は錠剤に限らず、常法によりカプセル、顆粒、一般飲料、焼き菓子、パン等の任意の食品とすることができる。 本発明に包含される食品としては、乾燥食品、サプリメントなどの固形食品、また、清涼飲料やミネラルウォーター、嗜好飲料、アルコール飲料などの液状食品が挙げられる。固形食品としては、特に限定されるものではないが、練り製品、大豆加工品、調味料、ムース、ゼリー、冷菓、飴、チョコレート、ガム、クラッカー、ケーキ、パンなどが挙げられる。また、液状食品としては、特に限定されるものではないが、緑茶、ウーロン茶、紅茶、ハーブティーなどの茶類、濃縮果汁、濃縮還元ジュース、ストレートジュース、果実ミックスジュース、果肉入り果実ジュース、果汁入り飲料、果実・野菜ミックスジュース、野菜ジュース、炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、日本酒、ビール、ワイン、カクテル、焼酎、ウイスキーなどが挙げられる。本発明に含有される食品としてはまた、アミノ酸、タンパク質、ミネラルなどの各種栄養素を含有する栄養食品、栄養補助食品なども挙げられる。 また、本発明に包含される医薬品としては、溶液、懸濁物、粉末、固体成型物などのいずれでもよく、その剤型としては、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤、注射剤、貼付剤、坐剤、吸入剤などが挙げられる。 本発明の組成物の製法は、一般的な食品または医薬品の製法を適用することができる。 本発明の所望の効果を得るための本発明の組成物の投与量は、セイヨウニンジンボクのエキスとして、好ましくは0.3〜10g/日、より好ましくは、0.5〜5g/日である。ただし、個体差(疾患の重篤度、性別、年齢など)があるため、本発明における投与量は、かかる範囲にのみ限定されるものではなく、本発明の所望の効果が得られるように、個別具体的に投与量を適宜設定すればよい。 本発明の組成物の投与方法としては、特に限定されないが、好ましくは、経口投与であり、前記の好適範囲で投与すればよい。 本発明の組成物は、糖尿病性マウスにおいて、血液中のグルコース濃度と尿タンパク質量の低下がもたらされることが見出されている。従って、本発明の組成物は、糖尿病の予防、改善および治療効果も併せ持つ。 以下に本発明を糖尿病性脂肪肝モデルマウスを用いた試験例により説明するが、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。試験例 糖尿病性脂肪肝の予防・改善・治療試験(1) 試験飼料の調製 動物試験の試験群は試験飼料の投与によって、以下のように分類した。 (A)通常食(LF)群 (B)高脂肪・高ショ糖食(HFS)群 オリエンタル酵母工業株式会社により調製された高脂肪・高ショ糖食(F2HFHSD :脂肪含量30%(v/v)、ショ糖含量20%(v/v))にデキストリン(松谷化学工業 製:パインデックス)を0.66%(v/v)となるように添加して混合し調製した。 (C)高脂肪・高ショ糖食+セイヨウニンジンボク1.0%(HFS+VA1.0%)群 HFSにセイヨウニンジンボクエキスパウダー(商品名:アグニ乾燥エキス、アスク 薬品株式会社製、賦形剤:40%含有)を1.67%(v/v)となるように添加した もの。(2)試験方法 4週齢の雄性自然発症II型糖尿病モデルマウス(KKAy-TaJcl)を日本クレア株式会社(東京)より購入し、飼育・繁殖用飼料(CRF-1、オリエンタル酵母工業)を用いて1週間の馴化を行った。その後、1群6匹の群わけを行い、各マウスに(1)に示した各試験飼料を1ヶ月間、自由に摂餌させた。その間、1週間に二回、一般状態の観察、体重及び摂餌量を測定した。1ヶ月間の摂餌の後、絶食後採血、屠殺し、血漿中のGOT/AST、GPT/ALT活性、肝臓中のトリグリセリド(中性脂肪)、総コレステロール濃度を測定し、糖尿病性脂肪肝の発症と改善を確認した。 肝臓サンプルを乳鉢内で凍結状態にて粉砕し、約150mgを秤量した。秤量したサンプルにメタノール(和光純薬 特級)を500μLを入れ、氷冷下にてホモジナイズし、クロロホルム(和光純薬 特級)を1,000μLを加え、冷温下で一晩放置した。 その後、4℃、15,000rpmにて5分間遠心分離を行い、上層800μLを採取し、200μLの0.9% 塩化ナトリウム水溶液と混合した。さらに4℃、15,000rpmにて5分間遠心分離を行い、上層をすべて除去した。得られた下層より50μLを窒素乾固し、200μLのイソプロパノール(和光純薬 特級)を加え、溶解させ、4℃、15,000rpmにて5分間遠心分離した上層を試験サンプルとした。 以下、トリグリセリド(TG)、および総コレステロール濃度(TC)の測定に用いた。TG分析 試験サンプル2μLにトリグリセリドEテストワコー(和光純薬)を300μL加え、37℃で120分間放置した後、600nmの吸光度にて吸光度を測定し、検量線より肝臓TG値を測定した。TC分析 試験サンプル2μLにコレステロールEテストワコー(和光純薬)を300μL加え、37℃で20分間放置した後、600nmの吸光度にて吸光度を測定し、検量線より肝臓TC値を測定した。(3)試験結果 セイヨウニンジンボクエキスは糖尿病性脂肪肝ラットの食欲や、体重には影響しなかったが、図1、図2に示すとおり、肝機能の指標である血漿GOT、GPTを顕著に改善した。また図3、図4に示すとおり肝臓中の中性脂肪並びに総コレステロールを顕著に抑制した。以上の結果からセイヨウニンジンボクエキスは糖尿病性脂肪肝の予防・改善・治療に効果があることが明らかとなった。また副作用を予想させるような症状や生化学データの異常は認められず、極めて安全な剤であることが確認された。 以下に本発明で用いたセイヨウニンジンボクエキスを配合した処方例を示す。処方例1[カプセル剤]組成セイヨウニンジンボクエキス(セイヨウニンジンボク抽出物50%含有) … 50mg トコトリエノール … 30mgミツロウ … 10mgぶどう種子オイル …110mg 上記成分を混合し、ゼラチン及びグリセリンを混合したカプセル基剤中に充填し、軟カプセルを得た。処方例2 [錠剤]組 成セイヨウニンジンボクエキス(セイヨウニンジンボク抽出物50%含有) … 25mgマリアアザミ(シリマリン65%含有) … 20mgコラーゲン加水分解物 … 50mgセルロース … 40mgデンプン … 20mgショ糖脂肪酸エステル … 2mg 上記成分を混合、打錠し、錠剤を得た。処方例3〔ジュース〕(組 成) (配合;質量%)果糖ブトウ糖液糖 5.00クエン酸 10.4L−アスコルビン酸 0.20香料 0.02色素 0.10ゼラチン分解物(平均分子量300) 1.00セイヨウニンジンボクエキス(セイヨウニンジンボク抽出物50%含有) 1.00水 82.28 セイヨウニンジンボクエキスを含有する糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療用組成物。 セイヨウニンジンボクエキスがセイヨウニンジンボク果実エキスである請求項1記載の組成物。 請求項1又は請求項2記載の組成物を含有する医薬。 請求項1又は請求項2記載の組成物を含有する健康食品。 【課題】糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療用組成物を提供する【解決手段】セイヨウニンジンボクエキスを含有する糖尿病性脂肪肝の予防、改善または治療用組成物【選択図】図1


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