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タイトル:再公表特許(A1)_統合失調症の検出方法
出願番号:2011061068
年次:2013
IPC分類:C12Q 1/68,G01N 33/50,G01N 33/15,A61K 45/00,A61K 48/00,A61P 25/18,C12N 15/09,C12N 15/00,C07K 14/705


特許情報キャッシュ

糸川 昌成 新井 誠 宮下 光弘 JP WO2011142460 20111117 JP2011061068 20110513 統合失調症の検出方法 公益財団法人東京都医学総合研究所 591063394 小林 浩 100092783 大森 規雄 100120134 丸山 智裕 100181168 鈴木 康仁 100104282 糸川 昌成 新井 誠 宮下 光弘 JP 2010112545 20100514 C12Q 1/68 20060101AFI20130625BHJP G01N 33/50 20060101ALI20130625BHJP G01N 33/15 20060101ALI20130625BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130625BHJP A61K 48/00 20060101ALI20130625BHJP A61P 25/18 20060101ALI20130625BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130625BHJP C12N 15/00 20060101ALN20130625BHJP C07K 14/705 20060101ALN20130625BHJP JPC12Q1/68 AG01N33/50 ZG01N33/15 ZA61K45/00A61K48/00A61P25/18C12N15/00 AC12N15/00C07K14/705 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20130722 2012514848 37 2G045 4B024 4B063 4C084 4H045 2G045AA25 4B024AA01 4B024AA11 4B024BA80 4B024CA02 4B024CA09 4B024CA12 4B024HA12 4B024HA17 4B063QA18 4B063QA19 4B063QQ43 4B063QR32 4B063QR55 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS34 4B063QX02 4C084AA13 4C084AA17 4C084NA14 4C084ZA182 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA50 4H045EA34 4H045EA50 4H045FA71 本発明は、統合失調症の検出方法等に関する。 統合失調症は、気分障害と並ぶ精神科を代表する二大精神疾患である。生涯罹患率が1%と高く、高血圧、糖尿病などと同様に「ありふれた病気(common disease)」に属する。厚生労働省による平成20年患者調査によれば、傷病分類別の入院患者数では実に22%が精神及び行動の障害に該当し、そのうち統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害は187,400人にものぼる。また、外来患者数の内訳でみても、統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害が66,500人と報告されており、極めて頻度の高い疾患である。したがって、発症に伴う労働力や生産性の損失は想像以上に大きく、医療費は全呼吸器疾患と同額とさえ言われている。当事者家族の負担などまで含めれば社会的、経済的に広範囲な問題を生じている。統合失調症は、早期に発見し、早い段階から治療を開始するほど良い経過を辿って社会生活へ復帰できることが明らかにされている。したがって、統合失調症の早期診断に役立つ生物学的指標の同定、原因解明と有効な治療法・予防法の開発は、精神科医療における最も優先されるべき課題である。 L.C. Maillardによって報告されたメイラード反応は、タンパク質のアミノ基と還元糖のカルボニル基が非酵素的に反応することによって開始される。その結果、可逆的なシッフ塩基が形成され、シッフ塩基がアマドリ転位によって安定なアマドリ化合物を形成する。さらに、アマドリ化合物に脱水・酸化・転位などの複数の反応過程を経て、不可逆的最終産物であるadvanced glycation end products(AGEs)等が形成される。このような生体内においてAGEsが蓄積する状態は「カルボニルストレス(carbonyl stress)」と提唱されている(特許文献1:特開2009-39088、非特許文献1:Miyata et al., kidney Int. 55: 389-399, 1999)。これまでにペントシジン(pentosidine)やカルボキシメチルリジン(carboxymethyllysine, CML)など多くのAGEs構造体が同定されており、その生成過程や各種疾患における体内動態とその生理的意義が内科系疾患を中心に研究がなされている(非特許文献1)。 生体内でのカルボニルストレス消去系に機能する分子のひとつとしてビタミンB6がある(非特許文献2:Bohlender et al., Am J Physiol Renal Physiol 289: F645-59, 2005)。また、カルボニルストレス消去系には、ビタミンB6以外にもGLO代謝と呼ばれる機構が全身性に備わっている(非特許文献3:Thornalley PJ. Mol Aspects Med. 14: 287-371, 1993)。近年では,GLO1の機能不全が,気分障害,自閉症,不安障害,慢性アルコール中毒など複数の病態に関与することが報告されているが、AGEs蓄積との関連については十分な研究が行われていない。特開2009-39088号公報Miyata et al., kidney Int. 55: 389-399, 1999Bohlender et al., Am J Physiol Renal Physiol 289: F645-59, 2005Thornalley PJ. Mol Aspects Med. 14: 287-371, 1993 本発明は、統合失調症の検出方法を提供することを目的とする。 本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、分泌型の糖化最終産物受容体が統合失調症に関連することを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、生体試料中の糖化最終産物受容体[例えば膜結合型(mRAGE)あるいは可溶型(sRAGE)など]の量を測定し、得られる測定結果と統合失調症とを関連づけることを特徴とする統合失調症の検出方法である。 また、本発明は、生体試料中の糖化最終産物受容体[例えば膜結合型(mRAGE)あるいは可溶型(sRAGE)など]の量を測定し、得られる測定結果と統合失調症とを関連づけることを特徴とする統合失調症の状態の評価方法である。 上記方法において、グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常、カルボニル化合物のタンパク質修飾物の量、及びピリドキサール量からなる群から選ばれる少なくとも1つを前記受容体の量と組合せて、統合失調症を関連づけることができる。 統合失調症の状態としては、統合失調症の症状、進行度及び重症度からなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられる。また、カルボニル化合物のタンパク質修飾物としては、例えばペントシジンである。 さらに、本発明は、糖化最終産物受容体又は当該受容体をコードする遺伝子を含む、統合失調症治療用医薬組成物である。 さらに、本発明は、被検物質(候補物質)の存在下で糖化最終産物受容体と糖化最終産物との結合試験を行ない、結合を阻害する物質を統合失調症治療に使用し得る物質として選択することを特徴とする、統合失調症治療用物質のスクリーニング方法である。 さらに、本発明は、上記スクリーニング方法によって得られた物質を含む、統合失調症治療用医薬組成物である。 さらに、本発明は、糖化最終産物受容体の阻害物質を含む、統合失調症治療用医薬組成物である。糖化最終産物受容体の阻害物質としては、例えば、当該受容体のダウンレギュレーションを促進する化合物、当該受容体ブロッカー、又は糖化最終産物の作用を阻害する物質が挙げられる。 本発明によれば、統合失調症の検出法を提供することができる。本発明によれば、統合失調症をより詳細に検出又は検査することができ、早期診断及び早期予防法を確立することができる。また、難治症例に対して臨床応用が可能になるとともに、個別病態に応じてテーラーメイド医療を提供することができる。RAGEをコードするエクソン9およびエクソン10を含む領域の塩基配列及びプライマー設計を示す図である。統合失調症患者における血清中esRGAEの低下を示す図である。ペントシジンが高値を示す統合失調症患者群におけるesRGAEの低下を示す図である。ペントシジンが高値を示す統合失調症患者(GLO1 Glu/Glu)群においてより顕著にesRGAEが低下していることを示す図である。RGAE c.992-6G>AのGA遺伝子型をヘテロ接合体で有する個体において顕著なesRAGE低下を示す図である。ペントシジン蓄積、esRAGE低下及びビタミンB6低下を伴う症例において、発症年齢の若年化、入院期間の増大、抗精神病薬の投与量の増大を示す図である。統合失調症患者におけるesRAGEの低下を示す図である。RAGEをコードするエクソン6〜8を含む領域の塩基配列及びプライマー設計を示す図である。AGER variantsの変異型を保有する検体におけるesRAGEの低下を示す図である。ペントシジン、ビタミンB6、esRAGEによる症例の8分類を示す図である。 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。また、本明細書は、2010年5月14日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2010-112545号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。1.本発明の概要 本発明は、糖化最終産物(Advanced glycation end products (AGEs))を減らす方向に機能する(消去系として機能する)可溶型の糖化最終産物受容体、又は膜結合型の糖化最終産物受容体を指標として、統合失調症を検出する方法に関する。(1)統合失調症患者でのカルボニルストレスの関連 本発明者は、一部の統合失調症にカルボニルストレスが関連する可能性を見出した。すなわち、45名の統合失調症患者の血漿成分中のペントシジン(AGEsの代表的分子)レベルを定量した結果、21例(46.7%)において55.2 ng/ml以上(健常者平均値+2SDをcut-off値)のペントシジン蓄積が認められた。 統合失調症患者のペントシジン値(平均値:68.4 ng/ml)は、健常者(平均値:39.6 ng/ml)の約1.7倍にまで達していた。これらカルボニルストレスを示した症例では、ペントシジン上昇の三大要因である糖尿病、リウマチ、腎機能障害のいずれも認められなかった。したがって、症例におけるペントシジン蓄積は、統合失調症と関連することが示された。 さらに、一部の症例からAGEsの消去系(Kikuchi et al., Brain Res Brain Res Rev 41: 306-323,2003)における律速酵素であるグリオキサラーゼI(glyoxalase I(GLO1))遺伝子に遺伝的機能低下が同定されたことから、GLO1遺伝子変異を有するカルボニルストレス症例では、発症前から持続的なカルボニルストレスが存在する可能性が示された。(2)統合失調症患者でのビタミンB6低下 ビタミンB6は、生体内でピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンに相互変換されて様々な生理機能に重要な役割を担っている。本発明者は、統合失調症患者におけるペントシジン蓄積という知見に加えてビタミンB6濃度の顕著な減少(24.4%, 11例/21例中)を見出した。この現象は、カルボニルストレス消去能があるピリドキサミンがカルボニルストレス抑制のために動員され枯渇した結果であることが考えられた。 本発明者は、GLO1代謝が抗酸化、ビタミン群、アミノ酸等の種々の血中動態と相互に作用して生体の恒常性維持に寄与し、それらの分子ネットワークの機能破綻が統合失調症の病態に関与している可能性を疑い検討した(Krebs MO, et al. Trends Mol Med. 15(12):562-70, 2009)。 統合失調症患者におけるカルボニルストレスの分子基盤を探るため、1,761名の統合失調症患者を含む3,682名の被験者から提供されたDNAを用いて、GLO1遺伝子について遺伝子解析を行った結果、稀なフレームシフト変異およびミスセンス変異を14例同定した。フレームシフト変異をヘテロ接合体で有する統合失調症患者と健常者では、GLO1 mRNA、タンパク質発現、酵素活性が約50%まで低下し、血漿ペントシジンレベルは平均80.9 ng/mlと顕著な上昇を認め、ビタミンB6レベルは3.6 ng/mlと著しく低下していた。さらに、ミスセンス変異をホモ接合体で有する統合失調症患者でも酵素活性に約15〜20%の低下が認められ、血漿ペントシジン蓄積とビタミンB6低下が観察された。(3)分泌型の内因性糖化最終産物受容体の低下 糖化最終産物受容体(RAGE)には、全長型、N末端欠損型、C末端欠損型などの3種類の主要なスプライシングアイソフォームが存在する(Sakurai S, et al. J Am Soc Nephrol. 2003 Aug;14(8 Suppl 3):S259-63;Yonekura et al., Biochm. J. 370: 1097-1109, 2003.;Ohe et al., J. Biochem. 147: 651-659, 2010).)。 上記アイソフォームのうち、一般的に全長型を膜結合型RAGE(mRAGE)ともいう。 また、C末端欠損型は可溶型の糖化最終産物受容体であり、可溶型には、(i)内因性の分泌型RAGE(endogenous secretary RAGE (esRAGE)、及び(ii)全長型RAGEがマトリックスメタロプロテアーゼによってsheddingを受けた切断型RAGE(メタロプロテイナーゼ切断型RAGE)が存在する。上記esRAGEとメタロプロテイナーゼ切断型RAGEを合わせて「sRAGE」と呼ばれる(Katakami et al., Diabetes Vasc Dis Res 5,:190-197, 2008)。特に、sRAGEはAGEs結合領域を有し、膜貫通領域を欠いているため、細胞外へ分泌され、AGE-RAGE結合による細胞内シグナル活性化を介したサイトカイン産生や活性酸素種産生(酸化ストレス)などの惹起を抑制する機能を有することが知られ(Katayama N. CLINICIAN No.568 63-69, 2008)、臨床症状との関連も示唆されている(Steiner J, et al. Biol Psychiatry. 65(12):1107-1110, 2009)。したがって、統合失調症におけるAGE-RAGE系の分子基盤を明らかにすることにより、新たな統合失調症の早期診断、治療、予防法の開発への進展が期待される。 本発明者は、Glyoxalase I (GLO1)遺伝子変異を伴わないカルボニルストレス性統合失調症に糖化最終産物(Advanced glycation end products (AGEs))の消去系として機能する分泌型の内因性糖化最終産物受容体(esRAGE))低下が関連していることを見出した。また、分泌型esRAGEの低下にはRAGE遺伝子の遺伝的要因が関連することを見出した。したがって、本発明においては、分泌型esRAGE量および膜結合型(全長型)のRAGE遺伝子型による統合失調症の検出法及び診断法、並びに分泌型esRAGEの補充等による治療法の新たな開発が期待できる。 近年、統合失調症の病態仮説として酸化ストレスが注目されつつあるが、その分子機序は未だ不明な点が多い(Ng F, et al., Int J Neuropsychopharmacol. 11(6): 851-876, 2008.)。本発明者は、AGEs蓄積の消去系として働くAGE-RAGE(AGE受容体)系に着目し(Bohlender JM, et al. Am J Physiol Renal Physiol.289(4):F645-59, 2005)、統合失調症との関連を検討した。 本発明者は多発家系の発端者からAGEsの中和酵素GLO1をコードする遺伝子にフレームシフト変異を同定したことを機に、症例の末梢血においてAGEs(ペントシジン)が野生型の約3.7 倍にまで増加し(カルボニルストレス)、AGEs のスカベンジャーであるビタミンB6が顕著に低下していることを見出した。 また、本発明者は、200例の統合失調症患者について検討した結果、GLO1遺伝子型が判明した176例中66例(37.5%)にペントシジン蓄積を認めた。一方、健常対照でのペントシジン蓄積は、GLO1遺伝子型が判明した76例中3例(3.9%)であり、ペントシジン蓄積が統合失調症と有意に関連することを確認した(χ2= 30.05; df = 1; P < 0.0001; Odds = 14.6; 95%CI = 4.421 - 48.21)。さらに、176例中12例(6.8%)において、フレームシフト変異あるいはミスセンス変異が同定され、うち9例(5.1%)がペントシジン蓄積を示し、ペントシジン蓄積がGLO1変異と関連した(χ2 = 7.727; df = 1; P = 0.0054; Odds = 5.632; 95%CI = 1.466 - 21.64)。ペントシジン蓄積を認めるものの、GLO1変異を持たない症例は約32.4% (57例/176例中)に認められた。 以上のことから、統合失調症の全体の約4割にペントシジン蓄積(カルボニルストレス)が生じており、そのうち、GLO1のフレームシフト変異あるいはミスセンス変異を伴う症例が約13.6%(9例/66例中)に認められた。 従って、糖化最終産物受容体(可溶型RAGE、膜結合型RAGE)、GLO1遺伝子及びビタミンB6は、統合失調症の検出マーカーとして使用することができる。(4)RAGEブロッカーによる統合失調症治療 一般に、リガンドと受容体との間における生理作用は、受容体にリガンドが結合することにより受容体シグナルが発せられてその後のシグナル伝達が行なわれるというものである。しかしながら、リガンドが結合すると、受容体は細胞内へ移行陥入して、それ以上リガンドが結合しないようにする安全弁が働き、受容体シグナルが不必要に遷延しないようになっている。そして、大量のリガンドが長期慢性的に暴露されると受容体は長時間細胞内に陥入したままとなり、やがて細胞内で受容体の分解が始まり受容体総量の減少が生じる。この現象を「ダウンレギュレーション」と呼び、ダウンレギュレーションが行なわれるおかげで、大量のリガンドによるシグナル伝達の暴走が防御されている(この防御を「脱感受性」という)。 例えば、ドーパミン受容体やアセチルコリン受容体は、ドーパミンやアセチルコリン(リガンド)が結合すると受容体シグナルを発信してドーパミンニューロンやアセチルコリンニューロンの興奮を起こす生理作用が生じるが、上記ダウンレギュレーションにより、ドーパミン等が増えてもニューロンの興奮は必要以上に生じないように調節されている(脱感受性)。 統合失調症では、ドーパミン受容体の脱感受性に障害があるため、ドーパミンシグナルの暴走(亢進)が生じて幻聴が聞こえるという仮説もある。 RAGEは、本来、感染性細菌などが侵入した際に受容体として免疫応答シグナルを発する生理作用を持っている。従って、RAGEも、他の受容体と同様、免疫の過剰応答を防ぐために脱感受性機能は備わっていると考えられる。AGEがRAGEに結合してRAGE応答を起こしてしまうのは本来の生理作用ではないが、統合失調症の46.7%では過剰なAGEが存在する。従って、統合失調症患者においても、脱感受性によってRAGEが低下している(負の相関関係を有する)と考えられる。 そこで本発明においては、リガンドとしてAGEs、受容体としてRAGEに着目し、リガンドの発現と受容体の発現との関係についてマイクロアレイを用いて調べた。 その結果、統合失調症患者では、上記負の相関関係を有することが示された(マイクロアレイ試験については実施例2を参照)。 上記のようにRAGEが低下する現象は、AGEsによる過剰シグナルを防ごうとする生理的な正常反応であると考えられる。しかしながら、統合失調症患者では、それでも防ぎきれないほど過剰なAGEが存在している。従って、RAGEのダウンレギュレーションをさらに促進するような化合物、RAGEそのもののブロッカー(RAGEブロッカー)、AGE作用を阻害する物質(これらをまとめて「RAGE阻害物質」という)などが統合失調症の治療薬となるものと考えられる。 例えば、RAGEのダウンレギュレーションを促進する化合物として、例えばチアゾリジンジオンなどが挙げられ(Marx et al., Diabetes 53:2662-2668, 2004)、RAGEブロッカーとして、低分子量ヘパリン(Myint KM. et al., Diabetes. 2006 Sep;55(9): 2510-22)、α-リポ酸(Bierhaus A. et al., Diabetes. 1997 Sep;46(9): 1481-90)、フェニルピロール誘導体などが挙げられる。AGE作用を阻害する物質としては、Candesartan 又はOlmesartan (Qiuling F. et. al., Nephrol Dial Transplant (2004) 19: 3012-3020; Fujita M. et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 2006;26;e138-e139, 2006)が挙げられる。「AGE作用を阻害する」とは、例えば、内皮細胞を介してRAGEの発現抑制とRAGEの下流シグナルであるNFkB、VCAM1の抑制を引き起こすことをいう。また、Aminoguanidine (Thornalley PJ., Arch Biochem Biophys 419: 31-40, 2003)、OPB-9195 (Miyata et al., J Am Soc Nephrol 11: 1719-1725, 2000; Nakamura et al., Am J Kidney Dis 41: S68-S71, 2003)、ALT-946 (Forbes et al., Diabetologia 44: 108-114, 2001)、Alagebrium (Susic et al., Curr Opin Cardiol 19: 336-340, 2004), N-phenacylthiazolium bromide (Cooper et al., Diabetologia 43: 660-664, 2000) などもAGE形成を抑制することでAGE作用を阻害する。 また、sRAGE はAGE結合領域を有するものの膜貫通領域を欠くため、細胞外に分泌され、AGE作用を阻害する。従って、sRAGE、好ましくはesRAGE は統合失調症治療薬となり得る。2.統合失調症の検出方法 本発明においては、RAGE及びsRAGEは、統合失調症の臨床マーカーとして利用することができ、生体試料中のRAGE又はsRAGEの量を測定することにより、その測定結果を指標として統合失調症を検出することができる。(1)生体試料 生体試料としては、特に限定されるものではなく、例えば血液及び血液成分(血清、血漿、血球など)、尿、髄液、唾液、涙液、汗などの生体由来の液体成分;毛髪、バイオプシーなどで切除された組織の一部などの生体由来の固体成分を挙げることができる。好ましくは血液又は血液成分であり、特に好ましくは血清又は血漿である。なお、生体から採取された試料を直接使用しても、また何かの処理を加えて調整した試料も本発明の生体試料の対象として使用することができる。(2)糖化最終産物受容体(mRAGE又はsRAGE)の量の測定 糖化最終産物受容体(mRAGE又はsRAGE)の量の測定は、当該受容体について十分な検出感度と測定精度を有する方法であれば特に限定はされず、公知の分析方法や免疫学的方法を採用することができる。例えば、分析方法としてはHPLC法等が挙げられ、免疫学的測定法としてはELISA法、RIA法、Sandwich ELISA法等が挙げられる。また、測定対象はmRAGE及びsRAGEのどちらでもよいが、好ましくはsRAGE、さらに好ましくはesRAGEが挙げられる。 統合失調症患者のesRAGEのレベルの平均値はおよそ0.23 ng/mLで、健常者のレベルの平均値であるおよそ0.32 ng/mLに比べて約0.72倍の濃度である(P < 0.01で、統計学的差異は99.9%以上である)。統合失調症患者のesRAGEのレベルは、被検試料中の濃度が0.19 ng/ml (健常人の平均-1SD)以下、より好ましくは0.06 ng/mL(健常人の平均-2SD)以下であれば統合失調症と関連づけることができる。 本発明の別の態様においては、統合失調症患者由来の被検試料中におけるesRAGE量(Test)と、健常人由来の被検試料中におけるesRAGE量(Control)との比率(Test/Control)が、0.72以下(例えばTestの平均値:0.2308/Controlの平均値:0.3199)、好ましくは0.48以下(例えばTestの平均値-0.5SD:0.1551/Controlの平均:0.3199)、より好ましくは0.25以下(例えばTestの平均値-1SD:0.2308/Controlの平均値:0.3199)であれば統合失調症の検出について陽性と判定し、また、0.72以上(例えばTestの平均値:0.2308/Controlの平均値:0.3199)であれば擬陽性と判定することができる。 また、本発明の別の態様においては、糖化最終産物受容体(mRAGEあるいはsRAGEなど)のmRNA量を指標として統合失調症を検出することができる。mRNAの測定は、例えばRT-PCR、Real-time PCR、マイクロアレイ等により行なうことができる。そして統合失調症であるかどうかの判断は、健常者由来のmRNA発現量と比較すればよい。代表的なマイクロアレイ法によるRAGE mRNA解析では、例えば、NM_001136 (Homo sapiens, advanced glycosylation end product-specific receptor, transcript variant 1, mRNA), NM_172197 (Homo sapiens, advanced glycosylation end product-specific receptor, transcript variant 2, mRNA), AB061669 (Homo sapiens, mRNA for N-terminal truncated form of receptor for advanced glycation endproducts) などに対応した数種類の遺伝子発現を網羅的に検出することができる。 統合失調症患者由来の被検試料中におけるmRNA発現量(Test)と、健常人由来の被検試料中におけるmRNAの発現量(Control)との比率(Test/Control)を比較することで、統合失調症を判定する。例えば、0.8〜0.7以下(20〜30%減少)、好ましくは0.7〜0.6以下(30〜40%減少)、より好ましくは0.6〜0.5以下(40〜50%減少)であれば統合失調症の検出について陽性と判定することができる。 統合失調症患者のmRAGEのレベルは、上記esRAGE濃度を指標とした統合失調症の判定基準の設定手法と同様にして、統計処理により設定することができる。 ところで、本発明の方法では、複数の患者由来の生体組織試料を用いてmRAGE又はsRAGEのレベルを測定する場合がある。従って、予め規定された数の統合失調症患者(1次母集団)において上記mRAGE又はsRAGE量を測定し、得られた測定値を基本データとして、この基本データと、検出の対象となる個々の被験者由来の生体試料由来のmRAGE又はsRAGEの量とを比較することができる。 さらに、上記測定された被験者患者のデータが所定濃度以上のときは前記母集団の値に組み込んでmRAGE又はsRAGEレベルを再度データ処理し(平均値化等)、対象となる患者(母集団)の例数を増やすこともできる。例数を増やすことにより、RAGE又はsRAGEの臨界値の精度を高め、場合により臨界値を適宜修正することにより、統合失調症の検出又は診断精度を高めることができる。 上記検出結果は、例えば統合失調症の確定診断を行う場合の主要資料又は補助資料とすることができる。より詳細に統合失調症の検査又は確定診断を行う場合には、上記検出結果に加えて、その他の検査結果、例えばカルボニル化合物の修飾物のレベル、ピリドキサール(ビタミンB6)のレベル、及びGLO遺伝子異常から選択される少なくとも1つと組み合わせて、総合的に判断すればよい(後述)。(3)RAGE遺伝子又はsRAGE遺伝子の変異 本発明においては、糖化最終産物受容体遺伝子として、膜結合型のmRAGE遺伝子(NM_001136)(配列番号1)の変異若しくはその対応アミノ酸配列(配列番号2)(NP_001127)の変異、又はesRAGE遺伝子(AY755620) (配列番号3)の変異若しくはその対応アミノ酸配列(配列番号4)(AAX07273)の変異等を指標として統合失調症を検出することができる。これらの変異などは、統合失調症の確定診断を行う場合の主要資料又は補助資料とすることができる。また、上記以外の変異を加味して、統合失調症の検出又は診断精度を高めることができる。例えば、本発明においては以下の変異を利用することができる。 c.964+141 G>A 翻訳開始点から964番目の塩基から3’方向のイントロン141塩基目のGからAへの多型 c.965-163 C>T 翻訳開始点から965番目の塩基から5’方向のイントロン163塩基目のCからTへの多型 *196 G>A 翻訳終止点から196番目の塩基のGからAへの多型 c.992-6G>A 翻訳開始点から992番目の塩基から5’方向のイントロン6塩基目のGからAへの多型3.統合失調症の状態の評価方法 前記2.項に示す検出方法と同様に、得られたmRAGE又はsRAGE量の測定結果と統合失調症の状態とを関連付けて統合失調症の状態を評価又は診断することができる。陽性と判定される場合には、統合失調症を発症している又はその可能性があると判断し、統合失調症の状態を評価することができる。 統合失調症の状態とは、統合失調症のうち陽性症状又は陰性症状の有無、進行度又は全般性生活尺度(GAF)を意味する。上記評価に際し、これらの統合失調症の状態は1つを選択してもよく、複数個を適宜組み合わせて選択してもよい。統合失調症の症状を評価するには、治療抵抗性であるか否か、PANSSによる重症度評価尺度などを判断する。 陽性症状には妄想、概念の統合障害、幻覚による行動、興奮、誇大性、猜疑心、敵意などが挙げられ、これらの中から少なくとも1つに該当するか否かにより判断する。陰性症状には、感情の平板化、情緒的引きこもり、疎通性の障害、受動性/意欲低下による社会的引きこもり、抽象的思考の困難、会話の自発性と流暢さの欠如、常同的思考などが挙げられ、これらの中から少なくとも1つに該当するか否かにより判断する。 統合失調症の進行度は、GAFが70以上のときは軽症と判断し、GAFが30未満のときは重症と判断する。 統合失調症の症状評価は、PANSSのP score + N scoreの合計が72点以上のときは重症と判断し、PANSSのP score + N scoreの合計が24点未満のときは軽症と判断する。 本発明によれば、統合失調症に関しては健常人と比較してesRAGEが明らかに低値を示すことが確認できる。すなわち、本発明の方法の一つの態様においては、極めて高い確度でesRAGEを指標として統合失調症であるか否かを判定することができる。4.統合失調症マーカーの組み合わせ 本発明において、糖化最終産物受容体(mRAGE又はsRAGE)の量を指標とした統合失調症の検出のほかにペントシジン等のカルボニル化合物のタンパク質修飾物、ピリドキサール及びGLO1遺伝子変異を統合失調症のマーカーとして組み合わせることができる。この場合、組合せの順序は限定されるものではない。例えば、血漿中のペントシジンを最初に測定し、所定臨界値を境に被験者を高ペントシジン群と通常ペントシジン群に分類する。次に、sRAGE(例えばesRAGE)の量を測定して、所定臨界値を境に被験者を低値群と通常群に分類する。さらに、ピリドキサールのレベルを測定し、低値群と通常群に分類する。このように、ペントシジン、esRAGE及びピリドキサールの量を指標とすると、高値又は低値群と、通常群に分けることによって、合計8タイプの統合失調症に分類し、それぞれの病態を評価することができる(表1)。 上記表1において、病態1〜8は統合失調症の重症度を示すものであり、以下のように分類することができる。 病態1:PANSSのP score + N scoreの合計が84点以上 病態2:PANSSのP score + N scoreの合計が72点以上84点未満 病態3:PANSSのP score + N scoreの合計が60点以上72点未満 病態4:PANSSのP score + N scoreの合計が48点以上60点未満 病態5:PANSSのP score + N scoreの合計が36点以上48点未満 病態6:PANSSのP score + N scoreの合計が24点以上36点未満 病態7:PANSSのP score + N scoreの合計が14点以上24点未満 病態8:PANSSのP score + N scoreの合計が14点 本発明により、糖化最終産物受容体のうちmRAGE又はesRAGEの量を指標とすることにより、これまで細かく分類できなかった統合失調症を、例えば8つのグループに分類することができ、それぞれの病態に応じて治療方針を決定することができる。例えば、病態1〜4は治療抵抗群に属するため、従来の統合失調症改善薬は有効でないことが多く、別の治療法を検討する必要があるのに対し、病態5〜8では、従来の治療法でも有効となる可能性が高くなり、患者にとって負担が軽減される。 以下、本発明においてmRAGE又はsRAGEと組み合わせて使用できるマーカーについて説明する。(1)カルボニル化合物の修飾物 対象とするカルボニル化合物としては、アラビノース、GO、MGO、3−DG、グリコールアルデヒド、デヒドロアスコルビン酸、ヒドロキシノネナール、マロンジアルデヒド、アクロレイン、5−ヒドロキシメチルフルフラール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、レプリン酸、フルフラールなどを挙げることができる。これらの量は、通常既知濃度の標準品を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)などの機器分析を行うことによって測定することができる。 またこれらのカルボニル化合物と生体の蛋白質とが反応して生成する蛋白修飾物(例えば「AGEs」)(以下これを単に「AGEs」という)も同様に、通常既知濃度の標準品を用いて、HPLCやGC/MSなどの機器分析を行うことによって測定することができる。なお、AGEsは複数の構造体(AGEs構造体)の集合体である。従って、AGEsの測定はAGEs構造体を測定することによって行うことができる。AGEs構造体としては、ペントシジン、クロスリン、ピロピリジン、ベスペルリジンA,B,C、glyoxal-lysine dimmer(GOLD)、methylglyoxal-lysine dimmer(MOLD)(以上、蛍光性物質)、Nε-(carboxymethyl)lysine(CML)、Nε-(carboxyethyl)lysine(CEL)、アルグピリミジン、ピラリン、イミダゾロン、GA-ピリジン(以上、非蛍光性物質)などを挙げることができ、好ましくはペントシジンである。 ペントシジンはペントースと等モルのリジンとアルギニンが架橋した構造を有し、酸加水分解に安定な蛍光性物質である。加齢や糖尿病の発症に相関してヒトの皮膚に蓄積することが知られており、特に糖尿病の発症や末期の腎症において増加することが報告されている。血液など蛋白質中に含まれるペントシジンは、酸加水分解後にその蛍光性(Ex:335nm、Em:385nm)を指標としてHPLCで定量することができる。また、ペントシジンは、ペントシジンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫化学的な方法(例えばELISA法、特にサンドイッチELISA法や競合ELISA法など)を用いて定量することができる。なお、ペントシジンに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は、定法に従って調製することができるが、簡便には商業的に入手することもできる(例えば(株)トランスジェニック、伏見製薬(株)など)。そのほか、AGEs構造体であるカルボキシメチルリジン、ならびにマロンジアルデヒドやヒドロキシノネナールの蛋白修飾物に対する抗体も商業的に入手することができる。 競合ELISA法は、ペントシジンなどのAGEs構造体を固相化したマイクロプレートに蛋白分解酵素で前処理した検体(血漿)および標準AGEs構造体を加え、さらにAGEs構造体に対する抗体を加えて反応させ、次いで洗浄後、酵素溶液を加えて再洗浄し、発色剤を加えて吸光度を測定することによって行うことができる。当該方法はペントシジンの血液化学検査として定められている方法であり、例えば「FSKペントシジン」(製品名)((株)伏見製薬所)などの定量キットを用いることで簡便に行うことができる。また、皮膚に蓄積したペントシジンなどのAGEs量は、市販のAGE−Reader機器(Diagn Optics)を用いて簡便に測定することができる。(2)ピリドキサール(ビタミンB6) 本発明の検査方法は、より具体的には、上記方法により被験者の生体試料中のピリドキサール量を測定した後、当該測定値を、健常者における対応する量(対照量)と対比し、高低を評価することによって行うことができる。この場合、被験者が統合失調症罹患者であるか、または将来それを発症する危険性が高いとの判断は、被験者のピリドキサール量が対照量より低いことを指標とすることができる。なお、健常者のピリドキサールの血清濃度は、男性で6.0−40.0ng/ml、女性で4.0-19.0 ng/mlである。 ピリドキサール値はホモシステイン値と連動しており、ピリドキサール値が低値になるとホモシステイン値は高値になる傾向にある。このため、ピリドキサール量を測定する場合は、併せてホモシステイン量を測定し、ピリドキサール量の測定値の精度・正確性を確認してもよい。この場合、被験者のピリドキサール量が対照量より低く、また当該被験者のホモシステイン量が健常者のホモシステイン量(対照量)よりも高い場合は、当該被験者が統合失調症罹患者であるか、または将来それを発症する危険性が高いという蓋然性が高くなる。ホモシステイン量は、定法に従って測定することができ、例えば、通常、既知濃度の標準品を用いて、HPLCやGC/MSなどの機器分析を行うことによって測定することができる。なお、健常者のホモシステインの血清濃度は、3.7−13.5nmol/mlである。(3)グリオキシラーゼ遺伝子の異常 グリオキシラーゼI遺伝子(GLO-I遺伝子ともいう)の遺伝子異常を有するものであってもよく、また予めグリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常を測定する検査を受けた者であってもよい。ここで対象とするグリオキシラーゼI遺伝子異常とは、グリオキシラーゼIの欠損やグリオキシラーゼIの発現不良など、結果としてグリオキシラーゼI活性の低下を招く遺伝子異常を意味する。具体的には、グリオキシラーゼI遺伝子の少なくとも一つのアレルが点突然変異し(グリオキシラーゼI遺伝子のコード領域の塩基配列(NM_006708)(配列番号5)の79位と80位の間へのアデニン挿入)、これによりフレームシフトしているケース、またはグリオキシラーゼIのアミノ酸配列(NP_006699)(配列番号6)の111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をホモ接合的に有するケースを挙げることができる。前者の遺伝子異常の場合は、血液中のグリオキシラーゼI活性が健常者に比して約50%低下していること、また後者の遺伝子異常の場合は、血液中のグリオキシラーゼI活性が健常者に比して約20%低下していることが確認されている。なお、これらの遺伝子異常に限らず、グリオキシラーゼI活性の低下を招く遺伝子異常であればよい。 なお、本発明が検査の指標とするカルボニル化合物の蛋白修飾物(AGEs)、ピリドキサール量は、腎機能障害、糖尿病または炎症の有無によって変動する。従って、被験者は、少なくとも腎機能障害、糖尿病および炎症を有しない者であることが好ましい。 本発明が対象とするGLO-I遺伝子の遺伝子異常は、グリオキシラーゼI(GLO-I)の欠損やGLO-Iの発現不良など、結果としてGLO-I活性の低下を招く遺伝子異常である。その限りにおいて特に制限されないが、具体的には、GLO-I遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号5)の少なくとも一つのアレルが点突然変異し(79位のアデニンと80位のシトシンの間へのアデニン挿入)、これによりフレームシフトしている遺伝子異常、およびGLO-Iのアミノ酸配列(配列番号6)の111番目のアミノ酸の変異(Glu→Ala)をホモ接合的に起こす塩基置換変異を挙げることができる。前者の遺伝子異常の場合は、血液中のGLO-I活性が健常者に比して約50%低下していること、また後者の遺伝子異常の場合は、血液中のGLO-I活性が健常者に比して約15〜20%低下していることが確認されている(特開2009-39088号公報の実施例参照)。 上記遺伝子異常の検出は、具体的には、(i)遺伝子異常を含む領域でPCRを行い、SSCP法で検出する方法、(ii)遺伝子異常を含む領域でPCRを行い、PCR産物に対する制限酵素の切断様式から検出する方法、(iii)同PCR産物を直接シーケンシングして、配列を決定する方法、(iv)遺伝子異常を有する領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブとして使用し、個体のDNAとハイブリダイズさせるASO(allele specific oligonucleotide)法、(v) 遺伝子異常を有する領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブとして使用して、質量分析装置等で検出する方法など、公知の方法を用いることにより行うことができる。5.医薬組成物 本発明の医薬組成物は、統合失調症の治療に関して優れた効果を発揮し得るものであり、sRAGE又はsRAGEをコードする遺伝子、あるいはRAGE阻害物質は、統合失調症治療の有効成分として用いることができる。すなわち、本発明は、前述したsRAGE、sRAGEをコードする遺伝子、又はRAGE阻害物質を含有する統合失調症治療用医薬組成物を提供するものである。従って、本発明は、sRAGE、sRAGEをコードする遺伝子、又はRAGE阻害物質を統合失調症患者に投与することを特徴とする、統合失調症の治療方法を提供する。 本発明の医薬組成物において有効成分となる、sRAGE又はsRAGEをコードする遺伝子(以下、説明の便宜上単に「sRAGE」という)、あるいはRAGE阻害物質は、必要に応じて薬学的に許容される塩や水和物等の状態で用いることができるし、また、治療剤としての保存安定性を考慮した適当な化学的修飾がなされた状態で用いられてもよく、特に限定はされない。 本発明の医薬組成物の有効成分として使用されるsRAGEは以下の通りである。 esRAGEタンパク質:配列番号4で示されるアミノ酸配列の全長又は部分断片である。部分断片は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有し、AGEsとの結合活性を持つものを使用することができる。 メタロプロテイナーゼ切断型RAGEは、esRAGEタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)の1〜315番目のアミノ酸配列を有するものである。 従って、sRAGEのアミノ酸配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列、又は配列番号4に示すアミノ酸配列の1〜315番のアミノ酸配列を指す。 なお、AGEsとの結合活性は、レポーター遺伝子アッセイ系や免疫学的測定法等により測定することができる(詳細は後述)。 esRAGE遺伝子:配列番号3で示される塩基配列の全長又は部分断片である。部分断片は、配列番号3に示す塩基配列を有し、翻訳された場合にはAGEsとの結合活性を持つもの(例えば配列番号3に示す塩基配列の11〜1054番の領域(コード領域))を使用することができる。 メタロプロテイナーゼ切断型RAGE遺伝子は、esRAGE遺伝子の塩基配列(配列番号3)の1〜955番目の塩基配列、又はコード領域として11〜955番目の塩基配列を有するものである。 さらに、本発明は、上記sRAGEの変異型を使用することもできる。「変異型」とは、上記sRAGEのアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、sRAGE活性を有するタンパク質、あるいは、sRAGEのアミノ酸配列において少なくとも80%のホモロジーを有し、かつ、sRAGE活性を有するタンパク質を意味する。 例えば、sRAGEの変異型は、配列番号4に示されるアミノ酸配列若しくはその1〜315番のアミノ酸配列、又はこれらの部分ペプチドのアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、sRAGE活性を有するアミノ酸配列などがあげられる。 ホモロジーは、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる。例えば日本DNAデータバンク(DDBJ)において、FASTA、BLAST、PSI-BLAST等の相同性検索が利用できる。また、配列番号4に示されるアミノ酸配列又はその1〜315番のアミノ酸配列の他、配列番号4に示されるアミノ酸配列(又はその1〜315番のアミノ酸配列)において1若しくは複数個(例えば1個又は数個)のアミノ酸に欠失、挿入、置換若しくは付加等の変異、又はこれらの組み合わせ変異が生じたアミノ酸配列であって、sRAGE活性を有するタンパク質のアミノ酸配列が挙げられる。 例えば、(i) 上記sRAGEのアミノ酸配列(配列番号4に示されるアミノ酸配列、配列番号4の1〜315番のアミノ酸配列、又はそれらの部分ペプチド)中の1〜10個(好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii) sRAGEのアミノ酸配列に1〜10個(好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii) sRAGEのアミノ酸配列に1〜10個(好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv) sRAGEのアミノ酸配列中の1〜10個(好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、(v) 上記(i)〜(iv)を組み合わせたアミノ酸配列などが挙げられる。 ここで、「sRAGE活性」とは、生体内でAGEsを捕捉して、AGEs-RAGEシグナル伝達を抑制する活性、すなわち、sRAGEはリガンドであるAGEsと結合し、細胞膜表面にあるRAGE受容体と競合し、AGEs-RAGEシグナリングによる細胞応答を抑制する活性を意味し、配列番号4に示されるアミノ酸配列のタンパク質の活性と比較して、実質的に同等の機能、例えば50%以上、より好ましくは90%以上の活性を有することを意味する。 sRAGE活性は、例えばアフィニティークロマトグラフィー法(AGE binding Assay)(Yonekura et al., Biochem J. 15;370(Pt 3):1097-1109, 2003)Biacore法などを用いて測定することができる。 さらに、本発明において使用可能な変異型DNAとして、sRAGEをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号3に示される塩基配列若しくはそのコード領域の配列、メタロプロテイナーゼ切断型をコードする塩基配列若しくはそのコード領域の配列(配列番号3の1〜955番又は11〜955番)、又はこれらの部分配列、あるいはこれらの配列又は部分配列に相補的な配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、sRAGE活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。 本発明におけるハイブリダイゼーション条件において、ストリンジェントな条件としては、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、DNA濃度、DNAの長さ、反応時間等の条件を適宜設定することができる。 ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))等を参照することができる。 ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、sRAGEをコードする塩基配列又はその部分配列、あるいはそれらに相補的な塩基配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、さらに好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%以上)の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。 これらのタンパク質及び遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により、あるいは公知のデータベースから、例えば核酸合成、ペプチド合成、微生物による遺伝子発現手法を用いて得ることができる(Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等)。 また、目的タンパク質の製造は、形質転換体を用いた遺伝子工学的タンパク質合成系のほか、生細胞を全く使用しない無細胞タンパク質合成系を用いて行うこともできる。このような無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うことができる。例えば、試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTMSystem(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等が挙げられる。 目的のタンパク質は、クロマトグラフィー等の手段を適宜選択して、精製することができる。 また、本発明の医薬組成物の有効成分として使用されるRAGE阻害物質は、RAGEのダウンレギュレーションを促進する化合物、RAGEブロッカー、AGE作用を阻害する物質などである。 RAGEのダウンレギュレーションを促進する化合物としては、例えばチアゾリジンジオンなど(Marx et al., Diabetes 53:2662-2668, 2004)、またRAGEブロッカーとして、低分子量ヘパリン(Myint KM. et al., Diabetes. 2006 Sep;55(9): 2510-22)、α-リポ酸(Bierhaus A. et al., Diabetes. 1997 Sep;46(9): 1481-90)、フェニルピロール誘導体などが挙げられる。フェニルピロール誘導体は、2-フェニルピロール、3-フェニルピロールなどが挙げられるが、特開2009-46403号に記載のフェニルピロール誘導体を使用することもできる。AGE作用を阻害する物質として、Candesartan 又はOlmesartan (Qiuling F. et. al., Nephrol Dial Transplant (2004) 19: 3012-3020; Fujita M. et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol 2006;26;e138-e139, 2006)、Aminoguanidine (Thornalley PJ., Arch Biochem Biophys 419: 31-40, 2003)、OPB-9195 (Miyata et al., J Am Soc Nephrol 11: 1719-1725, 2000; Nakamura et al., Am J Kidney Dis 41: S68-S71, 2003)、ALT-946 (Forbes et al., Diabetologia 44: 108-114, 2001)、Alagebrium (Susic et al., Curr Opin Cardiol 19: 336-340, 2004)、N-phenacylthiazolium bromide (Cooper et al., Diabetologia 43: 660-664, 2000)等を使用することができる。 本発明において、薬学的に許容される塩は、統合失調症に対する治療作用または改善作用を有し、薬学的に許容されるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、並びにアルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等)が挙げられる。 本発明の医薬組成物は、sRAGEやRAGE阻害物質以外にも他の成分を含むことができる。他の成分としては、当該医薬組成物の用法(使用形態)に応じて必要とされる、製薬上許容され得る各種成分(薬学的に許容し得る各種担体等)が挙げられる。他の成分は、sRAGEにより発揮される効果が損なわれない範囲で適宜含有することができる。 当該医薬組成物を統合失調症治療薬として用いる場合は、sRAGEの配合割合や、他の成分の種類及び配合割合は、公知の統合失調症治療薬の調製法に準じて適宜設定することができる。 本発明の医薬組成物の投与については、その用法は限定はされないが、通常、経口投与又は非経口用法が採用される。各種用法に用い得る製剤は、薬剤製造上一般に用いられる担体、例えば賦形剤、充填剤、増量剤、希釈剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤あるいはその他の添加剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。 そのような担体の一つ以上を用いることにより、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口又は非経口的に投与することができる。 経口投与の場合、微晶質セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸ジカリウム、グリシン等の種々の賦形剤を、崩壊剤、結合剤等とともに使用することができる。崩壊剤としては、澱粉、アルギン酸、ある種のケイ酸複塩などが挙げられ、結合剤としては、例えばポリビニルピロリドン、蔗糖、ゼラチン、アラビアゴムなどが挙げられる。また、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク等の滑沢剤は錠剤形成に非常に有効である。経口投与用として水性懸濁液又はエリキシルにする場合は、必要により乳化剤、懸濁化剤を併用し、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等、及びそれらを組み合わせた希釈剤と共に使用することができる。 非経口投与のためのその他の形態としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。 注射剤の場合には、例えば生理食塩水あるいは市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中にsRAGEが所定濃度となるように溶解又は懸濁することにより製造することができる。このようにして製造された注射剤は、処置を必要とする統合失調症患者に対し、1日あたり1回〜数回投与することができる。但し、投与量は、患者の体重及び症状や個々の投与経路によって適宜設定することができる。治療する患者の薬物に対する感受性の差異、薬剤の処方の仕方、投与期間及び投与間隔によっても投与量に変動が生じてくるので、場合によっては設定された範囲(後述)より高い投与量又は低い投与量が適当なこともある。 非経口投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、バクテリア保留フィルターを通す濾過滅菌、殺菌剤の配合又は照射により行うことができる。注射剤は、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解する用時調製の形態として使用することができる。 sRAGEは、統合失調症の治療に関して種々の優れた効果を発揮し得るものであり、統合失調症の遺伝子治療用製剤の有効成分として用いることができる。すなわち、本発明は、sRAGE遺伝子を含有する統合失調症治療用医薬組成物を提供するものである。 本発明の医薬組成物が遺伝子治療剤に用いられる場合は、注射により直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等が挙げられる。これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。なお、市販の遺伝子導入キット(例えば、製品名:アデノエクスプレス、クローンテック社製)を用いることもできる。 また、本発明の医薬組成物を遺伝子治療剤に用いる場合、当該組成物をリポソーム等のリン脂質小胞体に導入し、この小胞体を投与することも可能である。例えば、sRAGE遺伝子を保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入する。そして、得られる細胞を例えば静脈内又は動脈内等に投与する。 本発明において、経口投与の場合の投与量は、1人1日あたり1mg〜1000mg、好ましくは10mg〜500mgであり、非経口投与(遺伝子治療剤を含む)の場合は1人1日あたり100μg/ml〜1000mg/ml、好ましくは1mg/ml〜500mg/mlである。これを1人あたり1日以上投与(例えば1日〜14日)することができる。6.スクリーニング方法 本発明のスクリーニング方法は、被検物質の存在下において、AGEとRAGEとの結合を検出し、AGEとRAGEとの結合を阻害する物質を選択する工程を含むものである。 「被検物質の存在下」とは、被検化合物がAGE又はRAGEに接触できる条件下であることを意味し、AGE及びRAGEを含む反応系に被検物質を添加すること、AGE及びRAGEを含む細胞(発現可能にこれらの遺伝子が組み込まれた細胞を含む)とともに培養することのいずれをも意味する。 スクリーニングの対象となる被検物質の例としては、特に限定されるものではないが、AGE又はRAGEに親和性を有する化合物であることが好ましい。 「親和性を有する」とは、AGE又はRAGEに対して、被検物質が特定の解離定数を持って結合することを意味する。 被検物質としては、例えば、天然又は合成の低分子化合物ライブラリー由来の化合物、遺伝子ライブラリーの発現産物(ペプチド、タンパク質等)、天然又は合成のオリゴ核酸、天然又は合成のペプチドライブラリー由来のペプチド、抗体、細菌由来の物質(細菌から代謝により放出される物質等)、微生物、植物細胞抽出液、動物細胞抽出液、培養液(微生物、植物細胞、動物細胞等の培養上清)由来の化合物、土壌中の化合物、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリー等に含まれる化合物などが挙げられる。これらの化合物は新規化合物であっても公知化合物であってもよい。さらに、被検物質は、化学的、物理的又は生化学的手段により、適当な修飾又は変異が施された化合物を使用することも可能である。さらに、被検物質は、ファーマコフォア検索、又はコンピューターを用いた構造比較プログラムにより同定される化合物であってもよい。さらに、候補物質、特に化合物は塩や水和物を形成してもよい。 本発明のスクリーニング方法は、AGE又はRAGEを産生する細胞、又はこれらの細胞の細胞調製物を用いて行うことができ、また、AGE又はRAGEは精製された形態のものを使用することも可能である。「細胞調製物」としては、細胞の培養物、培養細胞の破砕物、培養細胞から分画された細胞質、核などのオルガネラなどが挙げられる。また、AGE又はRAGEを産生する細胞としては、endothelial cells, pericytes, A549 cell linesなどが挙げられ、これらの細胞は、AGE遺伝子又はRAGE遺伝子のうち少なくとも一つが導入されて発現しているものであってもよい。遺伝子の導入法は当分野で周知であり、容易に実施することができる(Sambrook et al., 、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))。 AGEとRAGEとの結合、あるいはRAGEのシグナル伝達活性を検出する工程は、レポーター遺伝子アッセイ系を指標として測定することができる。レポーター遺伝子とは、プロモーターやエンハンサーの転写活性などを調べるためにDNAへ組み込まれる目印用の遺伝子であり、その発現量を測定できる遺伝子であれば特に限定されず、一般的には検出が簡単で定量化可能なものが好ましい。レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、CAT (クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子、β-Gal (β-ガラクトシダーゼ)遺伝子、GFP (緑色蛍光タンパク質)遺伝子、及びGUS (β−グルクロニダーゼ)遺伝子などが挙げられる。 前記レポーター遺伝子の産物を検出するための試薬としては、レポーター産物を検出するための基質、細胞固定液、細胞溶解液、及び試料を希釈するための緩衝液などの中から必要なものが選択される。またレポーター遺伝子の発現による産物がタンパク質の場合には、EIA法やELISA法などの免疫学的測定によっても計測が可能であり、そのための試薬については当業者であれば適宜選択して含めることが可能である。 本発明のスクリーニング方法によって得られた物質は、統合失調症の治療用医薬組成物として使用することができる。医薬組成物については、前記「5.医薬組成物」の項を参照することができる。 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。(1)対象と方法 統合失調症患者45例と健常対照者61例の血清サンプルを対象に、esRAGE量をELISAキット(Human esRAGE ELISA Kit、B-Bridge International, Inc)により定量した。 RAGE遺伝子 (Official symbol, AGER; Official full name, advanced glycosylation end product-specific receptor)の構造は、NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/177?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Gene.Gene_ResultsPanel.Gene_RVDocSum)およびUCSC(http://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgc?hgsid=155267731&o=32148745&t=32152023&g=refGene&i=NM_001136)より入手した(図1、配列番号9)。 図1において、下線部はプライマー設計箇所、大文字表記部分はexon領域、枠で囲った「g」は多型を表す。 遺伝子解析用プライマーの設計は、NM_001136配列 [Homo sapiens advanced glycosylation end product-specific receptor (AGER), transcript variant 1, mRNA](図1)に基づいてPCR条件を至適化後、シーケンス解析を実施した。 プライマー配列及びPCR条件は以下の通りである。フォワードプライマー(RAGEex9,10-F1v2):tcacctgaggtagggagttc(配列番号7)リバースプライマー(RAGEex9,10-R1):gaacgacaacgtgccgcatt(配列番号8) PCRは以下の組成の反応溶液及びサイクル条件により行なった(表2)。(4)結果 対照健常者と比較して、統合失調症患者で有意に血清esRAGEの低下を認めた(Schizophrenia, 0.2308±0.1514 ng/mL vs. Control, 0.3199±0.1305 ng/mL; P = 0.0016)(図2)。また、esRAGE低下(健常者平均値-1SDをcut-off値とした場合, < 0.1894)は、統合失調症患者45例中22例(48.9%)、対照健常者61例中8例(13.1%)に認められた(表3)。統合失調症と対照でのχ2検定を行ったところesRAGE 低値が有意に統合失調症と関連することを明らかにした(χ2 = 16.33, P < 0.0001, Odds ratio = 6.34, 95%CI = 2.46-16.32)。ペントシジン蓄積とesRAGE低下を伴う統合失調症が11例/45例中(24.4%)に認められた。 また、統合失調症の中でもhigh PEN群はnormal PEN群より、さらにesRAGEが低値であった(図3)。 ペントシジン蓄積を伴わない統合失調症のesRAGE(図4、「Norm PEN GLO1 Glu/Glu」)は、対照健常者とは有意な差を認めなかったが、ペントシジン蓄積を伴う統合失調症患者(図4、「High PEN GLO1 Glu/Glu」)のうち、GLO1変異を有さない症例(Glu/Glu型)では、より顕著なesRAGE低下を認めた(P < 0.05)。さらに、esRAGE低下はRGAEc.992-6G>AのGA遺伝子型をヘテロ接合体で有する症例でより顕著であった(P < 0.01)。 さらに、c.992-6G>AにおいてAアレル保持者はAアレル非保持者(G/G)より有意にesRAGEが低値であった(図5)。 さらに、CSR-Schにおいては一般の患者群より発症年齢が低年齢、入院期間が長期、非定型抗精神病薬の服用量が高値であった(図6)。(5)考察 約86%のGLO1遺伝子型が野生型である統合失調症のペントシジン蓄積の要因のひとつとして、esRAGE の低下が寄与していることを明らかにした(図2、表3)。esRAGE はfull length RAGE がスプライシング を受けて産生されるが、RAGE のexon/intron junction近傍にあるc.992-6G>A(exon 10の6塩基上流に位置) がA アレルを持つ症例は持たない症例より有意にesRAGE が低下していたことから(図5)、esRAGE 低下には遺伝的要因が関与することが示唆された。これまでの研究により、統合失調症の約46.7%にペントシジン蓄積が認められ、24.4%にesRAGE低下を併せ持つ症例が存在することを明らかにした(図2)。また、17.8%の統合失調症では、ペントシジン蓄積・esRAGE低下・ビタミンB6低下を呈し(表1)、遺伝的要因として、GLO1およびRAGEの遺伝子変異が寄与していることが明らかとなった(図5)。予備的検討であるものの、ペントシジン蓄積・esRAGE低下・ビタミンB6低下を伴う症例は、これらを伴わない症例と比較して、発症年齢の若年化、入院期間の増大、抗精神病薬の増大傾向を認め(図6)、3因子と臨床転帰との関連が示唆された。 以上の結果は、esRAGEの量を指標として、統合失調症を検出することができることを意味するものである。また、esRAGE単独で指標とする他に、esRAGEと他の統合失調症マーカーとを組み合わせることにより、より詳細に統合失調症を検出することが可能となる。 マイクロアレイ解析 解析の比較対象となる異なる2種類の試料などからトータルRNAを調製した。次いで、トータルRNAを濃縮、精製後に逆転写(cDNA合成)を行い、cDNAを蛍光色素(例えばCy3およびCy5を利用)にて標識した。蛍光標識されたcDNA配列を目的の遺伝子配列(相補となる配列がアレイ解析用の基盤に固相化されている)へハイブリダイズさせ、目的遺伝子の発現量の程度を蛍光色素の強度として検出した。 本発明において、統合失調症患者と健常者のリンパ芽球様細胞におけるマイクロアレイデータを利用して解析した結果、Accession No. MN_172197 (Homo sapiens advanced glycosylation end product-specific receptor (AGER), transcript variant 2, mRNA)の遺伝子発現レベルを測定することによって、ペントシジン、esRAGEの相互関連を予測することが可能となった (遺伝子発現マーカーとしてRAGE遺伝子による診断が可能)(表4、表5)。 (i) 統合失調症患者および健常者由来のリンパ芽球様細胞を利用して、網羅的遺伝子発現解析(DNA microarray analysis)を行った。その結果、ペントシジン高値を示したMZ70症例では、健常者と比較して、すべてのAGER transcript variantsの発現が低下していた。 (ii)一方、ペントシジン正常値を示したSA046K症例では、健常者と比較して、すべてのAGER transcript variantsが高値であった。したがって、AGER transcripts発現の低下は、ペントシジン高値を促進する要因となる可能性が考えられた。AGER transcripts 発現増加は、AGEs抑制に働く可能性が示唆された。 (iii)また、NP50症例では、MZ70症例とSA046K症例で観察された中間的な発現値が観察され、ペントシジン値およびesRAGE値の変動幅と合致した。さらに、各AGER transcriptsにおいて、その発現割合に個体差間の相違傾向が認められた。 (iv) esRAGEの血清中濃度は、Accession Nos. AY55625, AY755627, NM_172197と有意な正相関を認めた。ペントシジンの血漿中濃度は、Accession No. NM_172197と有意な負の相関を認めた。したがって、MN_172197 (advanced glycosylation end product-specific receptor (AGER), transcript variant 2, mRNA)を測定することによって、ペントシジン、esRAGEの相互関連(増減)を予測することが可能と考えられる(RAGE遺伝子を利用した発現マーカーとして診断応用が可能となる)。 マイクロアレイ解析の結果、AGEs消去系esRAGEの血中濃度はAGEs効果系RAGEの発現量と正相関を認め、AGEsの血中濃度はAGEs効果系RAGEの発現量と負の相関を認めた。すなわち、AGEsを消去する(AGEsの機能を抑制する)方向に作用するesRAGEの血中濃度が上昇すると、AGEs効果系(AGEsの生理機能を起こさせる)RAGEの発現量が増えることが示され、AGEsの血中濃度が上昇すると、AGEsの生理機能を起こさせるRAGEの発現量と負の相関(つまりRAGEがダウンレギュレーションされていること)を認めた。 従って、 esRAGEが十分に高い場合、消去系が機能してAGEが低下してくるのでRAGEのシグナル暴走の危険性が去り、RAGEはダウンレギュレーションを解かれて発現量を回復すると考えられる。 リガンドとしてのAGEsと受容体としてのRAGEが負の相関を認めたことから、脱感受性が生じていることが示され、AGEsが蓄積する統合失調症患者においては、RAGEの機能を遮断することにより、統合失調症の治療効果が期待できる。(1)血清中可溶型RAGE量の測定 本発明者は、実施例1で行った検討に加え、新たに統合失調症群106名、健常者群80名まで症例数を拡大し、可溶型RAGEの血清中濃度をELISA(Human esRAGE ELISA Kit、B-Bridge International, Inc)により測定した。 その結果、統合失調症群における可溶型RAGE量は平均272.8 pg/mLで、健常者群の平均299.4pg/mLと比較して有意な低下が認められた(P = 0.0295, Mann Whitney test)(図7)。また、健常者群の平均値‐1SD以下(185 pg/mL)を基準として群間比較をした結果、統合失調症群のおよそ34%(36名/106名中)に可溶型RAGEの低下が認められたのに対し、健常者群では80名中11名(13.8%)であった(χ2 = 9.863, df = 1, P = 0.0017, Odds ratio = 3.226, 95%CI = 1.520-6.849)。(2)可溶型RAGE量と関連する新たな糖化最終産物受容体遺伝子変異の同定 糖化最終産物受容体遺伝子AGER(「RAGE遺伝子」とも称する)について、PCR法を用いて変異探索を実施した。 AGER の遺伝子型(NM_001136.3, c.692-23C>TあるいはNM_172197.1, c.650-23C>T)の検出には、Reference Sequence(基準配列)として、NM_001136.3 (Homo sapiens advanced glycosylation end product-specific receptor (AGER), transcript variant 1, mRNA)を使用した(図8、配列番号10)。 図8において、下線部はプライマー設計箇所、大文字表記部分はexon領域、枠で囲った「c」は多型を表す。 RAGE遺伝子の変異探索に用いたプライマー配列及びPCR条件は以下の通りである。フォワードプライマー(RAGEex7,8-F2):5'-cacactgcagtcggagctaa(配列番号11)リバースプライマー(RAGEex7,8 read R1):5'-tgtaggttccctggtcctga(配列番号12)PCRは以下の組成の反応溶液及びサイクル条件により行なった(表6)。 表6 RAGE遺伝子の変異探索を実施した結果、10箇所の新規variantsを含む合計30箇所のvariantsを同定した(表7、NCBI に登録済みのヌクレオチド置換等についてはrs 番号を記載)。 表7 その結果、これまで同定していたAGER NM_001136.3, c.992-6G>Aに加え、新たにAGER NM_001136.3, c.692-23C>T(あるいはAGER NM_172197.1, c.650-23C>T)のvariantsが可溶型RAGE量と有意に関連することを明らかにした(図9)。 統合失調症群、健常者群ともc.692-23C>TのCT遺伝子型をヘテロ接合体で有する検体では、CC野生型の検体に比べて可溶型RAGEの有意な低下が顕著であった(ANOVA, Tukey's Multiple Comparison Test, P < 0.01)。また、c.692-23C>TのCT遺伝子型をヘテロ接合体で有する検体はすべてc.992-6G>AのGA遺伝子型をヘテロ接合体で有していたことから、両者は連鎖不平衡にあると考えられる。すなわち、従来のc.992-6G>A による判定に加え、c.692-23C>T とのハプロタイプも診断に役立つことが新たに見出された。このことから、キット化する場合、従来のc.992-6G>A より新たなc.692-23C>T が判定に簡便である場合、c.992-6G>A に代えてc.692-23C>T単独でも判定可能であると考えられる。 また、c.692-23C>Tおよびc.992-6G>AのCTおよびGA遺伝子型をヘテロ接合体で有する8症例の可溶型RAGEは平均134.3±63.46 pg/mLで、CCおよびGG野生型を有する98症例の可溶型RAGE量(平均284.4±150.6 pg/mL)と比較しておよそ53%減少していた(図9)。 この結果により、c.692-23C>Tの遺伝子型を指標として可溶型RAGE量の予測が可能であることが示された。 また、可溶型RAGE はスプライシング アイソフォームとして産生されるが、AGERのexon/intron junctionに存在する新たなvariantが可溶型RAGE 低下と有意な関連を示したことから、可溶型RAGE 低下に遺伝的要因が関与することが明らかになった。(3)ペントシジン、ビタミンB6、可溶型RAGEをバイオマーカーとした階層化 統合失調症群108例、健常者群80名を対象として、3種類(ペントシジン、ビタミンB6、可溶型RAGE)をバイオマーカーとして利用し、各検体を階層化した(図10)。 その結果、統合失調症群において、108例中57例(53.8%)がペントシジン蓄積を呈し、57例中26例の症例ではビタミンB6低下が認められた(全体の24.5%の相当)。さらに、ペントシジン蓄積及びビタミンB6低下が認められた26例中11例(全体の10.4%に相当)においては可溶型RAGE低下を伴っていた(グループIに分類:high riskグループ)。グループIに属する健常者は皆無であった。一方、健常者のおよそ8割(77.5%)がグループVIII(low riskグループ)に分類された。 本実施例において、新たなバイオマーカーを同定したことによって、個々の階層における均一性をいっそう高めることに成功した。より均一な個別病態をクラスタリングすることが可能となったことにより、統合失調症の異種性に対応し、副作用が少なく有効性が高い個別化医療への応用も期待できる。 本発明の方法は、統合失調症の検出又は評価に有用である。 配列番号7:合成DNA 配列番号8:合成DNA 配列番号11:合成DNA 配列番号12:合成DNA 生体試料中の糖化最終産物受容体の量を測定し、得られる測定結果と統合失調症とを関連づけることを特徴とする統合失調症の検出方法。 生体試料中の糖化最終産物受容体の量を測定し、得られる測定結果と統合失調症とを関連づけることを特徴とする統合失調症の状態の評価方法。 糖化最終産物受容体が、可溶型又は膜結合型のものである請求項1又は2に記載の方法。 さらに、グリオキシラーゼI遺伝子の遺伝子異常、カルボニル化合物のタンパク質修飾物の量、及びピリドキサール量からなる群から選ばれる少なくとも1つを前記糖化最終産物受容体の量と組合せて、統合失調症を関連づけるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 統合失調症の状態が、統合失調症の症状、進行度及び重症度からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。 カルボニル化合物のタンパク質修飾物がペントシジンである請求項4に記載の方法。 可溶型の糖化最終産物受容体又は該受容体をコードする遺伝子を含む、統合失調症治療用医薬組成物。 被検物質の存在下で全長の糖化最終産物受容体と糖化最終産物との結合試験を行ない、当該結合を阻害する物質を統合失調症治療に使用し得る物質として選択することを特徴とする、統合失調症治療用物質のスクリーニング方法。 請求項8に記載の方法によって得られた物質を含む、統合失調症治療用医薬組成物。 糖化最終産物受容体の阻害物質を含む、統合失調症治療用医薬組成物。 糖化最終産物受容体の阻害物質が、当該受容体のダウンレギュレーションを促進する化合物、当該受容体ブロッカー、又は糖化最終産物の作用を阻害する物質である請求項10に記載の医薬組成物。 本発明は、統合失調症の存在をより高い確度で、簡便かつ迅速に検出することができる統合失調症の検出方法等を提供する。本発明に係る統合失調症の検出方法は、生体試料中の分泌型の糖化最終産物受容体の量を測定し、得られる測定結果と統合失調症とを関連づけることを特徴とする統合失調症の検出方法である。配列表


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