生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_イブプロフェン含有固形製剤の製造方法
出願番号:2011053665
年次:2011
IPC分類:A61K 9/20,A61K 31/192,A61K 47/02,A61K 47/10


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鈴木 恭子 田嶋 靖生 JP 2011213714 公開特許公報(A) 20111027 2011053665 20110311 イブプロフェン含有固形製剤の製造方法 大正製薬株式会社 000002819 鈴木 恭子 田嶋 靖生 JP 2010058046 20100315 A61K 9/20 20060101AFI20110930BHJP A61K 31/192 20060101ALI20110930BHJP A61K 47/02 20060101ALI20110930BHJP A61K 47/10 20060101ALI20110930BHJP JPA61K9/20A61K31/192A61K47/02A61K47/10 6 1 OL 7 4C076 4C206 4C076AA36 4C076CC05 4C076DD27A 4C076DD37F 4C076FF33 4C076GG13 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA24 4C206MA03 4C206MA05 4C206MA54 4C206NA05 4C206ZB11 本発明は、pH5.0以下の低pH領域で難水溶性を示すイブプロフェンを含有する固形製剤の製造法に関するものである。特に、この領域において迅速かつ多量のイブプロフェンの溶出が可能な固形製剤の製造法に関するものである。 イブプロフェンは非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)である。イブプロフェンはNSAIDsの中でも比較的胃腸障害などの副作用が少なく、鎮痛作用と解熱作用のバランスに優れることから、医療用医薬品において、あるいは一般用医薬品においても解熱鎮痛薬の有効成分として広く利用されている。 しかし、イブプロフェンは低pH領域で難水溶性を示すため、効き目の速さが求められる解熱鎮痛薬においては、その溶出性を改善することが求められていた。 これまでに難水溶性薬物の溶出性を改善するために種々の方法が検討されている。例えば、(a)親水性高分子を用いて湿式造粒する方法、(b)粉砕により薬物を微細化する方法、(c)高分子基剤と共に固体分散体を形成する方法、(d)シクロデキストリン類と共に可溶性包接体とする方法、(e)界面活性剤を添加する方法、等が一般的に知られている。例えば、前記(c)の方法として、薬物を水溶性高分子物質とともにケイ酸カルシウムやメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの無機多孔性物質に吸着あるいは接着させることを特徴とする固形製剤が記載されている(特許文献1参照)。しかし、この手法は薬物に対し水溶性高分子や無機多孔性物質を多量(一般的には5〜10倍量以上)に用いる必要があり、イブプロフェンのように配合量が多い薬物の場合には、組成物の重量が増大しすぎるため服用性が悪化し、現実的ではない手法であった。また、それ以外の手法も濡れ性や表面積の増大により溶出速度は改善するものの、溶出量の改善は不十分であった。 以上の背景から、簡便かつ効果が高く、高用量のイブプロフェンを配合した場合にも溶出性が改善された固形製剤が望まれていた。 一方、イブプロフェンを熱溶融させて、溶剤の不存在下で多孔質賦形剤と練合して得られる固形製剤が開示されているが、この製造法で得られた固形製剤のイブプロフェンの溶出性については記載も示唆もされていない(特許文献2参照)。WO2006/046623特開平10−287561 本発明の目的は、イブプロフェンの溶出性を、比較的少量の添加剤によって改善することで即効性のある固形製剤を製造し提供することにある。 本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の添加剤を使用し、イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを加えスラリー状態を経て固形製剤を製造することで上記課題が解決できることを見出し、本発明を成すに至った。 すなわち、本発明は、(1)a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する固形製剤の製造方法であって、イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経る工程を有することを特徴とする固形製剤の製造方法、(2)a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経る工程を有することを特徴とする(1)に記載の製造方法、(3)a)イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経たのちに、b)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを添加する工程を有することを特徴とする(1)に記載の固形製剤の製造方法、(4)スラリー状態を経た後に、さらに乾燥及び粉砕工程を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の製造方法、(5)b)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの配合量が、イブプロフェン1.0質量部に対し、0.2質量部以上3.0質量部以下の範囲であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の製造方法、(6)エタノールの添加量が、イブプロフェンを含有する粉体1.0質量部に対し、0.4質量部以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の製造方法、である。 本発明で製造された固形製剤は、迅速かつ多量のイブプロフェンの溶出性を有する。実施例1〜3及び比較例1,2の固形製剤のイブプロフェンの溶出量を示したグラフであり、縦軸にイブプロフェン溶出量(mg/mL)、横軸は試験液採取時間(分)を示した。実施例4〜7の固形製剤のイブプロフェンの溶出量を示したグラフであり、縦軸にイブプロフェン溶出量(mg/mL)、横軸は試験液採取時間(分)を示した。実施例8〜11の固形製剤のイブプロフェンの溶出量を示したグラフであり、縦軸にイブプロフェン溶出量(mg/mL)、横軸は試験液採取時間(分)を示した。 本発明におけるイブプロフェンの配合量は固形製剤中70質量%以下が好ましい。70質量%を越えて配合するとイブプロフェンの溶出性改善効果の確保が困難になるからである。 本発明におけるケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、イブプロフェンの溶出性改善の点から、イブプロフェン1.0質量部に対し、0.2質量部以上3.0質量部以下の範囲が好ましく、1.8質量部以上3.0質量部以下の範囲がより好ましい。0.2質量部以下であるとイブプロフェンの溶出性改善効果が低く、3.0質量部以上を超えて配合するとかさ高い固形製剤となって製造性や作業性が低下するためである。 本発明で製造される固形製剤は、イブプロフェンと、ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの他に、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤等を配合して常法により、顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤、ドライシロップ剤等として提供することができる。 本発明の固形製剤の製造時においては、イブプロフェンを含有する粉体がスラリー状態となるまでエタノールを添加することを必要とする。より具体的には、a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する粉体がスラリー状態となるまでエタノールを添加すること、あるいはa)イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経たのちに、b)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを添加することを必要とする。スラリーとは、不溶性物質を含むドロドロとした粘性の強い流動性の組成物のことである。不溶性物質を含む乾燥した粉体に対し溶媒を添加すると、パサパサしたペンデュラー状態からしっとりとしたフェニキュラー状態、ネバネバしたキャピラリー状態を超えてドロドロとしたスラリー状態となる。 本発明において、スラリー状態とするためのエタノール添加量は、粉体の吸油(吸水)能やエタノールに対する溶解度によって異なるが、粉体1.0質量部に対し、おおよそ0.4質量部程度以上であり、0.7質量部以上がより好ましい。ドロドロとしたスラリー状態にすることで、最小限の溶媒量で溶出性の改善が可能となる。なお、一般的な練合造粒や攪拌造粒における造粒はペンデュラー域からフェニキュラー域で行われ、溶媒添加量は粉体1.0質量部に対し、おおよそ0.1〜0.3質量部程度である。 本発明の製造方法では、溶出性改善の為に水溶性高分子は必ずしも必要ではなく、造粒における結合剤として配合する場合がある。その場合、イブプロフェン1.0質量部に対し、0.5質量部以下の範囲で配合する。 以下実施例及び試験例により、本発明をさらに具体的に説明する。表1〜3中の各成分の配合量の単位はgである。実施例1 表1に示す処方で顆粒剤を製した。表1の各成分を秤量し、乳鉢に加え混合および練合を行った。練合時に粉体量と等量(20g)のエタノールを加え、スラリー状態とし練合した。その後、室温の減圧下で真空乾燥を約12時間行い、充分に乾燥させたのち、乳鉢にて粉砕し顆粒剤を得た。実施例2 実施例1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムをケイ酸カルシウムに置き換え同様に顆粒剤を製した。実施例3 実施例2の顆粒20gに対し、クロスカルメロースナトリウム2gとステアリン酸マグネシウム0.1gを添加・混合し、単発打錠機(HAND TAB200、市橋精機製)を用い圧縮成形することで1錠重量318mgの錠剤を得た。比較例1 表1に示す処方で散剤を製造した。表1の各成分を秤量し、乳鉢に加え充分に混合を行い、均質な散剤を得た。比較例2 比較例1のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムをケイ酸カルシウムに置き換え同様に散剤を得た。実施例4〜7 表2に示す処方で顆粒剤を製した。表2のケイ酸カルシウム以外の各成分を秤量し、乳鉢に加え粉末状態で混合および練合を行った。次に各比率の95%エタノールを加え練合しスラリー化したのち、ケイ酸カルシウムを添加しながらさらに練合した。その後、室温の減圧下で真空乾燥を約12時間行い、充分に乾燥させたのち、乳鉢にて粉砕し顆粒剤を得た。実施例8〜11 表3に示す処方で顆粒剤を製した。表3のケイ酸カルシウム以外の各成分を秤量し、乳鉢に加え粉末状態で混合および練合を行った。次に20gの95%エタノールを加え練合しスラリー化したのち、各比率のケイ酸カルシウムを添加しながらさらに練合した。その後、室温の減圧下で真空乾燥を約12時間行い、充分に乾燥させたのち、乳鉢にて粉砕し顆粒剤を得た。試験例 実施例1〜11及び比較例1,2で製造したイブプロフェンの顆粒、錠剤、散剤の溶出量を次の試験法に従って行った。 第十五改正日本薬局方の溶出試験法パドル法に基づき、37℃/900mLの溶出試験第1液を用いて、回転数50rpmにて測定した。試料は1ベッセル当たりイブプロフェンとして144mgとなるように投入した。溶出量はHPLC法を用いて測定し、固形製剤中に配合したイブプロフェンの溶出量の評価を行った。測定結果を図1〜3に示す。 実施例1〜11の固形製剤は、比較例1および2に比べて迅速なイブプロフェンの溶出を示した。中でも、実施例1〜3,5〜7,11はイブプロフェンのpH1.2での溶解度(0.053mg/mL)を大きく超える溶出性を示した(過飽和状態)。それに対し、比較例1および2では、溶出が実施例1〜11に比べて遅く、またイブプロフェンの溶解度を超える溶出性は得られなかった。すなわち、固形製剤の製造工程においてスラリー状態とすることが、イブプロフェンの溶出性改善に必須であることがわかった。 本発明は、イブプロフェンを配合した医薬品に使用可能である。a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する固形製剤の製造方法であって、イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経る工程を有することを特徴とする固形製剤の製造方法。a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経る工程を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。a)イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経たのちに、b)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを添加する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の固形製剤の製造方法。スラリー状態を経た後に、さらに乾燥及び粉砕工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。b)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの配合量が、イブプロフェン1.0質量部に対し、0.2質量部以上3.0質量部以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。エタノールの添加量が、a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する粉体1.0質量部に対し、0.4質量部以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。 【課題】本発明は、イブプロフェンの溶出性を、比較的少量の添加剤によって改善することで即効性のある固形製剤を製造し提供することを目的とする。【解決手段】a)イブプロフェン、及びb)ケイ酸カルシウム又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する固形製剤の製造方法であって、イブプロフェンを含有する粉体に、エタノールを添加し、スラリー状態を経る工程を有することを特徴とする固形製剤の製造方法。【選択図】図1


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